【文献】
雨宮 邦招 外8名,Fabrication of hard-coated optical absorbers withmicrostructured surfaces using etched ion tracks: toward broadband ultra-lowreflectance,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B,2015年,vol.356-357,p.154-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3のステップにおいて、前記転写体は、前記エッチングした樹脂基板の凹凸面に光硬化性樹脂を塗布し、光照射により硬化させた光硬化性樹脂である、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法。
前記第3のステップにおいて、前記転写体は、前記エッチングした樹脂基板の凹凸面にシリコーン組成物を塗布し、硬化したシリコーンゴムである、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法。
前記第5のステップにおいて、前記再転写体は、カーボン粉体を分散させたシリコーン組成物を塗布し、硬化したシリコーンゴムであり、前記カーボン粉体を分散させたシリコーンゴムの光吸収体は、0.25μm〜2.4μmの波長の全反射率が0.6%以下、かつ2μm〜15μmの波長の全反射率が0.4%以下である表面が形成され、
ここで、前記2μm〜15μmの波長の全反射率は、フーリエ変換赤外分光分析装置に半球全反射率測定ユニットを使用し、サンプル測定をサンプルポートに測定サンプルをセットして行い、且つ、バックグラウンド測定を前記サンプルポートに前記測定サンプルをセットせずに行うことによって、測定される値と等しい、請求項10記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。なお、複数の図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る光吸収体の製造方法を示すフローチャートである。
図1を参照しつつ、光吸収体の製造方法を説明する。
【0015】
最初に、樹脂基板にイオンビームを照射する(S100)。具体的には、樹脂基板、例えば、アリルジグリコールカーボネート樹脂(CR−39)にサイクロトロンにより加速したイオンビームを照射する。これにより、樹脂基板の表面近傍にイオン飛跡が多数形成される。イオン飛跡はランダムに分布されることが好ましい。イオンビームは酸素イオンを用いることができるが、NeイオンとNeイオンよりも重いイオンのうちいずれかのイオンであることが、樹脂基板のイオン飛跡に沿って選択的にエッチングが進みやすくなり、最終的なピットアスペクト比(ピット深さ/ピット半径)を大きくできる点で好ましい。
【0016】
イオンビームの加速エネルギーは200MeV以上であることが、十分な侵入深さを得られ、ピット半径を大きく取っても大きなピットアスペクト比を得られる点で好ましい。イオンビームの樹脂基板への照射密度は、適宜選択されるが、遠赤外線の波長の光を捕えるのに必要十分なピットの密度の観点から1×10
5/cm
2〜1×10
6/cm
2であることが好ましい。
【0017】
次いで、イオンビームを照射した樹脂基板をアルカリ溶液でエッチングしてその表面に凹凸面を形成する(S110)。具体的には、アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液を用いて、例えば70℃に加熱しながら、所定の時間、イオンビームを照射した樹脂基板を浸漬する。次いで、その樹脂基板を水洗し、乾燥する。
【0018】
次いで、エッチングした樹脂基板の凹凸面を覆う転写体を形成する(S120)。転写体は、例えば、金属膜、光硬化性樹脂、シリコーンゴムにより形成する。転写体には、S110で形成した凹凸を反転した形状の凹凸面が形成される。
【0019】
次いで、転写体を樹脂基板から剥離して光吸収体を得る(S130)。これにより、樹脂基板に形成された凹凸形状が転写され、反転した凹凸形状を形成した転写体が得られる。
【0020】
なお、上述した転写体形成工程(S120)において、転写体として金属膜を形成する場合は、電気めっきを行うための電極層として、例えば、真空蒸着法、スパッタ法により、例えば厚さ100nm〜500nmの銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属膜(単金属あるいは合金膜)を樹脂基板の凹凸面上に形成する。電極層の下地層として、密着性を高めるためにチタン(Ti)膜を形成してもよい。また、電極層は、無電解めっき法により形成してもよく、電極層と樹脂基板との密着性を向上するために、シランカップリング剤により樹脂基板の凹凸面を表面処理してもよい。次いで、電極層を用いて、電気めっき法により、厚さ例えば、100μm〜1mmのNi、クロム(Cr)、Cu、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)等の単金属または合金あるいはこれらを積層した電気めっき膜を形成する。上述した剥離工程(S130)において樹脂基板から剥離することで、樹脂基板の凹凸形状が反転した表面を有する金属膜の転写体の光吸収体が形成される。この光吸収体は金属膜により形成されているので、凹凸面が高い耐久性を有するとともに、耐熱性も有し、またバインダーフリーである。なお、電極層は、無電解めっき法、真空蒸着法等により形成してもよく、これを組み合わせてもよい。また、金属膜全体を無電解めっき法で形成してもよい。
【0021】
また、上述した転写体形成工程(S120)において、転写体として光硬化性樹脂、例えば紫外線硬化樹脂を形成する場合は、エッチングした樹脂基板の凹凸面に紫外線硬化樹脂を滴下塗布し、紫外線照射により硬化させる。滴下前または滴下後に紫外線硬化樹脂の脱泡を行うことが好ましい。上述した剥離工程(S130)において樹脂基板から剥離することで、樹脂基板の凹凸形状が反転した表面を有する紫外線硬化樹脂の転写体の光吸収体が形成される。これにより、型となる凹凸面を有する樹脂基板を繰り返し使用できるので量産性が優れ、低コストである。
【0022】
また、上述した転写体形成工程(S120)において、転写体としてシリコーンゴムを形成する場合は、シリコーン組成物、例えば二液式硬化性のシリコーン組成物の主剤および硬化剤を混合し、エッチングした樹脂基板の凹凸面に滴下塗布し硬化させる。滴下前または滴下後(硬化前)にシリコーン組成物の脱泡を行うことが好ましい。上述した剥離工程(S130)において樹脂基板から剥離することで、樹脂基板の凹凸形状が反転した表面を有するシリコーンゴムの転写体の光吸収体が形成される。これにより、型となる凹凸面を有する樹脂基板を繰り返し使用できるので量産性が優れ、低コストであり、耐熱性に優れる。さらに、この光吸収体は、可撓性を有しているので曲面にも貼付できる。
【0023】
本実施の形態の光吸収体の製造方法によれば、イオンビーム照射およびエッチング処理により樹脂基板に形成された凹凸形状を転写体に転写し、転写体の材料を、例えば、金属膜、光硬化性樹脂およびシリコーンゴムを選択することで、これらの材料に応じた耐久性、量産性、低コストなど特徴を有することになり、さらに、後述する実施例で説明するように、低反射率の光吸収体を製造できる。
【0024】
本実施形態の変形例として、剥離工程(S130)の後に、転写体の凹凸面を覆う再転写体を形成してもよい。例えば、上述した金属膜、光硬化性樹脂、またはシリコーンゴムの転写体の凹凸面に、上述した光硬化性樹脂やシリコーン組成物により再転写体を形成して、凹凸形状を再転写してもよい。特に金属膜は耐久性に優れているので、何度でも使用できるので量産性に優れる。再転写体の形成方法は上述した光硬化性樹脂やシリコーン組成物の転写処理を用いることができる。さらに、再転写体の光硬化性樹脂やシリコーン組成物にカーボン粉体、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブを混合してもよい。これにより紫外線〜近赤外線の波長領域での反射率を低下でき、また、再転写体の上記材料にカーボンナノチューブを混合することで、転写体の凹凸面に再転写体の上記材料をより追従させることができる。
【0025】
また、本実施形態の他の変形例として、S110で形成した凹凸面を有する光吸収体を後述する実施例で示すように、中赤外線の波長領域において顕著な低反射率を有する光吸収体を製造できる。
【0026】
[実施例1]
厚さ0.8mmのCR−39の樹脂基板(製品名バリオトラック、フクビ化学工業社製、長瀬ランダウア社販売)に、量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所のAVFサイクロトロンにより加速エネルギー260MeVのネオン(Ne)イオンを照射した。照射密度は1×10
6/cm
2に設定した。
【0027】
次いで、イオンビームを照射した樹脂基板を70℃、6.38規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液に9時間浸漬してエッチングを行い、その後水洗および乾燥して、表面に微細な凹凸が形成された樹脂基板を得た。
【0028】
次いで、樹脂基板の凹凸面にスパッタ法により厚さ50nmのTi膜および厚さ300nmのCu膜の電気めっき用の電極層を形成した。次いで、電気めっき法により電極層上に厚さ500μmのNiめっき膜を転写体として形成した。
【0029】
次いで、樹脂基板からNiめっき膜を剥離して凹凸が転写したNiめっき膜の光吸収体を得た。
【0030】
図2は、実施例1の光吸収体の表面の電子顕微鏡写真である。
図2を参照するに、Niめっき膜の光吸収体の表面には、根元から先端に向かって縮径する円錐状の多数の突起が、互いに先端が数μmから数10μm離隔して分布して形成していることが分かる。
【0031】
なお、電子顕微鏡写真は日本電子社製の走査型電子顕微鏡(製品名JSM−7400F、加速電圧1.5kV)を使用した、倍率は1000倍である。
【0032】
図3は、実施例1の光吸収体の全反射率を示す図である。
図3を参照するに、Niめっき膜の光吸収体は、250nm〜770nmの波長の全反射率が0.5%以下に低下しており、0.1%以上となっていることが分かる。
【0033】
なお、全反射率は、パーキンエルマー社の紫外可視近赤外分光光度計(製品名LAMBDA 900)に半球全反射率測定ユニット(スペクトラロン積分球)を使用し、波長250nm〜750nmの範囲で、10nm間隔で測定した。参照標準として、校正値付きスペクトラロン99%標準反射板(米国ラブスフェア社製、製品番号SRS−99−020)を用いた。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同様にして、CR−39の樹脂基板に凹凸面を形成した。
【0035】
次いで、樹脂基板の凹凸面にウレタンアクリレート樹脂およびエポキシアクリレート樹脂を主成分とする紫外線硬化樹脂(ユニテック社製、製品名ユニソーラ・ソフト)を滴下塗布して表面を覆い、脱泡後、CR−39の樹脂基板の凹凸面とは反対側から波長385nmの紫外光をUVライトによって3〜6分照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。
【0036】
次いで、樹脂基板から硬化した紫外線硬化樹脂を剥離して凹凸が転写した紫外線硬化樹脂の光吸収体を得た。
【0037】
図4は、実施例2の光吸収体の表面の電子顕微鏡写真である。
図4を参照するに、紫外線硬化樹脂の光吸収体の表面には、根元から先端に向かって縮径する円錐状の多数の突起が、互いに先端が数μmから数10μm離隔して分布して形成していることが分かる。なお、電子顕微鏡は実施例1と同じものを使用し、倍率は500倍である。
【0038】
図5は、実施例2の光吸収体の全反射率を示す図である。
図5を参照するに、紫外線硬化樹脂の光吸収体は、中赤外線の波長領域の5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.5%以下に低下しており、0.2%以上となっていることが分かる。
【0039】
なお、全反射率は、日本分光社製のフーリエ変換赤外分光分析装置(製品名FT/IR−6300 type A)に半球全反射率測定ユニット(金コート積分球)を使用し、波長1.28μm〜15.4μm(波数650cm
−1〜7800cm
−1)の範囲を0.96cm
−1の波数間隔で測定した。参照標準として、校正値付き標準反射板(米国ラブスフェア社製、製品名インフラゴールド)を用いた。
【0040】
図6は、実施例2の光吸収体の遠赤外線の波長領域における反射率および透過率を示す図である。
図6を参照するに、紫外線硬化樹脂の光吸収体は、遠赤外の波長領域の100μmにおいて反射率が1%あるいはそれ以下になっていることが分かる。このことと、
図5に示した中赤外線の波長領域の5μm〜15μmの波長の全反射率が0.5%以下に低下していることとを考慮すると、今回測定していない、15μm〜100μmの波長領域で、反射率が1%以下であることが推察される。また、紫外線硬化樹脂の光吸収体は、遠赤外の波長領域の100μmにおいて透過率が0.1%あるいはそれ以下となっているので、光吸収率が98.9%あるいはそれ以上であることが推察される。
【0041】
なお、遠赤外領域における反射率および透過率の測定は、大塚電子社製のテラヘルツ分光器(製品名TR−1000)を使用し、鏡面反射成分のみの反射率と透過率を測定した。
【0042】
[実施例3]
実施例1と同様にして、CR−39の樹脂基板に凹凸面を形成した。
【0043】
次いで、二液式硬化性のシリコーン組成物(信越シリコーン社製 主剤SIM−360、硬化剤CAT−360)の主剤と硬化剤を9:1で混合し、脱泡後、樹脂基板の凹凸面に滴下塗布して表面を覆い、さらに真空デシケータ内で脱泡後、室温で12時間放置して硬化させたシリコーンゴムを得た。
【0044】
次いで、樹脂基板から硬化したシリコーンゴムを剥離して凹凸が転写したシリコーンゴムの光吸収体を得た。
【0045】
図7は、実施例3の光吸収体の表面の電子顕微鏡写真である。
図7を参照するに、シリコーンゴムの光吸収体の表面には、根元から先端に向かって縮径する円錐状の多数の突起が、互いに先端が数μmから数10μm離隔して分布して形成していることが分かる。なお、電子顕微鏡は実施例1と同じものを使用し、倍率は500倍である。
【0046】
図8は、実施例3の光吸収体の全反射率を示す図である。
図8を参照するに、シリコーンゴムの光吸収体は、中赤外線の波長領域の5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.5%以下に低下しており、0.1%以上となっていることが分かる。なお、全反射率の測定条件は、実施例2の
図5の測定と同じである。
【0047】
[実施例4]
実施例4は、実施例1のNiめっき膜の光吸収体を用いて、その凹凸面の転写体を作製した。
【0048】
次いで、二液式硬化性のシリコーン組成物(信越シリコーン社製 主剤SIM−360、硬化剤CAT−360)の主剤と硬化剤を9:1で混合し、さらに、シリコーン組成物に対してカーボンブラックを5wt%混練し、脱泡後、Niめっき膜の凹凸面に滴下塗布して表面を覆い、さらに真空デシケータ内で脱泡後、室温で12時間放置して硬化させたシリコーンゴムを得た。
【0049】
次いで、Niめっき膜から硬化したシリコーンゴムを剥離して凹凸が転写したカーボンブラック含有シリコーンゴムの光吸収体を得た。
【0050】
図9は、実施例4の光吸収体の表面の電子顕微鏡写真である。
図9を参照するに、カーボンブラック含有シリコーンゴムの光吸収体の表面には、複数の先端が尾根状に連なった多数の突起が形成されており、互いに先端が数μmから数10μm離隔して分布して形成していることが分かる。なお、電子顕微鏡は実施例1と同じものを使用し、倍率は500倍である。この形状は、後述する実施例5の
図11に示す形状等類似しているので、少なくとも
図11に示す低反射率の特性を有していると推察でき、さらに、カーボンブラックを含有しているので、紫外線〜近赤外線の波長領域でも低反射率が期待できる。
【0051】
[実施例5]
実施例5は、実施例1と同様に、CR−39の樹脂基板に加速エネルギー260MeVのネオン(Ne)イオンビームを1×10
6/cm
2の密度で照射し、次いで、70℃、6.38規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液に9時間浸漬してエッチングを行い、その後水洗および乾燥して得た、表面に微細な凹凸が形成された樹脂基板である。
【0052】
図10は、実施例5の光吸収体の表面の電子顕微鏡写真である。
図10を参照するに、樹脂基板の光吸収体の表面には、複数の先端が尾根状に連なった多数の突起が形成されており、互いに先端が数μmから数10μm離隔して分布して形成され、尾根状の連なった突起が互いに数μmから数10μm離隔して形成されていることが分かる。なお、電子顕微鏡は実施例1と同じものを使用し、倍率は500倍である。
【0053】
図11は、実施例5の光吸収体の全反射率を示す図である。
図11を参照するに、実施例5の樹脂基板の光吸収体は、中赤外線の波長領域の5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.4%以下に低下しており、0.2%以上となっていることが分かる。なお、全反射率の測定条件は、実施例2の
図5の測定と同じである。
【0054】
上記の実施例2の
図5、実施例3の
図8および実施例5の
図11において、中赤外線の波長領域の1.28μm〜15.4μmの波長の全反射率の測定結果を示した。これらの測定では、光吸収体のサンプルの全反射率の測定(以下、「サンプル測定」と称する。)と、バックグラウンドの測定(以下、「バックグラウンド測定」と称する。)の2つの測定により、各サンプルの全反射率のデータを求めている。
【0055】
図12は、全反射率の測定において第1サンプルポートを使用した設定を説明するための図である。
図13は、全反射率の測定におけるバックグラウンドの測定の設定を説明するための図である。
図12および
図13を参照するに、測定に使用した半球全反射率測定ユニット(金コート積分球)では、積分球10に、測定サンプルを設置するサンプルポートとして円形の開口部が設けられている。サンプルポートは、開口部の直径が20mm(第1サンプルポート11)と30mm(第2サンプルポート12)がある。上記の実施例2の
図5、実施例3の
図8および実施例5の
図11では、サンプル測定は、
図12に示すように第1サンプルポート11に測定サンプル13をセットして測定光が入射するようにして行い、バックグラウンド測定は、
図13に示すように第2サンプルポート12を測定光が通過するようにして行っていた。なお、サンプル測定(
図12)では第2サンプルポート12がポートプラグ14によって閉じられ、バックグラウンド測定では第1サンプルポート11がポートプラグ15によって閉じられている。このようにサンプル測定とバックグラウンド測定では異なるサンプルポートに測定光が入射するようになっているため、バックグラウンド測定に対応したサンプル測定が行われていない。本願発明者は、上記の実施例2の
図5、実施例3の
図8および実施例5の
図11では、測定サンプルの全反射率が適正に得られていないことに気がつき、以下のように、再度、測定を行った。
【0056】
図14は、全反射率の測定において第2サンプルポートを使用した設定を説明するための図である。新たな測定として、
図14に示すように、測定サンプル13を第2サンプルポート12にセットして測定を行った。なお、バックグラウンド測定は、
図13に示したように、測定サンプル13をセットしていない第2サンプルポート12を測定光が通過するようにして行った。
【0057】
図15は、全反射率の測定の設定による測定データの差異を説明するための図である。
図15(a)は
図12に示す配置でサンプル測定を行った場合に得られたデータを示し、
図15(b)は
図14に示す配置でサンプル測定を行った場合に得られたデータを示す。なお、両方のデータとも、先に示した実施例5の光吸収体を測定サンプルとして使用しており、また、バックグラウンドを除く処理はしていないデータ、いわゆる生データである。
【0058】
第1サンプルポート11に測定サンプル13をセットした場合(
図12)の
図15(a)に示す全反射率に対して、第2サンプルポート12に測定サンプル13をセットした場合(
図14)の
図15(b)に示す全反射率の方が、低くなっていることが分かる。例えば、波長が4μmでは全反射率が
図15(a)では0.6%に対して
図15(b)では0.3%に低下している。このことから明らかなように、第1サンプルポート11に測定サンプル13をセットした上記の実施例2の
図5、実施例3の
図8および実施例5の
図11のサンプル測定時に得られた全反射率は、第2サンプルポート12に測定サンプル13をセットした場合よりも高くなっていたことが分かる。
【0059】
[第2サンプルポート12によるサンプル測定およびバックグラウンド測定により得られた全反射率]
以下、サンプル測定を第2サンプルポート12にセットして測定を行い、バックグラウンド測定は、測定サンプル13をセットしていない第2サンプルポート12を測定光が通過するようにして行って得られた全反射率を示す。測定サンプルは先の各実施例で使用したサンプルと同一であり、測定装置は先の
図5(実施例2)で述べた測定装置と同一である。
【0060】
図16は、本発明の実施例2の光吸収体の全反射率(第2サンプルポート使用)を示す図である。
図16を参照するに、実施例2の紫外線硬化樹脂の光吸収体は、中赤外線の波長領域の3μm〜15μmの波長の全反射率が、0.3%以下であり、0.02%以上であることが分かる。
【0061】
図17は、本発明の実施例3の光吸収体の全反射率(第2サンプルポート使用)を示す図である。
図17を参照するに、実施例3のシリコーンゴムの光吸収体は、中赤外線の波長領域の5.5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.2%以下であり、0.001%以上であることが分かる。
【0062】
図18は、本発明の実施例4の光吸収体の(a)は短波長側の全反射率および(b)は長波長側の全反射率(第2サンプルポート使用)を示す図である。実施例4の光吸収体は、先に述べたように、実施例1のNiめっき膜の光吸収体の凹凸面をカーボンブラック含有シリコーン組成物によって覆って硬化後に剥離して得たカーボンブラック含有シリコーンゴムからなる転写体であり、
図9の電子顕微鏡写真に示した表面を有する。
図18(a)を参照するに、実施例4のカーボンブラック含有シリコーンゴムの光吸収体は、紫外線〜近赤外線の波長領域の250nm(0.25μm)〜2400nm(2.4μm)の全反射率が、0.6%以下であり、0.2%以上であることが分かる。
図18(b)を参照するに、実施例4のカーボンブラック含有シリコーンゴムの光吸収体は、中赤外線の波長領域の2μm〜15μmの波長の全反射率が、0.4%以下であり、0.001%以上であることが分かる。なお、紫外線〜近赤外線の波長領域の0.25μm〜2.4μmの全反射率は、パーキンエルマー社の紫外可視近赤外分光光度計(製品名LAMBDA 900)に半球全反射率測定ユニット(スペクトラロン積分球)を使用し、10nmの波長間隔で測定した。参照標準として、校正値付きスペクトラロン99%標準反射板(米国ラブスフェア社製、製品番号SRS−99−020)を用いた。
【0063】
図19は、本発明の実施例5の光吸収体の全反射率(第2サンプルポート使用)を示す図である。
図19を参照するに、実施例5の樹脂基板の光吸収体は、中赤外線の波長領域の4μm〜15μmの波長の全反射率が、0.1%以下であり、0.001%以上であることが分かる。
【0064】
以上、本発明の実施形態および実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る製造方法により製造された光吸収体は、プラントモニタリングや発熱者検知のためのサーモグラフィや、車載用歩行者暗視装置、夜間防犯、見守り等のための赤外センサや、地球観測(リモートセンシング)用赤外線センサ等の幅広い用途に用いることができ、また、大面積化が容易に可能であるので、常温域での主たる放射波長域、例えば、(3μm〜100μm)の波長領域で放射率がほぼ100%の平面黒体標準として使用できる。
【0066】
なお、以上の説明に関してさらに実施形態として以下の付記を開示する。
(付記1) 光吸収体の製造方法であって、
樹脂基板にイオンビームを照射する第1のステップと、
前記照射された樹脂基板をアルカリ溶液でエッチングしてその表面に凹凸面を形成する第2のステップと、
前記エッチングした樹脂基板の凹凸面を覆う転写体を形成する第3のステップと、
前記転写体を前記樹脂基板から剥離して光吸収体を得る第4のステップと、
を含む、前記製造方法。
(付記2) 前記樹脂基板はアリルジグリコールカーボネート樹脂(CR−39)であり、
前記イオンビームはNeイオンとNeイオンよりも重いイオンのうちいずれかを用い、
前記アルカリ溶液は強アルカリ性を有する、
付記1記載の製造方法。
(付記3) 前記イオンビームは加速エネルギーが200MeV以上である、付記1または2記載の製造方法。
(付記4) 前記第3のステップにおいて、前記転写体は、前記エッチングした樹脂基板の凹凸面に形成した金属膜である、付記1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法。
(付記5) 前記金属膜の光吸収体は、250nm〜770nmの波長の全反射率が、0.5%以下である表面が形成される、付記4記載の製造方法。
(付記6) 前記金属膜の光吸収体は、250nm〜770nmの波長の全反射率が、0.1%以上である表面が形成される、付記5記載の製造方法。
(付記7) 前記第3のステップにおいて、前記転写体は、前記エッチングした樹脂基板の凹凸面に光硬化性樹脂を塗布し、光照射により硬化させた光硬化性樹脂である、付記1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法。
(付記8) 前記光硬化性樹脂の光吸収体は、5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.5%以下である表面が形成される、付記7記載の製造方法。
(付記9) 前記光硬化性樹脂の光吸収体は、5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.2%以上である表面が形成される、付記8記載の製造方法。
(付記10) 前記光硬化性樹脂の光吸収体は、3μm〜15μmの波長の全反射率が、0.3%以下である表面が形成される、付記7記載の製造方法。
(付記11) 前記光硬化性樹脂の光吸収体は、3μm〜15μmの波長の全反射率が、0.02%以上である表面が形成される、付記10記載の製造方法。
(付記12) 前記第3のステップにおいて、前記転写体は、前記エッチングした樹脂基板の凹凸面にシリコーン組成物を塗布し、硬化したシリコーンゴムである、付記1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法。
(付記13) 前記シリコーンゴムの光吸収体は、5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.5%以下である表面が形成される、付記12記載の製造方法。
(付記14) 前記シリコーンゴムの光吸収体は、5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.1%以上である表面が形成される、付記13記載の製造方法。
(付記15) 前記シリコーンゴムの光吸収体は、5.5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.2%以下である表面が形成される、付記12記載の製造方法。
(付記16) 前記シリコーンゴムの光吸収体は、5.5μm〜15μmの波長の全反射率が、0.001%以上である表面が形成される、付記15記載の製造方法。
(付記17) 前記第4のステップにおいて得られた前記転写体の凹凸面を覆う再転写体を形成する第5のステップと、
前記再転写体を前記転写体から剥離して光吸収体を得る第6のステップと、
をさらに含む、付記1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法。
(付記18) 前記第5のステップにおいて、前記再転写体は、カーボン粉体を分散させたシリコーン組成物を塗布し、硬化したシリコーンゴムである、付記17記載の製造方法。
(付記19) 前記カーボン粉体を分散させたシリコーンゴムの光吸収体は、0.25μm〜2.4μmの波長の全反射率が、0.6%以下である表面が形成される、付記18記載の製造方法。
(付記20) 前記カーボン粉体を分散させたシリコーンゴムの光吸収体は、0.25μm〜2.4μmの波長の全反射率が、0.2%以上である表面が形成される、付記19記載の製造方法。
(付記21) 前記カーボン粉体を分散させたシリコーンゴムの光吸収体は、2μm〜15μmの波長の全反射率が、0.4%以下である表面が形成される、付記18記載の製造方法。
(付記22) 前記カーボン粉体を分散させたシリコーンゴムの光吸収体は、2μm〜15μmの波長の全反射率が、0.001%以上である表面が形成される、付記21記載の製造方法。
(付記23) 光吸収体の製造方法であって、
樹脂基板にイオンビームを照射する第1のステップと、
前記照射された樹脂基板の表面をアルカリ溶液でエッチングする第2のステップと、を含み、
前記第1および第2のステップにより、前記樹脂基板に、5μm〜15μmの波長の全反射率が0.4%以下である凹凸面を形成させる、前記製造方法。
(付記24) 前記樹脂基板は、5μm〜15μmの波長の全反射率が0.2%以上である、付記23記載の製造方法。
(付記25) 光吸収体の製造方法であって、
樹脂基板にイオンビームを照射する第1のステップと、
前記照射された樹脂基板の表面をアルカリ溶液でエッチングする第2のステップと、を含み、
前記第1および第2のステップにより、前記樹脂基板に、4μm〜15μmの波長の全反射率が0.1%以下である凹凸面を形成させる、前記製造方法。
(付記26) 前記樹脂基板は、4μm〜15μmの波長の全反射率が0.001%以上である、付記25記載の製造方法。
(付記27) 前記樹脂基板はアリルジグリコールカーボネート樹脂(CR−39)であり、
前記アルカリ溶液は強アルカリ性を有し、
前記イオンビームはNeイオンとNeイオンよりも重いイオンのうちいずれかを用いる、付記23〜26のうちいずれか一項記載の製造方法。
(付記28) 前記イオンビームは加速エネルギーが200MeV以上である、付記23〜27のうちいずれか一項記載の製造方法。