【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。ただし本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の粘着剤としては、綜研化学株式会社製SK−2057を使用した。
【0042】
(1)片面保護フィルム付き偏光子A、Bの作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液(液温30℃)中に60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、4分間乾燥させて(雰囲気温度50℃)、厚さ20μmの偏光子を得た。
市販のセルロースアシレート系フィルム「TD80UL」(富士フイルム株式会社製)を準備し、水酸化ナトリウム濃度1.5モル/リットルで液温55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、硫酸濃度0.005モル/リットルで液温35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に上記セルロースアシレート系フィルムを十分に乾燥させ(雰囲気温度120℃)、偏光子保護フィルムAを作製した。
上記で作製した偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムAをポリビニルアルコール系接着剤で貼り合わせて、偏光子保護フィルムAと偏光子が積層された、片面保護フィルム付き偏光板Aを作製した。
次に、表面に拡散層(光散乱機能層)を持つ市販のセルロースアシレート系フィルム「CVLX」(富士フイルム株式会社製)を準備し、水酸化ナトリウム濃度1.5モル/リットルで液温55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、硫酸濃度0.005モル/リットルで液温35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に上記セルロースアシレート系フィルムを十分に乾燥させ(雰囲気温度120℃)、偏光子保護フィルムBを作製した。
上記で作製した偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムBをポリビニルアルコール系接着剤で貼り合わせて、偏光子保護フィルムBと偏光子が積層された、片面保護フィルム付き偏光板Bを作製した。
【0043】
(2)偏光板1、5の作製
(アルカリ鹸化処理)
市販のセルロースアシレート系フィルムZRF25(富士フイルム株式会社製)を、温度60℃の誘電式加熱ロールに通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m
2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を塗布量3ml/m
2で塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、雰囲気温度70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したZRF25を作製した。
【0044】
アルカリ溶液組成
──────────────────────────────────
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤SF−1:C
14H
29O(CH
2CH
2O)
20H
1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
──────────────────────────────────
【0045】
(配向膜の形成)
上記のアルカリ鹸化処理を施したZRF25(支持体)上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで塗布量24ml/m
2で塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥した。
【0046】
【表1】
【0047】
【化1】
【0048】
(ディスコティック液晶化合物(重合性液晶化合物)を含有する光学異方性層C1の形成)
上記のアルカリ鹸化処理を施したZRF25上に形成した配向膜上に、#3のワイヤーバーで下記の組成のディスコティック液晶(ディスコティック液晶化合物)を含む塗布液を50m連続塗布した。
(ディスコティック液晶層の塗布液の組成)
下記のディスコティック液晶化合物(B) 26.2質量%
下記のディスコティック液晶化合物(C) 6.6質量%
化合物I−6 0.15質量%
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学株式会社製) 3.2質量%
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬株式会社製) 0.4質量%
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.1質量%
メチルエチルケトン 62.0質量%
【0049】
【化2】
【0050】
【化3】
【0051】
上記塗布液が塗布された後、続いて雰囲気温度130℃の乾燥ゾーンで2分間加熱乾燥させ、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、UV照射ゾーンにて80℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、4秒間UV照射しディスコティック液晶化合物を重合させた。その後、室温まで放冷し、巻き取りを行った。作製した光学異方性層C1を有する位相差層C1(光学異方性層C1、配向膜および支持体の積層体)について、偏光子と貼り合わせる前に、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器株式会社製)を用いて測定を行ったところ、光学的に負の屈折率異方性を示すネガティブCプレートであり、Re(550)=0nm、Rth(550)=232nmであった。光学異方性層C1のディスコティック液晶化合物は±1°の範囲で水平配向していた。光学異方性層C1の厚みは2.0μmであった。
上記のように作製した、支持体(アルカリ鹸化処理を施したZRF25)、配向膜および光学異方性層Cの積層体の光学異方性層C側を、粘着剤を用いて(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子側に面するように貼り合わせた。このようにして、偏光子保護フィルム、偏光子、粘着剤、光学異方性層C、配向膜および支持体がこの順に積層した、偏光板1を作製した。
また、上記のように作製した、支持体、配向膜および光学異方性層Cの積層体の光学異方性層C側を、粘着剤(SK−2057、綜研化学株式会社製)を用いて(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Bの偏光子側に面するように貼り合わせた。このようにして、偏光子保護フィルム(拡散層付き)、偏光子、粘着剤、光学異方性層C、配向膜および支持体がこの順に積層した、偏光板5を作製した。
【0052】
(3)偏光板14〜17の作製
ディスコティック液晶層の塗布液の組成のうち、メチルエチルケトンの量を60〜65質量%の間で変更した点以外、偏光板1の作製方法と同じ方法にて、光学異方性層C14〜C17を作製した。位相差層C14〜C17は、光学異方性層、配向膜および支持体の積層体である。光学異方性層C14を有する位相差層C14のRth(550)は222nm、光学異方性層C15を有する位相差層C15のRth(550)は227nm、光学異方性層C16を有する位相差層C16のRth(550)は227nm、光学異方性層C17を有する位相差層C17のRth(550)は242nmであった。ここで作製された位相差層C14〜C17は、光学的に負の屈折率異方性を示すネガティブCプレートであり、Re(550)=0nmであり、各光学異方性層の厚みは2.0μmであった。各位相差層を光学異方性層を粘着剤を用いて(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子側に面するように貼り合わせた。このようにして、偏光子保護フィルム、偏光子、粘着剤、光学異方性層、配向膜および支持体がこの順に積層した、偏光板14〜17を作製した。
【0053】
(4)偏光板2の作製
偏光板1と同様にZRF25(富士フイルム株式会社製)のバンド面にアルカリ鹸化処理を行った後、特開2012−155308号公報の実施例3の記載を参考に、光配向膜用塗布液を調製し、ZRF25のアルカリ鹸化処理を行ったバンド面にワイヤーバーで塗布した。60℃の温風で60秒乾燥し、光配向膜付きZRF25を作製した。
作製した光配向膜付きZRF25に、大気下にて超高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射した。この際用いる紫外線の照度は、UV−A領域(紫外線A波、波長380nm〜320nmの積算)において5mJ/cm
2とした。
偏光板1の作製に使用したものと同じディスコティック液晶(円盤状液晶性化合物)を含む塗布液を塗布した後、続いて雰囲気温度130℃の乾燥ゾーンで2分間加熱乾燥させ、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、UV照射ゾーンにて雰囲気温度80℃で120W/cmの高圧水銀灯を用いて、4秒間UV照射してディスコティック液晶化合物を重合させた。その後、室温まで放冷し、巻き取りを行った。こうして光学異方性層C2、配向膜および支持体の積層体を作製した。
上記のように作製した積層体を、光学異方性層C2側が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの偏光子側に面するように粘着剤を用いて貼り合わせた。その後、支持体と配向膜を剥がした。
このようにして、偏光子保護フィルム、偏光子、粘着剤および光学異方性層C2(位相差層C2)がこの順に積層した、偏光板2を作製した。位相差層C2は、光学的に負の屈折率異方性を示すネガティブCプレートであり、Re(550)=0nm、Rth(550)=232nm、光学異方性層C2の厚みは2.0μmであった。光学異方性層C2のディスコティック液晶化合物は±1°の範囲で水平配向していた。
【0054】
(5)偏光板3の作製
偏光板1と同様にZRF25(富士フイルム株式会社製)のバンド面にアルカリ鹸化処理を行った後、特開2012ー155308号公報の実施例3の記載を参考に、光配向膜用塗布液を調製し、ZRF25のアルカリ鹸化処理を行ったバンド面にワイヤーバーで塗布した。60℃の温風で60秒乾燥し、光配向膜付きZRF25を作製した。
作製した光配向膜付きZRF25に、大気下にて超高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(ProFlux PPL02、Moxtek社製)を光配向膜の面と平行になるようにセットして露光し、光配向処理を行った。この際用いる紫外線の照度は、UV−A領域(紫外線A波、波長380nm〜320nmの積算)において10mJ/cm
2とした。
続いて、下記の光学異方性層A形成用塗布液を作製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層A形成用塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記重合性化合物X−1 20.00質量部
下記液晶化合物L−1 40.00質量部
下記液晶化合物L−2 40.00質量部
下記重合開始剤S−1 3.00質量部
下記化合物A−1 0.10質量部
レベリング剤(下記化合物T−1) 0.10質量部
メチルエチルケトン(溶媒) 200.00質量部
シクロペンタノン(溶媒) 200.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0055】
【化4】
【0056】
【化5】
【0057】
次いで、光配向処理面上に光学異方性層A形成用塗布液を、バーコーターを用いて塗布した。膜面温度100℃で20秒間加熱熟成し、55℃まで冷却した後に、空気下にて空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用いて300mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、光学異方性層A付きのZRF25を形成した。この光学異方性層A面が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子側に面するように、粘着剤を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光子保護フィルム、偏光子、光学異方性層A、配向膜、および支持体がこの順に配置された偏光板3を作製した。形成された光学異方性層Aは、偏光板の吸収軸に対し遅相軸方向が垂直であった(すなわち、液晶化合物が偏光板の吸収軸に対して垂直に配向していた)。
偏光板3は、光学異方性層A、配向膜および支持体の積層体である位相差層Aを有する。位相差層Aについて、偏光子と貼り合わせる前に、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器株式会社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸のチルト角を測定したところ、Re(550)が143nm、Rth(550)が72nm、Re(550)/Re(450)が1.12、Re(650)/Re(550)が1.01、Re(450)が128nm、Re(650)が144nm、光軸のチルト角は0°であり、光学的に正の異方性を示すポジティブAプレートであり、液晶化合物はホモジニアス配向であった。上記の通り、位相差層Aは、「Re(450)≦Re(550)≦Re(650)」を満足する。光学異方性層Aの厚みは、2.5μmであった。
【0058】
(6)偏光板31〜34の作製
光学異方性層A形成用塗布液の塗布量を変更した点以外は光学異方性層Aの形成方法と同じ方法で、
Re(550)が133nm、Rth(550)が67nmである位相差層A31、
Re(550)が138nm、Rth(550)が69nmである位相差層A32、
Re(550)が148nm、Rth(550)が74nmである位相差層A33、
Re(550)が153nm、Rth(550)が77nmである位相差層A34、
を形成した。上記の点以外は偏光板3の作製方法と同じ方法で位相差層A31を有する偏光板31、位相差層A32を有する偏光板32、位相差層A33を有する偏光板33、および位相差層A34を有する偏光板34をそれぞれ作製した。位相差層A31〜A34は、光学異方性層、配向膜および支持体の積層体であり、光学的に正の異方性を示すポジティブAプレートであり、Re(550)/Re(450)は1.12、Re(650)/Re(550)は1.01、光軸のチルト角は0°であり、液晶化合物はホモジニアス配向であった。位相差層A31〜A34は、Re(450)およびRe(650)が以下の通りであり、いずれも「Re(450)≦Re(550)≦Re(650)」を満足する。
位相差層A31:Re(450)=119nm、Re(550)=133nm、Re(650)=134nm
位相差層A32:Re(450)=123nm、Re(550)=138nm、Re(650)=139nm
位相差層A33:Re(450)=132nm、Re(550)=148nm、Re(650)=149nm
位相差層A34:Re(450)=137nm、Re(550)=153nm、Re(650)=155nm
また、位相差層A31〜A34に含まれる光学異方性層の厚みは、以下の通りであった。
位相差層A31に含まれる光学異方性層:2.3μm
位相差層A32に含まれる光学異方性層:2.4μm
位相差層A33に含まれる光学異方性層:2.7μm
位相差層A34に含まれる光学異方性層:2.9μm
偏光板31〜34の作製では、偏光板3の作製と同様に光学異方性層側の面が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子側に面するように、粘着剤を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光子保護フィルム、偏光子、光学異方性層、光配向膜および支持体がこの順に配置された偏光板31〜34を作製した。
【0059】
(7)偏光板4の作製
(光配向膜付き偏光子の作製)
特開2012−155308号公報の実施例3の記載を参考に、光配向膜用塗布液を調製し、上記(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子側の面にワイヤーバーで塗布した。60℃の温風で60秒乾燥し、光配向膜付き偏光子を作製した。
作製した光配向膜付き偏光子に、大気下にて超高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(ProFlux PPL02、Moxtek社製)を光配向膜の面と平行になるようにセットして露光し、光配向処理を行った。この際用いる紫外線の照度は、UV−A領域(紫外線A波、波長380nm〜320nmの積算)において10mJ/cm
2とした。
次いで、偏光板3の作製時に使用した光学異方性層A形成用塗布液と同一組成の液を、バーコーターを用いて光配向処理面上に塗布した。膜面温度100℃で20秒間加熱熟成し、55℃まで冷却した後に、空気下にて空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用いて300mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより偏光板4を形成した。得られた偏光板4は、偏光子保護フィルム、偏光子、配向膜および光学異方性層A4がこの順に配置されたものである。偏光板4は、配向膜と光学異方性層A4との積層体である位相差層A4を含む。位相差層A4は、Re(550)が143nm、Rth(550)が72nm、Re(550)/Re(450)が1.12、Re(650)/Re(550)が1.01、Re(450)が128nm、Re(650)が144nm、光軸のチルト角は0°であり、光学的に正の異方性を示すポジティブAプレートであり、厚みは2.5μmであり、液晶化合物はホモジニアス配向である。
【0060】
(8)偏光板6の作製
上記(2)の途中過程で作製した、ZRF25、配向膜、光学異方性層C1の光学異方性層C1側を、上記(7)で作製した偏光板4の光学異方性層A4側に粘着剤を用いて貼り合わせた。その後、ZRF25と配向膜を剥がすことにより、偏光子保護フィルム、偏光子、配向膜、光学異方性層A4、粘着剤および光学異方性層C1がこの順で積層された偏光板6を作製した。偏光板6は、光学異方性層C1からなる位相差層と、配向膜と光学異方性層A4との積層体である位相差層とを含む。光学異方性層C1からなる位相差層は、光学的に負の屈折率異方性を示すネガティブCプレートであり、Re(550)=0nm、Rth(550)=232nmであった。光学異方性層C1のディスコティック液晶化合物は±1°の範囲で水平配向していた。光学異方性層C1の厚みは2.0μmであった。
配向膜と光学異方性層A4との積層体である位相差層は、Re(550)が143nm、Rth(550)が72nm、Re(550)/Re(450)が1.12、Re(650)/Re(550)が1.01、光軸のチルト角は0°であり、光学的に正の異方性を示すポジティブAプレートであり、厚みは2.5μmであり、液晶化合物はホモジニアス配向である。
【0061】
(9)偏光板7の作製
市販のセルロースアシレート系フィルムZRF25(富士フイルム株式会社製)を、(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子に面する側に粘着剤を用いて貼り合わせ、偏光板7を作製した。このとき、ZRF25のMD(マシン・ディレクション)が片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子の吸収軸と一致するようにした。
偏光板7では、ZRF25が位相差層であり、そのRe(550)は1nm、Rth(550)は0nmであった。
【0062】
(10)偏光板8の作製
(セルロースアシレートの調製)
特開平10−45804号公報および特開平08−231761号公報に記載の方法により、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。このとき、カルボン酸の種類および量を調整することにより、アシル基の種類および置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。更にこのセルロースアシレート(セルロースアセテート)の低分子量成分をアセトンで洗浄し除去し、平均アシル置換度が2.43のセルロースアシレートおよび平均アシル置換度が2.81のセルロースアシレートを得た。
【0063】
(コア層形成用ドープの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液(以下、ドープとも言う)を調製した。得られたドープをコア層形成用ドープA1とした。
・上記で調製したセルロースアセテート(平均アシル置換度2.43)
122質量部
・下記化合物−1 4.9質量部
・下記化合物−2 2.8質量部
・メチレンクロライド 548質量部
・メタノール 82質量部
固形分濃度は17質量%、セルロースアセテート濃度は16.2質量%とした。
【0064】
化合物−1
下記ジカルボン酸とジオールからなるエステルオリゴマー
【0065】
【表2】
【0066】
【化6】
【0067】
(スキン層形成用ドープの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、スキン層用ドープを調製した。
・上記で調製したセルロースアセテート(平均アシル置換度2.81)
87質量部
・上記化合物−1 3.5質量部
・上記化合物−2 2.0質量部
・メチレンクロライド 455質量部
・メタノール 70質量部
固形分濃度は15質量%、セルロースアセテート濃度は14.1質量%とした。
【0068】
(セルロースアシレートフィルムの製膜)
(流延)
上記で調製したコア層形成用ドープおよびスキン層形成用ドープを用いて、バンド流延機を用いて流延した。ドープを流延する際には、走行するエンドレスバンドの上に流延ダイから流延した。バンド上のフィルムの残留溶媒量は、任意の時点での非接触式膜厚計によって測定した膜厚をd1とし、d1を測定したウェブを110℃で3時間乾燥させ、完全に乾燥された後に同方法で測定した膜厚をd2として、d1およびd2を用いて次式に基づき計算した。
残留溶媒量={(乾燥途中のフィルム膜厚d1−完全に乾燥されたフィルムの膜厚d2)/完全に乾燥されたフィルムの膜厚d2}×100%
【0069】
(バンド上の乾燥方法)
ダイから両ドープを吐出した後の温度を制御するために、バンド裏面温度および乾燥風温度を次のように制御した。バンド裏面温度は、回転ロールを9℃、バンド裏面の温度制御装置の温度を15℃とすることにより制御し、乾燥風温度はバンド上の乾燥装置の温度を30℃に設定することで制御した。その結果、ダイから揮発分300%、揮発分300〜150%、揮発分150〜100%のそれぞれの膜温を、9〜12℃、12〜18℃、18〜22℃に制御した。その後、更に乾燥し、溶剤量が20%程度でバンドから剥ぎ取った。その後、給気温度197℃のテンターゾーンで、50N/mのテンションを加えながら、幅方向に1.34倍延伸してセルロースアシレートフィルムを製造した。このとき、延伸後の膜厚が40μmになるように流延膜厚を調整した。このフィルムをフィルム8として用いた。
【0070】
(レターデーション)
得られたフィルム8について、波長550nmにおけるReおよびRthを前述の方法により自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて計測したところ、Re(550)=50nm、Rth(550)=125nmであった。
上記と同様の方法を用いて、波長450nm、550nm、650nmにおけるReおよびRthを求めたところ、フィルムのReおよびRthは、ともに波長が長波長になる程大きくなるという、逆分散性を示した。
【0071】
(偏光板の作製)
上記で作製したフィルム8のMD(マシン・ディレクション)が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と一致するよう片面保護フィルム付き偏光子Aの偏光子に面する側に粘着剤を用いて貼り合わせ、偏光板8を作製した。
【0072】
(11)偏光板9の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 17.0質量部
メチレンクロライド 361.8質量部
メタノール 54.1質量部
【0073】
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル株式会社製)
0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
【0074】
レターデーション発現剤(2)の組成を、下記表に示す。下記表中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。レターデーション発現剤(2)は、非リン酸系エステル系化合物である。レターデーション発現剤(2)の末端はアセチル基で封止されている。
【0075】
【表3】
【0076】
(セルロースアシレート試料の作製)
上記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚114μmのコア層になるように、上記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層およびスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度170℃でテンター搬送した。その後フィルムからクリップを外して雰囲気温度130℃で20分間乾燥させた後、延伸温度180℃で幅方向に23%、テンターを用いて更に横延伸し、フィルムを作製した。このフィルムをフィルム9として用いた。自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器株式会社製)を用いて測定したところ、フィルム9の波長550nmにおけるRe(550)は61nm、Rth(550)は208nmであった。
上記と同様の方法を用いて、波長450nm、550nm、650nmにおけるReおよびRthを求めたところ、フィルム9のReおよびRthは、ともに波長が長波長になる程大きくなるという、逆分散性を示した。
上記のように作製したフィルム9を、遅相軸が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と直交するように片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子に面する側に粘着剤を用いて貼り合わせ、偏光板9を作製した。
【0077】
(12)偏光板10の作製
市販のセルロースアシレート系フィルム(フジタック TD80UL、富士フイルム株式会社製)を、粘着剤を用い、MD(マシン・ディレクション)が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と一致するよう片面保護フィルム付き偏光子Aの偏光子に面する側に貼り合わせ、偏光板10を作製した。偏光板10では、上記セルロースアシレート系フィルムが位相差層であり、そのRe(550)は3nm、Rth(550)は43nmであった。
【0078】
(13)偏光板11、12、13の作製
特許第3648240号明細書の実施例1に記載の方法により、Re(550)=143nm、Rth(550)=72nm、厚み85.5μmのフィルムAと、Re(550)=0nm、Rth(550)=232nm、厚み158μmのフィルムCを得た。
作製したフィルムAは、粘着剤を用い、遅相軸が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と直交するように、片面保護フィルム付き偏光板Aの偏光子に面する側に貼合し、偏光板11を作製した。偏光板11では、フィルムAが位相差層である。
作製したフィルムCは、粘着剤を用い、MD(マシン・ディレクション)が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と一致するように、片面保護フィルム付き偏光子Aの偏光子に面する側に貼合し、偏光板12を作製した。偏光板12では、フィルムCが位相差層である。
更に、フィルムAの遅相軸が(1)で作製した片面保護フィルム付き偏光子Aの吸収軸と直交するように、片面保護フィルム付き偏光子Aの偏光子に面する側に粘着剤を使用して貼り合わせた後、更に同じ粘着剤を使用してフィルムCを貼り合わせることにより、偏光板13を作製した。偏光板13では、フィルムAおよびフィルムCが、それぞれ位相差層である。
【0079】
(14)COA構造を有するVA型液晶セルの準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報の実施例20に従い、TFT(Thin Film Field Effect Transistor)素子を作製し、更にTFT素子上に保護膜を形成した。
続いて、上記保護膜上に、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報の実施例17、18および19に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、かつ特表2008−516262号公報の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板を作製した。ただし、各画素の着色感光性樹脂組成物における顔料の濃度は半分にし、更に塗布量を調整し、ブラック画素が4.2μmに、レッド素子、グリーン素子およびブルー画素がいずれも3.5μmになるようにした。更に、カラーフィルタにコンタクトホールを形成した後、上記カラーフィルタ上に、TFT素子と電気的に接続したITO(Indium Tin Oxide)の透明画素電極を形成した。次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
別途、対向基板として、ITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、COA基板および対向基板の透明電極にそれぞれPVA(Patterned Vertical Alignment)モード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB(Red Green Blue)画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が316nmであるものを選別し、実施例および比較例の液晶セル(COA構造を有するVA型液晶セル)として使用した。Δnd(590)は、液晶セルの液晶層の厚さd(nm)と液晶層の波長590nmにおける屈折率異方性Δnとの積である。
【0080】
(15)バックライトユニットBL1の準備
BenQ社55RW6600に使用されていたバックライトユニットをBL1として使用した。BL1を含む液晶表示装置において、液晶セルは、COA基板側をバックライトユニット側に向けて設置した。BL1の上下方向の発光角度分布の半値半幅は、25°であった。
【0081】
(16)バックライトユニットBL2の準備
ルーバーフィルムPF12.1WS(3M社)を、液晶表示装置の上下方向の光をカットするようバックライトユニットBL1の上に設置し、BL2として使用した。BL2の上下方向の発光角度分布の半値半幅は、25°であった。
【0082】
(17)実施例1〜12、比較例1〜7の液晶表示装置の作製
実施例1の液晶表示装置を、以下のように作製した。
偏光板1を、片面保護フィルム付き偏光板Aの保護フィルムとは反対側の面を粘着剤を使用して液晶セルの対向基板側の表面に貼り合わせ、次に偏光板3を片面保護フィルム付き偏光板Aの保護フィルムとは反対側の面を粘着剤を使用して液晶セルのCOA基板側の表面に貼り合わせた。このとき、液晶セルの対向基板側の表面に貼り合わせた偏光板の吸収軸と、液晶セルのCOA基板側の表面に貼り合わせた偏光板の吸収軸が直交するように配置した。更に、偏光板を貼り合わせた液晶セルを、液晶セルのCOA基板側がバックライトユニットBL1側に面するように重ね合わせ、液晶表示装置を完成させた。この液晶表示装置の評価時には、液晶表示装置の表面が地面に対して垂直になり、かつ液晶セルの対向基板側に貼り合わせた偏光板の吸収軸が、水平方向となるように設置した。
実施例2〜12、比較例1〜7の液晶表示装置は、偏光板1〜17、偏光板31〜34を、表4に記載の構成で粘着剤を使用して液晶セルに貼り合わせてバックライトユニットBL1またはBL2に載せた点以外は実施例1の液晶表示装置と同様に完成させた。
【0083】
(18)光漏れ量
L(φ,60)、L(0,60)、 L(180,60)の測定
実施例および比較例の各液晶表示装置について、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において液晶パネルの法線方向から所定の極角のときに測定された白表示の輝度値として、光漏れ量
L(φ,60)、L(0,60)およびL(180,60)をそれぞれ測定した。光漏れ量
L(φ,60)については、−30〜30°の範囲および150〜210°の範囲で5°間隔で方位角φを変更して光漏れ量を求めた。測定時、測定器と液晶パネルとの間の距離は700mmに設定した。
実施例および比較例の各液晶表示装置について、測定された光漏れ量
L(φ,60)の最大値およびL(0,60)+L(180,60)の値を表4に示す。光漏れ量
L(φ,60)の最大値がL(0,60)+L(180,60)の値より小さいことは、式1を満足することを意味する。
【0084】
(19)偏光板のヘイズの測定
先に記載した方法と同じ方法により上記の各偏光板を作製し、作製した偏光板から偏光板試料(40mm×80mm)を切り出した。こうして得られた偏光板試料のヘイズを、雰囲気温度25℃で相対湿度60%の環境下でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K−6714に従って測定した。
【0085】
(20)VA型液晶表示装置の評価
(20−1)正面コントラスト(CR)
実施例および比較例の各液晶表示装置について、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において液晶パネルの法線方向の黒表示時の輝度値および白表示時の輝度値を測定し、正面コントラスト(白輝度時の輝度値/黒輝度時の輝度値)を算出した。測定時、測定器と液晶パネルと間の距離は700mmに設定した。比較例3について算出された正面コントラストを100%とする相対比として算出された正面コントラスト比を表4に示す。算出された正面コントラスト比により、下記の判定をした。
A(優良) : 110% < 正面コントラスト比
B(良) :100%< 正面コントラスト比 ≦ 110%
C(改善なし):正面コントラスト比 ≦ 100%
【0086】
(20−2)視野方位角の評価
液晶表示装置の左、右方向それぞれを中心として、光漏れ量が小さい方位角範囲が広いほど、左右視野方位角が広いと言える。これを指標化するために、実施例および比較例の各液晶表示装置について、暗室において、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、次の手順で、右方向の視野方位角と左方向の視野方位角を別々に測定し、この平均値を視野方位角指標とした。
まず右方向の視野方位角の測定のため、液晶表示装置正面からの極角方向60°において、方位角−45°から+45°まで5°間隔で黒表示時の輝度I(α)(α:方位角)を測定した。
次に、極角60°における方位角0°(右向からの視野角)での輝度値をI(0°)とした時、各方位角αでの輝度値I(α)の、右方向視野での輝度値I(0°)に対する比I(α)/I(0°)が2.0倍以下である方位角範囲ARを求めた。例えば、方位角−30°から30°までがI(α)/I(0°)≦2.0であった場合、AR=30−(−30)=60°となる。
左方向の視野方位角についても同様に、液晶表示装置正面からの極角方向60°において方位角135°から225°まで5°間隔で黒表示時の輝度I(α)を測定し、I(α)/I(180°)が2.0倍以下となる方位角範囲ALを求めた。
次に、左右視野方位角範囲指標を下記式により算出した。
視野方位角指標 =(AR+AL)/2
算出された左右視野方位角範囲の値により、下記の判定をした。
A(優良) :35°≦ 左右視野方位角範囲指標の絶対値
B(許容) :30° ≦ 左右視野方位角範囲指標の絶対値 < 35°
C(許容不可):左右視野方位角範囲指標の絶対値 <30°
【0087】
以上の結果を、表4(表4−1および表4−2)に示す。
【0088】
【表4-1】
【0089】
【表4-2】