特許第6960107号(P6960107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960107粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960107
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/35 20060101AFI20211025BHJP
   E01C 7/14 20060101ALI20211025BHJP
   E01C 7/34 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   E01C7/35
   E01C7/14
   E01C7/34
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-61897(P2018-61897)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-173358(P2019-173358A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高山 和久
(72)【発明者】
【氏名】安久 憲一
(72)【発明者】
【氏名】青木 真材
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−036155(JP,A)
【文献】 特開2017−179800(JP,A)
【文献】 特開2001−271305(JP,A)
【文献】 特開2016−169592(JP,A)
【文献】 特開平10−102407(JP,A)
【文献】 特開平02−292402(JP,A)
【文献】 特開2006−102705(JP,A)
【文献】 特開2010−229176(JP,A)
【文献】 特開2007−070824(JP,A)
【文献】 米国特許第09758934(US,B1)
【文献】 特開2002−012484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01C 21/00−23/24
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
E04F 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道用の硬化した舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加し、人工的に水を添加する、又は、自然由来の水分を利用することによって、該舗装コンクリートに含まれるセメント水和物中の酸に溶脱する成分を溶脱させ、骨材を前記舗装コンクリート表面に残存させることで、前記表面を粗面化処理する、粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記表面が傾斜しており、その勾配が3%以上である、請求項1に記載の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記表面に前記酸材料を添加した後、さらに人工的に水を添加することによって、前記表面を粗面化処理する、請求項1または2に記載の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記酸材料は、有機酸を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項5】
前記表面の上方が、構造物で覆われている、請求項1〜4のいずれかに記載の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項6】
人工的に添加する水の添加量が60g/m以上180g/m以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車道用の舗装コンクリート表面は、車両に対して滑り止め機能を発揮するために、供用前に箒目仕上げにより粗面化される。
【0003】
しかし、供用前に粗面化された車道用の舗装コンクリート表面は、供用中に車両の通行などに伴って摩耗される(磨かれる)ので、徐々に滑り易くなって、車両に対する滑り止め機能を十分に発揮できなくなる場合がある。このような場合、滑り止め機能を回復するために、車道用の舗装コンクリート表面を新たに粗面化する必要がある。換言すれば、粗面化された車道用の舗装コンクリートを新たに製造する必要がある。
【0004】
車道用の舗装コンクリート表面を粗面化する方法として、ショットブラスト、ダイアモンドグラインディング、ウォータージェットなどの各種工法が挙げられる(非特許文献1参照)。該方法によれば、広範囲のコンクリート表面を迅速に切削し粗面化させることができる。
【0005】
しかし、非特許文献1に記載の方法は、大掛かりな機械を使用するので、経済的ではない。また、コンクリート表面を切削するので、切削時に騒音が発生するという問題もある。そのため、上述のような問題が生じないような粗面化法が望まれている。
【0006】
そこで、酸水溶液を用いて車道用の舗装コンクリート表面を粗面化する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−179800号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「効果的なコンクリート舗装のすべり抵抗回復工法に関する検討」、道路建設、No.752、P63−69、2015年9月1日、日本道路建設業協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術によれば、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車両に対して十分な滑り止め機能を発揮できる車道用の舗装コンクリートを製造し得る。
しかし、より一層、車両に対する滑り止め機能を十分に発揮することができれば、望ましい。また、滑り止め機能を付与するにあたり、作業性に十分に優れることも、望ましい。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車両に対して従来よりも十分な滑り止め機能を発揮できる車道用の舗装コンクリートを、十分に優れた作業性で製造できる、粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、以下の知見を見出した。
すなわち、車道用の舗装コンクリート表面に酸水溶液を添加する場合には、該表面に凹部が存在すると、この凹部に酸水溶液が溜まって局所的に偏在するおそれがある。また、該表面が勾配を有する場合には、添加された酸水溶液が勾配に沿って流れ出すおそれがある。このような場合には、舗装コンクリート表面と酸水溶液との接触時間を十分確保することが困難になり、その結果、所望の滑り止め機能を発揮し得ないおそれがある。
一方、所望の滑り止め機能を発揮させようとすれば、何回も酸水溶液の添加を行う必要があるため、作業工程や作業時間が増加したり、施工管理が困難になったりする結果、作業効率が低下するおそれがあり、作業性に十分に優れているとはいい難い。
また、液体を散布する装置は、通常、金属製であるため、酸水溶液を散布する場合、酸水溶液による腐食対策やメンテナンスを十分に行う必要がある等、事前準備や事後の機器整備が煩雑となるため、この点でも作業性に十分に優れているとはいい難い。
【0012】
そして、これら知見に基づいて本発明者らがさらに鋭意研究を行ったところ、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加することによって、該表面の凹部や勾配によらず、酸材料と舗装コンクリート表面との接触時間を、酸水溶液を添加する場合よりも十分に確保することができるため、滑り止め機能を十分に発揮させ得ることを見出した。しかも、液体を散布する散布装置を用いる必要がなく、例えば、樹脂製の柄杓等を用いて添加することができるため、腐食に起因した作業性の低下を抑制し、作業性に十分に優れることをも見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法は、
車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加することによって、前記表面を粗面化処理する。
【0014】
かかる構成によれば、車道用の舗装コンクリート表面に添加した固体状の酸材料によって、舗装コンクリートに含まれるセメント水和物(水酸化カルシウムなど)中の酸に溶脱する成分(カルシウムなど)を溶脱させ、比較的酸による溶脱の影響を受けにくい骨材を舗装コンクリート表面に多く残存させることができるので、舗装コンクリート表面に凹凸を形成することができる。これにより、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できる。
また、固体状の酸材料を添加すると、舗装コンクリート表面の周囲の環境において発生した、降雨、湿気(空気中の水分)、山水等によって、上記酸材料が徐々に溶解し、高濃度の酸水溶液が発生するため、セメント水和物中の酸に溶脱する成分を、より効率的に溶脱することが可能となる。よって、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
さらに、舗装コンクリート表面が傾斜を有するような場合には、該表面に酸水溶液を添加すると、この傾斜に沿って該表面上を不意に流れて移動してしまい、所望の箇所に酸水溶液を留めておくことが困難となるおそれがある。しかし、固体状の酸材料を添加することによって、かかる不意な移動が生じることを抑制し得る。よって、所望の箇所に、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
このようにして得られた粗面化された車道用の舗装コンクリートは、車両に対する滑り止め機能が十分に高められたものとなる。
従って、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車両に対して従来よりも十分な滑り止め機能を発揮できる車道用の舗装コンクリートを、十分に優れた作業性で製造できる。
【0015】
上記構成の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記表面が傾斜しており、その勾配が3%以上であってもよい。
【0016】
ここで、勾配が3%以上であると、酸水溶液を添加する場合には、傾斜に沿って不意に流れて移動し易くなるため、十分に滑り止め機能を発揮し得ないおそれがある。
しかし、上記構成によれば、そのような傾斜を有する舗装コンクリート表面であっても、固体状の酸材料を添加することによって、酸水溶液を添加する場合よりも、傾斜に沿って流れて移動し難くなる。
よって、車道用舗装コンクリート表面の勾配が3%以上である場合に、上記製造方法がより有用になる。
【0017】
上記構成の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記表面に前記酸材料を添加した後、さらに水を添加することによって、前記表面を粗面化処理してもよい。
【0018】
ここで、固体状の酸材料は、これを添加した後、水を添加しても、直ぐに溶解するのではなく、表面から徐々に溶解していく。このように、水を添加しても、直ぐに水溶液とはならないため、水の移動と共に流れて移動し難い。
一方、水を添加することにより、周囲の環境に依存することなく、固体状の酸材料を水に溶解させることができるため、より確実に、滑り止め機能を発揮させ得る。
【0019】
上記構成の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記酸材料は、有機酸を含んでいてもよい。
【0020】
かかる構成によれば、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加する際に、酸材料に含まれる酸によって作業者に及ぼされる健康被害を低減することができる。
これにより、酸によって作業者に及ぼされる健康被害の影響を低減しつつ、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できる。
【0021】
上記構成の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記表面の上方は、構造物で覆われていてもよい。
【0022】
上方が構造物で覆われている車道用の舗装コンクリート表面には、上方が構造物で覆われていない車道用の舗装コンクリート表面に比べて水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)が多く含有されるので、該表面は車両の通行により摩耗されて(磨かれて)滑り易くなっている。しかし、かかる構成によれば、摩耗により滑り易くなった該表面を粗面化し、該表面に十分な滑り止め機能を付与することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車両に対して従来よりも十分な滑り止め機能を発揮できる車道用の舗装コンクリートを製造する製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法について説明する。
【0025】
本実施形態に係る粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法は、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加することによって、前記表面を粗面化処理する。
【0026】
詳しくは、コンクリート中のセメント水和物(水酸化カルシウムなど)中の酸に溶脱する成分(カルシウムなど)を固体状の酸材料に含まれる酸により溶脱させて、比較的酸による溶脱の影響を受けにくい骨材をコンクリート表面に多く残存させることにより、コンクリート表面を粗面化させる。
これにより、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できる。
本実施形態の製造方法は、車両の通行などにより箒目が摩耗されて(磨かれて)、滑り止め機能を十分に発揮できなくなった車道用の舗装コンクリート表面に採用されることが好ましい。
【0027】
車道用の舗装コンクリート表面への固体状の酸材料の添加は、例えば、固体状の酸材料を該表面に散布することなどによって行うことができる。固体状の酸材料の散布は、各種公知の方法により行うことができる。例えば、固体状の酸材料の散布は、樹脂製の柄杓等を用いて散布することによって行うことができる。
【0028】
固体状の酸材料に含まれる酸としては、水と接触したとき該水に溶解され、コンクリートを浸食して車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できるものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などの無機酸、酢酸、酪酸、ギ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸などの有機酸を用いることができる。これらの酸は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
車道用の舗装コンクリート表面に対する固体状の酸材料の添加は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。車道用の舗装コンクリート表面に対する固体状の酸材料の添加量は、粗面化されるべき舗装コンクリート表面を、車両に対する十分な滑り止め機能を付与できるように粗面化できる量であれば、特に限定されない。
【0030】
車道用の舗装コンクリート表面に対する固体状の酸材料の添加量は、特に限定されないが、例えば、より十分に滑り止め機能を発揮させ得るという点で、該添加量を、例えば、150g/m以上とすることができ、200g/m以上とすることが好ましい。一方、経済性の観点、及び、比較的大きな勾配においても流れ出すことを抑制し得るという点で、該添加量を、例えば、1000g/m以下とすることができ、800g/m以下とすることが好ましい。
また、1回の添加、または、複数の添加によって、上記添加量を、200g/m以上1000g/m以下としてもよい。
【0031】
車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を接触させる総時間は、特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。
例えば、固体状の酸材料を舗装コンクリート表面に添加すると、固体状の酸材料が全て舗装コンクリート表面の成分と反応するまで、中和反応が進行する。よって、より深い凹凸をより多く形成するという観点を考慮すると、上記接触させる総時間は、長い程、好ましい。
また、自然由来の水分(雨やトンネル内の湿気)によって固体状の酸材料を溶解させる場合にも、上記接触させる総時間は、長い程、好ましい。なお、このように自然由来の水分を利用する場合には、添加した固体状の酸材料をそのまま放置(静置)してもよく、放置された固体状の酸材料は、車両の通行によって消散され、これによって、中和反応が終了することになる。
【0032】
一方、舗装コンクリート表面に添加した後に、そのまま固体状の酸材料を放置(静置)すると、中和反応によって生成した反応生成物が障害となって、添加の初期と比較して、中和反応が進み難くなる傾向にある。この観点を考慮すると、上記接触させる総時間は、短い程、好ましい。また、自然由来の水を利用せず、人力によって(人工的に)水を添加する場合には、自然由来の水を利用する場合よりも、固体状の酸材料が早期に溶解するため、その分、固体状の酸材料を早期に除去し得る。
このように反応効率を向上させたり、人工的に水を添加したりする、といったように作業性を向上させようとする場合には、作業性の向上の程度に応じて上記接触させる時間を適宜設定することができる。この場合には、例えば、0分を超えて60分以下とすることが好ましく、5分以上30分以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、自然由来の水を利用する場合においても、人工的に水を添加する場合においても、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を接触させる総時間は、固体状の酸材料を接触させたコンクリート表面を洗浄すること等によって調整できる。
【0034】
固体状の酸材料の形状は特に限定されるものではなく、例えば、粉末状であっても、粒状であってもよい。かかる粒状の酸材料は、粉末の酸材料が造粒されてなる造粒物であってもよい。
【0035】
固体状の酸材料に含まれる酸としては、有機酸を用いることが好ましい。有機酸を用いることによって、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加する際に、酸材料に含まれる酸によって作業者に及ぼされる健康被害を低減することができる。
【0036】
固体状の酸材料を添加すると、舗装コンクリート表面の周囲の環境において発生した、降雨、湿気(空気中の水分)、山水等によって、上記酸材料が徐々に溶解し、高濃度の酸水溶液が発生するため、セメント水和物中の酸に溶脱する成分を、より効率的に溶脱することが可能となる。よって、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
【0037】
このように、固体状の酸材料が徐々に水に溶解される際、通常、生成された水溶液中に、酸材料がその飽和溶解度に近い状態で溶解することになる。よって、酸水溶液を添加する場合よりも、高い濃度で酸を有する水溶液が、舗装コンクリートの表面と接触することになる。よって、酸水溶液を添加する場合よりも、短時間で効率的に、滑り止め機能を発揮させ得る。
【0038】
このように高濃度で酸材料が溶解した水溶液のpHは、かかる溶解によって得られた水溶液が有するpHであればよく、特に限定されない。
【0039】
さらに、舗装コンクリート表面が傾斜を有するような場合には、該表面に酸水溶液を添加すると、この傾斜に沿って該表面上を不意に流れて移動してしまい、所望の箇所に酸水溶液を留めておくことが困難となるおそれがある。しかし、固体状の酸材料を添加することによって、かかる不意な移動が生じることを抑制し得る。よって、所望の箇所に、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
このようにして得られた粗面化された車道用の舗装コンクリートは、車両に対する滑り止め機能が十分に高められたものとなる。
【0040】
固体状の酸材料の添加においては、乾燥した舗装コンクリートの表面に固体状の酸材料を添加しても、舗装コンクリートの表面に水を散布などの方法で添加した後、固体状の酸材料を添加してもよい。また、乾燥した舗装コンクリートの表面に固体状の酸材料を添加した後、水を散布などの方法で添加してもよい。
【0041】
例えば、舗装コンクリートの表面に水を散布などの方法で添加した後、固体状の酸材料を添加する場合には、例えば、水の添加量を60g/m以上180g/m以下としてもよく、好ましくは60g/m以上150g/m以下としてもよい。
水の添加量を60g/m以上とすることによって、舗装コンクリートの表面を全体にわたって十分に水で濡らすことができる。
水の添加量を180g/m以下とすることによって、舗装コンクリートの表面から水が流れ出してしまうことを抑制し得る。
また、このように、水の添加量を60g/m以上180g/m以下とし、前述した通り、固体状の酸材料の添加量を150g/m以上1000g/m以下としてもよい。
【0042】
固体状の酸材料によって粗面化された車道用の舗装コンクリート表面を、水などで洗浄することが好ましい。このように洗浄することによって、セメント水和物(水酸化カルシウムなど)中の酸に溶脱する成分を酸で溶脱させたときに生成される生成物を、車道用の舗装コンクリート表面から十分に洗い流す(除去する)ことができるので、該生成物が車道用の舗装コンクリート表面に残留することによって生じるぬめり(滑り)を抑制することができる。これにより、得られる粗面化された車道用の舗装コンクリート表面は、より十分な滑り止め機能を有するものとなる。
【0043】
粗面化される車道用の舗装コンクリート表面の上方は、構造物で覆われていることが好ましい。上方が構造物で覆われている車道用の舗装コンクリート表面には、上方が構造物で覆われていない車道用の舗装コンクリート表面に比べて水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)等が多く含有されるので、該表面は車両の通行により摩耗されて(磨かれて)滑り易くなっている。しかしながら、上記のようにすれば、摩耗により滑り易くなった該表面を粗面化し、該表面に滑り止め機能を十分に付与することができる。
なお、上方が構造物で覆われているとは、粗面化される車道用の舗装コンクリート表面の上方にトンネルなどの構造物が形成されていて、該舗装コンクリート表面の上方が該構造物で覆われていることを意味する。
【0044】
前記舗装コンクリートに用いる水硬性材料としては、各種セメントや石灰(生石灰や消石灰など)などが挙げられる。セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの各種混合セメントなどのJISに規定されたセメント、白色ポルトランドセメントやアルミナセメントなどのJISに規定されていない特殊なセメントなどが挙げられる。これらの水硬性材料は、単独で使用してもよいし、複数を選択して使用してもよい。
【0045】
なお、本発明の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、該製造方法に種々の変更を加えることも可能である。
【0046】
上記実施形態では、箒目が摩耗されて(磨かれて)、滑り止め機能を十分に発揮できなくなった車道用の舗装コンクリート表面に本製造方法を適用する例について示したが、本製造方法を適用する例はこれに限られない。供用前の車道用の舗装用コンクリート表面に本製造方法を採用し、箒目仕上げを省略するようにしてもよい。
【0047】
また、コンクリートを化学的に浸食する固体状の硫酸塩などと組み合わせて、上記実施形態を実施してもよい。
【0048】
また、本製造方法は、現場打ちコンクリートのみならず、施工現場で組み立て・設置を行う、ブロック舗装や平板舗装などのプレキャスト製品にも採用することができる。
【0049】
上記の通り、本実施形態の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法は、
車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加することによって、前記表面を粗面化処理する。
【0050】
かかる構成によれば、車道用の舗装コンクリート表面に添加した固体状の酸材料によって、舗装コンクリートに含まれるセメント水和物(水酸化カルシウムなど)中の酸に溶脱する成分(カルシウムなど)を溶脱させ、比較的酸による溶脱の影響を受けにくい骨材を舗装コンクリート表面に多く残存させることができるので、舗装コンクリート表面に凹凸を形成することができる。これにより、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できる。
また、固体状の酸材料を添加すると、舗装コンクリート表面の周囲の環境において発生した、降雨、湿気(空気中の水分)、山水等によって、上記酸材料が徐々に溶解し、高濃度の酸水溶液が発生するため、セメント水和物中の酸に溶脱する成分を、より効率的に溶脱することが可能となる。よって、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
さらに、舗装コンクリート表面が傾斜を有するような場合には、該表面に酸水溶液を添加すると、この傾斜に沿って該表面上を不意に流れて移動してしまい、所望の箇所に酸水溶液を留めておくことが困難となるおそれがある。しかし、固体状の酸材料を添加することによって、かかる不意な移動が生じることを抑制し得る。よって、所望の箇所に、より十分な滑り止め機能を発揮させ得る。
このようにして得られた粗面化された車道用の舗装コンクリートは、車両に対する滑り止め機能が十分に高められたものとなる。
従って、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車両に対して従来よりも十分な滑り止め機能を発揮できる車道用の舗装コンクリートを、十分に優れた作業性で製造できる。
【0051】
本実施形態の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記表面が傾斜しており、その勾配が3%以上であってもよい。
【0052】
ここで、勾配が3%以上であると、酸水溶液を添加する場合には、傾斜に沿って不意に流れて移動し易くなるため、十分に滑り止め機能を発揮し得ないおそれがある。
しかし、上記構成によれば、そのような傾斜を有する舗装コンクリート表面であっても、固体状の酸材料を添加することによって、酸水溶液を添加する場合よりも、傾斜に沿って流れて移動し難くなる。
よって、車道用舗装コンクリート表面の勾配が3%以上である場合に、上記製造方法がより有用になる。
また、かかる観点を考慮すれば、勾配が、5%以上であることがより好ましい。
一方、車道用舗装コンクリート表面の勾配は、特に限定されるものではないが、例えば45%以下とされることができ、通常、12%以下とされ得る。
【0053】
本実施形態の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記表面に前記酸材料を添加した後、さらに水を添加することによって、前記表面を粗面化処理してもよい。
【0054】
ここで、固体状の酸材料は、これを添加した後、水を添加しても、直ぐに溶解するのではなく、表面から徐々に溶解していく。このように、水を添加しても、直ぐに水溶液とはならないため、水の移動と共に流れて移動し難い。
一方、水を添加することにより、周囲の環境に依存することなく、固体状の酸材料を水に溶解させることができるため、より確実に、滑り止め機能を発揮させ得る。
【0055】
本実施形態の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記酸水溶液は、有機酸を含んでいてもよい。
【0056】
かかる構成によれば、車道用の舗装コンクリート表面に固体状の酸材料を添加する際に、酸材料に含まれる酸によって作業者に及ぼされる健康被害を低減することができる。
これにより、酸によって作業者に及ぼされる健康被害の影響を低減しつつ、経済的に、且つ切削時の騒音が発生しないように、車道用の舗装コンクリート表面を粗面化できる。
【0057】
本実施形態の粗面化された車道用の舗装コンクリートの製造方法においては、
前記車道用の舗装コンクリート表面の上方は、構造物で覆われていてもよい。
【0058】
上方が構造物で覆われている車道用の舗装コンクリート表面には、上方が構造物で覆われていない車道用の舗装コンクリート表面に比べて水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)等が多く含有されるので、該表面は車両の通行により摩耗されて(磨かれて)滑り易くなっている。しかし、かかる構成によれば、摩耗により滑り易くなった該表面を粗面化し、該表面に十分な滑り止め機能を付与することができる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
<コンクリート供試体の作製>
表1に示す配合で、各成分を強制2軸ミキサによって練り混ぜてコンクリート組成物(混練物)を調製した後、角柱供試体用型枠(10×10×40cm)内に打設した。打設翌日、コンクリート組成物を該型枠から脱型し、材齢28日まで水中養生して、コンクリート供試体を作製した。
なお、表1において、W/Cは水セメント比、Wは水、Cはセメント、sは細骨材の容積、aは細骨材と粗骨材の合計容積を意味する。また、表中のC%は、セメントの質量に対する、減水剤の質量百分率を意味する。
セメントとして、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)を用いた。
【0061】
【表1】
【0062】
<粗面化前のコンクリート表面の滑り抵抗の測定>
水中から取り出した供試体をそのまま用い(固体状の酸材料の添付量が0g/m)、この供試体を、実際に道路構造令(平成23年改正)で示される一般的な道路の最大勾配である12%の勾配となるように、斜めに設置した。この供試体について、舗装調査・試験法便覧(平成19年6月版、社団法人日本道路協会編)のS021−2「振り子スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に準拠して、表面(上面)のBPN値(すべり抵抗値)を測定した。結果を表4に示す。
【0063】
<粗面化後のコンクリート表面の滑り抵抗の測定>
水中から取り出した供試体を、上記と同様、12%の勾配となるように設置し、その濡れた状態の表面(上面)に、表2に示す各固体状の酸材料(クエン酸、グルコン酸)を、表3の散布量となるようにそれぞれ散布し、表2に示す酸水溶液(乳酸水溶液、クエン酸水溶液)を、表3に示す各塗布量でそれぞれ塗布し、5分間静置した。静置後、供試体の表面を水で洗い流し、表乾状態となるまで拭き取った後、上記と同様にして、表面(上面)のBPN値を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示すように、固体状の酸材料及び酸水溶液のいずれにおいても、これらを添加しない場合よりも、すべり抵抗値は大きくなった。
しかし、固体状の酸材料の方が、酸水溶液よりも、すべり抵抗値が大きくなった。
供試体の勾配を考慮すると、コンクリートの表面に酸水溶液を添加した場合には、その多くが勾配によって流れ出し、所望の接触時間を確保できなかったため、固体状の酸材料よりも、すべり抵抗値が小さくなった。
固体状の酸材料においては、添加量が800g/mと多量になると、勾配によって一部が流れ出し、すべり抵抗値がそれ以上上昇しなくなる(頭打ちとなる)傾向が見られた。
【0067】
一方、上記のように斜めに設置した供試体(表乾状態)の表面(上面)に、添加量を徐々に増加させながら水を添加したところ、60g/m程度の添加量から表面全体が均一に濡れた状態となり、150g/m超える程度から一部の水が流れ出す傾向が見られはじめ、180g/m程度を超える程度から、多量に水が流れ出す傾向が見られた。
これに対し、供試体を水平(勾配0%)にした状態で水を散布した場合には、200g/m程度を超えた辺りから周囲に流れ出す状況が確認され、勾配を大きくするほど少ない量で流れ始める傾向が見られた。
【0068】
上述の実施形態および実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。