特許第6960008号(P6960008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960008
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】薬液揮散器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20211025BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20211025BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20211025BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D83/00 F
   B65D85/00 A
   A01M1/20 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-37640(P2020-37640)
(22)【出願日】2020年3月5日
(62)【分割の表示】特願2016-73444(P2016-73444)の分割
【原出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2020-116395(P2020-116395A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109440
【氏名又は名称】テイボー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】山本 満
(72)【発明者】
【氏名】松本 季憲
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−170253(JP,A)
【文献】 特開2005−177174(JP,A)
【文献】 特開昭62−164466(JP,A)
【文献】 実開平07−018736(JP,U)
【文献】 特開2008−104778(JP,A)
【文献】 特表平02−503522(JP,A)
【文献】 特開平04−038958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
A01M 1/00−99/00
B65D 83/00
B65D 85/08−83/76
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有し、内部に薬液を収容する容器と、
下端部が前記容器内に配置され、上端部が前記容器外へ露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入され、前記薬液を前記容器内から吸い上げる揮散体と
を備え、
前記揮散体は、外側表面と、前記外側表面から突出し、前記薬液の吸い上げ方向に延びる多数の筋状の突起とを有し、前記多数の突起間には、前記吸い上げ方向に延びる多数の筋状の微細溝が形成され、
前記多数の微細溝に沿って毛細管現象により吸い上げられた薬液が、部空間へと自然蒸散するように構成され、
前記多数の突起は、前記外側表面から第1突出高さを有する多数の第1突起と、前記多数の第1突起間に散在するように配置され、前記外側表面から前記第1突出高さよりも高い第2突出高さを有する多数の第2突起とを含
隣接する前記第1突起と前記第2突起との間の前記外側表面上における間隔W1は、前記揮散体が前記容器内に挿入された状態で、常温環境下において当該第1突起と当該第2突起との隙間に沿って毛細管現象により前記薬液を吸い上げることができる程度の間隔であり、
隣接する前記第2突起の間の前記外側表面上における間隔W2は、前記揮散体が前記容器内に挿入された状態で、少なくとも常温環境下において当該第2突起の間の隙間に沿って毛細管現象により前記薬液を吸い上げることができない程度の間隔である、
薬液揮散器。
【請求項2】
前記微細溝は、前記外側表面側の底部からより前記外部空間側に向かって、徐々に拡幅するように構成されている、
請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項3】
前記揮散体は、棒状の部材である、
請求項1又は2に記載の薬液揮散器。
【請求項4】
前記揮散体の断面径は、1.5mm以上、4.0mm以下である、
請求項3に記載の薬液揮散器。
【請求項5】
前記揮散体は、樹脂製である、
請求項1から4のいずれかに記載の薬液揮散器。
【請求項6】
前記揮散体は、ポリアセタール樹脂製である、
請求項1から5のいずれかに記載の薬液揮散器。
【請求項7】
0mm<W1≦0.15mmであり、
0.15mm<W2である、
請求項1から6のいずれかに記載の薬液揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬液が収容された容器内に、薬液を吸い上げる揮散体を容器内から突出するような態様で挿入して使用する薬液揮散器が知られている。この種の薬液揮散器では、典型的には、薬液が揮散体により吸い上げられて外部空間に揮散されることで、薬液の有する芳香効果等の効果が外部空間に付与される。そして、薬液を吸い上げる揮散体としては、特許文献1,2に示されるように、しばしばラタンが用いられる。ラタンは、内部に微細な空洞を有しており、この空洞を介して毛細管現象により薬液を吸い上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−008799号公報
【特許文献2】特開2011−212271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラタンが薬液を吸い上げる速度は、必ずしも速いとは言い難い。つまり、内部の空洞を介して吸い上げられた薬液は、徐々に外側表面に浸み出し、その後、外側表面から揮散される。そのため、使用開始時に、薬液入りの容器内にラタン製の揮散体を挿入したとき、薬液が外部空間に充満し始めるまでには、数時間以上の長い時間を要することが多々ある。
【0005】
本発明は、薬液を吸い上げて迅速に自然蒸散させることのできる薬液揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る薬液揮散器は、容器と、揮散体とを備える。前記容器は、上部に開口を有し、内部に薬液を収容する。前記揮散体は、下端部が前記容器内に配置され、上端部が前記容器外へ露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入され、前記薬液を前記容器内から吸い上げる。前記揮散体は、外側表面と、前記外側表面から突出し、前記薬液の吸い上げ方向に延びる多数の筋状の突起とを有する。前記多数の突起間には、前記吸い上げ方向に延びる多数の筋状の微細溝が形成される。前記薬液揮散器は、前記多数の微細溝に沿って毛細管現象により吸い上げられた薬液が、前記外部空間へと自然蒸散するように構成されている。
【0007】
本発明の第2観点に係る薬液揮散器は、第1観点に係る薬液揮散器であって、前記多数の突起は、多数の第1突起と、多数の第2突起とを含む。前記第1突起は、前記外側表面から第1突出高さを有する。前記第2突起は、前記多数の第1突起間に散在するように配置され、前記外側表面から前記第1突出高さよりも高い第2突出高さを有する。
【0008】
本発明の第3観点に係る薬液揮散器は、第1観点又は第2観点に係る薬液揮散器であって、前記微細溝は、前記外側表面側の底部からより前記外部空間側に向かって、徐々に拡幅するように構成されている。
【0009】
本発明の第4観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第3観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記揮散体は、前記揮散体内を前記吸い上げ方向に延びる貫通口を有する。前記貫通口は、前記揮散体が前記容器内に挿入された状態で、少なくとも常温環境下において毛細管現象により前記薬液を吸い上げない程度のサイズの断面積を有する。
【0010】
本発明の第5観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第4観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記揮散体は、棒状の部材である。
【0011】
本発明の第6観点に係る薬液揮散器は、第5観点に係る薬液揮散器であって、前記揮散体の断面径は、1.5mm以上、4.0mm以下である。
【0012】
本発明の第7観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第6観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記揮散体は、樹脂製である。
【0013】
本発明の第8観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第7観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記揮散体は、ポリアセタール樹脂製である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、揮散体の外側表面に、薬液の吸い上げ方向に延びる多数の筋状の突起が設けられ、これにより、同方向に延びる多数の微細溝が形成される。その結果、揮散体を容器内に挿入したとき、薬液が毛細管現象により揮散体の外側表面に沿って吸い上げられるとともに、外側表面から迅速に自然蒸散する。これにより、即効性のある薬液揮散器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る薬液揮散器の外観図。
図2】第1実施形態に係る揮散体の横断面図。
図3】第1実施形態に係る揮散体の部分拡大横断面図。
図4】第1実施形態に係る揮散体の別の部分拡大横断面図。
図5】変形例に係る揮散体の横断面図。
図6】別の変形例に係る揮散体の横断面図。
図7】さらに別の変形例に係る揮散体の横断面図。
図8】さらに別の変形例に係る揮散体の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る薬液揮散器について説明する。
【0017】
<1.薬液揮散器の全体構成>
図1に、本実施形態に係る薬液揮散器1の外観図を示す。同図に示すように、薬液揮散器1は、薬液が収容される容器2と、容器2内に挿入される複数本の棒状の揮散体3とを備える。容器2は、上部に開口S1を有し、この開口S1を介して薬液を内部空間S2内に収容することができる。棒状の揮散体3は、容器2の高さに対し十分な長さを有しており、下端部3aが容器2内に配置され、上端部3bが容器2外に露出するような態様で開口S1を介して容器2の内部空間S2内に挿入される。また、揮散体3は、後述されるように、薬液を毛細管現象により重力に逆らって吸い上げることが可能な構造を有している。その結果、容器2内の薬液は、揮散体3を伝って下端部3aから上端部3bまで上昇することができ、揮散体3の外部表面から外部空間へと自然蒸散する。これにより、薬液は、薬液揮散器1の置かれた周囲の空間へ拡散される。
【0018】
ここで使用される薬液は、特にその種類は限定されないが、典型的には芳香剤、消臭剤又は防虫剤、或いはこれらの混合物であり、使用目的に応じて、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の添加剤が含有される。薬液に含まれる溶媒は、使用される添加剤の種類に応じて適宜選択され、親水性溶媒又は親油性溶媒、或いはこれらの混合物とすることができる。薬液が香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、或いはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、或いはこれらの混合物を使用することができる。また、薬液には、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の機能性成分を可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
【0019】
<2.容器>
容器2は、内部空間S2を画定する底部10及び周壁部20を有する。本実施形態では、底部10は、中央部11がその外周部12よりもやや上方に隆起した形状を有している。従って、容器2内の薬液は、残量が少なくなると、底部10の周縁に溜まることになる。一方で、棒状の揮散体3の下端部3aは、通常、底部10の傾斜に沿って下降し、底部10の周縁に配置される。従って、揮散体3と薬液とが接触し易い構成となっているため、薬液を最後まで使い切ることができる。
【0020】
周壁部20は、筒状の胴部21と、胴部21の上端に連続する肩部22と、さらに肩部22に連続する首部23とを有している。首部23は、容器2の上部の開口S1を画定する筒状の部位であり、胴部21よりも幅狭である。これにより、薬液揮散器1の転倒時には肩部22が壁となり、薬液が開口S1を介してこぼれにくくなっている。特に本実施形態では、首部23が胴部21と同軸に配置されているため、薬液揮散器1がどの方向に転倒したとしても肩部22が壁となり、薬液のこぼれを抑制することができる。また、開口S1の横断面の面積が胴部21の横断面の面積(内部空間S2の横断面の面積)よりも狭いため、容器2内に収容される薬液の量に対し、開口S1を介して容器2内から自然蒸散する薬液の量を抑制することができる。
【0021】
上記のとおり、開口S1を画定する首部23内には、複数本の揮散体3が差し込まれる。このとき、揮散体3により開口S1全体が塞がれてしまわない程度の余裕を持って、揮散体3を開口S1内に挿入することが好ましい。この場合、揮散体3を容器2内で傾斜させて配置することができ、美観を向上させることができるからである。また、美観をさらに向上させる観点からは、図1に示すように、複数本の揮散体3を様々な方向に放射状に延びるように配置することがより好ましい。図1の例では、揮散体3は、容器2内に挿入され、下端部3aが底部10の周縁に接触した状態において、上端部3bが水平方向に容器2の胴部21の外側に位置するように、大きく広がって放射状に延びている。
【0022】
容器2の材質は特に限定されないが、例えば、ガラス製やプラスチック製とすることができる。薬液の残量を外部から視認できるようにする観点からは、容器2は、透明(半透明を含む)に形成されていることが好ましい。
【0023】
<3.揮散体>
揮散体3は、細長い棒状の部材であり、薬液を迅速に吸い上げることができるように、後述する特徴的な構造を有している。図2は、本実施形態に係る揮散体3の横断面図である。
【0024】
図2に示すように、揮散体3は、概ね円筒状であり、この円筒の外側表面30には、当該外側表面30から突出する多数の筋状の突起40が形成されている。なお、本実施形態に係る揮散体3は、任意の横断面における形状が、製造誤差による僅かなずれを除いて一致する。この筋状の突起40は、薬液の吸い上げ方向、すなわち、揮散体3の軸方向に沿って延びており、特に本実施形態では、下端部3aから上端部3bまで連続的に延びている。その結果、これらの多数の突起40間には、薬液の吸い上げ方向に延びる多数の筋状の微細溝S3が形成されている。なお、揮散体3の横断面の、突起40を除いた部分の外形は、円形でなくてもよく、楕円形とすることもできるし、三角形や四角形、六角形等の多角形とすることもできるし、星形等とすることもできる。
【0025】
微細溝S3は、容器2内から毛細管現象により薬液を吸い上げるルートとなる。これらの微細溝S3は、揮散体3の外側表面30に形成されているため、容器2内に配置される部分を除き、外部空間に対して露出している。そのため、揮散体3を容器2内に挿入したとき、薬液は揮散体3の外側表面30を伝って吸い上げられるとともに、外側表面30から外部空間へと迅速に自然蒸散する。これにより、薬液の効果に即効性が得られる。なお、ここでいう「迅速に」とは、従来のラタンを用いた場合に比較して速いという意味である。従って、ここでは、揮散体3を容器2内に挿入してから薬液が外部空間に充満し始めるまでに、主として数秒〜数分程度の時間を要することが想定されているが、これよりも長い時間を要することも想定され得る。
【0026】
また、本実施形態では、外側表面30には、異なる高さの突起40が形成される。図2の例では、外側表面30の周方向に沿って、2種類の高さの突起41,42が交互に配置されている。従って、本実施形態では、短い突起41の間に、高い突起42が散在している。その結果、隣接する低い突起41と高い突起42との間の周方向の間隔W1は、隣接する高い突起42,42間の周方向の間隔W2に比べて狭くなっている。また、本実施形態では、間隔W1は、5〜35℃の常温環境下において、突起41,42間の隙間に沿って毛細管現象により薬液を迅速に吸い上げることができる程度に狭い。これに対し、間隔W2は、突起42,42間の隙間に沿って同条件下で薬液を吸い上げることができない程度に広い。
【0027】
図3は、揮散体3の部分拡大横断面図である。以上の構成により、薬液は、突起40間において主として図3に斜線で示すような空間内を通って吸い上げられる。言い換えると、高い突起42,42間の空間のうち、主として短い突起41の頂点付近までの奥まった空間内のみを薬液が通過し、外部空間に近い空間は空き空間S4となる。その結果、揮散体3の容器2からの突出部分に手や壁やカーテン等が触れたとしても、このような他の物体に薬液が付着し難く、他の物体が薬液により汚れてしまう事態を防止することができる。
【0028】
また、上述の空き空間S4は、過剰に吸い上げられた薬液が容器2内へ戻るための戻りルートしても機能し得る。図4は、図2の揮散体3の別の部分拡大横断面図であり、容器2の首部23の高さ位置での断面図である。同図に示すように、首部23の内周面には高い突起42が接触することはあっても、低い突起41は接触することができないため、揮散体3と首部23の内周面との間には、少なくとも空き空間S4が形成される。従って、かかる空間S4により、過剰に吸い上げられた薬液が揮散体3に沿って容器2内へ戻るためのルートが確保され、首部23の外表面を伝って開口S1外へ薬液が漏れてしまう事態を防止することができる。
【0029】
以上の効果を発揮する観点からは、0mm<W1≦0.15mmであることが好ましく、0.15mm<W2であることが好ましい。
【0030】
また、短い方の突起41の外側表面30からの突出高さをH1としたとき、0.01mm≦H1となることが好ましい。また、突起42の外側表面30からの突出高さをH2としたとき、H1<H2であり、H2−H1≧0.15mmであることが好ましく、H2−H1≧0.2mmであることがより好ましく、H2−H1≧0.4mmであることがさらに好ましい。なお、H2が長い程、空き空間S4を広く確保することができる一方、H2が長すぎると、突起42が輸送中等に折れてしまい易くなる。しかしながら、以上の数値範囲を満たす場合には、空き空間S4を広く確保しつつ、輸送中等の破損の問題にも対処することができる。
【0031】
また、揮散体3の、突起40を除いた部分の断面径(外側表面30の断面径)をL1としたとき、1.5mm≦(L1+2H2)であることが好ましく、1.7mm≦(L1+2H2)であることがより好ましい。また、(L1+2H2)≦4.0mmであることが好ましく、(L1+2H2)≦3.5mmであることが好ましく、(L1+2H2)≦2.5mmであることがさらに好ましい。かかる数値範囲を満たす場合には、揮散体3が適度な細さを有し、美観を高めることができる。また、強度及び美観を総合的に考慮すると、(L1+2H2)=約2.0mmであることが最も好ましい。なお、ここでいう断面径とは、横断面の最大幅であり、横断面の外形が円形である場合には、直径であり、楕円形である場合には、長軸の長さであり、角型である場合には、最も長い対角線の長さである。すなわち、横断面の最大幅とは、横断面の図心を通る線分であって、横断面の外部輪郭線により分断される線分の長さの最大値である。
【0032】
本実施形態では、突起40は、横断面視において、断面の中心から概ね放射状に延びている。そのため、突起40間に形成される微細溝S3は、外側表面30側の底部からより外部空間側に向かって、徐々に拡幅している。その結果、微細溝S3内において、より内側の空間内で薬液を保持し易くなり、十分に広い空き空間S4を確保することが可能になる。
【0033】
揮散体3の内部には、軸方向に延びる微細な貫通口S5が形成されている。ただし、貫通口S5は、5〜35℃の常温環境下において、毛細管現象により薬液を吸い上げない程度のサイズの断面積を有することが好ましい。この場合、揮散体3は、貫通口S5内に薬液を保持することができないため、薬液の無駄がなくなるからである。かかる観点からは、貫通口S5の断面径をL2としたとき、L2>2.0mmであることが好ましい。なお、ここでいう断面径とは、L1の場合と同様に定義される。
【0034】
なお、揮散体3において貫通口S5は省略する、すなわち、揮散体3を中実の棒状の部材とすることもできる。ただし、揮散体3を押出し成形により製造する場合においては、通常、筒状の金型が使用される。この金型は、内部に軸方向に延びる空洞を有し、当該空洞の内壁に突起40に対応する多数の微細孔が軸方向に沿って延びている金型である。そして、このような金型を用いて揮散体3を精密に成形するためには、金型の空洞内に、全周方向に亘って空洞の内壁から一定の間隔を空けた状態で、棒状の金型部材を挿入することが好ましい。この場合、筒状の金型の空洞からも成形される揮散体3を効率的に冷却することができ、揮散体3の中心の芯材部分及び微細な突起の変形や潰れを防止することができるからである。揮散体3の貫通口S5は、このような方法で製造される場合に、筒状の金型の空洞内に挿入される棒状の金型に対応して形成され得る。その結果、揮散体3の材料を節約することもできる。
【0035】
本実施形態では、揮散体3は、ポリアセタール樹脂製である。この場合、押出し成形等により、上記のとおりの微細な構造を有する揮散体3を容易に製造することができる。また、ポリアセタール樹脂から形成される揮散体3は、実質的に内部に薬液が含浸しない。そのため、揮散体3が過剰に薬液を保持した状態になることがなく、容器2内から薬液がなくなると、揮散体3も直ちに保持している薬液を失う。従って、使用終期を容易に把握することができる。また、揮散体3の内部に薬液が含浸しないため、薬液の吸い上げ速度も増すことになる。なお、以上のような観点からは、揮散体3は、ポリアセタール樹脂製であることが好ましいが、これに限定されず、例えば、他の樹脂製とすることもでき、特に薬液が含浸されない材料のものとすることが好ましい。
【0036】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0037】
<4−1>
上記実施形態では、揮散体3は、棒状とされたが、板状であってもよい。
【0038】
<4−2>
揮散体3の横断面形状は、上述したものに限られず、例えば、図5図8に示されるような形状とすることができる。すなわち、図5の例のように、隣接する長い突起間に複数本の短い突起が形成されていてもよい。また、図5の例のように、突起の長さは、2種類でなく、3種類以上であってもよいし、図6の例のように、1種類のみであってもよい。図6の例の場合も、隣接する突起間の間隔を調整することにより、突起間の微細溝を薬液の吸い上げルートとして機能させることができる。また、突起の横断面形状は、直線状でなくてもよく、例えば、図7及び図8に示すように、Y字状とすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 薬液揮散器
2 容器
3 揮散体
3a 下端部
3b 上端部
30 外側表面
40 突起
41 短い突起(第1突起)
42 長い突起(第2突起)
S1 開口
S3 微細溝
S5 貫通口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8