(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の場合、隙間の条件を満たす専用のネジを用意しなければならないため、コスト高になるという欠点がある。また、特許文献4の場合は、ワッシャが必要になるため、部品点数及び組み立て工数が増加するという欠点がある。
【0008】
一方、スリットを備えたカムフォロアの場合は、スリットの幅を調整することによって、変形量を規制することも考えられる。しかし、許容する変形量が極微小な場合(たとえば、0.1mm以下)、その条件を満たすカムフォロアを低コストで製造することは難しい。特に、カムフォロアを樹脂で射出成形する場合には、極微細なスリットを備えたカムフォロアを一体成形品として製造することは難しい。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シンプルな構成で弾性変形量を適切に規制でき、かつ、容易に製造できるカムフォロア及びレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0011】
(1)直進溝及びカム溝に嵌め込まれるカムフォロアであって、先端が開口した中空状のカムフォロア本体と、カムフォロア本体の先端から基端に向けて切り込まれた第1スリットと、第1スリットの少なくとも一方の内壁面に備えられ、カムフォロア本体の径方向への規定量以上の変形を規制する突起部と、を備えたカムフォロア。
【0012】
本態様によれば、カムフォロアは、先端が開口した中空状のカムフォロア本体を有する。カムフォロア本体は、先端から基端に向けて切り込まれた第1スリットを有する。カムフォロア本体は、この第1スリットによって径方向に弾性変形可能に構成される。第1スリットは、少なくとも一方の内壁面に突起部を有する。突起部は、カムフォロア本体が、径方向に規定量変形すると、対向する第1スリットの内壁面に当接する(第1スリットの両側の内壁面に対向して突起部が備えられている場合は、対向する突起部同士が当接する。)。これにより、以後の変形が規制される。このように、本態様のカムフォロアによれば、シンプルな構成でカムフォロアの弾性変形量を適切に規制できる。また、第1スリットは、突起部においてのみ所定の幅を備えていればよいので、たとえば、樹脂で射出成形する場合であっても、容易に製造できる。
【0013】
(2)突起部が、第1スリットの片側の内壁面に備えられる、上記(1)のカムフォロア。
【0014】
本態様によれば、突起部が、第1スリットの片側の内壁面に備えられる。この場合、カムフォロア本体を径方向に変形させると、突起部は、対向する第1スリットの内壁面に当接する。
【0015】
(3)突起部が、第1スリットの両側の内壁面に備えられる、上記(1)のカムフォロア。
【0016】
本態様によれば、突起部が、第1スリットの両側の内壁面に備えられる。この場合、突起部は、互いに対向するように配置してもよいし、位置をずらして配置してもよい。対向して配置する場合、カムフォロア本体を径方向に変形させると、突起部同士が当接する。位置をずらして配置する場合、カムフォロア本体を径方向に変形させると、互いに突起部は対向する第1スリットの内壁面に当接する。
【0017】
(4)突起部が、第1スリットの両側の内壁面に対向して配置される、上記(3)のカムフォロア。
【0018】
本態様によれば、突起部が、第1スリットの両側の内壁面に対向して配置される。この場合、カムフォロア本体を径方向に変形させると、突起部同士が当接する。
【0019】
(5)突起部は、先端が円弧状である、上記(1)から(4)のいずれか一のカムフォロア。
【0020】
本態様によれば、突起部の先端が円弧状の形状を有する。これにより、突起部を当接させる際に点で接触させることができる。
【0021】
(6)突起部は、カム溝の位置度公差と幅公差の和以上の変形を規制する、上記(1)から(4)のいずれか一のカムフォロア。
【0022】
本態様によれば、突起部が規制する規定量以上の変形として、カム溝の位置度公差と幅公差の和以上の変形が規制される。これにより、カムフォロア本体の変形を適切に抑えられる。
【0023】
(7)第1スリットは、突起部の位置において、カム溝の位置度公差と幅公差の和と等しい幅を有する、上記(6)のカムフォロア。
【0024】
本態様によれば、突起部の位置における第1スリットの幅が、カム溝の位置度公差と幅公差の和と等しい幅とされる。これにより、カム溝の位置度公差と幅公差の和以上につぶれて変形するのを規制できる。ここで、「突起部の位置における第1スリットの幅」とは、突起部が設けられている位置の第1スリットの幅を意味する。この幅は第1スリットの幅の中で最も狭い部分の幅となる。突起部が第1スリットの片側の内壁面にのみ備えられている場合は、突起部の先端から対向する内壁面までの距離が、突起部の位置における第1スリットの幅となる。突起部が第1スリットの両側の内壁面に対向して備えられている場合は、突起部と突起部との間の幅が突起部の位置における第1スリットの幅となる。また、「カム溝の位置度公差」とは、カム筒の周面に等間隔で配置されるカム溝の配置位置の公差をいう(角度公差又は当分差ともいう。)。また、「カム溝の幅公差」とは、カム溝の幅の寸法の公差をいう。なお、「等しい幅」の範囲には、実質的に等しいと認められる範囲が含まれる。すなわち、ほぼ等しい範囲が含まれる。
【0025】
(8)第1スリットは、突起部の位置において、0.06mm以下の幅を有する、上記(7)のカムフォロア。
【0026】
本態様によれば、突起部の位置における第1スリットの幅が0.06mm以下とされる。カメラ用のレンズ鏡筒の場合、カム溝の位置度公差と幅公差の和は、おおよそ0.06mm以下とされる。一方、カムフォロアを樹脂で射出成形する場合、全長に渡って幅が0.06mm以下のスリットを形成することは難しい。しかし、部分的であれば、樹脂で射出成形する場合であっても、安定して製造できる。
【0027】
(9)第1スリットが、カムフォロア本体の周方向に一定の間隔で複数箇所に備えられる、上記(1)から(8)のいずれか一のカムフォロア。
【0028】
本態様によれば、第1スリットが、カムフォロア本体の周方向に一定の間隔で複数箇所に備えられる。
【0029】
(10)カムフォロア本体は、カム溝の内壁面に接触する面及び直進溝の内壁面に接触する面が、外側に凸となる円弧形状を有する、上記(1)から(9)のいずれか一のカムフォロア。
【0030】
本態様によれば、カムフォロア本体のカム溝の内壁面に接触する面及び直進溝の内壁面に接触する面が、外側に凸となる円弧形状を有する。これにより、カム溝及び直進溝に対して、カムフォロア本体を点で接触させることができ、効率的にカムフォロアの弾性を利用できる。加えて、各溝の内壁面に対する摺動抵抗を低減でき、スムーズに動作させることができる。
【0031】
(11)カムフォロア本体の外周部から内周部に向けて軸と直交する方向に切り込まれた第2スリットを更に備えた、上記(1)から(10)のいずれか一のカムフォロア。
【0032】
本態様によれば、カムフォロア本体に第2スリットが備えられる。第2スリットは、カムフォロア本体の外周部から内周部に向けて軸と直交する方向に切り込まれる。この第2スリットを備えることにより、一方の溝(カム溝又は直進溝)への嵌合部の変形が、他方の溝(カム溝又は直進溝)への嵌合部に及ぼす影響を低減でき、必要な部分のみ弾性変形させることができる。これにより、各溝の加工精度にバラツキがあっても、各溝にカムフォロアを適切に押圧当接させることができ、適切にガタの発生を防止できる。また、カムフォロアの基端部を圧入して取り付ける場合は、各溝への嵌合部の変形が、圧入部の形状に及ぼす影響を低減できる。
【0033】
(12)カムフォロアが、樹脂による一体成形品である、上記(1)から(11)のいずれか一のカムフォロア。
【0034】
本態様によれば、カムフォロアが、樹脂による一体成形品として構成される。すなわち、所定の金型を用いて樹脂で射出成形される。
【0035】
(13)レンズを保持した第1筒と、カム溝を有する第2筒と、直進溝を有する第3筒と、第1筒に備えられ、直進溝及びカム溝に嵌め込まれる上記(1)から(12)のいずれか一のカムフォロアと、を備え、第2筒及び第3筒の相対的な回転により、第1筒を光軸に沿って移動させる、レンズ鏡筒。
【0036】
本態様によれば、レンズを駆動するカム機構に上記(1)から(12)のいずれか一のカムフォロアが使用される。これにより、光軸のズレ、倒れ等を防止でき、良好な光学性能を維持できる。
【0037】
(14)第1筒の重心からずれた位置にカムフォロアが備えられる、上記(13)のレンズ鏡筒。
【0038】
本態様によれば、第1筒の重心からずれた位置にカムフォロアが備えられる。第1筒の重心からずれた位置にカムフォロアが備えられると、カムフォロアにモーメントが作用する。しかし、上記(1)から(12)のいずれか一のカムフォロアを使用することにより、カムフォロアに強大なモーメントが作用した場合であっても、必要以上にカムフォロアがつぶれて変形するのを防止できる。これにより、良好な光学性能を維持できる。
【0039】
(15)レンズが、第1筒の一方側の端部に保持され、カムフォロアが、第1筒の他方側の端部に備えられる、上記(14)のレンズ鏡筒。
【0040】
本態様によれば、レンズが第1筒の一方側の端部に保持され、カムフォロアが第1筒の他方側の端部に備えられる。このような構成では、第1筒の重心から大きく離れた位置にカムフォロアが配置され、カムフォロアに強大なモーメントが作用する。しかし、上記(1)から(12)のいずれか一のカムフォロアを使用することにより、カムフォロアに強大なモーメントが作用した場合であっても、必要以上にカムフォロアがつぶれて変形するのを防止できる。これにより、良好な光学性能を維持できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、シンプルな構成で弾性変形量を適切に規制でき、かつ、容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための好ましい形態について詳説する。
【0044】
ここでは、本発明をレンズ交換式カメラの交換レンズに適用した場合を例に説明する。特に、カム機構によってレンズ群を移動させてズームする機能を備えた交換レンズに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0045】
[交換レンズの構成]
図1及び
図2は、本発明が適用された交換レンズの概略構成を示す断面図である。
図1は、広角端の状態を示しており、
図2は、望遠端の状態を示している。
【0046】
交換レンズ1は、そのレンズ鏡筒10の基端部(像側の端部)にマウント12を備える。交換レンズ1は、マウント12を介して、カメラ本体に着脱自在に装着される。レンズ鏡筒10の内部には、複数のレンズ群が配置される。
【0047】
《レンズ構成》
図3は、変倍操作した場合の各レンズ群の移動状態を示す図である。同図(A)は、広角端でのレンズ配置を示しており、同図(B)は望遠端でのレンズ配置を示している。
【0048】
レンズ鏡筒10は、その内部に物体側から順に第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4及び第5レンズ群G5を備える。各レンズ群は、少なくとも1枚のレンズで構成される。また、各レンズ群は、光軸Zに沿って配置される。
【0049】
第1レンズ群G1から第5レンズ群
G5のうち、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4は、変倍に際して移動するレンズ群である。一方、第5レンズ群G5は、変倍に際して固定のレンズ群である。
【0050】
第2レンズ群G2は、物体側から順に第2レンズ群前群G2a及び第2レンズ群後群G2bを備える。第2レンズ群後群G2bはフォーカスレンズ群を構成し、独立して移動する。第2レンズ群後群G2bを光軸Zに沿って移動させることにより、フォーカシングされる。
【0051】
第3レンズ群G3は、絞りStを含む。絞りStは、たとえば、虹彩絞りで構成される。絞りStの開口量を調整することにより、光量が調整される。
【0052】
《鏡筒の構成》
レンズ鏡筒10は、固定筒20、カム筒30、移動筒40及び外装筒50を備える。また、レンズ鏡筒10は、第1レンズ群G1を保持する第1レンズ保持枠LF1、第2レンズ群G2を保持する第2レンズ保持枠LF2、第3レンズ群G3を保持する第3レンズ保持枠LF3、第4レンズ群G4を保持する第4レンズ保持枠LF4及び第5レンズ群G5を保持する第5レンズ保持枠LF5を備える。
【0053】
固定筒20、カム筒30及び移動筒40は、内側から固定筒20、カム筒30、移動筒40の順で嵌合されて、多重構造の筒体を構成する。具体的には、固定筒20の外周にカム筒30が嵌合され、カム筒30の外周に移動筒40が嵌合されて、多重構造の筒体を構成する。
【0054】
〈固定筒〉
固定筒20は、円筒状の筒体で構成され、たとえば、アルミ等の金属で構成される。固定筒20は、その基端部(像側の端部)にマウント12を備える。したがって、交換レンズ1をカメラ本体に装着すると、固定筒20はカメラ本体に固定される。固定筒20には、光軸Zに沿って延びる複数の直進溝が備えられる。
【0055】
〈カム筒〉
カム筒30は、円筒状の筒体で構成され、たとえば、アルミ等の金属で構成される。カム筒30は、固定筒20の外周に嵌合されることにより、固定筒20の外周を周方向に回転自在に保持される。固定筒20は第2筒の一例であり、カム筒30は第3筒の一例である。カム筒30には、複数のカム溝が備えられる。なお、便宜上、
図1及び
図2には、一つのカム溝(移動筒40を駆動する第1カム溝30A)のみを図示している。
【0056】
〈移動筒〉
移動筒40は、円筒状の筒体で構成される。移動筒40は、第1筒の一例である。移動筒40は、カム筒30の外周に嵌合されることにより、
カム筒30の外周を光軸に沿って移動自在に保持される。移動筒40を移動させる機構については、後述する。
【0057】
〈外装筒〉
外装筒50は、円筒状の筒体で構成される。外装筒50は、交換レンズ1の外装を構成する。外装筒50は、その基端部において、固定筒20に固定される。したがって、交換レンズ1をカメラ本体に装着すると、外装筒50もカメラ本体に固定される。
【0058】
外装筒50には、ズームの操作手段としてズームリング52が備えられる。ズームリング52は、外装筒50の外周を周方向に回転自在に設けられる。ズームリング52は、図示しない連結部材を介してカム筒30と連結され、その回転がカム筒30に伝達される。したがって、ズームリング52を回転させると、カム筒30が回転する。
【0059】
また、外装筒50には、フォーカスの操作手段としてフォーカスリング54が備えられる。フォーカスリング54は、外装筒50の外周を周方向に回転自在に設けられる。フォーカスリング54は、図示しないセンサによって、その回転量が検出される。
【0060】
〈第1レンズ保持枠〉
第1レンズ保持枠LF1は、円筒状の筒体で構成される。第1レンズ保持枠LF1は、その内周部の同軸上に第1レンズ群G1を保持する。
【0061】
第1レンズ保持枠LF1は、移動筒40の内周部の同軸上に配置され、移動筒40に一体的に保持される。したがって、移動筒40と共に移動する。第1レンズ保持枠LF1は、移動筒40の一方側の端部である先端部(物体側の端部)に保持される。
【0062】
〈第2レンズ保持枠〉
第2レンズ保持枠LF2は、円筒状の筒体で構成される。第2レンズ保持枠LF2は、その内周部の同軸上に第2レンズ群G2を保持する。第2レンズ保持枠LF2は、第1筒の一例である。
【0063】
上記のように、第2レンズ群G2は、第2レンズ群前群G2a及び第2レンズ群後群G2bを備える。第2レンズ群前群G2aは、第2レンズ保持枠LF2の同軸上に一体的に保持される。一方、第2レンズ群後群G2bは、第2レンズ保持枠LF2の内周に備えられた一対のガイドシャフトGSを移動自在に支持される。一対のガイドシャフトGSは、光軸Zに沿って配置される。これにより、第2レンズ群後群G2bが独立して移動自在に保持される。第2レンズ保持枠LF2には、第2レンズ群後群G2bの駆動手段として、図示しないリニアモータが備えられる。第2レンズ群後群G2bは、このリニアモータに駆動されて移動する。
【0064】
第2レンズ保持枠LF2は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第2レンズ保持枠LF2は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第2レンズ保持枠LF2を移動させる機構については、後述する。
【0065】
〈第3レンズ保持枠〉
第3レンズ保持枠LF3は、円筒状の筒体で構成される。第3レンズ保持枠LF3は、その内周部の同軸上に第3レンズ群G3を保持する。また、第3レンズ保持枠LF3は、その内周部の同軸上に絞りユニットSUを保持する。第3レンズ保持枠LF3は、第1筒の一例である。
【0066】
第3レンズ保持枠LF3は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第3レンズ保持枠LF3は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第3レンズ保持枠LF3を移動させる機構については、後述する。
【0067】
〈第4レンズ保持枠〉
第4レンズ保持枠LF4は、円筒状の筒体で構成される。第4レンズ保持枠LF4は、その内周部の同軸上に第4レンズ群G4を保持する。第4レンズ保持枠LF4は、第1筒の一例である。
【0068】
第4レンズ保持枠LF4は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第4レンズ保持枠LF4は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第4レンズ保持枠LF4を移動させる機構については、後述する。
【0069】
〈第5レンズ保持枠〉
第5レンズ保持枠LF5は、円筒状の筒体で構成される。第5レンズ保持枠LF5は、その内周部の同軸上に第5レンズ群G5を保持する。
【0070】
第5レンズ保持枠LF5は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第5レンズ保持枠LF5は、固定筒20に一体的に保持される。
【0071】
《移動筒の駆動機構》
図4は、
図1の4−4断面図である。
【0072】
移動筒40は、その基端部(像側の端部)の内周に三本のカムフォロア100を備える。三本のカムフォロア100は、移動筒40の内周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。カムフォロア100は、第1スリット及び第2スリットを備え、径方向に弾性変形可能に構成される。カムフォロア100の詳細については、後述する。
【0073】
カム筒30は、所定の軌跡を有する三本の第1カム溝30Aを備える。三本の第1カム溝30Aは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。
【0074】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる三本の第1直進溝20Aを備える。三本の第1直進溝20Aは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。
【0075】
移動筒40に備えられた三本のカムフォロア100は、それぞれ三本の第1カム溝30A及び第1直進溝20Aに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、移動筒40が光軸Zに沿って移動する。
【0076】
《第2レンズ保持枠の駆動機構》
図5は、第2レンズ保持枠の駆動に関わる構成の断面図である。また、
図6は、
図5の6−6断面図である。
【0077】
第2レンズ保持枠LF2は、外周部に三本のカムフォロア100を備える。三本のカムフォロア100は、第2レンズ保持枠LF2の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。カムフォロア100の構成は、移動筒40に備えられたカムフォロア100と同じである。その詳細は後述する。
【0078】
カム筒30は、所定の軌跡を有する三本の第2カム溝30Bを備える。三本の第2カム溝30Bは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。なお、
図5には、便宜上、第2カム溝30Bのみを図示している。
【0079】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる三本の第2直進溝20Bを備える。三本の第2直進溝20Bは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。
【0080】
第2レンズ保持枠LF2に備えられた三本のカムフォロア100は、それぞれ三本の第2カム溝30B及び第2直進溝20Bに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、第2レンズ保持枠LF2が光軸Zに沿って移動する。
【0081】
《第3レンズ保持枠及び第4レンズ保持枠の駆動機構》
図7は、第3レンズ保持枠及び第4レンズ保持枠の駆動に関わる構成の断面図である。また、
図8は、
図7の8−8断面図、
図9は、
図7の9−9断面図である。
【0082】
第3レンズ保持枠LF3は、外周部に三本のカムフォロア100を備える。三本のカムフォロア100は、第3レンズ保持枠LF3の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。カムフォロア100の構成は、移動筒40に備えられたカムフォロア100と同じである。その詳細は後述する。
【0083】
また、第4レンズ保持枠LF4は、外周部に三本のカムフォロア100を備える。三本のカムフォロア100は、第4レンズ保持枠LF4の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。カムフォロア100の構成は、移動筒40に備えられたカムフォロア100と同じである。その詳細は後述する。
【0084】
カム筒30は、所定の軌跡を有する三本の第3カム溝30C及び第4カム溝30Dを備える。三本の第3カム溝30Cは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。また、三本の第4カム溝30Dは、三本のカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。なお、図
7には、便宜上、第3カム溝30C及び第4カム溝30Dのみを図示している。
【0085】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる三本の共通直進溝20CDを備える。三本の共通直進溝20CDは、三本のカムフォロア100及びカムフォロア100に対応して等間隔に配置される。
【0086】
第3レンズ保持枠LF3に備えられた三本のカムフォロア100は、それぞれ三本の第3カム溝30C及び共通直進溝20CDに嵌合される。また、第4レンズ保持枠LF4に備えられた三本のカムフォロア100は、それぞれ三本の第4カム溝30D及び共通直進溝20CDに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、第3レンズ保持枠LF3及び第4レンズ保持枠LF4が光軸Zに沿って移動する。
【0087】
[交換レンズの作用]
以上のように構成される交換レンズ1は、ズームリング52を回転操作することにより、固定筒20に対して、カム筒30が回転する。カム筒30が回転すると、カムの作用によって、移動筒40、第2レンズ保持枠LF2、第3レンズ保持枠LF3及び第4レンズ保持枠LF4が光軸Zに沿って移動する。この結果、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が光軸Zに沿って移動し、焦点距離が変化する。すなわち、ズームする。
【0088】
[カムフォロアの構成]
図10はカムフォロアの正面図、
図11はカムフォロアの背面図、
図12はカムフォロアの平面図、
図13はカムフォロアの底面図、
図14はカムフォロアの右側面図、
図15はカムフォロアの左側面図である。また、
図16はカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図17はカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図18は
図12の18−18断面図、
図19は
図12の19−19断面図である。
【0089】
カムフォロア100は、カムフォロア本体110と、カムフォロア本体110の基端部の同軸上に備えられる基部120と、カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130と、カムフォロア本体110に備えられる第2スリット140と、第1スリット130内に備えられる突起部150と、を備える。
【0090】
このカムフォロア100は、所定の金型を用いて樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。たとえば、POM(POM:Polyoxymethylene又はPolyacetal/ポリオキシメチレン又はポリアセタール)
などの樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。
【0091】
《カムフォロア本体》
カムフォロア本体110は、溝(カム溝及び直進溝)に嵌合する部位であり、先端が開口した中空状の形状を有する。
【0092】
〈カムフォロア本体の外周部〉
カムフォロア本体110は、その外周部に先端側から順に第1嵌合部111及び第2嵌合部112を有する。第1嵌合部111及び第2嵌合部112は、それぞれ溝(カム溝及び直進溝)に嵌合する部分である。たとえば、第2レンズ保持枠LF2に取り付けられるカムフォロア100の場合は、第1嵌合部111が第2カム溝30Bに嵌合し、第2嵌合部112が第2直進溝20Bに嵌合する。また、移動筒40に備えられるカムフォロア100の場合は、第1嵌合部111が第1直進溝20Aに嵌合し、第2嵌合部112が第1カム溝30Aに嵌合する。
【0093】
第1嵌合部111は、外側に向けて球状に膨らんだ形状を有する。すなわち、軸方向の中央部から両端部に向けて漸次外径が小さくなる形状を有する。この結果、第1嵌合部111は、その外周の断面が、外側に向かって凸となる円弧形状を有する。このように構成された第1嵌合部111は、溝(カム溝又は直進溝)に嵌め込まれることにより、その溝の内壁面に点接触する。接触する部分は、第1嵌合部111の外径が最大となる部分である。この部分は、軸方向のほぼ中央部分である。
【0094】
第2嵌合部112は、外側に向けて球状に膨らんだ形状を有する。すなわち、軸方向の中央部から両端部に向けて漸次外径が小さくなる形状を有する。この結果、第2嵌合部112は、その外周の断面が、外側に向かって凸となる円弧形状を有する。このように構成された第2嵌合部112は、溝(カム溝又は直進溝)に嵌め込まれることにより、その溝の内壁面に点接触する。接触する部分は、第2嵌合部112の外径が最大となる部分である。この部分は、軸方向のほぼ中央部分である。
【0095】
第1嵌合部111及び第2嵌合部112の間の領域はくびれ部113として構成され、内側に円弧状にくびれた形状を有する。くびれ部113は、その外周の断面が内側に向かって凹となる円弧形状を有する。
【0096】
〈カムフォロア本体の内周部〉
カムフォロア本体110の内周部は、底を有する円形状の凹部として構成される。内周部は、底面114の中央にネジ挿通穴115を有する。ネジ挿通穴115は、貫通穴で構成され、ネジが挿通可能な径を有する。
【0097】
また、内周部は、底面114にネジ受け部116を有する。ネジ受け部116は、円形状の凹部で構成され、ネジ挿通穴115と同心状に配置される。ネジ受け部116は、その底面がネジの座面116aとして機能する。すなわち、カムフォロア100を固定するネジの頭部を受ける面として機能する。この座面116aの位置は、第2スリット140の先端側の内壁面140aよりも基端側に位置する。
【0098】
《基部》
基部120は、円筒形状を有し、カムフォロア本体110の基端部
の同軸上に備えられる。基部120は、底面に圧入部121を有する。圧入部121は、円形状の凹部で構成され、カムフォロア100の軸と同軸上に配置される。カムフォロア100は、この圧入部121を介して、取り付け対象(移動筒40等)に取り付けられる。カムフォロア100の取り付けについては後述する。
【0099】
《第1スリット》
第1スリット130は、カムフォロア本体110の先端から基端に向けて軸と平行に切り込まれた一定幅(突起部150を除く)の溝で構成される。第1スリット130は、内周部の底面114まで切り込まれる。
【0100】
第1スリット130は、カムフォロア本体110の周面の二箇所に備えられる。二本の第1スリット130は、等間隔に配置される。カムフォロア本体110は、この二本の第1スリット130によって、周方向に二等分割される。
【0101】
このような第1スリット130を備えることにより、カムフォロア本体110は、径方向に弾性変形可能に構成される。
【0102】
第1スリット130は、端部がR形状(円弧形状)を有する。端部がR形状を有することにより、応力集中を防止できる。これにより、繰り返し応力が作用した場合であっても、強度が低下するのを防止できる。また、端部がR形状を有することにより、弾性係数を均一化できる。
【0103】
《第2スリット》
第2スリット140は、カムフォロア本体110の外周部から内周部に向けて軸と直交して切り込まれた一定幅の溝で構成される。第2スリット140は、カムフォロア本体110の周面の二箇所に備えられる。二本の第2スリット140は同じ高さの位置に備えられる。第2スリット140を備える位置は、第2嵌合部112が溝(カム溝又は直進溝)の内壁面に接触する部位よりも基端側、かつ、圧入部121よりも先端側とされる。また、二本の第2スリット140は、第1スリット130とカムフォロア本体110の中心を通る直線に対して左右対称に配置される。
【0104】
このような第2スリット140を備えることにより、第1嵌合部111及び第2嵌合部112の弾性変形を適正化できる。たとえば、先端側の第1嵌合部111が内側に弾性変形した場合であっても、その影響で第2嵌合部112が外側に膨張するのを防止できる。すなわち、第2スリット140を備えることにより、必要な部分だけ弾性変形させることができる。これにより、カム溝及び直進溝の加工精度にバラツキがあっても、各溝にカムフォロア100を適切に押圧当接させることができ、ガタの発生を防止できる。
【0105】
また、このような第2スリット140を備えることにより、各嵌合部の変形が圧入部121の形状に及ぼす影響を低減できる。これにより、カムフォロア100を高精度に取り付けることができる。
【0106】
なお、第2スリット140は所定の角度範囲で備えられる。その角度範囲は、カムフォロア100の強度を考慮して設定することが好ましい。すなわち、第2スリット140を備える角度範囲が狭すぎると、第2スリット140を備えた効果が十分に得られず、広すぎると、カムフォロア100の強度が低下する。したがって、必要な強度を確保しつつ、十分な効果が得られる角度範囲で備えることが好ましい。
【0107】
第2スリット140は、両側の端部がR形状(円弧形状)を有する。両側の端部がR形状を有することにより、応力集中を防止できる。これにより、繰り返し応力が作用した場合であっても、強度が低下するのを防止できる。また、両側の端部がR形状を有することにより、弾性係数を均一化できる。
【0108】
なお、上記のように、ネジの座面116aは、第2スリット140の先端側の内壁面140aよりも基端側に備えられる。この点について説明する。
【0109】
図20は、カムフォロアの断面斜視図である。
【0110】
同図に示すように、ネジの座面116aは、第2スリット140の先端側の内壁面140aの位置から基端側に距離dだけ離れた位置に配置される。これにより、カムフォロア100をネジで固定する際に、ネジから受ける力が、第1嵌合部111及び第2嵌合部112に伝わるのを防止できる。また、これにより、第1嵌合部111及び第2嵌合部112の変形を防止できる。すなわち、カムフォロア100は、ネジで固定する際、座面がネジから捻る力を受ける。座面の位置が、第2スリット140の先端側の内壁面よりも基端側に位置することにより、ネジから受ける力が、第1嵌合部111及び第2嵌合部112に伝わるのを防止できる。これにより、第1嵌合部111及び第2嵌合部112が、捩れて変形するのを防止できる。
【0111】
《突起部》
突起部150は、第1スリット130の両側の内壁面に備えられる。各突起部150は、第1スリット130の先端部において、互いに対向して配置される。各突起部150は、直方体形状を有し、第1スリット130の内壁面から凸状に突出して設けられる。
【0112】
突起部150は、カムフォロア本体110が、径方向の内側に弾性変形した際に互いに当接し、カムフォロア本体110が必要以上につぶれて変形するのを規制する機能を有する。
【0113】
カムフォロア本体110の変形量は、突起部150の位置における第1スリット130の幅Wで規制される。突起部150の位置における第1スリット130の幅Wとは、突起部150が設けられている位置における第1スリット130の幅である。本実施の形態のカムフォロア100は、第1スリット130の両側の内壁面に互いに対向して突起部150が配置されている。したがって、二つの突起部150の間の隙間の幅が、突起部150の位置における第1スリット130の幅Wとなる。この幅Wは、第1スリット130の幅の中で最も狭い部分の幅となる。
【0114】
突起部150で規制する変形量は、次のように規定される。
【0115】
カムフォロア100は、弾性変形することによって、各溝(カム溝及び直進溝)の加工精度のバラツキを吸収する。したがって、カムフォロア100は、少なくとも溝の加工精度のバラツキを吸収できる分だけ変形できる必要がある。
【0116】
溝は公差に基づいて加工される。したがって、各公差の和がバラツキの最大量となる。レンズ鏡筒におけるカム溝の公差としては、一般に位置度公差及び幅公差が知られている。「位置度公差」とは、カム筒の周面に等間隔で配置されるカム溝の配置位置の公差である(角度公差又は当分差ともいう。)。また、「幅公差」とは、カム溝の幅の寸法の公差である。
【0117】
したがって、カムフォロア100は、カム溝の位置度公差及び幅公差の和を変形量として確保しておけば、各溝の加工精度のバラツキを適切に吸収できる。一方、必要な変形量以上の変形を許容すると、負荷を受けた際に必要以上に変形し、レンズの光軸の倒れを引き起こす不具合が生じる。
【0118】
したがって、カムフォロア100は、カム溝の位置度公差及び幅公差の和以上に変形しないように、その変形が規制される。すなわち、カム溝の位置度公差及び幅公差の和が、規定量の変形量として規定される。
【0119】
カム溝の位置度公差及び幅公差の和以上の変形を規制するため、突起部150の位置における第1スリット130の幅Wが、カム溝の位置度公差及び幅公差の和と等しい幅に設定される。これにより、カム溝の位置度公差及び幅公差の和以上の変形、すなわち、規定量以上の変形を規制できる。
【0120】
[カムフォロアの取り付け]
《カムフォロア取付部》
カムフォロア100の取付対象である移動筒40、第2レンズ保持枠LF2、第3レンズ保持枠LF3及び第4レンズ保持枠LF4は、それぞれカムフォロア100の取付位置にカムフォロア取付部200を有する。
【0121】
図21は、カムフォロア取付部の構成を示す断面図である。なお、同図は、第2レンズ保持枠LF2に備えられたカムフォロア取付部の構成を示している。移動筒40、第2レンズ保持枠LF2及び第3レンズ保持枠LF3に備えられるカムフォロア取付部も同様の構成を有する。
【0122】
カムフォロア取付部200は、カムフォロア100の基部120が収容される凹部210と、その凹部210内に備えられるボス212と、ボス212に備えられるネジ穴214と、を備える。
【0123】
凹部210は、カムフォロア100の基部120の外周形状に対応した形状を有する。本実施の形態では、円形状を有する。凹部210は、第2レンズ保持枠LF2の径方向に沿って備えられる。凹部210は、カムフォロア100の基端部の外径よりも若干大きな内径を有する。
【0124】
ボス212は、圧入部121の形状に対応した形状を有する。本実施の形態では、円柱形状を有する。ボス212は、凹部210と同軸上に備えられる。ボス212は、圧入部121の内径よりも若干大きな外径を有する。
【0125】
ネジ穴214は、ボス212と同軸上に備えられる。ネジ穴214には、カムフォロア100を固定するネジ220が取り付けられる。ネジ220は、締結部材の一例である。
【0126】
《カムフォロアの取り付け》
カムフォロア100の取り付けは、次の手順で行われる。まず、カムフォロア100の基部120をカムフォロア取付部200の凹部210に嵌める。この際、基部120に備えられた圧入部121にボス212を嵌める。上記のように、ボス212は、圧入部121の内径よりも若干大きな外径を有する。この結果、カムフォロア100は、いわゆる締まり嵌めによって、ボス212に固定される。この後、カムフォロア本体110の内周部に備えられたネジ挿通穴115にネジ220を通し、ボス212に備えられたネジ穴214に螺合させて、カムフォロア100をネジ220でボス212に固定する。
【0127】
ネジ220で固定する際、カムフォロア100は座面116aを介してネジ220から捻る力を受ける。しかし、座面116aが、第2スリット140の先端側の内壁面140aよりも基端側に位置していることから、その力が第1嵌合部111及び第2嵌合部112に伝わるのを防止できる。これにより、第1嵌合部111及び第2嵌合部112が変形するのを防止できる。
【0128】
図22は、カムフォロアの取付姿勢を示す平面図である。なお、同図は、第2レンズ保持枠LF2に取り付けられたカムフォロアの取付姿勢を示している。移動筒40、第2レンズ保持枠LF2及び第3レンズ保持枠LF3に備えられるカムフォロアも同様の取付姿勢で取り付けられる。
【0129】
図22に示すように、カムフォロア100は、第1スリット130が、カム溝(第2カム溝30B)の溝幅のほぼ中央に位置するように位置決めされて取り付けられる。この場合、二本の第1スリット130を通る直線が、カム溝(第2カム溝30B)の軌跡とほぼ平行になるように取り付けられる。
【0130】
このように取り付けることにより、効率よく弾性を利用できる。すなわち、カム溝の両側の内壁面に対して、カムフォロア100をほぼ均等に撓ませることができる。これにより、カム筒30をいずれの方向に回転させても、同じ力で回転させることができる。
【0131】
[カムフォロアの作用]
以上のように構成されるカムフォロア100によれば、第1スリット130を備えることにより、径方向に弾性変形可能に構成される。これにより、各溝(カム溝及び直進溝)の加工精度にバラツキがあっても、各溝にカムフォロア100を適切に押圧当接させることができる。これにより、ガタの発生を防止できる。
【0132】
また、第1スリット130に加えて第2スリット140を備えることにより、各溝に第1嵌合部111及び第2嵌合部112を適切に押圧当接させることができる。また、第1嵌合部111及び第2嵌合部112の変形が圧入部121の形状に及ぼす影響を低減できる。これにより、カムフォロア100を高精度に取り付けることができる。
【0133】
更に、第1スリット130に突起部150を備えることにより、必要以上にカムフォロア100が変形するのを防止できる。これにより、カムフォロア100に負荷が作用した場合であっても、レンズ群を安定して保持できる。たとえば、
図2に示すように、移動筒40は、その先端側で第1レンズ群G1を保持する構造を有している。この場合、移動筒40の重心GPは、光軸上において、先端寄りに位置する。一方、移動筒40に備えられるカムフォロア100は、移動筒40の基端側に配置される。このように、カムフォロア100が、移動筒40の重心GPに対して、光軸上で大きくズレた位置に配置されると、カムフォロア100に大きなモーメントが作用する。そして、カムフォロア100に大きなモーメントが作用すると、カムフォロア100が必要以上に撓み、保持するレンズ群の倒れを引き起こす。
【0134】
本実施の形態のカムフォロア100によれば、第1スリット130に突起部150を備えることにより、必要以上の変形が規制されるので、大きな負荷が作用した場合であっても、安定してレンズ群を保持できる。特に、本実施の形態のカムフォロア100では、カム溝の位置度公差と幅公差の和以上の変形を規制するように構成されるので、必要な分だけ変形させることができる。これにより、より安定してレンズ群を保持できる。
【0135】
一般にカメラ用のレンズ鏡筒の場合、必要な変形量、すなわち、カム溝の位置度公差と幅公差の和は、おおよそ0.06mm以下とされる。
【0136】
一方、カムフォロア100を樹脂で射出成形する場合、全長に渡って幅が0.06mm以下のスリットを形成することは難しい。しかし、本実施の形態のカムフォロア100は、突起部150の部分のみであるので、樹脂で射出成形する場合であっても、安定して製造できる。
【0137】
また、本実施の形態のカムフォロア100によれば、第1嵌合部111及び第2嵌合部112の外周が、外側に凸となる円弧形状を有する。これにより、カムフォロア100が各溝の内壁面に点又は点に近い状態で接触する。これにより、効率的にカムフォロア100の弾性を利用できる。加えて、各溝の内壁面に対する摺動抵抗を低減でき、スムーズに動作させることができる。
【0138】
[カムフォロアの変形例]
《第1スリットの変形例》
上記実施の形態のカムフォロア100は、カムフォロア本体110の周面の二箇所に第1スリット130を備えているが、カムフォロア本体110に備える第1スリット130の数は、これに限定されるものではない。第1スリット130は、カムフォロア本体110の周面の少なくとも1箇所に備えられていればよい。
【0139】
図23は、第1スリットを一本備えたカムフォロアの正面図である。
図24から
図28は、
図23に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図29は、
図23に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図30は、
図23に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図31は、
図25の31−31断面図、
図32は、
図25の32−32断面図である。
【0140】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記実施の形態のカムフォロア100の構成と同じである。したがって、第2スリット140は、カムフォロア本体110の周面の二箇所に備えられ、カムフォロア100の中心及び第1スリット130を通る直線に対して左右対称に配置される。
【0141】
第1スリット130の数が一本である場合であっても、第1嵌合部111及び第2嵌合部112を径方向に弾性変形させることができる。
【0142】
第1スリット130を複数本備える場合は、各第1スリット130を等間隔に配置することが好ましい。たとえば、四本の第1スリット130を備える場合は、十字状に配置することが好ましい。
【0143】
《第2スリットの変形例》
カムフォロア本体110には、第1スリット130のみを備える構成としてもよい。すなわち、第2スリット140を省略することもできる。
【0144】
図33は、第1スリットのみを備えたカムフォロアの正面図である。
図34から
図38は、
図23に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図39は、
図35の39−39断面図、
図40は、
図35の40−40断面図である。
【0145】
カムフォロア本体110に第1スリット130のみが備えられる点以外は、上記実施の形態のカムフォロア100の構成と同じである。このように、カムフォロア本体110には、第1スリット130のみを備える構成としてもよい。
【0146】
なお、第1スリット130に加えて第2スリット140を備えることにより、上記のように、各溝に第1嵌合部111及び第2嵌合部112を適切に押圧当接させることができる。また、第1嵌合部111及び第2嵌合部112の変形が圧入部121の形状に及ぼす影響を低減できる。
【0147】
第1スリット130を複数本備える場合、第2スリット140は、隣り合う第1スリット130の間に配置することが好ましい。これにより、第1スリット130によって周方向に分割された各領域を適切に弾性変形させることができる。また、分割された各領域が、圧入部121に及ぼす影響を適切に低減できる。
【0148】
なお、上記実施の形態のカムフォロア100のように、第1スリット130が内周部の底面114まで切り込まれる場合、第1スリット130が第2スリット140と近接して配置される場合がある。この場合、第2スリット140は、次のように配置することが好ましい。すなわち、第2スリット140が配置される位置において、第2スリット140の端部から第1スリット130までの周方向の長さが、全周(第2スリット140が配置される位置の周長)の10%以上、20%以下となるように、第2スリット140を配置する。一般にカメラのレンズ鏡筒に使用されるカムフォロアは、その外径が3mm以上、10mm以下である。このようなサイズのカムフォロアを樹脂で射出成形する場合、上記条件を満足することにより、第1スリット130及び第2スリット140を備えた場合であっても、十分な強度を確保できる。
【0149】
《突起部の変形例》
〈第1変形例〉
図41は、カムフォロアの第1変形例の正面図である。
図42から
図46は、
図41に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図47は、
図41に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図48は、
図41に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図49は、
図43の49−49断面図、
図50は、
図43の50−50断面図である。
【0150】
突起部150の形態以外は、上記実施の形態のカムフォロア100と同じである。したがって、カムフォロア本体110は、周面の二箇所に第1スリット130及び二本の第2スリット140を備える。
【0151】
本例のカムフォロア100は、突起部150が直方体形状を有する点、及び、各第1スリット130の両側の内壁面に突起部150が備えられる点で上記実施の形態のカムフォロア100と共通する。
【0152】
一方、各第1スリット130に備えられる突起部150が、第1スリット130の先端部において、互い違いに配置される点で上記実施の形態のカムフォロア100と相違する。すなわち、カムフォロア本体110が径方向に変形した際に、双方の突起部150が互いにぶつかり合わないように、位置をずらして配置される点で相違する。
【0153】
本例のカムフォロア100の場合、カムフォロア本体110が径方向に変形すると、双方の突起部150が、対向する第1スリット130の内壁面に当接する。したがって、本例のカムフォロア100の場合、各突起部150と第1スリット130の内壁面との間に生じる隙間の幅Wによって、変形量が規制される。
【0154】
〈第2変形例〉
図51は、カムフォロアの第2変形例の正面図である。
図52から
図56は、
図51に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図57は、
図51に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図58は、
図51に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図59は、
図53の59−59断面図、
図60は、
図53の60−60断面図である。
【0155】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記第1変形例のカムフォロア100の構成と同じである。
【0156】
〈第3変形例〉
図61は、カムフォロアの第3変形例の正面図である。
図62から
図66は、
図61に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図67は、
図61に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図68は、
図61に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図69は、
図63の69−69断面図、
図70は、
図63の70−70断面図である。
【0157】
突起部150の形態以外は、上記実施の形態のカムフォロア100と同じである。したがって、カムフォロア本体110は、周面の二箇所に第1スリット130及び二本の第2スリット140を備える。
【0158】
本例のカムフォロア100は、突起部150が直方体形状を有する点で上記実施の形態のカムフォロア100と共通する。
【0159】
一方、本例のカムフォロア100は、突起部150が、各第1スリット130の片側の内壁面にのみ備えられる点で上記実施の形態のカムフォロア100と相違する。
【0160】
本例のカムフォロア100の場合、カムフォロア本体110が径方向に変形すると、突起部150が対向する第1スリット130の内壁面に当接する。したがって、本例のカムフォロア100の場合、突起部150と第1スリット130の内壁面との間に生じる隙間の幅Wによって、変形量が規制される。
【0161】
〈第4変形例〉
図71は、カムフォロアの第4変形例の正面図である。
図72から
図76は、
図71に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図77は、
図71に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図78は、
図71に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図79は、
図73の79−79断面図、
図80は、
図73の80−80断面図である。
【0162】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記第3変形例のカムフォロア100の構成と同じである。
【0163】
〈第5変形例〉
図81は、カムフォロアの第5変形例の正面図である。
図82から
図86は、
図81に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図87は、
図81に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図88は、
図81に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図89は、
図83の89−89断面図、
図90は、
図83の90−90断面図である。
【0164】
突起部150の形態以外は、上記実施の形態のカムフォロア100と同じである。したがって、カムフォロア本体110は、周面の二箇所に第1スリット130及び二本の第2スリット140を備える。
【0165】
本例のカムフォロア100は、突起部150が半球形状を有する点で上記実施の形態のカムフォロア100と相違する。突起部150は、各第1スリット130の両側の内壁面に備えられ、互いに対向して配置される。本例のカムフォロア100の場合、カムフォロア本体110が径方向に変形すると、突起部同士が当接する。したがって、本例のカムフォロア100の場合、突起部150の間に生じる隙間の幅Wによって、変形量が規制される。
【0166】
本例のカムフォロア100のように、突起部150の先端を円弧形状とすることにより、突起部150を点で当接させることができる。
【0167】
〈第6変形例〉
図91は、カムフォロアの第6変形例の正面図である。
図92から
図96は、
図91に示すカムフォロアの背面図、平面図、底面図、右側面図、左側面図である。また、
図97は、
図91に示すカムフォロアを平面側から見た斜視図、
図98は、
図91に示すカムフォロアを底面側から見た斜視図である。また、
図99は、
図93の99−99断面図、
図100は、
図93の100−100断面図である。
【0168】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記第5変形例のカムフォロア100の構成と同じである。
【0170】
突起部150の形態以外は、上記実施の形態のカムフォロア100と同じである。したがって、カムフォロア本体110は、周面の二箇所に第1スリット130及び二本の第2スリット140を備える。
【0171】
本例のカムフォロア100は、半球状の突起部150が、第1スリット130の両側の内壁面に互い違いに配置される。より具体的には、カムフォロア本体110が径方向に変形した際に、双方の突起部150が互いにぶつかり合わないように、位置をずらして配置される。
【0172】
本例のカムフォロア100の場合、カムフォロア本体110が径方向に変形すると、双方の突起部150が、対向する第1スリット130の内壁面に当接する。したがって、本例のカムフォロア100の場合、各突起部150と第1スリット130の内壁面との間に生じる隙間の幅Wによって、変形量が規制される。
【0173】
なお、本例のカムフォロア100の突起部150は、完全な半球ではなく、カムフォロア100の軸方向に押しつぶした形状(いわゆる長球の半球形状)を有する。すなわち、楕円を組み合わせた形状を有する。
【0174】
本例のカムフォロア100においても、突起部150は、対向する第1スリット130の内壁面に点接触する。
【0176】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記第7変形例のカムフォロア100の構成と同じである。
【0178】
突起部150の形態以外は、上記実施の形態のカムフォロア100と同じである。したがって、カムフォロア本体110は、周面の二箇所に第1スリット130及び二本の第2スリット140を備える。
【0179】
本例のカムフォロア100は、半球状の突起部150が、第1スリット130の片側の内壁面にのみ備えられる。
【0180】
本例のカムフォロア100の場合、カムフォロア本体110が径方向に変形すると、突起部150が対向する第1スリット130の内壁面に当接する。したがって、本例のカムフォロア100の場合、突起部150と第1スリット130の内壁面との間に生じる隙間の幅Wによって、変形量が規制される。
【0181】
なお、本例のカムフォロア100の突起部150は、完全な半球ではなく、カムフォロア100の軸方向に押しつぶした形状(いわゆる長球の半球形状)を有する。すなわち、楕円を組み合わせた形状を有する。
【0182】
本例のカムフォロア100においても、突起部150は、対向する第1スリット130の内壁面に点接触する。
【0184】
カムフォロア本体110に備えられる第1スリット130の数が一本である点以外は、上記第9変形例のカムフォロア100の構成と同じである。
【0185】
《基部の変形例》
上記実施の形態では、圧入部121として、基部120の底面に凹部を備えているが、圧入部は凸部で構成することもできる。
【0186】
図141は、圧入部が凸部で構成されたカムフォロア及びその取り付け部の構成を示す断面図である。
【0187】
同図に示すように、本例のカムフォロア100は、基部120に円柱状の圧入部122を有する。圧入部122は、カムフォロア本体110の同軸上に備えられる。
【0188】
カムフォロア取付部200は、圧入部122が圧入される凹部230を有する。凹部230は、圧入部122の外周形状に対応した形状を有する。本例では、円形状を有する。凹部230の内径は、圧入部122の外径よりも若干小さな径を有する。これにより、圧入部122を凹部230に嵌めると、いわゆる締まり嵌めによって、カムフォロア100がカムフォロア取付部200に固定される。
【0189】
なお、
図141に示す例では、圧入部122が、第1嵌合部111及び第2嵌合部112よりも小さな径で構成されているが、第1嵌合部111及び第2嵌合部112よりも大きな径で構成することもできる。また、第1嵌合部111及び第2嵌合部112とほぼ同じ径で構成することもできる。
【0190】
また、圧入部122は、必ずしも円柱状である必要はなく、角柱状等であってもよい。圧入部を凹部で構成する場合も同様である。
【0191】
また、上記実施の形態では、カムフォロア100を圧入して取り付けた後、更にネジ220で固定する構成としているが、圧入のみで取り付ける構成としてもよい。
【0192】
《カムフォロア本体の外形の変形例》
上記実施の形態では、カムフォロア本体110は、少なくとも先端が開口した中空状の形状を有していればよい。これにより、第1スリット130を備えることにより、径方向に弾性変形可能に構成できる。
【0193】
図142は、カムフォロア本体の他の一例を示す正面図である。
図143は、その平面図である。
【0194】
同図に示すカムフォロア100は、カムフォロア本体110が、平面視において、楕円形状を有している。このように、カムフォロア本体110は、その断面が円形である必要はなく、楕円形状であってもよい。なお、同図に示す例では、楕円の長軸に沿って第1スリット130が備えられている。
【0195】
図144は、カムフォロア本体の他の一例を示す正面図である。
【0196】
同図に示すカムフォロア100は、カムフォロア本体110の外形がストレートな円筒形状を有している。このように、カムフォロア本体110の外形は、一般的なストレート形状でもよい。
【0197】
《カムフォロアの製造》
カムフォロアは、第1スリット及び第2スリットを含む全体を樹脂による射出成形で製造することが好ましい。これにより、低コストで製造できる。
【0198】
一方、コストを考慮しない場合は、第1スリット、第2スリット及び突起部を後工程で加工することもできる。たとえば、射出成形等されたカムフォロアに後から第1スリット及び第2スリットを加工してもよい。また、突起部を別部材で構成してもよい。
【0199】
また、突起部は、カムフォロア本体とは別に製造し、接着等で取り付けてもよい。また、いわゆる二色成形等で加工してもよい。
【0200】
《レンズ鏡筒の変形例》
上記実施の形態では、固定筒の外側にカム筒が配置されているが、固定筒の内側にカム筒を配置した構成としてもよい。
【0201】
また、固定筒に対してカム筒を回転させる構成としているが、カム溝を有する筒(第2筒)及び直進溝を有する筒(第3筒)は、相対的に回転する構成であればよい。
【0202】
また、上記実施の形態では、カム筒を手動で回転させる構成としているが、モータで回転させる構成とすることもできる。
【0203】
《その他のレンズ装置への適用》
上記実施の形態では、レンズ交換式のカメラの交換レンズに本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。この他、プロジェクタ用のレンズ鏡筒、顕微鏡のレンズ鏡筒等にも適用できる。また、カメラのレンズ装置に適用する場合、カメラの種類についても、特に限定されるものではない。銀塩カメラ、デジタルカメラ、テレビカメラ、シネマカメラ、防犯カメラ等の種々のカメラに適用できる。
【0204】
なお、一般にカメラのレンズ鏡筒に使用されるカムフォロアは、その外径が3mm以上、10mm以下とされる。このようなサイズのカムフォロアに本発明は好適である。
【0205】
また、上記実施の形態では、ズーム用のレンズ群をカム機構によって移動させるレンズ装置(交換レンズ)に本発明を適用した場合を例に説明したが、フォーカス用のレンズ群をカム機構によって移動させるレンズ装置にも同様に本発明を適用することができる。