【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、:医療分野研究成果展開事業 戦略的イノベーション創出推進プログラム「マテリアル光科学の創成を基盤とする超バイオ機能表面構築技術の開拓」委託研究開発、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記の構成単位(B)が4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である請求項2に記載の滑り性付与剤。
前記の構成単位(B)が4−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である請求項2に記載の滑り性付与剤。
前記の構成単位(B)が4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である請求項2に記載の滑り性付与剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐久性を有する滑り性(特に、湿潤時滑り性)を基材に付与できる滑り性付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)と光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)とを含有する共重合体、または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)と光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)と疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)とを含有する共重合体を含有する滑り性付与剤が、光照射という簡便な手法にて基材表面に耐久性を有する滑り性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記を含む。
【0008】
〔1〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する共重合体を0.01〜5.0質量%含有する滑り性付与剤。
【化1】
【化2】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化3】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化4】
【化5】
【化6】
〔2〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する共重合体を0.01〜5.0質量%含有する滑り性付与剤。
【化7】
【化8】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化9】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式(7)中、nは3〜17である。)
〔3〕前記の構成単位(B)が4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンに基づく構成単位である前記の〔1〕に記載の滑り性付与剤。
〔4〕前記の構成単位(B)が4−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノンに基づく構成単位である前記の〔1〕に記載の滑り性付与剤。
〔5〕前記の構成単位(B)が4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔6〕前記の構成単位(B)が4−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔7〕前記の構成単位(B)が4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ステアリルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔8〕前記の構成単位(B)がメタクリル酸グリシジルに基づく構成単位である前記の〔1〕に記載の滑り性付与剤。
〔9〕前記の構成単位(B)がメタクリル酸グリシジルに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔10〕前記の構成単位(B)がメタクリル酸グリシジルに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ステアリルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔11〕前記の構成単位(B)が4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレンに基づく構成単位である前記の〔1〕に記載の滑り性付与剤。
〔12〕前記の構成単位(B)が4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ブチルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔13〕前記の構成単位(B)が4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレンに基づく構成単位であり、前記の構成単位(C)がメタクリル酸ステアリルに基づく構成単位である前記の〔2〕に記載の滑り性付与剤。
〔14〕以下の工程(1)〜(2)を含む基材表面の滑り性付与方法。
(1)前記の〔1〕〜〔13〕のいずれか一に記載の滑り性付与剤を基材表面にコーティングする工程
(2)前記(1)にてコーティングされた基材表面に光を照射して、該基材表面に架橋体を形成する工程
〔15〕前記の〔1〕〜〔13〕のいずれか一に記載の滑り性付与剤を、基材表面にコーティングした後、該基材表面に光照射して、該基材表面に架橋体を形成することを特徴とする架橋体の形成方法。
〔16〕前記の〔15〕に記載の架橋体の形成方法により得られた架橋体。
〔17〕前記の〔1〕〜〔13〕のいずれか一に記載の滑り性付与剤に光照射して得られる架橋体。
〔18〕前記の〔16〕または前記の〔17〕に記載の架橋体を含む物品。
〔19〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する共重合体を使用する滑り性付与方法。
【化14】
【化15】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化16】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化17】
【化18】
【化19】
〔20〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する共重合体を使用する滑り性付与方法。
【化20】
【化21】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化22】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
(式(7)中、nは3〜17である。)
〔21〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する滑り性付与用共重合体。
【化27】
【化28】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化29】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化30】
【化31】
【化32】
〔22〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する滑り性付与用共重合体。
【化33】
【化34】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化35】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
(式(7)中、nは3〜17である。)
〔23〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する共重合体を滑り性付与剤の製造としての使用。
【化40】
【化41】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化42】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化43】
【化44】
【化45】
〔24〕重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する共重合体を滑り性付与剤の製造としての使用。
【化46】
【化47】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【化48】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
(式(7)中、nは3〜17である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の滑り性付与剤は、耐久性を有する滑り性を基材表面に付与することができる。また、本発明の物品は、耐久性が高い滑り性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の滑り性付与剤は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく単量体(A)および光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を含有する共重合体、または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)および疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を含有する共重合体を含む。以下、各単量体に基づく構成単位について説明する。
【0011】
〔2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)〕
本発明の滑り性付与剤に含まれる共重合体は、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を含む。構成単位(A)中、ホスホリルコリン基は、生体膜の主成分であるリン脂質と同様の構造を有する極性基である。ホスホリルコリン基を有する構成単位(A)を共重合体中に導入することで、滑り性だけでなく、蛋白質吸着抑制、細胞吸着抑制、抗血栓性、親水性等の生体適合性を共重合体に付与することができる。
ホスホリルコリン基含有単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名:2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート)が挙げられる。
【0013】
〔光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)〕
本発明の滑り性付与剤に含まれる共重合体は、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を含む。光反応性基含有単量体に基づく構成単位(B)として、下記の式(2)に表されるベンゾフェノン基含有単量体に基づく構成単位または下記の式(3)もしくは(6)に表されるアジドフェニル基含有単量体に基づく構成単位がある。
【0014】
【化54】
式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。
【0015】
【化55】
式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)を示す。
【0019】
ベンゾフェノン基は、光照射により反応性に富む三重項励起状態となり、基材または共重合体から水素原子を引き抜くことで結合し得るものである。ベンゾフェノン基含有単量体としては、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MBP)、4−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(MHP)が挙げられるが、特に限定されない。
【0020】
アジドフェニル基は、光照射により反応性に富むニトレンを生成し、基材または共重合体から水素原子を引き抜くことで結合し得るものである。
式(3)に表されるアジドフェニル基含有単量体に基づく構成単位は、下記式(9)でされるメタクリル酸グリシジル(以下、GMAと略す)を含む共重合体を重合後、GMAのグリシジル基に下記式(10)に表される4−アジド安息香酸(以下、ABAと略す)を、トリエチルアミン存在下で開環エステル化反応させることで、アジドフェニル基を含有するGMA単量体に基づく構成単位(以下、GMA−Azと略す)を含む共重合体を得ることができる。
式(6)に表されるアジドフェニル基含有単量体に基づく構成単位は、下記式(11)で表されるクロロメチルスチレン(以下、CMSと略す)と下記式(12)に表されるカルボン酸アルカリ金属塩の置換反応により合成することができる、下記式(8)で表される4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレン(AzSt)から得ることができる。該カルボン酸アルカリ金属塩は、ABAとアルカリ金属塩により調製され、式(12)中、Mは、アルカリ金属であり、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられるが、好ましくはナトリウム原子、カリウム原子である。
【0025】
【化63】
式(12)中、Mは、アルカリ金属を示す。
【0026】
〔疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)〕
本発明の滑り性付与剤に含まれる共重合体は、式(7)に表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を共重合体構造中に含んでもよい。疎水性基は、疎水性基材表面への物理吸着により、当該共重合体の塗布性を向上させることができる。
該疎水性基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の疎水性置換基を有するメタクリル酸エステルが挙げられるが、特に限定されない。
【0027】
【化64】
式(7)中、n=3〜17である。
【0028】
〔滑り性付与剤〕
本発明の滑り性付与剤は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)および光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を含有する共重合体、または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)および疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を含有する共重合体を0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜2.5質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%の濃度で含有している。
【0029】
本発明の滑り性付与剤に含有される共重合体は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%含有する共重合体、または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%含有する共重合体である。
本発明の滑り性付与剤に含有される共重合体の重量平均分子量は、良好な滑り性を発揮する点において、10,000〜1,000,000、好ましくは15,000〜750,000、より好ましくは25,000〜520,000の範囲である。
【0030】
本発明の滑り性付与剤は、前記共重合体を有効成分として含有していれば特に限定されるものではなく、前記共重合体を溶解させる溶媒を含んでも良い。前記共重合体を溶解させる溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールといった低級アルコールや、精製水、純水、超純水、イオン交換水、生理食塩水、例えばリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、HEPES緩衝液といった緩衝液、または、これらを任意の割合で混合したものを用いることができる。
本発明の滑り性付与剤は、上記共重合体を0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜2.5質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%含有する。含有量が高すぎると、均一に塗布できなくなり、低すぎると有効な滑り性向上効果が得られなくなる。
【0031】
本発明の滑り性付与剤は、上記共重合体に加えて、低級アルコール、水、緩衝液等を含有しても良いが、さらに必要に応じて、防腐剤(例えば安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムやベンザルコニウム塩化物等)、界面活性剤(例えばポリソルベート80、モノオレイン酸ソルビタン、スクワラン、ラウリル硫酸ナトリウム等)、親水性共重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等)、湿潤剤(例えば、濃グリセリン、メチルセルロース、ヒアルロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液、流動パラフィン等)、アミノ酸(例えばL−アスコルビン酸、アラニン、L−グルタミン酸、L−メチオニン等)、薬効成分(例えばインドメタシン、デキサメタゾン等)、血液抗凝固剤(例えばヘパリン、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、アセチルサリチル酸、ウロキナーゼ、ワーファリン等)、抗がん剤(例えばタキソール、ロイスタチン、アドリアシン、ブレオマイシン、イマチニブ等)、抗生物質(例えばカナマイシン、ストレプトマイシン、ポリミキシンB)、吸収促進剤(例えばカプリン酸ナトリウム等)、安定化剤(例えばクエン酸カルシウム、天然ビタミンE、ヒト血清アルブミンやデキストラン等)、放射線吸収剤(例えばバリウム、銀、スズ、白金、金、ジルコニウム等の金属、およびこれら金属を含む硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等の化合物)および上記以外の各種化合物が配合されてもよい。
【0032】
〔共重合体の重合反応〕
本発明の滑り性付与剤に含まれる共重合体の重合反応は、例えば、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで反応系内を置換して、または当該雰囲気において、ラジカル重合、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合の公知の方法により行うことができる。
重合反応は、得られる重合体の精製等の観点から、溶液重合が好ましい。これらの重合反応により、下記の式(13)〜(18)で示される構成単位を有する共重合体が得られる。
なお、a、bおよびcは、当該構成単位の構成比を表しているのみであって、該共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらが組み合わされたもの、いずれの構造であってもよい。
なお、式(13)〜(15)で示される共重合体では、a、b(モル比率)は、a/(a+b)=0.60〜0.99、b/(a+b)=0.01〜0.40である。式(16)〜(18)で示される共重合体では、a、b、cは、a/(a+b+c)=0.60〜0.98、b/(a+b+c)=0.01〜0.39、c/(a+b+c)=0.01〜0.30である。
別の記載方法として、式(13)〜(15)で示される共重合体では、本発明の共重合体のホスホリルコリン構成単位(A)の比率aおよび光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)の比率bは、a:bが100:1〜67を満たすものである。
また、式(16)〜(18)で示される共重合体では、本発明の共重合体のホスホリルコリン構成単位(A)の比率a、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)の比率bおよび疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)の比率cは、a:b:cが100:1〜65:1〜50を満たすものである。
さらに、下記の実施例より、より好ましい本発明の共重合体のホスホリルコリン構成単位(A)の比率a、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)の比率bおよび疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)の比率cは、a:b:cが0.6〜0.8:0.05〜0.1:0.1〜0.3を満たすものである(実施例12、16、19、21および23)。
【0033】
【化65】
式(13)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。
【0034】
【化66】
式(14)中、R
2は、下記の式(4)または(5)を示す。
【0038】
【化70】
式(16)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示し、nは3〜17を示す。
【0039】
【化71】
式(17)中、R
2は、式(4)または(5)を示し、nは3〜17を示す。
【0040】
【化72】
式(18)中、nは3〜17である。
【0041】
前記共重合体は、滑り性向上作用に悪影響を与えない範囲内で、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)と、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)及び、疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)以外の構成単位を含有させることができる。
例えば、直鎖または分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート、スチレン系単量体、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、親水性の水酸基含有(メタ)アクリレート、酸基含有単量体、窒素含有基含有単量体、アミノ基含有単量体、カチオン性基含有単量体に基づく構成単位等を例示することができる。
【0042】
直鎖または分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
環状アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエステル単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
親水性の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸等が挙げられる。
窒素含有基含有単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン性基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0043】
<滑り性付与方法>
本発明の滑り性付与剤を用いた滑り性付与方法について説明する。
まず、本発明の滑り性付与剤は、プラスチック製、金属製およびシリコーン製の物品(例えば、ガイドワイヤー、ステント、人工関節およびシリコーン製チューブ等)、特にプラスチック製の物品において使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリカーボネート等から構成された物品であり、特に好ましくはカテーテル、ガイドワイヤー(表面がプラスチックで被覆されているもの)、コンタクトレンズ、眼内レンズ等である。本発明の滑り性付与剤をこれらのプラスチック製の物品の表面に処理することによって、その表面の滑り性を向上させることができ、さらに該滑り性は耐久性を有する。詳しくは、本発明の滑り性付与剤を用いる物品としては、プラスチック素材のように水素原子を引き抜くことができるものが好ましいが、適切なバインダーを使用することでプラスチック製の物品以外にも使用可能である。
【0044】
次に、本発明の滑り性付与剤を表面にコーティングする方法について説明する。本発明の滑り性付与剤をコーティングする方法はスピンコート法、スプレーコート法、キャストコート法、ディップコート法、ロールコート法、フローコート法等を用いることが可能であるが、ディップコート法やキャストコート法が好ましい。さらに、コーティング後には必要に応じて室温もしくは加温により乾燥させてもよい。
本発明の滑り性付与剤がコーティングされた(塗布された)基材に200nmから400nmの光を、好ましくは254nmから365nmの光を照射する。さらに、光照射後に適当な溶剤、例えば、純水やエタノール、メタノール等により、基材を洗浄することで、余分な滑り性付与剤を洗浄してもよい。
以上のような滑り性付与方法により、滑り性を物品(特に、プラスチック製の物品)に付与することができる。
【0045】
<架橋体の形成方法、架橋体、物品>
本発明の架橋体の形成方法では、本発明の滑り性付与剤を基材表面にコーティングした後、該基材表面に光照射して、該基材表面に架橋体を形成する。
本発明の架橋体は、本発明の架橋体の形成方法により得ることができ、又は、本発明の滑り性付与剤に光照射して架橋体を得ることができる。
本発発明の物品は、本発明の架橋体を含む。
【0046】
本発明の共重合体の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)および疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)の組合せは、以下の通りであるが、特に限定されない(左が構成単位(A)、中央が構成単位(B)および右が構成単位(C)を示す)。
MPC―MBP
MPC―MBP―メタクリル酸ブチル
MPC―MBP―メタクリル酸ヘキシル
MPC―MBP―メタクリル酸2−エチルヘキシル
MPC―MBP―メタクリル酸デシル
MPC―MBP―メタクリル酸ドデシル
MPC―MBP―メタクリル酸トリデシル
MPC―MBP―メタクリル酸ステアリル
MPC―MHP
MPC―MHP―メタクリル酸ブチル
MPC―MHP―メタクリル酸ヘキシル
MPC―MHP―メタクリル酸2−エチルヘキシル
MPC―MHP―メタクリル酸デシル
MPC―MHP―メタクリル酸ドデシル
MPC―MHP―メタクリル酸トリデシル
MPC―MHP―メタクリル酸ステアリル
MPC―GMA−Az
MPC―GMA−Az―メタクリル酸ブチル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸ヘキシル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸2−エチルヘキシル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸デシル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸ドデシル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸トリデシル
MPC―GMA−Az―メタクリル酸ステアリル
MPC―AzSt
MPC―AzSt―メタクリル酸ブチル
MPC―AzSt―メタクリル酸ヘキシル
MPC―AzSt―メタクリル酸2−エチルヘキシル
MPC―AzSt―メタクリル酸デシル
MPC―AzSt―メタクリル酸ドデシル
MPC―AzSt―メタクリル酸トリデシル
MPC―AzSt―メタクリル酸ステアリル
さらに、下記の実施例より、より好ましい本発明の共重合体のホスホリルコリン構成単位、光反応性構成単位および疎水性構成単位の組合せは、MPC―GMA−Az―メタクリル酸ブチル(実施例12)、MPC―GMA−Az―メタクリル酸ステアリル(実施例16)、MPC―AzSt―メタクリル酸ブチル(重合例19および重合例21)およびMPC―AzSt―メタクリル酸ステアリル(重合例23)である。
よって、本発明の共重合体の光反応性構成単位としては、GMA−Az及びAzStが特に好ましい。
【0047】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する共重合体を使用する滑り性付与方法も対象とする。
【0049】
【化74】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0050】
【化75】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0054】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する共重合体を使用する滑り性付与方法も対象とする。
【0056】
【化80】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0057】
【化81】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0061】
【化85】
(式(7)中、nは3〜17である。)
【0062】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する滑り性付与用共重合体も対象とする。
【0064】
【化87】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0065】
【化88】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0069】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する滑り性付与用共重合体も対象とする。
【0071】
【化93】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0072】
【化94】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0076】
【化98】
(式(7)中、nは3〜17である。)
【0077】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜99モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜40モル%とを含有する共重合体を滑り性付与剤の製造としての使用も対象とする。
【0079】
【化100】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0080】
【化101】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0084】
本発明は、重量平均分子量が10,000〜1,000,000であり、下記の式(1)で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)を60〜98モル%と、下記の式(2)、(3)または(6)のいずれかで表される光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位(B)を1〜39モル%と、下記の式(7)で表される疎水性基含有単量体に基づく構成単位(C)を1〜30モル%とを含有する共重合体を滑り性付与剤の製造としての使用も対象とする。
【0086】
【化106】
(式(2)中、R
1は水素原子またはヒドロキシル基を示す。)
【0087】
【化107】
(式(3)中、R
2は、下記の式(4)または式(5)である。)
【0091】
【化111】
(式(7)中、nは3〜17である。)
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0093】
<メタクリル酸グリシジルへのアジド安息香酸の付加(共重合体へのABAの付加)>
後述の表1および表2に示す重合条件でメタクリル酸グリシジル(GMA)を含む共重合体を重合した後に、アジド安息香酸(ABA)をGMAに対して1.5モル等量を溶解させて80℃に昇温後、トリエチルアミン(TEA)をGMAに対して0.2モル等量加えて48時間反応させることで、アジドフェニル基を含有するGMA単量体に基づく構成単位(GMA−Az)を含む共重合体を得た。
【0094】
<4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレン(AzSt)の合成(式(6)で表される構成単位(B)を導く単量体の合成)>
200mLナスフラスコにアジド安息香酸6.42g、ジメチルスルホキシド64gを秤量し、50℃に昇温し溶解させた。炭酸カリウム2.72gを加え、30分間攪拌した。経時後、クロロメチルスチレン5.46gを加え、8時間反応させた。8時間後、酢酸エチル193.15gを加え、飽和食塩水63.95gで5回、有機層を洗浄し、分液抽出した。硫酸ナトリウムを用いた脱水後、濃縮し、得られたAzStが50質量%となるよう酢酸エチルに溶解した。
【0095】
重合例中の各種測定は以下に示す方法に従って実施した。
<重量平均分子量の測定>
得られた共重合体5mgを、0.1mol/L硫酸ナトリウム水溶液1gへ溶解し、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を測定する。測定条件は以下の通りである。
装置:RI−8020、DP−8020、SD−8022、AS−8020(以上、東ソー(株)製)、865−CO(日本分光((株)製)、カラム:Shodex OHpak(昭和電工(株)製)、移動相:0.1mol/L硫酸ナトリウム水溶液、標準物質:プルラン、検出:視差屈折率計、重量平均分子量(Mw)の算出:分子量計プログラム(SC−8020用GPCプログラム)、流速1.0mL/分、カラム温度:40℃、試料溶液注入量:100μL、測定時間:30分間。
【0096】
〔重合例1〜8〕
表1の共重合体組成比と重合条件(65℃で6時間または60℃で6時間)に従って重合し、沈殿精製、
1H−NMR分析および重量平均分子量の測定を行った。重量平均分子量の測定結果を表1に示す。
【0097】
〔重合例9〜16〕
表1、2の共重合体組成比と重合条件(60℃で4時間後に70℃で2時間)に従って重合し、共重合体中のGMAにABAを付加(80℃で48時間)した後に、沈殿精製、
1H−NMR分析および重量平均分子量の測定を行った。重量平均分子量の測定結果を表1および2に示す。
【0098】
〔重合例17〜23〕
表2の共重合体組成比と重合条件(60℃で4時間後に70℃で2時間)に従って重合し、沈殿精製、
1H−NMR分析および重量平均分子量の測定を行った。重量平均分子量の測定結果を表2に示す。
【0099】
〔比較重合例1〜4〕
表2の共重合体組成比と重合条件に従って重合し、沈殿精製、
1H−NMR分析および重量平均分子量の測定を行った。重量平均分子量の測定結果を表2に示す。
【0100】
重合例および比較重合例において共重合体の重合に用いた材料の詳細を次に示す(表中には略号で記載)。
MPC:2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
MBP:4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン
MHP:4−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン
GMA:グリシジルメタクリレート(メタクリル酸グリシジル)
BMA:メタクリル酸ブチル
SMA:メタクリル酸ステアリル
AzSt:4−(4−アジドベンゾイルオキシメチル)スチレン(50質量%酢酸エチル溶液品)
AEMA:アミノエチルメタクリレート
ABA:アジド安息香酸
TEA:トリエチルアミン
EtOH:エタノール
nPA:n−プロパノール
PW:水(純水)
AIBN:2,2−アゾビスイソブチロニトリル
【0101】
<滑り性付与効果の評価>
本発明の滑り性付与剤に含まれる共重合体(重合例1〜23)およびその類似体(比較重合例1〜4)について、滑り性付与効果の評価を行った。
各共重合体を含有する滑り性付与剤を所定濃度となるように溶媒に溶解し、そこにポリエチレンテレフタレート製の板を30秒以上浸漬した。溶媒は、エタノール(EtOH)または50wt%エタノール水溶液(EtOH/PW)を用いた。254nmの光を照射し、溶媒で未反応の滑り性付与剤を洗浄した後、表面摩擦係数を測定した。さらに表面摩擦係数の測定結果から耐久性を評価した。実施例および比較例において使用した滑り性付与剤について、共重合体の種類、共重合体の含有割合、溶媒等の条件および評価結果を表3および表4に示す。また、表面処理を施していないポリエチレンテレフタレートを用いて同様の評価を行い、比較例5とした。
【0102】
<表面摩擦係数>
TRIBOGEAR(新東科学(株)製)を用い、滑り速度600mm/分、滑り距離50mm、荷重10g、ステンレス製接触端子、室温、生理食塩水中にて摩擦係数を測定した。
<耐久性>
同じ場所を5往復させて測定し、5往復後の表面摩擦係数が1往復後の摩擦係数に対して25%以上上昇したものを○とし、25%未満であったものを◎とした。また、表面摩擦係数が、5往復以内の測定時に比較例5に近い値を示したものを×とした。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
表3および表4の結果から明らかなように、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位を含む共重合体、または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位および疎水性基含有単量体に基づく構成単位を含む共重合体を含む滑り性付与剤を基材表面にコーティングし、光照射することにより、基材表面の摩擦係数を低下させることができた。また、その摩擦係数は5往復測定後も低い摩擦係数を維持していた。
【0108】
一方、表4の結果から、比較例1(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位のみからなる重合体によりコーティング)、比較例2(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位と疎水性基含有単量体に基づく構成単位のみを有し、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位を有しない水溶性共重合体によりコーティング)および比較例4(疎水性基含有単量体に基づく構成単位と光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位を有しないが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位とアミノ基のある構成単位を有する共重合体によりコーティング)においては、光照射により、基材表面に共重合体の層が形成されないために摩擦係数の低下は見られず、摩擦係数は比較例5(表面処理を施していないポリエチレンテレフタレート)と同程度の値であった。また、比較例3(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位と疎水性基含有単量体に基づく構成単位のみを有し、光反応性官能基含有単量体に基づく構成単位を有しない非水溶性共重合体によりコーティング)は非水溶性であるため、測定1回目の摩擦係数を低下させることはできたが、測定を繰り返すごとにその値は上昇していき、耐久性に欠けることが明らかになった。
以上の結果より、本発明の滑り性付与剤は、基材表面へのコーティングと光照射により、基材表面に耐久性を有する滑り性を付与できることを確認した。