特許第6961573号(P6961573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961573処理液、その製造方法、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961573
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】処理液、その製造方法、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20211025BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20211025BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G03F7/42
   G03F7/32
   G03F7/32 501
   H01L21/30 569E
   H01L21/30 572B
【請求項の数】25
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2018-510674(P2018-510674)
(86)(22)【出願日】2017年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2017014501
(87)【国際公開番号】WO2017175856
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年9月20日
【審判番号】不服2021-4382(P2021-4382/J1)
【審判請求日】2021年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-78474(P2016-78474)
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-45830(P2017-45830)
(32)【優先日】2017年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【合議体】
【審判長】 里村 利光
【審判官】 早川 貴之
【審判官】 関根 洋之
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00-7/18
G03F7/26-7/42
H01L21/027
H01L21/304
C07B63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドから選択される1種の化合物(A)と、
記化合物群(X)(但し、鏡像異性体又はジアステレオマーの関係にある異性体同士は区別することなく同じ化合物とみなす。)から選択され1種又は2種以上の化合物(B)と、
Al化合物及びNOx化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物(C)と
を含有し、プリウェット液、現像液、リンス液、又は剥離液の何れかである処理液であって、
化合物(A)の含有率は99〜99.9999999質量%であり、
化合物(B)の各々の含有率は10−11〜0.1質量%、且つ、合計含有率は10−10〜0.1質量%であり、
合物(C)の各々の含有率は0.01質量ppt〜100質量ppbであり、
下記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
P=[化合物(C)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式I
化合物群(X):
【化1】
【請求項2】
Na、Ca及びFeを更に含有し、各原子の含有率が0.01質量ppt〜1000質量ppbである、請求項1に記載の処理液。
【請求項3】
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、0.01質量ppt〜100質量ppbである、請求項1又は2に記載の処理液。
【請求項4】
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、1〜100質量pptである、請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項5】
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、1〜30質量pptである、請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項6】
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、3〜10質量pptである、請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項7】
下記式IIで表される化合物(A)と化合物(B)の比率Qが10〜1010である、請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液。
Q=[化合物(A)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式II
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液を2種以上含有する処理液であって、2種以上含有する当該処理液中の化合物(B)の含有率の合計が10−10〜0.1質量%であり、2種以上含有する当該処理液中の1種又は2種以上の化合物(C)の各々の含有率が0.01質量ppt〜100質量ppbであり、且つ、2種以上含有する当該処理液中の前記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液の2種以上のみからなる処理液。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液の少なくとも1種と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルからなる群から選択される有機溶剤の少なくとも1種を含有し、プリウェット液、現像液、リンス液、又は剥離液の何れかである処理液であって、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の化合物(B)の含有率の合計が10−10〜0.1質量%であり、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の1種又は2種以上の化合物(C)の各々の含有率が0.01質量ppt〜100質量ppbであり、且つ、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の前記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液の1種又は2種以上と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルからなる群から選択される有機溶剤の1種又は2種以上のみからなり、プリウェット液、現像液、リンス液、又は剥離液の何れかである処理液であって、前記有機溶剤の1種又は2種以上を含有する当該処理液中の前記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液の少なくとも1種と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルからなる群から選択される有機溶剤の少なくとも1種を含有し、プリウェット液又はリンス液である処理液であって、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の化合物(B)の含有率の合計が10−10〜0.1質量%であり、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の1種又は2種以上の化合物(C)の各々の含有率が0.01質量ppt〜100質量ppbであり、且つ、前記有機溶剤の少なくとも1種を含有する当該処理液中の前記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載の処理液の1種又は2種以上と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルからなる群から選択される有機溶剤の1種又は2種以上のみからなる処理液であって、プリウェット液又はリンス液である処理液。
【請求項14】
前記処理液が剥離液である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項15】
前記処理液が現像液である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項16】
前記処理液がリンス液である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項17】
前記処理液がプリウェット液である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の処理液の製造方法であって、
1種又は2種以上の原料を、触媒の存在下で反応させて化合物(A)を合成し、化合物(A)を含む粗液を得ること、及び
前記粗液を精製すること
を含む、処理液の製造方法。
【請求項19】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
前記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、及び
前記基板又は前記感活性光線性又は感放射線性膜を、請求項1〜17のいずれか1項に記載の処理液を用いて処理する工程、
を含むパターン形成方法。
【請求項20】
前記基板又は前記感活性光線性又は感放射線性膜を、前記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、前記感活性光線性又は感放射線性膜を、前記処理液を現像液として用いて現像する工程を含む、請求項19に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記基板又は前記感活性光線性又は感放射線性膜を、前記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、前記感活性光線性又は感放射線性膜を、前記処理液をリンス液として用いて洗浄する工程を含む、請求項19又は20に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記基板又は前記感活性光線性又は感放射線性膜を、前記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、前記基板を、前記処理液をプリウェット液として用いて処理する工程を含む、請求項1921のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記処理液として、露光後の前記感活性光線性又は感放射線性膜を浸漬させたときの23℃における溶解速度が0.0016〜3.33nm/秒である処理液を用いる、請求項1922のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
請求項1923のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
前記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、
露光後の前記感活性光線性又は感放射線性膜を現像してパターンを形成する工程、
前記パターンをマスクとして前記基板をエッチングする工程、及び、
前記パターンを、請求項1〜17のいずれか1項に記載の処理液を剥離液として用いて剥離する工程
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリウェット液、現像液、リンス液、剥離液など、主に半導体デバイスの製造工程において使用される処理液、その製造方法、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、剥離工程などの様々な工程が含まれている。そこでは、各工程の終了後、あるいは次の工程に移る前に、処理液を用いて不要な有機物および無機物有機物を処理する工程が含まれることが一般的である。例えば、露光後のレジスト膜を現像液を用いて処理する現像工程、基板加工後に基板表面に残存したレジストを剥離液を用いて処理する剥離工程、剥離工程や現像工程の後に、リンス液を用いて更に表面を浄化するリンス工程などが含まれる。
【0003】
このような半導体デバイスの製造工程において使用されるプリウェット液、現像液、リンス液、剥離液等の各種処理液(以下、「半導体製造用処理液」などともいう。)は、高純度であることが求められる。半導体の微細化、高機能化が進むにつれて高純度処理液全般に対する市場ニーズも高まり、今後市場拡大が見込まれる。
【0004】
半導体製造用処理液が高純度とは、低メタル濃度、低パーティクル濃度であることが基本条件である。例えば、特開2015−84122号公報には、有機系現像液におけるパーティクル発生を低減可能な技術が開示されている。また、処理液中のメタルは加工処理中に対象材料に金属が拡散するマイグレーションと言う現象を引き起こす。マイグレーションは電気信号の伝達を阻害しショート等の不良の原因になる。また、それだけでなくそのメタル自体を核として処理後に残渣として残るゴミになり得、これが欠陥を生じる原因となり、微細なレジストパターン又は半導体素子の形成に悪影響を与える。この様な背景から半導体製造用処理液の更なる高純度化が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状の半導体製造業において使用されている半導体製造用処理液は、最先端で使用されている処理液はかなりの高純度を達成している。例えば、高純度、低メタルを謳うFEUS社のイソプロパノール(isopropanol;IPA)を用いたリンス液は、メタル濃度の合計が数十〜数百質量ppt(parts per trillion)である。しかしながら、今後求められる性能は、例えばメタル濃度が10ppt以下のレベルであって、現状の性能では満足できない。
【0006】
本発明は、この様な背景の下、開発に至ったものであり、欠陥の発生を抑制し、微細なレジストパターン又は微細な半導体素子の製造を可能とする半導体製造用処理液を提供すること、また、その半導体製造用処理液の製造方法を提供することを課題とする。本発明は、また、上記半導体製造用処理液を用いたパターン形成方法、及び、そのパターン形成方法を含む半導体素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一態様において、以下の通りである。
[1]
下記要件(a)を満たす化合物(A)を1種又は2種以上と、
下記要件(b)を満たす化合物(B)を1種又は2種以上と、
Al化合物及びNOx化合物から選ばれる化合物(C)を1種又は2種以上と、
を含有する処理液であって、
化合物(A)の上記処理液中の含有率の合計が70.0〜99.9999999質量%であり、化合物(B)の上記処理液中の含有率の合計が10−10〜0.1質量%であり、
下記式Iで表される化合物(B)と化合物(C)の比率Pが10〜10−6である処理液。
要件(a):アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、上記処理液中の含有率が5.0〜99.9999999質量%である化合物。
【0008】
要件(b):アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、上記処理液中の含有率が10−11〜0.1質量%である化合物。
【0009】
P=[化合物(C)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式I
[2]
上記処理液に含有される1種又は2種以上の化合物(C)の各々の含有率が、0.01質量ppt〜100質量ppbである、[1]に記載の処理液。
【0010】
[3]
Na、Ca及びFeを更に含有し、各原子の含有率が0.01質量ppt〜1000質量ppbである、[1]又は[2]に記載の処理液。
【0011】
[4]
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、0.01質量ppt〜100質量ppbである、[1]〜[3]のいずれかに記載の処理液。
【0012】
[5]
SNP−ICP−MS法により測定された金属粒子の合計の含有率が、1〜100質量pptである、[1]〜[4]のいずれかに記載の処理液。
【0013】
[6]
下記式IIで表される化合物(A)と化合物(B)の比率Qが10〜1010である、[1]〜[5]のいずれかに記載の処理液。
Q=[化合物(A)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式II
[7]
[7]〜[6]のいずれかに記載の処理液を2種以上混合してなる処理液。
【0014】
[8]
[1]〜[6]のいずれか1項に記載の処理液の少なくとも1種と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルからなる群から選択される有機溶剤の少なくとも1種を混合してなる処理液。
【0015】
[9]
上記処理液が剥離液である、[1]〜[8]のいずれかに記載の処理液。
【0016】
[10]
上記処理液が現像液である、[1]〜[8]のいずれかに記載の処理液。
【0017】
[11]
上記処理液がリンス液である、[1]〜[8]のいずれかに記載の処理液。
【0018】
[12]
上記処理液がプリウェット液である、[1]〜[8]のいずれかに記載の処理液。
【0019】
[13]
[1]〜[12]のいずれかに記載の処理液の製造方法であって、
1種又は2種以上の原料を、触媒の存在下で反応させて化合物(A)を合成し、化合物(A)を含む粗液を得ること、及び
上記粗液を精製すること
を含む、処理液の製造方法。
【0020】
[14]
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
上記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、及び
上記基板又は上記感活性光線性又は感放射線性膜を、[1]〜[12]のいずれかに記載の処理液を用いて処理する工程、
を含むパターン形成方法。
【0021】
[15]
上記基板又は上記感活性光線性又は感放射線性膜を、上記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、上記感活性光線性又は感放射線性膜を、上記処理液を現像液として用いて現像する工程を含む、[14]に記載のパターン形成方法。
【0022】
[16]
上記基板又は上記感活性光線性又は感放射線性膜を、上記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、上記感活性光線性又は感放射線性膜を、上記処理液をリンス液として用いて洗浄する工程を含む、[14]又は[15]に記載のパターン形成方法。
【0023】
[17]
上記基板又は上記感活性光線性又は感放射線性膜を、上記処理液を用いて処理する工程として、少なくとも、上記基板を、上記処理液をプリウェット液として用いて処理する工程を含む、[14]〜[16]のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0024】
[18]
上記処理液として、露光後の上記感活性光線性又は感放射線性膜を浸漬させたときの23℃における溶解速度が0.0016〜3.33nm/秒である処理液を用いる、[14]〜[17]のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0025】
[19]
[14]〜[18]のいずれかに記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【0026】
[20]
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
上記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、
露光後の上記感活性光線性又は感放射線性膜を現像してパターンを形成する工程、
上記パターンをマスクとして上記基板をエッチングする工程、及び、
上記パターンを、[1]〜[12]のいずれかに記載の処理液を剥離液として用いて剥離する工程
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、欠陥の発生を抑制し、微細なレジストパターン又は微細な半導体素子の製造を可能とする処理液を提供すること、また、その処理液の製造方法を提供することが可能となった。また、本発明により、上記処理液を用いたパターン形成方法、及び、そのパターン形成方法を含む半導体素子の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置の一形態を表す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置の他の形態を表す概略図である。
【実施の形態】
【0029】
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0030】
また、本明細書における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外(Extreme ultra violet;EUV)線、X線又は電子線(Electron Beam;EB)を意味している。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味している。
【0031】
また、本明細書における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線及びEUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0032】
本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
[処理液]
本発明の処理液は、半導体製造用用途に好ましく用いられる。具体的には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、剥離工程等を含む半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、あるいは次の工程に移る前に、有機物を処理するために使用され、具体的にはプリウェット液、現像液、リンス液、剥離液等として好適に用いられる。
【0034】
また、本発明の処理液は、半導体製造用以外の他の用途でも好適に用いることができ、ポリイミド、センサー用レジスト、レンズ用レジストなどの現像液、リンス液としても使用することができる。
【0035】
また、洗浄用途でも使用することができ、容器、配管、基板(例えば、ウエハー、ガラス等)などの洗浄に好適に用いることができる。
【0036】
本発明の処理液は、下記要件(a)を満たす化合物(A)を1種又は2種以上と、下記要件(b)を満たす化合物(B)を1種又は2種以上と、Al化合物及びNOx化合物から選ばれる化合物(C)を1種又は2種以上とを含有する。
【0037】
要件(a):アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、本発明の処理液中の含有率が5.0〜99.9999999質量%である化合物。
【0038】
要件(b):アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、上記処理液中の含有率が10−10〜0.1質量%である化合物。
【0039】
化合物(A)は、本発明の処理液に、5.0〜99.9999999質量%の含有率で含有される主成分であり、その含有率の合計は、処理液の全質量に対し、70.0〜99.9999999質量%である。ここで、化合物(A)の含有率の合計とは、要件(a)に記載の含有率、すなわち、含有率が5.0〜99.9999999質量%の範囲にある化合物(A)が、処理液中に1種類存在する場合には、この1種類の化合物(A)の含有率を意味する。また、要件(a)に記載の含有率の要件を満たす化合物(A)が2種以上存在する場合には、この2種以上の化合物(A)の含有率の合計を意味する。
【0040】
化合物(A)の合計の含有率は、90.0〜99.9999999質量%であることが好ましく、99.9〜99.9999999質量%であることがより好ましい。
【0041】
本発明の処理液の好ましい一形態として、1種の化合物(A)を90.0〜99.9999999質量%の割合で含有する処理液が挙げられ、1種の化合物(A)を99.9〜99.9999999質量%の割合で含有する処理液がより好ましく、1種の化合物(A)を99.999〜99.9999999質量%の割合で含有する処理液が更に好ましく、1種の化合物(A)を99.9999〜99.9999999質量%の割合で含有する処理液が特に好ましい。
【0042】
また、本発明の処理液は、化合物(A)と他の化合物との併用系であってもよく、その場合の他の化合物の含有率は、例えば、0.01〜10.00質量%が好ましく、1〜10.00質量%がより好ましい。
【0043】
この場合、他の化合物としては、例えば、グリコール系化合物、アルコール系化合物等が挙げられる。
【0044】
本発明の処理液において、化合物(B)は、不純物として含有されるものであり、その含有率の合計は、処理液の全質量に対し、10−10〜0.1質量%である。ここで、化合物(B)の含有率の合計とは、要件(b)に記載の含有率、すなわち、含有率が10−11〜0.1質量%の範囲にある化合物(B)が、処理液中に1種類存在する場合には、この1種類の化合物(B)の含有率を意味する。また、要件(b)に記載の含有率の要件を満たす化合物(B)が2種以上存在する場合には、この2種以上の化合物(B)の含有率の合計を意味する。
【0045】
化合物(B)の合計の含有率は、好ましくは、10−10〜10−4質量%であり、より好ましくは10−10〜10−5質量%であり、10−10〜10−6質量%が特に好ましい。
また、化合物(B)の各々の含有率は、好ましくは、10−10〜10−5質量%であり、より好ましくは10−10〜10−6質量%であり、10−10〜10−7質量%が特に好ましい。
【0046】
本発明の処理液において、Al化合物及びNOx化合物から選ばれる化合物(C)は、本発明の処理液の合成時に混入するものであり、主として触媒に由来する。
【0047】
化合物(B)及び化合物(C)は、処理液の精製工程で大部分は除かれるが、精製された処理液中に僅かに残存する。
【0048】
本発明は、半導体製造用処理液中に含有される化合物(B)と化合物(C)の比率が、リソ性能や欠陥性能に重大な影響を及ぼすとの知見に基づき開発されたものであり、化合物(B)に対する化合物(C)の比率である下記式Iで表されるP値が、10〜10−6の範囲であることを特徴の一つとする。
【0049】
P=[化合物(C)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式I
化合物(B)に対する無機物(C)の比率Pが10〜10−6の範囲である場合に、リソ性能の悪化や欠陥の発生を抑制し、微細なレジストパターン又は微細な半導体素子の提供が可能となる。この現象のメカニズムは必ずしも定かではないが、処理液中に含有される化合物(B)と化合物(C)のバランスが崩れると、例えば、現像液、リンス液、プリウェット液、剥離液等の各処理液による処理時に、剥離性の悪化や、欠陥の発生をもたらす特異な現像が起こるものと推測される。
【0050】
化合物(B)に対する無機物(C)の比率である式Iで表されるP値は、10〜10−5であることが好ましく、10〜10−4であることがより好ましい。
【0051】
化合物(B)は、上述の通り、処理液の全質量に対し、合計で10−10〜0.1質量%の範囲で僅かに含有される不純物であるが、下記式IIで表される化合物(A)と化合物(B)の比率Qが10〜1010であることが、リソ性能や剥離性能の改善並びに欠陥抑制の観点から好ましい。
【0052】
Q=[化合物(A)の全質量]/[化合物(B)の全質量] 式II
その現象のメカニズムは定かではないが、化合物(A)と化合物(B)の比率Qが上記範囲である場合に、本発明の効果が更に良化することが確認されている。
【0053】
化合物(B)に対する化合物(A)の比率である式IIで表されるQ値は、10〜1010であることがより好ましく、10〜1010であることが更に好ましい。
【0054】
本発明の処理液において、化合物(C)の含有率は、処理液の全質量を基準として、0.01質量ppt〜100質量ppb(parts per billion)が好ましい。本発明の処理液が、2種以上の化合物(C)を含有する場合には、化合物(C)の各々の含有率が、上記範囲であることが好ましい。
【0055】
無機物(C)の各々の濃度が100質量ppb以下である場合、これら化合物が処理時に残差成分の核として基板上に残り、欠陥の原因となることを抑制することができる。一方、無機物(C)は、少なければ少ないほど好ましいと一般的には考えられるが、0.01質量ppt未満になった場合には欠陥が再度増える傾向を確認している。そのメカニズムは必ずしも定かではないが、以下を推測している。すなわち、化合物(C)が基板上から除かれるときにはある程度のイオンや化合物の塊となって除かれることが推定される。一方、その濃度が少ない時には化合物を構成する金属元素はコロイド状に浮遊している。その為、化合物(C)が少なすぎる場合には、その除去率が悪化し、基板に残って残渣となる結果、欠陥の原因になると考えられる。
【0056】
本発明の処理液に含有される化合物(C)の各々の含有率は、0.01質量ppt〜10質量ppbであることがより好ましく、0.01質量ppt〜1質量ppbであることが更に好ましい。
【0057】
本発明の処理液に含有される化合物(A)は、アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、処理液中の含有率が、処理液の全質量に対して5.0〜99.9999999質量%の化合物である。
【0058】
化合物(A)は、一形態において、引火点が80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。また、引火点の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、200℃以下であることが好ましい。
【0059】
化合物(A)は、一形態において、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。
【0060】
引火点80℃以上で炭素数2〜6のアミド化合物としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン等を挙げることができる。
【0061】
引火点80℃以上で炭素数2〜6のイミド化合物としては、例えば、N―メトキシジアセトンアミド等を挙げることができる。
【0062】
引火点80℃以上で炭素数2〜6のスルホキシド化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
【0063】
本発明の処理液に含有される化合物(B)は、上述の通り、アミド化合物、イミド化合物及びスルホキシド化合物から選択され、処理液中の含有率が、処理液の全質量に対して10−11〜0.1質量%の化合物である。本発明の処理液は、これら化合物(B)を1種又は2種以上含有する。
【0064】
化合物(B)は、一形態において、炭素数が6以上であることが好ましく、6〜12であることがより好ましく、6〜10であることが更に好ましい。
【0065】
炭素数6以上のアミド化合物としては、例えば、下記化合物を挙げることができる。
【0066】
【化1】
【0067】
炭素数6以上のスルホキシド化合物及びその他の化合物としては、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0068】
【化2】
【0069】
本発明の処理液に含有される化合物(C)は、上述の通り、主として触媒由来の成分であり、Al化合物及びNOx化合物から選ばれる化合物である。
Al化合物としては、例えば、Al等を挙げることができる。
NOx化合物は、様々な窒素酸化物を表し、例えば、NO、NO、NO等を挙げることができる。
【0070】
本発明の処理液は、一態様において、Na、Ca及びFeを含有し、各原子の含有率が0.01質量ppt〜1000質量ppbの範囲であることが好ましい。Na、Ca及びFeは、本発明の処理液を合成するまでの様々なプロセスから混入する金属原子である。これら各金属原子の濃度が1000質量ppb以下である場合、これら金属原子が処理時に残差成分の核として基板上に残り、欠陥の原因となることを抑制することができる。一方、これら金属原子は、少なければ少ないほど好ましいと一般には考えられるが、0.01質量ppt未満になった場合には欠陥が再度増える傾向を確認している。そのメカニズムは定かではないが、以下を推測している。すなわち、Na、Ca又はFeが基板上から除かれるときにはある程度の原子の塊となって除かれることが推定される。一方、その濃度が少ない場合には、各元素はコロイド状に浮遊している。そのため、Na、Ca及びFe濃度が少なすぎる場合には、その除去率が悪化し、基板に付着し残渣となる結果、欠陥の原因になると考えられる。
【0071】
処理液中に含有されるNa、Ca及びFeの各原子の含有率は、より好ましくは0.01質量ppt〜500質量ppbであり、更に好ましくは0.05質量ppt〜100質量ppbである。
【0072】
本発明の処理液は、一態様において、SNP−ICP−MS法(Single−Particle ICP−MS)で測定したときの金属粒子の合計の含有率が、本発明の処理液の全質量を基準として、0.01質量ppt〜100質量ppbであることが好ましく、1〜100質量pptであることがより好ましい。
【0073】
半導体製造用処理液に不純物として含有される金属原子は、微細なパターンや微細な半導体素子において欠陥を発生する要因の一つとなっている。このため、半導体製造用処理液中に含有される金属原子の量は少ないほどよいと考えられていた。しかしながら、本発明者は、処理液中に含有される金属原子の量と欠陥の発生率とが必ずしも相関せず、欠陥の発生率にばらつきがあることを見出していた。
【0074】
ところで、最近開発されたSNP−ICP−MS測定によれば、溶液中に存在する金属原子の量を、イオン性金属と金属粒子(非イオン性金属)に分けて測定することが可能となった。ここで、金属粒子(非イオン性金属)とは、溶液中で溶解せず固体として存在しているメタル成分である。
【0075】
これまで、半導体製造用処理液などに含まれる金属原子の量は、ICP−MS法等により分析されるのが通常であり、ICP−MS法等の従来法によっては、金属原子に由来するイオン性金属と金属粒子(非イオン性金属)の識別ができないため、金属原子の総質量、すなわち、イオン性メタルと粒子性メタル(非イオン性メタル)の合計質量(以下、「総メタル量」などともいう。)として定量される。
【0076】
本発明者は、SNP−ICP−MS法を用いた測定により識別して定量することが可能となった処理液中に含有される金属原子由来のイオン性金属と金属粒子(非イオン性金属)の各々が欠陥に及ぼす影響について鋭意研究した。その結果、欠陥発生には金属粒子(非イオン性金属)量の影響が極めて大きく、金属粒子(非イオン性金属)量と欠陥発生との間には相関関係があることを見出したものである。
【0077】
本発明の処理液において、SNP−ICP−MS法で測定したときの金属粒子の合計の含有率は、更に好ましくは1〜50質量pptであり、特に好ましくは、1〜30質量pptである。
SNP−ICP−MS法を用いた測定において使用し得る装置としては、後述する実施例で使用した装置(PerkinElmer社製 NexION350S)のほか、例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800 トリプル四重極ICP−MS(inductively coupled plasma mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900などが挙げられる。
【0078】
なお、本発明の実施形態において、上述した本発明の処理液を2種以上混合したものを、本発明の処理液として各種用途に用いてもよい。
また、他の実施形態において、上述した本発明の処理液の少なくとも1種と、他の有機溶剤(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、シクロヘキサノン及び酢酸ブチル等)の少なくとも1種を混合したものを、本発明の処理液として各種用途に用いてもよい。
【0079】
[半導体製造用処理液の製造]
本発明の処理液は、公知の方法により製造することができる。例えば、原料を、触媒の存在下で反応させて化合物(A)を合成して化合物(A)を含む粗液を得、次いで、この粗液を精製することにより製造される。
【0080】
触媒としては、化合物(A)に応じて適宜選択することができる。
特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシドの合成においては、NOxを触媒として用い、ジメチルスルフィドを液相で連続的に酸化する方法が公知である(例えば、米国特許第2825744号明細書、特公昭42−9771号公報、特開2000−219672号公報等を参照)。
【0081】
また、N−メチルピロリドンの合成においては、ゼオライト触媒(Bull.Chem.Soc.Japan,50(10)(1977)2517、及びJ.Org.Chem.,50(1994)3998に記載されている。)や、アルミナ、シリカアルミナ、活性炭、シリカゲル、シリカマグネシアなどの触媒を用いた合成法があげられる。また、特表2011−507830号公報に記載のある4族、6族、8族、11族、12族、13族、および14族金属元素を含有する酸化物を触媒として使用した製造方法も挙げられ、Cu、Mg、Si、Ca、Zn、Al、Ti、Wなどの酸化物が好適に用いられる。
【0082】
本発明の一形態において、Al化合物及びNOx化合物のいずれかを触媒として使用することが好ましい。Al化合物としては、アルミナなどのAl酸化物や、アルキルアルミニウムなどの有機Al化合物があげられる。
【0083】
本発明の処理液の製造において使用される原料は、事前に蒸留、イオン交換、ろ過等によって精製したものを使用することが好ましい。例えば純度99質量%以上、好ましくは純度99.9質量%以上のものであり、高純度グレードの原料が好ましい。
【0084】
また、本発明の処理液の製造方法において使用される触媒についても、事前に蒸留、イオン交換、ろ過等によって精製したものを使用することが好ましい。例えば純度99質量%以上、好ましくは純度99.9質量%以上のものであり、高純度グレードの触媒が好ましい。
【0085】
以下に、本発明の処理液の製造方法の例として、化合物(A)としてN−メチルピロリドン(NMP)を含有する処理液と、化合物(A)としてジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する処理液の製造方法を説明する。
【0086】
<NMP(N−メチルピロリドン)含有処理液の製造方法>
アンモニアを酸触媒、特に好ましくは固体酸触媒(例えば、AlO)または金属触媒の存在下、既知の先行技術の方法に従って、加熱して、メタノールと反応させて3種のメチルアミン、即ちMMA(モノメチルアミン)、DMA(ジメチルアミン)およびTMA(トリメチルアミン)と、アンモニア、水、ならびに場合により未反応のメタノールから本質的になる混合物を取得する。この際の加熱条件としては、20~200℃が好ましく、80℃〜~200℃がより好ましく、本発明所望の効果を顕著に得られる観点からは1
00℃〜200℃であることが特に好ましい。その際上記触媒は好ましくは反応器内に固定床として設置されている。ここで、「本質的に」とは、混合物中の3種のメチルアミン、アンモニア、水、及び、存在する場合にはメタノールの総含有率が、少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも97質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、特に好ましくは少なくとも99質量%であることを意味する。
【0087】
引き続いて、蒸留カラム中で、3種のメチルアミン、アンモニア、水、および場合により未反応のメタノールから本質的になる混合物から、アンモニアを既知の方法に従って頂部を経由して分離する(例えば、Kirk-Othmer、化学技術百科事典、第4版、2巻、375頁中の図2:反応器後の最初のカラム参照)。これによって3種のメチルアミン、水および場合によりメタノールから本質的になる混合物が得られる。ここで、「本質的に」とは、上記混合物中の3種のメチルアミン、水、および、存在する場合にはメタノールの総含有率が少なくとも96質量%、好ましくは少なくとも97質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、特に好ましくは少なくとも99質量%であることを意味する。この混合物の水含有率は一般的に30から50質量%まで、好ましくは35から45質量%までである。この混合物のメタノール含有率は一般的に0から10質量%まで、好ましく3から7質量%までである。この混合物の残存アンモニア含有率は一般的に0から1質量%まで、好ましくは0.1から0.8質量%までである。この混合物中のメチルアミンの質量比は一般的に、MMA:DMA:TMA=(1〜14):(6〜12):(0.2〜12)、好ましくはMMA:DMA:TMA=(1〜2.7):(2〜3):(0.07〜2)である。その後の抽出カラムおよび1つまたはそれより多くの蒸留カラム中で、この混合物中に存在するメタノールと水は全て、所望の場合、既知の方法に従って濃縮して減少させるかまたはそれぞれ頂部と底部で分離することができる(例えば、Kirk-Othmer、化学技術百科事典、第4版、2巻、375頁中の図2:反応器後の2つ目および3つ目のカラム参照)。
【0088】
上記工程後に得られた3種のメチルアミン、即ちMMA、DMAおよびTMA、場合により水および場合によりメタノールから本質的になる混合物を高温、好ましくは180から350℃まで、より好ましくは200から300℃まで、特に好ましくは230から270℃までの温度において、そして加圧、好ましくは5から300バールまで、より好ましくは50から150バールまでの圧力下において、ガンマ−ブチロラクトン(γ−BL)と反応させる。ここで、MMA対γ−BLのモル比は少なくとも1、好ましくは少なくとも1.05、より好ましくは少なくとも1.1である。MMA対γ−BLのモル比の好ましい範囲は1から2まで、好ましくは1.05から1.5まで、より好ましくは1.1から1.25までである。
【0089】
上記反応は加圧反応器(オートクレーブ)中バッチ様式でかまたは好ましくは、反応器内の流動性に影響を与える内装物を備えていることができる管反応器、例えばシャフト反応器中で連続的に実施することができる。上述した条件下での反応器中における反応混合物の滞留時間は一般的に1から6時間、好ましくは1.5から5時間まで、より好ましくは2から4時間までである。この反応のためには、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%の純度を有するガンマ−ブチロラクトン(γ−BL)を使用する。必要なγ−BLは、気相中で、金属触媒(例えば、銅触媒)上、高温で1,4−ブタンジオールの吸熱環化脱水によるか、または、気相中で、金属触媒上、加圧および高温で無水マレイン酸の選択的水素添加によって、そしてそれぞれの場合に、引き続いて蒸留精製するという既知の方法で取得することができる(ウルマンの工業化学百科事典、第5版、A4巻、496頁(1985))。
【0090】
得られる反応生成物は、合成されたNMPと共に、未反応メチルアミン(特に、未反応DMAおよびTMA)、水、少量の副生成物、場合によりメタノールおよび場合により未反応γ−BLを含むNMP含有粗液である。一般的に、上述した反応条件下でのこの方法工程におけるγ−BL変換は好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。上記反応生成物の副生成物含有量は典型的には5質量%未満、特に3.5質量%未満、非常に特に好ましくは2質量%未満である。
上記反応で得られたNMP含有粗液を蒸留塔に供給する。その後、蒸留を複数回繰り返し目的性生物であるNMP含有処理液を入手することができる。蒸留方法は、単段式または多段式分別蒸留であっても良い。
【0091】
ここで、本発明の化合物(B)は、上記の工程の各工程の前後、又は反応中に添加しても良いし、得られる反応生成物に添加しても良い。また、化合物(B)は、上記の反応で副次的に得られるアミド化合物であっても良い。化合物(B)の含有率は、例えばガラス材の蒸留塔を用いた蒸留を繰り返し行うことで調整できる。
【0092】
また、化合物(C)は、上記の工程の各工程の前後、又は反応中に添加しても良いし、得られる反応生成物に添加しても良い。また、化合物(C)は、上記の反応で添加する触媒であっても良い。化合物(C)の含有量は、例えばイオン交換膜と用いた精製の繰り返しや、孔径の異なるフィルターを用いたろ過、若しくはその組み合わせを繰り返すことで調整することができる。
【0093】
本発明の処理液の製造は、NMP含有処理液の使用後の廃液を再利用して製造する方法であっても良い。
【0094】
<DMSO(ジメチルスルホキシド)含有処理液の製造方法>
DMSO含有処理液の製造方法は、DMS(ジメチルスルフィド)を、液相でNOx触媒の存在下、酸素を主成分とするガスにより連続的に酸化するプロセスを含む。本発明においては、酸化反応におけるDMSのDMSOへの転化率の向上、触媒として用いるNOxの回収率および/または吸収率の向上等のため、あるいは酸化剤として用いる酸素ガスの純度等、以下に述べるような幾つかの好ましい条件がある。
【0095】
本発明におけるDMSの酸化反応は発熱反応である。そのため、このDMSの酸化反応に用いられる酸化反応器の形状としてはいろいろなタイプがあるが、完全混合型反応器および多管式反応器などが好ましく、特に完全混合型反応器が好ましく用いられる。本発明において、酸化反応器内の温度は好ましくは10℃〜50℃であり、より好ましくは20℃〜50℃、特に好ましくは30℃〜50℃に保つのが適当である。この場合、10℃未満では生成したDMSOが凝固し、反応継続が不可能になる傾向を示す。また、50℃より高い温度では、副生物であるDMSOがさらに酸化されたジメチルスルホン(以下、DMSO2という)が大量に生成する。これらの理由に加え、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、加熱条件としては、30℃〜50℃とするとが特に好ましい。また、この酸化反応において反応器内の圧力は常圧が好ましいが、加圧下でも反応する。
【0096】
また、本発明において、DMSの酸化反応時に使用するNOx触媒濃度は、好ましくはNOx/DMS質量比で0.01〜0.2であり、より好ましくはNOx/DMS質量比で0.05〜0.12である。この反応において、NOx/DMS質量比を0.01未満の濃度で反応させた場合、DMSO転化率が低下するという問題が生じる。また、NOx/DMS質量比を0.2より大きい濃度で反応させた場合、DMSO2が大量に生成する傾向となる。
【0097】
さらに、本発明において、酸化剤として用いられる酸素を主成分とするガス(酸素ガス)の酸素濃度は80質量%以上が好ましい。酸素濃度が80質量%未満のガスを酸化剤として用いた場合は、DMSO転化率が低下する傾向を示すため、その転化率を優位に保持するために、反応液の滞留時間を通常の2倍以上にすることが行われる。酸素ガスとしては、酸素濃度99質量%以上の高純度酸素ガスを用いることもできるが、本発明では、圧力スイング吸着処理(Pressure SwingAdsorption(「PSAプロセス」という))して得られた低コストで、比較的低純度な酸素ガスなどを使用することができる。ここにPSAプロセスとは、吸着剤を用いて、圧力の上昇によりガスを吸着させ、圧力の低下によりガスを放出させるときの酸素と窒素の吸着力の差を利用してガス中の酸素濃度を高めるものであり、吸着剤としては主としてゼオライトが使用される。このPSAプロセスを用いて、空気を原料としてガス(空気)中の酸素濃度を高める場合、酸素濃度が約21質量%〜96質量%程度までの範囲で自由に造ることができる。本発明では、空気をPSAプロセスで処理し、酸素濃度を80質量%〜96質量%にまで高めた酸素ガスを用いることができる。
【0098】
本発明において、DMSの酸化を効率良く行なうためには、酸化反応系に供給される酸素ガス量は理論量よりも多くすることが好ましく、余剰の未反応の酸素ガスは触媒であるNOxと共に反応オフガスとして反応系外へ放出される。また、このとき、反応オフガス中のNOx中のNOの濃度はプロセス条件によって異なるが、通常1質量%〜20質量%であり、より好ましくは1質量%〜10質量%である。また、反応オフガス中の酸素濃度も反応条件によって異なるが、通常10質量%〜50質量%である。酸化反応器には、上記のように理論量よりも若干多い酸素ガス量を供給することが好ましく、反応オフガス中の酸素濃度は20質量%以上とすることが好ましい。また、本発明において、NOxの吸収効率を上げるためには、反応系外に放出されたNOxと酸素の混合ガス中で、NOを酸素により酸化してNO2にすることが好ましい。このため、反応オフガス中の酸素濃度は20質量%以上であることが好ましい。反応オフガス中の酸素濃度が20質量%より低い場合、NOの酸化効率が低下する。
【0099】
本発明において、酸化反応器から出るDMSOを主成分とする粗液(以下、「DMSO含有粗液」ともいう。)中には、反応オフガスとして放出されなかったNOxが、DMSOに対するNOxの溶解度に相当する量だけ溶存している。本発明では、この溶存NOxを、反応生成液に窒素ガスを吹き込むことによって、DMSOを主成分とする反応生成液から脱気し除去する。このとき、窒素ガスを吹き込む反応生成液の好ましい温度は40℃〜90℃であり、より好ましくは50℃〜80℃である。吹き込む窒素ガスの量は、反応生成液に対して1質量%〜7質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜6質量%である。
【0100】
さらに本発明では、NOxを含む反応オフガスおよび/または脱気ガスを、NOxを脱気した反応生成液をNOx吸収液として用いたNOx吸収塔に通気し、反応オフガスおよび/または脱気ガス中からNOxを回収することが好ましい。このNOx吸収塔の形状はどのような形状でもその吸収効率に大差はないが、充填塔、段塔および濡れ壁塔が好ましく用いられる。また、この吸収塔の吸収液として用いられるNOxを脱気したDMSOを主成分とする反応生成液の量は、NOxの5倍以上用いることが好ましく、さらに好ましくは10倍以上用いることが好ましい。
【0101】
得られる反応生成物はDMSO、未反応ジメチルスルフィド(特に、未反応DMS)、少量の副生成物を含んでいる。
【0102】
上記反応で得られたDMSO含有粗液を蒸留塔に供給する。その後、蒸留を複数回繰り返し目的性生物であるDMSO含有処理液を入手することができる。蒸留方法は、単段式または多段式分別蒸留であっても良い。
【0103】
ここで、本発明の化合物(B)は、上記の工程の各工程の前後、又は反応中に添加しても良いし、得られる反応生成物に添加しても良い。また、化合物(B)は、上記の反応で副次的に得られるスルホキシド化合物であっても良い。化合物(B)の含有量は、例えばガラス材の蒸留塔を用いた蒸留を繰り返し行うことで調整できる。
【0104】
また、化合物(C)は、上記の工程の各工程の前後、又は反応中に添加しても良いし、得られる反応生成物に添加しても良い。また、化合物(C)は、上記の反応で添加する触媒であっても良い。化合物(C)の含有率は、例えばイオン交換膜と用いた精製の繰り返しや、孔径の異なるフィルターを用いたろ過、若しくはその組み合わせを繰り返すことで調整することができる。
【0105】
本発明の処理液の製造は、DMSO含有処理液の使用後の廃液を再利用して製造する方法であっても良い。
【0106】
本発明の処理液の製造は、化合物(A)を含有する処理液の使用後の廃液を再利用して製造する方法であっても良い。
【0107】
次に、本発明の処理液の製造に好適に用いることができる製造装置について説明する。
【0108】
〔製造装置〕
図1は本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置の一形態を表す概略図である。製造装置100は、タンク101を備え、タンク101は後述する洗浄液、及び/又は、有機溶剤(化合物(A)を含む粗液)を供給するための供給口102を備える。製造装置100は、ろ過装置105を備え、タンク101とろ過装置105とは、供給管路109で連結され、タンク101とろ過装置105との間を流体(洗浄液、有機溶剤、及び、処理液等)を移送できるようになっている。供給管路109には、弁103、及び、ポンプ104が配置されている。図1において、製造装置100は、タンク101と、ろ過装置105とを備えるが、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置としては、これに制限されない。
【0109】
製造装置100において、供給口102から供給された流体は、弁103、及び、ポンプ104を経てろ過装置105に流入する。ろ過装置105から排出された流体は、循環管路110を経て、タンク101に収容される。
製造装置100は、循環管路110に処理液を排出する排出部111を備える。排出部1111は、弁107と、容器108を備え、循環管路に設けられた弁106と、上記弁107の切り替えによって、製造された処理液を容器108に収容できるようになっている。また、弁107には切り替え可能な管路113が接続されており、この管路113を経て循環洗浄後の洗浄液を製造装置100外へと排出することができる。循環洗浄後の洗浄液には、パーティクル、及び、金属不純物等が含有されている場合があり、洗浄液を装置外へ排出する管路113を備える製造装置100によれば、容器108の充填部分等を汚染することがなく、より優れた欠陥抑制性能を有する処理液を得ることができる。
【0110】
更に、製造装置100は、循環管路110に、洗浄液モニタリング部112を備える。図1において、製造装置100は、循環管路110に洗浄液モニタリング部112を備えるが、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置としてはこれに制限されない。洗浄液モニタリング部112は、供給管路109に備えられていてもよいし、供給管路109と循環管路110に備えられていてもよい。なお、製造装置100において、洗浄液モニタリング部112は、循環管路110中に直接備えられているが、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置としてはこれに制限されない。洗浄液モニタリング部は、管路中に備えられた図示しない流体の一時収容タンク(タンク101とは異なる。)に備えられていてもよい。
【0111】
図2は、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置の他の形態を表す概略図である。製造装置200は、タンク101と、ろ過装置105とを備え、更に、タンク101と管路202、管路204、及び、管路203で接続され、上記各管路を通じてタンク101との間で流体を移送できるように配置された蒸留塔201を備える。また、一方で、本発明の実施形態に係る処理液の製造方法に用いることができる製造装置としては、ろ過装置105、及び/又は、蒸留塔201を必ずしも備えていなくてもよいし、一方で、更に、管路203で蒸留塔201と接続された反応容器等を備えていてもよい。
【0112】
製造装置200において、管路203を経て蒸留塔201に供給された流体は、蒸留塔201で蒸留される。蒸留された流体は管路202を経て、タンク101に収容される。供給管路109には、弁103、及び、弁206が備えられ、管路204に備えられた弁205との切り替えによって、タンク101から排出された流体を、ろ過装置105に流入できるようになっている。
また、製造装置200においては、タンク101から排出された流体を再び蒸留塔201に流入することもできる。その場合、上記の弁103、弁206、及び、弁205の切り替えによって、管路204から、弁207、及び、管路203を経て流体が蒸留塔201に流入する。
【0113】
製造装置の接液部(接液部の定義については後述する。)の材料としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する処理液が得られる点で、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料からなる群から選択される少なくとも1種から形成されることが好ましい。なお、本明細書において、「接液部」とは、流体が接する可能性がある部位(例えば、タンク内面、送液ポンプ、ダンパー、パッキン、Oリング、及び、管路内面等)で、かつ、その表面から厚み100nmの領域を意図する。
【0114】
上記非金属材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂、及びフッ素含有樹脂材料であることが好ましく、金属原子の溶出が少ない観点からフッ素含有樹脂材料であることが好ましい。
【0115】
上記フッ素含有樹脂としては、パーフルオロ樹脂などが挙げられ、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニル樹脂(PVF)等を挙げることができる。
【0116】
特に好ましいフッ素含有樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂を挙げることができる。
【0117】
上記金属材料としては、特に制限されず、公知の材料を用いることができる。
金属材料としては、例えば、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料が挙げられ、なかでも、30質量%以上がより好ましい。金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般に90質量%以下が好ましい。
金属材料としては例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼、及びニッケル−クロム合金等が挙げられる。
【0118】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼を用いることができる。なかでも、ニッケルを8質量%以上含有する合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0119】
ニッケル−クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル−クロム合金を用いることができる。なかでも、ニッケル含有量が40〜75質量%、クロム含有量が1〜30質量%のニッケル−クロム合金が好ましい。
【0120】
ニッケル−クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC−276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ−C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、ハステロイC−22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、ニッケル−クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、及びコバルト等を含有していてもよい。
【0121】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015−227501号公報の0011〜0014段落、及び、特開2008−264929号公報の0036〜0042段落等に記載された方法を用いることができる。
【0122】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、接液部が電解研磨された金属材料から形成された蒸留塔からは、有機溶剤中に金属原子を含有する金属不純物が流出しにくいため、不純物含有量が低減された蒸留済みの有機溶剤を得ることができるものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
【0123】
より優れた欠陥抑制性能を有する処理液が得られる点で、接液部は電解研磨されたステンレス鋼から形成されることが好ましい。特に、製造装置がタンクを備える場合、タンクの接液部が電解研磨されたステンレス鋼から形成されることがより好ましい。接液部におけるFeの含有量に対するCrの含有量の含有質量比(以下、「Cr/Fe」ともいう。)としては特に制限されないが、一般に、0.5〜4が好ましく、なかでも、処理液中に金属不純物、及び/又は、有機不純物がより溶出しにくい点で、0.5を超え、3.5未満がより好ましく、0.7以上、3.0以下がより好ましい。Cr/Feが0.5を超えると、タンク内からの金属溶出を抑えることができ、Cr/Feが3.5未満だとパーティクルの原因となる接液部のはがれ等が起きにくい。
上記金属材料中のCr/Feを調整する方法としては特に制限されず、金属材料中のCr原子の含有量を調整する方法、及び、電解研磨により、研磨表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くする方法等が挙げられる。
【0124】
上記金属材料は、皮膜技術が適用された金属材料でもよい。
皮膜技術は、金属被覆(各種メッキ)、無機被覆(各種化成処理、ガラス、コンクリート、セラミックスなど)および有機被覆(錆止め油、塗料、ゴム、プラスチックスなど)の3種に大別されているが、いずれであってもよい。
【0125】
好ましい皮膜技術としては、錆止め油、錆止め剤、腐食抑制剤、キレート化合物、可剥性プラスチック、及びライニング剤による表面処理が挙げられる。
中でも、皮膜技術としては、腐食抑制剤、キレート化合物及びライニング剤による表面処理が好ましい。ここで、腐食抑制剤としては、各種のクロム酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、カルボン酸(オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等)、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、及びエステル(高級脂肪酸のグリセリンエステルや燐酸エステル)等が挙げられる。キレート化合物としては、エチレンジアンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルエチオレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等が挙げられる。ライニング剤としては、フッ素樹脂ライニング剤等が挙げられる。特に好ましいのは、燐酸塩又はフッ素樹脂ライニング剤による処理である。
【0126】
上記製造装置は、ろ過装置105を備えることにより、より優れた欠陥抑制性能を有する処理液が得られやすい。ろ過装置105が含有するろ過部材としては特に制限されないが、除粒子径が20nm以下のフィルタ、及び、金属イオン吸着フィルタからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、除粒子径が20nm以下のフィルタであり、且つ、金属イオン吸着フィルタであることがより好ましい。
【0127】
・除粒子径が20nm以下のフィルタ
除粒子径が20nm以下のフィルタは、処理液の原料となる有機溶剤等から、直径20nm以上の粒子を効率的に除去する機能を有する。
なお、フィルタの除粒子径としては、1〜15nmが好ましく、1〜12nmがより好ましい。除粒子径が15nm以下だと、より微細な粒子を除去でき、除粒子径が1nm以上だと、ろ過効率が向上する。
ここで、除粒子径とは、フィルタが除去可能な粒子の最小サイズを意味する。例えば、フィルタの除粒子径が20nmである場合には、直径20nm以上の粒子を除去可能である。
【0128】
フィルタの材質としては、例えば、6−ナイロン、及び6、6−ナイロンなどのナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、並びに、フッ素樹脂等が挙げられる。ポリイミド、及び/又は、ポリアミドイミドは、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有するものであってもよい。耐溶剤性については、フッ素樹脂、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが優れる。また、金属イオンを吸着する観点からは、6−ナイロン、及び6、6−ナイロンなどのナイロン、が特に好ましい。
【0129】
ろ過装置105は、上記フィルタを複数含有してもよい。ろ過装置105がフィルタを複数含有する場合、更に、他方のフィルタとしては、特に制限されないが、除粒子径が50nm以上のフィルタ(例えば、孔径が50nm以上の微粒子除去用の精密ろ過膜)が好ましい。被精製物中に、コロイド化した不純物、特に鉄又はアルミニウムのような金属原子を含有するコロイド化した不純物以外にも微粒子が存在する場合には、除粒子径が20nm以下であるフィルタ(例えば、孔径が20nm以下の精密ろ過膜)を用いてろ過する前に、除粒子径が50nm以上のフィルタ(例えば、孔径が50nm以上の微粒子除去用の精密ろ過膜)を用いて被精製物のろ過を実施することで、除粒子径が20nm以下であるフィルタ(例えば、孔径が20nm以下の精密ろ過膜)のろ過効率が向上し、粒子の除去性能がより向上する。
【0130】
・金属イオン吸着フィルタ
上記ろ過装置105は、金属イオン吸着フィルタを含有することが好ましい。
金属イオン吸着フィルタとしては特に制限されず、公知の金属イオン吸着フィルタが挙げられる。
【0131】
なかでも、金属イオン吸着フィルタとしては、イオン交換可能なフィルタが好ましい。ここで、吸着対象となる金属イオンは、特に制限されないが、半導体デバイスの欠陥の原因になりやすいという点から、Fe、Cr、Ni、及び、Pbからなる群から選択される1種を含有する金属のイオンが好ましく、Fe、Cr、Ni、及び、Pbをそれぞれ含有する金属のイオンが好ましい。
【0132】
金属イオン吸着フィルタは、金属イオンの吸着性能が向上するという観点から、表面に酸基を含有することが好ましい。酸基としては、スルホ基、及び、カルボキシ基等が挙げられる。
【0133】
金属イオン吸着フィルタを構成する基材(材質)としては、セルロース、ケイソウ土、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び、フッ素樹脂等が挙げられる。金属イオンを吸着する効率の観点からは、ナイロンが特に好ましい。
【0134】
また、金属イオン吸着フィルタは、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを含有する材質で構成されていてもよい。上記金属イオン吸着フィルタとしては、例えば、特開2016―155121号公報(JP 2016−155121)に記載されているポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜が挙げられる。
【0135】
上記ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、カルボキシ基、塩型カルボキシ基、及び、−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを含有するものであってもよい。金属イオン吸着フィルタが、フッ素樹脂、ポリイミド、及び/又は、ポリアミドイミドからなると、より優れた耐溶剤性を有する。
【0136】
・有機不純物吸着フィルタ
ろ過装置105は、有機不純物吸着フィルタを更に含有してもよい。
有機不純物吸着フィルタとしては特に制限されず、公知の有機不純物吸着フィルタが挙げられる。
なかでも、有機不純物吸着フィルタとしては、有機不純物の吸着性能が向上する点で、有機不純物と相互作用可能な有機物骨格を表面に有すること(言い換えれば、有機不純物と相互作用可能な有機物骨格によって表面が修飾されていること)が好ましい。有機不純物と相互作用可能な有機物骨格としては、例えば、有機不純物と反応して有機不純物を有機不純物吸着フィルタに捕捉できるような化学構造が挙げられる。より具体的には、有機不純物としてn−長鎖アルキルアルコール(有機溶剤として1−長鎖アルキルアルコールを用いた場合の構造異性体)を含む場合には、有機物骨格としては、アルキル基が挙げられる。また、有機不純物としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む場合には、有機物骨格としてはフェニル基が挙げられる。
【0137】
有機不純物吸着フィルタを構成する基材(材質)としては、活性炭を担持したセルロース、ケイソウ土、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0138】
また、有機不純物吸着フィルタには、特開2002−273123号公報及び特開2013−150979号公報に記載の活性炭を不織布に固着したフィルタも使用できる。
【0139】
有機不純物吸着フィルタとしては、上記で示した化学吸着(有機不純物と相互作用可能な有機物骨格を表面に有する有機不純物吸着フィルタを用いた吸着)以外に、物理的な吸着方法も適用できる。
【0140】
例えば、有機不純物としてBHTを含む場合、BHTの構造は10オングストローム(=1nm)よりも大きい。そのため、孔径が1nmの有機不純物吸着フィルタを用いることで、BHTはフィルタの孔を通過できない。つまり、BHTは、フィルタによって物理的に捕捉されるので、被精製物中から除去される。このように、有機不純物の除去は、化学的な相互作用だけでなく物理的な除去方法を適用することでも可能である。ただし、この場合には、3nm以上の孔径のフィルタが「粒子除去フィルタ」として用いられ、3nm未満の孔径のフィルタが「有機不純物吸着フィルタ」として用いられる。
【0141】
繰り返しになるがフィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合には、各フィルタは、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに種類の異なるものであってもよいが、互いに種類の異なるものであることが好ましい。典型的には、第1のフィルタと第2フィルタとは、孔径及び構成素材のうちの少なくとも一方が異なっていることが好ましい。
【0142】
1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、又は、小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択できる。また、ポリアミド製の「P−ナイロンフィルター(孔径0.02μm、臨界表面張力77mN/m)」;(日本ポール株式会社製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.02μm)」;(日本ポール株式会社製)、及び高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.01μm)」;(日本ポール株式会社製)も使用することができる。
【0143】
本発明の実施形態に係る処理液の製造方法は、洗浄液を用いて製造装置を洗浄する工程を含んでも良い。その方法は洗浄液をタンク101の供給口102から供給する。洗浄液の供給量としては特に制限されないが、タンク101の接液部を十分に洗浄できる程度の量が好ましく、供給する洗浄液の容量としては、タンク101の容量に対して30体積%以上が好ましい。洗浄液を供給口102から供給する際、弁103は閉じていても開いていてもいいが、タンク101をより洗浄しやすい点で、洗浄液を供給口102から供給する際には、弁103を閉じることが好ましい。
【0144】
タンク101に供給された洗浄液は、直ちに製造装置内を移送してもよいし、タンク101内を洗浄してから、製造装置内を(例えば、供給管路109を通じて)移送してもよい。洗浄液を用いてタンク101内を洗浄する方法としては特に制限されないが、例えば、タンク101が備える、図示しない撹拌翼を回転させて洗浄する方法が挙げられる。洗浄液を用いてタンクを洗浄する時間としては特に制限されず、タンク101の接液部の材料、製造する処理液の種類、及び、コンタミネーションの可能性等に応じて適宜選択すればよい。一般に、0.1秒〜48時間程度が好ましい。なお、タンク101のみを洗浄する場合、例えば、タンク底部に設けられた図示しない排出口から、洗浄後の洗浄液を排出してもよい。
【0145】
洗浄液を用いて製造装置100の供給管路109等を洗浄する方法としては、特に制限されないが、弁103、及び、弁106を開き、弁107を閉じたうえで、ポンプ104を稼動し、洗浄液を供給管路109、及び、循環管路110を通じて製造装置内で循環させる方法(以下、「循環洗浄」ともいう。)が好ましい。上記のようにすることで、洗浄液を移送しながら、タンク101、ろ過装置105、及び、供給管路109等の接液部に付着した異物等を洗浄液により効率的に分散させ、及び/又は、より効率的に溶解させることができる。
【0146】
特に、製造装置がろ過装置を備える場合、洗浄方法としては、循環洗浄がより好ましい。循環洗浄の例を図1を用いて説明する。まず、タンク101から弁103を経て製造装置内へ供給された洗浄液は、供給管路109を通って(ろ過装置105、循環管路110、及び、弁106を経て)再びタンク101へ戻る(循環する)。このとき、洗浄液は、ろ過装置105でろ過され、洗浄液に溶解、及び、分散する粒子等が除去され、より洗浄効果を高めることができる。
【0147】
洗浄方法の他の形態としては、例えば、弁103、及び、弁107を開き、弁106を閉じたうえで、ポンプ104を稼動し、タンク101の供給口102から製造装置内に供給した洗浄液を、弁103、及び、ポンプ104を通じて、ろ過装置105に流入させ、その後、洗浄液を循環させずに弁107を経て製造装置外へと排出する方法(本明細書において、以下この方法を「バッチ洗浄」ともいう。)を用いてもよい。この場合、洗浄液は、上記のように、一定量を断続的に製造装置内に供給してもよいし、連続的に製造装置内に供給してもよい。
(洗浄液)
上記記載の様に事前に洗浄する場合に用いられる洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液を用いることができる。
【0148】
洗浄液としては、例えば、水、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等が挙げられる。
【0149】
また、洗浄液としては、例えば、特開2016−57614号公報、特開2014−219664号公報、特開2016−138219号公報、及び、特開2015−135379号公報に記載のものを用いてもよい。
【0150】
洗浄液としては、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CyPeCyPe(シクロペンタノン)、CyPn(シクロペンタノン)、nBA(酢酸ブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、CyHx(シクロヘキサノン)、EL(乳酸エチル)、HBM(2−ヒドロキシイソ酪酸メチル)、DBCPN(シクロペンタノンジメチルアセタール)、GBL(γ−ブチロラクトン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EC(炭酸エチレン)、PC(炭酸プロピレン)、(1−メチル−2−ピロリドン)、iAA(酢酸イソアミル)、(イソプロパノール)、MEK(メチルエチルケトン)、及び、MIBC(4−メチル−2−ペンタノール)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、PGMEA、NMP、PGME、nBA、PC、CyHe、GBL、MIBC、EL、DMSO、iAA、MEK、PC、及び、CyPeからなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、PGMEA、NMP、PGME、nBA、PC、CyHe、GBL、MIBC、EL、DMSO、iAA、MEK、PC、及び、CyPeからなる群から選択される少なくとも1種からなることが更に好ましい。
なお、洗浄液は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0151】
上記以外にも、洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、及び、エトキシプロパノール等のアルコール類;アセトン、及び、メチルエチルケトン等のケトン系;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系;酢酸エチル、及び、エチルセロソルブアセテート等のエステル系;ベンゼン、トルエン、及び、キシレン等芳香族化合物;ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、及び、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素;等が挙げられる。また、本発明の処理液を洗浄液として用いてもよい。
【0152】
[金属含有率の調整方法]
本発明の処理液は、Cr、Co、Cu、Pb、Li、Mg、Mn、Ni、K、Ag、及びZnなどのイオン濃度がいずれも1ppm(parts per million)以下であることが好ましく、1ppb以下であることがより好ましい。特に、pptオーダー(上記濃度はいずれも質量基準)であることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0153】
本発明の処理液における金属含有率の調整は、例えば、処理液を製造する際に使用する原材料の段階、及び、処理液を調製した後の段階、の少なくとも一方の段階において、蒸留やフィルターろ過、イオン交換樹脂を用いたろ過、吸着精製などを繰り返し、十分に精製することにより行ってもよい。
【0154】
ここで、金属含有率の調整方法(以下、「メタル濃度の低減方法」ともいう。)としては、特に限定されないが、国際公開第WO12/043496号パンフレットに記載されている、炭化ケイ素を用いた吸着精製などが挙げられ、さらに、蒸留ややフィルターろ過、イオン交換樹脂を用いたろ過を組み合わせ、十分に精製する例が好ましい形態として挙げられる。
【0155】
金属含有率を調整する方法は本発明の効果を得る観点から、処理液を製造する際に使用する原材料の段階で行われることが特に好ましい。また、原材料は特定の金属原子、若しくは硫酸イオン、塩化物イオン、又は硝酸イオンなどの無機イオン、及び後述する金属イオンが低減されたグレードのものを用いることが好ましい。
【0156】
メタル濃度の低減方法に関するその他の方法としては、処理液の製造に使用する原材料を収容する「容器」として、後述する本発明の処理液を収容する収容容器に関して説明するような、不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、処理液の調製時の「配管」などからメタル分が溶出しないように、配管内壁にフッ素系樹脂のライニングを施すなどの方法も挙げられる。
【0157】
[不純物及び粗大粒子]
また、本発明の処理液は、粗大粒子を実質的に含まないことが好ましい。
なお、処理液に含まれる粗大粒子とは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子や、処理液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子などであり、最終的に処理液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。処理液中に存在する粗大粒子の量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定することができる。
【0158】
[キット及び濃縮液]
本発明の処理液は、他の原料を別途添加するキットとしてもよい。この場合、使用の際に別途添加する他の原料として、水や有機溶剤のような溶媒の他、用途に応じて他の化合物を混合して使用することができる。本発明の効果が顕著に得られる観点から、この際に使用され得る溶媒は、溶媒に含まれるNa、Ca又はFeの各含有率が、上述した本発明の特定の値の範囲であると、本発明所望の効果が顕著に得られる。
【0159】
<容器>
本発明の処理液は、(キットであるか否かに関わらず)腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、そして使用することができる。容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。使用可能な容器としては、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、コダマ樹脂工業(株)製の「ピュアボトル」などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
容器の接液部は、非金属材料、又は、ステンレス鋼により形成されたものであることが好ましい。
【0161】
非金属材料としては、上述した蒸留塔の接液部に用いられる非金属材料で例示した材料が挙げられる。特に、上記のなかでも、接液部がフッ素樹脂である容器を用いる場合、接液部がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン−ポリプロピレン樹脂である容器を用いる場合と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
【0162】
このような接液部がフッ素樹脂である容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3−502677号公報の第4頁等、国際公開第2004/016526号の第3頁等、及び、国際公開第99/46309号の第9頁及び16頁等に記載の容器も用いることができる。なお、非金属材料の接液部とする場合、非金属材料中の処理液への溶出が抑制されていることが好ましい。
【0163】
容器としては、処理液と接触する接液部が、ステンレス鋼から形成されることも好ましく、電解研磨されたステンレス鋼から形成されることがより好ましい。
【0164】
上記容器に処理液を収容した場合、容器内で保管される処理液中に、不純物金属、及び/又は、有機不純物がより溶出しにくい。
【0165】
上記ステンレス鋼の形態としては、蒸留塔の接液部の材質として既に説明したとおりである。また、電解研磨されたステンレス鋼についても同様である。
【0166】
上記容器の接液部を形成するステンレス鋼中におけるCr/Fe比としては、タンクの接液部のCr/Fe比としてすでに説明したとおりである。
【0167】
これらの容器は、充填前に容器内部を洗浄することが好ましい。洗浄に使用される液体は、特に限定されないが、金属含有率が0.001質量ppt(parts per trillion)未満であることが好ましい。また、用途に応じて、後述する水の他、他の有機溶剤を精製して金属含有率を上記の範囲にしたもの、又は、本発明の処理液そのもの、又は、本発明の処理液を希釈したもの、又は、本発明の処理液に添加している化合物の少なくとも1種を含む液体であると、本発明の効果が顕著に得られる。
【0168】
上記処理液は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。ガロン瓶はガラス材料を使用したものであってもそれ以外であってもよい。
【0169】
保管における溶液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(チッソ、又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、−20℃から30℃の範囲に温度制御してもよい。
【0170】
また、容器を洗浄する前に各種容器のふたを酸や有機溶媒で洗浄するなどしてふたに付着している異物の除去をすることで、ふたからの異物混入を防げるために好ましい。
【0171】
[水]
本発明に関連して使用される水、例えば、本発明の処理液の製造工程において使用され得る水、本発明のパターン形成工程において使用され得る水、本発明の処理液の収容容器の洗浄に用い得る水、本発明の処理液の成分測定や本発明の効果に係わる欠陥抑制性能及びリソ性能の評価のための測定に使用され得る水は、半導体製造に使用される超純水を用いることが好ましい。また、その超純水をさらに精製し、無機陰イオンや金属イオンなどを低減させた水を用いることがより好ましい。精製方法は特に限定されないが、ろ過膜やイオン交換膜を用いた精製や、蒸留による精製が好ましい。また、例えば、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行なうことが好ましい。
【0172】
これら水は、一形態において、金属含有率が0.001質量ppt(parts per trillion)未満であることが好ましい。
【0173】
[クリーンルーム]
本発明の処理液の調整や、収容容器の開封及び/又は洗浄、処理液の充填などを含めた取り扱いや、処理分析、及び測定は全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644−1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISOクラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、ISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1、ISOクラス2を満たすことが好ましく、ISOクラス1であることが特に好ましい。
【0174】
[処理液の用途]
本発明の処理液は、半導体製造用に好ましく用いられる。具体的には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等を含有する半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、又は、次の工程に移る前に、有機物を処理するために使用され、具体的にはプリウェット液、現像液、リンス液、及び、剥離液等として好適に用いられる。例えばレジスト塗布前後の半導体基板のエッジエラインのリンスにも使用することができる。
【0175】
また、上記処理液は、半導体製造用に用いられる各種処理液を製造するための装置の洗浄液としても用いることができる。
【0176】
また、上記処理液は、レジスト液(後述する)に含有される樹脂の希釈液としても用いることができる。すなわち、感活性光線性又は感放射線性組成物に含有される溶剤としても用いることができる。
【0177】
また、上記処理液は、半導体製造用以外の他の用途でも好適に用いることができ、ポリイミド、センサー用レジスト、レンズ用レジスト等の現像液、及び、リンス液等としても使用することができる。
【0178】
また、上記処理液は、医療用途又は洗浄用途の溶媒としても用いることができる。特に、容器、配管、及び、基板(例えば、ウェハ、及び、ガラス等)等の洗浄に好適に用いることができる。
【0179】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、感活性光線又は感放射線性組成物(以下「レジスト組成物」ともいう。)を基板に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜(以下、「レジスト膜」ともいう。)を形成するレジスト膜形成工程と、上記レジスト膜を露光する露光工程と、上記レジスト組成物を塗布する前の基板、又は、露光された上記レジスト膜を上述した処理液によって処理する処理工程と、を含む。
【0180】
以下、本発明のパターン形成方法が含む各工程について説明する。また、本発明の処理液を用いた処理工程の一例として、プリウェット工程、現像工程及びリンス工程のそれぞれについて説明する。
【0181】
<プリウェット工程>
本発明のパターン形成方法は、感活性光線性又は感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程の前に、塗布性を改良する為に、基板上にプリウェット液を予め塗布するプリウェット工程を含んでいてもよい。例えば、プリウェット工程については特開2014−220301号公報に記載があり、これらが援用される。
【0182】
<レジスト膜形成工程>
レジスト膜形成工程は、感活性光線性又は感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程であり、例えば次の方法により行うことができる。
【0183】
感活性光線性又は感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性組成物膜)を形成するためには、後述する各成分を溶剤に溶解して感活性光線性又は感放射線性組成物を調製し、必要に応じてフィルターろ過した後、基板上に塗布する。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0184】
感活性光線性又は感放射線性組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー等の適当な塗布方法により塗布される。その後、乾燥し、レジスト膜を形成する。必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、反射防止膜)を形成してもよい。
【0185】
乾燥方法としては、加熱して乾燥する方法が一般的に用いられる。加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0186】
加熱温度は80〜180℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましく、80〜140℃で行うことが更に好ましく、80〜130℃で行うことが特に好ましい。加熱時間は30〜1000秒が好ましく、60〜800秒がより好ましく、60〜600秒が更に好ましい。
【0187】
レジスト膜の膜厚は、一般的には200nm以下であり、好ましくは100nm以下である。
例えば30nm以下のサイズの1:1ラインアンドスペースパターンを解像させるためには、形成されるレジスト膜の膜厚が50nm以下であることが好ましい。膜厚が50nm以下であれば、後述する現像工程を適用した際に、パターン倒れがより起こりにくくなり、より優れた解像性能が得られる。
【0188】
膜厚の範囲としてより好ましくは、15nmから45nmの範囲である。膜厚が15nm以上であれば、十分なエッチング耐性が得られる。膜厚の範囲として更に好ましくは、15nmから40nmである。膜厚がこの範囲にあると、エッチング耐性とより優れた解像性能とを同時に満足させることができる。
【0189】
なお、本発明のパターン形成方法においては、レジスト膜の上層に上層膜(トップコート膜)を形成してもよい。上層膜は、例えば、疎水性樹脂、酸発生剤、塩基性化合物を含有する上層膜形成用組成物を用いて形成することができる。上層膜及び上層膜形成用組成物については、後述のとおりである。
【0190】
<露光工程>
露光工程は、上記レジスト膜を露光する工程であり、例えば次の方法により行うことができる。
上記のようにして形成したレジスト膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射する。なお、電子ビームの照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。
【0191】
活性光線又は放射線としては特に限定されないが、例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV光(Extreme Ultra Violet)、電子線(EB、Electron Beam)等である。露光は液浸露光であってもよい。
【0192】
<ベーク>
本発明のパターン形成方法においては、露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターン形状がより良好となる。
加熱温度は80〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、80〜130℃が更に好ましい。
加熱時間は30〜1000秒が好ましく、60〜800秒がより好ましく、60〜600秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0193】
<現像工程>
現像工程は、露光された上記レジスト膜を現像液によって現像する工程である。
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、通常は10〜300秒であり、好ましくは20〜120秒である。
現像液の温度は0〜50℃が好ましく、15〜35℃がより好ましい。
現像工程で用いられる現像液としては、上述した処理液を用いることが好ましい。現像液については、上述した通りである。処理液を用いた現像に加えて、アルカリ現像液による現像を行ってもよい(いわゆる二重現像)。
【0194】
<リンス工程>
リンス工程は、上記現像工程の後にリンス液によって洗浄(リンス)する工程である。
リンス工程においては、現像を行ったウエハを上記のリンス液を用いて洗浄処理する。
【0195】
洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転吐出法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転吐出方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0196】
リンス時間には特に制限はないが、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは10秒〜180秒であり、最も好ましくは20秒〜120秒である。
リンス液の温度は0〜50℃が好ましく、15〜35℃が更に好ましい。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0197】
さらに、現像処理又はリンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する溶剤を除去するために加熱処理を行うことができる。加熱温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40〜160℃である。加熱温度は50〜150℃が好ましく、50〜110℃が最も好ましい。加熱時間に関しては良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されないが、通常15〜300秒であり、好ましくは、15〜180秒である。
【0198】
リンス液としては、上述した処理液を用いることが好ましい。リンス液の説明については、上述した通りである。
【0199】
本発明のパターン形成方法は、上述した通り、現像液、リンス液及びプリウェット液のいずれか1つが上述した本発明の処理液であればよいが、現像液、リンス液及びプリウェット液のいずれか2つが本発明の処理液であってもよく、現像液、リンス液及びプリウェット液の3つが本発明の処理液であってもよい。
【0200】
本発明のパターン形成方法において用いられる処理液と感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物とは、一形態において、以下の関係を満たすものが好ましい。
すなわち、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜の、本発明の処理液に対する溶解速度が、0.0016〜3.33nm/秒である関係を満たす感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物と本発明の処理液を使用することが好ましい。
【0201】
ここで、感活性光線性又は感放射線性膜の本発明の処理液に対する溶解速度とは、露光後の感活性光線性又は感放射線性膜を成膜した後に本発明の処理液に浸漬させた際の膜厚の減少速度であり、本発明では23℃における溶解速度とする。この溶解速度は、0.0
016〜1.6nm/秒であることがより好ましく、0.16〜1.0nm/秒であることが更に好ましい。
【0202】
<感活性光線性又は感放射線性組成物(レジスト組成物)>
次に、本発明の処理液を組み合わせて用いることが好ましい感活性光線性又は感放射線性組成物について詳細に説明する。
【0203】
(A)樹脂
本発明の処理液と組み合わせて用いることが好ましい感活性光線性又は感放射線性組成物としては、樹脂(A)を含有することが好ましい。樹脂(A)は、少なくとも(i)酸の作用により分解してカルボキシル基を生じる基を有する繰り返し単位(更に、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有してもよい)、又は、少なくとも(ii)フェノール系水酸基を有する繰り返し単位を有する。
【0204】
なお、酸の作用により分解してカルボキシル基を有する繰り返し単位を有すると、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0205】
樹脂(A)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0206】
【化3】
【0207】
式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
【0208】
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0209】
は、単結合又はアルキレン基を表す。
【0210】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
【0211】
nは、1〜5の整数を表す。
【0212】
一般式(I)におけるR41、R42、R43のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0213】
一般式(I)におけるR41、R42、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していてもよいシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜8個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
【0214】
一般式(I)におけるR41、R42、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0215】
一般式(I)におけるR41、R42、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0216】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0217】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0218】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0219】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;等が挙げられる。
【0220】
により表わされる−CONR64−(R64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
【0221】
としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
【0222】
におけるアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
【0223】
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜18の芳香環基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
【0224】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0225】
樹脂(A)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、好ましくは、下記一般式(p1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0226】
【化4】
【0227】
一般式(p1)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。一般式(p1)中のRとしては水素原子が特に好ましい。
【0228】
一般式(p1)におけるArは芳香族環を表し、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの炭素数6〜18の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環ヘテロ環を挙げることができる。中でも、ベンゼン環が最も好ましい。
一般式(p1)におけるmは、1〜5の整数を表し、好ましくは1である。
【0229】
以下、樹脂(A)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0230】
【化5】
【0231】
【化6】
【0232】
【化7】
【0233】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0〜50モル%が好ましく、より好ましくは0〜45モル%、更に好ましくは0〜40モル%である。
【0234】
樹脂(A)が有する酸の作用により分解してカルボキシル基を生じる基を有する繰り返し単位は、カルボキシル基の水素原子が酸の作用により分解して脱離する基で置換された基を有する繰り返し単位である。
【0235】
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
【0236】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0237】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0238】
樹脂(A)が有する、酸の作用により分解してカルボキシル基を生じる基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0239】
【化8】
【0240】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0241】
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
【0242】
Rx〜Rxは、各々独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。ただし、Rx〜Rxの全てがアルキル基(直鎖若しくは分岐)である場合、Rx〜Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
【0243】
Rx〜Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0244】
Xaにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は−CH−R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子など)、ヒドロキシル基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。Xaは、一態様において、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基等である。
【0245】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
【0246】
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH−基、−(CH−基、−(CH−基がより好ましい。
【0247】
Rx〜Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
【0248】
Rx〜Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0249】
Rx〜Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
【0250】
Rx〜Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0251】
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0252】
上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0253】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。より好ましくは、Rx〜Rxが各々独立に、直鎖又は分岐のアルキル基を表す繰り返し単位であり、更に好ましくは、Rx〜Rxが各々独立に、直鎖のアルキル基を表す繰り返し単位である。
【0254】
樹脂(A)が有する、酸の作用により分解してカルボキシル基を生じる基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0255】
具体例中、Rx、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbは各々炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは、極性基を含む置換基を表し、複数存在する場合は各々独立である。pは0又は正の整数を表す。Zにより表される極性基を含む置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基又はスルホンアミド基を有する、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、水酸基を有するアルキル基である。分岐状アルキル基としてはイソプロピル基が特に好ましい。
【0256】
【化9】
【0257】
酸の作用により分解してカルボキシル基を生じる基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15〜90モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましく、25〜80モル%が更に好ましく、30〜70モル%が更により好ましい。
【0258】
樹脂(A)は、更にラクトン基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。
【0259】
下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては一般式(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)で表される基である。
【0260】
【化10】
【0261】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0262】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0263】
【化11】
【0264】
一般式(AII)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0265】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0266】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0267】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0268】
【化12】
【0269】
【化13】
【0270】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜65モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、5〜25モル%が更に好ましく、5〜20モル%が更により好ましい。
【0271】
樹脂(A)は、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を更に有することができる。
これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。
極性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0272】
【化14】
【0273】
樹脂(A)は、更にスルトン基を有する繰り返し単位を含有していても良い。
樹脂(A)が、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、5〜25モル%が更に好ましくは、5〜20モル%が更により好ましい。
【0274】
更に、上記以外の繰り返し単位として、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(光酸発生基)を有する繰り返し単位を含むこともできる。この場合、この光酸発生基を有する繰り返し単位が、後述する活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)にあたると考えることができる。
【0275】
このような繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0276】
【化15】
【0277】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合又は2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。Wは、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0278】
以下に、一般式(4)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0279】
【化16】
【0280】
そのほか、一般式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014−041327号公報の段落[0094]〜[0105]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0281】
樹脂(A)が光酸発生基を有する繰り返し単位を含有する場合、光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜35モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0282】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0283】
反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤;後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどの感活性光線性又は感放射線性組成物を溶解する溶媒;等が挙げられる。より好ましくは感活性光線性又は感放射線性組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0284】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。
【0285】
反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0286】
精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法や、濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
【0287】
樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
【0288】
樹脂(A)の重量平均分子量の特に好ましい別の形態は、GPC法によるポリスチレン換算値で3,000〜9,500である。重量平均分子量を3,000〜9,500にすることにより、特にレジスト残渣(以降、「スカム」ともいう)が抑制され、より良好なパターンを形成することができる。
【0289】
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0290】
感活性光線性又は感放射線性組成物において、樹脂(A)の含有量は、全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
【0291】
また、感活性光線性又は感放射線性組成物において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0292】
また、樹脂(A)は、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0293】
【化17】
【0294】
一般式(VI)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(VI−A)で表される構造がより好ましい。
【0295】
【化18】
【0296】
ここで、L及びLは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルキレン基とアリール基とを組み合わせた基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
上記一般式(VI)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0297】
【化19】
【0298】
一般式(3)において、
Arは、芳香環基を表す。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
、M及びRの少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
Arが表す芳香環基は、上記一般式(VI)におけるnが1である場合の、上記一般式(VI)におけるArと同様であり、より好ましくはフェニレン基、ナフチレン基であり、更に好ましくはフェニレン基である。
【0299】
以下に一般式(VI)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0300】
【化20】
【0301】
【化21】
【0302】
樹脂(A)は、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0303】
【化22】
【0304】
一般式(4)中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R42はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表し、R42と環を形成する場合には3価の連結基を表す。
44及びR45は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
、M及びR44の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
41、R42及びR43は、前述の一般式(V)中のR51、R52、R53と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
は、前述の一般式(V)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0305】
44及びR45は、前述の一般式(3)中のRと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
は、前述の一般式(3)中のMと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
は、前述の一般式(3)中のQと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
、M及びR44の少なくとも二つが結合して形成される環としては、Q、M及びRの少なくとも二つが結合して形成される環があげられ、また好ましい範囲も同様である。
【0306】
以下に一般式(4)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0307】
【化23】
【0308】
また、樹脂(A)は、下記一般式(BZ)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0309】
【化24】
【0310】
一般式(BZ)中、ARは、アリール基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとARとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
【0311】
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキルオキシカルボニル基を表す。
【0312】
以下に、一般式(BZ)により表される繰り返し単位の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0313】
【化25】
【0314】
【化26】
【0315】
上記酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0316】
樹脂(A)における酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、上記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、5モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上65モル%以下であることが更に好ましい。
【0317】
樹脂(A)は、下記一般式(V)又は下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を含有してもよい。
【0318】
【化27】
【0319】
式中、
及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(−OCOR又は−COOR:Rは炭素数1〜6のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又はカルボキシル基を表す。
は0〜6の整数を表す。
は0〜4の整数を表す。
はメチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
【0320】
一般式(V)又は一般式(VI)で表される繰り返し単位の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。
【0321】
【化28】
【0322】
樹脂(A)は、更に、側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を更に有していても良い。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位としては、例えば、珪素原子を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、珪素原子を有するビニル系繰り返し単位などが挙げられる。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位は、典型的には、側鎖に珪素原子を有する基を有する繰り返し単位であり、珪素原子を有する基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリストリメチルシロキシシリル基、トリストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシロキシシリル基、ジメチルトリメチルシリルシリル基、ジメチルトリメチルシロキシシリル基、または下記のような環状もしくは直鎖状ポリシロキサン、またはカゴ型あるいははしご型もしくはランダム型シルセスキオキサン構造などが挙げられる。式中、R、及び、R1は各々独立に、1価の置換基を表す。*は、結合手を表す。
【0323】
【化29】
【0324】
上記の基を有する繰り返し単位は、例えば、上記の基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物に由来する繰り返し単位や、上記の基とビニル基とを有する化合物に由来する繰り返し単位を好適に挙げることができる。
【0325】
珪素原子を有する繰り返し単位は、シルセスキオキサン構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、これにより、超微細(例えば、線幅50nm以下)であり、かつ、断面形状が高アスペクト比(例えば、膜厚/線幅が3以上)のパターンの形成において、非常に優れた倒れ性能を発現することができる。
【0326】
シルセスキオキサン構造としては、例えば、カゴ型シルセスキオキサン構造、はしご型シルセスキオキサン構造(ラダー型シルセスキオキサン構造)、ランダム型シルセスキオキサン構造などが挙げられる。なかでも、カゴ型シルセスキオキサン構造が好ましい。
【0327】
ここで、カゴ型シルセスキオキサン構造とは、カゴ状骨格を有するシルセスキオキサン構造である。カゴ型シルセスキオキサン構造は、完全カゴ型シルセスキオキサン構造であっても、不完全カゴ型シルセスキオキサン構造であってもよいが、完全カゴ型シルセスキオキサン構造であることが好ましい。
【0328】
また、はしご型シルセスキオキサン構造とは、はしご状骨格を有するシルセスキオキサン構造である。
また、ランダム型シルセスキオキサン構造とは、骨格がランダムのシルセスキオキサン構造である。
【0329】
上記カゴ型シルセスキオキサン構造は、下記式(S)で表されるシロキサン構造であることが好ましい。
【0330】
【化30】
【0331】
上記式(S)中、Rは、1価の有機基を表す。複数あるRは、同一であっても、異なってもよい。
【0332】
上記有機基は特に制限されないが、具体例としては、 ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、ブロック化メルカプト基(例えば、アシル基でブロック(保護)されたメルカプト基)、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ビニル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基、(メタ)アクリル基含有基およびエポキシ基含有基などが挙げられる。
【0333】
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0334】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
【0335】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0336】
樹脂(A)が、上記側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜30モル%が好ましく、5〜25モル%が更に好ましくは、5〜20モル%が更により好ましい。
【0337】
(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(光酸発生剤)
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤《PAG:Photo Acid Generator》」ともいう)を含有することが好ましい。
【0338】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であっても良く、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
【0339】
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
【0340】
光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれても良く、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
【0341】
本発明において、光酸発生剤が、低分子化合物の形態であることが好ましい。
【0342】
光酸発生剤としては、公知のものであれば特に限定されないが、活性光線又は放射線、好ましくは電子線又は極紫外線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、又はトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
【0343】
より好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0344】
【化31】
【0345】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0346】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0347】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
【0348】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0349】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。
【0350】
各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0351】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0352】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0353】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0354】
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0355】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐(例えば、PF)、弗素化硼素(例えば、BF)、弗素化アンチモン(例えば、SbF)等を挙げることができる。
【0356】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0357】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0358】
また、非求核性アニオンとしては、以下の一般式(AN1)で表されるアニオンも好ましい態様として挙げられる。
【0359】
【化32】
【0360】
式中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
【0361】
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状の有機基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0362】
一般式(AN1)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0363】
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfの具体的としては、フッ素原子、CF、C、C、C、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもフッ素原子、CFが好ましい。
特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0364】
、Rのアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R、Rの置換基を有するアルキル基の具体例としては、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0365】
、Rとしては、好ましくはフッ素原子又はCFである。
xは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。
zは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0366】
Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が連結した連結基などを挙げることができ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−が好ましく、―COO−、−OCO−がより好ましい。
【0367】
上記一般式(ANI)において、A以外の部分構造の組み合わせとして、SO3−−CF−CH−OCO−、SO3−−CF−CHF−CH−OCO−、SO3−−CF−COO−、SO3−−CF−CF−CH−、SO3−−CF−CH(CF)−OCO−が好ましいものとして挙げられる。
【0368】
Aの環状の有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)等が挙げられる。
【0369】
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、露光後加熱工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF(mask error enhancement factor)向上の観点から好ましい。
【0370】
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。
【0371】
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環由来のものが挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環由来のものが好ましい。
【0372】
また、環状の有機基としては、ラクトン構造も挙げることができ、具体例としては、下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造を挙げることができる。
【0373】
【化33】
【0374】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0375】
なお、上記置換基は、上記(LC1−1)〜(LC1−17)においてはRb2に相当する。また、上記(LC1−1)〜(LC1−17)において、n2は0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0376】
一般式(ZI)において、R201、R202及びR203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
【0377】
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。R201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基等を挙げることができる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0378】
次に、一般式(ZII)、(ZIII)について説明する。
【0379】
一般式(ZII)、(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0380】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R204〜R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
【0381】
204〜R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
【0382】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0383】
また、一般式(ZII)において、Zは非求核性アニオンを表す。具体的には、一般式(ZI)においてZとして説明したものと同じであり、好ましい形態も同じである。
【0384】
以下、一般式(ZI)〜(ZIII)の具体例を示すが、これに限定されない。
【0385】
【化34】
【0386】
本発明においては、上記光酸発生剤は、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し解像性を良好にする観点から、電子線又は極紫外線の照射により、体積130Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であってもよく、体積190Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることがより好ましく、体積270Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが更に好ましく、体積400Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが特に好ましい。ただし、感度や塗布溶剤溶解性の観点から、上記体積は、2000Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることが更に好ましい。上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求めた。すなわち、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算することができる。
【0387】
本発明においては、活性光線又は放射線の照射により以下に例示する酸を発生する光酸発生剤が好ましい。なお、例の一部には、体積の計算値を付記している(単位Å)。なお、ここで求めた計算値は、アニオン部にプロトンが結合した酸の体積値である。
【0388】
【化35】
【0389】
【化36】
【0390】
【化37】
【0391】
光酸発生剤としては、特開2014−41328号公報段落[0368]〜[0377]、特開2013−228681号公報段落[0240]〜[0262](対応する米国特許出願公開第2015/004533号明細書の[0339])が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、好ましい具体例として以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0392】
【化38】
【0393】
【化39】
【0394】
【化40】
【0395】
【化41】
【0396】
光酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0397】
光酸発生剤の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは8〜40質量%である。特に、電子線や極紫外線露光の際に高感度化、高解像性を両立するには光酸発生剤の含有率は高いほうが好ましく、更に好ましくは10〜40質量%、最も好ましくは10〜35質量%である。
【0398】
(C)溶剤
上述した各成分を溶解させて感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際には、溶剤を使用できる。使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有してもよいモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0399】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
【0400】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0401】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
【0402】
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0403】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0404】
炭素数4〜10の、環を含有してもよいモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0405】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
【0406】
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
【0407】
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
【0408】
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
【0409】
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0410】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
【0411】
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
【0412】
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
【0413】
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0414】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0415】
溶剤としては、例えば特開2014−219664号公報の段落0013〜0029に記載の溶媒も使用できる。
【0416】
(D)塩基性化合物
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物(D)を含有することが好ましい。
【0417】
塩基性化合物(D)としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0418】
【化42】
【0419】
一般式(A)及び(E)中、 R200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜20)を表し、ここで、R201
202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0420】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203、R204、R205及びR206 は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
【0421】
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0422】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0423】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0424】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
【0425】
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
【0426】
また、アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0427】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
【0428】
アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0429】
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0430】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
【0431】
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0432】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、フェノキシ基を有する1又は2級アミンとハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得ることができる。又は、1又は2級アミンと末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得ることができる。
(プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA))
本発明に係る組成物は、塩基性化合物として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物〔以下、化合物(PA)ともいう〕を更に含んでいてもよい。
【0433】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0434】
【化43】
【0435】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1〜3級アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラジン構造などを挙げることができる。
【0436】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで、プロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
【0437】
化合物(PA)の具体例としては、例えば、下記化合物を挙げることができる。更に、化合物(PA)の具体例としては、例えば、特開2014−41328号公報の段落0421〜0428、特開2014−134686号公報の段落0108〜0116に記載されたものを援用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0438】
【化44】
【0439】
【化45】
【0440】
【化46】
【0441】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
塩基性化合物の使用量は、感活性光線性又は感放射線性組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0442】
光酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0443】
塩基性化合物としては、例えば、特開2013−11833号公報の段落0140〜0144に記載の化合物(アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等)を用いることができる。
【0444】
(A’)疎水性樹脂
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記樹脂(A)とは別に疎水性樹脂(A’)を有していてもよい。
【0445】
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0446】
疎水性樹脂を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角の制御、アウトガスの抑制などを挙げることができる。
【0447】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することが更に好ましい。また、上記疎水性樹脂は、炭素数5以上の炭化水素基を含有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0448】
疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0449】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0450】
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0451】
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0452】
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0453】
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948A1の段落0519に例示されたものを挙げることが出来る。
【0454】
また、上記したように、疎水性樹脂は、側鎖部分にCH部分構造を含むことも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH部分構造には、エチル基、プロピル基等が有するCH部分構造を包含するものである。
【0455】
一方、疎水性樹脂の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に包含されないものとする。
【0456】
疎水性樹脂に関しては、特開2014−010245号公報の[0348]〜[0415]の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、疎水性樹脂としてはこの他にも特開2011−248019号公報、特開2010−175859号公報、特開2012−032544号公報記載のものも好ましく用いることができる。
【0457】
(E)界面活性剤
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、界面活性剤(E)を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
【0458】
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
【0459】
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製);GF−300若しくはGF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0460】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
【0461】
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0462】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0463】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%、更に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0464】
(F)その他の添加剤
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又はカルボキシ基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0465】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。
【0466】
ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0467】
[上層膜(トップコート膜)]
本発明のパターン形成方法においては、レジスト膜の上層に上層膜(トップコート膜)を形成してもよい。
上層膜は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
【0468】
上層膜については、特に限定されず、従来公知の上層膜を、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014−059543号公報の段落0072〜0082の記載に基づいて上層膜を形成できる。上層膜の形成材料は、特開2014−059543号公報の段落0072に記載されるポリマーの他に、疎水性樹脂等も用いることができる。疎水性樹脂は、例えば、上述する疎水性樹脂(A’)を用いることができる。
【0469】
現像工程において、有機溶剤を含有する現像液を使用する場合は、例えば、特開2013−61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含有する上層膜をレジスト膜上に形成することが好ましい。上層膜が含み得る塩基性化合物の具体的な例は、塩基性化合物(E)が挙げられる。
【0470】
また、上層膜は、エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物を含むことが好ましい。
【0471】
更に、上層膜は、光酸発生剤を含んでいてもよい。光酸発生剤としては、感活性光線性又は感放射線性組成物に含まれ得る光酸発生剤(例えば、上述した光酸発生剤(B))と同様のものを使用することができる。
【0472】
以下、上層膜(トップコート膜)に使用されることが好ましい樹脂について説明する。
【0473】
(樹脂)
上層膜形成用組成物は樹脂を含有することが好ましい。上層膜形成用組成物が含有することができる樹脂としては、特に限定されないが、感活性光線性又は感放射線性組成物に含まれ得る疎水性樹脂(例えば、上述した疎水性樹脂(A’))と同様のものを使用することができる。
【0474】
疎水性樹脂に関しては、特開2013−61647号公報の[0017]〜[0023](対応する米国公開特許公報2013/244438号の[0017]〜[0023])、及び特開2014−56194号公報の[0016]〜[0165]の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0475】
本発明において、上層膜形成用組成物は、芳香環を有する繰り返し単位を含有する樹脂を含むことが好ましい。芳香環を有する繰り返し単位を含有することで、特に電子線またはEUV露光の際に、二次電子の発生効率、及び活性光線又は放射線により酸を発生する化合物からの酸発生効率が高くなり、パターン形成時に高感度化、高解像化の効果が期待できる
樹脂の重量平均分子量は好ましくは3000〜100000であり、更に好ましくは3000〜30000であり、最も好ましくは5000〜20000である。上層膜形成用組成物中の樹脂の配合量は、全固形分中、50〜99.9質量%が好ましく、60〜99.0質量%がより好ましく、70〜99.7質量%が更に好ましく、80〜99.5質量%が更により好ましい。
【0476】
上層膜形成用組成物(トップコート組成物)が複数の樹脂を含む場合、フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0477】
樹脂(XA)に含有されるフッ素原子及び珪素原子の含有量の好ましい範囲は、フッ素原子及び又はケイ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(XA)中10〜100質量%であることが好ましく、10〜99モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがより好ましい。
【0478】
また、フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種、及び、フッ素原子及び/又は珪素原子の含有率が樹脂(XA)より小さい樹脂(XB)を上層膜形成用組成物が含むことがより好ましい。これにより、上層膜を形成した際に、樹脂(XA)が上層膜の表面に偏在するため、現像特性や液浸液追随性などの性能を改良させることができる。
【0479】
樹脂(XA)の含有量は、上層膜形成用組成物に含まれる全固形分を基準として、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜8質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。樹脂(XB)の含有量は、上層膜形成用組成物に含まれる全固形分を基準として、50.0〜99.9質量%が好ましく、60〜99.9質量%がより好ましく、70〜99.9質量%が更に好ましく、80〜99.9質量%が特に好ましい。
【0480】
樹脂(XB)としては、フッ素原子及び珪素原子を実質的に含有しない形態が好ましく、この場合、具体的には、フッ素原子を有する繰り返し単位及び珪素原子を有する繰り返し単位の合計の含有量が、樹脂(XB)中の全繰り返し単位に対して0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましく、0〜5モル%が更に好ましく、0〜3モル%が特に好ましく、理想的には0モル%、すなわち、フッ素原子及び珪素原子を含有しない。
<上層膜形成用組成物(トップコート組成物)の調製方法>
上層膜形成用組成物は、各成分を溶剤に溶解し、フィルターろ過することが好ましい。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。なお、フィルターは、複数種類を直列又は並列に接続して用いてもよい。また、組成物を複数回ろ過してもよく、複数回ろ過する工程が循環ろ過工程であっても良い。さらに、フィルターろ過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。上層膜形成用組成物は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる金属成分の含有量としては、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0481】
上述の<露光工程>において、露光を液浸露光とする場合、上層膜は、感活性光線性又は感放射線性膜と液浸液との間に配置され、感活性光線性又は感放射線性膜を直接、液浸液に接触させない層としても機能する。この場合、上層膜(上層膜形成用組成物)が有することが好ましい特性としては、感活性光線性又は感放射線性膜への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)に対する難溶性である。また、上層膜は、感活性光線性又は感放射線性膜と混合せず、さらに感活性光線性又は感放射線性膜の表面に均一に塗布できることが好ましい。
【0482】
なお、上層膜形成用組成物を、感活性光線性又は感放射線性膜の表面に、感活性光線性又は感放射線性膜を溶解せずに均一に塗布するために、上層膜形成用組成物は、感活性光線性又は感放射線性膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。感活性光線性又は感放射線性膜を溶解しない溶剤としては、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。
【0483】
上層膜形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができる。
上層膜の膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常5nm〜300nm、好ましくは10nm〜300nm、より好ましくは20nm〜200nm、更に好ましくは30nm〜100nmの厚みで形成される。
【0484】
上層膜を形成後、必要に応じて基板を加熱(PB)する。
上層膜の屈折率は、解像性の観点から、感活性光線性又は感放射線性膜の屈折率に近いことが好ましい。
上層膜は液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。
上層膜の後退接触角は、液浸液追随性の観点から、上層膜に対する液浸液の後退接触角(23℃)が50〜100度であることが好ましく、80〜100度であることがより好ましい。
【0485】
液浸露光においては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があることから、動的な状態における感活性光線性又は感放射線性膜に対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得るためには、上記範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0486】
上層膜を剥離する際は、有機系現像液を使用してもよいし、別途剥離液を使用してもよい。剥離液としては、感活性光線性又は感放射線性膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。上層膜の剥離が感活性光線性又は感放射線性膜の現像と同時にできるという点では、上層膜は、有機系現像液により剥離できることが好ましい。剥離に用いる有機系現像液としては、感活性光線性又は感放射線性膜の低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されない。
【0487】
有機系現像液で剥離するという観点からは、上層膜は有機系現像液に対する溶解速度が1〜300nm/secが好ましく、10〜100nm/secがより好ましい。
【0488】
ここで、上層膜の有機系現像液に対する溶解速度とは、上層膜を成膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチルに浸漬させた際の速度とする。
【0489】
上層膜の有機系現像液に対する溶解速度を1/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、感活性光線性又は感放射線性膜を現像した後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/secとすることによって、おそらくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、感活性光線性又は感放射線性膜を現像した後のパターンのラインエッジラフネスがより良好になるという効果がある。
【0490】
上層膜はその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去してもよい。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0491】
[半導体デバイスの製造方法]
本発明は、電子デバイスの製造方法に関するものでもある。本発明の半導体デバイスの製造方法は、上述したように、パターン形成工程において、現像液、リンス液及びプリウェット液のいずれかとして本発明の処理液を用いたものでもよいし、以下に説明するように、例えば、パターンを剥離するための剥離液等として本発明の処理液を用いたものでもよい。
【0492】
一般的な半導体素子の製造方法としては、まず、シリコン基板(例えば、イオン注入されたn型またはp型のシリコン基板)上にスパッタリング等の技術を用いて、高誘電率材料(例えば、HfSiO、ZiO、ZiSiO、Al、HfO、La)などで構成されるゲート絶縁膜や、ポリシリコンなどで構成されるゲート電極層などを形成する(被エッチング層形成工程)。次に、形成されたゲート絶縁膜や、ゲート電極層上に上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布する。上述したパターン形成方法によりパターンを得、このパターンをマスクとして非マスク領域をドライエッチングまたはウェットエッチングすることにより(エッチング工程)、ゲート絶縁膜やゲート電極層などを除去する。その後、イオン注入処理(イオン注入工程)において、イオン化したp型またはn型の不純物元素をシリコン基板に注入して、シリコン基板上にp型またはn型不純物注入領域(いわゆるソース/ドレイン領域)を形成する。その後、必要に応じて、アッシング処理(アッシング工程)が実施された後、基板上に残存したレジスト膜を剥離する処理が実施される。
【0493】
<剥離工程>
本発明の半導体デバイスの製造方法における剥離処理としては、特に限定されないが、枚葉式やバッチ式で行うことができる。枚葉式はウエハを1枚ずつ処理する方式である。枚葉式の実施形態の一つとしては、スピンコーターでウエハ表面全体に処理液を行き渡らせて処理する方法である。除去液の液温、除去液の吐出量、スピンコーターのウエハの回転数は、対象となる基板の選択によって、適した値に選択して用いられる。本実施形態においてレジスト剥離工程を行う条件は特に限定されないが、枚葉式の剥離工程が好ましい。枚葉式の剥離工程においては、半導体基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間に除去液を吐出、噴射、流下、滴下等して上記半導体基板に上記除去液を接触させる。必要に応じて、スピンコーターを用いて半導体基板を回転させながら除去液を噴霧してもよい。他方、バッチ式の剥離においては、除去液からなる液浴に半導体基板を浸漬させ、上記液浴内で半導体基板と除去液とを接触させる。これらの剥離方式は素子の構造や材料等により適宜使い分けられればよい。剥離を行う温度は、特に限定されないが、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。本発明の処理液は、比較的低温であっても、剥離を行う温度の下限値は、処理液が液体として存在する限り特に限定されないが、15℃以上で行うことが、製造時のスループットなどの点で好ましい。枚葉式処理の場合、除去液の供給速度は特に限定されないが、基板の大きさにもよるが、0.3〜3L/minとすることが好ましく、0.5〜2L/minとすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した性能を確保でき好ましい。基板を回転させるときには、その大きさ等にもよるが、上記と同様の観点から、100〜1000rpmで回転させることが好ましい。なお、ここでいう「温度」は、枚葉式処理の場合は処理基板の表面の温度、バッチ式処理の場合はバッチ内の除去液の液温である。
【0494】
本発明の半導体デバイスの製造方法により製造される電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0495】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」、「ppb」、「ppt」は質量基準である。
【0496】
<<半導体製造用処理液の調製>>
[実施例1〜21、比較例1〜2]
以下に、各種処理液の合成例を説明する。但し、下記合成例に限定されるものではなく、公知の方法を用いて合成することができる。
【0497】
<原料等の精製>
以下に示す各実施例で使用される各原料、各触媒は、純度99質量%以上の高純度グレードを用い、さらに事前に蒸留、イオン交換、ろ過等によって精製したものである。
【0498】
実施例で使用した超純水は、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行い、Na、Ca及びFeの各々の元素の含有率が、各処理液の全質量に対し、10質量ppt未満であることを後述するSNP−ICP−MS法による測定で確認した後、処理液の調整に用いた。
【0499】
処理液の調製、充填、保管、分析測定は全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。また、実施例において使用した容器は、本発明の処理液で事前に洗浄した後に用いた。
【0500】
<NMP(N−メチルピロリドン)含有処理液1A〜1Nの合成>
NMP含有処理液として、上述した合成方法に準拠した方法を用い、後掲の表1に示す処理液1A〜1Nを合成した。処理液1A、1C、1D、1J〜1Mについては、NMP含有粗液を後述する方法で精製した。
【0501】
得られたNMP含有処理液1A〜1E、1G〜1Nに含有される化合物(B)は、下記化合物であった(表2を参照)。
【0502】
【化47】
【0503】
NMP含有処理液1Fは、0.999999質量%のDMSO(ジメチルスルホキシド)との混合物であり、化合物(B)として下記化合物を含有していた(表2を参照)。
【0504】
【化48】
【0505】
<DMSO(ジメチルスルホキシド)含有処理液2A〜2Iの合成>
DMSO含有処理液として、上述した合成方法に準拠した方法を用い、後掲の表1に示すDMSO含有処理液2A〜2Iを合成した。処理液2A〜2C、2E〜2Hについては、DMSO含有粗液を後述する方法で精製した。
【0506】
得られたDMSO含有処理液2A〜2C、2E〜2Iに含有される化合物(B)は、下記化合物であった(表2を参照)。
【0507】
【化49】
【0508】
DMSO含有処理液2Dは、0.999999質量%のNMPとの混合物であり、化合物(B)として下記化合物を含有していた(表2を参照)。
【0509】
【化50】
【0510】
[SNP−ICP−MS法による測定]
1)標準物質の準備
清浄なガラス容器内へ超純水を計量投入し、メディアン径50nmの測定対象金属粒子を10000個/mlの濃度となるように添加した後、超音波洗浄機で30分間処理した分散液を輸送効率測定用の標準物質として用いた。
【0511】
2)使用したSNP−ICP−MS装置
メーカー:PerkinElmer
型式:NexION350S
3)SNP−ICP−MSの測定条件
SNP−ICP−MSはPFA製同軸型ネブライザ、石英製サイクロン型スプレーチャンバ、石英製内径1mmトーチインジェクタを用い、測定対象液を約0.2mL/minで吸引した。酸素添加量は0.1L/min、プラズマ出力1600W、アンモニアガスによるセルパージを行った。時間分解能は50usにて解析を行った。
【0512】
金属粒子の含有率及び金属原子の含有率は、メーカー付属の下記解析ソフトを用いて計測した。
・金属粒子の含有率:ナノ粒子分析“SNP−ICP−MS”専用Syngistix
ナノアプリケーションモジュール
・金属原子の含有率:Syngistix for ICP−MS ソフトウエア
結果を後掲の表1に示す。
【0513】
[化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)の含有率の測定]
各実施例及び各比較例で使用した各成分については、GC/MS(Gas Chromatograph/Mass Spectrometer)、LC/MS(Liquid Chromatograph/Mass Spectrometer)、NMR(Nuclear magnetic resonance)及びIC(Ion Chromatography)によって測定した。
[GC/MS](ガスクロマトグラフ質量分析計)
(測定条件)
装置:島津製作所社製 「GCMS−2020」
[LC/MS](液体クロマトグラフ質量分析計)
(測定条件)
装置:サーモフィーシャーズ社製
「UPLC−H−Class, Xevo G2−XS QTof」
[NMR](核磁気共鳴)
(測定条件)
装置:日本電子製 AL400型
測定核:
溶媒:CDCl3
[IC](イオンクロマトグラフィ)
(測定条件)
装置:島津製作所社製 「HIC−SP」。
【0514】
[レジスト膜の溶解速度(ER)の測定]
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その後に市販品FAiRS−9101A12(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製ArFレジスト組成物)をスピンコーターを用いて塗布し、100℃で、60秒間ベークを行った。得られたウエハーをArFエキシマレーザースキャナー(NA0.75)を用い、25[mJ/cm]でウエハ全面露光を行った。その後120℃で、60秒間加熱した。このウエハを2cm×2cmにカットして表1に記載の各処理液に、23℃において10分間浸漬した。浸漬前後の膜厚を光学式膜厚測定器エリプソメトリーにて測定し溶解速度(ER)を算出した。
結果を表1に示す。
【0515】
[欠陥抑制性能(欠陥数の測定)]
ウェハ表面検査装置(SP−5;KLA Tencor製)により、直径300mmのシリコン基板表面に存在する直径32nm以上のパーティクル(以下、これを「欠陥」という。)数を計測した。次いで、このシリコン基板をスピン吐出装置にセットし、回転させながら、同シリコン基板の表面へ、表1に記載の各種処理液を1.5L/minの流速で吐出した。その後、リンス処理を行い、乾燥した。得られた試料について、再び上記装置(SP−5)を用いてシリコン基板表面に存在する欠陥数の計測を行い、初期値との差分を欠陥数とした。得られた欠陥数を下記基準に基づき評価した結果を表1に示す。下記基準において、評価Cは、半導体製造用処理液として要求される欠陥の抑制性能を達成している。
【0516】
A:欠陥数が50個以下だった。
B:欠陥数が50個を超え、100個以下だった。
C:欠陥数が100個を超え、500個以下だった。
D:欠陥数が500個を超え、1000個以下だった。
E:欠陥数が1000個を超えた。
【0517】
[剥離性]
レジストの剥離性を評価するため、シリコンウエハー上にレジスト層を設け、露光、加熱した後の硬化膜を各処理液に浸漬し、硬化膜層の除去の程度を以下の方法で評価した。
【0518】
すなわち、PMR P−CA1000PM(TOK製レジスト)を、スピンコーターを用いてシリコンウエハーに塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、膜厚1μmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーを、露光機(FPA−3000(CANON社製)にて200[mJ/cm]でウエハ全面露光を行った。その後120℃で、60秒間加熱した。このウエハを2cm×2cmにカットした試料を、各処理液に5分間浸漬した。エリプソメトリー(分光エリプソメーター、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社 Vaseを使用した)を用いて浸漬処理前後の膜厚を測定することにより、各処理液により除去された膜の量を算出した(測定条件 測定範囲:1.2−2.5eV、測定角:70,75度)。評価においては、5点の平均値を採用した。結果を表1に示す。
【0519】
A:100%剥離
B:95%以上100%未満剥離
C:90%以上95%未満剥離
D:85%以上80%未満剥離
E:85%未満剥離
【0520】
【表1-1】
【0521】
【表1-2】
【0522】
【表2】
【0523】
<処理液1A、1C、1D、1J〜1M、2A〜2C、及び2E〜2Hの精製方法>
NMP含有粗液、及び、DMSO含有粗液を、以下に示す方法で精製することにより、表1に示す処理液1A、1C、1D、1J〜1M、2A〜2C、及び2E〜2Hを得た。
【0524】
精製方法として、上述した図2に示す製造装置に準じた構造を有する製造装置を使用し、蒸留工程の回数、若しくはろ過方法(ポアサイズ、材料)を選択することにより、純度が異なる処理液7B〜7D及び7F〜7Gを得た。ろ過方法としては、上記製造装置が備えるろ過装置に使用するフィルタとして、下記表3に示すフィルタを使用し、処理液の純度を調整した。
【0525】
尚、上記精製方法により粗液7aを精製する前に、上記製造装置を洗浄液で洗浄した。洗浄方法としては、洗浄液として、表1に示す処理液7E(シクロヘキサノン)を用い、上記フィルターにこの処理液7Eを通液させることを10回循環させ、これを1セットとして3セット繰り返すことにより行った。変更した薬液を精製した。
【0526】
【表3】
【0527】
表3において、Nylon、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、及びUPE(Ultra High Molcular Weight PolyEthylene)は、それぞれ、ナイロンを主成分とするフィルター、PTFEを主成分とするフィルター、及び、UPEを主成分とするフィルターを表す。また、IEX−PTFE sufric acid、IEX−PTFE carboxylic acid、及びIEX−PTFE Imidoにおいて、IEXとはイオン交換基を示し、それぞれ、PTFEの表面をスルホン酸、カルボン酸、又はイミドで修飾したフィルターを指す。
【0528】
<<レジストパターンの作製>>
[実施例101]
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その後、塗布性を改良する為に、表1に記載の処理液1Gを予めかけるプリウェット工程を行った。次いで、市販品FAiRS−9101A12(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製ArFレジスト組成物)をスピンコーターを用いて塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザースキャナー(NA0.75)を用い、25[mJ/cm]でパターン露光を行った。その後120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルで30秒間現像(ネガ型現像)し、得られたパターンをメチルイソブチルカルビノール(MIBC)でリンス洗浄し、L/Sパターンを得た。
【0529】
[実施例102]
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に市販品FAiRS−9101A12(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製ArFレジスト組成物)をスピンコーターを用いて塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザースキャナー(NA0.75)を用い、25[mJ/cm]でパターン露光を行った。その後120℃で、60秒間加熱した後、表1に記載の処理液1Gで30秒間現像(ネガ型現像)し、得られたパターンをメチルイソブチルカルビノール(MIBC)でリンス洗浄し、L/Sパターンを得た。
【0530】
[実施例103]
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に市販品FAiRS−9101A12(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製ArFレジスト組成物)をスピンコーターを用いて塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザースキャナー(NA0.75)を用い、25[mJ/cm]でパターン露光を行った。その後120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルで30秒間現像(ネガ型現像)し、得られたパターンを表1に記載の処理液1Gでリンス洗浄し、L/Sパターンを得た。
【0531】
[実施例104、105]
実施例102、103のパターン製造方法に対し、レジスト組成物を塗布する前にシクロヘキサノンを用いたプリウェット工程を行った以外は同様の方法で処理を行い、L/Sパターンを得た。
【0532】
[欠陥性能(欠陥数の測定)]
上述した実施例101〜105で得られたパターンについて、ウェハ上表面検査装置(SP−5;KLA Tencor製)により、基板表面に存在する直径32nm以上のパーティクル(以下、これを「欠陥」という。)数を計測した。得られた欠陥数を下記基準に基づき評価した結果を表4に示す。下記基準において、評価Cは、半導体製造用処理液として要求される欠陥の抑制能を達成している。
【0533】
A:欠陥数が0〜50以下
B:欠陥数が50超〜100以下
C:欠陥数が100超〜500個以下
D:欠陥数が500超〜1000以下
E:欠陥数が1000超
【0534】
【表4】
【0535】
<実施例301〜306>
後掲の表5に示す本発明の処理液を、下記に示す方法で精製したnBA(n−酢酸ブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート)及びCyHx(シクロヘキサノン)のいずれかと混合し、同表に示す処理液101〜106を調製した。これら処理液に対し、上述した方法と同じ方法で欠陥抑制性能を評価した。また、これらの処理液をプリウェット液として用いたときの省レジスト性を評価した。また、アッシング後又はp−CMP後にこれらの処理液をリンス液として用いた時の性能を評価した。結果を表5に示す。
【0536】
[酢酸ブチル含有処理液の精製]
(工程1)
酢酸及びn−ブタノールを、触媒としての硫酸の存在下、連続式の槽型反応器で予備反応させた。次いで、得られた反応液1aを、連続式の反応蒸留塔において、酢酸ブチル/n−ブタノール/水の共沸混合物として副生する水を蒸留塔の塔頂から系外に除去しながら反応させることにより、酢酸ブチルを含む粗液(以下、「酢酸ブチル粗液」という。)1bを得た。
【0537】
(工程2)
工程1で得られた酢酸ブチル粗液1bについて、硫酸分をアルカリ中和した。次いで、水で洗浄した後、水分の除去を行うことにより、酢酸ブチル粗液1cを取り出した。
【0538】
(工程3)
工程2で得られた酢酸ブチル粗液1cを中和水洗し、デカンターにより大部分の水及び硫酸を分離した。次いで、酢酸ブチル、n−ブタノール、水、硫酸及び微量の副生物を含む酢酸ブチル粗液1dを、不純物のn−ブタノール及び水等の低沸物を除去する目的で蒸留塔に供給した。その後、蒸留とフィルタリングを繰り返し、有機不純物濃度100質量ppb以下、金属量30質量ppt以下のn−酢酸ブチルを得た。
【0539】
[PGMEA含有処理液の精製]
(工程1)
プロピレンオキシド、メタノール、酢酸を、触媒として硫酸の存在下、公知の方法に従い、PGMEAの合成(2段階合成)を行った。そこでは、80℃で8時間の加熱処理を行い、PGMEAを含む粗液(以下、「PGMEA粗液」という。)2aを得た。
【0540】
(工程2)
工程1で得られたPGMEA粗液2aは、未反応のプロピレンオキシド、メタノール、酢酸、不純物としての置換異性体を含んでいる。
【0541】
このPGMEA粗液2aを精製する目的で蒸留塔に供給した。その後、蒸留とフィルタリングを繰り返し、有機不純物濃度100質量ppb以下、金属量30質量ppt以下のPGMEAを得た。
【0542】
[CyHx含有処理液の精製]
(工程1)
特開2007−63209号公報に記載の方法により、ベンゼンと塩素より、モノクロルベンゼンと塩化水素を得た。次いで、モノクロルベンゼンと水より、フェノールと塩化水素を得た。次いで、フェノールと水素より、シクロヘキサノンを含む粗液(以下、「シクロヘキサノン粗液」という。)7aを得た。
【0543】
(工程2)
工程1において、反応塔から得られたシクロヘキサノン粗液7aは、未反応のベンゼン、モノクロロベンゼン、フェノール等を含んでいる。
得られたシクロヘキサノン粗液7aを精製する目的で蒸留塔に供給した。その後、蒸留とフィルタリングを繰り返し、有機不純物濃度100質量ppb以下、金属量30質量ppt以下のシクロヘキサノンを得た。
【0544】
[省レジスト性]
各処理液をプリウェット溶液として用いた場合の省レジスト性を以下の方法により評価した。なお、本明細書において、優れた省レジスト性を有する、とは、優れた均一性と、優れた膜厚制御性とを有する状態を意味し、これによりリソ性能の悪化や欠陥の発生を抑制できることがわかる。
使用したレジスト組成物1は、下記の通りである。
【0545】
<レジスト組成物1>
下記に示す酸分解性樹脂、光酸発生剤、クエンチャー、疎水性樹脂及び溶剤を混合し、固形分濃度5質量%のレジスト組成物1を調製した。
下記に示す酸分解性樹脂:100質量部
【0546】
【化51】
【0547】
上記酸分解性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、7500であり、各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。
【0548】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0549】
【化52】
【0550】
下記に示す4種のクエンチャー:5質量部(合計)
【0551】
【化53】
【0552】
上記クエンチャーの質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2である。なお、上記の4種のクエンチャーのうち、右側のポリマータイプのものは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0553】
下記に示す2種の疎水性樹脂:4質量部(合計)
【0554】
【化54】
【0555】
上記疎水性樹脂の質量比は、左から順に、0.5:0.5である。なお、上記の2種の疎水性樹脂のうち、左側の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、右側の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0556】
溶剤:
PGMEA:3質量部
CyHx(シクロヘキサノン):600質量部
GBL(γ−ブチロラクトン):100質量部。
【0557】
<均一性>
まず、対照として、反射防止膜を備える直径約30cm(12インチ)のシリコンウェハ上に上記レジスト組成物1を直接塗布した。なお、塗布には、スピンコータ(商品名「LITHIUS」、東京エレクトロン社製)を用いた。得られたレジスト膜は90℃でベークした。ベーク後のレジスト膜について、大日本スクリーン社製膜厚測定装置Lambda Aceを用いて59ポイントmap測定して、塗布斑が発生していないことを確認した。なお、塗布斑とは、測定対象のレジスト膜から円状に59点の測定点を抽出し、各測定点におけるレジスト膜の厚みの測定結果を、測定点ごとに二次元的に配置して観察した場合に、レジスト膜の厚みにムラがない状態を意図する。
【0558】
次に、反射防止膜を備える直径約30cm(12インチ)のシリコンウェハを別に準備し、各処理液を滴下した。その後、対照と同量のレジスト組成物1を塗布して90℃でベークした。得られたレジスト膜について、上記と同様の方法で観察し、塗布斑が発生していないことを確認した。次に、使用するレジスト組成物1を対照の50質量%、及び、30質量%に減量して上記と同様の試験を行い、塗布斑が発生するかを調べた。
結果は以下の基準により評価し結果を表5に示した。
【0559】
AA:レジスト組成物の使用量を、対照の30質量%に減量した場合、及び、50質量%に減量した場合のいずれにおいても塗布斑が発生しなかった。
【0560】
A:レジスト組成物の使用量を、対照の50質量%に減量しても塗布斑は発生しなかったが、対照の30質量%に減量すると、塗布斑が発生した。
【0561】
B:レジスト組成物の使用量を対照の30質量%に減量した場合、及び、50質量%に減量した場合のいずれにおいても塗布斑が発生した。
【0562】
<膜厚制御性>
反射防止膜を備える直径約30cm(12インチ)のシリコンウェハ上に、各処理液を滴下した。その後、得られるレジスト膜の厚みが8.5nmとなるよう、上記レジスト組成物1を直接塗布した。なお、塗布には、スピンコータ(商品名「LITHIUS」、東京エレクトロン社製)を用いた。得られたレジスト膜は90℃でベークした。ベーク後のレジスト膜について、大日本スクリーン社製膜厚測定装置Lambda Aceを用いて59ポイントmap測定し、レジスト膜の厚みの標準偏差(以下「σ」ともいう。)を求めた。次に、標準偏差から3σを求めた。
結果は以下の基準により評価し、表5に示した。
【0563】
A:3σが0.15nm未満だった。
B:3σが0.15nm以上、0.2nm未満だった。
C:3σが0.2nm以上だった。
【0564】
〔アッシング除去後のリンス性能〕
シリコンウェハ上にレジスト組成物1を塗布し、露光(50mJ)、加熱(220℃)によって乾固したレジスト膜(膜厚0.5μm)を備える12インチウェハを準備した。次に、プラズマガスを用いて、上記レジスト膜を下記条件によりアッシング除去した。次いで、表5に示す各処理液(処理液101〜106)を用いて洗浄し、アッシング除去後の残渣(アッシング残渣)を除去した。その後、SP−2(KLA TENCOL社製)を用いて、洗浄後のウェハの欠陥数をカウントすることにより、アッシング残渣に対する各処理液のリンス性能を評価した。
[アッシング除去の条件]
ウェーハ温度:250℃
ガス流量:1,000sccm
圧力:70Pa
マイクロ波出力:1kW
−評価基準−
AA :欠陥数が50個以下だった。
A :欠陥数が50個を超え、80個以下だった。
B :欠陥数が80個を超え、100個以下だった。
C :欠陥数が100個を超え、150個以下だった。
D :欠陥数が150個を超えた。
【0565】
〔p−CMP後のリンス性能〕
CSL9044C(FFPS社製スラリー)で直径12インチのセマテック845(銅配線、バリアメタルTaN、酸化膜TEOS;セマテック社製)の表面を研磨して平坦化した。その後、BSL8178C(FFPS社製スラリー)で仕上げ研磨を行った。
次に、Clean100(和光純薬品)にて洗浄後、各処理液をリンス液として使用した。その後、パターン欠陥装置(AMAT社製 ComPLUS)を用いて、上記セマティック854のパターン上の欠陥数を測定した。結果は以下の基準により評価した。
【0566】
−評価基準−
AA :欠陥数が50個以下だった。
A :欠陥数が50個を超え、80個以下だった。
B :欠陥数が80個を超え、100個以下だった。
C :欠陥数が100個を超え、150個以下だった。
D :欠陥数が150個を超えた。
【0567】
【表5】
図1
図2