(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性液晶組成物が、前記式(1)および(2)のいずれにも該当せず、かつ、重合性基を2個以上有する重合性化合物を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、表記される二価の基(例えば、−O−CO−)の結合方向は、結合位置を明記している場合を除き、特に制限されず、例えば、後述する式(1)中のD
1が−CO−O−である場合、Ar
1側に結合している位置を*1、G
1側に結合している位置を*2とすると、D
1は、*1−CO−O−*2であってもよく、*1−O−CO−*2であってもよい。
また、本明細書において、角度(例えば、「90°」などの角度)、ならびに、その関係(例えば、「直交」、「平行」および「45°で交差」など)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0013】
[光学異方性膜]
本発明の光学異方性膜は、重合性液晶組成物を重合して得られる光学異方性膜である。
また、本発明においては、重合性液晶組成物が、後述する式(1)で表される重合性液晶化合物と、後述する式(2)で表される重合性液晶化合物とを含有する。
更に、本発明においては、光学異方性膜が、後述する式(3)または(4)を満たし、ラマン分光法にて測定される配向度が0.4以上である。
【0014】
本発明においては、上述した通り、後述する式(1)で表される重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(1)」とも略す。)とともに、後述する式(2)で表される重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(2)」とも略す。)を配合した重合性液晶組成物(以下、形式的に「本発明の重合性液晶組成物」と略す。)を用いることにより、形成される光学異方性膜の湿熱耐久性が良好となり、薄型化を図ることができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、逆波長分散発現部を構成する芳香環は、いわゆる電子不足状態にあるため互いに相互作用しやすいことが知られているが、重合性液晶化合物(1)のみを用いると、逆波長分散発現部が有するファンデルワールス体積の大きな置換基によって、相互作用が弱くなると考えられる。
そのため、重合性液晶化合物(1)とともに、ファンデルワールス体積の小さい置換基を有する重合性液晶化合物(2)を併用すると、重合性液晶化合物(1)同士の隙間に重合性液晶化合物(2)が入り込んで相互作用を強め合い、互いの配向度(配向秩序度)を荷重平均した値よりも高い配向秩序度が達成することができたと考えらえる。
そして、光学異方性膜の配向度が高くなることで、厚さあたりのレターデーションの発現性が高くなるだけでなく、液晶化合物同士が密に並ぶことで、劣化物質の膜中への浸入と拡散が抑制され、湿熱耐久性が良好になったと推測される。
【0015】
本発明の光学異方性膜は、本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる光学異方性膜を少なくとも1層含むものであれば、単層であっても多層であってもよい。
図1Aおよび
図1Bは、本発明の光学異方性膜の一例を示す模式的な断面図である。なお、本発明における図は模式図であり、各層の厚みの関係および位置関係などは必ずしも実際のものとは一致しない。
図1Aに示す光学異方性膜10は、ポジティブAプレート12を有する単層構造のフィルムである。
また、
図1Bに示す光学異方性膜10は、ポジティブAプレート12と、ポジティブCプレート14とを有する多層構造のフィルムである。なお、ポジティブAプレート12およびポジティブCプレート14は、それぞれ単層構造であることが好ましい。
また、
図1Bに示す光学異方性膜10は、ポジティブAプレート12およびポジティブCプレート14のうち、少なくともポジティブAプレート12が本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる光学異方性膜であることが好ましい。
以下、本発明の重合性液晶組成物の各成分について詳細に説明する。
【0016】
〔重合性液晶化合物(1)〕
本発明の重合性液晶組成物が含有する重合性液晶化合物(1)は、下記式(1)で表される重合性液晶化合物である。
L
1−SP
1−(E
3−A
1)
m−E
1−G
1−D
1−Ar
1−D
2−G
2−E
2−(A
2−E
4)
n−SP
2−L
2 ・・・(1)
【0017】
上記式(1)中、D
1、D
2、E
1、E
2、E
3およびE
4は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)O−、−CR
1R
2−、−CR
1R
2−CR
3R
4−、−O−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−CR
3R
4−、−CO−O−CR
1R
2−、−O−CO−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−CO−CR
3R
4−、−CR
1R
2−CO−O−CR
3R
4−、−NR
1−CR
2R
3−、または、−CO−NR
1−を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
また、上記式(1)中、G
1およびG
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する−CH
2−の1個以上が−O−、−S−または−NH−で置換されていてもよい。
また、上記式(1)中、A
1およびA
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、または、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する−CH
2−の1個以上が−O−、−S−または−NH−で置換されていてもよい。
また、上記式(1)中、SP
1およびSP
2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する−CH
2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(Q)−、もしくは、−CO−に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(1)中、L
1およびL
2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
1およびL
2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Ar
1またはAr
2が、下記式(Ar−3)で表される芳香環である場合は、L
1およびL
2ならびに下記式(Ar−3)中のL
3およびL
4の少なくとも1つが重合性基を表す。
また、上記式(1)中、mは、0〜2の整数を表し、mが2である場合、複数のE
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のA
1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(1)中、nは、0〜2の整数を表し、nが2である場合、複数のE
4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のA
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
上記式(1)中、G
1およびG
2が示す炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基としては、5員環又は6員環であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和脂環式炭化水素基が好ましい。G
1およびG
2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012−21068号公報の[0078]段落の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
これらのうち、シクロヘキシレン基(シクロヘキサン環)が好ましく、1,4−シクロヘキシレン基であることがより好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが更に好ましい。
また、上記式(1)中、G
1およびG
2が示す炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、後述する式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0019】
上記式(1)中、A
1およびA
2が示す炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられ、なかでも、1,4−フェニレン基が好ましく、トランス−1,4−フェニレン基がより好ましい。
また、A
1およびA
2が示す炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(1)中のG
1およびG
2で説明したものと同様のものが挙げられ、シクロヘキシレン基(シクロヘキサン環)が好ましく、1,4−シクロヘキシレン基であることがより好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが更に好ましい。
【0020】
上記式(1)中、SP
1およびSP
2が示す炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基等が好適に挙げられる。なお、SP
1およびSP
2は、上述した通り、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する−CH
2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(Q)−、もしくは、−CO−に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、後述する式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0021】
上記式(1)中、L
1およびL
2が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が更に好ましい。また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜25が好ましく、6〜10がより好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0022】
上記式(1)中、L
1およびL
2の少なくとも一方が示す重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイル基またはメタクリロイル基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。
【0024】
上記式(1)中、湿熱耐久性がより良好となる理由から、上記式(1)中のL
1およびL
2が、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることがより好ましい。
【0025】
一方、上記式(1)中、Ar
1は、下記式(Ar−1)〜(Ar−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。なお、下記式(Ar−1)〜(Ar−5)中、*は、上記式(I)中のD
1またはD
2との結合位置を表す。
【0027】
ここで、上記式(Ar−1)中、Q
1は、NまたはCHを表し、Q
2は、−S−、−O−、または、−N(R
5)−を表し、R
5は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Y
1は、置換基を有してもよい、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。
R
5が示す炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、および、n−ヘキシル基などが挙げられる。
Y
1が示す炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
Y
1が示す炭素数3〜12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
また、Y
1が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0028】
また、上記式(Ar−1)〜(Ar−5)中、Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−OR
6、−NR
7R
8、または、−SR
9を表し、R
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基(Me)、エチル基、イソプロピル基、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、tert−ブチル基(tBu)、1,1−ジメチル−3,3−ジメチル−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;等が挙げられる。
炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6〜12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であるのが好ましい。
一方、R
6〜R
9が示す炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、および、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記式(1)中のAr
1におけるZ
1およびZ
2は、少なくとも一方が、ファンデルワールス体積が0.3×10
2Å
3以上の基を表し、湿熱耐久性がより良好となる理由から、0.50×10
2Å
3〜1.50×10
2Å
3の基を表すことが好ましい。なお、本発明においては、ファンデルワールス体積の数値を規定している基には、水素原子やハロゲン原子も含むものとする。
ここで、「ファンデルワールス体積」とは、置換基を構成する原子のファンデルワールス半径に基づいたファンデルワールス球により占有される領域の体積をいい、「化学の領域 増刊122号:薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作研究への指針)、1979年、南江堂」のP.134−136に記載の値および方法を用いて計算した値である。なお、ファンデルワールス体積の単位(Å
3)は、1Å
3=10
−3nm
3でSI単位に変換することができる。
【0030】
ファンデルワールス体積が0.3×10
2Å
3以上の置換基としては、例えば、−C
2H
5(0.48×10
2Å
3)、−COOCH
3(0.50×10
2Å
3)、−COOC
2H
5(0.66×10
2Å
3)、tert−ブチル基(0.71×10
2Å
3)、−C
3H
7(0.71×10
2Å
3)、−COOCH
2CH
2OC
2H
5(1.04×10
2Å
3)、−COO(CH
2)
4OCH=CH
2(1.49×10
2Å
3)などが挙げられる。なお、括弧内の数値は、ファンデルワールス体積の値である。
【0031】
また、上記式(Ar−2)および(Ar−3)中、A
3およびA
4は、それぞれ独立に、−O−、−N(R
10)−、−S−、および、−CO−からなる群から選択される基を表し、R
10は、水素原子または置換基を表す。
R
10が示す置換基としては、上記式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0032】
また、上記式(Ar−2)中、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14〜16族の非金属原子を表す。
また、Xが示す第14〜16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、水酸基等が挙げられる。
【0033】
また、上記式(Ar−3)中、D
3およびD
4は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)O−、−CR
1R
2−、−CR
1R
2−CR
3R
4−、−O−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−CR
3R
4−、−CO−O−CR
1R
2−、−O−CO−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−CO−CR
3R
4−、−CR
1R
2−CO−O−CR
3R
4−、−NR
1−CR
2R
3−、または、−CO−NR
1−を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0034】
また、上記式(Ar−3)中、SP
3およびSP
4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する−CH
2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(Q)−、もしくは、−CO−に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0035】
また、上記式(Ar−3)中、L
3およびL
4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
3およびL
4ならびに上記式(1)中のL
1およびL
2の少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(1)中のL
1およびL
2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(1)中のL
1およびL
2において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0036】
また、上記式(Ar−4)〜(Ar−5)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
また、上記式(Ar−4)〜(Ar−5)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Q
3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、特許文献2(国際公開第2014/010325号)の[0039]〜[0095]段落に記載されたものが挙げられる。
また、Q
3が示す炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、および、n−ヘキシル基などが挙げられ、置換基としては、上記式(Ar−1)中のY
1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0037】
本発明においては、光学異方性膜の湿熱耐久性がより良好となる理由から、上記式(1)で表される重合性液晶化合物(1)が、上記式(1)中のmが1であり、A
1およびG
1がいずれも置換基を有していてもよいシクロヘキシレン基であり、E
1が単結合であり、かつ、上記式(1)中のnが1であり、A
2およびG
2がいずれも置換基を有していてもよいシクロヘキシレン基であり、E
2が単結合である、重合性液晶化合物であることが好ましい。
【0038】
本発明においては、耐光性がより良好となる理由から、上記式(1)中のAr
1の構造から導かれる、HO−Ar
1−OHで表されるジフェノール化合物のpKaが11以下であることが好ましい。
ここで、pKaは、25℃におけるテトラヒドロフラン(THF)/水=6/4の体積比である混合溶媒中における酸解離定数の値である。
本発明における酸解離定数の測定方法としては、丸善(株)刊 実験化学講座第2版の215ページ〜217ページに記載のアルカリ適定法を用いることができる。
【0039】
このような重合性液晶化合物(1)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−10)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(1−1)〜(1−10)中のK(側鎖構造)として、下記表1および表2に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下記表1および表2中、Kの側鎖構造に示される「*」は、芳香環との結合位置を表す。
また、下記表1中の1−2および下記表2中の2−2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0043】
〔重合性液晶化合物(2)〕
本発明の重合性液晶組成物が含有する重合性液晶化合物(2)は、下記式(2)で表される重合性液晶化合物である。
L
1−SP
1−(E
3−A
1)
m−E
1−G
1−D
1−Ar
2−D
2−G
2−E
2−(A
2−E
4)
n−SP
2−L
2 ・・・(2)
【0044】
上記式(2)中、D
1、D
2、E
1、E
2、E
3およびE
4、G
1およびG
2、A
1およびA
2、SP
1およびSP
2、L
1およびL
2、ならびに、mおよびnについては、上述した式(1)において説明したものと同様である。
一方、上記式(2)中、Ar
2は、下記式(Ar−1)〜(Ar−6)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。
【0046】
上記式(Ar−1)〜(Ar−6)のうち、上記式(Ar−1)〜(Ar−5)については、上記式(1)中のAr
1として説明したものと同様である。
また、上記式(Ar−5)中、Z
1、Z
2、Z
3およびZ
4は、上記式(Ar−1)〜(Ar−5)中のZ
1、Z
2およびZ
3と同様である。
ただし、本発明においては、上記式(2)中のAr
2におけるZ
1、Z
2、Z
3およびZ
4は、いずれも、ファンデルワールス体積が0.3×10
2Å
3未満の基を表す。なお、本発明においては、ファンデルワールス体積が0.3×10
2Å
3未満の基には、上述した通り、水素原子も含むものとする。
【0047】
ファンデルワールス体積が0.3×10
2Å
3未満の置換基としては、例えば、水素原子(0.06×10
2Å
3)、−CH
3(0.25×10
2Å
3)、−CHO(0.27×10
2Å
3)、−CN(0.27×10
2Å
3)、−OCH
3(0.30×10
2Å
3)、−COOH(0.33×10
2Å
3)などが挙げられる。なお、括弧内の数値は、ファンデルワールス体積の値である。
【0048】
このような重合性液晶化合物(2)としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−4)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(2−1)〜(2−4)中のK(側鎖構造)として、上述した表1および表2に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
【0050】
本発明においては、上記重合性液晶化合物(2)の含有量は、上述した重合性液晶化合物(1)100質量部に対して30〜300質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましく、70〜120質量部であることが更に好ましい。
【0051】
本発明においては、上述した重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)に関して、波長分散特性の制御範囲を広げる観点から、上述した式(1)中のAr
1、および、上述した式(2)中のAr
2が、いずれも、上述した式(Ar−1)または(Ar−2)で表される基を表すことが好ましい。
【0052】
また、本発明においては、上述した重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)に関して、形成される光学異方性膜の配向度を0.4以上に調整しやすくなる理由から、上述した式(1)中のG
1およびG
2ならびにA
1およびA
2で表される環の合計数が、上述した式(2)中のG
1およびG
2ならびにA
1およびA
2で表される環の合計数と同じであることが好ましい。
【0053】
本発明においては、光学異方性膜の湿熱耐久性がより良好となる理由から、本発明の重合性液晶組成物に含まれる液晶化合物のI/O値が、荷重平均値で0.51以下であることが好ましく、0.43〜0.50であることがより好ましい。なお、I/O値を求める対象となる液晶化合物は、上記式(1)および(2)で表される重合性液晶化合物に限らず、本発明の重合性液晶組成物に含まれる全ての液晶化合物である。
ここで、「I/O値」は、有機化合物のいろいろな物理化学的な性状を予測するための1手段として用いられる。有機性は炭素数の大小の比較で、無機性は炭素同数の炭化水素の沸点の比較で大小が得られる。例えば、(−CH
2−)(実際はC)一個は有機性値20と決め、無機性は水酸基(−OH)が沸点へ及ぼす影響力から、その無機性値を100と決めたものである。この(−OH)の無機性値100を基準にして他の置換基(無機性基)の値を求めたものが“無機性基表”として示されている。この無機性基表に従い、各分子に対して得られた無機性値(I)と有機性値(O)の比I/Oを“I/O値”と定義している。I/O値が大きくなるにつれて親水性が増し、I/O値が小さくなるにつれて疎水性が強くなることを示している。
本発明においては、「I/O値」は、“甲田善生ら著、「新版:有機概念図―基礎と応用」、2008年11月、三共出版”に記載された方法によって求めた「無機性(I)/有機性(O)」値である。
【0054】
〔多官能重合性モノマー〕
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方性膜を強固に凝集させ、湿熱耐久性をより高める理由から、上述した式(1)および(2)のいずれにも該当せず、かつ、重合性基を2個以上有する重合性化合物(多官能重合性モノマー)を含有していることが好ましい。
多官能重合性モノマーとしては、多官能性ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。多官能性ラジカル重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、特開2002−296423号公報中の段落[0018]〜[0020]に記載の重合性モノマーが挙げられる。
また、多官能重合性モノマーを含有する場合の含有量は、液晶化合物の全質量に対して、1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。
【0055】
〔重合開始剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。
使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)等が挙げられる。
【0056】
本発明においては、湿熱耐久性がより良好となる理由から、重合開始剤がオキシム型の重合開始剤であるのが好ましく、具体的には、下記式(I)で表される重合開始剤であるのがより好ましい。
【化6】
【0057】
上記式(I)中、X
2は、水素原子またはハロゲン原子を表す。
また、上記式(I)中、Ar
3は、2価の芳香族基を表し、D
5は、炭素数1〜12の2価の有機基を表す。
また、上記式(I)中、R
11は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、Y
2は、1価の有機基を表す。
【0058】
上記式(I)中、X
2が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、塩素原子であるのが好ましい。
また、上記式(I)中、Ar
3が示す2価の芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環等の芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等の芳香族複素環;を有する2価の基などが挙げられる。
また、上記式(I)中、D
5が示す炭素数1〜12の2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が好適に挙げられる。
また、上記式(I)中、R
11が示す炭素数1〜12のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
また、上記式(I)中、Y
2が示す1価の有機基としては、例えば、ベンゾフェノン骨格((C
6H
5)
2CO)を含む官能基が挙げられる。具体的には、下記式(Ia)および下記式(Ib)で表される基のように、末端のベンゼン環が無置換または1置換であるベンゾフェノン骨格を含む官能基が好ましい。なお、下記式(Ia)および下記式(Ib)中、*は結合位置、すなわち、上記式(I)におけるカルボニル基の炭素原子との結合位置を表す。
【0060】
上記式(I)で表されるオキシム型の重合開始剤としては、例えば、下記式(S−1)で表される化合物や、下記式(S−2)で表される化合物などが挙げられる。
【化8】
【0061】
本発明においては、上記重合開始剤の含有量は特に限定されないが、重合性液晶組成物の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0062】
〔溶媒〕
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方性膜を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
〔レベリング剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方性膜の表面を平滑に保ち、配向制御を容易にする観点から、レベリング剤を含有することが好ましい。
このようなレベリング剤としては、添加量に対するレベリング効果が高い理由から、フッ素系レベリング剤またはケイ素系レベリング剤であることが好ましく、泣き出し(ブルーム、ブリード)を起こしにくい観点から、フッ素系レベリング剤であることがより好ましい。
レベリング剤としては、具体的には、例えば、特開2007−069471号公報の[0079]〜[0102]段落の記載に記載された化合物、特開2013−047204号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0020]〜[0032]段落に記載された化合物)、特開2012−211306号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0022]〜[0029]段落に記載された化合物)、特開2002−129162号公報に記載された一般式(I)で表される液晶配向促進剤(特に[0076]〜[0078]および[0082]〜[0084]段落に記載された化合物)、特開2005−099248号公報に記載された一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物(特に[0092]〜[0096]段落に記載された化合物)などが挙げられる。なお、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0064】
〔配向制御剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含有することができる。
配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、コレステリック配向等の種々の配向状態を形成することができ、また、特定の配向状態をより均一かつより精密に制御して実現することができる。
【0065】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤や、高分子の配向制御剤を用いることができる。
低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002−20363号公報の[0009]〜[0083]段落、特開2006−106662号公報の[0111]〜[0120]段落、および、特開2012−211306公報の[0021]〜[0029]段落の記載を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004−198511号公報の[0021]〜[0057]段落、および、特開2006−106662号公報の[0121]〜[0167]段落を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0066】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、オニウム塩化合物が挙げられ、具体的には、特開2008−225281号公報の[0023]〜[0032]段落、特開2012−208397号公報の[0052]〜[0058]段落、特開2008−026730号公報の[0024]〜[0055]段落、特開2016−193869号公報の[0043]〜[0055]段落などに記載された化合物を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0067】
一方、コレステリック配向は、本発明の重合性組成物にキラル剤を加えることにより実現することができ、そのキラル性の向きによりコレステリック配向の旋回方向を制御できる。なお、キラル剤の配向規制力に応じてコレステリック配向のピッチを制御することができる。
【0068】
配向制御剤の含有する場合の含有量は、重合性液晶組成物中の全固形分質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。含有量がこの範囲であると、望む配向状態を実現しつつ、析出や相分離、配向欠陥等が無く、均一で透明性の高い光学異方性膜を得ることができる。
これらの配向制御剤は、さらに重合性官能基、特に、本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物と重合可能な重合性官能基を付与することができる。
【0069】
〔その他の成分〕
本発明の重合性液晶組成物は、上述した成分以外の成分を含有してもよく、例えば、上述した重合性液晶化合物以外の液晶化合物、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0070】
〔形成方法〕
光学異方性膜の形成方法としては、例えば、上述した本発明の重合性液晶組成物を用いて、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法などが挙げられる。
ここで、重合条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm
2〜50J/cm
2であることが好ましく、20mJ/cm
2〜5J/cm
2であることがより好ましく、30mJ/cm
2〜3J/cm
2であることが更に好ましく、50〜1000mJ/cm
2であることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
なお、本発明においては、光学異方性膜は、後述する本発明の光学フィルムにおける任意の支持体上や、後述する本発明の偏光板における偏光子上に形成することができる。
【0071】
本発明の光学異方性膜の厚みは、薄型化を図る観点から、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることが更に好ましい。
【0072】
本発明の光学異方性膜は、上述した通り、下記式(3)または(4)を満たすものであり、下記式(3)を満たす場合、下記式(5)を満たしていることが好ましい。
Re(450)/Re(550)<1 ・・・(3)
Rth(450)/Rth(550)<1 ・・・(4)
0.50<Re(450)/Re(550)<1.00 ・・・(5)
【0073】
上記式(3)および(5)中、Re(450)は、光学異方性膜の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re(550)は、光学異方性膜の波長550nmにおける面内レターデーションを表す。なお、本明細書において、レターデーションの測定波長を明記していない場合は、測定波長は550nmとする。
また、上記式(4)中、Rth(450)は、光学異方性膜の波長450nmにおける厚み方向のレターデーションを表し、Rth(550)は、光学異方性膜の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。
【0074】
本発明においては、面内レターデーションおよび厚み方向のレターデーションの値は、AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)を用い、測定波長の光を用いて測定した値をいう。
具体的には、AxoScan OPMF−1にて、平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2−nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF−1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0075】
本発明の光学異方性膜は、上述した通り、ラマン分光法にて測定される配向度が0.4以上であり、高配向度に起因する粘度上昇、および、配向欠陥を抑制する観点から、0.4以上0.6未満であることが好ましい。
ここで、ラマン分光法にて測定される配向度は、2次の配向秩序度<P2>で定義され、偏光ラマン測定法で得ることができる。偏光ラマン分光測定装置としては、東京インスツルメンツ社製 NanoFinder30を用いることができる。
具体的には、レーザー偏光が入射する光学異方性膜の面の方位と入射レーザー偏光の電場方向がなす角度qを0度から180度まで変えて測定散乱光の成分のうち入射レーザー偏光電場と平行な偏光成分(I||(q))と垂直な偏光成分(I⊥(q))を、検光子を用いてそれぞれ分光検出し、さらに、分子骨格に由来するピークをもつバンドに対し、下記理論式(A)を用いた最小二乗法に基づくフィッティング解析を行い、配向秩序度を得ることができる。
<理論式(A)>
I||(q)=C1(q)+C2(q)<P2>+C3(q)<P4>+C4(q)R
I⊥(q)=C5(q)+C6(q)<P2>+C7(q)<P4>-C4(q)R
C1(q)=a2+4/45b2-2(a2+b2)cos2q+2(a2+1/45b2)cos4q
C2(q)=-2/3ab-4/63b2+(4/3ab+2/9b2)cos2q+(-2/63a2+2/3ab)cos4q
C3(q)=b2(3/35+2/7cos2q+19/35cos4q)
C4(q)=cos2q-cos4q
C5(q)=1/15b2+(2a2+2/45b2)cos2q-(2a2+2/45b2)cos4q
C6(q)=1/21b2+(2/3ab-2/63b2)cos2q+(2/63a2-2/3ab)cos4q
C7(q)=b2(-4/35+19/35cos2q-19/35cos4q)
R=r1[2a2-4/45b2+(2/3ab-8/63b2)<P2>-8/35b2<P4>]+r2b2[2/15+2/21<P2>-8/35<P4>]
r1=sin(K1d)/K1d, r2=sin(K2d)/K2d, K1=2πΔn(L+L’)/LL’, K2=2πΔn(L-L’)/LL’
【0076】
ここで、dは試料の厚さ、Δnは試料の複屈折率、L、L’はそれぞれ入射光と散乱光の波長である。
また、<P2>は2次の配向秩序度、<P4>は4次の配向秩序度である。
また、a,bはそれぞれ分子骨格に由来するピークをもつバンドのラマンテンソルα=diag(a⊥,a⊥,a||) の等方値と異方値であり、a=(2a⊥+a||)/3, b=a||-a⊥である。
また、a/bは分子が等方的に配向分布している時の偏光解消度Risoの測定値からRiso=3b2/(45a2+4b2)の関係式より求めることができる。
【0077】
光学異方性膜の配向度は、上述した重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)
の配合比でも制御しうるが、重合性液晶組成物が含むその他の成分によっても制御することができる。
また、基材あるいは配向膜の表面状態、塗布、乾燥、配向熟成、露光による配向状態の固定の条件を調整することによっても制御できる。
【0078】
本発明の光学異方性膜は、ポジティブAプレートまたはポジティブCプレートであることが好ましく、ポジティブAプレートであることがより好ましい。
なお、光学異方性膜が、ポジティブAプレートである場合、光学異方性膜は上記式(3)を満たし、ポジティブCプレートである場合、光学異方性膜は上記式(4)を満たすことになる。
【0079】
ここで、ポジティブAプレート(正のAプレート)とポジティブCプレート(正のCプレート)は以下のように定義される。
フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、ポジティブAプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示し、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(C1) nz>nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。
「実質的に同一」とは、ポジティブAプレートでは、例えば、(ny−nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、−10〜10nm、好ましくは−5〜5nmの場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx−nz)×dが、−10〜10nm、好ましくは−5〜5nmの場合も「nx≒nz」に含まれる。また、ポジティブCプレートでは、例えば、(nx−ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0〜10nm、好ましくは0〜5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0080】
本発明の光学異方性膜がポジティブAプレートである場合、λ/4板として機能する観点から、Re(550)が100〜180nmであることが好ましく、120〜160nmであることがより好ましく、130〜150nmであることが更に好ましく、130〜140nmであること特に好ましい。
ここで、「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
【0081】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、本発明の光学異方性膜を有する光学フィルムである。
以下、本発明の光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0082】
〔光学異方性膜〕
本発明の光学フィルムが有する光学異方性膜は、上述した本発明の光学異方性膜である。
【0083】
〔支持体〕
本発明の光学フィルムは、上述したように、光学異方性膜を形成するための基材として支持体を有していてもよい。
このような支持体は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。
【0084】
このような支持体としては、例えば、ガラス基板やポリマーフィルムが挙げられ、ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;、塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
また、後述する偏光子がこのような支持体を兼ねる態様であってもよい。
【0085】
本発明においては、上記支持体の厚みについては特に限定されないが、5〜60μmであるのが好ましく、5〜30μmであるのがより好ましい。
【0086】
〔配向膜〕
本発明の光学フィルムは、上述した任意の支持体を有する場合、支持体と光学異方性膜との間に、配向膜を有しているのが好ましい。なお、上述した支持体が配向膜を兼ねる態様であってもよい。
【0087】
配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。
本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。
本発明に使用可能な配向膜については、例えば、国際公開第01/88574号の43頁24行〜49頁8行に記載された配向膜;特許第3907735号公報の段落[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール;特開2012−155308号公報に記載された液晶配向剤により形成される液晶配向膜;等が挙げられる。
【0088】
本発明においては、配向膜の形成時に配向膜表面に接触しないことで面状悪化を防ぐことが可能となる理由から、配向膜としては光配向膜を利用することも好ましい。
光配向膜としては特に限定はされないが、国際公開第2005/096041号の段落[0024]〜[0043]に記載されたポリアミド化合物やポリイミド化合物などのポリマー材料;特開2012−155308号公報に記載された光配向性基を有する液晶配向剤により形成される液晶配向膜;Rolic Technologies社製の商品名LPP−JP265CPなどを用いることができる。
【0089】
また、本発明においては、上記配向膜の厚さは特に限定されないが、支持体に存在しうる表面凹凸を緩和して均一な膜厚の光学異方性膜を形成するという観点から、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましく、0.01〜0.5μmであることがさらに好ましい。
【0090】
〔ハードコート層〕
本発明の光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を有しているのが好ましい。具体的には、支持体の配向膜が設けられた側とは反対側にハードコート層を有していてもよく、光学異方性膜の配向膜が設けられた側とは反対側にハードコート層を有していてもよい。
ハードコート層としては特開2009−98658号公報の段落[0190]〜[0196]に記載のものを使用することができる。
【0091】
〔他の光学異方性膜〕
本発明の光学フィルムは、本発明の光学異方性膜とは別に、他の光学異方性膜を有していてもよい。
すなわち、本発明の光学フィルムは、本発明の光学異方性膜と他の光学異方性膜との積層構造を有していてもよい。
このような他の光学異方性膜は、上述した重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)のいずれか一方または両方を配合せず、他の重合性化合物(特に、液晶化合物)を用いて得られる光学異方性膜であれば特に限定されない。
ここで、一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物(円盤状液晶化合物)を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。上述の液晶化合物の固定化のために、重合性基を有する棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を用いて形成することがより好ましく、液晶化合物が1分子中に重合性基を2以上有することがさらに好ましい。液晶化合物が二種類以上の混合物の場合には、少なくとも1種類の液晶化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11−513019号公報の請求項1や特開2005−289980号公報の段落[0026]〜[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007−108732号公報の段落[0020]〜[0067]や特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0092】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の光学フィルムは、外光(特に紫外線)の影響を考慮して、紫外線(UV)吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤は、本発明の光学異方性膜に含有されてしてもよいし、本発明の光学フィルムを構成する光学異方性膜以外の部材に含有されていてもよい。光学異方性膜以外の部材としては、例えば、支持体が好適に挙げられる。
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できる従来公知のものがいずれも使用できる。このような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得る観点から、ベンゾトリアゾール系またはヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、特開2012−18395公報の[0258]〜[0259]段落に記載された化合物、特開2007−72163号公報の[0055]〜[0105]段落に記載された化合物などが挙げられる。
また、市販品として、Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479、および、Tinuvin1577(いずれもBASF社製)等を用いることができる。
【0093】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルムと、偏光子とを有するものである。
また、本発明の偏光板は、上述した本発明の光学異方性膜がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、円偏光板として用いることができる。
また、本発明の偏光板は、上述した本発明の光学異方性膜がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、λ/4板の遅相軸と後述する偏光子の吸収軸とのなす角が30〜60°であることが好ましく、40〜50°であることがより好ましく、42〜48°であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
ここで、λ/4板の「遅相軸」は、λ/4板の面内において屈折率が最大となる方向を意味し、偏光子の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。
【0094】
図2は、本発明の偏光板の一例(円偏光板)を示す模式的な断面図である。
図2に示す円偏光板16は、偏光子18と、ポジティブAプレート12と、ポジティブCプレート14とをこの順で含む。なお、
図2においては、円偏光板16は、偏光子18、ポジティブAプレート12、および、ポジティブCプレート14の順に配置されているが、この態様に限定されず、例えば、偏光子、ポジティブCプレート、および、ポジティブAプレートの順に配置されていてもよい。
【0095】
図3は、本発明の偏光板における、偏光子の吸収軸、および、ポジティブAプレートの面内遅相軸の関係を示す図である。
図3中、偏光子18中の矢印は吸収軸の方向を表し、ポジティブAプレート12中の矢印は層中の面内遅相軸の方向を表す。
【0096】
〔偏光子〕
本発明の偏光板が有する偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば特に限定されず、従来公知の吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子などが用いられる。
なかでも、密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(−CH
2−CHOH−を繰り返し単位として含むポリマー。特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子であることが好ましい。
【0097】
本発明においては、偏光子の厚みは特に限定されないが、3μm〜60μmであるのが好ましく、5μm〜30μmであるのがより好ましく、5μm〜15μmであるのが更に好ましい。
【0098】
〔粘着剤層〕
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムにおける光学異方性膜と、偏光子との間に、粘着剤層が配置されていてもよい。
光学異方性膜と偏光子との積層のために用いられる粘着剤層としては、例えば、動的粘弾性測定装置で測定した貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。本発明に用いることのできる粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0099】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムまたは本発明の偏光板を有する、画像表示装置である。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セル、有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0100】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した本発明の偏光板と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0101】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、又はTN(Twisted Nematic)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0102】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、偏光子と、本発明の光学異方性膜からなるλ/4板(ポジティブAプレート)と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が好適に挙げられる。
【0103】
有機EL表示装置について図面を参照して説明する。
図4に、本発明の画像表示装置の一態様である有機EL表示装置の一例を示す模式的な断面図を示す。
図4に示す有機EL表示装置20は、直線偏光子18と、ポジティブAプレート12と、ポジティブCプレート14と、有機EL表示パネル22とをこの順で有する。なお、
図4に示すように、円偏光板16中の直線偏光子18が視認側に配置される。
また、有機EL表示パネル22は、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。
有機EL表示パネル22の構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0105】
[実施例1]
<配向膜P−1の形成>
下記の配向膜P−1形成用塗布液を#18バーコーターを用いてガラス基板上に塗布し、ガラス基板を100℃の温風で120秒間乾燥したのち、ラビング処理を行うことにより、配向膜P−1を形成した。
─────────────────────────────────
(配向膜P−1形成用塗布液)
─────────────────────────────────
ポリビニルアルコール(クラレ製PVA203) 2.0質量部
水 98.0質量部
─────────────────────────────────
【0106】
<ポジティブAプレートA−1の形成>
下記の組成物A−1を、バーコーターを用い配向膜P−1上に塗布した。配向膜P−1上に形成された塗膜を温風にて180℃に加熱し、その後120℃に冷却し、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmにて100mJ/cm
2の紫外線を塗膜に照射することにより、液晶化合物の配向を固定化し、ポジティブAプレートA−1を含むガラス板A−1を作製した。ポジティブAプレートA−1の厚みを下記表3に示す。また、下記組成物A−1における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
【0107】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶化合物L−1 42.50質量部
・下記重合性液晶化合物L−2 42.50質量部
・下記重合性液晶化合物L−3 15.00質量部
・下記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・下記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0108】
重合性液晶化合物L−1(I/O値:0.48,pKa値:9.86)
【化9】
【0109】
重合性液晶化合物L−2(I/O値:0.52)
【化10】
【0110】
重合性液晶化合物L−3(I/O値:0.50)
【化11】
【0111】
重合開始剤PI−1
【化12】
【0112】
レベリング剤T−1
【化13】
【0113】
<ポジティブCプレートC−1の形成>
特開2015−200861号公報の[0124]段落に記載に記載されたポジティブCプレートと同様の方法で、形成用仮支持体上にポジティブCプレートC−1を有するフィルムC−1を作製した。ただし、Rth(550)が−69nmとなるように、ポジティブCプレートの厚みは制御した。
【0114】
〔円偏光板1の作製〕
支持体であるTD80UL(富士フイルム社製)の表面を、アルカリ鹸化処理した。具体的には、上記支持体を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、取り出した支持体を室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。その後、再度、得られた支持体を室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
次いで、ヨウ素水溶液中で厚み80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを連続して5倍に延伸し、延伸後のフィルムを乾燥して、厚み20μmの偏光子を得た。
得られた偏光子と、アルカリ鹸化処理が施された支持体(TD80UL)とを貼りあわせ、片側に偏光子が露出した偏光板を得た。
次に、偏光子の吸収軸とポジティブAプレートA−1の遅相軸が45°となるように、上記偏光板中の偏光子の露出面とガラス板A−1におけるポジティブAプレートA−1の表面とを感圧性接着剤(SK−2057、綜研化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、その後、ガラス板A−1におけるガラス基板を剥離することで、ポジティブAプレートA−1のみを偏光板に転写した。
次いで、転写されたポジティブAプレートA−1の表面と、上記で作製したフィルムC−1中のポジティブCプレートC−1の表面とを、感圧性接着剤(SK−2057、綜研化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、その後、フィルムC−1における形成用仮支持体を剥離することで、ポジティブCプレートC−1のみをポジティブAプレートA−1上に転写し、円偏光板1を作製した。
【0115】
[実施例2]
組成物A−1を下記の組成物A−2に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−2を形成し、円偏光板2を作製した。また、下記組成物A−2における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 23.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 53.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 24.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0116】
[実施例3]
組成物A−1を下記の組成物A−3に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−3を形成し、円偏光板3を作製した。また、下記組成物A−3における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 62.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 20.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 18.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0117】
[実施例4]
<光配向性基を有する重合体PA−1の合成>
Langmuir,32(36),9245−9253,(2016年)に記載された方法に従い、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(東京化成試薬)と下記桂皮酸クロリド誘導体を用いて、以下に示すモノマーm−1を合成した。
【0118】
桂皮酸クロリド誘導体
【化14】
【0119】
モノマーm−1
【化15】
【0120】
冷却管、温度計、および撹拌機を備えたフラスコに、溶媒として2−ブタノン5質量部を仕込み、フラスコ内に窒素を5mL/min流しながら、水浴加熱により還流させた。ここに、モノマーm−1を5質量部、サイクロマーM100(ダイセル社製)5質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を1質量部と、溶媒として2−ブタノン5質量部を混合した溶液を、3時間かけて滴下し、さらに3時間還流状態を維持したまま撹拌した。反応終了後、室温まで放冷し、2−ブタノン30質量部を加えて希釈することで約20質量%の重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を大過剰のメタノール中へ投入して重合体を沈殿させ、回収した沈殿物をろ別し、大量のメタノールで洗浄した後、50℃において12時間送風乾燥することにより、光配向性基を有する重合体PA−1を得た。
【0121】
重合体PA−1
【化16】
【0122】
<配向膜P−2の作製>
配向膜P−2形成用塗布液を#2.4のワイヤーバーで連続的に市販されているトリアセチルセルロースフィルム「Z−TAC」(富士フイルム社製)上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて偏光紫外線照射(10mJ/cm
2、超高圧水銀ランプ使用)することで、配向膜P−2を形成した。
─────────────────────────────────
(配向膜P−2成用塗布液)
─────────────────────────────────
上記重合体PA−1 100.00質量部
熱酸発生剤(サンエイドSI−B3A、三新化学製) 5.00質量部
イソプロピルアルコール 16.50質量部
酢酸ブチル 1072.00質量部
メチルエチルケトン 268.00質量部
─────────────────────────────────
【0123】
<ポジティブAプレートA−4の形成>
下記組成物A−4を、バーコーターを用い配向膜P−2上に塗布した。配向膜P−2上に形成された塗膜を温風にて120℃に加熱し、その後60℃に冷却した後に窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmにて100mJ/cm
2の紫外線を塗膜に照射し、続いて120℃に加熱しながら500mJ/cm
2の紫外線を塗膜に照射することで、液晶化合物の配向を固定化し、ポジティブAプレートA−4を有するTACフィルムA−4を作製した。ポジティブAプレートA−4の厚みを下記表3に示す。また、下記組成物A−4における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
【0124】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−4)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 39.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 39.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 17.00質量部
・下記重合性液晶化合物L−4 5.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・シクロペンタノン 235.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
重合性液晶化合物L−4(I/O値:0.37)
【化17】
【0126】
〔円偏光板4の作製〕
実施例1と同様の方法により、片側に偏光子が露出した偏光板を得た。
次に、偏光子の吸収軸とポジティブAプレートA−4の遅相軸が45°となるように、上記偏光板中の偏光子の露出面とTACフィルムA−4におけるポジティブAプレートA−4の表面とを感圧性接着剤(SK−2057、綜研化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、その後、TACフィルムA−4におけるZ−TACを剥離することで、ポジティブAプレートA−4のみを偏光板に転写した。
次いで、転写されたポジティブAプレートA−4の表面と、上記で作製したフィルムC−1中のポジティブCプレートC−1の表面とを、感圧性接着剤(SK−2057、綜研化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、その後、フィルムC−1における形成用仮支持体を剥離することで、ポジティブCプレートC−1のみをポジティブAプレートA−1上に転写し、円偏光板4を作製した。
【0127】
[実施例5]
組成物A−1を下記の組成物A−5に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−5を形成し、円偏光板5を作製した。また、下記組成物A−5における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−5)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶化合物L−5 33.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 55.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 12.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0128】
重合性液晶化合物L−5(I/O値:0.40、pKa値:12.2)
【化18】
【0129】
[実施例6]
組成物A−1を下記の組成物A−6に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−6を形成し、円偏光板6を作製した。また、下記組成物A−6における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−6)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 33.00質量部
・下記重合性液晶化合物L−6 55.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 12.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0130】
重合性液晶化合物L−6(I/O値:0.43)
【化19】
【0131】
[実施例7]
組成物A−1を下記の組成物A−7に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−7を形成し、円偏光板7を作製した。また、下記組成物A−7における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−7)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−5 10.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−6 90.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0132】
[実施例8]
組成物A−1を下記の組成物A−8に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−8を形成し、円偏光板8を作製した。また、下記組成物A−8における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−8)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 78.00質量部
・下記重合性液晶化合物L−7 22.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0133】
重合性液晶化合物L−7(I/O値:0.41)
【化20】
【0134】
[比較例1]
組成物A−1を下記の組成物A−9に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−9を形成し、円偏光板9を作製した。また、下記組成物A−9における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−9)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 84.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 16.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0135】
[比較例2]
組成物A−1を下記の組成物A−10に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−10を形成し、円偏光板10を作製した。また、下記組成物A−10における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−10)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−2 73.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 27.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0136】
[比較例3]
組成物A−1を下記の組成物A−11に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−11を形成し、円偏光板11を作製した。また、下記組成物A−11における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−11)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合性液晶化合物L−1 73.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 10.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 17.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0137】
[比較例4]
組成物A−1を下記の組成物A−12に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−12を形成し、円偏光板12を作製した。また、下記組成物A−12における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−12)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶化合物L−8 18.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−2 55.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 27.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0138】
重合性液晶化合物L−8(I/O値:0.51)
【化21】
【0139】
[比較例5]
組成物A−1を下記の組成物A−13に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−13を形成し、円偏光板13を作製した。また、下記組成物A−13における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−13)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶化合物L−9 47.50質量部
・下記重合性液晶化合物L−10 47.50質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 5.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・メチルエチルケトン 235.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0140】
重合性液晶化合物L−9(I/O値:0.62)
【化22】
【0141】
重合性液晶化合物L−10(I/O値:0.63)
【化23】
【0142】
[比較例6]
組成物A−1を下記の組成物A−14に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−14を形成し、円偏光板14を作製した。また、下記組成物A−14における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−14)
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・上記重合性液晶化合物L−6 95.00質量部
・上記重合性液晶化合物L−3 5.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0143】
[比較例7]
組成物A−1を下記の組成物A−15に変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様の方法によって、ポジティブAプレートA−15を形成し、円偏光板15を作製した。また、下記組成物A−15における液晶化合物のI/O値の荷重平均値を下記表3に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A−15)
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・上記重合性液晶化合物L−5 100.00質量部
・上記重合開始剤PI−1 0.50質量部
・上記レベリング剤T−1 0.20質量部
・クロロホルム 570.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
実施例1〜8および比較例1〜7で作製したポジティブAプレートおよび円偏光板について、以下に示す各種評価結果を下記表3にまとめて示す。
【0145】
<膜厚測定>
反射分光膜厚計FE3000(大塚電子株式会社製)を用いて、ポジティブAプレートの厚みを測定した。
【0146】
<配向度>
偏光ラマン分光測定は、東京インスツルメンツ社製 NanoFinder30を用いて、励起レーザー波長を785nm、励起レーザー出力を試料部で約30mWに設定し、レーザー偏光が入射する光学異方性膜の面の方位と入射レーザー偏光の電場方向がなす角度qを0度から180度まで15度ごとに変えて測定した。
得られた散乱光の成分のうち入射レーザー偏光電場と平行な偏光成分(I||(q))と垂直な偏光成分(I⊥(q))を、検光子を用いてそれぞれ分光検出し、分子骨格に由来するピークをもつバンドに対し、上述した理論式(A)を用いた最小二乗法に基づくフィッティング解析を行い、配向度を得た。
【0147】
<光学特性の測定>
AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)を用いて、波長450nmおよび550nmにおいて、Reの光入射角度依存性を測定した。
【0148】
<湿熱耐久性>
作製したポジティブAプレート上に粘着剤を貼合し、85℃85%の環境下で500時間保持した後のRe(550)を下記の基準で評価した。
A:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が98%以上である場合
B:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が95%以上98%未満である場合
C:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が90%以上95%未満である場合
D:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が90%未満である場合
【0149】
<反射率>
(有機EL表示装置への実装)
有機EL表示パネル搭載のSAMSUNG社製GALAXY S IVを分解し、円偏光板を剥離して、実施例1〜8および比較例1〜7の円偏光板をそれぞれ有機EL表示パネル上に貼合し、有機EL表示装置を作製した。
(反射率)
作製した有機EL表示装置について、測色計(コニカミノルタ製、CM−2022)を用い、SCE(Specular component excluded)モードで測定し、得られたY値を、比較例5を基準として下記の基準で評価した。なお、下記表3中、基準とした比較例5の評価は「−」と表記している。
A:比較例5でのY値に対し、Y値の割合が110%以下である場合
B:比較例5でのY値に対し、Y値の割合が110%超である場合
【0150】
【表3】
【0151】
上記表3に示す結果から、重合性液晶化合物(2)を配合しない場合には、光学異方性膜の配向度が低くなり、所望の位相差を実現するために3μm以上の厚みが必要となることが分かった(比較例1および7)。
また、重合性液晶化合物(1)を配合しない場合には、光学異方性膜の湿熱耐久性が劣ることが分かった(比較例2および4〜6)。
また、重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)を配合する場合であっても、光学異方性膜の配向度が低い場合には、所望の位相差を実現するために3μm以上の厚みが必要となることが分かった(比較例3)。
【0152】
これに対し、重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)を配合し、かつ、光学異方性膜の配向度が0.4以上であると、湿熱耐久性に優れ、また、反射防止に適した位相差を実現するために必要な厚みは3μmより薄くなることが分かった(実施例1〜8)。