(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、画像形成装置であるレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
本プリンタ1は、装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ50、潜像形成手段としての露光装置60、転写ローラ70、給紙カセット10、定着装置80などを備えている。
【0010】
プロセスカートリッジ50は、潜像担持体としての感光体ドラム3、帯電手段としての帯電ローラ4、現像手段としての現像装置2、クリーニング手段としてのクリーニング装置5などを有している。
【0011】
感光体ドラム3は、図中反時計回りに回転駆動されながら、帯電手段としての帯電ローラ4により、その表面を一様に帯電される。その後、潜像形成手段としての露光装置60により画像情報に基づき露光されて、感光体ドラム3の表面に静電潜像が形成される。感光体ドラム3上に形成された静電潜像は、現像装置2により現像され、感光体ドラム3上にトナー像が形成される。感光体ドラム3上に形成されたトナー像は、転写ローラ70を備えた転写手段としての転写ユニットにより、給紙カセット10から給紙ローラ12及びレジストローラ対14を経て搬送される記録材としての用紙上に転写される。
【0012】
転写終了後の用紙は、定着手段としての定着装置80によりトナー像が定着され、排紙ローラ15により機外に排出される。転写されずに感光体ドラム3上に残留した転写残トナーは、クリーニング手段としてのクリーニング装置5により感光体ドラム3の表面から除去される。また、感光体ドラム3上の残留電荷は、除電手段としての除電ランプで除去される。
【0013】
感光体ドラム3や現像装置2の経時劣化によりプロセスカートリッジ50の交換が必要な場合には、プリンタ本体の図中左側側面部に設けられた開閉部材たる開閉カバー91を開けることができる構成となっている。開閉カバー91を開けることにより、プロセスカートリッジ50を図中左側面部から取り出すことができる。なお、本実施形態では、感光体ドラム3と現像装置2とを一体に支持するプロセスカートリッジ50としたが、感光体ドラム3と現像装置2とを個別に着脱可能な構成にしてもよい。
【0014】
図2は、露光装置60周辺の概略構成図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図2に示すように露光装置60は、感光体ドラム3の長手方向に配列されたLEDや有機EL素子などの複数の発光素子、感光体ドラム3と発光素子とに配列された複数のレンズなどで構成される書込ヘッド(LEDアレイ)64を有している。また、書込ヘッド64を保持する露光装置保持機構(露光装置保持部材)としてのホルダ65が設けられている。書込ヘッド64は、バネ部材66によって感光体ドラム3方向に付勢されてホルダ65に保持されている。書込ヘッド64は、画像情報に基づいて所定の位置の発光素子を発光させ、レンズを介して感光体ドラム3に照射することで、感光体ドラム3を露光し、感光体ドラム3に静電潜像が形成される。ホルダ65の長手方向両端には、後述する退避機構に支持される支持突起62と、案内突起63とが上下方向に並べて設けられている。
【0015】
感光体ドラム3と書込ヘッド64との間には、両者の距離を規制する規制部材たるスペーサ部材21が配置されている。スペーサ部材21は、感光体ドラム3の非画像形成領域に書込ヘッド64と対向するように感光体ドラム3に対して摺動可能に設けられている。また、プロセスカートリッジ50のケース50aの軸方向両端には、位置決めボス22が設けられている。書込ヘッド64の軸方向一端(図中右側)には、位置決めの主基準となる丸穴状の位置決め穴67aが設けられている。また、書込ヘッド64の軸方向他端(図中左側)には、位置決めの従基準となる長穴状の位置決め穴67bが設けられている。
【0016】
図3は、露光装置60が位置決めされた状態を示した図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図である。
図3に示すように、各位置決めボス22が、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67bに嵌ることで、書込ヘッド64が、図中Y方向(軸方向:主走査方向)図中X方向(副走査方向)に位置決めされる。また、スペーサ部材21に書込ヘッド64が当接することにより、書込ヘッド64が図中Z方向(感光体ドラム3の法線方向)に位置決めされる。
【0017】
露光装置60が後述する退避装置により退避位置から露光位置へ移動していき、書込ヘッド64がスペーサ部材21に突き当たった後も、ホルダ65は、退避装置により感光体ドラム3に向けて移動する。すると、バネ部材66が圧縮し、書込ヘッド64の移動規制部68が、ホルダ65から離間する。その結果、書込ヘッド64は、バネ部材66の付勢力によりスペーサ部材21に押し付けられる。
【0018】
また、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67bを位置決めボス22に確実にはめ込むために、後述の
図5及び6に記載の露光案内孔105bの露光位置近傍の幅は、案内突起63や支持突起62の直径とほぼ同じとなっている。露光位置において、ホルダ65は、露光案内孔105bにより位置決めされる関係となっている。露光装置60のホルダ65が、露光案内孔105bに位置決めされることで、潜像形成時に振動などでホルダ65ががたつくのを抑制でき、ホルダ65の振動で潜像が乱れるのを抑制することができる。書込ヘッド64が位置決めボス22により図中X方向、Y方向に位置決め可能なように、書込ヘッド64とホルダ65とは、X方向、Y方向に所定のガタを有している。
【0019】
書込ヘッド64は、焦点距離が短いため、露光装置60を感光体ドラム3に近接配置する必要がある。このように、露光装置60を感光体ドラム3に近接配置するため、プロセスカートリッジ50を装置本体に対して着脱するとき邪魔となる。そのため、本実施形態においては、感光体ドラム3に近接した露光位置と、感光体ドラム3から離間した退避位置との間を、露光装置60を移動させる退避装置を備えている。以下に本実施形態の退避装置について図面を用いて具体的に説明する。
【0020】
図4は、退避装置20と、露光装置60と、感光体ドラム3とを示す斜視図である。
図4に示すように、退避装置20は、露光装置60の長手方向一端側と他端側とに同一構成の退避機構100a,100bをそれぞれ設けている。以下の説明では、一端側と他端側とで退避機構を区別しない場合は、「退避機構100」として説明する。
【0021】
図5は、退避機構100の概略構成図である。
図5は、露光装置60が感光体ドラム3に潜像を形成する露光位置に位置しているときを示している。
図5に示すように、移動機構たる退避機構100は、装置本体に回動自在に支持された第一リンク部材101と、露光装置60を保持し、装置本体に回動自在に支持された第二リンク部材102とを備えている。また、第一リンク部材101と第二リンク部材102とを連結する連結手段としての連結機構103を備えている。
【0022】
連結機構103は、第一連結部材103aと、第二連結部材103bとを有している。第一連結部材103aは、一端が第一リンク部材101に設けられた支持軸101bに回動自在に支持され、他端が、連結軸103cに回動自在に支持されている。また、第二連結部材103bは、一端が連結軸103cに回動自在に支持され、他端が第二リンク部材102に回動自在に支持されている。連結軸103cは、カバー部材105に設けられた図中左右に延びる連結案内孔105aを貫通している。
【0023】
第二リンク部材102は、露光装置60のホルダ65の長手方向両端部に設けられた支持突起62が貫通し、第二リンク部材102の回動の支点A1に向かって延びる長孔状の支持孔102aが設けられている。露光装置60の支持突起62がこの支持孔102aを貫通することにより、露光装置60が退避機構100に支持される。また、支持突起62は、カバー部材105に設けられたガイド部たる露光案内孔105bを貫通している(
図6、
図7参照)。また、露光装置60のホルダ65には、案内突起63が設けられており、この案内突起63も、露光案内孔105bを貫通している。
【0024】
第一リンク部材101は、中心角が略90°の扇形状をしており、第一リンク部材101の円周方向一端に第一連結部材103aを回動自在に支持する支持軸101bが設けられている。また、第一リンク部材101の円周方向他端には、ボス部101aが設けられている。
【0025】
第二リンク部材102には、付勢手段としてトーションスプリング104の一端を引っ掛けるための引っ掛け部102bが設けられている。トーションスプリング104は、一端がこの引っ掛け部102bに引っ掛けられて、他端をカバー部材105に引っ掛けられることで、第二リンク部材102を図中矢印S方向に付勢している。
【0026】
このトーションスプリング104の付勢力により、第二リンク部材102及び連結軸103c(第一連結部材103a,第二連結部材103b)は、第一リンク部材101側へ移動するような力を受ける。このとき、第一リンク部材101の回動の支点A2と連結軸103cとを結んだ線分Aよりも第一連結部材103aの第一連結部材支持位置A3(支持軸101b)が図中下側にある。その結果、連結軸103cの第一リンク部材101側へ移動するような力によって、第一連結部材支持位置A3に矢印T1方向に移動させようとする力が生じ、第一リンク部材101が、図中反時計回りに回動させようとする力が生じる。これにより露光装置60を感光体ドラム3側へ付勢させ、書込ヘッド64内のバネ部材66の付勢力と合わせて露光位置に位置させている。
【0027】
図6は、引っ張りスプリング104’を用いて第二連結部材103bを引っ張る構成とした退避機構の概略構成図である。
図6に示す構成は、第二連結部材103bの一端側(連結軸103cに回動自在に支持された側)には、付勢手段として引っ張りスプリング104’の一端を引っ掛けるための引っ掛け部113が設けられている。引っ張りスプリング104’は、一端がこの引っ掛け部113に引っ掛けられて、第二連結部材103bを図中矢印S方向に付勢している。このとき、第一リンク部材101の回動の支点A2と連結軸103cとを結んだ線分Aよりも第一連結部材103aの第一連結部材支持位置A3(支持軸101b)が図中下側にある場合は、上述と同様に第一連結部材支持位置A3に矢印T1方向に移動させようとする力が生じる。これにより、第一リンク部材101が、図中反時計回りに回動させようとする力が生じる。
【0028】
また、本実施形態では、先の
図4に示すように、露光装置60の両端に退避機構を設けている。本実施形態のように、露光装置60の両端に退避機構100を設けることで、露光装置60両端の動きの偏差を抑制することができる。また、露光装置60の一端側と他端側のいずれかに退避機構100を設けてもよい。この場合、露光装置60の一端側と他端側とで動作のズレが大きくなるが、装置を安価にすることができる。
【0029】
また、
図4に示すように、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bとは、退避機構連結部材107により連結されている。具体的には、退避機構連結部材107は、一端側の退避機構の第二リンク部材102と、他端側の退避機構の第二リンク部材102とを連結している。これにより、一端側の退避機構100aと他端側の退避機構100bとを一体的に動作させることができ、一端側の退避機構100aと他端側の退避機構100bとの間で動作のズレが生じるのを抑制することができる。この退避機構連結部材107は第二リンク部材102と同一部材であっても良い。
【0030】
また、プロセスカートリッジ50を装置本体に装着するときに、退避位置にある露光装置60にぶつかって、露光装置60が破損するおそれがある。また、開閉カバー91を開いた状態のとき、ユーザーが開閉カバー91により開かれた開口部から露光装置60を触って、露光装置60を破損させてしまう場合もある。このため、退避位置にある露光装置60を保護するための保護部材を備えている。保護部材は、露光装置60の長手方向に延びており、一端が、装置本体一端側の側板に固定されており、他端が、装置本体一端側の側板に固定されている。保護部材は例えば断面略L字状の形状をしていることで、保護することが可能となる。
【0031】
図7は、装置本体側板111とカバー部材105で覆われた退避機構の概略構成斜視図である。
図7に示すように、第一リンク部材101、第一連結部材103a、第二連結部材103bを、装置本体側板111とカバー部材105とで覆っている。これにより、開閉カバー91を開いたとき、ユーザーが第一リンク部材101、第一連結部材103aや第二連結部材103bに触れるのを抑制することができる。従って、ユーザーにより露光装置60を退避位置から露光位置へ移動させてしまうのを抑制することができる。これにより、プロセスカートリッジ装着時に、露光装置60が露光位置にあり、露光装置60が、プロセスカートリッジ50とぶつかるのを抑制することができる。
また、連結軸103cを案内する連結案内孔105aと、支持突起62と案内突起63を案内する露光案内孔105bとが、カバー部材105に設けられている。
【0032】
次に、露光装置60の露光位置と退避位置との間の移動について説明する。
図8は、露光装置60を露光位置から退避位置へ移動中の退避機構100を示す図であり、
図9は、露光装置60が退避位置にあるときの退避機構100を示す図である。また、
図10、
図11は、露光装置60を露光位置から退避位置へ移動させるときの退避機構100の第一リンク部材101と開閉カバー91との関係を示す図である。また、
図12は、露光装置60を退避位置から露光位置へ移動させるときの退避機構100の第一リンク部材101と開閉カバー91との関係を示す図である。
なお、
図8〜
図12は、先の
図6に示した引っ張りスプリング104’を用いて第二連結部材103bを引っ張る構成とした退避機構を例にして説明するが、先の
図5に示したトーションスプリング104の付勢力により、第二リンク部材102を引っ張る構成した退避機構についても同様な動作となる。
【0033】
図10に示すように、移動手段たる開閉カバー91には、第一リンク部材101のボス部101aを引っ掛ける鉤形状の作用部材としての引っ掛けレバー91aが設けられている。開閉カバー91が閉じられており、露光装置60が露光位置にあるときは、引っ掛けレバー91aは、ボス部101aから離間している。
【0034】
開閉カバー91を開いていくと、引っ掛けレバー91aがボス部101aに当接し、第一リンク部材101が図中反時計回りに回動する。このときは、第一リンク部材101は、連結機構103を介して引っ張りスプリング104’(先の
図5の構成では、トーションスプリング104)により露光装置60を退避位置へ移動させる回動方向(図中反時計回り方向)と反対方向に付勢されている。従って、このときは、引っ掛けレバー91aで第一リンク部材101を引っ張りスプリング104’の付勢力に抗して回動させることになる。
【0035】
引っ張りスプリング104’(先の
図5の構成では、トーションスプリング104)の付勢力に抗して第一リンク部材101を
図8まで回転させると、第一リンク部材101の回転の支点A2と、連結軸103cとを結ぶ線分A上に第一リンク部材101の第一連結部材支持位置A3がくる。上記線分A上に第一連結部材支持位置A3(支持軸101b)がくるまでの間は、連結軸103cが、第一リンク部材101から遠ざかる方向へ移動する。その結果、露光装置60のホルダ65が、バネ部材66を圧縮して、先の
図3に示す露光位置から感光体ドラム3に近接する近接位置へと移動する。先の
図3(b)に示すように、露光装置60が露光位置にあるとき、案内突起63と、露光案内孔105bの感光体ドラム側端部との間には、所定の隙間がある。このため、上記線分A上に第一連結部材支持位置A3がくるまでの間、ホルダ65が露光位置から感光体ドラム3に近接する近接位置へと移動できる。
【0036】
上記線分A上に第一連結部材支持位置A3がきた状態から引っ掛けレバー91aにより第一リンク部材101をさらに反時計回りに回動させると、第一連結部材支持位置A3が、線分Aよりも
図8の上側に移動する。すると、連結軸103cを第一リンク部材101側(図中左側)へ移動させる引っ張りスプリング104’の力により、上側方向に移動させようとする力が第一連結部材支持位置A3に生じる。これにより、連結機構103を介して引っ張りスプリング104’により露光装置60を退避位置へ移動させる回動方向(図中反時計回り)に、第一リンク部材101が付勢される。その結果、第一リンク部材101が、引っ張りスプリング104’の付勢力により露光装置60を退避位置へ移動させる回動方向(図中反時計回り)に自動的に回転し、露光装置60を退避位置へ移動させる。
【0037】
また、第一リンク部材101が反時計回りに回動することで、連結軸103cが、連結案内孔105aに案内されて、開閉カバー91側(
図8の左側)へと移動する。すると、第二連結部材103bも開閉カバー側(
図8の左側)へと移動し、第二リンク部材102が支点A1を支点にして反時計回りに回動する。すると、第二リンク部材102の支持孔102aを貫通している露光装置60の支持突起62と案内突起63とが、露光案内孔105bに案内されながら、感光体ドラム3から離間する方向に持上げられる。
【0038】
第二リンク部材102の支持突起62を支持する支持孔102aが、支点A1側に延びる長孔形状となっている。このため、露光装置60は、円弧状の軌跡をとらず、露光案内孔105bに案内されながら、感光体ドラム3の法線方向に沿って直線状に露光位置から退避位置へと移動する。
【0039】
このように、本実施形態では、露光装置60が、露光位置から感光体ドラム3の法線方向に沿って直線状に退避位置へ移動する。よって、帯電ローラ4、現像装置2を露光装置60に近接配置しても、露光装置60を露光位置から退避位置へ移動させるときに移動の邪魔となることがない。
【0040】
また、露光案内孔105bは、
図7に示すように感光体ドラム3の法線方向に直線状に延びる第一直線部分155aと、図中左斜め上方に直線状に延びる第二直線部分155cとを有している。また、露光案内孔105bは、第一直線部分155aと第二直線部分155cとを結ぶ曲率半径の小さい円弧状部分155bを有している。第二直線部分155cは、
図9の矢印X1に示すように、プロセスカートリッジ50の引き出し方向とほぼ平行に延びている。支持突起62が露光案内孔105bの円弧状部分155bに案内されると、露光装置60は、案内突起63を支点にして、図中反時計回りに回動し、露光装置60の姿勢が変更される。そして、
図9に示すように、案内突起63が、露光案内孔105bの第二直線部分155cにくると、露光装置60が、プロセスカートリッジ引き出し方向と略平行な退避姿勢となる。
【0041】
このように、感光体ドラム3の法線方向に沿って直線状に露光装置60を移動させた後、露光装置60を回動させて、プロセスカートリッジ引き出し方向と略平行にしている。これにより、露光装置60を、プロセスカートリッジ50の着脱の邪魔とならない退避位置へ移動させるときの図中上下方向の移動量を、露光装置60を回動させない場合に比べて、少なくできる。これにより、露光装置60を露光位置と退避位置との間を移動するための図中上下方向スペースを狭めることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0042】
プロセスカートリッジ50を交換するなどして、
図11に示す開閉カバー91が開位置にある状態から、開閉カバー91を閉めていくと、
図12に示すように、引っ掛けレバー91aの先端面911が支持軸101bに当接する。
【0043】
図12に示す状態から、開閉カバー91をさらに閉じていくと、引っ掛けレバー91aにより支持軸101bが押され、引っ張りスプリング104’の付勢力に抗して、第一リンク部材101を図中時計回りに回動させる。そして、先の
図8に示す位置以上、引っ掛けレバー91aの先端面911で支持軸101bを押して、引っ張りスプリング104’の付勢力に抗して、第一リンク部材101を図中時計回りに回動させる。すると、第一連結部材支持位置A3(支持軸101b)が、線分Aよりも下側に位置し、引っ張りスプリング104’の付勢力による第一リンク部材101の回動方向が切り替わる。これにより、第一リンク部材101が引っ張りスプリング104’の付勢力による図中時計回りに自動で回動し、露光装置60が露光位置へ移動する。
【0044】
装置の構成によっては、外装カバーの内側にインナーカバーを設け、外装カバーを構成する開閉カバー91に引っ掛けレバー91aを設けられない場合がある。このような場合は、インナーカバーの装置内部を開閉するカバーに上記引っ掛けレバー91aを設けて、インナーカバーの開閉に連動して露光装置60を、退避位置と露光位置との間で移動させるようにすればよい。
【0045】
次に、露光装置60のレンズ面64aを清掃するための具体的な実施例について説明する。
図13は、露光装置60の退避経路Rの途中にレンズ面64aを清掃する清掃部材69を配置した構成の説明図である。清掃部材69は、露光装置60のレンズ面64aに接触して清掃面形成部分が傾くように変形可能な部材である。
図12に示すように、開閉カバー91の開閉により、露光装置60は露光位置から退避位置まで、直線と曲線の軌道を描いて退避経路Rを移動する。本実施形態では、退避経路Rの曲線軌道の途中に弾性をもった清掃部材69が配置されており、露光装置60が退避位置から露光位置まで移動する際にレンズ面64aが清掃部材69に押し当てられる。これにより、トナーや塵埃などの付着物をレンズ面64aから清掃部材69へ移され、レンズ面64aの付着物の除去が可能となる。清掃部材69は弾性をもったもので、例えば基材としての薄いマイラーに布部材としての不織布を貼り付けたものやブラシなどが挙げられるが、スポンジシール材等でも代用できる。清掃部材69は
図13に示すようなL字状の保持部材72に両面テープなどで固定されており、この保持部材72は本体ステー71にねじ等で固定される。
【0046】
図14は、清掃部材をブラシとした例を示す図であり、
図14(a)は、斜視図であり、
図14(b)は、側面図である。
清掃部材であるブラシ691aは基材691bに織り込まれており、基材691bの裏面と保持部材72を両面テープなどで固定する。清掃部材としてはその清掃性もさることながら、清掃圧が強いと露光装置60の退避時に清掃部材で引っかかってしまうため、そこに留意して選定する必要がある。ブラシ691aは樹脂製のPETやポリエステル、ナイロン製などが清掃性も良く、柔らかい材質のため良い。その他にも除電性能に優れたSUSの繊維のものでも良いが、露光装置60のレンズ面64aを傷つけないように注意する必要がある。また、ブラシ691aは清掃性が高く、より柔らかいものとなる繊維が細く、密度の高いものが良い。
【0047】
露光装置60の長手方向に均等に清掃することができるため、ブラシ691aの毛の長さは長手方向で一律同じとするのが好ましいが、毛の長さを場所により変えても良い。ブラシ691aは露光装置60に付着した塵埃、トナーなどを、その毛の中に抱え込む形となるため、退避軌道の方向に毛を並べる形とすることで、より多くの塵埃、トナーを清掃できることとなる。
【0048】
また、本実施形態では、清掃部材69を露光装置60の感光体ドラム3への位置決めと退避の途中に配置したが、露光装置60の退避は開閉カバー91の開閉と連動しているため、開閉カバー91の開閉により自動的に清掃されることとなる。開閉カバー91の内側には作像PCDUや搬送経路が存在し、紙詰まりを除去するためや、プロセスカートリッジ50を交換する時に開閉カバー91の開閉が行われ、その作業を行うことで露光装置60も自動で清掃されるため、メンテナンス性に優れている。
【0049】
露光位置と退避位置の軌道経路の間に清掃部材69を配置することで、開閉カバー91の開閉により露光装置60が清掃される。このため、レンズ面64aの汚れによる画像不良が発生した場合、この開閉カバー91の開閉動作によりレンズ面64aを清掃して、画像不良の改善を図ることができる。しかし、1回の開閉による清掃動作で完全にレンズ面64aの付着物が取れない場合がある。従って、レンズ面64aの汚れによる画像不良が発生した場合、この開閉カバー91の開閉動作を複数回行ってレンズ面64aの汚れを行うように、操作マニュアルなどに記載しておくことになる。しかし、露光装置60の清掃のために大きい開閉カバー91の開閉を複数回行なうことは、作業者にそれなりの作業負荷が加わる。また、露光位置まで露光装置60を移動させるため、スプリング(トーションスプリング104または引っ張りスプリング104’)の付勢の方向が、露光装置60を退避位置へ移動させる方向から、露光装置60を露光位置へ移動させる方向に切り替わる。従って、開閉カバー91を閉じた後に開閉カバー91を開く操作をする必要があり、作業の負荷が大きい。露光装置60を露光位置まで移動させるため、操作量(回動量)が多く、これも清掃作業の負担に繋がる。
【0050】
さらには、開閉カバー91の閉じ動作で、先の
図3に示したように、各位置決めボス22が、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67bに嵌り、スペーサ部材21に書込ヘッド64が当接して露光装置60が露光位置で位置決めされる。開閉カバー91の複数回の開閉によって、複数回清掃動作を行なうことで、各位置決めボス22や、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67b、スペーサ部材21等に想定した以上に負荷がかかってしまう。その結果、位置決めボス22が根元から折れてしまうなどの不具合が発生する可能性がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、開閉カバー91の開閉以外にも露光装置60を清掃できるように、第一リンク部材101の横に清掃操作手段としての清掃レバー106が設けられている(
図5、7、12参照)。清掃レバー106はカバー部材105に回転可能に保持されており、この清掃レバー106を回転させることで第一リンク部材101の支持軸101bの真裏に形成された清掃用ボス部101cと接触し、清掃用ボス部101cを押す。清掃用ボス部101cが押されることで第一リンク部材101が回転する。第一リンク部材101の回転に伴い、露光装置60が退避位置から移動しその途中で清掃部材69と接触するため、露光装置60が清掃されることとなる。この清掃レバー106は開閉カバー91を開けると見える位置にあり、露光装置60が退避位置にある状態から、清掃レバー106を押すことで退避機構100を通じて露光装置60が移動して露光位置に向かい、その途中で清掃される。
【0052】
また、清掃レバー106は、露光装置60が露光位置に到達する前に、その回動が規制される。具体的には、先の
図8に示すように、第一連結部材支持位置A3が、第一リンク部材101の回動の支点A2と、連結軸103cとを結ぶ線分A上にくる前に清掃レバー106の回動が規制される。これにより、清掃レバー106の操作では、露光装置60が露光位置で位置決めされることがない。また、清掃レバー106を回動が規制される位置まで回動させた後、清掃レバー106を離すとスプリングにより元の退避位置に戻っていく。これにより、清掃レバー106を押す作業のみでよい。また、露光位置よりも手前までの移動で回動が規制されるため、露光位置まで移動させる開閉カバー91の開閉に比べて、操作量(回動量)が少ない。よって、露光装置60に異物が大量に付着した場合など、何度も露光装置60のレンズ面64aを清掃部材69に接触させて清掃する必要がある場合に、開閉カバー91を開け閉めするより楽に清掃することが可能となり、利用者の作業負担を低減するができる。
【0053】
また、露光装置60が露光位置まで移動しないので、各位置決めボス22が、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67bに嵌り、スペーサ部材21に書込ヘッド64が当接する位置決めが行われない。これにより、各位置決めボス22や、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67b、スペーサ部材21等に想定した以上に負荷がかかるのを抑制することができ、位置決めボス22等の破損を抑制することができる。
【0054】
次に、清掃レバー106の回動の規制について、
図15、
図16、
図17を用いて具体的に説明する。
図15、
図16、
図17に示す清掃レバー106は、利用者が清掃レバー106を押し易いようにした操作部106aを有しているが、それ以外は、先の
図5、7、12に示す清掃レバー106と同様な構成である。
図15は、露光装置60が退避位置にあるときの先の
図12に示す方向とは反対側から退避機構を見た図である。また、
図16は、清掃レバー106を操作して、露光装置60を退避位置から露光位置へ移動させる様子を示す図である。
図17は、清掃レバー106の回動が規制された様子を示す図である。
【0055】
図15に示すように、清掃レバー106は、カバー部材105に設けられたレバー支持軸105eに回転自在に取り付けられる取り付け穴を有した板状の取り付け部106cと、この取り付け部106cの図中左部から上方に延び、第一リンク部材101の清掃用ボス部101cに対向する作動部106bと、利用者が清掃レバー106を操作するための操作部106aとを有している。また、カバー部材105には、清掃用ボス部101cを逃がす逃がし溝105dと、清掃レバー106の回動を規制する規制突起105cとを有している。
【0056】
図15に示す状態から、利用者が清掃レバー106の操作部106aを、図中右側(装置内部側)に押すと、清掃レバー106が、レバー支持軸105eを支点にして図中時計回りに回転する。すると、清掃レバー106の作動部106bが清掃用ボス部101cに当接し、第一リンク部材101を図中時計回りに回動させる。そして、
図16に示すように、露光装置60のレンズ面64aが清掃部材69に接触する清掃位置に露光装置60が移動し、レンズ面64aが清掃部材69により清掃される。
図16に示す状態から、さらに清掃レバー106を押し込んでいくと、
図17に示すように、清掃レバー106の作動部106bが、規制突起105cに当接し、図中時計回りの回動が規制される。
【0057】
図17に示すように、清掃レバー106の回動が規制突起105cに規制された状態において、第一連結部材支持位置A3は、第一リンク部材101の回動の支点A2と、連結軸103cとを結ぶ線分Aよりも図中上側に位置している。よって、この状態のときは、スプリング(トーションスプリング104または引っ張りスプリング104’)により第一リンク部材101は、図中反時計回りに回動する方向に付勢されている。従って、利用者が清掃レバー106を離すと、スプリングにより露光装置60は、元の退避位置に戻っていく。
【0058】
図18は、開閉カバー91の開閉動作の操作量Q1と、清掃レバー106の操作量Q2とについて説明する図である。
開閉カバー91を開いた状態から閉じて、露光装置60を退避位置から露光位置へ移動させて、露光装置60のレンズ面64aを清掃部材69で1回清掃する際の操作量はQ1となる。2回清掃部材で清掃する場合は、開閉カバー91を開けた状態から閉じて、再び開ける操作となるため、その操作量は、2Q1となる。一方、清掃レバー106の操作では、清掃レバー106を図中Q2、押し込む操作で、2回清掃部材69で露光装置60を清掃することができる。このように、清掃レバー106を操作して露光装置60を清掃することで、開閉カバー91の開閉で複数回、露光装置60を清掃する場合に比べて、圧倒的に操作量を低減することができ、利用者の作業負担を低減することができる。
【0059】
なお、
図18に示すように、開閉カバー91を完全に開いた位置まで移動させずとも、露光装置60は、露光位置から退避位置まで移動して、清掃部材によりレンズ面64aの清掃が行われる。しかし、どのくらい開閉カバー91を開けば、退避位置へ移動したかは利用者にはわからない。従って、完全には開閉カバー91を開ききることはないにしても、ある程度は開閉カバー91を開くことになる。同様に、開閉カバー91を完全に閉じなくとも、露光装置60のレンズ面64aは、清掃部材69により清掃が行われる。しかし、清掃位置を露光装置60が通過した否かは、利用者はわかないため、開閉カバー91を閉じるまで、開閉カバー91を操作することになる。従って、実際は、
図18に示す操作量Q1よりも少なくなることはあっても、清掃用のために用意された清掃レバー106の操作量Q2よりも少なくなることはない。
【0060】
図19は、露光装置60を清掃するときの利用者が操作して露光装置60を移動させる機構を、スイッチ機構160とした例を示す概略構成図である。
図19に示すようにスイッチ機構160は、スイッチ部材161と、スイッチ部材161をスライド移動可能に収納する筒状の筐体162とを有している。スイッチ部材161は、利用者がスイッチ部材161を押し込むためのスイッチ部161aと、清掃用ボス部101cを押し込む押し込み部161cと、押し込み量を規制する規制部161bとで構成されている。規制部161bは、押し込み部161cとスイッチ部161aとの間に設けられ、外径が、押し込み部161cやスイッチ部161aよりも大きくなっている。筐体162は、スイッチ部材161のスイッチ部161aが貫通する操作用孔部162aと、スイッチ部材161の押し込み部161cが突き出る作動用孔部162bとを有している。スイッチ部材161が操作されていない状態のとき、規制部161bと押し込み部161cが筐体162の内部に収納されている。規制部161bの外径は、作動用孔部162bの穴径や操作用孔部162aの穴径をよりも大径である。スイッチ機構160は、カバー部材105に取り付けられているが、装置内の別の部材に取り付けてもよい。
【0061】
露光装置60を清掃するときは、まず、開閉カバー91を開けて装置内部に設けられたスイッチ機構160のスイッチ部161aを露出させる。利用者は、露出したスイッチ部161aを押し込む。すると、スイッチ部材161が、図中右側(装置内部)へスライド移動し、押し込み部161cの先端が、第一リンク部材101の清掃用ボス部101cに当接する。さらに、スイッチ部161aを押し込んでいくと、スプリング(トーションスプリング104や引っ張りスプリング104’)の付勢力に抗して清掃用ボス部101cを図中右側へ押し込む。すると、第一リンク部材101が回転して、露光装置60が退避位置から露光位置へ向けて移動する。さらに、スイッチ部材161を押し込んでいくと、露光装置60が清掃位置を通過し、露光装置60のレンズ表面が清掃部材69により清掃される。そして、露光装置60が露光位置に到達する前、より具体的には、第一連結部材支持位置A3が、第一リンク部材101の回動の支点A2と、連結軸103cとを結ぶ線分A上に到達する前に、規制部161bが、筐体162の作動用孔部162bの縁部に突き当たる。これにより、スイッチ部材161のスライド移動が規制され、これ以上、露光装置60を露光位置へ移動できなくなる。規制部161bが筐体162の作動用孔部162bの縁部に突き当たった状態において、利用者が、スイッチ部材161から離すと、スプリング(トーションスプリング104または引っ張りスプリング104’)の付勢力により、露光装置60が元の退避位置に戻っていく。この元の退避位置へ自動で移動する間に、露光装置60は、もう一度清掃位置を通過し、レンズ面64aが清掃部材69により清掃される。また、清掃用ボス部101cがスイッチ部材161を押し込み、スイッチ部材161を図中左側へ移動させ、先の
図19の状態に戻す。
【0062】
かかる構成においても、利用者は、スイッチ部材161を押し込むだけで、2回の清掃を行うことができ、開閉カバー91の開閉で清掃を行うよりも楽な作業で、複数回、露光装置60の清掃を行うことができる。また、開閉カバー91の操作量よりも少ない操作量で、2回露光装置60の清掃を行うことができ、露光装置60の清掃作業の負担を軽減することができる。さらには、露光位置まで露光装置60を移動させないので、露光装置60が露光位置で位置決めされることがない。よって、各位置決めボス22や、書込ヘッド64の位置決め穴67a,67b、スペーサ部材21等に想定した以上に負荷がかかるのを抑制することができ、位置決めボス22等の破損を抑制することができる。
【0063】
また、スイッチ部材161を真直ぐに押し込むという簡単な操作で、露光装置60を移動させることができ、露光装置60のレンズ面64aの清掃作業の負担を軽減することができる。一方、上記清掃レバー106を用いて、露光装置60を移動させる構成では、てこの原理で第一リンク部材101を回動させることができ、スイッチ部材161で露光装置60を移動させる構成に比べて、軽い操作で露光装置60を移動させることができるという利点がある。
【0064】
また、清掃レバー106により清掃部材69を移動させて、退避位置にある露光装置60のレンズ面64aを清掃してもよい。
【0065】
また、上述したように清掃部材69は、露光装置60が退避位置から露光位置まで移動する際にレンズ面64aが清掃部材69に押し当てられ、清掃部材69が弾性変形しながらレンズ面64aを摺擦することにより、レンズ面64aの汚れを除去する。露光装置60が清掃位置を通過する際、清掃部材69の弾性変形による押圧力や、清掃部材69との摩擦力が露光装置60に加わる。従って、これら押圧力や摩擦力が、露光装置60の移動負荷となる。
【0066】
清掃部材69を露光装置60の長手方向に平行に設け、露光装置60のレンズ面64aに長手方向でほぼ同時に清掃部材69が接触するものは、長手方向でほぼ同時に清掃部材69が弾性変形し、レンズ面64aを摺擦する。従って、清掃部材69の押圧力や摩擦力による露光装置60の移動負荷が急激に増加することになる。その結果、開閉カバー91の開閉の際に急激に負荷が増加し、開閉カバー91の操作に支障をきたすおそれがある。また、同様に清掃レバー106やスイッチ部材161の操作にも支障をきたすおそれがある。さらには、露光装置60がスプリングの付勢力で退避位置へ移動するときに、清掃位置を通過する際の負荷により清掃位置で止まってしまい、退避位置まで露光装置60が移動しないおそれもある。
【0067】
そこで、本実施形態において、清掃部材69が露光装置60の長手方向において、それぞれ異なる軌道軌跡上で接触するように構成した。
【0068】
図20は、清掃部材69を、露光装置60の長手方向(感光体ドラム3の軸方向)に対して、清掃部材69を所定の角度θ傾けて設けた例を示す概略図である。
図20に示す清掃部材69は、例えば基材としての薄いマイラーに布部材としての不織布を貼り付けたものであり、保持部材72に保持されている。そして、保持部材72を本体ステー71に対して感光体ドラム3の軸方向Bに対して所定の角度θ傾けてネジ止めして、清掃部材69を感光体ドラム3の軸方向Bに対して所定の角度θ傾けた。
【0069】
図21は、清掃部材69を所定の角度θ傾けて設けた場合における、露光装置60のレンズ面64aの清掃について説明する図である。
清掃部材69を感光体の軸方向Bに対して所定の角度θ傾けることにより、まず、退避経路Rの曲線軌道上の図中b点で、清掃部材69の長手方向他端側69bが、露光装置60のレンズ面64aに接触し、長手方向他端側69bが弾性変形する。そして、露光装置60が移動するにつれて、他端側から一端側にかけて順次、清掃部材69が露光装置60のレンズ面64aに接触し、レンズ面64aを清掃していく。そして、最後に退避経路Rの曲線軌道上の図中a点で、清掃部材69の長手方向一端側69aが、露光装置60のレンズ面64aに接触し、長手方向一端側のレンズ面64aを清掃する。
【0070】
このように、清掃部材69を露光装置60の長手方向(感光体ドラム3の軸方向)に対して傾けることにより、露光装置60のレンズ面64aに清掃部材69が接触するタイミングを、長手方向で異ならせることができる。これにより、清掃部材69の弾性変形による露光装置60への押圧力や、レンズ面64aとの摩擦力が除々に増加する形となり、開閉カバー91の開閉や清掃レバー106またはスイッチ部材161の操作の負荷が、除々に増加する形となる。
【0071】
また、
図21に示すように、清掃部材69の長手方向他端側69bが、露光装置60のレンズ面64aに接触してから、清掃部材69の長手方向一端側69aが、露光装置60のレンズ面64aに接触するまでの退避経路Rの曲線軌道の距離(図中点bから点aまでの距離)は、レンズ面64aの短手方向長さよりも長くなっている。従って、少なくとも、清掃部材69の長手方向一端側69aが、露光装置60のレンズ面64aに接触したときは、清掃部材69の長手方向他端側69bは、露光装置60のレンズ面64aの清掃が終了しており、レンズ面64aから離間している。このように、清掃部材69が、長手方向全域にわたって露光装置60のレンズ面64aに接触していることはない。よって、露光装置60のレンズ面64aに長手方向でほぼ同時に清掃部材69が接触するものに比べて、清掃部材69からレンズ面64aに加わる押圧力や摩擦力に負荷の大きさも低減することができる。
【0072】
このように、清掃部材69を感光体ドラム3の軸方向Bに対して所定の角度θ傾けることにより、開閉カバー91の開閉や清掃レバー106やスイッチ部材161の操作の負荷が、除々に増加し、かつ、清掃部材69からレンズ面64aに加わる押圧力や摩擦力に負荷の大きさも低減することができる。これにより、開閉カバー91の開閉やスイッチ部材161または清掃レバー106の操作性が損なわれるのを抑制することができる。また、清掃位置を通過する際の負荷により清掃位置で止まることなくスプリングの付勢力で露光装置60を退避位置へ移動させることができる。
【0073】
図22は、第一変形例の清掃部材169を示す概略構成図である。
図22に示すように、第一変形例の清掃部材169は、露光装置60の長手方向長さの半分の長さよりも短い3つの清掃部材169a,169b,169cを有している。そして、これらは、保持部材72の、長手方向および露光装置60の退避経路Rの曲線軌道上(図中上下方向)で互いに異なる位置に取り付けられている。
【0074】
この第一変形例においては、まず、図中右端の長手方向他端側の清掃部材169cが、露光装置60のレンズ面64aに接触する。次に、長手方向他端側の清掃部材169cが露光装置60の長手方向他端側のレンズ面64aを清掃(清掃部材169cがレンズ面64aから離間した)後、長手方向中央の清掃部材169bが、露光装置60の長手方向中央のレンズ面64aと接触する。そして、長手方向中央の清掃部材169bが、長手方向中央のレンズ面64aを清掃後、長手方向一端側の清掃部材169aが、露光装置60の長手方向一端側のレンズ面64aと接触して清掃する。
【0075】
このように、第一変形例でも、露光装置60のレンズ面64aに清掃部材が接触するタイミングを、長手方向で異ならせることができる。これにより、清掃部材の弾性変形による露光装置60への押圧力や、レンズ面64aとの摩擦力の増加を抑制することができ、開閉カバー91の開閉や清掃レバー106またはスイッチ部材161の操作性が損なわれるのを抑制することができる。また、清掃位置を通過する際の負荷により清掃位置で止まることなくスプリングの付勢力で露光装置60を退避位置へ移動させることができる。
【0076】
図23は、第二変形例の清掃部材269を示す概略構成図である。
図23(a)は、露光装置60が、第二変形例の清掃部材269の清掃位置に到達する直前の様子を示した側面図であり、
図23(b)は、
図23の矢印C方向から見た図である。
【0077】
この第二変形例の清掃部材269は、ブラシであり、
図23(b)に示すように、露光装置60の清掃部材との接触範囲における軌道(図中上下方向)に対して角度θ1傾斜した直線α上に複数の毛束269bが基材691bに植毛されている。また、直線α上に配列された複数の毛束269bからなる毛束群269aが間隔Jを開けて長手方向に配列されている。
【0078】
これによれば、露光装置60のレンズ面64aの長手方向の全域にわたってブラシが接触しない。これにより、露光装置60のレンズ面64aの長手方向の全域にわたってブラシが接触するものに比べて、清掃位置を通過する際の負荷を低減することができ、開閉カバー91の開閉や、清掃レバー106またはスイッチ部材161の操作性が損なわれるのを抑制することができる。また、清掃位置を通過する際の負荷により清掃位置で止まることなくスプリングの付勢力で露光装置60を退避位置へ移動させることができる。
【0079】
また、上記間隔Jは、毛束群269aの上端の毛束と下端の毛束との間の長手方向距離以下となっている。これにより、清掃部材269の清掃範囲(
図23のK)を通過する間に、露光装置60のレンズ面64aの長手方向を満遍なく清掃することができる。
【0080】
また、露光装置60の長手方向一端側と他端側とで互いに清掃部材の清掃位置に進入するタイミングが異なるように、露光装置60を移動させることで、レンズ面64a清掃時における負荷を低減してもよい。例えば、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bとを連結する退避機構連結部材107(
図4参照)を無くし、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bのいずれか一方のみ、露光装置60を移動させる力を加える構成とする。具体的には、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bのいずれか一方のみスプリング(トーションスプリング104や引っ張りスプリング104’)を設ける。また、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bのいずれか一方のみ、引っ掛けレバー91aの先端が当接するようにしたり、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bのいずれか一方のみ、清掃レバー106を設けたりする。これにより、一端側の退避機構100aと、他端側の退避機構100bのいずれか一方のみ、露光装置60を移動させる力を加える構成にできる。かかる構成とすることで、一端側の退避機構100aと他端側の退避機構100bとの間で動作のズレを生じさせることができ、露光装置60の長手方向一端側と他端側とで互いに清掃部材の清掃位置に進入するタイミングを異ならせることができる。
【0081】
図24は、一端側の退避機構100aと他端側の退避機構100bとの間で動作のズレを生じさせて、露光装置60を清掃部材の清掃位置へ進入する様子を示す概略図である。
図23(a)は、側面図であり、
図24(b)は、
図24(a)の矢印D方向から見た図である。また、
図24は、露光装置60を退避位置から露光位置へ移動させている状態を示している。
【0082】
図24では、長手方向一端側の退避機構100aに露光装置60を移動させる力を加える構成としている。そのため、露光装置60の長手方向一端側の(
図24(b)の左側)が、退避機構によって移動し、露光装置60を介して長手方向他端側の退避機構100bに移動させる力が加わる。そのため、
図24(b)に示すように、露光装置60の長手方向一端側が、他端側に先行して露光位置へ移動する。
【0083】
このように、露光装置60の一端側が、他端側に先行して露光位置へ移動するため、露光装置60の長手方向一端側が他端側よりも先に清掃部材に接触する。そして、露光装置60が移動するにつれて、一端側から他端側にかけて順次、露光装置60のレンズ面64aに清掃部材69が接触し、レンズ面64aが清掃されていく。また、一端側と他端側との動作ズレを、レンズ面64aの短手方向長さよりも大きくすることにより、露光装置60の一端側が、清掃部材69と接触する清掃範囲を通過した後に、レンズ面64aの長手方向他端側を清掃部材69に接触させることができる。これにより、清掃部材69が、長手方向全域にわたって露光装置60のレンズ面64aに接触していることはない。
よって、
図24に示す構成においても、開閉カバー91の開閉や清掃レバー106またはスイッチ部材161の操作性が損なわれるのを抑制することができる。また、清掃位置を通過する際の負荷により清掃位置で止まることなくスプリングの付勢力で露光装置60を退避位置へ移動させることができる。
【0084】
以上に説明したものは一例であり、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
感光体ドラム3などの潜像担持体と、潜像担持体に近接した露光位置と潜像担持体から離間した退避位置との間で移動可能に構成され、潜像担持体に近接したときにレンズを介して光を照射することにより潜像担持体を露光する露光装置60と、利用者の操作により前記露光位置と前記退避位置との間で前記露光装置を移動させる開閉カバー91などの移動手段と、露光装置60のレンズの表面を清掃する清掃部材69とを備えた画像形成装置において、移動手段の操作量よりも少ない操作量で、前記清掃部材69による前記レンズの表面の清掃を行わせる清掃レバー106などの清掃操作手段を備えた。
これによれば、清掃レバー106などの清掃操作手段を備えることで、開閉蓋などの移動手段の操作で露光装置60のレンズの表面を清掃するものに比べて、少ない操作量でレンズの表面を清掃部材69により清掃することができる。これにより、マニュアル等の指示に基づいて、レンズの表面を複数回清掃する場合において、移動手段の操作で清掃を行うものに比べて、利用者の負担を軽減することができる。
【0085】
(態様2)
態様1において、清掃レバー106などの清掃操作手段は、前記レンズの表面が前記清掃部材69により清掃される清掃位置を通るように前記露光装置60を移動させる。
これによれば、清掃部材69によりレンズの表面を清掃することができる。
【0086】
(態様3)
態様2において、清掃レバー106などの清掃操作手段による露光装置60の移動範囲が、開閉カバー91などの移動手段による前記露光装置60の移動範囲よりも狭い。
これによれば、開閉カバー91などの移動手段の操作量よりも清掃レバー106などの清掃操作手段の操作量を少なくすることができる。
【0087】
(態様4)
態様3において、前記清掃部材69は、前記露光装置60の移動軌道上に配置され、清掃レバー106などの清掃操作手段は、前記利用者の操作により、前記退避位置にある露光装置60を、露光位置へ向けて移動させるものであり、前記露光装置60が露光位置へ到達する前に、前記清掃操作手段の操作を止める規制突起105cなどのストッパ部材を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、露光装置60を露光位置などの露光位置で位置決めする部材(本実施形態では、位置決め穴67a,67b、スペーサ部材21、位置決めボス22)の負荷を低減することができ、位置決めする部材が破損するのを抑制することができる。
【0088】
(態様5)
態様4において、清掃レバー106などの清掃操作手段による露光装置60の移動範囲において、前記露光装置60を前記退避位置へ移動するように前記露光装置60を付勢する付勢手段(本実施形態では、トーションスプリング104または引っ張りスプリング104’)を備えた。
これによれば、清掃レバー106などの清掃操作手段の操作が規制突起105cなどのストッパ部材に止められた後、利用者が清掃操作手段を離すと、露光装置60が付勢手段(本実施形態では、トーションスプリング104または引っ張りスプリング104’)の付勢力で、自動で退避位置へ戻る。これにより、露光装置60を露光位置などの露光位置へ向けて移動させるよう清掃操作手段を操作すればよく、露光装置60のレンズ面64aの清掃作業の負担を軽減することができる。
【0089】
(態様6)
態様5において、清掃操作手段は、前記露光装置60を、前記露光位置へ向けて押し込むスイッチ部材161などの押し込み部材である。
これによれば、先の
図19を用いて説明したように、スイッチ部材161などの押し込み部材を押し込むという簡単な操作により、露光装置60を移動させることができ、露光装置60のレンズ表面の清掃作業の負担を軽減することができる。
【0090】
(態様7)
態様1乃至5いずれかにおいて、清掃操作手段は、回転可能に保持された清掃レバー106などのレバー部材である。
これによれば、てこの原理を利用して操作することができ、軽い操作で露光装置60を移動させることができ、露光装置60のレンズ表面の清掃作業の負担を軽減することができる。
【0091】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、前記移動手段は、装置本体に対して開閉可能に設けられた開閉カバー91などの外装カバーである。
これによれば、本実施形態で説明したように、感光体ドラム3などの潜像担持体を有したユニットの着脱時に、外装カバーの開閉動作に連動して露光装置60を、退避位置と露光位置との間を移動させるこができる。これにより、外装カバーを開閉した後に、利用者が露光装置60を、退避位置と露光位置との間を移動させるように移動手段を操作する必要がない。
【0092】
(態様9)
態様1乃至7いずれかに記載の画像形成装置において、前記移動手段は、装置本体内に開閉可能に設けられたインナーカバーである。
これによれば、潜像担持体を有したユニットの着脱時に、インナーカバーの開閉動作に連動して露光装置60を、退避位置と露光位置との間を移動させるこができる。これにより、インナーカバーを開閉した後に、利用者が露光装置60を、退避位置と露光位置との間を移動させるように移動手段を操作する必要がない。
【0093】
(態様10)
態様8または9において、清掃レバー106などの清掃操作手段は、開閉カバー91などの移動手段よりも装置内部側に設けられている。
これによれば、インナーカバーまたは外装カバーの移動手段により装置内部を閉じることができ、装置内の密閉性を保つことができる。
【0094】
(態様11)
態様1乃至10いずれかにおいて、前記清掃部材69は、前記露光装置の移動軌道上に配置されており、前記レンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるタイミングを、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向で異ならせた。
これによれば、先の
図20などを用いて説明したように、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向において同時でレンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるものに比べて、露光装置60の移動負荷の急激な増加を抑制することができる。
【0095】
(態様12)
態様11において、前記清掃部材69を、前記回転軸方向に対して傾斜して配置した。
これによれば、
図20を用いて説明したように、前記レンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるタイミングを、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向で異ならせることができる。
【0096】
(態様13)
態様11において、清掃部材を複数備え、複数の清掃部材は、前記回転軸方向において互いに異なる位置に配置されるとともに、前記移動軌道上の互いに異なる位置に配置される。
これによれば、
図22を用いて説明したように、前記レンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるタイミングを、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向で異ならせることができる。
【0097】
(態様14)
態様11において、清掃部材69は、前記露光装置60の前記清掃位置での移動方向対してある角度を持って配列された毛束のパターンが、前記回転軸方向において複数配列されたブラシである。
これによれば、
図23を用いて説明したように、前記レンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるタイミングを、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向で異ならせることができる。
【0098】
(態様15)
態様11において、前記露光装置60は、前記回転軸方向に対して傾斜した状態で、前記清掃位置を移動する。
これによれば、
図24を用いて説明したように、前記レンズ面64aの表面が、清掃部材69により清掃されるタイミングを、感光体ドラム3などの潜像担持体の回転軸方向で異ならせることができる。
【0099】
(態様16)
態様15において、露光装置60の前記回転軸方向一端側が、他端側に比べて、先行して移動する。
これによれば、
図24を用いて説明したように、露光装置60を、回転軸方向に対して傾斜した状態で清掃位置を移動させることができる。