(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1基板を上方から吸着保持する第1保持部と、前記第1保持部の下方に配置され、第2基板を下方から吸着保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部との間のギャップを調整する調整部と、前記第1基板の中心部を上方から押圧して前記第2基板に接触させるストライカーとを備え、前記調整部によって前記ギャップを調整したうえで、前記第1保持部に吸着保持された前記第1基板の中心部を前記ストライカーにて前記第2保持部に吸着保持された前記第2基板に接触させることにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合装置のパラメータ調整方法であって、
前記接合装置によって前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板を検査する検査装置から、前記重合基板に生じた前記第1基板と前記第2基板とのずれのうち線形的なずれを除外して得られる非線形的なずれの各点における方向および度合を示す検査結果を取得する取得工程と、
前記ギャップ、前記第1保持部による前記第1基板の吸着圧力、前記第2保持部による前記第2基板の吸着圧力および前記ストライカーによる前記第1基板の押圧力の少なくとも1つを含む複数のパラメータごとに、該パラメータを変更した場合における前記ずれの方向および度合の変化の傾向を示すトレンド情報と、前記取得工程において取得された前記検査結果とに基づき、前記複数のパラメータの少なくとも1つを変更するパラメータ変更工程と
を含み、
前記パラメータ変更工程は、
前記重合基板の板面に設定された複数のゾーンのうち1つを選択し、選択された前記ゾーンにおける前記検査結果および前記トレンド情報に基づき、前記複数のパラメータの少なくとも1つを変更する、接合装置のパラメータ調整方法。
前記パラメータ変更工程後に前記接合装置によって前記第1基板と前記第2基板とを接合したと仮定した場合における前記検査結果を前記トレンド情報に基づいて予測する予測工程
を含み、
前記パラメータ変更工程は、
前記予測工程において予測された前記検査結果と前記トレンド情報とに基づいて前記複数のパラメータの少なくとも1つをさらに変更する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の接合装置のパラメータ調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示による接合装置のパラメータ調整方法
、接合装置および接合システムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による接合装置のパラメータ調整方法
、接合装置および接合システムが限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
<接合システム>
まず、実施形態に係る接合システムの構成について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1および
図2は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式図である。また、
図3は、実施形態に係る第1基板および第2基板の接合前の状態を示す模式図である。
【0012】
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する(
図3参照)。
【0013】
第1基板W1および第2基板W2は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。第1基板W1および第2基板W2は、略同径である。なお、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハであってもよい。
【0014】
以下では、
図3に示すように、第1基板W1の板面のうち、第2基板W2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、第2基板W2の板面のうち、第1基板W1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0015】
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2は、処理ステーション3のX軸負方向側に配置され、処理ステーション3と一体的に接続される。
【0016】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1〜C4がそれぞれ載置される。カセットC1は複数枚の第1基板W1を収容可能であり、カセットC2は複数枚の第2基板W2を収容可能であり、カセットC3は複数枚の重合基板Tを収容可能である。カセットC4は、たとえば、不具合が生じた基板を回収するためのカセットである。なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C4の個数は、図示のものに限定されない。
【0017】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能である。搬送装置22は、載置板11に載置されたカセットC1〜C4と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬送を行う。
【0018】
処理ステーション3には、たとえば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。第1処理ブロックG1は、処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)に配置される。また、第2処理ブロックG2は、処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)に配置され、第3処理ブロックG3は、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)に配置される。
【0019】
第1処理ブロックG1には、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化され易くするように接合面W1j,W2jを改質する。
【0020】
具体的には、表面改質装置30では、たとえば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオンまたは窒素イオンが、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
【0021】
また、第1処理ブロックG1には、後述する接合装置41によって第1基板W1と第2基板W2とが接合された重合基板Tの接合状態を検査する検査装置31が配置される。
【0022】
検査装置31は、たとえば、第1基板W1および第2基板W2に形成されたパターンを赤外線によって撮像し、撮像された画像に基づき、第1基板W1および第2基板W2間におけるパターンのずれを算出する。
【0023】
ここで、パターンのずれ方には、線形的なずれと非線形的なずれの2種類がある。線形的なずれとは、たとえば、「平行移動」、「回転」、「拡大もしくは縮小」、「傾斜(せん断変位)」などの均等なずれを意味する。検査装置31は、重合基板Tに生じたずれのうち上記の線形的なずれを除外することで、非線形的なずれ、すなわち、重合基板Tに生じたランダムなずれを検査結果として後述する制御装置70に出力する。具体的には、検査結果には、重合基板Tの板面に設定された複数の測定点の各点におけるランダムなずれ(以下、「歪み」と記載する)の方向および度合が含まれる。
【0024】
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。具体的には、表面親水化装置40は、たとえばスピンチャックに保持された第1基板W1または第2基板W2を回転させながら、当該第1基板W1または第2基板W2上に純水を供給する。これにより、第1基板W1または第2基板W2上に供給された純水が第1基板W1または第2基板W2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
【0025】
接合装置41は、親水化された第1基板W1と第2基板W2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
【0026】
第3処理ブロックG3には、
図2に示すように、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tのトランジション(TRS)装置50,51が、下から順に設けられる。
【0027】
第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを搬送する。
【0028】
また、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。また、記憶部は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0029】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置70の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0030】
制御装置70の制御部は、検査装置31の検査結果を取得する取得部を備える。また、制御部は、取得部によって取得された検査結果に基づく画像を図示しない表示部に表示させる表示制御部を備える。
【0031】
表示制御部は、各測定点における歪みの方向が矢印で示され、且つ、歪みの度合が矢印の長さ、太さおよび色のうち少なくとも1つで示された画像(後述する
図14参照)を表示させる。
図14の例では、歪みの度合が矢印の長さで示されている。このような画像を表示部に表示させることで、検査装置31の検査結果をユーザに対して視覚的にわかりやすく提示することができる。
【0032】
<接合装置>
次に、接合装置41の構成について
図4および
図5を参照して説明する。
図4および
図5は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式図である。
【0033】
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
【0034】
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成される。また、内壁103にも、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬入出口104が形成される。
【0035】
搬送領域T1には、トランジション110、基板搬送機構111、反転機構130および位置調節機構120が、たとえば搬入出口101側からこの順番で並べて配置される。
【0036】
トランジション110は、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを一時的に載置する。トランジション110は、たとえば2段に形成され、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0037】
基板搬送機構111は、
図4および
図5に示すように、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りの方向(θ方向)に移動自在な搬送アームを有する。基板搬送機構111は、搬送領域T1内または搬送領域T1と処理領域T2との間で第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを搬送することが可能である。
【0038】
位置調節機構120は、第1基板W1および第2基板W2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構120は、第1基板W1および第2基板W2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台121と、第1基板W1および第2基板W2のノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有する。位置調節機構120は、基台121に保持された第1基板W1および第2基板W2を回転させながら検出部122を用いて第1基板W1および第2基板W2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、第1基板W1および第2基板W2の水平方向の向きが調節される。
【0039】
反転機構130は、第1基板W1の表裏を反転させる。具体的には、反転機構130は、第1基板W1を保持する保持アーム131を有する。保持アーム131は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また保持アーム131には、第1基板W1を保持する保持部材132がたとえば4箇所に設けられている。
【0040】
保持アーム131は、たとえばモータなどを備えた駆動部133に支持される。保持アーム131は、かかる駆動部133によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、たとえばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部133は、鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動できる。
【0041】
このように、保持部材132に保持された第1基板W1は、駆動部133によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向および水平方向に移動することができる。また、保持部材132に保持された第1基板W1は、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120と後述する第1保持部140との間を移動することができる。
【0042】
処理領域T2には、第1基板W1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する第1保持部140と、第2基板W2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する第2保持部141とが設けられる。第2保持部141は、第1保持部140よりも下方に設けられ、第1保持部140と対向配置可能に構成される。第1保持部140および第2保持部141は、たとえばバキュームチャックである。
【0043】
図5に示すように、第1保持部140は、第1保持部140の上方に設けられた支持部材180によって支持される。支持部材180は、たとえば、複数の支持柱181を介して処理容器100の天井面に固定される。
【0044】
第1保持部140の側方には、第2保持部141に保持された第2基板W2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部145が設けられている。上部撮像部145には、たとえばCCDカメラが用いられる。
【0045】
第2保持部141は、第2保持部141の下方に設けられた第1移動部160に支持される。第1移動部160は、後述するように第2保持部141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1移動部160は、第2保持部141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
【0046】
第1移動部160には、第1保持部140に保持された第1基板W1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部146が設けられている。下部撮像部146には、たとえばCCDカメラが用いられる。
【0047】
第1移動部160は、一対のレール162,162に取り付けられている。一対のレール162,162は、第1移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する。第1移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
【0048】
一対のレール162,162は、第2移動部163に配設されている。第2移動部163は、一対のレール164,164に取り付けられている。一対のレール164,164は、第2移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する。第2移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164,164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
【0049】
第1移動部160および第2移動部163等により、位置合わせ部166が構成される。位置合わせ部166は、第2保持部141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、第1保持部140に保持されている第1基板W1と、第2保持部141に保持されている第2基板W2との水平方向位置合わせを行う。また、位置合わせ部166は、第2保持部141をZ軸方向に移動させることにより、第1保持部140に保持されている第1基板W1と、第2保持部141に保持されている第2基板W2との鉛直方向位置合わせを行う。
【0050】
なお、ここでは、第2保持部141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることとしたが、位置合わせ部166は、たとえば、第2保持部141をX軸方向およびY軸方向に移動させ、第1保持部140をθ方向に移動させてもよい。また、ここでは、第2保持部141をZ軸方向に移動させることとしたが、位置合わせ部166は、たとえば、第1保持部140をZ軸方向に移動させてもよい。
【0051】
次に、第1保持部140および第2保持部141の構成について
図6を参照して説明する。
図6は、実施形態に係る第1保持部140および第2保持部141を示す模式図である。
【0052】
図6に示すように、第1保持部140は、本体部170を有する。本体部170は、支持部材180によって支持される。支持部材180および本体部170には、支持部材180および本体部170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、第1保持部140に吸着保持される第1基板W1の中心部に対応している。貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
【0053】
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
【0054】
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、第1基板W1の中心部と当接して当該第1基板W1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
【0055】
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、たとえばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に沿って移動させる。
【0056】
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による第1基板W1の押圧荷重を制御する。これにより、ストライカー190は、第1保持部140に吸着保持された第1基板W1の中心部を押圧して第2基板W2に接触させる。
【0057】
本体部170の下面には、第1基板W1の上面(非接合面W1n)に接触する複数のピン171が設けられている。複数のピン171は、たとえば、径寸法が0.1mm〜1mmであり、高さが数十μm〜数百μmである。複数のピン171は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
【0058】
第1保持部140は、これら複数のピン171が設けられている領域のうちの一部の領域に、第1基板W1を吸着する複数の吸着部を備える。複数の吸着部は、第1基板W1の物性の異方性に応じて配置される。
【0059】
ここで、第1保持部140が有する複数の吸着部について
図7〜
図9を参照して説明する。
図7および
図8は、接合領域が拡大する様子の一例を示す模式図である。
図9は、第1保持部140を下方から見た模式図である。なお、ミラー指数が負であることは、通常、数字の上に「−」(バー)を付すことによって表現するが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって表現する。
【0060】
図7に示すように、第1基板W1および第2基板W2は、表面(接合面)と垂直な方向における結晶方向が[100]である単結晶シリコンウェハである。第1基板W1および第2基板W2のノッチ部Nは、第1基板W1および第2基板W2の[011]結晶方向の外縁に形成される。なお、第1基板W1および第2基板W2の直径は、たとえば300mmである。
【0061】
第1基板W1の中心部を押し下げて第2基板W2の中心部に接触させると、第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部とが分子間力により接合されることによって両基板の中心部に接合領域Aが形成される。その後、接合領域Aが両基板の中心部から外周部に向かって拡大するボンディングウェーブが発生して、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j、W2j同士が全面で接合される。
【0062】
第1基板W1の外縁の全周を保持する保持部を用いて第1基板W1を保持して上記の接合処理を行った場合、
図8に示すように、接合領域Aは、同心円状に拡大する。しかしながら、単結晶シリコンウェハである第1基板W1および第2基板W2は、90度方向と45度方向とでヤング率やポアソン比等の物性が異なるため、90度方向と45度方向とで歪みの度合に差が生じることとなる。ここで、90度方向とは、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[0−11]結晶方向に向かう方向を基準とする90度周期の方向(
図8に示す0度、90度、180度、270度の方向)である。45度方向とは、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[010]結晶方向に向かう方向を基準とする90度周期の方向(
図8に示す45度、135度、225度、315度の方向)である。
【0063】
単結晶シリコンウェハのヤング率、ポアソン比、せん断弾性係数の値は、90度周期で変化する。具体的には、単結晶シリコンウェハのヤング率は、90度方向において最も高くなり、45度方向において最も低くなる。また、ポアソン比およびせん断弾性係数については、45度方向において最も高くなり、90度方向において最も低くなる。
【0064】
図9に示すように、第1保持部140における本体部170の下面には、第1基板W1を真空引きして吸着する複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302が設けられている。複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302は、平面視において円弧形状の吸着領域を有する。また、複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302は、ピン171と同じ高さを有する。
【0065】
複数の外側吸着部301は、本体部170の外周部に配置され、第1基板W1の外周部を吸着保持する。複数の外側吸着部301は、90度間隔で配置された4つの第1吸着部311と、4つの第1吸着部311に対して周方向に45度ずらして配置された4つの第2吸着部312とを備える。なお、第1基板W1の外周部とは、第1基板W1の外周端から、第1基板W1の半径の15%以内の部分を意味する。
【0066】
4つの第1吸着部311は、45度の方向を基準に90度間隔で配置され、45度方向(45度、135度、225度、315度の方向)における第1基板W1の外周部を吸着保持する。具体的には、4つの第1吸着部311は、円弧形状の吸着領域の中心部が第1基板W1における45度方向と一致する位置に配置される。
【0067】
4つの第2吸着部312は、0度の方向を基準に90度間隔で配置され、90度方向(0度、90度、180度、270度の方向)における第1基板W1の外周部を吸着保持する。具体的には、4つの第2吸着部312は、円弧形状の吸着領域の中心部が第1基板W1における90度方向と一致する位置に配置される。
【0068】
4つの第1吸着部311は、第1吸引管171aを介して単一の第1真空ポンプ171bに接続され、第1真空ポンプ171bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。また、4つの第2吸着部312は、第2吸引管172aを介して単一の第2真空ポンプ172bに接続され、第2真空ポンプ172bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。ここでは、理解を容易にするため、4つの第1吸着部311のうち、いずれか1つについての配管構成のみを示している。4つの第2吸着部312についても同様である。
【0069】
このように、第1保持部140は、45度方向における第1基板W1の外周部を吸着保持する4つの第1吸着部311と、90度方向における第1基板W1の外周部を吸着保持する4つの第2吸着部312とを備える。このため、実施形態に係る接合装置41によれば、たとえば、4つの第1吸着部311および4つの第2吸着部312を用いることで、第1基板W1の外周部を全周に亘って吸着保持することができる。また、実施形態に係る接合装置41によれば、4つの第1吸着部311のみを用いることで、第1基板W1の45度方向における外周部のみを吸着保持することもできる。
【0070】
複数の内側吸着部302は、複数の外側吸着部301よりも本体部170の径方向内方において、周方向に沿って並べて配置される。具体的には、複数の内側吸着部302は、第1基板W1における45度方向に4つ配置されるとともに、90度方向に4つ配置される。複数の内側吸着部302は、第3吸引管173aを介して単一の第3真空ポンプ173bに接続され、第3真空ポンプ173bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。ここでは、理解を容易にするため、複数の内側吸着部302のうち、いずれか1つについての配管構成のみを示している。
【0071】
なお、第1〜第3真空ポンプ171b〜173bの数や配置は、特に限定されない。第1〜第3真空ポンプ171b〜173bは、吸着圧力が独立に制御される領域毎に設けられればよい。たとえば、8つの内側吸着部302のうち、45度方向に配置される4つの内側吸着部302と、90度方向に配置される4つの内側吸着部302とは、異なる真空ポンプに接続されてもよい。
【0072】
図6に戻り、第2保持部141について説明する。第2保持部141は、第2基板W2と同径もしくは第2基板W2より大きい径を有する本体部200を有する。ここでは、第2基板W2よりも大きい径を有する第2保持部141を示している。本体部200の上面は、第2基板W2の下面(非接合面W2n)と対向する対向面である。
【0073】
本体部200の上面には、第2基板W2の下面(非接合面Wn2)に接触する複数のピン201が設けられている。複数のピン201は、たとえば、径寸法が0.1mm〜1mmであり、高さが数十μm〜数百μmである。複数のピン201は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
【0074】
また、本体部200の上面には、下側リブ202が複数のピン201の外側に環状に設けられている。下側リブ202は、環状に形成され、第2基板W2の外周部を全周に亘って支持する。
【0075】
また、本体部200は、複数の下側吸引口203を有する。複数の下側吸引口203は、下側リブ202によって囲まれた吸着領域に複数設けられる。複数の下側吸引口203は、図示しない吸引管を介して真空ポンプ等の図示しない吸引装置に接続される。
【0076】
第2保持部141は、下側リブ202によって囲まれた吸着領域を複数の下側吸引口203から真空引きすることによって吸着領域を減圧する。これにより、吸着領域に載置された第2基板W2は、第2保持部141に吸着保持される。
【0077】
下側リブ202が第2基板W2の下面の外周部を全周に亘って支持するため、第2基板W2は外周部まで適切に真空引きされる。これにより、第2基板W2の全面を吸着保持することができる。また、第2基板W2の下面は複数のピン201に支持されるため、第2基板W2の真空引きを解除した際に、第2基板W2が第2保持部141から剥がれ易くなる。
【0078】
<接合システムの具体的動作>
本願発明者は、鋭意研究の結果、接合装置41のパラメータを調整することで、重合基板Tに生じる歪みの方向および度合が変化することを突き止めた。そこで、実施形態に係る接合システム1では、パラメータを変更した場合における歪みの方向および度合の変化の傾向を示すトレンド情報と、検査装置31による重合基板Tの検査結果とに基づき、接合装置41のパラメータの自動調整を行うこととした。
【0079】
以下、接合システム1により実行される接合装置41のパラメータの自動調整処理の手順について
図10を参照して説明する。
図10は、実施形態に係る接合システムが実行する処理の手順を示すフローチャートである。なお、
図10に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
【0080】
図10に示すように、接合システム1では、接合処理が行われる(ステップS101)。ここで、接合処理の手順について
図11〜
図14を参照して説明する。
図11は、実施形態に係る接合処理の手順を示すフローチャートである。また、
図12は、制御装置70の記憶部に記憶される設定情報の一例を示す図である。また、
図13および
図14は、実施形態に係る接合処理の動作説明図である。
【0081】
まず、複数枚の第1基板W1を収容したカセットC1、複数枚の第2基板W2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の第1基板W1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0082】
次に、
図11に示すように、第1基板W1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送され、表面改質装置30において接合面W1jが改質される(ステップS201)。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが第1基板W1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、第1基板W1の接合面W1jが改質される。
【0083】
次に、第1基板W1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された第1基板W1を回転させながら、当該第1基板W1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は第1基板W1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された第1基板W1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、第1基板W1の接合面W1jが洗浄される(ステップS202)。
【0084】
次に、第1基板W1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された第1基板W1は、トランジション110を介して基板搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、第1基板W1の水平方向の向きが調節される(ステップS203)。
【0085】
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に第1基板W1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、第1基板W1の表裏面が反転される(ステップS204)。すなわち、第1基板W1の接合面W1jが下方に向けられる。
【0086】
その後、反転機構130の保持アーム131が回動して第1保持部140の下方に移動する。そして、反転機構130から第1保持部140に第1基板W1が受け渡される。第1基板W1は、ノッチ部Nを予め決められた方向、すなわち、第2吸着部312が設けられる方向に向けた状態で、第1保持部140にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS205)。ステップS205において、第1保持部140は、複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302の全てを用いて第1基板W1を吸着保持する。
【0087】
第1基板W1に対するステップS201〜S205の処理と重複して、第2基板W2に対する処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の第2基板W2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0088】
次に、第2基板W2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、第2基板W2の接合面W2jが改質される(ステップS206)。ステップS206における第2基板W2の接合面W2jの改質は、上述したステップS201と同様である。
【0089】
その後、第2基板W2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、第2基板W2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面W2jが洗浄される(ステップS207)。ステップS207における第2基板W2の接合面W2jの親水化および洗浄は、上述したステップS202と同様である。
【0090】
その後、第2基板W2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された第2基板W2は、トランジション110を介して基板搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、第2基板W2の水平方向の向きが調節される(ステップS208)。
【0091】
その後、第2基板W2は、基板搬送機構111によって第2保持部141に搬送され、第2保持部141に吸着保持される(ステップS209)。第2基板W2は、ノッチ部Nを予め決められた方向、具体的には、第1基板W1のノッチ部Nと同じ方向に向けた状態で、第2保持部141にその非接合面W2nが吸着保持される。
【0092】
次に、第1保持部140に保持された第1基板W1と第2保持部141に保持された第2基板W2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS210)。
【0093】
次に、第1保持部140に保持された第1基板W1と第2保持部141に保持された第2基板W2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS211)。具体的には、第1移動部160が第2保持部141を鉛直上方に移動させることによって、第2基板W2を第1基板W1に接近させる。
【0094】
図12に示すように、第2基板W2の接合面W2jと第1基板W1の接合面W1jとの間のギャップ(以下、「基板間ギャップ」と記載する)は、接合装置41のパラメータの1つである。制御装置70は、記憶部に記憶された設定情報からパラメータ種別「基板間ギャップ」のパラメータ値「aaa」を取り出し、接合面W1j,W2j間のギャップが「aaa」となるように第1移動部160を制御して第2保持部141を移動させる。
【0095】
次に、複数の内側吸着部302による第1基板W1の吸着保持を解除した後(ステップS212)、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、第1基板W1の中心部を押下する(ステップS213)。
【0096】
第1基板W1の中心部が第2基板W2の中心部に接触し、第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部とがストライカー190によって所定の力で押圧されると、押圧された第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部との間で接合が開始される。すなわち、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S109において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S110において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。このようにして、接合領域A(
図7参照)が形成される。
【0097】
その後、第1基板W1と第2基板W2との間では、第1基板W1および第2基板W2の中心部から外周部に向けて接合領域Aが拡大していくボンディングウェーブが発生する(
図13参照)。
【0098】
その後、4つの第1吸着部311による第1基板W1の吸着保持が解除される(ステップS214)。これにより、外側吸着部301によって吸着保持されていた第1基板W1の外周部が落下する。この結果、
図14に示すように、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jが全面で当接し、重合基板Tが形成される。
【0099】
その後、押圧ピン191を第1保持部140まで上昇させ、第2保持部141による第2基板W2の吸着保持を解除する。その後、重合基板Tは、搬送装置61によって接合装置41から搬出される。こうして、一連の接合処理が終了する。
【0100】
ここで、
図12に示すように、設定情報には、上述した「基板間ギャップ」の他に、「吸着方向」、「第1基板吸着圧力」、「第2基板吸着圧力」、「ストライカー圧力」、「吸着解除タイミング」が接合装置41のパラメータとして含まれる。
【0101】
「吸着方向」は、第1基板W1の外周部を吸着する方向を示す。言い換えれば、「吸着方向」は、第1吸着部311および第2吸着部312のうち、ステップS212〜S214において第1基板W1の吸着保持に用いられる吸着部を示す。たとえば、パラメータ種別「吸着方向」のパラメータ値「bbb」が、4つの第1吸着部311のみを用いることを示す場合、接合装置41は、ステップS212において、4つの第2吸着部312による第1基板W1の吸着保持を解除する。そして、接合装置41は、ステップS214において、4つの第1吸着部311による第1基板W1の吸着保持を解除する。また、パラメータ値「bbb」が、4つの第1吸着部311および4つの第2吸着部312を用いることを示す場合、接合装置41は、ステップS214において、4つの第1吸着部311および4つの第2吸着部312による第1基板W1の吸着保持を解除する。
【0102】
「第1基板吸着圧力」は、第1保持部140による第1基板W1の吸着圧力を示す。制御装置70は、記憶部に記憶された設定情報からパラメータ種別「第1基板吸着圧力」のパラメータ値「ccc」を取り出す。そして、制御装置70は、第1保持部140による第1基板W1の吸着圧力が「ccc」となるように、第1真空ポンプ171bまたは第2真空ポンプ172bを制御する。
【0103】
「第2基板吸着圧力」は、第2保持部141による第2基板W2の吸着圧力を示す。制御装置70は、記憶部に記憶された設定情報からパラメータ種別「第2基板吸着圧力」のパラメータ値「ddd」を取り出す。そして、制御装置70は、第2保持部141による第2基板W2の吸着圧力が「ddd」となるように、図示しない吸引装置を制御する。
【0104】
「ストライカー圧力」は、ストライカー190による第1基板W1の押圧力を示す。制御装置70は、記憶部に記憶された設定情報からパラメータ種別「ストライカー圧力」のパラメータ値「eee」を取り出す。そして、制御装置70は、ストライカー190による第1基板W1の押圧力が「eee」となるように、アクチュエータ部192を制御する。
【0105】
「吸着解除タイミング」は、ステップS213において、第1基板W1の中心部をストライカー190にて押圧した後、ステップS214において、第1保持部140による第1基板W1の吸着保持を解除するタイミングを示す。制御装置70は、記憶部に記憶された設定情報からパラメータ種別「吸着解除タイミング」のパラメータ値「fff」を取り出す。そして、制御装置70は、第1基板W1の中心部をストライカー190にて押圧してからの経過時間が「fff」となったタイミングで、第1真空ポンプ171bまたは第2真空ポンプ172bを制御して第1保持部140による第1基板W1の吸着保持を解除する。
【0106】
図10に示すように、接合処理が終了すると、重合基板Tは、搬送装置61によって検査装置31へ搬送され、検査装置31において接合状態が検査される(ステップS102)。検査装置31の検査結果は、制御装置70の制御部に出力される。
【0107】
つづいて、制御装置70の制御部は、検査装置31の検査結果を取得すると(ステップS103)、取得した検査結果に基づき、重合基板Tの均一性が目標条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。
【0108】
ここで、重合基板Tの均一性とは、非線形的な歪みの少なさ、具体的には、歪みの方向および度合の測定点間におけるばらつきの小ささを示す。目標条件は、たとえば、歪みの方向および度合の測定点間におけるばらつきが3σで100nm以下であることである。
【0109】
制御部は、重合基板Tの均一性が目標条件を満たすと判定した場合(ステップS104,Yes)、処理を終える。
【0110】
一方、重合基板Tの均一性が目標条件を満たしていない場合(ステップS104,No)、接合装置41のパラメータの調整が行われる。
【0111】
具体的には、制御部は、パラメータ変更部を備える。パラメータ変更部は、検査装置31から取得した検査結果と、後述するトレンド情報とに基づき、複数のパラメータの少なくとも1つを変更する。
【0112】
まず、パラメータ変更部は、重合基板Tの板面に設定された複数のゾーンのうち1つを選択する(ステップS105)。
【0113】
図15は、重合基板Tの板面に設定される複数のゾーンの一例を示す図である。なお、
図15には、検査装置31による検査結果も併せて示している。上述したように、検査装置31による検査結果は、矢印の方向と長さで表される。
【0114】
図15に示すように、重合基板Tの板面には、中央ゾーンZ0、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4の5種類のゾーンが設定される。
【0115】
中央ゾーンZ0は、重合基板Tの板面の中心部を含むゾーンである。45度外周ゾーンZ1は、重合基板Tの板面の45度方向における外周部を含むゾーンである。90度外周ゾーンZ2は、重合基板Tの板面の90度方向における外周部を含むゾーンである。45度中間ゾーンZ3は、45度外周ゾーンZ1と中央ゾーンZ0との中間部を含むゾーンである。90度中間ゾーンZ4は、90度外周ゾーンZ2と中央ゾーンZ0との中間部を含むゾーンである。
【0116】
第1基板W1および第2基板W2が単結晶シリコンウェハである場合の重合基板Tに生じる歪みは、中央ゾーンZ0、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4ごとに同様の傾向を示す。たとえば、
図15に示すように、45度外周ゾーンZ1における歪みのパターンは、重合基板Tの外周部に45度周期で現れることがわかる。つまり、重合基板Tの外周部には、45度、135度、225度、315度の方向において同様のパターンの歪みが現れることがわかる。
【0117】
したがって、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4を含む複数のゾーンを重合基板Tの板面に設定することで、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0118】
制御部は、ステップS105において、複数のゾーンZ0〜Z4のうち歪みの度合が最も大きいゾーンを検査結果に基づいて選択する。歪みの度合が最も大きいゾーンを優先的に選択することで、たとえば、より少ない調整回数で目標条件に到達することができる。したがって、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0119】
なお、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4については、同様の傾向を示すゾーンがそれぞれ4箇所ずつ存在するのに対し、中央ゾーンZ0は1箇所しか存在しない。このため、中央ゾーンZ0における歪みを低減させた場合に重合基板Tの均一性に与える影響は、他のゾーンZ1〜Z4における歪みを低減させた場合に重合基板Tの均一性に与える影響と比較して小さい。したがって、制御部は、ステップS105において、複数のゾーンZ0〜Z4のうち、中央ゾーンZ0を除くゾーンZ1〜Z4の中から歪みの度合が最も大きいゾーンを選択するようにしてもよい。また、重合基板Tの板面には、中央ゾーンZ0を除くゾーンZ1〜Z4のみが設定されてもよい。
【0120】
また、通常、歪みの度合は、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4のうち、45度外周ゾーンZ1または90度外周ゾーンZ2において最も大きくなる傾向にある。そこで、制御部は、ステップS105において、45度外周ゾーンZ1および90度外周ゾーンZ2の中から歪みの度合が最も大きいゾーンを選択してもよい。
【0121】
つづいて、制御部は、ステップS105において選択したゾーンにおける検査結果と、後述するトレンド情報とに基づき、変更するパラメータを選択する(ステップS106)。
【0122】
ここで、トレンド情報の内容について
図16を参照して説明する。
図16は、トレンド情報の一例を示す図である。
【0123】
図16に示すように、トレンド情報は、上述した接合装置41のパラメータごとに、そのパラメータを変更した場合における歪みの方向および度合の変化の傾向を示す情報である。ここで、
図16に示す矢印のうち、白塗りの矢印は、重合基板Tの外側に向かう歪みを示し、ハッチング付きの矢印は、重合基板Tの内側に向かう歪みを示している。
図16において、歪みの度合は、矢印の大きさで表されている。
【0124】
「基板間ギャップ」のトレンド情報は、基板間ギャップを広げた場合に、45度外周ゾーンZ1および90度外周ゾーンZ2の歪みが内向きに変化することを示している。また、「基板間ギャップ」のトレンド情報は、基板間ギャップを広げた場合に、中央ゾーンZ0、45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4の歪みが外向きに変化することを示している。また、「基板間ギャップ」のトレンド情報は、45度外周ゾーンZ1および45度中間ゾーンZ3における歪みが、中央ゾーンZ0、90度外周ゾーンZ2および90度中間ゾーンZ4における歪みと比較してより大きく変化することを示している。
【0125】
なお、たとえば基板間ギャップを30μmとしたときの検査結果と100μmとしたときの検査結果との差分を求めることで、基板間ギャップを30μmから100μmに変化させたときの歪みの変化の情報が得られる。この情報を、たとえば、基板間ギャップを30μmから150μmに変化させたとき、30μmから180μmに変化させたときについても同様に取得する。これらの情報を比較することで、基板間ギャップを広げた場合の歪みの変化の傾向を示す「基板間ギャップ」のトレンド情報が作成される。
【0126】
また、基板間ギャップを狭めた場合の「基板間ギャップ」のトレンド情報は、たとえば、基板間ギャップを広げた場合の「基板間ギャップ」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0127】
「吸着方向」のトレンド情報は、吸着方向を第1吸着部311のみを用いた45度方向吸着から第1吸着部311および第2吸着部312を用いた全周吸着に変更した場合に、45度外周ゾーンZ1の歪みが内向きに変化することを示している。また、「吸着方向」のトレンド情報は、90度外周ゾーンZ2および90度中間ゾーンZ4における歪みが外向きに変化することを示している。また、「吸着方向」のトレンド情報は、45度外周ゾーンZ1および90度外周ゾーンZ2における歪みが、90度中間ゾーンZ4における歪みと比較して大きく変化することを示している。
【0128】
なお、たとえば第1吸着部311の吸着圧力を−80kpa、第2吸着部312の吸着圧力を0kpaとしたときを基準とし,第2吸着部312の吸着圧力を−20kpa,−40kpa,−60kpa,−80kpaと変化させたときの歪みの変化の傾向を調べる。これにより、「吸着方向」のトレンド情報が作成される。
【0129】
また、吸着方向を全周吸着から45度吸着に変更した場合の「吸着方向」のトレンド情報は、たとえば、吸着方向を45度吸着から全周吸着に変更した場合の「吸着方向」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0130】
「第1基板吸着圧力」のトレンド情報は、第1保持部140による第1基板W1の吸着圧力を弱めた場合に、45度外周ゾーンZ1および45度中間ゾーンZ3の歪みが内向きに変化することを示している。また、「第1基板吸着圧力」のトレンド情報は、第1保持部140による第1基板W1の吸着圧力を弱めた場合に、90度外周ゾーンZ2の歪みが外向きに変化することを示している。
【0131】
なお、「第1基板吸着圧力」のトレンド情報は、たとえば第1基板W1の吸着圧力を−80kpaから−60kpa,−80kpaから−40kpa,−80kpaから−20kpaに変化させたときの歪みの変化の傾向を調べることにより作成される。
【0132】
また、第1基板W1の吸着力を強めた場合の「第1基板吸着圧力」のトレンド情報は、たとえば、第1基板W1の吸着力を弱めた場合の「第1基板吸着圧力」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0133】
「第2基板吸着圧力」のトレンド情報は、第2保持部141による第2基板W2の吸着圧力を弱めた場合に、45度外周ゾーンZ1,45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4の歪みが内向きに変化することを示している。また、「第2基板吸着圧力」のトレンド情報は、第2保持部141による第2基板W2の吸着圧力を弱めた場合に、90度外周ゾーンZ2の歪みが外向きに変化することを示している。また、「第2基板吸着圧力」のトレンド情報は、90度外周ゾーンZ2の歪みが、45度外周ゾーンZ1,45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4の歪みと比較して大きく変化していることを示している。
【0134】
なお、「第2基板吸着圧力」のトレンド情報は、たとえば第2基板W2の吸着圧力を−80kpaから−60kpa,−80kpaから−40kpa,−80kpaから−20kpaに変化させたときの歪みの変化の傾向を調べることにより作成される。
【0135】
また、第2基板W2の吸着力を強めた場合の「第2基板吸着圧力」のトレンド情報は、たとえば、第2基板W2の吸着力を弱めた場合の「第2基板吸着圧力」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0136】
「ストライカー圧力」のトレンド情報は、ストライカー190の押圧力を強めた場合に、中央ゾーンZ0の歪みが外向きに変化することを示している。また、「ストライカー圧力」のトレンド情報は、ストライカー190の押圧力を変化させても、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4の歪みは変化しないことを示している。
【0137】
また、ストライカー190の押圧力を弱めた場合の「ストライカー圧力」のトレンド情報は、たとえば、ストライカー190の押圧力を強めた場合の「ストライカー圧力」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0138】
「吸着解除タイミング」のトレンド情報は、吸着解除タイミングを早めた場合に、45度外周ゾーンZ1の歪みが内向きに変化し、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4の歪みが外向きに変化することを示している。また、「吸着解除タイミング」のトレンド情報は、45度外周ゾーンZ1の歪みが、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4の歪みと比較して大きく変化することを示している。
【0139】
なお、「吸着解除タイミング」のトレンド情報は、たとえば、吸着解除タイミングを9秒とした場合を基準とし、7秒、5秒、3秒と変化させたときの歪みの変化の傾向を調べることで作成される。
【0140】
また、吸着解除タイミングを遅らせた場合の「吸着解除タイミング」のトレンド情報は、たとえば、吸着解除タイミングを早めた場合の「吸着解除タイミング」のトレンド情報と歪みの方向が逆方向となる。
【0141】
制御部は、たとえば、ステップS105において選択されたゾーンにおいて、ステップS103において取得された検査結果に示される歪みの方向に対して逆向きの歪みの変化を示すトレンド情報を選択する。そして、制御部は、選択したトレンド情報に対応するパラメータを、変更するパラメータとして選択する。
【0142】
つづいて、制御部は、ステップS106において選択されたパラメータを変更する(ステップS107)。具体的には、制御部は、選択したトレンド情報によって示されるパラメータの変更方向と同じ方向にパラメータを変更する。たとえば、
図16に示す「基板間ギャップ」を広げた場合のトレンド情報が選択されたとすると、制御部は、
図12に示す設定情報に含まれるパラメータ種別「基板間ギャップ」のパラメータ値を、基板間ギャップが広くなる方向に変更する。また、制御部は、パラメータごとに予め決められた規定値分だけ、パラメータ値を変更する。すなわち、制御部は、
図12に示す設定情報に含まれるパラメータ種別「基板間ギャップ」のパラメータ値を規定値(たとえば、50μm)だけ変更する。
【0143】
ステップS107においてパラメータを変更すると、制御部は、処理をステップS101へ戻し、ステップS104において重合基板Tの均一性が目標条件を満たすと判定するまで、ステップS101〜S107の処理を繰り返す。
【0144】
ここで、パラメータ変更処理の具体例について
図17〜
図20を参照して説明する。
図17〜
図20は、パラメータ変更処理の具体例の説明図である。
【0145】
たとえば、ステップS103において、
図17に示す検査結果が得られたとする。ここで、
図17に示す検査結果は、ステップS101において、第1吸着部311および第2吸着部312を用いて第1基板W1の外周部を全周吸着して行った接合処理の検査結果であるものとする。
【0146】
制御部は、
図17に示す検査結果に基づき、複数のゾーンZ0〜Z4のうち歪みの度合が最も大きい90度外周ゾーンZ2を選択する。また、制御部は、選択した90度外周ゾーンZ2と歪みの方向が逆方向すなわち内向きであるトレンド情報を有するパラメータ「吸着方向」を選択する。
【0147】
なお、
図16に示すように、90度外周ゾーンZ2における歪みの方向が内向きであるトレンド情報を有するパラメータは、「吸着方向」以外にも、「基板間ギャップ」、「第1基板吸着圧力」、「第2基板吸着圧力」、「吸着解除タイミング」がある。このような場合、制御部は、たとえば、これらのパラメータ種別を表示部に表示し、いずれのパラメータを選択すべきかをユーザに決定させてもよい。また、制御部は、歪みの方向だけでなく、歪みの大きさも加味してパラメータを選択してもよい。また、制御部は、注目しているゾーン(ここでは、90度外周ゾーンZ2)以外のゾーンへの影響を加味してパラメータを選択してもよい。また、複数のパラメータに予め優先順位を設けておき、複数の選択候補の中から優先順位の高いパラメータを選択するようにしてもよい。
【0148】
つづいて、制御部は、記憶部に記憶された設定情報のうち、パラメータ種別「吸着方向」のパラメータ値を、全周吸着から45度吸着に変更する。そして、制御部は、変更後のパラメータにて再度接合処理を実行し、検査装置31から検査結果を再度取得する。この結果、
図18に示すように、
図17に示す検査結果と比較して45度外周ゾーンZ1および90度外周ゾーンZ2における歪みの方向が外向きから内向きに変化した検査結果が得られる。
【0149】
次に、制御部は、
図18に示す検査結果に基づき、複数のゾーンZ0〜Z4のうち歪みの度合が最も大きい45度中間ゾーンZ3を選択する。また、制御部は、選択した45度中間ゾーンZ3と歪みの方向が逆方向すなわち外向きであるトレンド情報を有するパラメータ「基板間ギャップ」を選択する。
【0150】
つづいて、制御部は、記憶部に記憶された設定情報のうち、パラメータ種別「基板間ギャップ」のパラメータ値を、基板間ギャップを広げる方向に規定値だけ変更する。そして、制御部は、変更後のパラメータにて再度接合処理を実行し、検査装置31から検査結果を再度取得する。この結果、
図19に示すように、
図18に示す検査結果と比較して45度中間ゾーンZ3における歪みが低減した検査結果が得られる。また、
図19に示す検査結果は、
図18に示す検査結果と比較して、45度外周ゾーンZ1における歪みの方向が外向きから内向きに変化したことも示している。
【0151】
次に、制御部は、
図19に示す検査結果に基づき、複数のゾーンZ0〜Z4のうち歪みの度合が最も大きい90度外周ゾーンZ2を選択する。また、制御部は、選択した90度外周ゾーンZ2と歪みの方向が逆方向すなわち外向きであるトレンド情報を有する「第1基板吸着圧力」を選択する。
【0152】
つづいて、制御部は、記憶部に記憶された設定情報のうち、パラメータ種別「第1基板吸着圧力」のパラメータ値を、第1基板吸着圧力を弱める方向に規定値だけ変更する。そして、制御部は、変更後のパラメータにて再度接合処理を実行し、検査装置31から検査結果を再度取得する。この結果、
図20に示すように、
図19に示す検査結果と比較して90度外周ゾーンZ2における歪みが低減した検査結果が得られる。
【0153】
次に、制御部は、
図20に示す検査結果に基づき、複数のゾーンZ0〜Z4のうち歪みの度合が最も大きい中央ゾーンZ0を選択する。また、制御部は、選択した中央ゾーンZ0と歪みの方向が逆方向すなわち内向きであるトレンド情報を有する「ストライカー圧力」を選択する。
【0154】
つづいて、制御部は、記憶部に記憶された設定情報のうち、パラメータ種別「ストライカー圧力」のパラメータ値を、ストライカー圧力を弱める方向に規定値だけ変更する。そして、制御部は、変更後のパラメータにて再度接合処理を実行し、検査装置31から検査結果を再度取得する。この結果、
図21に示すように、
図20に示す検査結果と比較して中央ゾーンZ0における歪みが低減した検査結果が得られる。
【0155】
このように、実施形態に係る接合システム1によれば、重合基板Tの均一性が目標条件を満たすまで、パラメータ変更処理を繰り返すことで、歪みの少ない重合基板Tが作成されるようにパラメータを最適化することができる。
【0156】
<変形例>
上述した実施形態では、ステップS104において重合基板Tの均一性が目標条件を満たすまで、パラメータを変更し、変更後のパラメータにて接合処理を行うことを繰り返すこととした。これに限らず、接合システム1では、接合処理を行うことなく、複数のパラメータを一括して変更してもよい。
【0157】
たとえば、制御部は、ステップS107において変更したパラメータで接合処理を行ったと仮定した場合の検査結果をトレンド情報に基づいて予測し、予測した検査結果とトレンド情報とに基づいて複数のパラメータの少なくとも1つをさらに変更してもよい。
【0158】
このように、検査結果を予測することで、実際に接合処理を行うことなく、複数のパラメータを一括して変更することができる。したがって、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0159】
この場合、制御装置70は、パラメータの変更量と歪みの度合の変化量との相関を示す相関情報を記憶部に記憶しておいてもよい。相関情報は、たとえば、各パラメータについて、パラメータ値を最小に設定して接合処理を行った場合の検査結果と、パラメータ値を最大に設定して接合処理を行った場合の検査結果とに基づいて生成される。
【0160】
あるパラメータを変化させたときの歪みの変化の傾向は、基板によらず概ね一致するが、あるパラメータをある値だけ変化させたときの歪みの度合の変化量は、基板ごとに異なる。したがって、対象とする基板についての相関情報を予め生成したうえで、トレンド情報と相関情報とに基づいて複数のパラメータを一括して変更することで、パラメータ調整の更なる効率化を図ることができる。
【0161】
また、上述した実施形態では、接合システム1の処理ステーション3に検査装置31が配置される場合の例について説明したが、検査装置31は、接合システム1の外部に配置されていてもよい。この場合、重合基板Tは、接合システム1から搬出されて外部の検査装置31にて検査される。そして、検査装置31による検査結果は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して制御装置70に入力される。
【0162】
また、ここでは、1枚の重合基板Tの検査結果に基づいてパラメータを変更する場合の例について説明したが、たとえば、同一のパラメータにて複数枚の重合基板Tを作成し、これら複数枚の重合基板Tの検査結果の平均値に基づいてパラメータを変更してもよい。
【0163】
上述してきたように、実施形態に係る接合装置41のパラメータ調整方法は、第1基板W1を上方から吸着保持する第1保持部140と、第1保持部140の下方に配置され、第2基板W2を下方から吸着保持する第2保持部141と、第1保持部140と第2保持部141との間のギャップを調整する調整部(一例として、第1移動部160)と、第1基板W1の中心部を上方から押圧して第2基板W2に接触させるストライカー190とを備え、調整部によってギャップを調整したうえで、第1保持部140に吸着保持された第1基板W1の中心部をストライカー190にて第2保持部141に吸着保持された第2基板W2に接触させることにより、第1基板W1と第2基板W2とを接合する接合装置41のパラメータ調整方法であって、取得工程と、パラメータ変更工程とを含む。取得工程は、接合装置41によって第1基板W1と第2基板W2とが接合された重合基板Tを検査する検査装置31から重合基板Tに生じた歪みの方向および度合を示す検査結果を取得する。パラメータ変更工程は、ギャップ(一例として、「基板間ギャップ」)、第1保持部140による第1基板W1の吸着圧力(一例として、「第1基板吸着圧力」)、第2保持部141による第2基板W2の吸着圧力(一例として、「第2基板吸着圧力」)およびストライカー190による第1基板W1の押圧力(一例として、「ストライカー圧力」)の少なくとも1つを含む複数のパラメータごとに、パラメータを変更した場合における歪みの方向および度合の変化の傾向を示すトレンド情報と、取得工程において取得された検査結果とに基づき、複数のパラメータの少なくとも1つを変更する。
【0164】
このように、パラメータを変更した場合における歪みの方向および度合の変化の傾向を示すトレンド情報と、検査装置31による重合基板Tの検査結果とに基づき、接合装置41のパラメータを変更することで、接合装置41のパラメータを最適化することができる。したがって、実施形態に係る接合装置41のパラメータ調整方法によれば、歪みの少ない重合基板Tを作成することができる。
【0165】
また、パラメータ変更工程は、重合基板Tの板面に設定された複数のゾーン(一例として、中央ゾーンZ0、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3および90度中間ゾーンZ4)のうち1つを選択し、選択されたゾーンにおける検査結果およびトレンド情報に基づき、前記複数のパラメータの少なくとも1つを変更してもよい。
【0166】
複数のゾーンから1つを選択し、選択したゾーンの歪みが低減されるようにパラメータを変更することで、歪みの少ない重合基板を作成することができる。
【0167】
また、パラメータ変更工程は、複数のゾーンのうち歪みの度合が最も大きいゾーンを検査結果に基づいて選択してもよい。
【0168】
このように、歪みの度合が最も大きいゾーンを優先的に選択することで、たとえば、より少ない調整回数で目標条件に到達することができることから、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0169】
第1基板W1および第2基板W2は、表面の結晶方向が[100]である単結晶シリコンウェハであってもよい。この場合、複数のゾーンは、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[0−11]結晶方向に向かう方向を0度と規定したときの45度の方向における外周部である45度外周ゾーンZ1、90度の方向における外周部である90度外周ゾーンZ2、45度外周ゾーンZ1と中心部との中間部である45度中間ゾーンZ3および90度外周ゾーンZ2と中心部との中間部である90度中間ゾーンZ4を含んでいてもよい。
【0170】
第1基板W1および第2基板W2が上記単結晶シリコンウェハである場合の重合基板Tに生じる歪みは、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4ごとに同様の傾向を示す。このため、45度外周ゾーンZ1、90度外周ゾーンZ2、45度中間ゾーンZ3、90度中間ゾーンZ4を含む複数のゾーンを重合基板Tの板面に設定することで、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0171】
また、第1保持部140は、45度の方向を基準に90度間隔で配置され、第1基板W1の外周部を吸着保持する4つの第1吸着部311と、0度の方向を基準に90度間隔で配置され、第1基板W1の外周部を吸着保持する4つの第2吸着部312とを備えていてもよい。この場合、複数のパラメータは、第1吸着部311および第2吸着部312のうち第1基板W1の吸着保持に用いられる吸着部(一例として、「吸着方向」)を含む。
【0172】
第1吸着部311のみを用いて第1基板W1を吸着保持した場合と、第1吸着部311および第2吸着部312を用いて第1基板W1を吸着保持した場合とで重合基板Tの歪み方が変化する。たとえば、複数の外側吸着部301のうち4つの第1吸着部311のみを用いて第1基板W1を吸着保持した状態で接合処理を行うことで、第1基板W1の物性の異方性に起因する第1基板W1の歪みを抑えることができる。このため、検査結果およびトレンド情報に基づき、第1基板W1の吸着保持に用いられる吸着部を変更し、重合基板Tの歪み方を変化させることで、歪みの少ない重合基板Tを作成することができる。
【0173】
また、複数のパラメータは、第1保持部140に吸着保持された第1基板W1の中心部をストライカー190にて押圧した後、第1保持部140による第1基板W1の吸着保持を解除するタイミング(一例として、「吸着解除タイミング」)を含んでいてもよい。
【0174】
第1吸着部311による第1基板W1の吸着保持を解除するタイミングによって重合基板Tの歪み方が変化する。このため、検査結果およびトレンド情報に基づき、第1基板W1の吸着保持を解除するタイミングを変更し、重合基板Tの歪み方を変化させることで、歪みの少ない重合基板Tを作成することができる。
【0175】
また、実施形態に係るパラメータ調整方法は、再取得工程と、判定工程とを含んでいてもよい。再取得工程は、パラメータ変更工程後に接合装置41によって接合された重合基板Tの検査結果を検査装置31から取得する。判定工程は、再取得工程によって取得された検査結果に基づき、重合基板Tの均一性が目標条件を満たすか否かを判定する。この場合、パラメータ変更工程および再取得工程は、判定工程によって重合基板Tの均一性が目標条件を満たすと判定されるまで繰り返されてもよい。
【0176】
このように、重合基板Tの均一性が目標条件を満たすまで、パラメータ変更工程と再取得工程とを繰り返すことにより、パラメータを最適化することができる。
【0177】
また、実施形態に係るパラメータ調整方法は、パラメータ変更工程後に接合装置41によって第1基板W1と第2基板W2とを接合したと仮定した場合における検査結果をトレンド情報に基づいて予測する予測工程を含んでいてもよい。この場合、パラメータ変更工程は、予測工程において予測された検査結果とトレンド情報とに基づいて複数のパラメータの少なくとも1つをさらに変更してもよい。
【0178】
このように、検査結果を予測することで、実際に接合処理を行うことなく、複数のパラメータを一括して変更することができる。したがって、パラメータ調整を効率良く行うことができる。
【0179】
また、予測工程は、パラメータ変更工程後に接合装置41によって第1基板W1と第2基板W2とを接合したと仮定した場合における検査結果を、トレンド情報と、パラメータの変更量と歪みの度合の変化量との相関を示す相関情報とに基づいて予測してもよい。
【0180】
このように、相関情報を用いることでよりパラメータ調整の更なる効率化を図ることができる。
【0181】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。