(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンナノチューブ繊維は、前記パイプの中に挿通される前に、所定本数ごとに1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維で束ねられることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のカーボンナノチューブ素線の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2に記載されているCNT電線は、複数のカーボンナノチューブ束が撚り合わされて形成された複数本のカーボンナノチューブ線材を絶縁被覆で被覆して形成されている。このようなCNT電線は、自動車や産業機器等の電力線や信号線、配電線等として用いられる場合には、問題なく使用することができる。
【0005】
しかしながら、このようなCNT電線を用いて送電線を形成するために、複数本のCNT電線を撚り合わせたり、あるいはCNT電線と銅線やアルミ線、鋼線等の素線とを撚り合わせようとすると、CNT電線の形状が崩れてしまい、うまく送電線を形成することができない。
そのため、上記のカーボンナノチューブの優れた特性を、架空送電線等の送電線で生かすことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブの優れた特性を生かしたカーボンナノチューブ素線や、それを用いた送電線、そのようなカーボンナノチューブ素線の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、カーボンナノチューブ素線において、
カーボンナノチューブのみで形成されたカーボンナノチューブ繊維と、パイプと、を備え、
複数本の前記カーボンナノチューブ繊維が、長手方向の全域にわたって前記パイプにより外側から固く把持された状態で前記パイプ内に収納されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブ素線において、前記パイプは、金属製であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカーボンナノチューブ素線において、前記金属製のパイプは、アルミニウム、ステンレス鋼若しくは銅、又はその合金で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブ素線において、前記パイプは、熱収縮性樹脂製であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、送電線において、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ素線が複数本撚られて形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、送電線において、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ素線を含む複数本の素線が撚られて形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の送電線において、前記素線に、アルミニウム若しくは銅、又はその合金で形成された素線が含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の送電線において、前記素線に、アルミニウム被覆鋼線又は亜鉛めっき鋼線が含まれていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、カーボンナノチューブ素線の製造方法において、
金属製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
前記パイプを細線化して、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、カーボンナノチューブ素線の製造方法において、
熱収縮性樹脂製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
加熱により前記パイプを収縮させて、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載のカーボンナノチューブ素線の製造方法において、前記カーボンナノチューブ繊維は、前記パイプの中に挿通される前に、所定本数ごとに1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維で束ねられることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、送電線の工事方法において、請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の送電線を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、引張強度が強く、軽量で、導電率が高いといったカーボンナノチューブの優れた特性を生かしたカーボンナノチューブ素線や、それを用いた送電線、そのようなカーボンナノチューブ素線の製造方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線等について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
なお、以下の各図では、カーボンナノチューブ繊維2を見やすくするために、カーボンナノチューブ素線1やパイプ3等に比べてカーボンナノチューブ繊維2が実際よりも非常に太く記載されている。
【0022】
[カーボンナノチューブ素線]
まず、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線について説明する。
図1は、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1の構成を表す断面図である。
カーボンナノチューブ素線1は、カーボンナノチューブ繊維2と、パイプ3とを備えており、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が、長手方向の全域にわたってパイプ3により外側から固く把持された状態でパイプ3内に収納されている。
【0023】
以下、具体的に説明する。なお、以下では、カーボンナノチューブ素線1は、単に素線1という場合がある。
カーボンナノチューブ繊維2は、カーボンナノチューブのみで形成されている。
カーボンナノチューブは、炭素原子の六角形格子構造を有するグラフェンシートを単層又は略同軸の多層の円筒状に丸めた構造を有している繊維状の物質である。
【0024】
パイプ3は、本実施形態では、金属製であり、例えばアルミニウムで形成されている。ステンレス鋼や銅、あるいはその合金(アルミニウム合金、ステンレス合金、銅合金)で形成することが可能である。
パイプ3が金属製であれば、後述するように(後述する
図2参照)、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を細線化して素線1を製造する際に、細線化されて径方向に縮んだパイプ3が複数本のカーボンナノチューブ繊維2をその長手方向の全域にわたって外側から固く把持する状態になるため、本実施形態に係る素線1を容易かつ的確に形成することが可能となる。
【0025】
また、パイプ3は、熱収縮性樹脂製であってもよい。
パイプ3が熱収縮性樹脂製であれば、後述するように、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を加熱して細線化して素線1を製造する際に、加熱により収縮したパイプ3が、その中に収納されている複数本のカーボンナノチューブ繊維2をその長手方向の全域にわたって外側から固く把持する状態になり、本実施形態に係る素線1を容易かつ的確に形成することが可能となる。
【0026】
なお、上記の「複数本のカーボンナノチューブ繊維2が長手方向の全域にわたってパイプ3により外側から固く把持された状態」とは、パイプ3の収縮力により、パイプ3とカーボンナノチューブ繊維2やカーボンナノチューブ繊維2同士が素線1の径方向に強く圧着されており、例えばパイプ3が動かない状態でその中の一部のカーボンナノチューブ繊維を長手方向に動かそうとしても強い摩擦力で動かないように保持されている状態をいう。
そのため、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1は銅線やアルミ線、鋼線等のように硬い。そのため、例えば、前述した特許文献2に記載されているCNT電線の場合と同じようにしてカーボンナノチューブ素線1をかしめて端子等を取り付けようとしても困難であり、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1への端子の取り付けは、銅線やアルミ線、鋼線等への端子の取り付けと同様にして行われる。
【0027】
カーボンナノチューブは、引張強さが11〜53GPaと鋼線よりも強度が高く、比重が1.3〜2.0g/cm
3とアルミニウムよりも軽い(中嶋直敏、外1名、“新連載 新しいナノ材料としてのカーボンナノチューブ−最近の展開(バイオからエネルギーまで)(1)”、DOJIN NEWS No.146/2013[平成30年3月5日検索]、インターネット<http://www.dojindo.co.jp/letterj/146/review/02.html>)。そして、銅線と同等の導電率を有している。
【0028】
そのため、カーボンナノチューブのみで形成されたカーボンナノチューブ繊維2が導電体として用いられている本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1は、引張強度が鋼線よりも強く、アルミ線よりも軽量で、銅線と同等の高い導電率を有するカーボンナノチューブの優れた特性を生かした素線になっている。
以上のように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1によれば、引張強度が強く、軽量で、導電率が高いといったカーボンナノチューブの優れた特性を生かした素線を提供することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1は、前述した特許文献2に記載されている、自動車や産業機器等の電力線や信号線、配電線に適したCNT電線とは異なり、銅線やアルミ線、鋼線等のように硬く、送電線に用いるのに適している。
そのため、後述するように、素線1同士を撚り合わせたり、アルミ線や導線、鋼線等と撚り合わせて、上記のカーボンナノチューブの特性を生かした送電線を形成することが可能となる。なお、この点については後で説明する。
【0030】
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1は、前述した特許文献2に記載されている、自動車や産業機器等の電力線や信号線、配電線に適したCNT電線とは異なり、銅線やアルミ線、鋼線等のように硬く、送電線に用いるのに適している。
そのため、後述するように、素線1同士を撚り合わせたり、アルミ線や導線、鋼線等と撚り合わせて、上記のカーボンナノチューブの特性を生かした送電線を形成することが可能となる。なお、この点については後で説明する。
【0031】
[カーボンナノチューブ素線の製造方法]
次に、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1の製造方法について説明する。カーボンナノチューブ素線1は、パイプ3内に複数本のカーボンナノチューブ繊維2を挿通したものに対して伸線処理や押し出し処理、圧延処理等を行うことによって製造することができる。
以下、具体的に説明する。
図2〜
図4は、素線1の製造方法の一例を示す図である。
【0032】
例えば
図2に示すように、複数本のカーボンナノチューブ繊維2をボビン11からそれぞれ引き出してローラ12でまとめる。
そして、まとめた複数本のカーボンナノチューブ繊維2を繊維束形成機械13にかけて繊維束20を形成する。そして、形成された繊維束20はサプライボビン14に巻き取られる。
【0033】
繊維束20の形成のしかたとしては、例えば
図3(A)に示すように、複数本のカーボンナノチューブ繊維2に撚りをかけて繊維束20を形成するように構成することが可能である。
また、カーボンナノチューブ繊維2に撚りをかけると、撚りをかけない場合に比べて引っ張る力に対してより伸びるようになり、また直線的にカーボンナノチューブ繊維2に力が加わらなくなるため引っ張り強度が低下し、上記のように鋼線よりも高く引張強さを有するカーボンナノチューブの特性の効果が低減してしまう可能性がある。
そこで、そのような場合には、例えば
図3(B)に示すように、カーボンナノチューブ繊維2を所定本数ずつまとめて、それを1本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねて繊維束20を形成するように構成することが可能である。1本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねる代わりに複数本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねるように構成することも可能である。
【0034】
このように構成すれば、カーボンナノチューブ繊維2a以外の複数のカーボンナノチューブ繊維2は撚りがかけられていない真っ直ぐな状態で素線1内に配置される。
そのため、複数のカーボンナノチューブ繊維2を束ねるカーボンナノチューブ繊維2aを除くほぼ全てのカーボンナノチューブ繊維2で、カーボンナノチューブの引張強さが低減されることなくそのまま発揮されるようになるため、カーボンナノチューブの特性(この場合は引張強さ)の効果が十分に発揮された素線1を形成することが可能となる。
【0035】
一方、
図4に示すように、例えばアルミニウム板30をフォーミングロール15a、15bで管状に成形し、管状に成形されたアルミニウム板30の端部同士を溶接機械16でビート溶接等により連続溶接してパイプ3を形成する。
なお、アルミニウム板の代わりにステンレス板や銅板あるいはその合金で形成された板でもよい。
【0036】
そして、上記のようにして複数本のカーボンナノチューブ繊維2に撚りをかけたり複数本のカーボンナノチューブ繊維2を束ねて形成した繊維束20をサプライボビン14から引き出して、形成したパイプ3の中に挿通し、パイプ3をダイス17に通して引き抜く引き抜き加工を行うなどしてパイプ3を細線化する。
なお、上記のようにして繊維束20すなわち複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を細線化した後、さらに細線化処理を1回又は複数回行うように構成してもよい。
【0037】
上記の場合、形成されたパイプ3の中に複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通された段階(ダイス17を通す前の段階)では、例えば
図5(A)に示すように、カーボンナノチューブ繊維2は、パイプ3内に、隙間がある状態で挿通される。
【0038】
しかし、上記のように、これをダイス17に通して引き抜き加工を行うなどしてパイプ3を細線化することで、パイプ3が径方向に縮んでいき、カーボンナノチューブ繊維2を外側から内向きに押圧する。
そのため、カーボンナノチューブ繊維2がパイプ3内で動き、次第にそれらの間に隙間がなくなっていく。
そして、
図5(B)に示すように、パイプ3の中でカーボンナノチューブ繊維2の間に隙間がない状態になり、さらにパイプ3が細線化されることでカーボンナノチューブ繊維2が内向きに押圧される。
【0039】
本実施形態では、このようにしてパイプ3を細線化することで、上記のように長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態が形成されるようになっている。
なお、上記の場合、パイプ3が細線化される際、パイプ3は長手方向に伸びるがカーボンナノチューブ繊維2はほとんど伸びない。そのため、パイプ3がダイス17に送り込まれる速度よりも早い速度でカーボンナノチューブ繊維2がダイス17に送り込まれる状態になる。
【0040】
また、図示を省略するが、カーボンナノチューブ繊維2を束ねた繊維束20をさらに所定本数ずつまとめて束ねるように構成することも可能である。また、そのようにして束ねたものをさらに所定本数ずつまとめて束ねるように構成することも可能であり、カーボンナノチューブ繊維2や繊維束20を何回束ねるかは適宜決められる。
その際、
図3(B)に示したのと同様に、所定本数の繊維束20等を1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねるように構成してもよい。すなわち、
図3(B)におけるカーボンナノチューブ繊維2を繊維束20と見立て、複数の繊維束20をカーボンナノチューブ繊維2aで束ねることができる。これにより、カーボンナノチューブの引張強さが撚りによって低減されることなくそのまま発揮されるため、素線1の引張強さを非常に強くすることができる。
【0041】
また、図示を省略するが、複数の繊維束20をさらに所定本数束ねて素線1を構成する場合、
図4においてサプライボビン14を複数設け、各サプライボビン14から線維束20を引き出して、形成したパイプ3の中に挿通し、パイプ3をダイス17に通して引き抜く引き抜き加工を行うなどしてパイプ3を細線化してもよい。
【0042】
一方、前述したように、パイプ3が熱収縮性樹脂で形成されている場合も、基本的には
図2に示した方法と同様にしてカーボンナノチューブ素線1を製造することができる。
すなわち、ボビン11から引き出した複数本のカーボンナノチューブ繊維2をローラ12、12等で例えば
図3(A)、(B)に示したように束ねる。
また、アルミニウム板30の代わりに熱収縮性の樹脂シートをフォーミングロール15a、15bで管状に成形し、端部同士を溶接したり接着する等してパイプ3を形成する。
【0043】
そして、形成したパイプ3の中に、上記のようにして束ねた複数本のカーボンナノチューブ繊維2を挿通する。
そして、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を、ダイス17に通す代わりに加熱装置で加熱することで、パイプ3を熱収縮させて細線化することで、上記のように長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態を形成するように構成することができる。
【0044】
すなわち、この場合も、パイプ3の中に複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通された段階では、
図5(A)に示したように、カーボンナノチューブ繊維2は、パイプ3内に、隙間がある状態で挿通されるが、パイプ3を熱収縮させることで、パイプ3が径方向に縮み、カーボンナノチューブ繊維2を外側から内向きに押圧する。
そのため、
図5(B)に示したように、パイプ3の中でカーボンナノチューブ繊維2の間に隙間がない状態になるとともに、パイプ3から内向きの押圧を受ける。そのため、このようにしてパイプ3を細線化することで、長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態が形成される。
【0045】
なお、この場合も伸線処理や押し出し処理、圧延処理等を行うように構成することも可能である。
また、この場合は、パイプ3とカーボンナノチューブ繊維2とが同じ速度で移動しながら(すなわちパイプ3とカーボンナノチューブ繊維2に速度差がない状態で)パイプ3を細線化するように構成される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1の製造方法によれば、パイプ3を適切に細線化して、長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態を形成することが可能となる。
そのため、カーボンナノチューブの優れた特性を生かしたカーボンナノチューブ素線1を容易かつ的確に製造することが可能となる。
【0047】
[カーボンナノチューブ素線を用いた送電線]
次に、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40について説明する。以下、具体例をいくつか挙げて説明する。
【0048】
例えば、
図6(A)に示すように、送電線40を、複数本のカーボンナノチューブ素線1を撚るようにして形成することが可能である。
また、カーボンナノチューブ素線1を含む複数本の素線を撚るようにして送電線40を形成することも可能である。
【0049】
この場合、例えば
図6(B)に示すように、中心側にカーボンナノチューブ素線1を配置し、その周りをアルミニウムや銅、あるいはそれらの合金で形成された素線41で取り囲むように配置したものを撚るように構成することが可能である。
また、逆に、
図7(A)に示すように、中心側にアルミニウム等で形成された素線41を配置し、その周りをカーボンナノチューブ素線1取り囲むように配置したものを撚ったり、
図7(B)に示すように、カーボンナノチューブ素線1とアルミニウム等で形成された素線41とを混在させたものを撚るようにして送電線40を形成することも可能である。
【0050】
さらに、例えば
図8に示すように、送電線40を、中心側にカーボンナノチューブ素線1を配置し、その周りをアルミニウム被覆鋼線や亜鉛めっき鋼線で形成された素線42で取り囲むように配置したものを撚るように構成することが可能である。
このように構成すると、送電線40に落雷があった場合に、雷は素線42に落ち、内部のカーボンナノチューブ素線1には直接、雷電流が流れることがなくなる。そのため、このように構成することで、送電線40の耐雷特性(雷防御性能)すなわちカーボンナノチューブ素線1の耐雷特性を向上させることが可能となる。
【0051】
例えば、以上のように構成することで、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40を提供することが可能となる。
そして、このような送電線40は、カーボンナノチューブの優れた特性により、例えば前述したACSRよりも引張強度が強く、軽量で、導電率が高い優れたものになる。
【0052】
そのため、例えば、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40の張設工事を行う際には、前述したACSRを鉄塔間に張設する場合に比べて、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いたより軽量の送電線40の張設工事を行う場合の方が、送電線40の質量が軽量となることで、架線するための架線機材(延線車など)のも軽量化することができ、作業者が工事を楽に効率良く行うことが可能となる。
また、送電線40の張設工事では、鉄塔間に、最初にパイロットロープが張設され、それが順次太いロープに張り替えられて最後に送電線40が張設されるように工事が行われる場合があるが、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40は軽量であるため、ACSRを張設するような場合に比べてロープを引き替える回数(段階)をより少なくすることができ、また、架線機材も軽量化されることで送電線40の張設工事をより容易にかつ短時間で行うことが可能となる。そのため、架線工事の工期短縮が可能となる。これは、電力会社の送電停止期間の短縮に寄与することになり、電力会社にとっても非常に好ましいこととなる。
【0053】
[実施例]
ここで、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40とACSRの特性を対比したシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、JCS(日本電線工業会規格)等に基づいて行った。
その際、カーボンナノチューブ素線1の諸特性については種々の数値情報があるため、以下のような適切と思われる値に設定した。
・引張強さ:11000MPa(=11GPa)
・比重:2.0g/cm
3
・導電率:97%
・弾性係数:500GPa
・線膨張係数:0/℃
【0054】
また、その他の条件として、以下のように設定した。
・周囲温度:40℃
・風速:40m/s
・風向:45°
・日射:0.1w/cm
2
・放射率:0.9
【0055】
以下、シミュレーションの結果を表Iに示す。
【表1】
なお、弛度特性は、Tmaxを25.5kN、径間長を300mとして算出した。
【0056】
この結果から分かるように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40は、ACSRに比べて、引張強度が約30倍、質量や電気抵抗は約半分、電流容量は約1.4倍、弛度は約60%になり、カーボンナノチューブの優れた特性が生かされた送電線になっている。
特に、300m径間長において既設電線(ACSR)の弛度よりも約40%弛度を小さくすることが可能となることから、低張力で架線しても問題がない。そのため、例えば新規に鉄塔を建設する際には、鉄塔強度や部材、基礎強度等を、従来のACSR等の場合よりも小さく設計することが可能となり、鉄塔建設のコストダウンを図ることが可能となるといったメリットもある。
【0057】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
また、上記の実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1やそれを用いた送電線40は、架空送電線だけでなく、例えば地中送電線や海中ケーブル等にも用いることが可能である。