特許第6960044号(P6960044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960044疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960044
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   C01B33/16
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-507008(P2020-507008)
(86)(22)【出願日】2019年2月14日
(65)【公表番号】特表2020-529961(P2020-529961A)
(43)【公表日】2020年10月15日
(86)【国際出願番号】KR2019001845
(87)【国際公開番号】WO2019160368
(87)【国際公開日】20190822
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0018623
(32)【優先日】2018年2月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン−フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チェ−キュン
(72)【発明者】
【氏名】オ、ミョン−ウン
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−144828(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0093063(KR,A)
【文献】 特表2020−504070(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0035712(KR,A)
【文献】 特表2018−511663(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03053952(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0225003(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02927194(EP,A1)
【文献】 特開2012−172378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
F16L 59/00 − 59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)無機酸に水ガラス溶液を添加して水ガラス分散液を準備する段階;
2)反応器に前記水ガラス分散液、表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加し反応させてゲル化反応、表面改質及び溶媒置換を同時に遂行して溶媒置換された疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造する段階;及び
3)前記溶媒置換された疎水性のシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階を含み、
前記溶媒置換は、気孔が水で満たされたシリカ湿潤ゲルの水を非極性有機溶媒に置換することであり、
前記非極性有機溶媒は、前記気孔が水で満たされたシリカ湿潤ゲルの体積を基準に83体積%超過97体積%以下で添加する、疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記非極性有機溶媒は、前記気孔が水で満たされたシリカ湿潤ゲルの体積を基準に85体積%乃至97体積%で添加する、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項3】
前記非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン及びキシレンからなる群から選択された1種以上である、請求項1又は2に記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項4】
前記非極性有機溶媒は、ヘプタンである、請求項1乃至3のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項5】
前記無機酸は、水ガラス溶液内の水ガラス(Na2SiO3に対して1乃至3のモル比で添加する、請求項1乃至4のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項6】
前記無機酸は、硝酸、塩酸、硫酸及びフッ酸からなる群から選択された1種以上である、請求項1乃至5のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記表面改質剤は、トリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランからなる群から選択された1種以上である、請求項1乃至6のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項8】
前記表面改質剤は、水ガラス分散液内の水ガラス(Na2SiO3に対して表面改質剤が0.1乃至10のモル比となる量で添加する、請求項1乃至7のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項9】
前記段階3)の乾燥は、100℃乃至190℃の温度条件下で、1時間乃至8時間常圧乾燥して行う、請求項1乃至8のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項10】
前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、比表面積が600m2/g乃至1,000m2/gである、請求項1乃至9のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項11】
前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、シリカエアロゲル粒子が物理的な結合で凝集されたものである、請求項1乃至10のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【請求項12】
前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、平均粒径(D50)が0.1乃至2.5cmである、請求項1乃至11のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2018年2月14日付韓国特許出願10−2018−0018623号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、飛散性が抑制された疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、90〜99.9%程度の気孔率と1〜100nm範囲の気孔サイズを有する超多孔性の高比表面積(≧600m2/g)の物質であって、優れた超軽量/超断熱/超低誘電などの特性を有する材料であるため、エアロゲル素材の開発研究はもちろん、透明断熱材及び環境に優しい高温型断熱材、高集積素子用極低誘電薄膜、触媒及び触媒担体、スーパーキャパシタ用電極、海水淡水化用電極材料としての応用研究も活発に進められている。
【0004】
エアロゲルの最も大きい長所は、従来の発泡スチロールなどの有機断熱材より低い0.300W/m・K以下の熱伝導率を示すスーパー断熱性(super−insulation)である。また、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガスの発生とを解決することができる。
【0005】
一般的にエアロゲルは、水ガラス、TEOSなどのシリカ前駆体から湿潤ゲルを製造し、湿潤ゲルの内部の液体成分を微細構造の破壊なしに除去して製造される。代表的なシリカエアロゲルの形態は、粉末、顆粒、モノリスの三種類に分けることができ、一般的には粉末の形態で製造される。
【0006】
粉末の場合、繊維と複合化してエアロゲルブランケット(blanket)またはエアロゲルシート(sheet)などのような形態への製品化が可能であり、ブランケットまたはシートの場合、柔軟性を有しているので、任意の大きさや形態に曲げたり、折ったり、切ったりすることができる。よって、LNG船の断熱パネル、工業用断熱材と宇宙服、交通及び車両、電力生産用断熱材などのような工業用への応用だけでなく、ジャケットや運動靴類などのような生活用品にも適用が可能である。また、アパートのような住宅で屋根や床だけでなく、防火戸でシリカエアロゲルを使用する場合、火災の予防に大きな効果がある。
【0007】
しかし、シリカエアロゲル粉末は、高い多孔性と非常に低いタップ密度及び小さい粒子の大きさによって飛散されるので、取り扱いが難しく、充填も容易でないという短所を有している。
【0008】
また、モノリスの場合、可視光線領域に対して高い透明度を有しているが、製造可能な大きさが制限的であり、多様な形態に成形しにくく簡単に割れるという短所がある。
【0009】
前記のようなシリカエアロゲル粉末とモノリス形態の短所を解決するために、大きさが0.5mm以上となるシリカエアロゲル顆粒を製造することで、取り扱い容易性と形状対応性を高めようとする試みが行われてきた。一例として、アルコキシシランを加水分解した反応溶液を前駆体として製造した後、触媒とともに縮重合反応してゲル化し、疎水化剤と反応させて疎水化処理した後、超臨界乾燥して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を得る方法;付加剤、添加剤及び結合剤を付加したエアロゲル粒子を成形装置に供給し圧縮してシリカエアロゲル顆粒を製造する方法などがあり、前記のように従来には化学的結合を用いて顆粒剤形を製造する方法が提示されてきた。
【0010】
しかし、前記のように化学的結合を用いる顆粒化方法は、付随的な顆粒化装置及び結合剤のような添加剤を用いるので、技術的に複雑な工程と長い工程時間が要求されるという短所があるだけなく、前記のような方法でシリカエアロゲルを大量生産する場合には、複雑な処理手続きと多くの投資コストがかかり、結果として多くの時間と高価の化学物質が要求され、それによって生産単価が上昇するという問題があるだけなく、最終的に得られるシリカエアロゲルの粒子の大きさが均一ではないか、大きすぎるという短所がある。
【0011】
また、化学的結合を介して顆粒を形成するので、一般的に用いられる粉末状態で作製するためには、他の化学的反応を用いて内部結合を壊すしかないところ、追加の設備などが必要な高費用の工程が追加されなければならないので、粉末状態に変更することが容易でなく、用途が制限的であるという短所がある。
【0012】
前記のような背景下で、本発明者等は、粉末の短所を補完して取り扱い容易性と形状対応性を改善しながらも、必要な場合は単なる粉砕工程だけでも粉末として利用できるよう、物理的結合を用いて顆粒化することのできるシリカエアロゲル顆粒の製造方法を研究しており、水ガラスの分散液に表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加するにおいて、非極性有機溶媒の添加量を調節して反応させることで、粉末に変更することが容易であるとともに、飛散性が抑制されたシリカエアロゲル顆粒が得られることを確認することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】KR2001−0012153A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、非極性の有機溶媒の添加量を用いて表面改質反応を容易に調節することで、飛散性が抑制された疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の他の目的は、前記製造方法で製造された疎水性のシリカエアロゲル顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明は、1)無機酸に水ガラス溶液を添加して水ガラス分散液を準備する段階;2)反応器に前記水ガラス分散液、表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造する段階;及び3)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階を含み、前記非極性有機溶媒は、前記シリカ湿潤ゲルの体積を基準に83体積%超過100体積%未満で添加する、疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法は、表面改質、ゲル化及び溶媒置換を一つの段階で同時に行うことができるので、製造時間が短く、かつ生産性及び経済性に優れ、飛散性が低いので取り扱いが容易である疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造することができる。
【0018】
また、本発明に係る疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法は、比表面積が低下することなく、産業的利用性の側面において超多孔性を発現することができる程度の水準を維持しながらも、飛散性が抑制された顆粒剤形で製造されるので、取り扱いが容易であり、加工性に優れ、他の素材等と混合物を形成する際に優れた加工性で工程効率を向上させ得る疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造することができる。
【0019】
また、本発明に係る疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法は、物理的結合で顆粒を形成することによって、粉末剤形への変更が容易であり、顆粒または粉末が適用され得る分野に全て適用が可能なので、優れた産業的応用性を有する疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書の次の図面は本発明の具体的な実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明は、かかる図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
図1】本発明の実施例1のシリカエアロゲル顆粒を撮影した写真である。
図2】本発明の比較例1のシリカエアロゲル粉末を撮影した写真である。
図3】本発明の実施例2のシリカエアロゲル顆粒の時間による体積の変化を示す写真である。
図4】本発明の比較例1のシリカエアロゲル粉末の時間による体積の変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をさらに詳しく説明する。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0023】
本発明は、飛散性が抑制された疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法を提供する。
【0024】
一般的に水ガラスを用いて製造されたシリカ湿潤ゲルは、気孔が溶媒である水で満たされた形態を取っており、前記溶媒を単に乾燥して除去するようになれば、液状の溶媒が気相に気化しながら気/液界面での水の高い表面張力によって気孔構造の収縮及び亀裂が発生しやすく、これによる表面積の減少及び気孔構造の変化を起こすこととなる。したがって、前記湿潤ゲルの気孔構造を維持するためには、表面張力の大きい水を相対的に表面張力の低い有機溶媒に置換する必要があるだけなく、前記湿潤ゲルの構造をそのまま維持したままで、収縮なしに湿潤ゲルを洗浄して乾燥させ得る技術が必要である。
【0025】
また、乾燥されたシリカエアロゲルは、乾燥直後には低い熱伝導率を維持するが、シリカ表面のシラノール基(Si−OH)の親水性のため、空気中の水を吸収することとなり、熱伝導率が徐々に高くなるという短所がある。したがって、低い熱伝導率を維持するためには、シリカエアロゲルの表面を疎水性に改質する必要がある。よって、表面改質剤を用いてシリカエアロゲルの表面を疎水性に改質する方法が用いられている。
【0026】
さらに、前記のような疎水性シリカエアロゲルは、一般的に粉末形態で製造されるが、シリカエアロゲル粉末は、高い多孔性と非常に低いタップ密度及び小さな粒子大きさによって飛散性が大きいため、加工及び取り扱いが難しく、他の素材等との混和時に飛散性、低密度性によって加工性及び工程効率が落ちるという短所を有している。
【0027】
本発明における取り扱い容易性は、飛散性に影響を受ける物性であって、飛散性が大きい場合、一例としてシリカエアロゲルを保管、運送する際に、シリカエアロゲルが空気中に飛散されるため、最初に保管または運送する際の容量と時間が経過した後の容量とが変化する問題が発生することがあり、また、成形品として加工する際、正確に計量して目的とする量を投入したにもかかわらず、飛散性によって目的量が投入されず、要求する物性の成形品を製造するのに困難があり、製造される成形品ごとに物性が変化するので、生産安定性を確保できないこともある。本発明では、このような現象等を全て取り扱い容易性を判断する尺度として考慮しており、前記例示のような場合、取り扱い容易性が低いものとみることができる。また、取り扱い容易性は、前記例示に限定されるものではなく、飛散性によってシリカエアロゲルを活用する側面において変数となる現象等は、全て取り扱い容易性を判断する尺度となり得る。
【0028】
よって、本発明は、シリカエアロゲルの優れた気孔構造と疎水性を有しながらも、飛散性が抑制された疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、1)無機酸に水ガラス溶液を添加して水ガラス分散液を準備する段階;2)前記水ガラス分散液に表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加して反応させ、疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造する段階;及び3)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階を含み、前記非極性有機溶媒は、前記シリカ湿潤ゲルの体積を基準に83体積%超過100体積%未満で添加することを含む。
【0030】
[段階1]
前記段階1は、水ガラス分散液を製造するための段階であって、無機酸に水ガラス溶液を添加して水ガラス分散液を製造することができる。
【0031】
具体的に、前記水ガラス分散液は、無機酸に水ガラス溶液を添加し混合して製造された水ガラス溶液及び無機酸の混合物であってよい。このとき、前記水ガラス分散液は、無機酸を水ガラス溶液内の水ガラスに対して1乃至3、好ましくは1.1乃至2.5、より好ましくは1.2乃至2.3のモル比で含むものであってよい。前記数値範囲を満たす場合、段階2で円滑なゲル化反応が誘導され得るように適切なpH環境が造成され得る。また、前記数値範囲を満たす場合、無機酸が水ガラスに対してあまり低い比率で含まれることにより発生し得る問題、すなわち水ガラス分散液内のpHが高いため、段階1の水ガラス分散液内でゲル化反応が先に行われる問題を防止することができ、無機酸が水ガラスに対してあまり高い比率で含まれることにより発生し得る問題、すなわち水ガラス分散液のpHが非常に低く形成され、段階2でゲル化反応が誘導される程度にpHが上昇できないため、ゲル化反応が円滑に行われない問題を予防することができる。
【0032】
前記水ガラス溶液は、水ガラスに蒸留水を添加して混合した希釈溶液であってよく、前記水ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)とアルカリを融解して得た珪酸アルカリ塩であるケイ酸ナトリウム(Sodium silicate,Na2SiO3)であってよい。
【0033】
前記水ガラス分散液は、二酸化ケイ素(SiO2)を1重量%乃至11重量%で含有しているものであってよい。水ガラス分散液内の二酸化ケイ素が前記範囲を満たす場合、ゲル化反応時にシリカエアロゲルがきちんと形成されるほど二酸化ケイ素の含量が十分であり、気孔の比率が高くなり得るので、比表面積がさらに改善され得る。
【0034】
前記無機酸は、水ガラス分散液内で水ガラス溶液内の二酸化ケイ素とともに混合されてから、後述する表面改質剤溶液内の表面改質剤と反応して表面改質剤の分解を活性化させる役割をするものであり、前記表面改質剤の分解によるアンモニアの生成が増加することができる。前記アンモニアは、反応器内のpHを上昇させて塩基性環境を造成することでゲル化を誘導することができる。また、表面改質剤の分解が活性化されることによって表面改質反応が促進されるという利点がある。前記無機酸は、特に制限されるものではないが、例えば、硝酸、塩酸、硫酸及びフッ酸からなる群から選択された1種以上のものであってよい。具体的には硝酸であってよい。
【0035】
また、前記水ガラス分散液は、pHが0.1乃至4であるものであってよい。
【0036】
[段階2]
前記段階2は、疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造するための段階であって、反応器に前記水ガラス分散液、表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加して反応させて行ってよい。具体的に、反応器に前記水ガラス分散液、表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加して反応させ、疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造することができる。
【0037】
ここで、前記非極性有機溶媒は、前記シリカ湿潤ゲルの体積を基準(100体積%)に83体積%超過100体積%未満で添加されるものであってよく、好ましくは85体積%乃至97体積%、より好ましくは92体積%乃至97体積%、さらに好ましくは95体積%乃至97体積%の量で添加されるものであってよい。
【0038】
前記非極性有機溶媒が、前記シリカ湿潤ゲルの体積を基準に83体積%以下で投入される場合には、非極性有機溶媒の量が製造されるシリカ湿潤ゲルの体積に対してあまり少ないため溶媒置換が円滑に行われないことがあり、これによってシリカ湿潤ゲルに水分が多く存在することとなり、乾燥時に水分の除去による収縮現象が発生するので、シリカエアロゲルが有する気孔特性及び比表面積などの物性が顕著に低下する問題が発生し得る。また、前記非極性有機溶媒が前記水ガラス溶液の体積を基準に100体積%以上で投入される場合には、溶媒置換が活発に行われることによって、湿潤ゲルの内部に存在する水分が殆ど除去される。よって、乾燥時にシリカ湿潤ゲルの空隙内の水分の蒸発によって行われるシリカ湿潤ゲル粒子等の凝縮現象が発生せず、製造される疎水性のシリカエアロゲルの剤形が粉末剤形に合成されるため、飛散性が大きく、加工時に工程効率が落ちる問題が発生し得る。
【0039】
これとは異なり、本発明では、非極性有機溶媒の添加量を前記数値範囲内に満たすことにより、乾燥時に収縮現象が緩和され、産業的利用性を満たし得る水準の比表面積を確保し、気孔特性が低下しないとともに、シリカ湿潤ゲルの空隙内の一部存在する水分が蒸発する際に発生する毛細管力(capillary pressure)により、周囲に存在するシリカ湿潤ゲル粒子を引き寄せることができるので、乾燥後にシリカエアロゲル粒子が自発的な力により物理的に結合された顆粒剤形のシリカエアロゲルを製造することができる。
【0040】
前記水ガラス分散液と表面改質剤及び非極性有機溶媒は、反応器に同時に投入されてもよく、順次投入されてもよく、順次投入される場合、特に制限されるものではないが、反応器に水ガラス分散液を添加した後、表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加して反応させるものであってよい。
【0041】
具体的に、前記表面改質剤及び非極性有機溶媒は、水ガラス分散液を反応器に添加した後、前記反応器内の温度が25℃乃至95℃に到逹した時点に添加するものであってよい。すなわち、反応器に水ガラス分散液を添加した後、反応器内の温度を前記範囲に上昇させた後に、前記表面改質剤及び非極性有機溶媒を添加して反応を行うものであってよい。このとき、前記反応器は、撹拌機がある反応器であってよく、前記反応は、撹拌しながら行うものであってよい。前記撹拌は、特に制限されるものではないが、例えば50rpm乃至700rpmの速度で撹拌させるものであってよい。
【0042】
また、前記表面改質剤及び非極性有機溶媒は、反応器に投入される前に先に撹拌させて混合液の形態で準備して反応器に添加するものであってよい。具体的に、非極性有機溶媒に表面改質剤を添加し混合して製造されたものを反応器に添加するものであってよく、このとき、前記表面改質剤及び非極性有機溶媒の混合液のうち表面改質剤の濃度は、0.1M乃至4.0Mであってよい。すなわち、前記表面改質剤及び非極性有機溶媒の混合液は、非極性有機溶媒に表面改質剤を0.1M乃至4.0Mとなる量で添加した後、混合して製造されたものであってよい。
【0043】
また、前記表面改質剤は、水ガラス分散液内の水ガラスに対して表面改質剤が0.1乃至10、好ましくは0.1乃至5、より好ましくは0.3乃至3のモル比となる量で添加するものであってよい。水ガラスに対して表面改質剤の量が前記範囲を満たすとき、水ガラス分散液内のシラノール基(Si−OH)と反応できる表面改質剤の量が十分であるため、表面改質反応性がさらに改善され得、表面改質(疎水化)が容易に行われ、よって乾燥時に縮合反応を抑制して最終生成されるシリカエアロゲルの気孔大きさがさらに改善され、多孔性を実現することができる。また、表面改質剤を適正量使用することによって、高価の表面改質剤が浪費されて経済性が低下する問題を防止することができる。
【0044】
前記表面改質剤は、トリメチルクロロシラン(Trimethylchlorosilane,TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(Hexamethyldisilazane,HMDS)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、トリメチルエトキシシラン(trimethylethoxysilane)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)、及びフェニルトリエトキシシラン(phenyltriethoxysilane)からなる群から選択された1種以上のものであってよく、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane,HMDS)であってよい。
【0045】
本発明では、前記のように表面改質剤を用いた表面改質反応を行って製造されたシリカエアロゲルは、表面改質剤を用いずにシリカ前駆体として疎水性基を有するメチルシリケートなどを用いて製造したシリカエアロゲルに比べて、ゲル構造の強度が優れることがある。具体的に、メチルシリケートのようにシランに一つのメチル基(疎水化基)を有する前駆体の場合、ゲル化反応時にメチル基を除いた反応位置(site)だけ網状構造のシリカ構造体を成し、反応位置(site)として機能しないメチル基は、網状構造のシリカ構造体をなさずに表面に露出するため、相対的に疎水化基または非活性置換基を含まずに相対的にさらに多い反応位置(site)を含むTMOS、TEOS、水ガラスなどをシリカ前駆体として適用したシリカエアロゲルに比べて、製造されるゲルの構造強度が弱いことがある。
【0046】
前記非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン及びキシレンからなる群から選択された1種以上のものであってよく、好ましくは水との相溶性(compatibility)が非常に低いヘプタンであってよい。また、前記ヘプタンは、直鎖状または分枝状であってよく、特に制限されるものではないが、好ましくは水との低い相溶性を考慮したとき、直鎖状であるn−ヘプタンであってよい。
【0047】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、前記水ガラス分散液と表面改質剤及び非極性有機溶媒を反応させてゲル化反応を行うとともに、表面改質及び溶媒置換を行うことができ、よって本発明の製造方法は製造時間が短いので、生産性及び経済性に優れる。
【0048】
具体的に、前記製造方法は、無機酸を含む水ガラス分散液と表面改質剤及び非極性有機溶媒を混合して反応させることで、前記無機酸によって表面改質剤の分解が活性化され得、前記表面改質剤の分解によるアンモニアの生成が増加することができる。前記アンモニアは、反応器内のpHを上昇させて塩基性環境を組成してゲル化を誘導することができる。また、表面改質剤の分解が活性化されることによって表面改質反応が促進されるという利点がある。また、前記非極性有機溶媒によって表面改質反応及びゲル化を進めながら溶媒置換が行われてよい。このようにゲル化、表面改質及び溶媒置換が同時に行われる場合、ゲル化以後に表面改質及び溶媒置換が順次行われる工程に比べて、表面改質反応効率が高いので、高い疎水性を有するシリカエアロゲルを製造することができるという利点もあり得る。
【0049】
ここで、ゲル化が誘導されるpHは、4.1乃至10であってよく、好ましくは4.1乃至8であってよい。
【0050】
また、本発明において、ゲル化は、シリカ前駆体物質から網状構造(network structure)が形成され、シリカ湿潤ゲルを形成するものであり、網状構造とは、原子配列が1種あるいはそれ以上の種類からなっているある特定の多角形が繋がっている平面網状の構造、または特定の多面体の頂点、角、面を共有して3次元骨格構造を形成している構造を示すものであってよい。
【0051】
[段階3]
前記段階3は、疎水性のシリカエアロゲルを製造するために、前記疎水性のシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階である。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、溶媒置換以後に残留する水溶液層を排出させる段階をさらに含むことができ、このとき、水溶液層とともに不純物等を排出させることができる。よって、洗浄工程を必須として含まないので、工程効率が改善されるという利点がある。
【0053】
しかし、本発明において、前記乾燥前に洗浄する段階を行うことを排除するものではなく、本発明の一実施形態によれば、必要に応じて不純物の除去効率をさらに改善するために、前記乾燥前に洗浄する段階をさらに行ってよい。
【0054】
前記洗浄は、反応中に発生した不純物(ナトリウムイオン、未反応物、副産物など)を除去し、高純度の疎水性のシリカエアロゲルを得るためのものであって、非極性有機溶媒を用いた希釈工程または交換工程で行ってよい。
【0055】
具体的に、前記希釈工程は、溶媒希釈工程を示すものであってよく、前記疎水性のシリカ湿潤ゲルが製造された反応器に非極性有機溶媒を更に添加し反応器内の非極性有機溶媒が過量存在するようにして行うものであってよい。また、前記交換工程は、溶媒交換工程を示すものであってよく、前記段階2の反応後に反応器内の水溶液層を排出させた後、非極性有機溶媒を投入して再び分離された水溶液層を排出させる過程を数回繰り返して行うものであってよい。
【0056】
より具体的に本発明の一実施形態による製造方法は、前記シリカ湿潤ゲルに更に非極性有機溶媒を添加し、20分乃至1時間撹拌して行うものであってよい。
【0057】
本発明の一実施形態による製造方法の前記乾燥段階は、超臨界乾燥工程または常圧乾燥工程によるものであってよいが、より具体的には100乃至190℃、好ましくは140乃至170℃の温度条件下で常圧乾燥工程によって行われるものであってよく、乾燥時間は、反応物の量、乾燥温度に応じて適宜調節が可能であるが、好ましくは1乃至8時間、より好ましくは4乃至8時間常圧乾燥工程によって行うものであってよい。
【0058】
ここで、常圧は、特に圧力を減らすか、高めない際の圧力を意味するものであって、大気圧(1±0.3気圧)と同一の圧力を意味するものであってよい。
【0059】
前記乾燥温度を満たす場合、乾燥効率がよく、乾燥後に優れた物性、特に優れた気孔特性を有するシリカエアロゲルが形成され得る。
【0060】
したがって、本発明の製造方法は、高価の高圧装置が必要ではないので、既存の超臨界工程に比べて少ない製造費用で短い時間の間乾燥させることができ、シリカエアロゲルの生産性及び経済性を高めることができるという利点がある。
【0061】
一方、常圧乾燥工程による場合、高い毛細管力と溶媒抽出速度の差によって気孔構造の収縮及び亀裂が発生しやすいという短所があり得るが、本発明の製造方法によって製造されたシリカエアロゲルは、湿潤ゲルの構造をそのまま維持したままで、粒子が互いに凝集された形態で製造されることによって、シリカエアロゲルの物性を悪化させる収縮現象を顕著に緩和させて湿潤ゲルを乾燥させることができるところ、前記常圧乾燥工程の短所も解決することができるという点で意義が大きい。
【0062】
また、本発明は、前記製造方法によって製造された疎水性のシリカエアロゲル顆粒を提供する。前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、シリカエアロゲル粒子が物理的な結合で凝集されたものであってよい。
【0063】
すなわち、本発明において、「シリカエアロゲル顆粒」は、シリカエアロゲルの1次粒子等が互いに自発的に凝集された形態の2次粒子を意味するものであって、前記1次粒子等が物理的な結合で凝縮されていることを意味する。また、本発明において、前記シリカエアロゲル顆粒は、平均粒径(D50)が0.1cm以上のものであり、「シリカエアロゲルの粒子集合体」と称することができる。
【0064】
また、本発明において、前記「シリカエアロゲルの1次粒子」は、互いに独立して存在するそれぞれのシリカエアロゲル単独粒子を意味するものであってよく、粉末(powder)を成す粒子を意味するものであってよい。
【0065】
また、本発明において、前記「シリカエアロゲルの2次粒子」は、前記シリカエアロゲル1次粒子等が自発的に凝縮されて形成される粒子であって、シリカエアロゲル1次粒子等が凝縮された集合体であってよく、本発明で定義されたシリカエアロゲル顆粒を意味するものであってよい。
【0066】
また、本発明においてシリカエアロゲル「粉末」は、前記1次粒子からなる剤形を意味するものであって、平均粒径(D50)が0.1cm未満のものであってよい。
【0067】
このように本発明の製造方法によって製造されるシリカエアロゲル顆粒は、物理的な結合により互いに凝集されている構造なので、顆粒を粉末剤形で作製するとき、別途の化学的工程が追加されることなく、単なる粉砕工程だけでも容易に粉末剤形で作製することができるので、実際に顆粒または粉末が適用される全ての産業分野で容易に使用され得るところ、産業的応用性に優れるという利点がある。
【0068】
本発明の一実施形態による前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、比表面積が600m2/g乃至1,000m2/g、好ましくは640m2/g乃至800m2/gであることを特徴とし、平均粒径(D50)が0.1乃至2.5cm、好ましくは0.5乃至2.5cm、さらに好ましくは1.0乃至2.5cmであることを特徴とする。すなわち、本発明は、比表面積及び平均粒径が前記数値範囲を満たす疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造することができる製造方法を提供する。
【0069】
本発明における平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、個数累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。
【0070】
また、本発明は、疎水性のシリカエアロゲルが粉末ではなく顆粒剤形で製造され得るので、飛散性が抑制され、粉末剤形の短所である飛散性による加工性の低下及び工程効率の低下を改善することができるという効果がある。
【0071】
このように、本発明の一実施形態による前記疎水性のシリカエアロゲル顆粒の製造方法は、表面改質、ゲル化、溶媒置換工程を一回に行うことができる。このとき、添加される非極性有機溶媒の量を調節して反応させることで、粉末剤形ではなく顆粒剤形の疎水性シリカエアロゲルを製造することができるところ、従来の製造方法に比べて生産性に優れ、飛散性が低いので、取り扱い容易性が改善されることができる。また、多様な素材等との混和時にシリカエアロゲルの粉末が有する飛散性及び低密度特性による加工性低下の問題が改善され、優れた工程効率を有することができる。
【0072】
また、本発明の一実施形態による疎水性のシリカエアロゲル顆粒は、シリカエアロゲル粒子等が物理的な結合で顆粒を形成するものであって、別途の化学的な分解反応や高価の装備なしにMill装備を用いた単なる粉砕工程だけでも粉末剤形で作製することができるので、関連産業分野での広範囲な活用が行われ得る。
【0073】
以下、実施例及び実験例によって本発明をさらに詳しく説明する。しかし、下記実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであって、これらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
硝酸8gを予め準備しておき、14.1gの水ガラスが含まれた水ガラス溶液100mlを、先に準備しておいた硝酸に徐々に注いで水ガラス分散液を準備した。55℃の反応器に水ガラス分散液を入れて温度を維持しながら撹拌させた。ここで製造された水ガラス分散液内の二酸化ケイ素(SiO2)は4重量%であった。それ以後、n−ヘプタンにヘキサメチルジシラザン(HMDS)9gを添加し撹拌させて混ぜた後、水ガラス分散液が投入された前記反応器に添加して反応を進めさせて疎水性のシリカ湿潤ゲルを製造した。このとき、n−ヘプタンは、シリカ湿潤ゲルの体積に対して97体積%となる量を添加した。製造された疎水性のシリカ湿潤ゲルがヘプタン層に完全に浮び上がると、反応器の下部に残っている水溶液層を反応器排出口を用いて排出させ、2時間後にヘプタン層に分散されている疎水性のシリカ湿潤ゲルも回収し、150℃の強制循環乾燥器で5時間完全乾燥させることで、疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0075】
(実施例2)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して95体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0076】
(実施例3)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して92体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0077】
(実施例4)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して90体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0078】
(実施例5)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して87体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0079】
(実施例6)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して85体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0080】
(比較例1)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して110体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル粉末を製造した。
【0081】
(比較例2)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して105体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル粉末を製造した。
【0082】
(比較例3)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して100体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル粉末を製造した。
【0083】
(比較例4)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して83体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0084】
(比較例5)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して80体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0085】
(比較例6)
n−ヘプタンをシリカ湿潤ゲルの体積に対して75体積%となる量を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して疎水性のシリカエアロゲル顆粒を製造した。
【0086】
(実験例)
前記実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例6で製造した各疎水性のシリカエアロゲルの物性の比較分析のために、比表面積(BET、m2/g)、平均粒径(D50)及び見掛密度(3秒及び1時間)を測定した。その結果を下記表1に示した。
【0087】
1)比表面積(BET、m2/g)
比表面積は、3FLEX装置(Micrometrics社)を用いて部分圧(0<p/p0<1)による窒素の吸/脱着量で分析した。
【0088】
具体的に、シリンダーに各製造されたシリカエアロゲル100mgを入れて200℃で8時間真空状態で内部の水分を完全に除去した後、前記比表面積測定装置を用いて測定した。
【0089】
2)平均粒径(D50)の測定
実施例1乃至6及び比較例4乃至6のシリカエアロゲル顆粒は、約50個の顆粒の粒径を直接測定してその平均値を算出しており、比較例1乃至3のシリカエアロゲル粉末は、粒度分布測定器(Microtrac,S3500)を用いて平均粒径を測定した。
【0090】
3)見掛密度(g/ml)の測定
実施例1乃至6及び比較例1乃至6のシリカエアロゲル顆粒またはシリカエアロゲル粉末を25ml(1ml間隔)のメスシリンダーに投入した後、3秒が経過した際の見掛密度と1時間放置した以後の見掛密度とをそれぞれ測定した。このとき、投入量は、シリカエアロゲル顆粒及び粉末が投入後3秒となる時点に体積が23±2mlとなる量を投入しており、見掛密度は、メスシリンダーに投入した質量に対する体積を測定して算出した。
【0091】
また、実施例2のシリカエアロゲル顆粒及び比較例1のシリカエアロゲル粉末の時間経過による体積変化を示すメスシリンダー写真を、それぞれ図3及び図4に示した。
【0092】
4)見掛密度変化率(%)の測定
3)で測定された3秒経過後の見掛密度及び1時間経過後の見掛密度を用いて、下記数式1から見掛密度変化率を測定した。見掛密度変化率が少ないほど、飛散性が低いことを示す。
【0093】
【数1】
【0094】
【表1】
【0095】
前記表1に示すように、本発明の一実施形態による製造方法によって製造された実施例1乃至実施例6は、平均粒径が0.1cm以上であり、粒子等が互いに物理的に凝縮されて大きい粒子(集合体)を形成するものと確認されるところ、シリカエアロゲル顆粒で製造されたことが確認できる。これとは異なり、比較例1乃至3は、平均粒径がそれぞれ37μm、42μm、45μmで全てμm水準の小さな数値であり、平均粒径が0.1cmにはならず、粒子等が独立して存在するシリカエアロゲル粉末で製造されたことが確認でき、比較例4乃至6は、平均粒径が0.1cm以上であって、本発明と同様に顆粒で製造されたことが確認できる。
【0096】
これは、図1及び図2を介しても確認できるが、実施例1のシリカエアロゲルを撮影した図1では、シリカエアロゲルが顆粒剤形を有することを明確に示しており、比較例1のシリカエアロゲルを撮影した図2は、シリカエアロゲルが粉末剤形を有することを示している。
【0097】
また、飛散性の程度を示すために、一定時間経過後の見掛密度の変化を測定して前記表1に示しており、シリカエアロゲル顆粒が製造された実施例1乃至6及び比較例4乃至6は、3秒経過後のシリカエアロゲルの見掛密度に比べて、1時間経過後のシリカエアロゲルの見掛密度に変化がないことが確認でき、これから飛散性が抑制されたシリカエアロゲル顆粒が製造されたことが確認できる。また、比較例1乃至3は、3秒経過後のシリカエアロゲルの見掛密度に比べて、1時間経過後のシリカエアロゲルの見掛密度の変化が示され、変化率が顕著に大きいことが確認でき、これから比較例1乃至3は、飛散性の高いシリカエアロゲル粉末が製造されたことが確認できる。
【0098】
これは、図3及び図4を介しても確認することができ、図3の実施例2は、時間が経過しても体積変化を示さないことが確認でき、図4の比較例1は、時間が経過することによって体積が顕著に小さくなることが確認できる。
【0099】
また、実施例1乃至6は、粉末剤形である比較例1乃至3と比べても比表面積が低下せず、優れた水準の比表面積を維持することが確認でき、同一の顆粒剤形である比較例4乃至6に比べては、遥かに高い比表面積を有することが確認できる。
【0100】
一方、非極性有機溶媒であるn−ヘプタンを過量で投入した比較例1乃至3の場合には、比表面積は実施例1乃至6と類似の水準で維持されるが、前述したように顆粒剤形のシリカエアロゲルを製造することができないことが確認できる。すなわち、比較例1乃至3で製造された疎水性のシリカエアロゲル粉末の飛散性を抑制し、取り扱い容易性、加工性を向上させるために顆粒形態で作製するには、追加の結合剤、添加剤などを用いて顆粒化させる工程が別に必要であるという短所がある。
【0101】
また、非極性有機溶媒であるn−ヘプタンを本発明の実施範囲より少ない量で投入した比較例4乃至6の場合には、顆粒状のシリカエアロゲルが製造されるが、比表面積が顕著に落ちることが確認できる。
【0102】
前記の結果は、本発明の一実施形態による製造方法は、非極性有機溶媒の添加量を調節することで、製造されるシリカエアロゲルの剤形、及び物性を調節することができることを示すものであり、よって本発明の一実施形態による製造方法を介して製造されたシリカエアロゲルは、比表面積が低下しないながらも、顆粒の形態で製造されることが確認できる。
図1
図2
図3
図4