(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主制御部は、前記最大外れ値および前記外れ個数を含む前記ソフトセンサ値を前記制御部から取得して、前記外れ個数の累積値を管理し、前記累積値が一定量を超えた場合に前記配管温度および前記配管圧力の前記制御部への出力を行うように構成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
前記主制御部は、予め記憶保持されているアクション定義テーブルに従い、前記外れ個数の累積値が一定量を超えた場合に、メンテナンスレシピを実行するように構成されている、
請求項5に記載の基板処理装置。
前記主制御部は、前記アクション定義テーブルに予め登録された閾値と前記外れ個数の累積値を比較し、前記閾値よりも前記累積値が上回ったときに、現在実行中のレシピの終了後に前記アクション定義テーブルに登録されたメンテナンスレシピを実行するよう構成されている、
請求項7に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<一実施形態>
以下、本開示の一実施形態について
図1から
図12を参照しながら説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
まず、一実施形態に係る基板処理装置の構成例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(基板処理装置の概要)
図1および
図2に示すように、本開示が適用される基板処理装置(以後、単に装置ともいう)1は筐体2を備え、該筐体2の正面壁3の下部にはメンテナンス可能な様に設けられた開口部4が開設され、該開口部4は正面メンテナンス扉5によって開閉される。
【0012】
筐体2の正面壁3にはポッド搬入搬出口6が筐体2の内外を連通する様に開設されており、ポッド搬入搬出口6はフロントシャッタ7によって開閉され、ポッド搬入搬出口6の正面前方側にはロードポート8が設置されており、該ロードポート8は載置されたポッド9を位置合せする様に構成されている。該ポッド9は密閉式の基板搬送容器であり、図示しない工程内搬送装置によってロードポート8上に搬入され、また、該ロードポート8上から搬出される様になっている。
【0013】
筐体2内の前後方向の略中央部に於ける上部には、回転式ポッド棚11が設置されており、該回転式ポッド棚11は複数個のポッド9を格納する様に構成されている。回転式ポッド棚11は垂直に立設されて間欠回転される支柱12と、該支柱12に上中下段の各位置に於いて放射状に支持された複数段の棚板13とを備えており、該棚板13は前記ポッド9を複数個宛載置した状態で格納する様に構成されている。回転式ポッド棚11の下方には、ポッドオープナ14が設けられ、該ポッドオープナ14はポッド9を載置し、又該ポッド9の蓋を開閉可能な構成を有している。
【0014】
ロードポート8と回転式ポッド棚11、ポッドオープナ14との間には、ポッド搬送機構15が設置されており、該ポッド搬送機構15は、ポッド9を保持して昇降可能、水平方向に進退可能となっており、ロードポート8、回転式ポッド棚11、ポッドオープナ14との間でポッド9を搬送する様に構成されている。
【0015】
筐体2内の前後方向の略中央部に於ける下部には、サブ筐体16が後端に亘って設けられている。該サブ筐体16の正面壁17にはウエハ(以後、基板ともいう)18をサブ筐体16内に対して搬入搬出する為のウエハ搬入搬出口19が一対、垂直方向に上下2段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口19に対してポッドオープナ14がそれぞれ設けられている。
【0016】
ポッドオープナ14はポッド9を載置する載置台21と、ポッド9の蓋を開閉する開閉機構22とを備えている。ポッドオープナ14は載置台21に載置されたポッド9の蓋を開閉機構22によって開閉することにより、ポッド9のウエハ出入口を開閉する様に構成されている。
【0017】
サブ筐体16はポッド搬送機構15や回転式ポッド棚11が配設されている空間(ポッド搬送空間)から気密となっている移載室23を構成している。該移載室23の前側領域にはウエハ移載機構24が設置されており、該基板移載機構24は、基板18を載置する所要枚数(図示では5枚)のウエハ載置プレート25を具備し、該ウエハ載置プレート25は水平方向に直動可能、水平方向に回転可能、又昇降可能となっている。基板移載機構24はボート26に対して基板18を装填および払出しする様に構成されている。
【0018】
移載室23の後側領域には、ボート26を収容して待機させる待機部27が構成され、該待機部27の上方には縦型の処理炉28が設けられている。該処理炉28は内部に処理室(反応室)29を形成し、該処理室29の下端部は炉口部となっており、該炉口部は炉口シャッタ31により開閉される様になっている。
【0019】
筐体2の右側端部とサブ筐体16の待機部27の右側端部との間にはボート26を昇降させる為の昇降機構としてのボートエレベータ32が設置されている。該ボートエレベータ32の昇降台に連結されたアーム33には蓋体としてのシールキャップ34が水平に取付けられており、該蓋体34はボート26を垂直に支持し、該ボート26を処理室29に装入した状態で炉口部を気密に閉塞可能となっている。
【0020】
ボート26は、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)の基板18をその中心に揃えて水平姿勢で多段に保持する様に構成されている。
【0021】
ボートエレベータ32側と対向した位置にはクリーンユニット35が配設され、該クリーンユニット35は、清浄化した雰囲気若しくは不活性ガスであるクリーンエア36を供給する様供給ファンおよび防塵フィルタで構成されている。
【0022】
次に、基板処理装置1の作動について説明する。
ポッド9がロードポート8に供給されると、ポッド搬入搬出口6がフロントシャッタ7によって開放される。ロードポート8上のポッド9はポッド搬送装置15によって筐体2の内部へポッド搬入搬出口6を通して搬入され、回転式ポッド棚11の指定された棚板13へ載置される。ポッド9は回転式ポッド棚11で一時的に保管された後、ポッド搬送装置15により棚板13からいずれか一方のポッドオープナ14に搬送されて載置台21に移載されるか、若しくはロードポート8から直接載置台21に移載される。
【0023】
この際、ウエハ搬入搬出口19は開閉機構22によって閉じられ、移載室23はクリーンエア36が流通され、充満している。移載室23にはクリーンエア36として窒素ガスが充満されるため、移載室23の酸素濃度は、筐体2の内部の酸素濃度よりも低い。
【0024】
載置台21に載置されたポッド9はその開口側端面がサブ筐体16の正面壁17に於けるウエハ搬入搬出口19の開口縁辺部に押付けられると共に、蓋が開閉機構22によって取外され、ウエハ出入口が開放される。
【0025】
ポッド9がポッドオープナ14によって開放されると、基板18はポッド9から基板移載機構24によって取出され、ノッチ合せ装置(図示せず)に移送され、該ノッチ合せ装置にて基板18を整合した後、基板移載機構24は基板18を移載室23の後方にある待機部27へ搬入し、ボート26に装填(チャージング)する。
【0026】
ボート26に基板18を受渡した基板移載機構24はポッド9に戻り、次の基板18をボート26に装填する。一方(上端又は下段)のポッドオープナ14に於ける基板移載機構24により基板18のボート26への装填作業中に、他方(下段又は上段)のポッドオープナ14には回転式ポッド棚11から別のポッド9がポッド搬送装置15によって搬送されて移載され、他方のポッドオープナ14によるポッド9の開放作業が同時進行される。
【0027】
予め指定された枚数の基板18がボート26に装填されると炉口シャッタ31によって閉じられていた処理炉28の炉口部が炉口シャッタ31によって開放される。続いて、ボート26はボートエレベータ32によって上昇され、処理室29に搬入(ローディング)される。
【0028】
ローディング後は、シールキャップ34によって炉口部が気密に閉塞される。なお、本実施の形態において、このタイミングで(ローディング後)、処理室29が不活性ガスに置換されるパージ工程(プリパージ工程)を有する。
【0029】
処理室29が所望の圧力(真空度)となる様に、真空ポンプなどのガス排気機構(図示せず)によって真空排気される。また、処理室29が所望の温度分布となる様にヒータ駆動部(図示せず)によって所定温度迄加熱される。また、ガス供給機構(図示せず)により、所定の流量に制御された処理ガスが供給され、処理ガスが処理室29を流通する過程で、基板18の表面と接触し、基板18の表面上に所定の処理が実施される。更に、反応後の処理ガスは、ガス排気機構により処理室29から排気される。
【0030】
予め設定された処理時間が経過すると、ガス供給機構により不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスが供給され、処理室29が不活性ガスに置換されると共に、処理室29の圧力が常圧に復帰される(アフターパージ工程)。そして、ボートエレベータ32によりシールキャップ34を介してボート26が降下される。
【0031】
処理後の基板18の搬出については、上記説明と逆の手順で、基板18およびポッド9は筐体2の外部へ払出される。未処理の基板18が、更に前記ボート26に装填され、基板18の処理が繰返される。
【0032】
(制御システムの機能構成)
図3に示すように、制御システム200は、主制御部としての主コントローラ201と、搬送制御部としての搬送系コントローラ211と、処理制御部としてのプロセス系コントローラ212と、データ監視を行う制御部としての装置管理コントローラ215と、を備えている。装置管理コントローラ215は、装置データDDの監視により、装置1の状態を監視する機能を有している。本実施形態では、制御システム200は、装置1内に収容されている。
【0033】
ここで、装置データDDとは、装置1が基板18を処理するときの処理温度、処理圧力、処理ガスの流量など基板処理に関するデータ(以後、制御パラメータともいう)や、製造した製品基板の品質(例えば、成膜した膜厚、および該膜厚の累積値など)に関するデータや、装置1の構成部品(石英反応管、ヒータ、バルブ、マスフローコントローラ(以後、MFCと略す)等)に関する部品データ(例えば、設定値、実測値)など、基板処理装置1が基板18を処理する際に各構成部品を動作させることにより発生するデータである。
【0034】
なお、レシピ実行中に収集されるデータは、プロセスデータと称することがある。例えば、レシピ開始から終了までの特定間隔(例えば、1秒など)データとしての生波形データやレシピ内の各ステップの統計量データ等のプロセスデータも装置データDDに含む。統計量データには、最大値、最小値、平均値等が含まれる。また、レシピが実行されていない時(例えば、装置に基板が投入されていないアイドル時)の色々な装置イベントを示すイベントデータ(例えば、メンテナンス履歴を示すデータ)も装置データDDに含まれる。
【0035】
主コントローラ201は、搬送系コントローラ211およびプロセス系コントローラ212と電気的に接続されているため、各装置データDDの送受信や各ファイルのダウンロードおよびアップロード等が可能な構成となっている。
【0036】
主コントローラ201には、外部記憶装置としての記録媒体(例えばUSBキー等)が挿脱されるポートが設けられている。主コントローラ201には、このポートに対応するOSがインストールされている。また、主コントローラ201には、外部の上位コンピュータ300や管理装置310が、通信ネットワークLAN2を介して接続される。このため、基板処理装置1がクリーンルーム内に設置されている場合であっても、上位コンピュータ300や管理装置310がクリーンルーム外の事務所等に配置されることが可能である。
【0037】
装置管理コントローラ215は、主コントローラ201とLAN回線で接続され、少なくとも主コントローラ201から装置データDDを収集するように構成されている。なお、装置管理コントローラ215については、後で詳しく説明する。
【0038】
搬送系コントローラ211は、主に回転式ポッド棚11、ボートエレベータ32、ポッド搬送装置15、基板移載機構24、ボート26および回転機構(図示せず)により構成される基板搬送系211Aに接続されている。搬送系コントローラ211は、回転式ポッド棚11、ボートエレベータ32、ポッド搬送装置15、基板移載機構24、ボート26および回転機構(図示せず)の搬送動作をそれぞれ制御するように構成されている。特に、搬送系コントローラ211は、ボートエレベータ32、ポッド搬送装置15、基板移載機構24の搬送動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0039】
プロセス系コントローラ212は、温度コントローラ212a、圧力コントローラ212b、ガス流量コントローラ212c、シーケンサ212dを備えている。これら温度コントローラ212a、圧力コントローラ212b、ガス流量コントローラ212c、シーケンサ212dは、サブコントローラを構成し、プロセス系コントローラ212と電気的に接続されているため、各装置データDDの送受信や各ファイルのダウンロードおよびアップロード等が可能となっている。なお、プロセス系コントローラ212とサブコントローラは、別体で図示されているが、一体構成でも構わない。
【0040】
温度コントローラ212aには、主にヒータおよび温度センサ等により構成される加熱機構212Aが接続されている。温度コントローラ212aは、処理炉28のヒータの温度を制御することで処理炉28内の温度を調節するように構成されている。なお、温度コントローラ212aは、サイリスタのスイッチング(オンオフ)制御を行い、ヒータ素線に供給する電力を制御するように構成されている。
圧力コントローラ212bには、主に圧力センサ、圧力バルブとしてのAPCバルブおよび真空ポンプにより構成されるガス排気機構212Bが接続されている。圧力コントローラ212bは、圧力センサにより検知された圧力値に基づいて、処理室29の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、APCバルブの開度および真空ポンプのスイッチング(オンオフ)を制御するように構成されている。
ガス流量コントローラ212cは、流量制御器としてMFCにより構成される。
シーケンサ212dは、処理ガス供給管やパージガス供給管からのガスの供給や停止を、バルブ212Dを開閉させることにより制御するように構成されている。
【0041】
このような構成のプロセス系コントローラ212は、処理室29に供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC212c、バルブ212Dを制御するように構成されている。
【0042】
なお、本実施形態にかかる主コントローラ201、搬送系コントローラ211、プロセス系コントローラ212、装置管理コントローラ215は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(USBキーなど)から当該プログラムをインストールすることにより、所定の処理を実行する各コントローラを構成することができる。
【0043】
(主コントローラの構成)
次に、主制御部としての主コントローラ201の構成を、
図4を参照しながら説明する。
主コントローラ201は、主コント制御部220、主コント記憶部としてのハードディスク222、各種情報を表示する表示部と、操作者からの各種指示を受け付ける入力部と、を含む操作表示部227、装置1内外と通信する主コント通信部としての送受信モジュール228とを含むように構成される。主コント制御部220は、処理部としてのCPU(中央処理装置)224や、一時記憶部としてのメモリ(RAM、ROM等)226を含み、時計機能(図示せず)を備えたコンピュータとして構成されている。
【0044】
ハードディスク222には、基板の処理条件および処理手順が定義されたレシピ等の各レシピファイル、これら各レシピファイルを実行させるための制御プログラムファイル、レシピを実行するためのパラメータが定義されたパラメータファイル、また、エラー処理プログラムファイルおよびエラー処理のパラメータファイルの他、プロセスパラメータを入力する入力画面を含む各種画面ファイル、各種アイコンファイル等(いずれも図示せず)が格納されている。
【0045】
また、操作表示部227の操作画面には、
図3に示す、基板搬送系211Aや基板処理系(加熱機構212A、ガス排気機構212Bおよびガス供給系212C)への動作指示を入力したりする入力部としての各操作ボタンを設けることも可能である。
【0046】
操作表示部227には、装置1を操作するための操作画面が表示されるように構成されている。操作表示部227は、操作画面を介して基板処理装置1内で生成される装置データDDに基づいた情報を操作画面に表示する。操作表示部227の操作画面は、例えば液晶を用いたタッチパネルである。操作表示部227は、操作画面からの作業者の入力データ(入力指示)を受け付け、入力データを主コントローラ201に送信する。また、操作表示部227は、メモリ(RAM)226等に展開されたレシピ、若しくはハードディスク222に格納された複数のレシピのうち任意の基板処理レシピ(以後、プロセスレシピともいう)を実行させる指示(制御指示)を受け付け、主コント制御部220に送信する。
【0047】
主コント通信部228には、スイッチングハブ等が接続されており、主コントローラ201が、ネットワークを介して、外部のコンピュータ300や装置1内の他のコントローラ(211、212、215)等と、データの送信および受信を行うように構成されている。
【0048】
また、主コントローラ201は、図示しないネットワークを介して外部の上位コンピュータ300、例えば、ホストコンピュータに対して装置1の状態など装置データDDを送信する。なお、装置1の基板処理動作は、主コント記憶部222に記憶されている各レシピファイル、各パラメータファイル等に基づいて、制御システム200により制御される。
【0049】
なお、装置管理コントローラ215のハードウエア構成は、上述の主コントローラ201と同様な構成である。また、装置管理コントローラ215は、主コントローラ201と同様に専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。
【0050】
(装置管理コントローラの構成)
次に、制御部としての装置管理コントローラ215の構成を、
図5および
図6を参照しながら説明する。
【0051】
装置管理コントローラ215は、主コントローラ201とLAN回線で接続され、主コントローラ201から装置データDDを収集し、蓄積した装置データDDを加工しグラフ化して、操作表示部227に表示することが可能である。また、装置管理コントローラ215は、装置状態監視機能を有し、装置1内外から収集した装置データDDを利用して、装置1の稼働状態を診断し、その診断結果を出力するように構成されている。
【0052】
図5に示すように、装置管理コントローラ215は、主コントローラ201との間で装置データDDの送受信を行う通信部215a、画面表示部215b、画面表示制御部215c、各種データを記憶する記憶部215d、および、装置状態監視部215eを備えている。
【0053】
画面表示部215bは、装置管理コントローラ215の機能を表示するように構成されている。また、画面表示部215bの代わりに、主コントローラ201の操作表示部227を用いて表示するよう構成してもよく、あるいは、操作端末等で代替してもよい。
【0054】
画面表示制御部215cは、各種データ(例えば装置データDD)を画面表示用のデータに加工して、画面表示部215bまたは操作表示部227に表示させるよう制御する。なお、本実施形態では、画面表示部215bではなく、操作表示部227に表示させるよう構成されている。
【0055】
記憶部215dは、プロセスレシピが実行されている間、主コントローラ201からあらゆる装置データDDが蓄積され、かつ、プロセスレシピが実行されていない間もイベントデータ等の装置データDDが蓄積され、装置1のデータベースとして機能する。また、装置管理コントローラ215で実行される各種プログラムが記憶部215dに格納されており、例えば、装置管理コントローラ215の起動とともに装置状態監視プログラムやデータ解析プログラム等が実行される。なお、該プログラムに利用される監視コンテンツないし診断条件定義データも、記憶部215dに格納してもよい。
【0056】
装置状態監視部215eは、装置状態監視プログラムをメモリ(例えば記憶部215d)内に有し、装置状態監視機能を実行する。
図6に示すように、装置状態監視部215eは、条件判定部311、蓄積部313、検索部314および診断部315を備えている。
【0057】
条件判定部311は、診断部315が処理を行うべきタイミングとなったか否かを判定する制御を行う。具体的には、条件判定部311は、所定の条件を満足したときに、診断部315が処理を行うべきタイミングになったと判定する。所定の条件については、詳細を後述する。
【0058】
蓄積部313は、通信部215aを介して供給されるあらゆる装置データDDを、記憶部215dへ蓄積する制御を行う。記憶部215dに蓄積させる装置データDDには、少なくとも、詳細を後述する監視対象の部位についての配管温度および配管圧力のデータが含まれている。また、蓄積部313は、診断部315が生成する各種データ(例えば詳細を後述する外れ値等)を、記憶部215dへ蓄積する制御を行う。
【0059】
検索部314は、記憶部215dに格納された種々の装置データDDの内、診断部315での処理対象となる装置データDD(特に、配管温度および配管圧力のデータ)を検索し、診断部315へ供給する制御を行う。また、検索部314は、必要に応じて診断部315が生成した各種データ(例えば詳細を後述する外れ値等)を検索し、診断部315へ供給する制御を行う。
【0060】
診断部315は、条件判定部311から処理を行うべき旨が通知されると、診断を開始する。そして、診断部315は、診断の結果である診断データを、通信部215aを介して主コントローラ201へ通知する。
【0061】
具体的には、主コントローラ201へ通知する診断データを生成するために、診断部315は、検索部314から処理対象の装置データDDとして配管温度および配管圧力のデータを受け取り、その配管圧力に基づき飽和温度を算出して、受け取った配管温度と算出した飽和温度との差分を外れ値として計算するように構成されている。そして、診断部315は、計算した外れ値を記憶部215dに蓄積させつつ、所定の期間内における外れ値の最大値を最大外れ値として取得するとともに、その所定の期間内で蒸気圧曲線の液化領域に該当する外れ値の個数を外れ個数として取得するように構成されている。これら最大外れ値および外れ個数は、ソフトセンサ値として出力されて主コントローラ201に通知される。
【0062】
また、診断部315は、最大外れ値および外れ個数を取得し、これらのうち少なくとも一つを所定の閾値と比較して、閾値を超えた場合にアラームを発生させて主コントローラ201に通知するように構成してもよい。
【0063】
ここで、縦軸を温度、横軸を圧力で示される蒸気圧曲線は、気化されたガスの原料により予め決められている曲線である。この曲線の左側が液化領域であり、曲線の右側が気化領域である。本明細書では、この蒸気圧曲線上にある温度や圧力は、それぞれ飽和温度、飽和圧力と称し、本実施形態における飽和温度は、圧力(本実施形態では配管圧力)により決定される温度と定義する。
【0064】
(2)基板処理方法の手順
次に、所定の処理工程を有する基板処理方法について説明する。ここで、所定の処理工程は、半導体デバイスの製造工程の一工程である基板処理工程(ここでは成膜工程)である。
【0065】
基板処理工程の実施にあたって、まず、プロセスレシピが、プロセス系コントローラ212内のRAM等のメモリに展開される。そして、主コントローラ201からプロセス系コントローラ212や搬送系コントローラ211へ動作指示が与えられる。また、基板処理工程は、搬入工程と、成膜工程と、搬出工程と、を少なくとも有する。
【0066】
(移載工程)
主コントローラ201からは、搬送系コントローラ211に対して、基板移載機構24の駆動指示が発せられる。そして、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、基板移載機構24は載置台としての授受ステージ21上のポッド9からボート26への基板18の移載処理を開始する。この移載処理は、予定された全ての基板18のボート26への装填(ウエハチャージ)が完了するまで行われる。
【0067】
(搬入工程)
所定枚数の基板18がボート26に装填されると、ボート26は、搬送系コントローラ211からの指示に従って動作するボートエレベータ32によって上昇されて、処理炉28内に形成される処理室29に装入(ボートロード)される。ボート26が完全に装入されると、ボートエレベータ32のシールキャップ34は、処理炉28のマニホールドの下端を気密に閉塞する。
【0068】
(成膜工程)
次に、処理室29は、圧力制御部212bからの指示に従いつつ、所定の成膜圧力(真空度)となるように、真空ポンプなどの真空排気装置によって真空排気される。また処理室29は、温度制御部212aからの指示に従いつつ、所定の温度となるようにヒータによって加熱される。続いて、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、回転機構によるボート26および基板18の回転を開始する。そして、所定の圧力、所定の温度に維持された状態で、ボート26に保持された複数枚の基板18に所定のガス(例えば、液体原料を気化させた原料ガス)を供給して、基板18に所定の処理(例えば成膜処理)がなされる。なお、次の搬出工程前に、処理温度(所定の温度)から温度を降下させる場合がある。
【0069】
(搬出工程)
ボート26に載置された基板18に対する成膜工程が完了すると、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、その後、回転機構によるボート26および基板18の回転を停止させ、ボートエレベータ32によりシールキャップ34を下降させてマニホールドの下端を開口させるとともに、処理済の基板18を保持したボート26を処理炉28の外部に搬出(ボートアンロード)する。
【0070】
(回収工程)
そして、処理済の基板18を保持したボート26は、クリーンユニット35から吹出されるクリーンエア36によって極めて効果的に冷却される。そして、例えば150℃以下に冷却されると、ボート26から処理済の基板18を脱装(ウエハディスチャージ)してポッド9に移載した後に、新たな未処理基板18のボート26への移載が行われる。
【0071】
(3)装置状態の監視処理
次に、基板処理工程を実施する過程で装置管理コントローラ215が行う装置状態の監視処理について説明する。
【0072】
(監視処理の概要)
成膜工程においては、
図7に示すように、プロセス系コントローラ212がバルブ212Dを開状態にすると、所定種類のガスがMFC212cによって流量調整された状態で、そのガスの流路となる配管212Eを通じて、基板18が搬入された処理室(反応室)29に供給される。供給されるガスとしては、例えば、液体原料を気化させた原料ガスである第一元素含有ガスがある。ただし、その他にも、例えば、反応ガスまたは改質ガスである第二元素含有ガス、パージガスとして作用する不活性ガス等が、反応室29に供給され得る。
【0073】
監視対象となる部位としての配管212Eには、予め監視対象となる部位における装置データの変動を検出する検出器が設定されており、
図7では、監視対象に設定された部位(配管212E)に温度センサTG1および圧力センサPG1が配されている。なお、監視対象の部位として複数箇所が設定されている場合には、それぞれに温度センサTG1および圧力センサPG1が配置される。監視対象の部位は、バルブ212Dの上流側または下流側のいずれであってもよい。したがって、監視対象の部位の前後(すなわち、前側または後側の少なくとも一方)には、バルブ212Dが位置することになる。
【0074】
温度センサTG1は、配管212E内を流れるガスの温度の実測値を監視対象の部位についての配管温度として検出するように構成されている。圧力センサPG1は、配管212E内におけるガスの圧力の実測値を監視対象の部位についての配管圧力として検出するように構成されている。したがって、監視対象の部位においては、同一のガスについての配管温度および配管圧力を同一タイミングで検出することが可能となる。温度センサTG1による検出結果である配管温度および圧力センサPG1による検出結果である配管圧力は、装置データDDとして主コントローラ201に出力される。
【0075】
ところで、配管212E内を流れる原料ガスとして、HCD(ヘキサクロロジシラン)等の液体材料を加熱して気化させたガスを、反応室29へと送り込むことがある。その場合に、例えば、配管212E内が加圧状態になると、この気化させたガスの温度が該ガスの原料(HCD)により決められている蒸気圧曲線の液化状態側に遷移して、この気化させたガスが再液化してしまう可能性がある。この液化したガスが反応室29に送り込まれ基板18上に付着すると、ボール状のパーティクルを形成してしまうことが知られている。つまり、気化させたガスが再び液化してしまうと、パーティクル発生による成膜異常や装置停止等のトラブルを招くおそれがある。
【0076】
このようなガスの液化に起因するトラブル発生を未然に回避するためには、配管212E内におけるガスの液化状態を迅速かつ的確に察知することが重要である。ガスの液化状態を迅速かつ的確に察知できれば、ガスの液化に起因する装置異常状態について早めに対処することが可能となり、その結果として、成膜異常や装置停止等のトラブル発生による保守の負担を軽減させることが可能となる。
【0077】
本実施形態においては、配管212Eに配置された温度センサTG1および圧力センサPG1からの装置データDD(すなわち、監視対象の部位についての配管温度および配管圧力)を用いつつ、装置管理コントローラ215が以下に説明する処理を行う。
【0078】
(ソフトセンサ値の算出処理)
装置管理コントローラ215は、
図8に示すように、ソフトセンサ値を算出する処理を行う。まず、ソフトセンサ値としての最大外れ値T
Outおよび外れ個数F
Countについて、診断部315がそれぞれを初期値としての「0」に設定する(S101)。
【0079】
その一方で、装置管理コントローラ215では、プロセスレシピの実行中に通信部215aを介して主コントローラ201から供給される装置データDDを、蓄積部313が記憶部215dに蓄積させる。記憶部215dが蓄積する装置データDDには、温度センサTG1の検出結果である配管温度および圧力センサPG1の検出結果である配管圧力が含まれる。装置管理コントローラ215による配管温度および配管圧力の収集は、所定の周期(例えば0.1秒毎)で行う。
【0080】
そして、装置管理コントローラ215では、収集される配管温度および配管圧力について、条件判定部311が監視を行う。監視対象となるのは、配管212E(複数の部位が設定されている場合はそれぞれの部位毎)の配管温度および配管圧力である。監視タイミングは、配管212Eの前後に設けられるバルブ212Dが開状態となった後の一定期間である。条件判定部311は、バルブ212Dが開状態であり、かつ、開状態となった後の一定期間で配管温度または配管圧力のいずれかの値が変化したときに、収集条件を満足したと判定する(S102)。条件判定部311は、監視対象となる配管温度および配管圧力に変化がなければ(変化がないと判定すると)、次の周期まで待つ(S103)。
【0081】
S102において収集条件を満足したと条件判定部311が判定したら、装置管理コントローラ215では、診断部315が(S104)以下に説明する演算処理を行う。
【0082】
(S104)診断部315は、まず、収集条件を満足した、すなわち配管温度または配管圧力のいずれかの値が変化したときの、配管212Eを流れるガスの飽和温度T
THを算出する。
【0083】
温度と蒸気圧との関係は、以下のアントワン式によって規定される。
【0085】
ここで、A,B,Cは物質毎に決まる定数(アントワン定数)、Pは蒸気圧、Tは温度である。
【0086】
本実施形態においては、下記の観点で、上記の式を変形して使用する。
(1)指数計算の処理コストを低減するため、入力を圧力とし、飽和温度求める。
(2)圧力は、理論値との乖離調整や絶対圧・蒸気圧変換のためのゲタを履かせる必要があるため、調整用の定数Dを用意する。
このような観点に基づく変形によって、下記のような飽和温度T
THを導出する式が得られる。
【0088】
ここで、T
THは飽和温度、A,Bはアントワン定数、Cはアントワン定数と温度の調整値の和、Dは圧力の調整値、Pは監視対象の部位の配管圧力である。
【0089】
つまり、診断部315は、配管温度または配管圧力のいずれかの値が変化したときに、そのときの配管圧力に基づき、上記の式を用いて監視対象の部位を流れるガスの飽和温度T
THを算出する。
【0090】
飽和温度T
THを算出したら、続いて、診断部315は、算出した飽和温度T
THと、配管温度または配管圧力のいずれかの値が変化したとき配管温度との差分を、飽和温度T
THからの外れ値T
Diffとして計算する。
【0091】
診断部315は、その外れ値T
Diffがマイナスであるか否か、すなわち外れ値T
Diffがガスの液化条件に合致するものであるか否かを判断する(S105)。具体的には、取得した外れ値T
Diffが蒸気圧曲線(
図9)における液化領域に該当するか否かを判断する。そして、液化領域に該当する外れ値T
Diffについては、液化条件に合致していると判断する。なお、液化条件に合致していなければ、監視対象となる配管温度および配管圧力を、次の周期まで待つ(S103)。
【0092】
(S106)取得した外れ値T
Diffが液化条件に合致していると、診断部315は、蒸気圧曲線の液化領域に該当する外れ値T
Diffの個数の計数結果である外れ個数F
Countについて、「+1」の加算を行う。診断部315は、蒸気圧曲線の液化側に変化のあった配管温度を抽出し、カウントする。
【0093】
また、診断部315は、取得した外れ値T
Diffが設定済の最大外れ値T
Outよりも大きいか否か、すなわち最大外れ値T
Outを超える外れが生じているか否かを判断する(S107)。そして、最大外れ値T
Outを超えていれば、その最大外れ値T
Outを取得した外れ値T
Diffで更新する(S108)。つまり、取得した外れ値T
Diffの最大値を最大外れ値T
Outとする。なお、最大外れ値T
Outを超えていなければ、監視対象となる配管温度および配管圧力を、次の周期まで待つ(S103)。
【0094】
以上のような演算処理を、診断部315は、バルブ212Dが開状態となった後の一定期間(すなわち、所定の期間)が経過するまで(S109)、各周期で得た配管温度および配管圧力毎に(S110)、繰り返し行う。
【0095】
そして、バルブ212Dの開状態後の一定期間(所定の期間)が経過したら、診断部315は、その所定の期間内における、蒸気圧曲線の液化領域に該当する外れ値T
Diff(すなわち、該蒸気圧曲線によって規定される液化条件に合致する外れ値T
Diff)の個数である外れ個数F
Countと、外れ値T
Diffの最大値である最大外れ値T
Outとを、ソフトセンサ値として出力する(S111)。ソフトセンサ値の出力先は、主コントローラ201である。
【0096】
ここで、具体的な監視例を
図9に示す。
図9に示す監視例では、所定の期間内に取得した複数の外れ値T
Diffのうち(図中における黒丸印参照)、3回分の外れ値T
Diffが蒸気圧曲線の液化領域に突入している。これら3回分の外れ値T
Diffは、所定圧力における蒸気圧曲線(飽和温度)からの差分が、それぞれ10℃、50℃、30℃となっている。このような場合に、診断部315は、最大外れ値T
Out=50℃、外れ個数F
Count=3として、ソフトセンサ値の出力を行う。
【0097】
(ソフトセンサ値の運用)
このように、最大外れ値T
Outおよび外れ個数F
Countをソフトセンサ値として出力すれば、そのソフトセンサ値について、以下に説明するように、目的に応じて使い分けて運用することが可能となる。
【0098】
例えば、最大外れ値T
Outによれば、蒸気圧曲線からの実測温度の離れ距離を指標として数値化しているため、突発的に液化したような状態の変化を捉えることが可能である。また、監視対象の部位を流れるガスは、瞬間的に理論的な液化状態となっても、実際には直ちにボールパーティクルとして現れないことが多い。そこで、外れ個数F
Countについて、例えば、その累積値を管理指標とすることで、パーティクルとして現れる可能性が高い再液化の状況を捉えることが可能である。
【0099】
また、例えば、液化領域に該当する外れ値T
Diffが連続して発生した回数を外れ連続回数としてソフトセンサ値の一つに加えることができる。監視対象の装置データが連続して変化し、いずれの装置データの実測値と飽和温度T
thの差がマイナスになり、明らかに気化されたガスの再液化現象が起きている場合に、累積値の閾値よりも前であっても異常(配管温度の低下エラー)の発生を検知することができる。
【0100】
(アントワン定数の選定)
ところで、ソフトセンサ値の出力に必要となる飽和温度T
THの算出は、上述したように、A,B,C,Dのパラメータ(定数)を用いる。これらのうち、少なくともA,B,Cは、物質による定数であり、成膜に用いる液体原料が異なる場合は原料に応じた値に変更する必要がある。また、A,B,C,Dについては、配管表面と配管内の温度差や圧力、ゲージ圧か絶対圧であるか等の条件の違いにより、必要に応じて修正を行わなければならないこともあり得る。
【0101】
このことから、装置管理コントローラ215は、監視対象の部位を流れるガスの原料に応じて、少なくとも定数A,B,Cについて、好ましくは定数A,B,C,Dの全てについて、選定し得るように構成されている。また、装置管理コントローラ215は、監視対象の部位の設定箇所に応じて、定数A,B,C,Dを選定し得るものであってもよい。
【0102】
具体的には、定数A,B,C,Dについて、監視対象の部位毎に選定し得るようにする。これを実現するために、装置管理コントローラ215は、
図10に示すように、アントワン定数管理テーブルと、監視対象の部位毎の条件設定テーブルと、を用意しておく。アントワン定数管理テーブルは、原料毎のアントワン定数値をテーブル形式で保持するもので、例えば、予め記憶部215dに記憶保持させておく。
【0103】
そして、ソフトセンサ値の算出開始に際して、装置管理コントローラ215は、アントワン定数管理テーブルおよび監視対象の部位毎の条件設定テーブルを画面表示して、監視対象の部位毎に適用する定数A,B,C,Dをアントワン定数管理テーブルの中から選定させ、選定された定数A,B,C,Dを監視対象の部位毎の条件設定テーブルにおける該当箇所に設定する。このようにして設定されたテーブル上の条件を参照しつつ、装置管理コントローラ215は、ソフトセンサ値の算出を行うことになる。
【0104】
このようにすれば、監視対象の部位毎に、その部位を流れるガスの原料に応じて、定数A,B,C,Dを適切に選定することが可能となる。
【0105】
なお、ここでは、アントワン定数を例に挙げたが、温度補正自体または圧力補正自体を別の理論化学式に基づいて決定することができるようにしてもよい。
【0106】
(監視アクション処理)
装置管理コントローラ215がソフトセンサ値を算出して出力すると、そのソフトセンサ値を利用して、以下に説明する監視アクション処理を行うことが可能となる。
【0107】
監視アクション処理としては、大別すると、アラーム通知処理と、自動メンテナンスレシピ実行処理と、がある。
【0108】
(アラーム通知処理)
装置管理コントローラ215は、ソフトセンサ値を算出すると、そのソフトセンサ値を構成する外れ個数F
Countと最大外れ値T
Outのうちのいずれか一つを所定の閾値と比較して、監視対象の部位となった配管内におけるガスの液化状態を判定する。そして、閾値を超えた場合、配管内のガスが液化しているおそれがあることから、アラームを発生させて、そのことを報知する。
【0109】
例えば、装置管理コントローラ215は、突発的に液化したような状態の変化を捉えることが可能な最大外れ値T
Outを閾値管理し、閾値を超える最大外れ値T
Outとなった場合に、配管内のガスが液化しているおそれがあると判定する。そして、装置管理コントローラ215は、主コントローラ201に対するアラーム発生を行う。これを受けて、主コントローラ201が操作表示部227を通じてアラーム出力を行うことで、操作者等は、装置1の状況確認を行うことができ、必要に応じてメンテナンスを行う等の所定のエラー処理を行うことが可能となる。なお、アラームの具体的な態様については、特に限定されるものではない。
【0110】
閾値管理は、外れ個数F
Countについて行ってもよい。その場合には、例えば、外れ個数F
Countの累積値を管理し、その累積値が閾値(一定量)を超えたら、アラーム出力を行うようにする、このようにすれば、パーティクルとして現れる可能性が高い再液化の状況に関して、適切に対応することが可能となる。
【0111】
(自動メンテナンスレシピ実行処理)
装置管理コントローラ215から出力されるソフトセンサ値を受け取ると、主コントローラ201は、そのソフトセンサ値に含まれる外れ個数F
Countを用いて、以下のような処理を行う。
【0112】
主コントローラ201では、例えば、
図11および
図12に示すようなアクション定義テーブルを予め記憶保持している。アクション定義テーブルは、監視対象の部位と、その部位についてのソフトセンサ値(特に外れ個数F
Count)と、その部位に対して行うべきアクションを指定するレシピと、を互いにリンク(関連付け)させるものである。
【0113】
そして、装置管理コントローラ215から監視対象の部位毎の外れ個数F
Countを含むソフトセンサ値を受け取ると、主コントローラ201は、アクション定義テーブルにおける外れ個数F
Countの累積値に、通知された外れ個数F
Countを加算する。累積値を更新したら、主コントローラ201は、その更新後の累積値を、アクション定義テーブルに登録された閾値と比較する。
【0114】
図11に示す例では、累積値が998個だったところ、その状態で該当箇所につき新たに外れ個数F
Countが3個である旨が通知されたので、その+3個分を加算して、累積値に3を加算して、外れ個数を1001個に更新した状態を表している。また、累積値が増えたことにより、アクション定義テーブルに登録された閾値である1000個を超えてしまった状態を表している。
【0115】
このように、ある監視対象の部位について、外れ個数F
Countの累積値が閾値を上回ったときに、主コントローラ201は、現在実行中のプロセスレシピの終了後に、その部位に対して、アクション定義テーブルに登録されたメンテナンスレシピを実行させる。
【0116】
具体的には、
図12に示すように、例えば、監視対象の部位の一つであるタンク出口において、外れ個数F
Countの累積値が閾値を上回ると、主コントローラ201は、その部位におけるガスの液化が検出されたと判定し、その場合に行うべきアクションを規定するメンテナンスレシピとして、アクション定義テーブルに登録されたクリーニングレシピを実行するように構成されている。そして、主コントローラ201は、クリーニングレシピの実行により、監視対象の部位の一つであるタンク出口に対して、例えば、N
2ガス等の不活性ガスを流し、液化状態の原料(HCD等)を除去するように構成されている。なお、行うべきアクションを規定するメンテナンスレシピは、上述したようなクリーニングレシピに限定されるものではなく、予めアクション定義テーブルに登録されているものであれば、例えば部品(ポンプ)交換、保守レシピ実行等といったメンテナンス(他のアクション)を行わせるものであってもよい。
【0117】
このようなアクションを行えば、外れ個数F
Countの累積値が閾値を超えた場合であっても、基板18にボールパーティクルを付着させないように、自動的にアクション定義テーブルに登録されたメンテナンスレシピを実行させることが可能となる。
【0118】
アクションを行った後、主コントローラ201は、そのアクションを行った部位についてのアクション定義テーブルの累積値をゼロリセットする。つまり、主コントローラ201は、メンテナンスレシピの実行後、アクション定義テーブルにおける該当の累積値を初期化する。これにより、再びガスが液化し得る状況になった場合であっても、これに適切に対応することが可能となる。
【0119】
なお、ここでは、外れ個数F
Countについての管理の具体例として累積値を利用する場合を説明したが、これに限定されることはなく、以下のような態様の管理を行ってもよい。例えば、上述したように累積値で管理するのではなく、1回でも外れ個数F
Countが発生した場合に、アクション定義テーブルで規定されるアクションを実行するようにしてもよい。また、例えば、液化領域に該当する外れ値T
Diffが連続して発生した回数を連続回数としてアクション定義テーブルに保持しておき、その連続回数の累積値のみが増加し続けた場合に、アクション定義テーブルで規定されるアクションを実行するようにしてもよい。
【0120】
また、外れ個数F
Countの累積値が閾値(一定量)を超えるとメンテナンスレシピを実行させる場合を説明したが、例えば、主コントローラ201は、累積値が一定量を超えた場合に装置データDD(監視対象の部位についての配管温度および配管圧力を含む)の装置管理コントローラ215への出力を行うようにしてもよい。
【0121】
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0122】
本実施形態によれば、ボールパーティクル等のパーティクルを発生させる要因である配管内の異常を定量的に表現し、その数値の急激な変化や累積値を監視することで、基板処理装置における目に見えない異常状態を検出することを可能にする。
【0123】
そのため、配管内が液化することにより、反応室29内に液化した原料が流れ込むことによるパーティクルの発生を捉えることができ、パーティクルが多く付着した基板18を後工程に流出させてしまうのを未然に防ぐことができる。
【0124】
つまり、本実施形態によれば、配管内におけるガスの液化状態を迅速かつ的確に察知して、ガスの液化に起因するトラブル発生を未然に回避することが可能になる。
【0125】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態およびその変形例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態または変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0126】
上述の実施形態または変形例では、主に、半導体製造工程で用いられる基板処理装置および半導体装置の製造方法について説明したが、本発明がこれらに限定されることはなく、例えば、液晶表示(LCD)装置のようなガラス基板を処理する基板処理装置およびその製造方法にも適用可能である。
【0127】
また、成膜工程については、液体原料を気化した状態で処理炉28内の処理室(反応室)29に供給して基板(ウエハ)18の面上への成膜を行うものであればよく、成膜する膜種が特に限定されることはない。
【0128】
また、成膜工程で行う成膜処理には、例えば、CVD(chemical vapordeposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理等を含む。
【0129】
また、上述の実施形態または変形例では、成膜処理を行う基板処理装置および半導体装置の製造方法について説明したが、本発明がこれらに限定されることはなく、例えば、他の基板処理装置(露光装置、リソグラフィ装置、塗布装置、プラズマを利用したCVD装置等)にも適用できる。