(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エア抜き機構を構成する前記治具本体の外壁の一部が、前記治具本体の外観形状の連続性を失わせるように、外壁面が前記貫通孔に近接する形状を有する、請求項2または3に記載のフィルター治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるセルストレーナーは、重力落下によって被処理液の濾過を行う。そのため、濾過のための減圧等による圧力によって、残渣および濾液に含まれる細胞等が損傷することを防止できる。
また、セルストレーナーを装着するチューブの内部と外部とを連通する連通部を有するために、この連通部が、いわゆるエア抜き(空気抜き)となって、重力落下でも、円滑な濾過を行うことが可能である。
【0006】
このような特許文献1に記載されるセルストレーナーによれば、濾液中に目的物が存在する場合には、迅速かつ目的物を損傷することなく、濾過を行うことができる。
しかしながら、このセルストレーナーでは、目的物が残渣中に存在する場合には、スパチュラ等を用いてフィルター(濾過部)から残渣を取り出す必要があるため、手間がかかり、また、フィルターに残渣が残り易く回収率も低くなる。さらに、スパチュラ等を用いてフィルターから残渣等を取り出す際に、目的物を損傷してしまう可能性もある。
【0007】
また、スパチュラ等を用いずに、フィルターから残渣を回収する方法として、フィルターを洗浄液等に浸す方法もあるが、洗浄液中の目的物濃度が低くなりやすく、回収率が低くなってしまう可能性が高い。
【0008】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、残渣中に目的物が存在する濾過を行う際に、濾過を円滑かつ迅速に行えると共に、目的物を高い回収率で容易に回収でき、しかも、目的物の損傷も防止できるフィルター治具、および、このフィルター治具を用いるサンプリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 貫通孔を有する治具本体と、
治具本体の貫通孔の途中に設けられるフィルターと、
治具本体の、フィルターよりも貫通孔の一方の端部側、および、フィルターよりも貫通孔の他方の端部側に設けられる、エア抜き機構と、を有することを特徴とするフィルター治具。
[2] 治具本体の外壁の一部が、エア抜き機構の少なくとも1つを構成する、[1]に記載のフィルター治具。
[3] 治具本体の外壁の一部が、全てのエア抜き機構を構成する、[2]に記載のフィルター治具。
[4] エア抜き機構を構成する治具本体の外壁の一部が、治具本体の外観形状の連続性を失わせるように、外壁面が貫通孔に近接する形状を有する、[2]または[3]に記載のフィルター治具。
[5] エア抜き機構を構成する治具本体の外壁の一部が、治具本体の一部を欠損した形状を有する、[4]に記載のフィルター治具。
[6] 治具本体の貫通孔の少なくとも一方の端部側に、貫通孔を通過した液体を収容する収容容器と係合する係合部を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルター治具。
[7] 係合部が、収容容器の外側に係合する、[6]に記載のフィルター治具。
[8] 係合部が、収容容器に係合する凹部を有する、[6]または[7]に記載のフィルター治具。
[9] 係合部が、治具本体の貫通孔の外周方向に1以上の切り欠き部を有する、[6]〜[8]のいずれかに記載のフィルター治具。
[10] 係合部への収容容器の挿入位置と、エア抜き機構の位置とが、貫通孔の外周方向で一致している、[6]〜[9]のいずれかに記載のフィルター治具。
[11] 治具本体の貫通孔が、少なくとも一方の端部に対応して、フィルターから端部に向かう方向に拡径する拡径部を有する、[1]〜[10]のいずれかに記載のフィルター治具。
[12] 治具本体の貫通孔の貫通方向から見た際に、フィルターよりも貫通孔の一方の端部側に設けられるエア抜き機構と、フィルターよりも貫通孔の他方の端部側に設けられるエア抜き機構とが、貫通孔を挟んで対向している、[1]〜[11]のいずれかに記載のフィルター治具。
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載のフィルター治具を用いるサンプリング方法であって、治具本体の貫通孔に、被処理液を通液した後、
被処理液の通液方向とは逆の方向に、治具本体の貫通孔に回収液を通液させることにより、フィルタ上の残渣を回収する、サンプリング方法。
[14] 治具本体の貫通孔の一方の端部を上に、他方の端部を下にして、落下によって、被処理液の通液、および、回収液の通液の、少なくとも一方を行う、[13]に記載のサンプリング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、残渣中に目的物が存在する濾過において、濾過を円滑かつ迅速に行えると共に、目的物を高い回収率(高濃度)で容易に回収でき、しかも、目的物の損傷も防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフィルター治具およびサンプリング方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
なお、以下に示す全ての図は、あくまで、本発明を説明するために、本発明のフィルター治具の一例を概念的に示す図である。従って、各部材の位置関係、大きさ、および、形状等は、実際の本発明のフィルター治具とは異なる。
【0013】
図1に、本発明のフィルター治具の側面図を、
図2に、
図1に示すフィルター治具の正面図を、
図3に
図1に示すフィルター治具の部分斜視図を、それぞれ、概念的に示す。
図2は、本発明のフィルター治具を、
図1中における左側から観察した図である。
【0014】
図示例のフィルター治具10は、第1部材12と、第2部材14と、フィルター16とを有する。第1部材12および第2部材14は、本発明のフィルター治具10における治具本体18を構成する。
なお、第1部材12および第2部材14は、同じ物である。従って、同じ部材(部位)には、同じ符号を付す。
【0015】
本発明のフィルター治具10は、基本的に、フィルター16によって濾別した残渣に目的物が存在する場合に対応して、被処理液(処理を行う液体)の濾過を行うものである。
このような本発明のフィルター治具10は、医療等の研究および病気の治療等における細胞の分離および細胞の篩分け、各種生体の成体と幼体とのふるい分け、シリコーン粒子等の粒子が分散している液体からの粒子の回収、および、ロッドや平板などの異形無機粒子と球粒子との分別等、濾過を行う全ての用途に利用可能である。
後述するが、本発明のフィルター治具(サンプリング方法)は、重力による濾過を円滑に行えると共に、目的物(残渣)を高い回収率(高濃度)で容易に回収でき、目的物の損傷も防止できる。この点を考慮すると、本発明のフィルター治具(サンプリング方法)は、検査を含む医療用途には、好適に利用される。
【0016】
第1部材12および第2部材14は、軸線方向(中心線方向)に略円筒状の貫通孔20を有する円錐台の下底側の端部にフランジを設けてなる、略円錐台形状の部材である。なお、下底とは、円錐台における、大径側の面である。
なお、第1部材12および第2部材14の形成材料には、制限はなく、処理する被処理液等に応じて、十分な耐性を有する材料を、適宜、選択すればよい。一例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料が例示される。
【0017】
第1部材12と第2部材14とは、上底を対面して、フィルター16を挟んで当接されて、液密に接合される。この第1部材12と第2部材14との接合によって、本発明のフィルター治具における、貫通孔を有する治具本体18が構成される。図示例のフィルター冶具10の第1部材12および第2部材14において、上底側は、フィルター16側であり、下底側は、フィルター16とは逆側である。第1部材12および第2部材14において、下底側は、後述する被処理液または回収液の流入口(または流出口)となる。
なお、第1部材12と第2部材14の接合方法には制限はなく、接着剤を用いる方法、粘着剤を用いる方法、治具を用いる方法、凹凸を嵌合する方法、ネジ止め、ボルトとナットとによる締結、粘着テープによる接合等、貫通孔を有する複数の部材を、貫通孔が連通するように液密に接合できる公知の方法が、全て利用可能である。
また、必要に応じて、第1部材12と第2部材14との間には、両者を液密に接合するためのパッキンを設けてもよい。
【0018】
なお、本発明のフィルター治具において、治具本体は、2つの部材を接合して構成されるのに制限はされない。すなわち、本発明のフィルター治具では、1つの部材によって、貫通孔を有する治具本体を構成してもよく、または、3個以上の部材を組み合わせて上述したような公知の方法で接合することで、貫通孔を有する治具本体を構成してもよい。
1つの部材または3個以上の部材を組み合わせて、貫通孔を有する治具本体を構成する場合には、公知の各種の方法で、貫通孔の途中に、貫通孔を閉塞するようにフィルター16を設ければよい。本発明において、冶具本体を1つの部材で構成する場合には、射出成型等によって第1部材12と第2部材14とフィルター16とを一体化して成型した構成であってもよい。また、冶具本体を複数の部材で構成する場合でも、射出成型等によって、1つの部材とフィルター16とを一体化して成型してもよい。
また、本発明のフィルター治具において、治具本体の形状は、2つの略円錐台形状の部材を上底側で当接した形状にも制限はされない。本発明のフィルター治具において、治具本体の形状は、円筒状でも、楕円筒状でも、六角筒等の角筒状でも、立方体または直方体に貫通孔を設けたような形状でもよい。すなわち、本発明のフィルター治具において、治具本体は、濾過する被処理液を通液する貫通孔を有するものであれば、各種の形状が利用可能である。
【0019】
第1部材12と第2部材14との間には、第1部材12と第2部材14を組み合わせて構成された治具本体18の貫通孔を閉塞するように、フィルター16が設けられる。
フィルター16は、フィルター治具10によって被処理液の濾過を行うためのフィルターであり、被処理液の種類等に応じて、各種の液体の濾過を行うための公知のフィルター(濾過材)が、全て、利用可能である。
【0020】
フィルター16のメッシュサイズ(孔径)は、濾過(濾別)によって回収する目的物に応じて、適宜、選択すればよい。
さらに、フィルター16の大きさ、および、フィルター治具10の大きさにも、制限はなく、フィルター治具10の用途、濾過を行う被処理液の種類、濾過を行う被処理液の量、濾別する残渣、および、想定される残渣の量等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0021】
図1〜
図3に示すように、第1部材12および第2部材14は、後述するフランジ部26を含んで、筒状の円錐台の外壁(外周面)の一部を下底から上底に向かって、すなわち、フィルター16とは逆側からフィルター16側に向かって、途中まで切り欠いたような形状を有し、この切り欠き部が、エア抜き機構24を構成する。言い換えれば、第1部材12は、下底にフランジ部を有する筒状の円錐台を形成する壁の外壁側の一部を、下底から上底の途中まで欠損したような形状を有し、この欠損部が、エア抜き機構24を構成する。
前述のように、第1部材12と第2部材14とは、上底側を当接して、フィルター16を挟んで接合され、治具本体18が構成される。従って、治具本体18において、エア抜き機構24は、フィルター16よりも貫通孔の端部側の両側に、設けられる。なお、貫通孔の端部とは、貫通孔の貫通方向の端部である。
エア抜き機構24に関しては、後に詳述する。
【0022】
前述のように、第1部材12および第2部材14は、略円筒状の貫通孔20を有する。貫通孔20は、濾過を行う被処理液の流路となる。
貫通孔20すなわち治具本体18の貫通孔は、略円筒状に制限はされない。すなわち、貫通孔20は、楕円筒状でも、三角筒、四角筒および六角筒等の角筒状であってもよい。しかしながら、角部への粒子等の付着を防止できる、デッドスペースを無くせる等の点で、貫通孔20は、楕円筒状および円筒状が好ましい。
【0023】
図1および
図3に示すように、図示例のフィルター治具10において、第1部材12および第2部材14の貫通孔20は、好ましい態様として、下底側の端部すなわちフィルター16とは逆側の端部に、下底側の端部に向かって拡径する、拡径部20aを有する。すなわち、フィルター治具10は、治具本体18において、貫通孔の両端部に、拡径部20aを有する。
後述するが、フィルター治具10においては、第1部材12および第2部材14の貫通孔20下底側の端部が、被処理液の流入口、および、被処理液の濾過によって濾別した残渣を回収するための回収液の流入口になる。従って、流入口に、このような拡径部20aを有することにより、フィルター16による濾過面積に比して、被処理液および回収液の入口を大きくできるので、作業性を向上できる。
また、フィルター16による濾過面積は、フィルター治具10の用途に応じて決定され、他方、第1部材12および第2部材14の下底側の大きさは、基本的に、フィルター治具10に係合させる、液体を収容する収容容器の大きさによって決まる。従って、このような拡径部20aを有することにより、フィルター16による濾過面積によらず、貫通孔20への液体の流入口の大きさを、収容容器に合わせることが可能になる。
【0024】
なお、このような拡径部20aは、第1部材12および第2部材14の一方のみが有するものであってもよい。すなわち、拡径部は、治具本体18の貫通孔の一方の端部のみが有してもよい。
しかしながら、後述するが、本発明のフィルター治具10は、被処理液の濾過を行った後、濾過とは逆方向に回収液を流して、フィルター16で濾別した残渣を回収する。従って、作業性を考慮すると、拡径部20aは、第1部材12および第2部材14の両方、すなわち、治具本体の貫通孔の両端部に設けるのが好ましい。
【0025】
本発明の貫通孔20の拡径部20aは、貫通孔20の下底側の端部すなわちフィルター16とは逆側の端部(液体の流入口)のみに設ける構成に制限はされない。
例えば、
図4に概念的に示すように、第1部材12および第2部材14の貫通孔20は、全域が、上底から下底に向かって、すなわち、フィルター16から治具本体18における被処理液および回収液の流入口に向かって、漸次、拡径していてもよい。また、
図4に示すような、全域が上底から下底に向かって、漸次、拡径する貫通孔でも、下底側(液の流入口側)の端部に、
図2等と同様の、より大きく径が広がる拡径部20aを有してもよい。このような構成を有することにより、上述した利点に加え、被処理液の濾過による残渣の回収液による回収を容易にし、さらに、回収液の量も少くし、残渣を回収した回収液における目的物の濃度を高くできる。
あるいは、貫通孔20の下底側の端部に、同様の拡径部20aを有し、かつ、貫通孔20が、拡径部20aの下底側の端部から上底に向かって、すなわち、液体の流入口側からフィルター16に向かって、漸次、拡径してもよい。なお、この液体の流入口側からフィルター16に向かう拡径は、全域でも部分的でもよい。または、貫通孔20は、全域が同じ径であってもよい。
本発明において、第1部材12および第2部材14の貫通孔20の下底側の径、すなわち、冶具本体18における被処理液等の流入口の径は、基本的に回収容器34等の径で決まるが、大きい方が作業性を良好にできる。他方、第1部材12および第2部材14の貫通孔20の上底側の径、すなわち、フィルター冶具におけるフィルター16の大きさは、大きい方が被処理液の濾過は容易になるが、大きすぎると、残渣の回収に必要な回収液の量が多くなってしまう。
【0026】
第1部材12および第2部材14は、共に、下底側の端部すなわちフィルター16とは逆側の端部に、円錐台の下底から外方に突出するように、平板状のフランジ部26(鍔部26)を有する。
また、第1部材12および第2部材14には、好ましい態様として、フランジ部26の下面(フィルター16と逆側面)には、係合部30が設けられる。
以下の説明では、第1部材12および第2部材14におけるフィルター16と逆側を、『下』とも言う。
【0027】
第1部材12および第2部材14のフランジ部26は、上述したエア抜き機構24に対応する領域において、第1部材12および第2部材14における円錐台形状の部分の外壁と同一面となるように、切り欠かれた状態(欠損した状態)となっており、このフランジ部26の切り欠かれた領域も、エア抜き機構24の一部を構成する。
【0028】
係合部30は、下側(フィルター16と逆側)の端部が内側に突出する略L字状の断面を有するもので、フランジ部26の輪の外側に沿う形状を有する。すなわち、係合部30は、内側に、フランジ部26の輪に沿うように凹部(溝部)を有する。
図1〜
図3に示すように、係合部30は、フランジ部26の周方向に、エア抜き機構24の中心から、90°の回転角で中心が位置するように、3個所に設けられる。従って、係合部30の1個所は、エア抜き機構24と対向して、エア抜き機構24と共に貫通孔20を挟む位置に設けられる。
【0029】
後述するが、本発明のフィルター治具10は、発明における収容容器である液受け容器32を装着して、液受け容器32と逆側の貫通孔20から被処理液を流入して、被処理液の濾過を行う。次いで、液受け容器32と逆側に、本発明における収容容器である回収容器34を装着して、液受け容器32を取り外して、こちら側から回収液を流入し、被処理液の濾過とは逆に回収液を流すことで、フィルター16で濾別した残渣を回収容器34に回収する(
図8参照)。なお、濾液が不要である場合には、液受け容器32は、必ずしも装着する必要はなく、濾液を、直接、廃棄してもよい。
図5および
図6(
図7および
図8も参照)に概念的に示すように、液受け容器32および回収容器34は、共に、一方の端面が閉塞する略円筒状の容器である。液受け容器32は、液体の流入口となる開放端に対応して、外方向に突出するフランジ32aを有する。同様に、回収容器34も、液体の流入口となる開放端に対応して、外方向に突出するフランジ34aを有する。
【0030】
図7に回収容器34を例示して示すように、フィルター治具10では、エア抜き機構24側から、係合部30の凹部に回収容器34(液受け容器32)のフランジ34a(フランジ32a)を挿入することで、フィルター治具10に回収容器34を装着する。回収容器34は、フランジ34aが、エア抜き機構24と対向する位置に設けられる係合部30の凹部に挿入され、かつ、係合部30のフランジ部26からの立設部に当接するまで、押し込まれる。これにより、フィルター治具10に装着する回収容器34の位置決めを行うことができる。
フィルター治具10の係合部30は、内方に突出する下側の端部と第1部材12(第2部材14)のフランジ部26とで、回収容器34のフランジ34aを厚さ方向に挟み、かつ、貫通孔20を挟んで対向する2つの係合部30によって、回収容器34のフランジ34aを直径方向に挟む。
フィルター治具10は、これにより、係合部30と回収容器34のフランジ34aとを、緩く嵌合して、回収容器34を装着し、かつ、保持する。
【0031】
フィルター治具10は、好ましい態様として、このような係合部30を有することにより、液受け容器32および回収容器34を位置決めして装着し、かつ、保持できる。以下の説明では、液受け容器32および回収容器34をまとめて、『容器』とも言う。
そのため、フィルター治具10によれば、被処理液の濾過および残渣の回収を行っている最中に、作業者が、フィルター治具10と容器とを位置決めして保持する必要がなく、作業性を大幅に向上できる。また、被処理液の濾過および残渣の回収を行っている最中に、フィルター治具10から液受け容器32および回収容器34が不用意に外れることも防止できる。
また、フィルター治具10の係合部30は、好ましい態様として。液受け容器32および回収容器34の外側に係合して、容器を保持する。外側から係合して容器を保持することにより、フィルター治具を容器の内側(液体の収容部)に係合して容器を装着する場合に比して、容器を確実に保持することができ、例えば容器を装着されたフィルター治具10が横転した場合等における容器の脱落を、好適に防止できる。
なお、本発明のフィルター治具において、液受け容器32および回収容器34を位置決めして保持するための係合部は、容器の外側に係合する構成に制限はされない。すなわち、本発明のフィルター治具は、液受け容器32および回収容器34の内側に係合して、容器を保持する係合部を有する構成であってもよい。
【0032】
図示例のフィルター治具10において、第1部材12および第2部材14は、フランジ部26の周方向に分割された、3つの係合部30を有する。
本発明のフィルター治具は、これに制限はされず、例えば、3つの係合部30をフランジ部26の周方向に接続したような、1個の係合部を有する構成でもよい。
しかしながら、液受け容器32および回収容器34と係合して、容器を保持する係合部30は、図示例のように、フランジ部の周方向(貫通孔20の外周方向)に分割して、複数個を設けることにより、係合部30に容器のフランジ部を嵌合した際に係合部30が広がることが可能になる。そのため、周方向に複数の係合部30を設けることにより、係合部30(フィルター治具10)と、容器とを、適度な嵌合力で係合することができ、その結果、フィルター治具10への容器の着脱を容易かつ円滑に行うことを可能にし、かつ、フィルター治具10に装着した容器が不要に脱落することも好適に防止できる。
【0033】
係合部30は、第1部材12および第2部材14の一方のみが有するものであってもよい。すなわち、係合部30は、治具本体18の貫通孔の一方の端部のみに対応して設けてもよい。
しかしながら、後述するが、本発明のフィルター治具10は、被処理液の濾過を行った後、逆方向に回収液を流して、濾過によって濾別した残渣を回収容器に回収する。従って、作業性を考慮すると、係合部30は、第1部材12および第2部材14の両方、すなわち、治具本体18の貫通孔の両端部に対応して設けるのが好ましい。
また、第1部材12および第2部材14の係合部30、すなわち、治具本体18の貫通孔の両端の係合部は、図示例のように同じ構成を有するのに制限はされず、異なる構成であってもよい。
【0034】
以下、
図8を参照して、本発明のフィルター治具10の作用、すなわち、本発明のサンプリング方法を説明することにより、本発明について、より詳細に説明する。
【0035】
上述したように、本発明のフィルター治具10は、基本的に、濾別した残渣に目的物が存在する濾過に利用されるものである。
本発明のフィルター治具10を用いて被処理液の濾過、すなわち、目的物の濾別を行う場合には、まず、第2部材14(または第1部材12)のエア抜き機構24側から、係合部30の凹部に液受け容器32のフランジ32aを挿入させて、
図8の左側に示すように、フィルター治具10(治具本体18)に、液受け容器32を装着する。なお、濾液が不要である場合には、液受け容器32を装着せずに、濾液を、そのまま廃棄してもよいのは、前述のとおりである。
【0036】
次いで、液受け容器32を下方にして、第1部材12の貫通孔20に被処理液を流入させ、被処理液の濾過を行う。
ここで、
図8(
図3および
図7も参照)に示すように、第2部材14は、外壁の一部を切り欠いた形状、すなわち、第2部材14(治具本体18)の外壁の一部を欠損した形状のエア抜き機構24を有する。そのため、フィルター治具10(第2部材14)は、液受け容器32を装着された状態で、液受け容器32における液体の流入口の全面を覆わず、液受け容器32の流入口の一部が外部に開口した状態となる。
そのため、このエア抜き機構24によって開口された部分が、エア抜きとして作用するので、重力落下(自重落下)による濾過でも、円滑かつ迅速に濾過を行うことができる。
【0037】
被処理液の濾過が終了したら、第1部材12(または第2部材14)のエア抜き機構24側から、係合部30の凹部に回収容器34のフランジ34aを挿入させて、
図8の右側に示すように、フィルター治具10(治具本体18)に、回収容器34を装着する。
【0038】
次いで、回収容器34を下方にして、第2部材14から液受け容器32を取り外して、第2部材14の貫通孔20に回収液(洗浄液)を流入させ、回収液を濾過とは逆方向に流すことにより、フィルター16によって濾別した、フィルター16上の残渣を回収容器34に回収する。
ここで、
図3、
図7および
図8に示すように、第1部材12も、外壁の一部を切り欠いた形状のエア抜き機構24を有する。そのため、フィルター治具10(第1部材12)は、回収容器34を装着された状態でも、回収容器34における流入口の全面を覆わず、回収容器34の流入口の一部が外部に開口した状態となる。
そのため、このエア抜き機構24によって開口された部分が、エア抜きとして作用するので、回収液を重力落下させる残渣の回収も、円滑かつ迅速に濾過を行うことができる。
【0039】
上述のように、本発明のフィルター治具10およびサンプリング方法によれば、第1部材12、すなわち、治具本体18の貫通孔の一方の端部に液受け容器32を装着して、被処理液の濾過を行い、次いで、第2部材14、すなわち、治具本体18の貫通孔の他方の端部に回収容器34を装着して、濾過とは逆に回収液を流すことによって、フィルター16で濾別した残渣を回収容器34に回収する。
そのため、本発明によれば、濾過によって捕集した残渣を目的物とする濾過において、スパチュラ等によって残渣の回収を行う必要がないので、残渣の回収時に目的物を損傷することを防止できる。しかも、被処理液の濾過とは逆方向に回収液を流す逆洗のようにして残渣を回収できるので、フィルターを回収液に浸漬して残渣を回収する場合に比して、回収液の量を少なくできる。すなわち、本発明によれば、残渣を回収した回収液における目的物の濃度を高くでき、目的物の回収率も高くできる。
【0040】
さらに、本発明のフィルター治具10は、フィルター16を挟んで接合される第1部材12および第2部材14の両方に、エア抜き機構24を有する。すなわち、フィルター治具10は、フィルター16を挟むようにして、治具本体18の貫通孔の両端部側に、エア抜き機構24を有する。
そのため、被処理液の濾過を行う際にも、回収液によって残渣の回収を行う際にも、エア抜き機構24によって、液受け容器32および回収容器34からのエア抜きを好適に行うことができ、重力による落下で、円滑かつ迅速な濾過および残渣の回収が可能になる。しかも、重力よる落下で濾過および残渣の回収を行うため、減圧(または加圧)等に起因して、残渣中の目的物が損傷することも防止できる。
加えて、フィルター治具10自身(治具本体自身)が、貫通孔のフィルター16の両側、すなわち、被処理液の濾過および残渣の回収の両方に対応してエア抜き機構を有するので、装着が可能であれば、液受け容器32および回収容器34の形状および種類等によらず、好適にエア抜きを行って、円滑かつ迅速な濾過および残渣の回収が可能である。
【0041】
さらに、図示例のフィルター治具10は、好ましい態様として、第1部材12および第2部材14すなわち治具本体18の外壁の一部(外壁面の一部の形状)が、液受け容器32および回収容器34からエア抜きを行うためのエア抜き機構を構成する。図示例においては、第1部材12および第2部材14(治具本体18)の外壁の一部を切り欠いた形状のエア抜き機構24、すなわち、第1部材12および第2部材14を構成する壁の外側の一部を欠損した形状のエア抜き機構24を有する。
言い換えれば、図示例のフィルター治具10は、液受け容器32および回収容器34を装着した際に、フィルター治具10が液受け容器32および回収容器34の流入口の全面を覆うことなく、容器の流入口の一部が外部に開口するように、外壁の一部に、外壁を切り欠いた(欠損した)ような形状のエア抜き機構24を設けている。
このエア抜き機構24は、第1部材12および第2部材14の貫通孔20(治具本体の貫通孔)には連通していない。すなわち、エア抜き機構24は、貫通孔20における通液とは無関係であり、また、貫通孔20は、エア抜きとは無関係である。
従って、治具本体18の外壁の一部にエア抜き機構24を有するフィルター治具10によれば、濾過および残渣の回収の際に、エア抜きに起因して、被処理液および回収液がフィルター治具10の外部に漏れることが無い。すなわち、本発明のフィルター治具10においては、治具本体18の外壁にエア抜き機構24を設けることにより、エア抜き機構24から、被処理液および回収液がフィルター治具10の外部に漏れることが無い。
【0042】
また、図示例のフィルター治具10は、好ましい態様として、貫通孔20の貫通方向から見た際に、治具本体18の貫通孔を挟んで対向するように、エア抜き機構24を設けている。
このような構成を有するフィルター治具10は、質量バランス、特に、治具本体18の貫通孔の方向に対して直交する方向の質量バランスを良好にできるので、被処理液の濾過中および残渣の回収中に、フィルター治具10が不要に倒れる等を防止できる。
【0043】
さらに、図示例のフィルター治具10は、好ましい態様として、フィルター治具10への液受け容器32および回収容器34の装着を、エア抜き機構24側から行うように、エア抜き機構24および係合部30が設けられる。すなわち、エア抜き機構24の位置と、係合部30への容器の挿入位置とが、貫通孔の周方向で一致している。
このような構成を有することにより、係合部30による液受け容器32および回収容器34の保持を確実にできる、フィルター治具10への容器の装着方向を容易に認識できる等の点で好ましい。
【0044】
エア抜き機構24の形状および大きさ等には、制限はない。
すなわち、エア抜き機構24を構成する切り欠き(欠損部)の形状および大きさ等は、被処理液の量、ならびに、液受け容器32および回収容器34の流入口の大きさおよび形状等に応じて、容器の流入口に十分なエア抜きが行える面積の開口を設けられる形状および大きさを、適宜、設定すればよい。
【0045】
なお、本発明のフィルター治具において、第1部材12および第2部材14(治具本体18)の外壁に設けるエア抜き機構は、図示例のように、外壁の一部を切り欠いた形状に制限はされない。
一例として、治具本体の外壁に設けるエア抜き機構は、第1部材(第2部材)を貫通孔20の貫通方向に見た
図9に概念的に示すように、外壁の一部の形状を凹状にしてエア抜き機構38を有することで、液受け容器32および回収容器34を本発明のフィルター治具に装着した際に、容器の流入口の一部を開口した状態として、エア抜きを行うようにしてもよい。また、例えば、第1部材12には、切り欠き状のエア抜き機構24を設け、第2部材14には凹状のエア抜き機構38を設けた構成でもよい。
すなわち、本発明のフィルター治具において、第1部材12および第2部材14(治具本体18)の外壁に設けるエア抜き機構は、治具本体18の外観形状の連続性を失わせるように、外壁面が貫通孔に近接する形状を有するものであれば、各種の構成および形状のものが利用可能である。
【0046】
図示例のフィルター治具10において、第1部材12および第2部材14は、共に、エア抜き機構24を、1個、有するものであるが、本発明は、これに制限はされない。
第1部材12および第2部材14は、少なくとも一方が、外壁に複数のエア抜き機構24を有してもよい。すなわち、本発明のフィルター治具は、治具本体が、フィルター16よりも貫通孔の端部側の少なくとも一方において、複数のエア抜き機構24を有してもよい。この際において、各容器(フィルターに対して貫通孔の両端部側)に形成されるエア抜き機構は、同じものでも、異なるものでもよい。
【0047】
図示例のフィルター治具10は、第1部材12および第2部材14(治具本体)の外壁の一部が、エア抜き機構を構成するものであるが、本発明は、これに制限はされず、各種のエア抜き機構が利用可能である。
一例として、
図10に概念的に示すフィルター治具40のように、第1部材12aおよび第2部材14b(治具本体18a)に、外面から貫通孔20に到るエア抜きのための貫通孔42を設けて、エア抜き機構を構成してもよい。
また、例えば、エア抜きのための貫通孔42を有する第1部材12aと、外壁を切り欠いた形状のエア抜き機構24を有する第2部材14とを組み合わせて、本発明のフィルター治具を構成してもよい。
【0048】
以上、本発明のフィルター治具およびサンプリング方法について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
例えば、
図1〜
図3に示すフィルター治具10は、第1部材12と第2部材14とが同じものであったが、本発明は、これに制限はされず、例えば、第1部材と第2部材とで、形状が異なってもよく、あるいは、第1部材と第2部材とで、大きさが異なってもよい。