特許第6961830号(P6961830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961830コア−シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961830
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】コア−シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 279/02 20060101AFI20211025BHJP
   C08L 27/24 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08F279/02
   C08L27/24
   C08L51/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-541447(P2020-541447)
(86)(22)【出願日】2019年10月11日
(65)【公表番号】特表2021-511429(P2021-511429A)
(43)【公表日】2021年5月6日
(86)【国際出願番号】KR2019013391
(87)【国際公開番号】WO2020101182
(87)【国際公開日】20200522
【審査請求日】2020年7月28日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0141167
(32)【優先日】2018年11月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、クァン−チン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】ナム、サン−イル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キョン−ポク
(72)【発明者】
【氏名】イ、チャン−ノ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン−フン
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0183455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 279/00−279/06
C08L 27/24
C08L 51/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを包むシェルと、を含むコア−シェル共重合体であって、
前記コアは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、および下記化学式1で表されるホスフェート系架橋剤由来の架橋部を含み、
前記シェルは、アルキルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位、アルキルアクリレート単量体由来の繰り返し単位、および下記化学式2で表されるスルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を含み、
前記コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、前記コアは68重量部〜92重量部、前記シェルは8重量部〜32重量部であり、
前記コアの膨潤指数(swell index)は2.7〜10.9であり、
前記シェルは、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1重量%〜16重量%で含み、
前記シェルの重量平均分子量は105,000g/mol〜645,000g/molであり、
前記コアは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を92重量%〜99.9重量%で含み、ホスフェート系架橋剤由来の架橋部を0.1重量%〜8重量%で含むコア−シェル共重合体。
【化11】

(前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。)
【化12】

(前記化学式2中、R5は、単結合または炭素数1〜30のアルキレン基であり、R6は、水素またはメチル基であり、Mは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、または水素であり、nは0または1である。)
【請求項2】
前記ホスフェート系架橋剤は、下記化学式3および4で表される化合物から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のコア−シェル共重合体。
【化13】

【化14】
【請求項3】
前記コアの膨潤指数(swell index)が4〜10である、請求項1または2に記載のコア−シェル共重合体。
【請求項4】
前記スルホネート系イオン性単量体は、下記化学式5〜8で表される化合物から選択される1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコア−シェル共重合体。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】
【請求項5】
前記シェルの重量平均分子量が120,000g/mol〜500,000g/molである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコア−シェル共重合体。
【請求項6】
前記シェルのガラス転移温度が101℃〜135℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコア−シェル共重合体。
【請求項7】
前記シェルは、アルキルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を76重量%〜94.2重量%で含み、アルキルアクリレート単量体由来の繰り返し単位を4.8重量%〜8重量%で含み、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1〜16重量%で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコア−シェル共重合体。
【請求項8】
共役ジエン系単量体および下記化学式1で表されるホスフェート系架橋剤を含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、
前記ステップで製造されたコアの存在下で、アルキルメタクリレート単量体、アルキルアクリレート単量体、および下記化学式2で表されるスルホネート系イオン性単量体を含むシェル形成混合物を重合させ、コア−シェル共重合体を製造するステップと、を含むコア−シェル共重合体の製造方法であって、
前記コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、前記コアは68重量部〜92重量部、前記シェルは8重量部〜32重量部であり、
前記コアの膨潤指数(swell index)は2.7〜10.9であり、
前記シェルは、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1重量%〜16重量%で含み、
前記シェルの重量平均分子量は105,000g/mol〜645,000g/molであり、
前記コアは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を92重量%〜99.9重量%で含み、ホスフェート系架橋剤由来の架橋部を0.1重量%〜8重量%で含むコア−シェル共重合体の製造方法。
【化19】

(前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。)
【化20】

(前記化学式2中、R5は、単結合または炭素数1〜30のアルキレン基であり、R6は、水素またはメチル基であり、Mは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、または水素であり、nは0または1である。)
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のコア−シェル共重合体と、塩素化塩化ビニル樹脂と、を含み、
前記塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対して、前記コア−シェル共重合体を5重量部〜10重量部で含む、熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月15日付けの韓国特許出願第10−2018−0141167号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、コア−シェル共重合体に関し、より詳細には、熱可塑性樹脂組成物の衝撃補強剤として用いられるコア−シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化ビニル樹脂(PVC)は、物理的および化学的特性に優れるため、様々な分野で広く用いられている汎用の樹脂である。しかし、塩化ビニル樹脂は、加工温度が熱分解温度に近いため、成形可能な温度領域が狭い。また、溶融粘度が高く、流動性が低いため、加工時に加工機器の表面に粘着されて炭化物を形成し、これにより、最終製品の品質を低下させるなどの問題がある。
【0004】
一方、塩化ビニル樹脂は、塩素の含量が56%〜57%であり、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)は、塩素の含量が66%〜69%の水準であって、塩素の含量が高い。これにより、塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂に比べて機械強度が増加し、熱変形温度が高いという利点がある。
【0005】
しかしながら、塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂に比べて塩素の含量が多いことにより、引張強度と熱変形温度が高い利点があるが、衝撃強度と加工性が低下するという問題がある。
【0006】
このように衝撃強度が低下する問題を解決するために、塩素化塩化ビニル樹脂は、衝撃補強剤、加工助剤、安定剤、充填剤などの添加剤を適宜選択して用いられてきた。中でも、塩素化塩化ビニル樹脂の衝撃補強剤として、ブタジエン系衝撃補強剤、シリコン系衝撃補強剤などが一般に用いられており、特に、ブタジエン系衝撃補強剤が主に用いられている。
【0007】
しかし、ブタジエン系衝撃補強剤は、含量を増加させるにつれて衝撃強度は向上するが、熱変形温度と引張強度が減少するという問題がある。
【0008】
したがって、塩素化塩化ビニル樹脂に適用した際に、衝撃強度だけでなく、熱変形温度および引張強度にも優れた衝撃補強剤を開発するための研究が持続的に求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、塩素化塩化ビニル樹脂に対する衝撃補強剤としてコア−シェル共重合体を適用するにあたり、それらを含んで製造された成形品の熱安定性、衝撃強度、および引張強度を改善させることにある。
【0010】
つまり、本発明は、塩素化塩化ビニル樹脂および衝撃補強剤を含む熱可塑性樹脂組成物から成形品を製造する際に、成形品の熱安定性、衝撃強度、および引張強度を改善することができる衝撃補強剤であるコア−シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、コアと、前記コアを包むシェルと、を含むコア−シェル共重合体であって、前記コアは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、および下記化学式1で表されるホスフェート系架橋剤由来の架橋部を含み、前記シェルは、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、および下記化学式2で表されるスルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を含み、前記コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、前記コアは68重量部〜92重量部、前記シェルは8重量部〜32重量部であり、前記コアの膨潤指数(swell index)は2.7〜10.9であり、前記シェルは、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1重量%〜16重量%で含み、前記シェルの重量平均分子量は105,000g/mol〜645,000g/molである、コア−シェル共重合体を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。
【0014】
【化2】
【0015】
前記化学式2中、R5は、単結合または炭素数1〜30のアルキレン基であり、R6は、水素またはメチル基であり、Mは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、または水素であり、nは0または1である。
【0016】
また、本発明は、共役ジエン系単量体および前記化学式1で表されるホスフェート系架橋剤を含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、前記ステップで製造されたコアの存在下で、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体、第2アルキル(メタ)アクリレート単量体、および前記化学式2で表されるスルホネート系イオン性単量体を含むシェル形成混合物を重合させ、コア−シェル共重合体を製造するステップと、を含むコア−シェル共重合体の製造方法であって、前記コア−シェル共重合体100重量部に対して、前記コアは68重量部〜92重量部、前記シェルは8重量部〜32重量部であり、前記コアの膨潤指数(swell index)は2.7〜10.9であり、前記シェルは、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1重量%〜16重量%で含み、前記シェルの重量平均分子量は105,000g/mol〜645,000g/molである、コア−シェル共重合体の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記コア−シェル共重合体と、塩素化塩化ビニル樹脂と、を含み、前記塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対して、前記コア−シェル共重合体を5重量部〜10重量部で含む、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、コア−シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、それを含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の熱安定性、衝撃強度、および引張強度を向上させる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0020】
本発明において、用語「単量体由来の繰り返し単位」は、単量体に起因した成分、構造、またはその物質自体を指し得て、具体的な例として、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に関与して重合体中で成す繰り返し単位を意味し得る。
【0021】
本発明において、用語「架橋剤由来の架橋部」は、架橋剤として用いられる化合物に起因した成分、構造、またはその物質自体を指し得て、架橋剤が作用および反応して形成された重合体中、または重合体間の架橋(cross linking)の役割を果たす架橋部(cross linking part)を意味し得る。
【0022】
本発明において、用語「コア(core)」は、コアを形成する単量体が重合され、コア−シェル共重合体のコアまたはコア層を成す重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得て、本発明において、用語「シェル(shell)」は、シェルを形成する単量体がコア−シェル共重合体のコアにグラフト重合され、シェルがコアを包む形態を示す、コア−シェル共重合体のシェルまたはシェル層を成す重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得る。
【0023】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0024】
<コア−シェル共重合体>
本発明に係るコア−シェル共重合体は、コアと、前記コアを包むシェルと、を含んでもよい。
【0025】
前記コアは、該コアを含むコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、それを含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の熱安定性および衝撃強度を向上させる役割をする。
【0026】
前記コアは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、ホスフェート系架橋剤由来の架橋部と、を含んでもよい。
【0027】
前記共役ジエン系単量体は、コアを成す主成分であって、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、または2−フェニル−1,3−ブタジエンであってもよい。
【0028】
前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含量は、コアの総重量に対して、89重量%〜99.9重量%、90重量%〜99.9重量%、または92重量%〜99.9重量%であってもよい。この範囲内である場合に、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0029】
前記ホスフェート系架橋剤由来の架橋部は、コアの架橋度の調節および熱安定性の向上のための成分であって、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0030】
【化3】
【0031】
前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数1〜8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。
【0032】
具体的な例として、前記ホスフェート系架橋剤は、下記化学式3および4で表される化合物から選択される1種以上を含んでもよい。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
前記ホスフェート系架橋剤によるコアの膨潤指数(swell index)は、2.7〜10.9、3〜10、または4〜10であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および衝撃強度に優れる効果を達成することができる。一方、コアの膨潤指数が低いと、コアの架橋度が高すぎて、ゴム性コアのブリトル(brittle)な特性により成形品の衝撃強度が低下し得る。また、膨潤指数が高いと、コアの架橋度が低すぎて外部衝撃を吸収できず、衝撃強度が低下し得る。
【0036】
通常、「膨潤指数(swell index)」は、架橋剤が作用および反応して形成された重合体中、または重合体間の架橋(cross linking)により、重合体が溶媒によって溶解されずに膨潤される場合に、重合体が溶媒によって膨潤される程度を意味し得る。一方、膨潤される程度(膨潤指数)は、重合体の架橋される程度(架橋度)によって異なるが、一般には、架橋度が高いと、膨潤されにくい、すなわち、膨潤指数が低い特性がある。
【0037】
膨潤指数は、ホスフェート系架橋剤の含量により調節可能であり、これにより、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および衝撃強度に優れる効果を達成することができる。
【0038】
一般に、ホスフェート官能基は、熱安定性に優れた官能基と知られている。すなわち、本発明のコア−シェル共重合体は、前記ホスフェート系架橋剤をコアの架橋剤として用いる場合、ホスフェート系架橋剤の含量を調節することで膨潤指数を調節することができ、成形品の衝撃強度を向上させることができるだけでなく、熱安定性を付与することができる。
【0039】
前記ホスフェート架橋剤由来の架橋部の含量は、コアの総重量に対して、0.01重量%〜11重量%、0.01重量%〜9重量%、または0.01重量%〜8重量%であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0040】
前記シェルは、該シェルを含むコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、それを含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の熱安定性および加工性を向上させる役割をする。
【0041】
前記シェルは、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位と、第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位と、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位と、を含んでもよい。
【0042】
前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体は、熱可塑性樹脂(例えば、塩素化塩化ビニル樹脂)との相溶性に優れてマトリックスの分散性を付与するための成分であり、前記第2アルキル(メタ)アクリレート単量体は、前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合されてマトリックスの分散性を容易にする成分であって、炭素数1〜8のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート単量体であってもよい。この際、前記炭素数1〜8のアルキル基は、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、および炭素数3〜8の分岐状アルキル基を両方とも含む意味であり得る。具体的な例として、前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、または2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであってもよい。ここで、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および第2アルキル(メタ)アクリレート単量体は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを意味し得て、前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および第2アルキル(メタ)アクリレート単量体は、互いに異なってもよい。
【0043】
具体的な例として、前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体はアルキルメタクリレートを意味し、前記第2アルキル(メタ)アクリレート単量体はアルキルアクリレート単量体を意味し得る。
【0044】
前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、シェルの総重量に対して、76重量%〜94.2重量%、79重量%〜94重量%、または85重量%〜93重量%であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および加工性に優れる効果がある。
【0045】
前記第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、シェルの総重量に対して、4.8重量%〜8重量%、5重量%〜8重量%、または6重量%〜8重量%であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および加工性に優れる効果がある。
【0046】
前記スルホネート系イオン性単量体は、シェルの分子量とガラス転移温度を調節するための成分であり、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0047】
【化6】
【0048】
前記化学式4中、R5は、単結合、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数1〜8のアルキレン基であり、R6は、水素またはメチル基であり、Mは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、または水素であり、nは0または1である。
【0049】
具体的な例として、前記スルホネート系イオン性単量体は、下記化学式5〜8で表される化合物から選択される1種以上を含んでもよい。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
前記スルホネート系イオン性単量体は、高分子間のスルホネートイオンとメタルイオンのイオン結合により、前記スルホネート系イオン性単量体が含まれたシェルのガラス転移温度を増加させることができる。このような前記シェルのガラス転移温度は、101℃〜135℃、105℃〜130℃、または108℃〜115℃であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の引張強度および熱安定性に優れる効果がある。
【0055】
前記スルホネート系イオン性単量体の含量は、シェルの総重量に対して、1重量%〜16重量%、1重量%〜13重量%、または1重量%〜7重量%であってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性および加工性に優れる効果がある。一方、スルホネート系イオン性単量体の含量が前記範囲を超える場合には、イオン凝集体(ionic cluster)が大きく形成され、シェルのガラス転移温度が上昇することになり、これにより、コア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の加工性が低下するという問題が発生し得る。
【0056】
前記シェルの重量平均分子量は、105,000g/mol〜645,000g/mol、110,000g/mol〜640,000g/mol、または120,000g/mol〜500,000g/molであってもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の機械強度(例えば、引張強度、衝撃強度など)、熱安定性、および加工性に優れる効果がある。一方、前記シェルの重量平均分子量が105,000g/mol未満である場合には、シェル形成高分子とマトリックスとの結合力が弱いため、機械強度および熱安定性が低下し得る。また、前記シェルの重量平均分子量が645,000g/molを超える場合には、加工粘度の増加により加工性が低下し得る。
【0057】
前記シェルの重量平均分子量は、重合温度、触媒の含量、分子量調節剤の含量により調節可能であり、重合温度が高いほど、触媒と分子量調節剤の含量が高いほど、分子量が低下し得る。
【0058】
前記コアおよび前記シェルを含む本発明のコア−シェル共重合体は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、コア68重量部〜92重量部、69重量部〜91重量部、または70重量部〜90重量部と、シェル8重量部〜32重量部、9重量部〜31重量部、または10重量部〜30重量部と、を含んでもよい。この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性、衝撃強度、および引張強度に優れる効果がある。
【0059】
<コア−シェル共重合体の製造方法>
本発明に係るコア−シェル共重合体の製造方法は、共役ジエン系単量体および前記化学式1で表されるホスフェート系架橋剤を含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、前記ステップで製造されたコアの存在下で、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体、第2アルキル(メタ)アクリレート単量体、および前記化学式2で表されるスルホネート系イオン性単量体を含むシェル形成混合物を重合させ、コア−シェル共重合体を製造するステップと、を含み、前記コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、前記コアは68重量部〜92重量部、前記シェルは8重量部〜32重量部であり、前記コアの膨潤指数(swell index)は2.7〜10.9であり、前記シェルは、スルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を1重量%〜16重量%で含み、前記シェルの重量平均分子量は105,000g/mol〜645,000g/molであってもよい。
【0060】
前記コア−シェル共重合体の製造方法は、前記コアを製造するステップと、コア−シェル共重合体を製造するステップと、により段階的にコアおよびシェルをそれぞれ製造した後、それらを重合させるステップを含み、前記コアを製造するステップを経てコア−シェル共重合体のコアを重合し、次いで、コア−シェル共重合体を製造するステップを経て前記コア上にシェルを重合することができる。
【0061】
前記コアを製造するステップは、コア−シェル共重合体のコアを製造するためのステップであり、前記コアを製造するステップで投入されるコア形成混合物中の各単量体の種類および含量は、上述のコアに含まれる単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類および含量と同一であってもよい。
【0062】
また、前記コア−シェル共重合体を製造するステップは、コア−シェル共重合体のシェルを製造するためのステップであり、前記コア−シェル共重合体を製造するステップで投入されるシェル形成混合物中の各単量体の種類および含量は、上述のシェル中に含まれる各単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類および含量と同一であってもよい。
【0063】
前記コアを製造するステップおよび前記コア−シェル共重合体を製造するステップにおける重合は、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合などの方法を用いて重合してもよく、開始剤、乳化剤、分子量調節剤、活性化剤、酸化還元触媒、イオン交換水などの添加剤をさらに用いて重合してもよい。
【0064】
前記開始剤は、一例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノールペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルなどの窒素化合物などであってもよいが、これらの開始剤に限定されるものではない。かかる開始剤は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、0.03重量部〜0.2重量部で用いられてもよい。
【0065】
前記乳化剤は、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、およびノニオン系乳化剤からなる群から選択される1種以上であってもよく、一例として、スルホネート系、カルボン酸塩系、サクシネート系、スルホサクシネート、およびこれらの金属塩類、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、ソジウムアルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホン酸、ソジウムアルキルスルホネート、ソジウムポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホネート、ソジウムステアレート、ソジウムドデシルサルフェート、ソジウムドデシルベンゼンスルホネート、ソジウムラウリルサルフェート、ソジウムドデシルスルホサクシネート、ポタシウムオレート、アビエチン酸塩などの、一般に乳化重合に広く用いられるアニオン性乳化剤;高級脂肪族炭化水素の官能基として、アミンハロゲン化物、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが結合されているカチオン性乳化剤;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルなどのノニオン性乳化剤からなる群から選択される1種以上であってもよいが、これらの乳化剤に限定されるものではない。かかる乳化剤は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、0.1重量部〜5重量部で用いられてもよい。
【0066】
前記分子量調節剤は、一例として、a−メチルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物などであってもよいが、これらの分子量調節剤に限定されるものではない。かかる分子量調節剤は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、0.1重量部〜3重量部で用いられてもよい。
【0067】
前記活性化剤は、一例として、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、ラクトース、デキストロース、リノレン酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムから選択される1種以上を選択してもよいが、これらの活性化剤に限定されるものではない。かかる活性化剤は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部〜0.15重量部で用いられてもよい。
【0068】
前記酸化還元触媒は、一例として、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、第二硫酸銅などであってもよいが、これらの酸化還元触媒に限定されるものではない。かかる酸化還元触媒は、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部〜0.1重量部で用いられてもよい。
【0069】
また、前記コアを製造するステップおよび前記コア−シェル共重合体を製造するステップで製造されたコアおよびコア−シェル共重合体は、それぞれコアおよびコア−シェル共重合体が溶媒に分散されたコアラテックスおよびコア−シェル共重合体ラテックスの形態で得られ、前記コア−シェル共重合体からコア−シェル共重合体を粉体の形態で得るために、凝集、熟成、脱水、および乾燥などの工程を行ってもよい。
【0070】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、衝撃補強剤として前記コア−シェル共重合体を含み、塩素化塩化ビニル樹脂を含んでもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル樹脂組成物であってもよい。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂が塩素化されたものを意味し、具体的な例として、塩化ビニル樹脂中の塩素の含量が、塩素化されていない塩化ビニル樹脂に含まれた塩素の含量よりも約10重量%以上高い塩化ビニル樹脂を意味し得る。具体的な例として、前記塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂中に66重量%〜69重量%程度の塩素を含んでおり、このように樹脂中の塩素含量が高いため、引張強度と熱変形温度が高い効果がある。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対して、前記コア−シェル共重合体を5重量部〜10重量部、5重量部〜9重量部、または6重量部〜8重量部で含んでもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の熱安定性、衝撃強度、および引張強度に優れる効果がある。
【0073】
本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物は、前記コア−シェル共重合体および塩素化塩化ビニル樹脂の他にも、必要に応じて、物性を低下させない範囲内で、難燃剤、潤滑剤、酸化防止剤、光安定剤、反応触媒、離型剤、顔料、帯電防止剤、伝導性付与剤、EMI遮蔽剤、磁性付与剤、架橋剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、煙抑制剤、フッ素系滴下防止剤、無機充填剤、ガラス繊維、耐摩擦耐摩耗剤、カップリング剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0074】
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練および加工する方法は特に制限されないが、一例として、スーパーミキサーで一次混合した後、二軸押出機、一軸押出機、ロールミル、ニーダ、またはバンバリーミキサーなどのような通常の配合加工機器の1つを用いて溶融混練し、ペレタイザーでペレットを得た後、これを除湿乾燥器または熱風乾燥器で十分に乾燥してから射出加工することで、最終成形品を得ることができる。
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0076】
実施例
[実施例1]
<コアの製造>
窒素置換された重合反応器に、コア形成混合物とシェル形成混合物の総100重量部に対して、イオン交換水65重量部、1,3−ブタジエン79.2重量部とビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部を含むコア形成混合物、乳化剤としてオレイン酸カリウム0.6重量部、硫酸水素ナトリウム0.7重量部を投入して撹拌し、ジイソプロピルヒドロペルオキシド0.05重量部、酸化還元活性化剤の組成(硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.02重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.02重量部、亜硫酸水素ナトリウム0.02)で製造された酸化還元活性化剤0.15重量部を投入し、反応温度40℃で、重合転換率が30〜40%の時点まで反応させた後、イオン交換水5重量部、オレイン酸カリウム1.0重量部、ジイソプロピルヒドロペルオキシド0.07重量部をさらに投入し、反応温度を65℃に昇温して反応を20時間進行し、重合転換率95%以上の時に終了することで、コアを含むラテックスを得た。
【0077】
<コア−シェル共重合体の製造>
窒素置換された重合反応器に、コア形成混合物とシェル形成混合物の総100重量部に対して、上記で得たコアを含むラテックス80重量部(固形分基準)を投入し、イオン交換水10重量部、乳化剤としてオレイン酸0.3重量部、メチルメタクリレート18.0重量部とブチルアクリレート1.4重量部と3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部を含むシェル形成混合物を投入した後,重合温度60℃で、重合開始剤としてt−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部と、酸化還元活性化剤の組成(硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.02重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.02重量部、亜硫酸水素ナトリウム0.02)で製造された酸化還元活性化剤0.05重量部を一括投入し、3時間重合反応させることで、コア−シェル共重合体を含むラテックスを得た。
【0078】
<コア−シェル共重合体粉体の製造>
上記で得たコア−シェル共重合体を含むラテックス100重量部(固形分基準)に対して、凝集剤として硫酸水溶液(濃度5%)1重量部を投入して凝集させることでスラリーを得た後、前記スラリーをイオン交換水で3回洗浄(washing)して副産物を洗い出し、濾過(filtration)して洗浄水を除去した。次いで、流動層乾燥器(fluidized−bed dryer)を用いて80℃で2時間乾燥させることで、コア−シェル共重合体粉体を得た。
【0079】
<塩素化塩化ビニル樹脂組成物>
塩素化塩化ビニル樹脂(HA series、積水)100重量部に、熱安定剤としてスズ3.0重量部、酸化防止剤(IR1010)0.3重量部、加工助剤(PA912)1.5重量部、充填剤(CaCO3)5重量部、二酸化チタン2重量部、ワックス形滑剤(AC316A)0.2重量部に、前記コア−シェル共重合体粉体7重量部を混合した後、ヘンシェルミキサーを用いて110℃に昇温しながら混練(Mixing)することで、塩素化塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0080】
[実施例2]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに78.0重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに2重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0081】
[実施例3]
前記実施例1において、コアの製造時に、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに、ビス[2−(アクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式4)0.8重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0082】
[実施例4]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに、ビニルスルホン酸ソジウム塩(化学式7)0.6重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0083】
[実施例5]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに50℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.01重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.01重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0084】
[実施例6]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに、3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩(化学式6)0.6重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0085】
[実施例7]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ソジウム塩(化学式8)0.6重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0086】
[実施例8]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに69.3重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.7重量部を投入し、コア−シェル共重合体の製造時に、メチルメタクリレート18重量部の代わりに27重量部、ブチルアクリレート1.4重量部の代わりに2.1重量部、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに0.9重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0087】
[実施例9]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに89.1重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.9重量部を投入し、コア−シェル共重合体の製造時に、メチルメタクリレート18重量部の代わりに9.0重量部、ブチルアクリレート1.4重量部の代わりに0.7重量部、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに0.3重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0088】
[実施例10]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに73.6重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに6.4重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0089】
[実施例11]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに79.99重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.01重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0090】
[実施例12]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに45℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.005重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.005重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0091】
[実施例13]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに40℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.0005重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.001重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0092】
[比較例1]
前記実施例1において、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに80.0重量部を投入し、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)を投入していないことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0093】
[比較例2]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、ブチルアクリレート1.4重量部の代わりに2.0重量部を投入し、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)を投入していないことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0094】
[比較例3]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに80℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.15重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.15重量部を投入し、分子量調節剤としてt−ドデシルメルカプタン0.01をさらに追加して投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0095】
[比較例4]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに59.4重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.6重量部を投入し、コア−シェル共重合体の製造時に、シェル形成混合物中のメチルメタクリレート18重量部の代わりに36重量部、ブチルアクリレート1.4の代わりに2.8重量部、および3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに1.2重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0096】
[比較例5]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、メチルメタクリレート18重量部の代わりに13.5重量部、ブチルアクリレート1.4の代わりに0.5重量部、および3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに6.0重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0097】
[比較例6]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに40℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.001重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.002重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0098】
[比較例7]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに70.4重量部、ビス[2−メタクリロキシ]エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに9.6重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0099】
[比較例8]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに94.05重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.95重量部を投入し、コア−シェル共重合体の製造時に、メチルメタクリレート18重量部の代わりに4.5重量部、ブチルアクリレート1.4重量部の代わりに0.35重量部、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに0.15重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0100】
[比較例9]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに64.35重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.65重量部を投入し、コア−シェル共重合体の製造時に、メチルメタクリレート18重量部の代わりに31.5重量部、ブチルアクリレート1.4重量部の代わりに2.45重量部、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(化学式5)0.6重量部の代わりに1.05重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0101】
[比較例10]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに79.996重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに0.004重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0102】
[比較例11]
前記実施例1において、コアの製造時に、1,3−ブタジエン79.2重量部の代わりに68.0重量部、ビス[2−(メタクリロキシ)エチル]ホスフェート(化学式3)0.8重量部の代わりに12.0重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0103】
[比較例12]
前記実施例1において、コア−シェル共重合体の製造時に、重合温度を60℃の代わりに70℃にし、重合開始剤t−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部の代わりに0.10重量部、酸化還元活性化剤0.05重量部の代わりに0.10重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0104】
実験例
[実験例1]
前記実施例1〜13および比較例1〜12で製造されたコアの膨潤指数、シェルのガラス転移温度、および重量平均分子量を下記のような方法により測定し、その結果とともに、コア−シェル共重合体組成物の組成を下記表1および2に記載した。
【0105】
*膨潤指数(swell index):コア(固形分)をトルエンに24時間浸した後、下記の式により膨潤指数を求めた。この際、膨潤指数が低いほど、ゴム架橋度が高いことを意味する。
【0106】
【数1】
【0107】
*重量平均分子量(Mw、g/mol):粉末状の試料を0.25重量%の濃度でテトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)により測定した。
【0108】
*ガラス転移温度:粉末状の試料を熱風乾燥器上で30分間追加乾燥した後、これをDSC測定機器(TA instruments社のQ20 DSC)を用いて測定した。この際、昇温速度は10℃/minである。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
[実験例2]
前記実施例1〜13および比較例1〜12で製造されたコア−シェル共重合体を衝撃補強剤として含む塩素化塩化ビニル樹脂組成物から成形された成形品の融点、衝撃強度、引張強度、引張弾性率、加工性、および熱安定性を評価するために、下記の方法により塩素化塩化ビニル樹脂組成物の試験片を製造および評価し、表3および4に示した。
【0112】
*試験片の製造:実施例および比較例で製造された塩素化塩化ビニル樹脂組成物を、200℃、30rpmのシングル押出混練器を用いてペレットの形態に製造し、このペレットで射出して物性試験片を製造し、下記物性を測定して表3および4に示した。
【0113】
*溶融指数:実施例および比較例で製造された塩素化塩化ビニル樹脂組成物を、200℃、30rpmのシングル押出混練器を用いてペレットの形態に製造し、このペレットを、東洋精機社のMelt Index(F−B01)機器を用いて200℃、10kgの荷重で10分間シリンダから出た重量を測定した。この際、1g/10min〜5g/10minである場合に、優れることを意味する。
【0114】
*アイゾット衝撃強度:ASTM D256試験方法により、1/4インチのノッチ試験片に対して評価した。この際、測定は、常温(25℃)を維持するチャンバーで全て測定し、1/4インチのノッチ試験片を6時間エージング(aging)した後、試験片を取り出してASTM D256試験方法により評価した。この際、6kgf/cm2〜10kgf/cm2である場合に、優れることを意味する。
【0115】
*引張強度および引張弾性率(50mm/min、kg/cm2):ASTM D638法に準じて、ダンベル状の1/4"試験片をインストロン引張強度測定機のつかみ具(jaw)に締め付け、50mm/minの速度で引っ張り、切断時点の荷重を測定した。この際、引張強度は45MPa以上、引張弾性率は2,400MPa以上である場合に、優れることを意味する。
【0116】
*加工性(fusion time):実施例および比較例で製造された塩素化塩化ビニル樹脂組成物をハーケミキサー(haake mixer)に、200℃、30rpmで56gを投入して初期投入した後、トルク(Torque)が最高点に達するのにかかる時間を測定した。この際、80秒以下である場合に、優れることを意味する。
【0117】
*熱変形温度:熱安定性を確認するために、ASTM D648試験方法に準じて、厚さ1/4の試験片を用いて18.6kgの荷重下で熱変形温度を測定した。この際、100℃〜120℃である場合に、優れることを意味する。
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
前記表3および4に示したように、本発明に係るコア−シェル共重合体は、コアにホスフェート系架橋剤由来の架橋部を含み、コアの架橋度を調節することで、衝撃強度および熱安定性に優れており、シェルにスルホネート系イオン性単量体を含み、シェルのガラス転移温度と重量平均分子量を調節することで、熱安定性および加工性に優れることを確認することができた。
【0121】
これに対し、コアにホスフェート系架橋剤由来の架橋部を含んでいない比較例1は、加工性を除いた衝撃強度、引張強度、熱安定性などの諸物性が低下することを確認することができた。
【0122】
また、コアのホスフェート系架橋剤の含量が10重量%を超えた比較例7は、コアの架橋度が高すぎて膨潤指数が低くなり、コアを成すゴムがブリトル(brittle)であって衝撃強度が低下することを確認することができた。
【0123】
また、シェルにスルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位を含んでいない比較例2は、引張強度、引張弾性率、および熱安定性が低下することを確認することができた。
【0124】
また、シェルの重量平均分子量が100,000g/mol未満である比較例3および12は、衝撃強度、引張強度、熱安定性などが低下することを確認することができ、シェルの重量平均分子量が500,000g/molを超えた比較例6は、加工性が低下することを確認することができた。
【0125】
また、コア−シェル共重合体の総100重量部に対して、コアの含量が70重量部未満である比較例4および9は、衝撃強度および加工性が低下することを確認することができ、コアの含量が90重量部を超えた比較例8は、加工性を除いた衝撃強度、引張強度、熱安定性などの諸物性が低下することを確認することができた。
【0126】
また、コアの膨潤指数が3.7〜10を外れた比較例10および11は、衝撃強度が低下することを確認することができる。
【0127】
また、シェルに含まれるスルホネート系イオン性単量体由来の繰り返し単位が20重量%を超えた比較例5は、衝撃強度、加工性、および熱安定性が低下することを確認することができた。