【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年6月20日 2016年 第51回地盤工学研究発表会 平成28年度発表予稿集、1065〜1066頁にて公開平成28年9月13日 2016年 第51回地盤工学研究発表会にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記堤防では、以下の問題がある。
(1)の堤防は、堤防盛土に浸透した水を排水層で排水することで堤防盛土内の浸潤面低下や浸透水によるのりすべりを抑制できるが、河川等の水が越流した場合には、越流した水で裏のり面が侵食され易い問題がある。
(2)の堤防は、裏のり面の表面がコンクリート等の被覆工で覆われているため、越流した水に対し程度の侵食を抑制することができるが、被覆工を構成するブロックの目地から水が浸入すると被覆工下の土が流出し易く、被覆工下の土が流出するとブロックが流れ落ち、最終的に決壊してしまう場合がある。
(3)の堤防は、(2)の堤防よりも裏のり面の補強効果が高いが、越流が長時間に渡ると、ブロックの目地から浸入した被覆工下の土が流出するため、時間の経過と共にブロックが流れ落ちてしまう場合がある。
(4)の堤防は、幅が非常に広いため、強固な構造ではあるが、設置場所が限定され、施工時間も膨大となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、簡単な構造で堤防の裏のり面の高い補強効果を得ることのできる堤防補強構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の堤防補強構造は、堤体盛土の裏のり面の上に設けられ、前記裏のり面の法肩から法尻まで連続して設けられた排水層と、前記排水層の外面全体を被覆し、前記排水層と連結されている
コンクリート平板と、前記排水層と前記裏のり面との間に配置され、水は透過させ、前記堤体盛土の土の透過は抑制する透水シートと、を有する。
【0007】
請求項1に記載の堤防補強構造では、表のり面側から河川等の水が堤体盛土の内部を裏のり面側へ浸透した場合、浸透した水は透水シートを介して排水層へ進入し、排水層の内部を通して堤防外へ流すことができる。透水シートは、堤体盛土の土粒子の透過を抑制するので、堤体盛土の裏のり面側の土が浸透した水の流れで流出すること、言い換えれば土の吸出しが抑制され、堤体盛土の内部に浸透した水に起因する堤体盛土の裏のり面側の侵食を抑制することができる。
【0008】
また、河川等の水が裏のり面側へ越流した場合、越流した水は
コンクリート平板の上面に沿って下方へ流れる。
請求項1に記載の堤防補強構造では、コンクリート平板で排水層の外面全体を覆うため、排水層を保護する効果が高い。請求項1に記載の堤防補強構造では、
コンクリート平板を排水層と連結しているので、
コンクリート平板は、排水層と連結しない場合に比較して、越流した水に起因する流れ落ちを抑制することができる。
【0009】
さらに、
コンクリート平板の目地から越流した水が堤体内に流入した場合、流入した水は裏のり面の法肩から法尻まで連続して設けられた排水層を介して堤防外へ流すことができるため、長時間に渡って越流した場合においても、越流した水に起因する堤体盛土の侵食を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の堤防補強構造において、前記排水層は、複数の砕石を収容し、上部の一部が前記堤体盛土の内部に向けて延設された複数の
袋状の網状部材で構成されており、
前記透水シートは、前記網状部材毎に前記網状部材と前記裏のり面との間に設けられている。
【0013】
請求項2に記載の堤防補強構造では、排水層が、複数の砕石を収容した複数の
袋状の網状部材で構成されているため、網状部材に収容された複数の砕石からなる塊が崩れ難くなっている。
【0014】
また、複数の砕石を収容した網状部材の上部の一部が堤体盛土の内部に向けて延設されており、堤体盛土の内部に向けて延設されている網状部材の一部が土と噛合うため、仮に、砕石を収容している網状部材の下側の土が流出した場合であっても、堤体盛土と網状部材との間の摩擦抵抗により、砕石を収容した網状部材がズレたり、滑り落ちる事を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の堤防補強構造において、複数の砕石を収容した複数の
袋状の前記網状部材が、前記裏のり面の下端から上端に向けて一部分が積み重なるように配置されている。
【0016】
請求項3に記載の堤防補強構造では、砕石を収容した複数の網状部材が、裏のり面の下端から上端に向けて一部分が積み重なるように配置されているため、排水層の内部で上側から下側へスムーズに水を流すことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の堤防補強構造において、前記裏のり面には、水平面と垂直面とを含んで構成される複数の段部が形成され、複数の砕石を収容した
袋状の前記網状部材は、前記水平面に載置されている。
【0018】
請求項4に記載の堤防補強構造では、複数の砕石を収容した網状部材が、水平面に載置されているので、傾斜面に載置した場合に比較して、ズレ難くなっている。
【0019】
請求項5に記載の発明は、
請求項3に記載の堤防補強構造において、前記裏のり面は、下端から上端に向けて全体的に水平方向に対して傾斜しており、複数の砕石を収容した
袋状の前記網状部材は、前記裏のり面に載置されている。
【0020】
請求項5に記載の堤防補強構造では、複数の砕石を収容した網状部材が、傾斜した裏のり面に載置されているため、排水層の中の水を、傾斜した裏のり面に沿ってスムーズに流すことができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載の堤防補強構造において、前記排水層は、一つまたは複数の合成樹脂製の3次元網目構造体を含んで構成されている。
【0022】
請求項6に記載の堤防補強構造では、排水層が、一つまたは複数の合成樹脂製の3次元網目構造体を含んで構成されているので、排水層の重量を軽くすることができ、排水層の施工も容易になる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、
請求項6に記載の堤防補強構造において、
複数の前記3次元網目構造体が、前記裏のり面の下端から上端に向けて一部分が積み重なるように配置されて
おり、前記透水シートは、前記3次元網目構造体毎に前記3次元網目構造体と前記裏のり面との間に設けられている。
【0024】
請求項7に記載の堤防補強構造では、3次元網目構造体が、裏のり面の下端から上端に向けて一部分が積み重なるように配置されているため、排水層の内部で上側から下側へスムーズに水を流すことができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、
請求項7に記載の堤防補強構造において、前記裏のり面には、水平面と垂直面とを含んで構成される複数の段部が形成され、前記3次元網目構造体は、前記水平面に載置されている。
【0026】
請求項8に記載の堤防補強構造では、3次元網目構造体が、水平面に載置されているので、傾斜面に載置した場合と比較して、ズレ難くなっている。
【0027】
請求項9に記載の発明は、
請求項7に記載の堤防補強構造において、前記裏のり面は、下端から上端に向けて全体的に水平方向に対して傾斜しており、前記3次元網目構造体は、前記裏のり面に載置されている。
【0028】
請求項9に記載の堤防補強構造では、3次元網目構造体が、傾斜した裏のり面に載置されているため、排水層の中の水を、傾斜した裏のり面に沿ってスムーズに流すことができる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の堤防補強構造において、前記透水シートは、不織布である。
【0032】
請求項10に記載の堤防補強構造では、透水シートを不織布としたので、透水シートを安価に構成することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明の堤防補強構造によれば、簡単な構造で堤防の裏のり面の高い補強効果が得られる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施形態]
図1〜
図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る堤防補強構造10について説明する。
図1には、第1実施形態に係る堤防補強構造10が適用された堤防12が断面図にて示されている。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の堤防12は、基礎地盤14の上に設けられた断面形状が台形状とされた堤体盛土本体16を備えており、河川18に沿って形成されている。この堤体盛土本体16は、堤防に一般的に用いられている盛土材により形成されている。盛土材は、主として粘土,シルト,砂,礫、及び現地発生土などである。
【0037】
堤体盛土本体16の頂部である天端20には、アスファルト、コンクリート等の天端舗装22が敷設されている。
【0038】
堤体盛土本体16の河川18側(図面左側、堤外)の表のり面24の表面には、被覆層としての被覆工26が敷設されている。本実施形態の被覆工26は、平面視で矩形状とされたコンクリート平板であり、互いに密着するように隙間無く敷設されている。なお、被覆工26としては、コンクリート平板以外のものを用いてもよく、形状も矩形に限らず、その他の形状であってもよく、堤防に用いられる一般的なものを用いることができる。なお、本実施形態で用いるコンクリート平板は、非透水性である。被覆工26同士は、接着剤、セメント等で接合されていることが好ましい。
【0039】
一方、堤体盛土本体16の河川18側とは反対側(図面右側、堤内)の裏のり面28は、下端から上端にかけて全体的に水平方向に対して傾斜しており、堤防補強構造10で覆われている。堤防補強構造10は、表のり面24と同じ被覆工26と、被覆工26の下側に形成された排水層30とを含んで構成されている。
【0040】
図1、及び
図2に示すように、本実施形態の排水層30は、複数個の砕石32を袋状に形成した網状部材34の内部に収容した構成の透水性砕石収容体36を、裏のり面28の下端(のり尻)から上端(のり肩)まで連続して敷設することで構成されており、堤体盛土本体16よりも高い透水性を有している。
【0041】
図3(A)に示すように、網状部材34は、水平方向に延びる上辺部34Aと、上辺部34Aの被覆工26側の端部から被覆工26の裏面に沿って斜め下方に延びる被覆工側辺部34Bと、被覆工側辺部34Bの下端から堤体盛土本体16側へ向けて水平方向に延びる下辺部34Cと、下辺部34Cの堤体盛土本体16側の端部から被覆工側辺部34Bと平行に斜め上方に延びる堤体盛土本体側辺部34Dとで、断面形状が略平行四辺形を呈している。上辺部34Aは、堤体盛土本体16側が堤体盛土本体16の内部に向けて水平に延びており、その長さは、下辺部34Cよりも長く形成されている。なお、上辺部34Aにおいて、堤体盛土本体側辺部34Dの上端部よりも堤体盛土本体16側へ延びている部分を延設保持部34Aaと呼ぶ。
【0042】
本実施形態に用いる網状部材34は、例えば、合成樹脂を原料としたジオグリッドを用いることができるが、他の材料からなる網状部材を用いることもできる。ジオグリッドとは、引張抵抗性のある構成要素が連結したほぼ規則的な格子構造からなるシート状のもので、高分子材料からなるものである。ジオグリッドとしては、例えば、熱可塑性樹脂製から得られ1軸又は2軸に延伸された網状物や、樹脂製板状物を格子状に加工したものや、高強度繊維のマルチフィラメントを格子状に編んだものを挙げることができる。熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
【0043】
また、ジオグリッドの他の好ましい例として、繊維素材としては、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、超高分子量ポリビニルアルコール繊維、ポリアセタール繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などを例示することができる。
【0044】
高強度繊維のマルチフィラメントを格子状に編んだものは、強度、耐久性などの改良のために、これら編物に樹脂コートしたものであってもよい。ジオグリッドにおける網目の大きさ及び網目の太さは任意であるが、砕石32を通過させない網目大きさ(目あい)のものが使用される。
【0045】
ジオグリッドは、市販されているものから適宜選択して採用することができるが、市販
されているジオグリッドの一例として「ハイメッシュ」(登録商標、前田工繊株式会社製)などをあげることができる。
【0046】
砕石32としては、網状部材34を通過しないサイズのものが用いられ。なお、砕石32に代えて、砕石32に類似する砂利、その他、水で崩れることのない塊状の材料等を用いることもできる。
【0047】
なお、網状部材34は、堤体盛土本体側辺部34Dの上端部が、上辺部34Aの水平方向中間部に、一例として、結束バンド(図示せず)等で固定されている。また、網状部材34において、上辺部34A、被覆工側辺部34B、下辺部34C、及び堤体盛土本体側辺部34Dによって断面形状が略平行四辺形の筒状部分が形成されており、該筒状部分の両側の開口部分が図示しない網状部材で塞がれて袋状に形成され、その内部に複数の砕石32が収容されている。
【0048】
本実施形態では、被覆工26に網状部材34が固定されている。より具体的には、
図3(A),(B)に示すように、被覆工26の裏面に、網状部材34の被覆工側辺部34Bが接着剤(図示せず)、被覆工26に打ち込んだアンカーボルト38、座金40、及びナット42を用いて強固に固定されている。
【0049】
アンカーボルト38、座金40、及びナット42は、市販のものを用いることができ、アンカーボルト38としては、例えば、オールアンカー(登録商標、サンコーテクノ株式会社製)などをあげることができるが、他のものを用いてもよい。なお、これらの部材は耐食加工がほどこされているものが望ましい。
【0050】
本実施形態では、1つの被覆工26に対して2つの透水性砕石収容体36が固定されている。なお、1つの被覆工26に対して1つの透水性砕石収容体36が固定されていてもよく、3つ以上の透水性砕石収容体36が固定されていてもよい。
【0051】
図2に示すように、本実施形態の排水層30では、裏のり面28の下端から上端に向けて複数の透水性砕石収容体36が連続して敷設されると共に、下側の透水性砕石収容体36の上部と上側の透水性砕石収容体36の下部とが積み重なるように接続されている。
【0052】
図2、及び
図3に示すように、堤体盛土本体16と透水性砕石収容体36との間には、堤体盛土本体16の土が排水層30、詳しくは、砕石間の隙間に侵入しないように、水や空気は透過し、土の透過は抑制できる透水シート41が設けられている。透水シート41としては、一般的に市販されている合成樹脂繊維からなる不織布を用いることができるが、水や空気は透過し、土の透過は抑制できるものであれば不織布に限らず、織物、目の細かい網等を用いることもできる。不織布としては、例えば、家庭菜園用不織布(登録商標、日本マタイ株式会社製)などをあげることができる。
【0053】
透水シート41は、透水性砕石収容体36の網状部材34の堤体盛土本体側辺部34Dの全面を覆っている。また、透水シート41の上端側の一部分41Aは水平方向に曲げられ、網状部材34の延設保持部34Aaの下面に沿って堤体盛土本体16側へ延びている。
【0054】
一方、透水シート41の下端側の一部分41Bは水平方向に曲げられ、網状部材34の下辺部34Cと、下側に配置された透水性砕石収容体36の網状部材34の延設保持部34Aaとの間に挟まれた状態で被覆工26側へ延びている。これにより、透水シート41のズレが抑制されている。なお、透水シート41は、接着剤等で網状部材34に固定してもよい。
【0055】
上側の透水シート41の下端側の一部分41Bと、下側の透水シート41の上端側の一部分41Aとは、網状部材34の延設保持部34Aaを挟んで互いにオーバーラップさせてもよい。
【0056】
なお、上側の透水性砕石収容体36と下側の透水性砕石収容体36との接触部位には、透水シート41を介在させないことが好ましい。これにより、排水層30の内部に進入した水を、上側の透水性砕石収容体36から下側の透水性砕石収容体36へとスムーズに排水することができる。
【0057】
図1に示すように、基礎地盤14の上には、堤防12を越流して裏のり面28を流下した水によって堤防12の近傍の基礎地盤14が削り崩されるのを防ぐために、洗掘防止工44が堤防12に隣接して敷設されている。本実施形態の洗掘防止工44には、被覆工26と同一仕様のコンクリート平板が用いられているが、アスファルト、コンクリート等の舗装や擬石等による被覆工であってもよい。
【0058】
なお、堤防12は、
図4に示すように、裏のり面28を、水平に形成された水平面28Aと鉛直に形成された鉛直面28Bとで構成される段部が複数形成されて階段状とし、台形状の透水性砕石収容体36を水平面28Aの載置する構成としてもよい。透水性砕石収容体36を水平面28Aに載置することで、傾斜面に載置した場合に比較して、ズレ難くなり、安定性に優れたものとなる。
【0059】
(作用)
次に、本実施形態の堤防12の作用、効果を以下に説明する。
本実施形態の堤防12では、例えば、河川18の水位が上昇し、河川18の水が堤体盛土本体16の内部を裏のり面28側へ浸透した場合(
図1、矢印A参照)、浸透した水を透水シート41を介して排水層30へ排水し、排水層30の内部を通して堤防外へ排水することができる。なお、基礎地盤14には、排水層30から排出された排水を流すための排水路を設けてもよい。
また、裏のり面28は全体的に傾斜しているので、排水層30の内部の水を、傾斜した裏のり面28に沿ってスムーズに流すことができる。
【0060】
ところで、河川18の水位が上昇すると、堤体盛土本体16の内部に浸透した水の水位も河川18側から裏のり面28側へ向けて徐々に上昇するが、堤体盛土本体16の内部に浸透した水の裏のり面28側の先端が排水層30に到達すると、到達した水が排水層30を介して順次排水される。このため、被覆工26の表面から漏水することが抑制される。
【0061】
堤体盛土本体16の土は、透水シート41を透過しないので、堤体盛土本体16の裏のり面28側の土が浸透した水の流れで流出すること、言い換えれば土の吸出しが抑制されるので、排水層30が設けられていない場合に比較して、浸透した水に起因する堤体盛土本体16の裏のり面28の侵食を抑制することができる。
【0062】
また、従来の土堤では、河川の水が堤体盛土の内部を裏のり面側へ浸透した場合、堤体盛土の内部の空気(土粒子間の空気)が浸透した水で押されて堤防内に塊として封入され、空気の塊の圧力が増大し、その空気の塊が堤防の表面に噴出するエアーブロー現象を生ずる場合がある。
【0063】
しかしながら、本実施形態の堤防12では、河川18の水が堤体盛土本体16の内部を裏のり面28側へ浸透した場合、堤体盛土本体16の内部の空気が浸透した水で押されて排水層30に流入するので、堤体盛土本体16内の空気が堤防12の表面から噴出することが抑制される。
【0064】
河川18の水位が更に上昇し、河川18の水が天端20を越して裏のり面28側へ越流した場合、越流した水は裏のり面28側の被覆工26の上面に沿って下方へ流れる。
【0065】
堤体盛土本体16の頂部である天端20には、アスファルト、コンクリート等の天端舗装22が施されているので、越流した水による天端20の侵食を抑制することができる。
【0066】
越流した水は、裏のり面28に沿って堤内側へ流下するが、裏のり面28の表面にはコンクリート平板からなる被覆工26が敷設されているので、被覆工26が敷設されていない場合に比較して裏のり面28の補強効果、言い換えれば侵食抑制効果が高められている。また、本実施形態の被覆工26は、排水層30の表面全体を覆って保護しているので、土砂等による排水層30の目詰まりを抑制することができる。
【0067】
また、堤内側の基礎地盤14には、堤防12に隣接して洗掘防止工44が敷設されているので、裏のり面28に沿って流下した河川の水によって、堤防12の近傍の基礎地盤14が削り崩されるのが抑制される。
【0068】
ところで、越流する水量が多く、且つ長時間に渡って越流すると、基礎地盤14に敷設された洗掘防止工44が流出し、基礎地盤14が削り崩される場合が想定される。
【0069】
堤防12の近傍の基礎地盤14が削り崩されると、堤体盛土本体16の下端付近の土も徐々に流出し、最下段の被覆工26の下側に空間が形成されることが想定される。
【0070】
図5(A)には、堤体盛土本体16の裏のり面28に、被覆工26のみを敷設した従来の堤防100が示されている。従来の堤防100では、越流した水(flow矢印)によって堤体盛土本体16の土が下側で流出すると、被覆工26が下方に滑り、上側の被覆工26と下側の被覆工26との間に隙間Sが生じ、その隙間Sから越流した水が流入し、流入した部分が侵食される。そして、侵食が拡大することで下側の被覆工26が流出する。このようにして被覆工26が下側から上側へ向けて順次流出し、最終的に堤体盛土本体16の裏のり面28を覆う被覆工26が全て流出し、裏のり面28の土が露出することで裏のり面28の崩壊が急速に進行してしまう。
【0071】
本発明の適用された
図5(B)に示す堤防12では、透水性砕石収容体36の下側で堤体盛土本体16の土が流出しても、従来の堤防100に比較して下側の被覆工26は流出し難い。透水性砕石収容体36の下側で土が流出すると、被覆工26に下向きのモーメントMが発生して落下しようとするが、被覆工26に固定された網状部材34の延設保持部34Aaが、土に埋設されて土とのかみ合わせによる引抜き抵抗を受けているため、モーメントMに対抗する引張力により、被覆工26の落下が抑制される。また、砕石32は、網状部材34に包まれているので、網状部材34からの流出は抑制される。
【0072】
そして、上側の被覆工26と下側の被覆工26との間に隙間Sが生じて隙間Sから水が流入しても、流入した水は、排水層30を通って下方へ排水される。また、堤体盛土本体16の土は、透水シート41に阻まれて透水性砕石収容体36の内部に進入せず、流出が抑えられるので、本実施形態の堤防12は、従来の堤防100に比較して長時間に渡って裏のり面28の侵食を抑制することができる。
【0073】
本実施形態の堤防12では、以下の点を特徴としてあげることができる。
(1) 堤防表面に敷設した被覆工26と、堤体盛土本体16に敷設した透水性砕石収容体36の網状部材34とを連結し、堤体盛土本体16と被覆工26とを一体化させている。
(2) 堤体盛土本体16の裏のり面28に、排水性促進と堤防内湿潤面低下のために、堤体盛土本体16よりも透水性高い透水性砕石収容体36を敷設すると共に、透水性砕石収容体36と被覆工26とを連結している。
(3) 透水性砕石収容体36と堤体盛土本体16との間に、透水シート41を配置して、堤体盛土本体16の土の流出、吸出しを抑制している。
本実施形態の堤防12では、上記(1)、(2)、(3)により、耐越流性を大幅に向上させることができる。
【0074】
本実施形態の堤防12では、上記(2)により、耐浸透性、及び耐エアーブロー性を大幅に強化することができる。
本実施形態の堤防12では、上記(1)、(2)により、耐震性も大幅に強化することができる。
また、本実施形態の堤防補強構造10は、構成部材が少なく、構成も簡単であるため、低コストで提供でき、既存の堤防に適用することも容易である。
さらに、本実施形態の堤防補強構造10は、被覆工26がずれ難い構造であるため、勾配の大きな裏のり面にも適用することができる。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態の堤防補強構造10について説明する。
第1の実施形態、及び第2の実施形態の透水性砕石収容体36では、袋状に形成した網状部材34の内部に複数個の砕石32を収容したが、透水性砕石収容体36は堤体盛土本体16よりも透水性に優れていればよく、網状部材34の内部に収容するものは複数の砕石32に限らない。砕石32に代えて、例えば、合成樹脂製の三次元網目構造体(立体網目構造体)を用いても良い。合成樹脂製の三次元網目構造体を用いることで、透水性砕石収容体36を軽量化することができ、施工も容易となる。
【0076】
なお、三次元網目構造体は、網状部材34に収容せず、接着剤、アンカーボルト等を用いて被覆工26に直接固定してもよい。合成樹脂製の三次元網目構造体としては、例えば、「コアマット」(登録商標、前田工繊株式会社製)等、容易に入手可能な市販製品を用いることができる。
【0077】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る第3の実施形態の堤防補強構造10について説明する。
前述した実施形態の堤防補強構造10では、最外面にコンクリート平板からなる被覆工26を敷設したが、コンクリート平板に代えて、シート部材、例えば、水を透過しない遮水シートや、不織布、織布等の透水性のシート部材を敷設してもよい。被覆工26をシート部材とすることで、被覆工26を安価に構成することができる。
【0078】
被覆工26を不織布、または織布とすることで、雨水等を排水層30へ浸透させることができると共に、排水層30の目詰まりの原因となる土砂等の排水層30への浸入をフィルター効果により抑制することができる。
【0079】
また、被覆工26を遮水シートとした場合には、雨水等は、排水層30への浸透は抑制され、遮水シートの上を流される。
【0080】
(実験例1)
本発明の堤防補強構造の耐浸透性に関する効果を確かめるために、堤防模型を3種試作して、堤体内浸潤面の高さを比較した。
堤防模型として、従来構造の土堤である堤防模型A、従来構造の標準型ドレーン工の堤防模型B、及び本発明の堤防補強構造が適用された堤防模型Cの3種を試作した。以下に堤防模型の構造を説明する。
【0081】
堤防模型A:
図6(A)に示すように、堤防模型Aは、全体が土で形成された断面台形状とされた土堤である。各部の寸法は、堤防敷幅が5m、天端幅が1m、高さが1mである。堤体土には、鉾田砂(中央粒径D
50=0.22mm、細粒分含有率Fc=8.4%)を用いた。なお、基礎地盤14の厚さは0.3mとした。
【0082】
堤防模型B:
図6(B)に示すように、堤防模型Aと同様の土堤の裏のり面ののり尻に、透水性のドレーン工110を設けたものである。基礎地盤14には、ドレーン工110からの排水を流す堤脚水路112が設けられている。ドレーン工110は、
図7に示すように、複数の砕石114をパンチングメタル116で囲んだ略断面台形状とされ、上底の長さが0.25m、下底の長さが0.73m、高さが0.3m、端部の高さが0.06mである。なお、パンチングメタル116と堤体盛土本体16との間には、不織布118が配置されている。
【0083】
堤防模型C:堤防模型Aと同様の土堤に、前述した本発明の第2の実施形態の構造が適用された堤防である。表のり面、及び裏のり面に敷設されたコンクリート平板のサイズは、0.25m×0.25m×0.05mである。透水性砕石収容体36には、砕石(5号砕石)32を「ハイメッシュ」(登録商標、前田工繊株式会社製。目あい1cm四方。)に収容したものを用いた。また、透水シート41には、家庭菜園用不織布(登録商標、日本マタイ株式会社製。)を用いた。台形の透水性砕石収容体36は、下底の長さが0.22m、延設保持部の長さが0.2m、高さが0.05mである。なお、基礎地盤14には洗掘防止工44として、コンクリート平板(0.25m×0.25m×0.05m)が敷設されている。
【0084】
次に、実験装置、及び実験方法を説明する。
図8に示すように、実験装置は、長さ20m、幅1.0m、高さ1.8mの水平開水路120に堤防模型を設置し、堤外地側にポンプ122で給水を行い、一定水位(0.7m)に保ち、堤体内の浸透流が定常状態になるまで実験を継続した。
【0085】
堤体内の浸透挙動を把握するために、自記式水位計(U−20 Water Level Logger,Onset社製)を堤体の幅方向に複数台設置し、設置位置における堤体内水位を計測した。
【0086】
実験結果は
図9のグラフに示す通りであった。グラフの縦軸は水位、グラフの横軸は距離を示している。実験の結果から、ドレーン工が適用された堤防模型B、及び本発明の適用された堤防模型Cは、単なる土堤である堤防模型Aよりも堤体内浸潤面の高さを低くでき、堤防模型Cは、ドレーン工が適用された堤防模型Bと略同等の耐浸透性を有することが分かった。
【0087】
(実験例2)
本発明の堤防補強構造の耐越水侵食性を確かめるために、堤防模型を4種試作して、裏のり面の耐久性を比較した。
【0088】
堤防模型A:実験例1と同一仕様
堤防模型D:
図10(A)に示すように、堤防模型Aと同様の土堤の天端にアスファルト舗装124を施したものである。
堤防模型C:実験例1と同一仕様
堤防模型E(アーマ・レビー):
図10(B)に示すように、堤防模型Aと同様の土堤の表のり面、及び裏のり面にコンクリート平板からなる被覆工26を敷設し、天端にアスファルト舗装124を施したものである。
【0089】
次に、実験装置、及び実験方法を説明する。
実験装置は、実験例1と同じものを使用した。
実験方法は、堤防外地側にポンプ122で給水を行い、堤防を越水させ、
図11のグラフに示すように、越水開始から時間t=10、20、30、60、80、100、120分まで、越水高さh=2、3、4、5、10、15、20、25cmと段階的に増やし、t=120分以降は、最大越流水深(
図8参照)であるh=25cmと一定とし、裏のり面の侵食を観察した。
【0090】
実験結果は
図12のグラフ、及び
図13のグラフに示す通りであった。
図12のグラフの縦軸は堤体全体の面積残存率を示し、横軸は越流時間を示している。また、
図13のグラフの縦軸は裏のり面の被覆工(下から順に1番から9番のコンクリート平板)の番号を示し、横軸は被覆工が流出した時間を示している。
【0091】
図12のグラフに示すように、本発明の適用された堤防模型Cは、堤防模型A、堤防模型D、及び堤防模型Eよりも長時間にわたって堤体断面積が残存していることが分かる。なお、堤防模型Cは、実験開始120分経過後においても堤体断面積がほぼ100%であるため、150分経過時点で洗掘防止工44を強制的に撤去し、裏のり面が流出するまで実験を継続した。
【0092】
また、
図13のグラフに示すように、本発明の適用された堤防模型Cは、堤防模型E(アーマ・レビー)に比較して、1番〜9番の何れの被覆工においても、流出するまでの時間が長いことが分かる。
【0093】
これらの実験例1、実験例2からも、本発明の堤防補強構造は、耐浸透性、及び耐越流性に優れていることが分かる。
【0094】
[その他の実施形態]
以上、本発明の堤防補強構造の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
第1本実施形態の被覆工26で用いたコンクリート平板は非透水性であったが、透水性のコンクリート平板であってもよい。
上記実施形態では、堤防補強構造を河川の堤防に適用した例を説明したが、本発明は、海岸の堤防や農業用のため池の堤体に適用することもできる。