(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッシブ導波路領域の他の一部は、前記第1スポットサイズ変換領域を含み、かつ、前記上部クラッド層と前記第1コア層と前記下部クラッド層の一部とがメサ状に突出したハイメサ構造を有し、
前記第1メサ構造と前記ハイメサ構造とが光学的に接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の光集積素子。
前記パッシブ導波路領域の他の一部は、前記第1スポットサイズ変換領域を含み、かつ、前記上部クラッド層と前記第1コア層と前記下部クラッド層の一部とがメサ状に突出したハイメサ構造を有し、
前記第1メサ構造と前記ハイメサ構造とが光学的に接続されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の光集積素子。
前記パッシブ導波路領域の他の一部は、前記第1スポットサイズ変換領域を含み、かつ、前記上部クラッド層と前記第1コア層と前記下部クラッド層の一部とがメサ状に突出したハイメサ構造を有し、
前記第1メサ構造と前記ハイメサ構造とが光学的に接続されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の光集積素子。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る光集積素子を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各層の厚さや厚さの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0033】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る光集積素子の導波路方向断面図であり、
図1Bは、第1実施形態に係る光集積素子の上面図であり、
図1Cは、第1実施形態に係る光集積素子の断面図である。なお、
図1Aおよび
図1Bに記載の矢印(a)〜(e)は、
図1Cに記載の断面の箇所に対応している。
【0034】
図1A〜
図1Cに示される光集積素子100は、位相変調器から半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)までの連結領域に用いる構成例として説明する。しかしながら、第1実施形態に係る光集積素子は、位相変調器との組み合わせに限定されるものではない。位相変調器に限らずコア層の厚いデバイスとの組み合わせにおいて特に好適な効果を得ることができる。ここでは、位相変調器の例として、マッハツェンダ型の変調器を想定している。また、光集積素子100は、1.55μm波長帯の光を紙面の左右どちらの端面から入射する用途にも応用し得る。
【0035】
図1Aに示すように、光集積素子100は、基板101上に、下部クラッド層102と導波路コア103と上部クラッド層104とコンタクト層105とを順次積層したパッシブ導波路領域R
11と、基板101上に、下部クラッド層102と導波路コア103と量子井戸層107と上部クラッド層104とコンタクト層105とを順次積層した活性領域R
12とを備えている。また、光集積素子100は、位相変調器を同一素子に集積する構成例として、基板101上に、下部クラッド層102と変調器コア106と上部クラッド層104とコンタクト層105とを順次積層した変調器領域R
13を備えている。
【0036】
具体的には、光集積素子100では、基板101の上に下部クラッド層102が積層されている。例えば、基板101はInP基板であり、下部クラッド層102はN型にドープされたInPであり、層厚は1500nmである。
【0037】
また、光集積素子100では、下部クラッド層102の上に変調器コア106および導波路コア103が形成されており、変調器コア106と導波路コア103が接続されている。例えば、変調器コア106は、AlGaInAs多重量子井戸によって構成され、層厚は500nmである。
【0038】
一方、例えば、導波路コア103は、屈折率3.39のGaInAsPによって構成され、下部クラッド層102および上部クラッド層104よりも屈折率が高くなるように構成されている。つまり、導波路コア103を導波している光は下部クラッド層102および上部クラッド層104との屈折率差によって生じる閉じ込め力を受けることになる。
【0039】
パッシブ導波路領域R
11は、変調器コア106との接続部(図中(b)付近)から所定の箇所(図中(c)付近)までの区間に、導波路コア層の層厚が変化しているスポットサイズ変換領域R
14を含んでいる。スポットサイズ変換領域R
14における導波路コア103は、変調器コア106との接続部の層厚が400nmであり、そこから層厚が200nmまで減少する。スポットサイズ変換領域R
14における導波路コア103の層厚の変化により光の閉じ込め力も変化し、導波路コア103を導波している光のモードフィールド径も変換される。また、スポットサイズ変換領域R
14は、活性領域R
12と変調器領域R
13との間に配置されている。
【0040】
また、
図1Aに示すように、活性領域R
12における導波路コア103の近傍には、量子井戸層107が設けられている。ここで、導波路コア103の近傍とは、導波路コア103を導波している光のモードフィールドの範囲内で近接していることを意味し、導波路コア103と量子井戸層107との間には、導波路コア103及び量子井戸層107と異なる組成であり、上部クラッド層104と同じ組成の材料の層(中間層)が介在している。中間層は下部クラッド層102と同じ組成の材料でもよい。なお、図中に示される曲線は、導波路コア103を導波している光のモードフィールドを視覚的に例示したものである。
【0041】
量子井戸層107は、例えば、GaInAsP多重量子井戸で構成され、層厚は100nmである。この量子井戸層107は、SOAの活性層として機能する。すなわち、導波路コア103を導波している光のモードフィールドは、量子井戸層107にまで広がっているので、量子井戸層107には不図示の電極(
図6にて例示)から電流が注入されると、導波路コア103を導波している光の光強度にもその増幅効果(例えば10dB程度の利得)が及ぶことになるのである。このような、導波路コア103に対して間隔を隔てて量子井戸層107を設けたものは、オフセット量子井戸と呼ばれることもあり、導波路コア103の上近傍に量子井戸層の材料を積層し、活性領域R
12以外では量子井戸層107をエッチングして除去するだけでSOAの活性層を作成できるので、追加の結晶成長およびエッチングをする必要がないという利点がある。
【0042】
変調器コア106、導波路コア103および量子井戸層107の上には、上部クラッド層104が積層されている。例えば、上部クラッド層104は、P型にドープされたInPであり、層厚が2μmである。さらに、上部クラッド層104の上には、コンタクト層105が積層されている。例えば、コンタクト層105は、P型にドープされたInGaAsであり、層厚が500nmである。
【0043】
光集積素子100は、いわゆるメサ構造の導波路であるが、光集積素子100の各領域において、このメサ構造に違いがある。そこで、
図1A〜
図1Cを並べて参照することにより、光集積素子100の各領域におけるメサ構造について説明する。
【0044】
図1Bおよび
図1Cに示すように、光集積素子100におけるメサ構造の幅は、一定であり、例えば2.0μmである。なお、本例の光集積素子100では、メサ構造の幅が一定であるが、必要に応じて各領域におけるメサ構造の幅に違いを設けてもよい。
【0045】
図1C(a)に示すように、光集積素子100における位相変調器の領域では、変調器コア106を貫通して下部クラッド層102の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。したがって、
図1Bに示すように、光集積素子100における位相変調器の領域を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層102が示されている。
【0046】
図1C(b)および(c)に示すように、光集積素子100における導波路コア103の一部の領域(先述のスポットサイズ変換器の領域)では、導波路コア103を貫通して下部クラッド層102の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。ただし、
図1C(b)および(c)を比較すると解るように、導波路コア103の層厚が異なっている。これは、先述のように導波路コア103の一部の領域にスポットサイズの変換の作用を持たせるためである。また、
図1Bに示すように、導波路コア103の一部の領域((b)から(c)の領域)を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層102が示されている。なお、本例では導波路コア103の一部の領域にハイメサ構造を採用しているが、当該領域にローメサ構造(後述する
図1C(d)参照)を採用することも可能である。
【0047】
図1C(d)に示すように、光集積素子100における導波路コア103の一部の領域(先述のスポットサイズ変換器以外の領域)では、上部クラッド層104までがメサ状に突出したローメサ構造が形成されている。ここで、光集積素子100における導波路コア103では、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路とが途中で変換されている。一般に、ハイメサ構造とローメサ構造とでは、光の閉じ込めに関する特性が異なるので、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路とを接続すると損失が発生してしまう。そこで、例えば特開2014−35540号公報に記載のように、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間に中間領域を設け、当該中間領域ではハイメサ構造およびローメサ構造とは異なる光の閉じ込めを実現することにより、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間の光学接続における損失を低減させることができる。また、
図1Bに示すように、導波路コア103の一部の領域((d)の領域)を上から見た図では、メサ構造の両側に導波路コア103が示されている。ここでメサ構造の両側は、上部クラッド層104が表面に出ていても良い。
【0048】
図1C(e)に示すように、光集積素子100における活性領域R
12では、量子井戸層107の上までの上部クラッド層104がメサ状に突出したローメサ構造が形成されている。したがって、
図1Bに示すように、導波路コア103の上に量子井戸層107が設けられた領域((e)の領域)を上から見た図では、メサ構造の両側に量子井戸層107が示されている。ここでメサ構造の両側は、上部クラッド層104が表面に出ていても良い。
【0049】
ここで、
図1Aを参照しながら、製造方法の観点で光集積素子100の構成について説明する。
【0050】
光集積素子100の製造方法では、まず基板101としてのInP基板の上に、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、下部クラッド層102としてのn−InPと、変調器コア106としてのAlGaInAs多重量子井戸層と、上部クラッド層104の一部としてのp−InPとを順次形成する。
【0051】
次に、上部クラッド層104の一部としてのp−InPの層の全面に、SiNx膜を堆積した後、位相変調器よりもやや広いパターンになるようにパターニングを施して、当該SiNx膜をマスクとして、AlGaInAs多重量子井戸層までをエッチングし、下部クラッド層102としてのn−InPの層を露出する。
【0052】
続いて、上記SiNx膜をそのまま選択成長のマスクとして用いて、MOCVD法により、導波路コア103としてのGaInAsPと、導波路コア103と量子井戸層107との間をオフセットするためのp−InPと、量子井戸層107としてのGaInAsP多重量子井戸と、上部クラッド層104としてのp−InPとを順次積層する。このとき平坦領域と選択成長領域で概ね1:2程度の膜厚になるように調整する。
【0053】
次に、上記SiNx膜を一度除去し、新たなSiNx膜を全面に形成し、位相変調器でもSOAでもない領域を開口するようにパターニングを行う。そして、このSiNx膜をマスクとして、p−InPの層とGaInAsP多重量子井戸の層とをエッチングする。その後、SiNx膜を除去した後、MOCVD法により、上部クラッド層104の一部としてのp−InPおよびコンタクト層105としてのp−InGaAsを積層する。
【0054】
次に、再度SiNx膜を全面に形成し、ローメサ構造のパターニングおよびエッチングを行い、SiNx膜を一度除去した後にSiNx膜を全面に形成し、ハイメサ構造のパターニングおよびエッチングを行う。
【0055】
その後、公知の方法により、各部分にパシベーション膜、樹脂層やその開口部、電流注入や電圧印加のための電極などを形成する。表面の加工が終了した後に、基板を研磨して所望の厚さにし、必要であれば裏面に電極を形成する。さらに、基板へき開によって端面形成し、端面コーティングや素子分離を行って光集積素子100が完成する。
【0056】
以上のように、光集積素子100の構成では、3回の結晶成長および2回のメサ構造形成で、位相変調器とSOAとスポットサイズ変換器を一つの素子に集積することができる。
【0057】
以上説明した第1実施形態に係る光集積素子100は、位相変調器のように導波路層が厚い素子とSOAのように導波路層が薄い素子を一つの素子に集積しても、位相変調器とSOAとの間に配置されたスポットサイズ変換器によって、スポットサイズを変換することができるので、位相変調器およびSOAの両方で最適な構成を採用することが可能である。
【0058】
(第2実施形態)
図2Aは、第2実施形態に係る光集積素子の導波路方向断面図であり、
図2Bは、第2実施形態に係る光集積素子の上面図であり、
図2Cは、第2実施形態に係る光集積素子の断面図である。なお、
図2Aおよび
図2Bに記載の矢印(a)〜(c)は、
図2Cに記載の断面の箇所に対応している。また、第2実施形態に係る光集積素子も、1.55μm波長帯の光を紙面の左右どちらの端面から入射する用途にも応用し得る。
【0059】
図2Aに示すように、光集積素子200は、基板201上に、スポットサイズコンバータ(SSC)コア208と下部クラッド層202と導波路コア203と上部クラッド層204とコンタクト層205とを順次積層したパッシブ導波路領域R
21と、基板201上に、SSCコア208と下部クラッド層202と導波路コア203と量子井戸層207と上部クラッド層204とコンタクト層205とを順次積層した活性領域R
22とを備えている。また、パッシブ導波路領域R
21は、後述の
図2Bおよび
図2Cに示すように、2段階のメサ構造を有するスポットサイズ変換領域R
23を含んでいる。
【0060】
具体的には、光集積素子200では、基板201の上にSSCコア208が積層されている。例えば、基板201はInP基板である。一方、SSCコア208は、スポットサイズ変換用のコアであり、例えば屈折率3.34のGaInAsPによって構成され、層厚が100nmである。ここで、基板201の上にSSCコア208を直接積層せず、別途のInPを基板201の上に積層し、その上にSSCコア208を積層してもよい。
【0061】
例えば、下部クラッド層202は、N型にドープされたInPであり、層厚は1500nmである。また、下部クラッド層202の上に導波路コア203が形成されており、例えば、導波路コア203は、屈折率3.39のGaInAsPによって構成され、下部クラッド層202および上部クラッド層204よりも屈折率が高くなるように構成されている。
【0062】
また、
図2Aに示すように、活性領域R
22における導波路コア203の近傍には、量子井戸層207が設けられている。ここで、導波路コア203の近傍とは、導波路コア203を導波している光のモードフィールドの範囲内で近接していることを意味し、導波路コア203と量子井戸層207との間には、導波路コア203及び量子井戸層207と異なる組成であり、上部クラッド層204と同じ材料の層(中間層)が介在している。中間層は下部クラッド層202と同じ組成の材料でもよい。量子井戸層207は、例えば、GaInAsP多重量子井戸で構成され、層厚は100nmである。この量子井戸層207の構成は、第1実施形態と同様であり、SOAの活性層として機能する。
【0063】
導波路コア203の上には、上部クラッド層204が積層されている。例えば、上部クラッド層204は、P型にドープされたInPであり、層厚が2μmである。さらに、上部クラッド層204の上には、コンタクト層205が積層されている。例えば、コンタクト層205は、P型にドープされたInGaAsであり、層厚が500nmである。
【0064】
光集積素子200は、いわゆるメサ構造の導波路であるが、光集積素子200の各領域において、このメサ構造に違いがある。そこで、
図2A〜
図2Cを並べて参照することにより、光集積素子200の各領域におけるメサ構造について説明する。
【0065】
図2Bおよび
図2Cに示すように、光集積素子200におけるメサ構造は、2段階存在する。すなわち、光集積素子200は、パッシブ導波路領域R
21および活性領域R
22では、コンタクト層205および上部クラッド層204がメサ状に突出した第1メサ構造M
1を有し、パッシブ導波路領域R
21の一部では、第1メサ構造M
1に加え、導波路コア203と下部クラッド層202とSSCコア208と基板201の一部とがメサ状に突出した第2メサ構造M
2を有している。この第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2を有するパッシブ導波路領域R
21の領域は、後述するようにスポットサイズ変換器として機能する。また、この第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2を有するパッシブ導波路領域R
21の領域は、光集積素子200の端面に隣接して配置されている。ここで、
図2Bにおいて、導波路コア203、量子井戸層207が表面に出ている領域は、上部クラッド層204が表面に出ていても良い。
【0066】
図2C(a)および(b)に示すように、第2メサ構造M
2が形成されていない領域では、第1メサ構造M
1の幅は一定であり、例えば2.0μmである。一方、
図2C(c)に示すように、第2メサ構造M
2が形成されている領域では、第1メサ構造M
1の幅は、端面に近づくに従い幅が連続的に減少している。なお、
図2Bに示すように、第1メサ構造M
1の幅は、終端部において一定の幅(例えば0.5μm)とすることが好ましく、光集積素子200の端面まで延設せずに途中で途切れる(幅がゼロになる)構造とすることが好ましい。スポットサイズ変換のバラツキを低減する効果を得るためである。
【0067】
上記構成がスポットサイズ変換のバラツキを低減する理由は以下の通りである。上記構成の光集積素子200では、
図2Aに示すように、第1メサ構造M
1の幅が狭くなるに従い、導波路コア203を導波している光のモードフィールドは、SSCコア208へ断熱的に移っていく。なお、図中に示される曲線は、導波路コア203からSSCコア208へ移っていく光のモードフィールドを視覚的に例示したものである。
【0068】
このとき、導波路コア203からSSCコア208へ移っていく光のモードフィールドは、第1メサ構造M
1によって上側にシフトされる作用を受けるが、この光のモードフィールドを上側にシフトする作用の大きさは、第1メサ構造M
1の幅によって決定される。つまり、縦方向の光のモードフィールドの大きさは、第1メサ構造M
1の幅の精度に敏感となる。そこで、第1メサ構造M
1を光集積素子200の端面まで延設せずに途中で途切れる構造とすると、幅方向の精度の影響をより受けやすい細いメサ構造を作製しないので、スポットサイズ変換のバラツキを低減する効果を得るのである。
【0069】
ここで、
図2Aを参照しながら、製造方法の観点で光集積素子200の構成について説明する。
【0070】
光集積素子200の製造方法では、まず基板201としてのInP基板の上に、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、SSCコア208としてのGaInAsPと、下部クラッド層202としてのn−InPと、導波路コア203としてのGaInAsPと、導波路コア203と量子井戸層207との間のバッファ層としてのp−InPと、量子井戸層207としてのGaInAsP多重量子井戸と、上部クラッド層204としてのp−InPとを順次形成する。
【0071】
次に、上部クラッド層204の一部としてのp−InPの層の全面に、SiNx膜を堆積した後、SOAでないパッシブ導波路領域R
21を開口するようにパターニングを行う。そして、このSiNx膜をマスクとして、p−InPの層とAlGaInAs多重量子井戸の層とをエッチングする。その後、SiNx膜を除去した後、MOCVD法により、上部クラッド層204の一部としてのp−InPおよびコンタクト層205としてのp−InGaAsを積層する。
【0072】
次に、再度SiNx膜を全面に形成し、第1メサ構造M
1のパターニングおよびエッチングを行い、SiNx膜を一度除去した後にSiNx膜を全面に形成し、第2メサ構造M
2のパターニングおよびエッチングを行う。
【0073】
その後、公知の方法により、各部分にパシベーション膜、樹脂層やその開口部、電流注入や電圧印加のための電極などを形成する。表面の加工が終了した後に、基板を研磨して所望の厚さにし、必要であれば裏面に電極を形成する。さらに、基板へき開によって端面形成し、端面コーティングや素子分離を行って光集積素子200が完成する。
【0074】
以上の構造により、光集積素子200は、SOAとスポットサイズ変換器を一つの素子に集積することができ、そのスポットサイズ変換器は、1/e
2の全幅で測定したスポットサイズが1μm弱から3μm程度にまで広げることが可能となる。
【0075】
また、上記説明のように、光集積素子200は、2回の結晶成長と2回のメサ構造の形成によって、SOAとスポットサイズ変換器を一つの素子に集積することができるので、製造が容易である。なお、上記光集積素子200では、第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2との2段階のメサ構造であるが、このメサ構造をより多段化しても、本発明の要旨を逸脱するものではない。
【0076】
以上説明した第2実施形態に係る光集積素子200は、位相変調器のように導波路層が厚い素子を集積しても、光集積素子200の端面に隣接して配置されたスポットサイズ変換器によって、光集積素子200の周辺の光学素子に対するトレランスが緩和される。また、光集積素子200では、活性領域R
22における量子井戸層207は、導波路コア203の近傍に配置されているので、量子井戸層207による導波路コア203を導波している光の吸収を抑制することができる。また、スポットサイズ変換器の設計とSOAの活性層としての量子井戸層207の設計を独立させることができるので、スポットサイズ変換器とSOAとのそれぞれを最適化することが可能である。
【0077】
(第3実施形態)
図3Aは、第3実施形態に係る光集積素子の導波路方向断面図であり、
図3Bは、第3実施形態に係る光集積素子の上面図であり、
図3Cは、第3実施形態に係る光集積素子の断面図である。なお、
図3Aおよび
図3Bに記載の矢印(a)〜(e)は、
図3Cに記載の断面の箇所に対応している。
図3A〜
図3Cに示される光集積素子300は、位相変調器からSCCまでの連結領域に用いる構成例として説明するが、第3実施形態に係る光集積素子は、位相変調器との組み合わせに限定されるものではない。また、第3実施形態に係る光集積素子も、1.55μm波長帯の光を紙面の左右どちらの端面から入射する用途にも応用し得る。
【0078】
図3Aに示すように、光集積素子300は、基板301上に、SSCコア308と下部クラッド層302と導波路コア303と上部クラッド層304とコンタクト層305とを順次積層したパッシブ導波路領域R
31を備えている。また、光集積素子300は、位相変調器を同一素子に集積する構成例として、基板301上に、SSCコア308と下部クラッド層302と変調器コア306と上部クラッド層304とコンタクト層305とを順次積層した変調器領域R
32を備えている。
【0079】
具体的には、光集積素子300では、基板301の上にSSCコア308が積層されている。例えば、基板301はInP基板である。一方、SSCコア308は、スポットサイズ変換用のコアであり、例えば屈折率3.34のGaInAsPによって構成され、層厚が100nmである。ここで、基板301の上にSSCコア308を直接積層せず、別途のInPを基板301の上に積層し、その上にSSCコア308を積層してもよい。
【0080】
例えば、下部クラッド層302は、N型にドープされたInPであり、層厚は1500nmである。また、光集積素子300では、下部クラッド層302の上に変調器コア306および導波路コア303が形成されており、変調器コア306と導波路コア303が結晶学的に接続(突き合わせ接合)されている。例えば、変調器コア306は、AlGaInAs多重量子井戸によって構成され、層厚は500nmである。一方、例えば、導波路コア303は、屈折率3.39のGaInAsPによって構成され、下部クラッド層302および上部クラッド層304よりも屈折率が高くなるように構成されている。
【0081】
導波路コア303および変調器コア306の上には、上部クラッド層304が積層されている。例えば、上部クラッド層304は、P型にドープされたInPであり、層厚が2μmである。さらに、上部クラッド層304の上には、コンタクト層305が積層されている。例えば、コンタクト層305は、P型にドープされたInGaAsであり、層厚が500nmである。
【0082】
パッシブ導波路領域R
31は、変調器コア306との接続部(図中(b)付近)から所定の箇所(図中(c)付近)までの区間に、導波路コアの層厚が変化している第1スポットサイズ変換領域R
33を含んでいる。第1スポットサイズ変換領域R
33における導波路コア303は、変調器コア306との接続部の層厚が400nmであり、そこから層厚が200nmまで減少する。第1スポットサイズ変換領域R
33における導波路コア303の層厚の変化により光の閉じ込め力も変化し、導波路コア303を導波している光のモードフィールド径も変換される。
【0083】
また、パッシブ導波路領域R
31は、後述の
図3Bおよび
図3Cに示すように、2段階のメサ構造を有する第2スポットサイズ変換領域R
34を含んでいる。すなわち、光集積素子300は、第1スポットサイズ変換領域R
33と第2スポットサイズ変換領域R
34とによる2段階のスポットサイズ変換器が組み込まれた構成である。また、第2スポットサイズ変換領域R
34は、光集積素子300の端面に隣接して配置されている。また、第1スポットサイズ変換領域R
33は、変調器領域R
32と第2スポットサイズ変換領域R
34との間に配置されている。
【0084】
ここで、
図3A〜
図3Cを並べて参照しながら、光集積素子300の各領域におけるメサ構造を説明する。
【0085】
図3A〜
図3Cに示すように、光集積素子300におけるメサ構造は、3種類存在する。すなわち、光集積素子300は、変調器領域R
32および第1スポットサイズ変換領域R
33では、導波路コア303を貫通して下部クラッド層302の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成され、第1スポットサイズ変換領域R
33以外のパッシブ導波路領域R
31では、コンタクト層305および上部クラッド層304がメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1が形成され、第2スポットサイズ変換領域R
34では、第1メサ構造M
1に加え、導波路コア303と下部クラッド層302とSSCコア308と基板301の一部とがメサ状に突出した第2メサ構造M
2が形成されている。なお、第2スポットサイズ変換領域R
34は、第1スポットサイズ変換領域R
33以外のパッシブ導波路領域R
31の一部を成すので、第2スポットサイズ変換領域R
34は、第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2とが形成されていることになる。
【0086】
より具体的には、
図3C(a)に示すように、光集積素子300における変調器領域R
32では、変調器コア306を貫通して下部クラッド層302の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。したがって、
図3Bに示すように、光集積素子300における位相変調器の領域を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層302が示されている。
【0087】
図3C(b)および(c)に示すように、光集積素子300における第1スポットサイズ変換領域R
33では、導波路コア103を貫通して下部クラッド層302の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。ただし、
図3C(b)および(c)を比較すると解るように、スポットサイズの変換の作用を持たせるように導波路コア303の層厚が異なっている。また、
図3Bに示すように、第1スポットサイズ変換領域R
33を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層302が示されている。
【0088】
図3C(d)に示すように、光集積素子300における第1スポットサイズ変換領域R
33でも第2スポットサイズ変換領域R
34でもないパッシブ導波路領域R
31では、上部クラッド層304までがメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1が形成されている。
図3Bに示すように、第1スポットサイズ変換領域R
33でも第2スポットサイズ変換領域R
34でもないパッシブ導波路領域R
31を上から見た図では、メサ構造の両側に導波路コア303が示されている。ここで、メサ構造の両側は上側クラッド304が表面に出ていても良い。
【0089】
なお、光集積素子300においても、第1実施形態に係る光集積素子100と同様に、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路とが途中で変換されている。よって、光集積素子300においても、第1実施形態に係る光集積素子100と同様に、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間に中間領域を設け、当該中間領域ではハイメサ構造およびローメサ構造とは異なる光の閉じ込めを実現することにより、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間の光学接続における損失を低減させることが好ましい。
【0090】
図3C(e)に示すように、光集積素子300における第2スポットサイズ変換領域R
34では、上部クラッド層304までがメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1と導波路コア303と下部クラッド層302とSSCコア308と基板301の一部とがメサ状に突出した第2メサ構造M
2とが形成されている。光集積素子300における第2スポットサイズ変換領域R
34の第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2とは、第2実施形態に係る光集積素子200と同様に、導波路コア303を導波している光のモードフィールドがSSCコア308へ断熱的に移っていくことにより、スポットサイズの変換を行うものである。
【0091】
図3A〜
図3Cに示すように、光集積素子300におけるメサ構造の幅は、第2スポットサイズ変換領域R
34を除いて一定であり、例えば2.0μmである。一方、光集積素子300におけるメサ構造の幅は、第2スポットサイズ変換領域R
34では、第1メサ構造M
1の幅は、端面に近づくに従い幅が連続的に減少している。なお、
図3Bに示すように、第1メサ構造M
1の幅は、終端部において一定の幅(例えば0.5μm)とすることが好ましく、光集積素子300の端面まで延設せずに途中で途切れる(幅がゼロになる)構造とすることが好ましい。第2実施形態と同様に、スポットサイズ変換のバラツキを低減する効果を得るためである。
【0092】
ここで、
図3Aを参照しながら、製造方法の観点で光集積素子300の構成について説明する。
【0093】
光集積素子300の製造方法では、まず基板301としてのInP基板の上に、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、SSCコア308としてのGaInAsPと、下部クラッド層302としてのn−InPと、変調器コア306としてのAlGaInAs多重量子井戸層と、上部クラッド層304の一部としてのp−InPとを順次形成する。
【0094】
次に、上部クラッド層304の一部としてのp−InPの層の全面に、SiNx膜を堆積した後、位相変調器よりもやや広いパターンになるようにパターニングを施して、当該SiNx膜をマスクとして、AlGaInAs多重量子井戸層までをエッチングし、下部クラッド層302としてのn−InPの層を露出する。
【0095】
続いて、上記SiNx膜をそのまま選択成長のマスクとして用いて、MOCVD法により、導波路コア303としてのGaInAsPと、上部クラッド層304としてのp−InPとを順次積層する。このとき平坦領域と選択成長領域で概ね1:2程度の膜厚になるように調整する。その後、SiNx膜を除去した後、MOCVD法により、上部クラッド層304としてのp−InPとコンタクト層306としてのp−InGaAsとを積層する。
【0096】
次に、再度SiNx膜を全面に形成し、ローメサ構造である第1メサ構造M
1のパターニングおよびエッチングを行い、SiNx膜を一度除去した後にSiNx膜を全面に形成し、ハイメサ構造および第2メサ構造M
2のパターニングおよびエッチングを同時に行う。
【0097】
その後、公知の方法により、各部分にパシベーション膜、樹脂層やその開口部、電流注入や電圧印加のための電極などを形成する。表面の加工が終了した後に、基板を研磨して所望の厚さにし、必要であれば裏面に電極を形成する。さらに、基板へき開によって端面形成し、端面コーティングや素子分離を行って光集積素子300が完成する。
【0098】
以上の構造により、光集積素子300は、位相変調器のように導波路層が厚いデバイスと2段階のスポットサイズ変換器を一つの素子に集積することができ、そのスポットサイズ変換器は、1/e
2の全幅で測定したスポットサイズが1μm弱から3μm程度にまで広げることが可能となる。
【0099】
また、上記説明のように、光集積素子300は、2回の結晶成長と2回のメサ構造の形成によって、位相変調器のように導波路層コアが厚いデバイスと2段階のスポットサイズ変換器とを一つの素子に集積することができるので、製造が容易である。なお、上記光集積素子300では、第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2との2段階のメサ構造であるが、このメサ構造をより多段化しても、本発明の要旨を逸脱するものではない。
【0100】
以上説明した第3実施形態に係る光集積素子300は、位相変調器のように導波路層が厚い素子を集積しても、第1スポットサイズ変換領域R
33と第2スポットサイズ変換領域R
34との2段階のスポットサイズ変換器によって、効率よくスポットサイズ変換を行うことができる。すなわち、位相変調器のように導波路層が厚い素子では光の閉じ込めが強く、スポットサイズが小さいので、そのままでは、導波路コア303からSSCコア308へ光を移行させることが困難である。一方、本構成では、第1スポットサイズ変換領域R
33で導波路層の厚さを変更し、その後に導波路コア303からSSCコア308へ光を移行させるので、効率よくスポットサイズ変換を行うことが可能となる。
【0101】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る光集積素子400は、より実際的な実施形態であり、上記第1実施形態から第3実施形態の特徴のすべてを一つの光集積素子に適用した実施形態である。
図4は、第4実施形態に係る光集積素子400の概略上面図である。
【0102】
図4に示すように、第4実施形態に係る光集積素子400は、マッハツェンダ型のIQ変調器420とSOA430とSSC440とを一つの素子に集積した光集積素子である。例えば、光集積素子400は、端部T
1から入射した光を変調して端部T
2から出射する変調器として利用される。なお、IQ変調器とは、光の振幅および位相の両方に対して変調を加える変調器のことである。
【0103】
図4に示すように、光集積素子400は、IQ変調器420とSOA430およびSSC440との配置が直交する、いわゆるUターン型の構成となっており、光集積素子400の実装面積を小さくすることが可能である。
【0104】
しかも、Uターン型の構成である光集積素子400は、基板の面方位の関係から、IQ変調器420、SOA430およびSSC440のメサ構造を作製する際のウェットエッチングが容易になる。具体的には、SOA430およびSSC440は、基板の[011]方向に平行な方向にメサ構造を作製することが好ましく、IQ変調器420は、基板の[01−1]方向に平行な方向にメサ構造を作製することが好ましい。なお、IQ変調器420は、量子閉じ込めシュタルク効果を用いて位相変化を生じさせているが、[01−1]方向はポッケルス効果がシュタルク効果と同じ符号で働き、[011]方向はポッケルス効果がシュタルク効果と逆の符号で働く。ゆえに、[01−1]方向でメサ構造を作製すると、IQ変調器420における位相変化の効率がよくなる。つまり、紙面上下方向を基板の[011]方向とし、紙面左右方向を基板の[01−1]方向とした場合、IQ変調器420とSOA430およびSSC440との配置を直交させると、それぞれが基板の面方位に対して適した配置となる。
【0105】
なお、光集積素子400では、IQ変調器420よりも前段にのみSOA430およびSSC440が挿入されているが、後段にも挿入して良い。また、後段のみに挿入することもできる。
【0106】
図5Aは、第4実施形態に係る光集積素子の導波路方向断面図であり、
図5Bは、第4実施形態に係る光集積素子の上面図であり、
図5Cは、第4実施形態に係る光集積素子の断面図である。なお、
図5Aおよび
図5Bに記載の矢印(a)〜(f)は、
図5Cに記載の断面の箇所に対応している。また、
図5A〜
図5Cに示される光集積素子400は、
図4に示される領域Aに対応した部分のみを記載している。
【0107】
図5Aに示すように、光集積素子400は、基板401上に、SSCコア408と下部クラッド層402と導波路コア403と上部クラッド層404とコンタクト層405を順次積層したパッシブ導波路領域R
41と、基板401上に、下部クラッド層402と導波路コア403と量子井戸層407と上部クラッド層404とコンタクト層405とを順次積層した活性領域R
42と、基板401上に、SSCコア408と下部クラッド層402と変調器コア406と上部クラッド層404とコンタクト層405とを順次積層した変調器領域R
43を備えている。
【0108】
具体的には、光集積素子400では、基板401の上にSSCコア408が積層されている。例えば、基板401はInP基板である。一方、SSCコア408は、スポットサイズ変換用のコアであり、例えば屈折率3.34のGaInAsPによって構成され、層厚が100nmである。
【0109】
例えば、下部クラッド層402は、N型にドープされたInPであり、層厚は1500nmである。また、光集積素子400では、下部クラッド層402の上に変調器コア406および導波路コア403が形成されており、変調器コア406と導波路コア403が結晶学的に接続(突き合わせ接合)されている。例えば、変調器コア406は、AlGaInAs多重量子井戸によって構成され、層厚は500nmである。一方、例えば、導波路コア403は、屈折率3.39のGaInAsPによって構成され、下部クラッド層402および上部クラッド層404よりも屈折率が高くなるように構成されている。
【0110】
また、
図5Aに示すように、活性領域R
42における導波路コア403の近傍には、量子井戸層407が設けられている。ここで、導波路コア403の近傍とは、導波路コア403を導波している光のモードフィールドの範囲内で近接していることを意味し、導波路コア403と量子井戸層407との間には、導波路コア403及び量子井戸層407と異なる組成であり、上部クラッド層404と同じ組成の材料の層(中間層)が介在している。中間層は下部クラッド層402と同じ組成の材料でもよい。量子井戸層407は、例えば、GaInAsP多重量子井戸で構成され、層厚は100nmである。この量子井戸層407の構成は、第1実施形態と同様であり、SOAの活性層として機能する。
【0111】
変調器コア406、導波路コア403および量子井戸層407の上には、上部クラッド層404が積層されている。例えば、上部クラッド層404は、P型にドープされたInPであり、層厚が2μmである。さらに、上部クラッド層404の上には、コンタクト層405が積層されている。例えば、コンタクト層405は、P型にドープされたInGaAsであり、層厚が500nmである。
【0112】
パッシブ導波路領域R
41は、変調器コア406との接続部(図中(b)付近)から所定の箇所(図中(c)付近)までの区間に、導波路層の層厚が変化している第1スポットサイズ変換領域R
44を含んでいる。第1スポットサイズ変換領域R
44における導波路コア403は、変調器コア406との接続部の層厚が400nmであり、そこから層厚が200nmまで減少する。第1スポットサイズ変換領域R
44における導波路コア403の層厚の変化により光の閉じ込め力も変化し、導波路コア403を導波している光のモードフィールド径も変換される。
【0113】
また、パッシブ導波路領域R
41は、後述の
図5Bおよび
図5Cに示すように、2段階のメサ構造を有する第2スポットサイズ変換領域R
45を含んでいる。すなわち、光集積素子400は、第1スポットサイズ変換領域R
44と第2スポットサイズ変換領域R
45とによる2段階のスポットサイズ変換器が組み込まれた構成である。また、第2スポットサイズ変換領域R
45は、光集積素子400の端面に隣接して配置されている。
【0114】
図5Aに示すように、活性領域R
42は、第1スポットサイズ変換領域R
44と第2スポットサイズ変換領域R
45との間に配置されている。したがって、光集積素子400では、変調器領域R
43、第1スポットサイズ変換領域R
44、活性領域R
42、第2スポットサイズ変換領域R
45の順で配列されており、第2スポットサイズ変換領域R
45にて光集積素子400の端面に接する。なお、当該順序は、必ずしも光の進行方向を意味するものではなく、各領域の間に、他の機能を有する領域が挿入される可能性を排除するものではない。
【0115】
ここで、
図5A〜
図5Cを並べて参照しながら、光集積素子400の各領域におけるメサ構造を説明する。
【0116】
図5A〜
図5Cに示すように、光集積素子400におけるメサ構造は、3種類存在する。すなわち、光集積素子400は、変調器領域R
43および第1スポットサイズ変換領域R
44では、導波路コア403を貫通して下部クラッド層402の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成され、第1スポットサイズ変換領域R
44以外のパッシブ導波路領域R
41では、コンタクト層405および上部クラッド層404がメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1が形成され、第2スポットサイズ変換領域R
45では、導波路コア403と下部クラッド層402とSSCコア408と基板401の一部とがメサ状に突出した第2メサ構造M
2が形成されている。なお、第2スポットサイズ変換領域R
45は、第1スポットサイズ変換領域R
44以外のパッシブ導波路領域R
41の一部を成すので、第2スポットサイズ変換領域R
45は、第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2とが形成されていることになる。
【0117】
より具体的には、
図5C(a)に示すように、光集積素子400における変調器領域R
43では、変調器コア406を貫通して下部クラッド層402の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。したがって、
図5Bに示すように、光集積素子400における位相変調器の領域を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層402が示されている。
【0118】
図5C(b)および(c)に示すように、光集積素子400における第1スポットサイズ変換領域R
44では、導波路コア403を貫通して下部クラッド層402の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が形成されている。ただし、
図5C(b)および(c)を比較すると解るように、スポットサイズの変換の作用を持たせるように導波路コア403の層厚が異なっている。また、
図5Bに示すように、第1スポットサイズ変換領域R
44を上から見た図では、メサ構造の両側に下部クラッド層402が示されている。
【0119】
図5C(d)に示すように、光集積素子400における第1スポットサイズ変換領域R
44でも第2スポットサイズ変換領域R
45でもないパッシブ導波路領域R
41では、上部クラッド層404までがメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1が形成されている。
図5Bに示すように、第1スポットサイズ変換領域R
44でも第2スポットサイズ変換領域R
45でもないパッシブ導波路領域R
41を上から見た図では、メサ構造の両側に導波路コア403が示されている。ここで、メサ構造の両側は、上部クラッド層404が表面に出ていても良い。
【0120】
なお、光集積素子400においても、第1実施形態に係る光集積素子100と同様に、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路とが途中で変換されている。よって、光集積素子400においても、第1実施形態に係る光集積素子100と同様に、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間に中間領域を設け、当該中間領域ではハイメサ構造およびローメサ構造とは異なる光の閉じ込めを実現することにより、ハイメサ構造の導波路とローメサ構造の導波路との間の光学接続における損失を低減させることが好ましい。
【0121】
図5C(e)に示すように、光集積素子400における活性領域R
42では、量子井戸層407の上までの上部クラッド層404がメサ状に突出したローメサ構造が形成されている。したがって、
図5Bに示すように、活性領域R
42を上から見た図では、メサ構造の両側に量子井戸層407が示されている。ここで、メサ構造の両側は、上部クラッド層404が表面に出ていても良い。
【0122】
図5C(f)に示すように、光集積素子400における第2スポットサイズ変換領域R
45では、上部クラッド層404までがメサ状に突出したローメサ構造である第1メサ構造M
1と導波路コア403と下部クラッド層402とSSCコア408と基板401の一部とがメサ状に突出した第2メサ構造M
2とが形成されている。光集積素子400における第2スポットサイズ変換領域R
45の第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2とは、第2実施形態に係る光集積素子200と同様に、導波路コア403を導波している光のモードフィールドがSSCコア408へ断熱的に移っていくことにより、スポットサイズの変換を行うものである。
【0123】
図5A〜
図5Cに示すように、光集積素子400におけるメサ構造の幅は、第2スポットサイズ変換領域R
45を除いて一定であり、例えば2.0μmである。一方、光集積素子400におけるメサ構造の幅は、第2スポットサイズ変換領域R
45では、第1メサ構造M
1の幅は、端面に近づくに従い幅が連続的に減少している。なお、
図5Bに示すように、第1メサ構造M
1の幅は、終端部において一定の幅(例えば0.5μm)とすることが好ましく、光集積素子400の端面まで延設せずに途中で途切れる(幅がゼロになる)構造とすることが好ましい。第2実施形態と同様に、スポットサイズ変換のバラツキを低減する効果を得るためである。
【0124】
ここで、
図5Aを参照しながら、製造方法の観点で光集積素子400の構成について説明する。
【0125】
光集積素子400の製造方法では、まず基板401としてのInP基板の上に、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、SSCコア408としてのGaInAsPと、下部クラッド層402としてのn−InPと、変調器コア406としてのAlGaInAs多重量子井戸層と、上部クラッド層404の一部としてのp−InPとを順次形成する。
【0126】
次に、上部クラッド層404の一部としてのp−InPの層の全面に、SiNx膜を堆積した後、位相変調器よりもやや広いパターンになるようにパターニングを施して、当該SiNx膜をマスクとして、AlGaInAs多重量子井戸層までをエッチングし、下部クラッド層402としてのn−InPの層を露出する。
【0127】
続いて、上記SiNx膜をそのまま選択成長のマスクとして用いて、MOCVD法により、導波路コア403としてのGaInAsPと、導波路コア403と量子井戸層407との間をオフセットするためのp−InPと、量子井戸層407としてのGaInAsP多重量子井戸と、上部クラッド層404としてのp−InPとを順次積層する。このとき平坦領域と選択成長領域で概ね1:2程度の膜厚になるように調整する。
【0128】
次に、上記SiNx膜を一度除去し、新たなSiNx膜を全面に形成し、位相変調器でもSOAでもない領域を開口するようにパターニングを行う。そして、このSiNx膜をマスクとして、p−InPの層とGaInAsP多重量子井戸の層とをエッチングする。その後、SiNx膜を除去した後、MOCVD法により、上部クラッド層404の一部としてのp−InPおよびコンタクト層405としてのp−InGaAsを積層する。
【0129】
次に、再度SiNx膜を全面に形成し、ローメサ構造である第1メサ構造M
1のパターニングおよびエッチングを行い、SiNx膜を一度除去した後にSiNx膜を全面に形成し、ハイメサ構造および第2メサ構造M
2のパターニングおよびエッチングを同時に行う。
【0130】
その後、公知の方法により、各部分にパシベーション膜、樹脂層やその開口部、電流注入や電圧印加のための電極などを形成する。表面の加工が終了した後に、基板を研磨して所望の厚さにし、必要であれば裏面に電極を形成する。さらに、基板へき開によって端面形成し、端面コーティングや素子分離を行って光集積素子400が完成する。
【0131】
図6は、パシベーション膜および電極の形成例を示す断面図を示している。
図6(a)は、
図4におけるI−I断面に対応し、
図6(b)は、
図4におけるII−II断面に対応している。
図6(a)に示すように、IQ変調器420のメサ構造の断面では、コンタクト層405と上部クラッド層404と変調器コア406と下部クラッド層402の一部までがメサ状に突出したハイメサ構造が例えばSiO
2やSiNxを材料としたパシベーション膜410によって被膜され、さらに、パシベーション膜410の外側に例えばBCBやポリイミドなどの樹脂を材料とした樹脂層411が形成されている。そして、コンタクト層405上に形成された電極409aから下部クラッド層402上に形成された接地電極GNDまで電流が流れる構成である。一方、
図6(b)に示すように、SOA430のメサ構造の断面では、コンタクト層405と上部クラッド層404までがメサ状に突出したローメサ構造が例えばSiO
2やSiNxを材料としたパシベーション膜410によって被膜されている。そして、コンタクト層405上に形成された電極409bから下部クラッド層402上に形成された接地電極GNDまで電流が流れる構成である。
【0132】
以上の構造により、光集積素子400は、IQ変調器420のように導波路層が厚いデバイスとSOA430と2段階のSSC440とを一つの素子に集積することができ、そのスポットサイズ変換器は、1/e
2の全幅で測定したスポットサイズが1μm弱から3μm程度にまで広げることが可能となる。
【0133】
また、上記説明のように、光集積素子400は、IQ変調器420のように導波路層が厚いデバイスとSOA430と2段階のSSC440とを一つの素子に集積することができる。なお、上記光集積素子400では、第1メサ構造M
1と第2メサ構造M
2との2段階のメサ構造であるが、このメサ構造をより多段化しても、本発明の要旨を逸脱するものではない。
【0134】
以上説明した第4実施形態に係る光集積素子400は、第1実施形態から第3実施形態に係る光集積素子におけるすべての利点を享受することができるものの、製造時において、結晶成長回数およびメサ構造の形成回数が増加することがないという利点がある。
【0135】
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態に係る光送信機モジュールの概略構成図である。第5実施形態に係る光送信機モジュール500は、上記第1実施形態から第4実施形態に係る光集積素子のうち何れか1つを用いた光送信機モジュールであるが、ここでは、第4実施形態に係る光集積素子400を用いた光送信機モジュールを例示する。
【0136】
図7に示すように、光送信機モジュール500は、波長可変半導体レーザ501と、第1レンズ502a,502bと、光集積素子400と、第2レンズ503a,503bと、光ファイバ504とを備えている。
【0137】
波長可変半導体レーザ501は、搬送波となるレーザ光を出力する光源である。波長可変半導体レーザ501から出射したレーザ光は、第1レンズ502aによってコリメートされた後、第1レンズ502bによって、光集積素子400の入射端面に入射される。
【0138】
光集積素子400は、先述のようにIQ変調器とSOAとSSCとを1つの素子に集積した光集積素子であり、光集積素子400の入射端面に入射されたレーザ光は、SSCによってスポットサイズが変換され、かつ、SOAによって光強度が増幅され、IQ変調器によって変調が加えられる。
【0139】
光集積素子400から出射したレーザ光は、第2レンズ503aによってコリメートされた後、第2レンズ503bによって、光ファイバ504の端面に入射され、光ファイバ504によって、光送信機モジュール500の外部に導出される。
【0140】
上記構成の光送信機モジュール500は、光集積素子400が備えるSSCの作用により、波長可変半導体レーザ501から光集積素子400へ入射する際の結合のトレランスが緩和されている。また、光集積素子400が備えるSSCの作用により、光集積素子400から光ファイバ504へ入射する際の結合のトレランスも緩和されている。
【0141】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明の範疇に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。例えば上記実施形態の説明で用いた光集積素子の層構成は、順番が説明の態様であればよく、間に別途の半導体層を挿入したとしても、本発明の範疇に含まれる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。