特許第6960076号(P6960076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960076
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】同時送受信用アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20211025BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20211025BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20211025BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01P5/12 G
   H01Q21/08
   H04B7/06 152
   H04B7/08 422
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-40962(P2017-40962)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-148370(P2018-148370A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年3月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、「新たな周波数リソースを必要としない同時送受信システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳之
(72)【発明者】
【氏名】陳 強
(72)【発明者】
【氏名】袁 巧微
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−244224(JP,A)
【文献】 米国特許第06252560(US,B1)
【文献】 特開2002−076742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/00− 5/22
H01Q 21/00− 25/04
H04B 7/06
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アレーアンテナと、
等間隔かつ直線的に配列した複数のアンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
前記受信アレーアンテナまたは送信アンテナに接続されるアナログ給電回路からなる同時送受信用アレーアンテナであって、
前記送信アンテナと前記受信アレーアンテナは互いにエンドファイア方向となる位置関係に配置され、
前記アナログ給電回路は入力が2ポートで出力が2ポートであり、出力位相差が所定の値となる方向性結合器であるハイブリッド回路を複数用いて多段に構成されており、
初段のハイブリッド回路のそれぞれの2つの入力ポートはアレーアンテナを構成する2つのアンテナ素子対に接続され、前記初段のハイブリッド回路それぞれの2つの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに他方の出力ポートは二段目ハイブリッド回路に接続され、
前記二段目のハイブリッド回路のそれぞれの2つの入力ポートは前記初段の2つのハイブリッド回路のそれぞれの出力ポートの片方と接続されるとともに、前記二段目のハイブリッド回路それぞれの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに、前記二段目のハイブリッド回路が複数存在する場合は他方の出力ポートは三段目のハイブリッド回路に接続され、
前記二段目と同様にハイブリッド回路多段接続を繰り返したのち最終段のハイブリッド回路の2つの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに他方の出力ポートは信号終端手段に接続されることを特徴とする同時送受信用アレーアンテナ。
【請求項2】
前記アナログ給電回路が接続される送信または受信アレーアンテナのアンテナ素子間隔は、1/2波長の整数倍であって、アナログ給電回路を構成するハイブリッド回路の出力位相差は180度であることを特徴とする請求項1記載の同時送受信用アレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時かつ同一周波数で電波を送受信するフルデュプレックスシステムにおいて問題になる自己干渉を、アナログ信号処理を用いて抑圧することで信号受信感度を改善することが可能な同時送受信用アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、中継局ではTDD(Time Division Duplex)方式及びFDD (Frequency Division Duplex)が用いられているが、第5世代通信システム(5G)に向けて更なる高速通信方式が必要とされている。しかし、周波数資源の枯渇により、広帯域化での高速通信の実現は困難である。一方、同一周波数を用いた同時送受信を行うFull-duplex技術が登場し、新たな周波数帯域を利用せずにチャネル容量を向上させる技術として期待されている。また、送受信機に複数のアンテナを用いたMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術を用いることで、アンテナ数に応じてチャネル容量を向上することは可能とされている。このMIMO技術とFull-duplex技術を組み合わせた通信方式をMIMO Full-duplex通信システムと定義する。
【0003】
Full-duplex通信の問題点として受信機が自己の送信信号を受信する自己干渉が挙げられる。受信機は距離の近い送信機からの自己干渉によりRF (Radio Frequency)フロントエンドが飽和または破損する。また自己干渉信号はノイズフロアより100dB強力な信号であるため、所望信号が自己干渉に埋もれてしまい復調が困難になる。
この自己干渉の抑圧法として次の技術が挙げられる、
【0004】
まず、送信アンテナの配置を工夫して、受信アンテナにヌルを形成する方法が挙げられる(例えば非特許文献1)。具体的には、アナログ回路によって送信から受信回路に故意に信号を回り込ませ受信機に入力される直前で相殺する方法である。しかし、この方法は、送受信アンテナが1本ずつの場合を想定しており、複数の受信アンテナを用いると全ての受信アンテナにヌルを形成するには困難である。すなわち、この方法では、全送信アンテナと全受信アンテナのありとあらゆる組合せに対してキャンセル回路を個別に用意する必要があり、回路が複雑になるという問題がある。
【0005】
また、MIMO Full-duplex通信の自己干渉の抑圧法として、固有ビームフォーミング法(eigen-beamforming法)が挙げられる(例えば非特許文献2)。この技術においては、図1に示すように、アンテナ配置をエンドファイアにすることでLOS (Line of Sight)環境での空間相関を増加させる。空間相関が増加すると、第1固有値のみが増加し、それ以外の固有値は0に近づく。固有値と干渉受信電力は比例の関係であるため、第1固有値を除く固有値を用いた送信ビームフォーミングを行うことで、干渉抑圧が可能となる。
また、上記固有ビームフォーミング法と減算処理と組合せてディジタル信号処理を行う技術があげられる(非特許文献3)。
【0006】
しかし、固有ビームフォーミング法を用いた技術は実環境では第2固有値以下の固有値が0にならないため、干渉抑圧が不十分であるという問題がある。また、ディジタル信号処理を行う技術では、強度が著しく強い干渉が存在する場合は量子化雑音が発生するため、弱い信号の復号ができなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. I. Choi, M. Jain, K. Srinivasan, P. Levis and S. Katti,“Achieving single channel, full duplex wireless communication,” in Proc. 2010ACM MobiCom., pp. 1-12, Sept. 2010.
【非特許文献2】M.Tsunezawa, N. Honma, K.Takahashi, Y.Tsunekawa, K.Murata and K.Nishimori,“Interference reduction between SDD linear array antennas using end-firearrangement,” 2015 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation& USNC/URSI National Radio Science Meeting, pp. 2511-2512, Jul. 2015.
【非特許文献3】Yoshiyuki Yamamoto, Ryota Takahashi, Masakuni Tsunezawa, NaokiHonma, and Kentaro Murata, “Experimental evaluation of interference reductioneffect; Eigen-beamforminng and digital subtraction by using MIMO-OFDm signals”in IEICE Communications Express, vol.6, No,2, 71-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、複数のアンテナを用いたMIMO Full-duplex通信システムにおいて、アナログ信号処理を実現する給電回路が付加された同時送受信用アレーアンテナとして実環境においても自己干渉が抑圧され、弱い信号であっても復号が可能であり、低コストな構成で中継器システムの大幅な変更が不要な同時送受信用アレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、送信アレーアンテナと、
等間隔かつ直線的に配列した複数のアンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
前記受信アレーアンテナまたは送信アンテナに接続されるアナログ給電回路からなる同時送受信用アレーアンテナであって、
前記送信アンテナと前記受信アレーアンテナは互いにエンドファイア方向となる位置関係に配置され、
前記アナログ給電回路は入力が2ポートで出力が2ポートであり、出力位相差が所定の値となる方向性結合器であるハイブリッド回路を複数用いて多段に構成されており、
初段のハイブリッド回路のそれぞれの2つの入力ポートはアレーアンテナを構成する2つのアンテナ素子対に接続され、前記初段のハイブリッド回路それぞれの2つの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに他方の出力ポートは二段目ハイブリッド回路に接続され、
前記二段目のハイブリッド回路のそれぞれの2つの入力ポートは前記初段の2つのハイブリッド回路のそれぞれの出力ポートの片方と接続されるとともに、前記二段目のハイブリッド回路それぞれの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに、前記二段目のハイブリッド回路が複数存在する場合は他方の出力ポートは三段目のハイブリッド回路に接続され、
前記二段目と同様にハイブリッド回路多段接続を繰り返したのち最終段のハイブリッド回路の2つの出力ポートのうち一方の出力ポートは信号受信手段に接続されるとともに他方の出力ポートは信号終端手段に接続されることを特徴とする同時送受信用アレーアンテナである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記アナログ給電回路が接続される送信または受信アレーアンテナのアンテナ素子間隔は、1/2波長の整数倍であって、アナログ給電回路を構成するハイブリッド回路の出力位相差は180であることを特徴とする請求項1記載の同時送受信用アレーアンテナである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の同時送受信用アレーアンテナによれば、Full-duplex通信システムにおいて、アナログ信号処理を実現する給電回路を用いることによって、低コストな装置構成でエンドファイア方向にヌルを形成し自己干渉を抑圧することができる効果がある。
【0012】
本発明の請求項2の同時送受信用アレーアンテナによれば、受信アレーアンテナのアンテナ素子間隔を、1/2波長の整数倍として、低コストな装置構成でエンドファイア方向にヌルを形成し自己干渉を抑圧することができる効果がある。
【0013】
本発明によれば、複数のアンテナを用いたFull-duplex通信システムにおいて、アナログ信号処理を実現する給電回路を用いることによって、低コストな装置構成でエンドファイア方向にヌルを形成し自己干渉を抑圧ができる同時送受信用アレーアンテナを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】エンドファイア配置を表す説明図である
図2】受信アンテナの所望指向性を示す概念図である
図3】ハイブリット回路の原理図である
図4】本発明の実施の形態に係る送受信アンテナを示す構造図である
図5】本発明の実施の形態に係る干渉抑圧装置の構成回路図である
図6】本発明の実施例に係る自己干渉電力の減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態においては、MIMO Full-duplex通信の干渉抑圧を実現するものである。本形態は受信アンテナが受信する信号の位相差を利用したもので、図1に示すように送信アレーアンテナ20と受信アレーアンテナ30とをエンドファイア配置にする。図2に受信アレーアンテナの所望指向性を示す。図2に示すように受信アレーアンテナがエンドファイア方向にヌルを形成することで自己干渉が抑圧できる。受信アンテナに対して180度ハイブリッド回路を接続する。本形態では180度ハイブリッド回路の入出力特性と受信信号の位相差から、アナログ回路のみでエンドファイア方向にヌルを形成することが可能となる。
【0016】
本形態の利点として以下の3点が挙げられる。まず1点目として、受信アレーアンテナの素子間隔が一定である限り、素子アンテナの種類による影響を受けないという点があげられる。2点目として、送受信アンテナ間の距離に関わらず干渉抑圧が可能であるという点があげられる。3点目として、受信アンテナ数が2(Nは整数)であれば、アンテナの本数によらず干渉抑圧が可能であるという点があげられる。
【0017】
本形態を説明するために、まずハイブリッド回路の原理について説明する。
ハイブリッド回路は、出力位相差が所定の値となるような方向性結合器である。主に高周波およびマイクロ波システムにおいて利用される。90度ハイブリッド回路では出力位相差は90度であり、180度ハイブリッド回路では出力位相差は180度である。
【0018】
以下、180度ハイブリッド(以下ハイブリッドという。)を例にとり説明する。ハイブリッドは、2入力2出力からなる受動素子であり、図3にハイブリッドの概略図を示す。ポート1および2が入力ポート、ポート3および4が出力ポートとする。まずポート1の入力に対する出力特性について述べる。図3(a)に示すように、ポート1に入力された信号はポート3とポート4に同振幅で出力され、位相は同相となる。またポート2からは出力されない。ポート2の入力に対する出力特性は、図3(b)に示すように、ポート3とポート4に同振幅で出力され、位相は逆相になる。またポート1からは出力されない。従ってポート3にはポート1とポート2からの入力の和を出力し、ポート4はポート1とポート2からの入力の差を出力する。ゆえに、ポート3をΣポート、ポート4をΔポートとする。
【0019】
次に、ハイブリッドのSパラメータ特性について説明する.ハイブリッドのSパラメータShybは、
【数1】
と4つの区分行列で表せる。入力および出力ポート数はそれぞれ 2 となるため各区分行列は 2 次の正方行列となる。ここで (1) における各区分行列のインデックスi およびo はそれぞれ入力および出力ポートを表している。ここで区分行列Shyb,iiおよびはShyb,ooそれぞれ入力部および出力部におけるポートでの反射およびポート間の相互結合を表す。理想的なハイブリッド回路であれば、入出力部の反射、結合はないため、
【数2】
と表せる.ここでOはn次の正方零行列を表している。また区分行列Shyb,oiは入力ポートから出力ポートへの電力の伝達を表しており、
【数3】
と表される。
またハイブリッド回路のSパラメータは可逆性が成り立ち、かつShyb,ioは対称行列であるため
【数4】
となる。ここでATは行列Aの転値を表す。
【0020】
図4に本発明の形態における送信アンテナと受信アレーアンテナとの配置関係を示す。図4において、受信アレーアンテナの素子は4本(1、2、3、4)、送信は点波源(21)としている。受信アレーアンテナ30のエンドファイア方向に点波源21があるものとする。受信アレーアンテナ30の素子(1、2、3、4)同士の間隔は全てdelement=λ/2とし、送受信アンテナ距離をdTX―RXと定義する。
【0021】
図5に受信アレーアンテナに接続する干渉抑圧装置の構成図を示す。本形態では受信アレーアンテナが2本のとき、必要となるハイブリットは(2―1)個である。図4では受信アレーアンテナ30の素子は4本であるため、必要となるハイブリットは3個である。受信アレーアンテナの素子(1、2、3、4)間隔が半波長であるため、各受信アレーアンテナの素子(1、2、3、4)の受信電力位相は180度ずつずれて受信する。図5に示す1段目の180度ハイブリットでは、Σポートは送信機からの干渉を抑圧し、Δポートは干渉が残留する。180度ハイブリットのΔポート同士を2段目の180度ハイブリットに接続する。2段目の180度ハイブリットには同相の干渉電力が入力されるため、Δポートの干渉は抑圧され、Σポートは干渉が残留する。干渉が残留した2段目のハイブリッドのΣポートは終端する。本発明により、4ポートの内1ポートに干渉を残留させ、他の3ポート(#1、#2、#3)の干渉を抑圧することが可能となる。本形態における受信ウェイトwRXは、
【数5】
と示すことができる.
【実施例】
【0022】
図6に本発明の形態である図4のモデルについて、送受信アンテナ距離を変化させたときの自己干渉電力を計算した結果を示す。本計算では自由空間損失を考慮し、ハイブリッドは理想的な動作をするものとする。使用周波数は2.29GHzである。ここでλは真空中の波長であり、点波源から受信アンテナRxの伝搬路hを、
【数6】
【数7】
とする。
また、受信電力p(n)、自己干渉電力PRxを、
【数8】
【数9】
と定義する。ここで、pは給電回路の出力nポートの受信電力を表す。干渉が残留するポート4を含む全てのポートの受信電力を平均化した値が本発明を用いない参考例に係る自己干渉電力(実線)であり、ポート4を除くポートの受信電力を平均化した値が本発明の実施例に係る自己干渉電力(点線)である。
【0023】
図6より、本発明の実施例(実線)は参考例に比べ、自己干渉電力を減少できていることが分かる。送受信アンテナ距離が遠いほど、本発明の効果が大きくなる。これは送受信アンテナ距離が遠いほど、アンテナごとの自由空間損失の差が小さくなるためである。もしハイブリッドの性能が理想的で受信アンテナごとの受信電力の振幅が等しければ、点波源からの干渉を完全に抑圧できる。
【0024】
以上の結果より、本形態はハイブリッドのみを用いたアナログ回路にとって、エンドファイア方向の干渉信号を抑圧することが可能であり、受信アレーアンテナに本形態の回路を付加するだけで自己干渉抑圧が可能であることが示された。本実施例では2.29GHzでの計算結果を示しているが、周波数帯によらず本発明は使用可能である。さらに高周波になるほど、素子間隔が小さくなるため小型化が可能である。またアンテナ数が増えてもそれに応じてハイブリッドの数を増加させることで適応可能である。
なお、上述した例では、180度ハイブリッド回路を用いたが、アンテナ素子間隔が1/4波長の整数倍の場合には90度ハイブリッド回路を用いてもよい。例えば、干渉抑制が生じるような位相を有する信号を選択して入力ポート1,2に入力すればよい。また、90度ハイブリッドと180度ハイブリッドを組合せてもよい。
また、上記例では、第1段に2/2個のハイブリッド回路を用い、最終段のハイブリッド回路の数が1となるまで順次多段に組み合わせた例を示したが、ハイブリッド回路の数が1となる前の段を最終段としてもよく、この場合も本発明の範囲に含まれる。
ハイブリッド回路の回路構成の種類には限定されない。例えば、180度ハイブリッド回路として、例えばラットレース回路を用いればよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、複数のアンテナを用いたFull−duplex通信システムにおいて、アナログ信号処理を実現する給電回路を用いることによって、低コストな装置構成でエンドファイア方向にヌルを形成し自己干渉を抑圧ができる同時送受信用アレーアンテナを得ることができ、通信関連の産業の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0026】
10 同時送受信用アレーアンテナ
20 送信用アレーアンテナ
21 送信アンテナ
30 受信用アレーアンテナ
1、2、3、4 受信用アンテナ素子
A、B、C、D、E 180度ハイブリッド回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6