特許第6961915号(P6961915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961915フマル酸エステルマクロモノマー、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体、およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961915
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】フマル酸エステルマクロモノマー、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 122/14 20060101AFI20211025BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08F122/14
   C08F290/04
   C08F2/38
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-173946(P2016-173946)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39891(P2018-39891A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 絵理子
(72)【発明者】
【氏名】堀邊 英夫
(72)【発明者】
【氏名】西山 聖
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−176587(JP,A)
【文献】 特表平11−504056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00−20/70
C08F 290/00−290/14
C08F 265/00−265/10
C08F 2/00−2/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフマル酸エステルマクロモノマー(A)。
【化1】
[一般式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、ハロゲンまたは下記一般式(4)で示される基である。nは、2以上の整数である。]
【化2】
[一般式(4)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。Zは水素原子又はラジカル重合開始剤に由来する基であり、前記ラジカル重合開始剤が、有機過酸化物又はアゾ化合物である。nは、1以上の整数である。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるフマル酸ジエステル(A1)を、下記一般式(3)で表される付加開裂剤(A2)存在下でラジカル重合させる、請求項1記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)の製造方法。
【化3】
[一般式(2)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。]
【化4】
[一般式(3)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、ハロゲンまたは一般式(4)で示される基である。]
【請求項3】
請求項1記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)に由来する単位と、前記フマル酸エステルマクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)に由来する単位を有するフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)。
【請求項4】
前記フマル酸エステルマクロモノマー(A)と前記コモノマー(B)とを含む重合性成分をラジカル重合させる、請求項3記載のフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3に記載のフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の樹脂組成物を成形した成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フマル酸エステルマクロモノマー、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体、およびそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明性プラスチックは、各種光学レンズ類、光ファイバー、更には、偏光フィルムや位相差フィルム、拡散フィルム、導光板などのディスプレイ関連材料として幅広く使用されている。
透明性プラスチックには、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどのビニル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォンなどの縮合系ポリマーが使用されている。しかしながらビニル系ポリマーは一般に耐熱性が低く、縮合系ポリマーは透明性や複屈折など光学特性に課題がある。エチレン−ノルボルネン共重合体、ノルボルネン開環重合体の水素添加物などの環状ポリオレフィンは良好な光学特性を有する100℃から150℃程度の耐熱をもつプラスチックであるが、更なる耐熱性向上が求められている。
【0003】
フマル酸エステル系重合体は、芳香族構造を含まないため良好な光学特性を有する。また1,2−ジ置換エチレン構造よりなり比較的剛直な分子構造を持つため200℃以上の高い耐熱性を示す(例えば非特許文献1、特許文献1〜3参照)。フマル酸エステル系重合体は、熱可塑性を有しないため注型重合や溶液キャスト法によりレンズやフィルムに加工されている。また、これらフマル酸エステル系重合体の柔軟性や伸度といった機械強度の改善、他樹脂との接着性や密着性などの改良のため、これらフマル酸ジエステルと他のビニル系モノマーとのランダム共重合体が検討されている(例えば特許文献4参照)。しかしながら、このようなランダム共重合体はフマル酸エステル系重合体の剛直性を低下させるなど、本来の特性を低下させるという問題がある。一方、ブロック/グラフト共重合体は本来の重合体の特性を維持し新しい特性を付与できるため興味深い重合体である。
【0004】
ブロック共重合体の製造方法としてはリビングアニオン重合法が一般的であり、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体などが工業的に製造されている。リビングラジカル重合法についても、近年いくつかの方法が報告されている(例えば非特許文献2〜3、特許文献5〜7参照)。これまで開発されているリビングラジカル重合法としては、ニトロキシドラジカルなどの安定ラジカルを用いるリビングラジカル重合法(NMP)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)、可逆連鎖移動触媒重合法(RTCP)、有機テルル化合物などを用いるリビングラジカル重合法(TERP)、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT)などがある。
【0005】
これらリビングラジカル重合により上記のような比較的剛直なフマル酸エステル重合体セグメントを含むブロック共重合体、特に柔軟なセグメントを持つ重合体とのブロック共重合体が報告されている(特許文献8)。特許文献8では、RTCP法とTREP法によってフマル酸ジエステル重合体セグメントを含むブロック共重合体を合成している。しかし、TERP法ではテルル末端の失活によるホモポリマー(フマル酸ジエステル重合体セグメントのみ、もしくはコモノマーのみからなるポリマー)の生成が課題であった。また、RTCP法では、マクロドーマント種が残留するため、マクロドーマント種が可溶でフマル酸ジエステルが不溶な溶媒でブロック共重合体を精製する必要があった(非特許文献4)。また、RAFT法でも制御能に課題があった(非特許文献4)。このように、従来のフマル酸ジエステル重合体セグメントを含むブロックポリマーは、制御能や精製工程に課題があった。
【0006】
一方で、フマル酸エステルマクロモノマーの合成、及びフマル酸エステルマクロモノマーを用いた共重合体の合成が可能になれば、ブロックポリマーで成し得なかった高機能なグラフト共重合体を得られることが期待できる。フマル酸エステルマクロモノマー及びマクロモノマー共重合体は、リビングラジカル重合で課題となる金属触媒除去や着色の問題が容易に解決できる可能性がある。しかし、今までフマル酸エステルマクロモノマーの合成、及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体の合成の報告例は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−40281号公報
【特許文献2】特開昭60−192714号公報
【特許文献3】特開2005−97544号公報
【特許文献4】特開2000−143741号公報
【特許文献5】国際公開第2008/139980号
【特許文献6】国際公開第2004/014848号
【特許文献7】特表2007−515538号公報
【特許文献8】特開2012−21101号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】高分子学会予稿集30巻832頁(1981年)
【非特許文献2】日本ゴム協会誌第82巻第3号135頁(2009年)
【非特許文献3】日本ゴム協会誌第82巻第8号363頁(2009年)
【非特許文献4】J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem.,2016,54,2136−2147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規なフマル酸エステルマクロモノマー、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体、その製造方法、これらを含む樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形した成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、フマル酸ジエステル(A1)を付加開裂剤(A2)存在下でラジカル重合させることにより、フマル酸エステルマクロモノマー(A)が合成可能であることを初めて見出した。さらに、フマル酸エステルマクロモノマー(A)はコモノマー(B)と良好な共重合性を有し、グラフト体を含むフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を効率よく合成可能であることを見出した。また、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)は、ポリフマル酸ジエステルの透明性を維持しつつ物性の改良が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]下記一般式(1)で表されるフマル酸エステルマクロモノマー(A)。
【化1】
[一般式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、末端基である。nは、2以上の整数である。]
[2]下記一般式(2)で表されるフマル酸ジエステル(A1)を、下記一般式(3)および一般式(4)で表される付加開裂剤(A2)存在下でラジカル重合させる、[1]記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)の製造方法。
【化2】
[一般式(2)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。]
【化3】
【化4】
[一般式(3)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、ハロゲンまたは一般式(4)で示される基である。一般式(4)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。一般式(4)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。Zは末端基である。nは、1以上の整数である。]
[3][1]記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)に由来する単位と、前記フマル酸エステルマクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)に由来する単位を有するフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)。
[4]前記フマル酸エステルマクロモノマー(A)と前記コモノマー(B)とを含む重合性成分をラジカル重合させる、[3]記載のフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の製造方法。
[5][1]に記載のフマル酸エステルマクロモノマー(A)を含む樹脂組成物。
[6][3]に記載のフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を含む樹脂組成物。
[7][5]又は[6]に記載の樹脂組成物を成形した成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規なフマル酸エステルマクロモノマー、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体、その製造方法、これらを含む樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形した成形体を提供することができる。
本発明のフマル酸エステルマクロモノマー、及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体は、耐熱性やフレキシブル性、透明性等を兼ね備えており、各種産業用途に好適な物性を持つ新規マクロモノマー、及び新規グラフト共重合体である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪フマル酸エステルマクロモノマー(A)≫
本発明のフマル酸エステルマクロモノマー(A)は、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化5】
【0015】
[一般式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、末端基である。nは、2以上の整数である。]
【0016】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)は、下記一般式(2)で表されるフマル酸ジエステル(A1)を、下記一般式(3)および一般式(4)で表される付加開裂剤(A2)存在下でラジカル重合させることによって製造することができる。
【0017】
【化6】
[一般式(2)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。]
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
[一般式(3)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Xは、ハロゲンまたは一般式(4)で示される基である。一般式(4)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。一般式(4)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。Zは末端基である。nは、1以上の整数である。]
【0021】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)が含む繰り返し単位は、一般式(2)で表されるフマル酸ジエステル(A1)が重合して生成する。フマル酸ジエステル(A1)の重合体に由来する繰り返し構造について、Rはそれぞれ独立であり、異なるRがランダムに配置されていても良く、複数の種類がブロック体を形成していても良い。
【0022】
また、フマル酸エステルマクロモノマー(A)が含む末端二重結合部位と末端基Xは、付加開裂剤(A2)に由来する部位である。例えば、付加開裂剤(A2)が一般式(3)中のXとしてハロゲンを有する場合には、一般式(1)中のXはハロゲンであり、付加開裂剤(A2)が一般式(3)中のXとして一般式(4)で示される基を有する場合には、一般式(1)中のXは一般式(4)で示される基である。
【0023】
一般式(1)中、nは2〜500が好ましく、4〜50がより好ましい。
一般式(1)中、RおよびRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基の炭素数は、1〜22が好ましい。
一般式(2)中、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基の炭素数は、1〜22が好ましい。
一般式(3)中、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基の炭素数は、1〜22が好ましい。
一般式(4)中、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基の炭素数は、1〜22が好ましい。
一般式(4)中、nは1〜1000が好ましく、2〜100がより好ましい。
【0024】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)は、その一部に末端二重結合が導入されていないポリフマル酸ジエステルを含んでいても良い。フマル酸エステルマクロモノマー(A)の末端二重結合導入率は高い方が好ましい。末端二重結合導入率は、プロトン核磁気共鳴測定(1H−NMR)とゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から算出される。フマル酸エステルマクロモノマー(A)の末端二重結合導入率は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。フマル酸エステルマクロモノマー(A)の末端二重結合導入率が20モル%以上であれば、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を効率よく得ることができる。
【0025】
<フマル酸ジエステル(A1)>
フマル酸ジエステル(A1)は、一般式(2)で表されるトランス型の不飽和二重結合部位を持つ化合物であり、Rは自由に選択することが可能である。Rの構造としては、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基が挙げられる。Rとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、セトステアリル基、ベヘニル基、オレイル基、シクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、t−ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、テトラヒドロフルフリル基、環状トリメチロールプロパンフォルマル基、アリール基、等が挙げられる。
【0026】
具体的なフマル酸ジエステル(A1)としては、例えば、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn−プロピル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジs−ブチル、フマル酸ジt−ブチル、フマル酸ジペンチル、フマル酸ジn−ヘキシル、フマル酸ジ2−エチルヘキシル、フマル酸ジヘプチル、フマル酸ジオクチル、フマル酸ジノニル、フマル酸ジデシル、フマル酸ジラウリル、フマル酸ジミリスチル、フマル酸ジセチル、フマル酸ジステアリル、フマル酸ジイソステアリル、フマル酸ジセトステアリル、フマル酸ジベヘニル、フマル酸ジオレイル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ジ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、フマル酸ジイソボルニル、フマル酸ジt−ブチルシクロヘキシル、フマル酸ジアダマンチル、フマル酸ジテトラヒドロフルフリル、フマル酸ジ環状トリメチロールプロパンフォルマル、フマル酸ジアリール、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸1−イソプロピル−4−t−ブチル、等が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用しても良い。
【0027】
フマル酸ジエステル(A1)は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)およびフマル酸エステルマクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合体であるフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)に付与したい機能によって適宜選択することができる。例えば、剛直なポリマーを得たい場合は、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ジ−t−ブチル、フマル酸ジアダマンチルを用いることが好ましい。
【0028】
<付加開裂剤(A2)>
付加開裂剤(A2)は、一般式(3)および一般式(4)によって表される化合物を用いることが好ましい。一般式(3)において、Xはハロゲンまたは一般式(4)で表される基である。
【0029】
一般式(3)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。具体的なRとしては、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基が挙げられる。Rとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、セトステアリル基、ベヘニル基、オレイル基、シクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、t−ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、テトラヒドロフルフリル基、環状トリメチロールプロパンフォルマル基、アリール基、等が挙げられる。これらの中でも、付加開裂剤(A2)の反応性や取扱い性の点で、メチル基が好ましい。
【0030】
一般式(3)においてXは、ハロゲンまたは一般式(4)で表される基である。Xがハロゲンである場合の付加開裂剤(A2)を、付加開裂剤(A2−1)と表記する。Xがハロゲンの場合、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、等が挙げられる。これらのハロゲンの中では、付加開裂剤としての効果が得やすい点で臭素を用いることが好ましい。
【0031】
一般式(3)においてXが一般式(4)で表される基である場合の付加開裂剤(A2)を、付加開裂剤(A2−2)と表記する。付加開裂剤(A2−2)において、Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。Zは末端基である。Zとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子およびラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0032】
付加開裂剤(A2−2)は、メタクリレートを含む2量体や3量体、マクロモノマーを含む。一般式(4)において、n=1、Rがメチル基、Rがメチル基、Zが水素原子の場合、付加開裂剤(A2)はメチルメタクリレートの2量体であるメチルメタクリレートダイマーとなる。以後、メチルメタクリレートダイマーをMMADと省略して表す場合がある。
【0033】
付加開裂剤(A2−2)は、公知の方法で製造できる。付加開裂剤(A2−2)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中で、付加開裂剤(A2−2)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数が高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
【0034】
コバルト連鎖移動剤を用いて付加開裂剤(A2−2)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。これらの中で、付加開裂剤(A2−2)が個体となる場合は、回収工程の簡略化の点から水系分散重合法が好ましい。
【0035】
本発明において使用されるコバルト連鎖移動剤としては、一般式(5)に示されるコバルト連鎖移動剤が使用でき、例えば、特許第3587530号公報、特開平6−23209号公報、特開平7−35411号公報、米国特許第45269945号明細書、同第4694054号明細書、同第4834326号明細書、同第4886861号明細書、同第5324879号明細書、国際公開第95/17435号、特表平9−510499号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0036】
【化9】
【0037】
[一般式(5)中のRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基;Yは、それぞれ独立して、F原子、Cl原子、Br原子、OH基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、又はアリール基である。]
【0038】
コバルト連鎖移動剤としては、例えば、ビス(ジメチルグリオキシム)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジメチルジオキシイミノシクロヘキサン)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビシナルイミノヒドロキシイミノ化合物のコバルト(II)錯体、テトラアザテトラアルキルシクロテトラデカテトラエンのコバルト(II)錯体、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)錯体、ジアルキルジアザジオキソジアルキルドデカジエンのコバルト(II)錯体、コバルト(II)ポルフィリン錯体などがあげられる。中でも、水性媒体中に安定に存在し、連鎖移動効果が高いビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)(一般式(5))が好ましい。これらは一種以上を適宜選択して使用することができる。
【0039】
付加開裂剤(A2−2)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
付加開裂剤(A2−2)を得るための原料モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
これらの中で、モノマーの入手のし易さの点で、メタクリレートが好ましい。
メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び4−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
【0041】
付加開裂剤(A2−2)を得るための原料モノマーとしては、得られるフマル酸エステルマクロモノマー(A)、及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)、及びこれらを含有する成形体の耐熱性の点から、上記のメタクリレート又はアクリレートを含有するモノマー組成物が好ましい。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートが挙げられる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレートが好ましい。
【0042】
付加開裂剤(A2−2)を得るためのモノマー組成物中のメタクリレートの含有量としては、得られるフマル酸エステルマクロモノマー(A)、及びフマル酸エステルマクロモノマー(A)とコモノマー(B)とを含む重合性成分をラジカル共重合させて得られるフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)、及びこれらを含有する成形体の耐熱性の点から、80質量%以上100質量%以下が好ましい。メタクリレートの含有量は、82質量%以上99質量%以下がより好ましく、84質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。付加開裂剤(A2−2)を得るためのモノマー組成物中のアクリレートの含有量としては、0質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上18質量%以下がより好ましく、2質量%以上16質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
≪フマル酸エステルマクロモノマー(A)の製造方法≫
フマル酸エステルマクロモノマー(A)は、フマル酸ジエステル(A1)と付加開裂剤(A2)を必須とし、必要に応じて加えられるラジカル重合開始剤を含む混合物を重合反応させることによって得られる。フマル酸ジエステル(A1)と、付加開裂剤(A2)のモル比は、フマル酸ジエステル(A1):付加開裂剤(A2)で表して、100000:1〜2:1が好ましく、10000:1〜10:1がより好ましく、1000:1〜20:1がさらに好ましい。
【0044】
ラジカル重合開始剤は、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)(以下MAIBと略記する場合がある)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(以下ACNと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)(以下ATMPと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)(以下AMPと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、フマル酸ジエステル(A1)とラジカル重合開始剤のモル比は、フマル酸ジエステル(A1):ラジカル重合開始剤で表して、1000000:1〜5:1が好ましく、500000:1〜20:1がより好ましく、100000:1〜50:1がさらに好ましい。
【0046】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)の分子量は、数平均分子量(Mn)で500〜100000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、1500〜6000がさらに好ましい。数平均分子量(Mn)が500以上であればフマル酸エステルマクロモノマー(A)及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)にフマル酸ジエステル(A1)に由来する特性を付与することができる。また、数平均分子量が100000以下であれば、フマル酸エステルマクロモノマー(A)及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の取扱い性が良好である。
なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0047】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)は、その構造の末端に二重結合を有することから、種々の重合性官能基を有するコモノマー(B)と共重合させることが可能である。
【0048】
<コモノマー(B)>
コモノマー(B)は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)と共重合可能であれば特に限定されず、必要に応じて各種の重合性単量体を使用できる。具体的には、フマル酸エステルマクロモノマー(A)との反応性の点でメタクリレート及び/またはアクリレートを用いることが好ましい。
【0049】
コモノマー(B)として用いるアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等のアクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールアクリレート等の水酸基含有アクリレート;アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシプロピルコハク酸等のカルボキシ基含有アクリレート;グリジシルアクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート等のエポキシ基含有アクリレート;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有アクリレート;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルアクリレート等の多官能アクリレート;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0050】
上記の中で、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0051】
本発明の一つの側面において、柔軟性や耐衝撃性、粘着性の付与を目的に、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することができる。また、屈折率調整のための高屈成分として、例えば、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートを使用することができる。
【0052】
コモノマー(B)として用いるメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等のメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート等の水酸基含有メタクリレート;メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸等のカルボキシ基含メタクリレート;グリジシルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能メタクリレート;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0053】
上記の中で、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0054】
コモノマー(B)として用いることができるその他のモノマーとしては、例えば、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0055】
フマル酸エステルマクロモノマー(A)が含むフマル酸ジエステル(A1)単量体単位とコモノマー(B)のモル比は、フマル酸ジエステル(A1)単量体単位:コモノマー(B)単量体単位で表して、1:99〜99:1が好ましく、5:95:95:5がより好ましく、20:80〜80:20がさらに好ましい。
フマル酸エステルマクロモノマー(A)が少なすぎると、フマル酸エステルマクロモノマー(A)を含まずにコモノマー(B)のみからなるポリマーが生成する場合がある。逆に、フマル酸エステルマクロモノマー(A)が多すぎると、未反応のフマル酸エステルマクロモノマー(A)が多量に残る原因となる場合がある。
【0056】
≪フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)≫
フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)とコモノマー(B)を必須成分とし、必要に応じて加えられる重合開始剤を含む混合物を重合反応させて得られる。フマル酸ジエステル系マクロモノマー共重合体(F)は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)に由来する単位と、コモノマー(B)に由来する単位を有する。
【0057】
フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)は、耐熱性やフレキシブル性、透明性などに優れることから、各種成形材料及び成形体としての用途に適している。
【0058】
≪フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の製造方法≫
フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の製造方法は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)およびコモノマー(B)からなる重合性成分を重合反応させる工程を有する。重合反応させる方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の種々の方法を用いることができる。懸濁重合や乳化重合のような水系重合であれば重合発熱の制御が容易で回収操作がより簡便となるため生産性が高い点で好ましく、溶液重合であれば反応溶液の均一性が重合後期まで保たれた状態で反応させることが可能である。
【0059】
重合の際には、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤として、メルカプタン類、水素、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等を添加しても良い。
【0060】
ラジカル重合開始剤の存在下で重合する場合には、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)(以下MAIBと略記する場合がある)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(以下ACNと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)(以下ATMPと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)(以下AMPと略記する場合がある)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
ラジカル重合開始剤の使用量は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)が含むフマル酸ジエステル(A1)単量体単位のモル数とコモノマー(B)のモル数の合計モル数に対するモル比で、1000000:1〜5:1が好ましく、500000:1〜20:1がより好ましく、100000:1〜50:1がさらに好ましい。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0062】
≪フマル酸エステルマクロモノマー(A)を含む樹脂組成物≫
フマル酸エステルマクロモノマー(A)を含む樹脂組成物には、フマル酸エステルマクロモノマー(A)を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、該樹脂組成物は、フマル酸エステルマクロモノマー(A)以外の他の樹脂を含むものでもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
フマル酸エステルマクロモノマー(A)とその他の樹脂を混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等の物理的混合方法及び押出機等の溶融混合法が挙げられる。
該樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の各種安定剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤;及び無機充填剤、滑材、離型剤、可塑剤、有機過酸化物、中和剤、架橋剤等が挙げられる。これらの添加剤の割合としては、樹脂組成物の総重量に対して、0〜20質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0063】
≪フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を含む樹脂組成物≫
フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を含む樹脂組成物には、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、該樹脂組成物は、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)以外の他の樹脂を含むものでもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)とその他の樹脂を混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等の物理的混合方法及び押出機等の溶融混合法が挙げられる。
該樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の各種安定剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤;及び無機充填剤、滑材、離型剤、可塑剤、有機過酸化物、中和剤、架橋剤等が挙げられる。これらの添加剤の割合としては、樹脂組成物の総重量に対して、0〜20質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0064】
≪成形体≫
本発明の成形体は、前記フマル酸エステルマクロモノマー(A)を含む樹脂組成物、又はフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を含む樹脂組成物を成形して得られる。
成形体の形状としては、例えば、シート状及び3次元形状が挙げられる。成形体を得るための成形方法としては、キャスト成形法や溶融成形法が好ましく、例えば射出成形法、圧縮成形法、中空成形法、押出成形法、回転成形法、流延法、及び溶剤キャスト成形法が挙げられる。
【0065】
成形体としては、例えば、光学フィルム、光学素子基板、レンズ、反射防止物品(反射防止フィルム、反射防止膜など)、光導波路、レリーフホログラム、偏光分離素子、レンズシート、導光板、ライトガイド、光表示物品、メーターカバー、等の光学物品としての応用展開が期待できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の例によって制限されるものではない。
【0067】
(a)重合体の解析
フマル酸ジエステル(A1)、付加開裂剤(A2)、フマル酸エステルマクロモノマー(A)、及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の反応転化率と組成は、核磁気共鳴測定装置(Bruker Avance 300)を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて、1H−NMR測定(プロトン核磁気共鳴測定)を行い、スペクトル分析より求めた。
【0068】
(b)数平均分子量(Mn)の測定
フマル酸エステルマクロモノマー(A)及びフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名CCPD RE−8020)を使用し、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0069】
(c)フマル酸エステルマクロモノマー(A)の末端二重結合導入率の算出
フマル酸エステルマクロモノマー(A)の末端二重結合導入率は、1H−NMR測定から求めた末端二重結合量とGPC測定から求めた数平均分子量(Mn)の結果から算出した。
【0070】
(d)キャストフィルムの作製
ポリマー成分が20質量%の1,2−ジクロロエタン溶液を調製した。SUS板表面にテフロン(登録商標)シールを貼り付け、テフロンシール上にマイクロピペットを用いてポリマー溶液を200μL滴下した。室温常圧で一晩乾燥させた後、室温真空下で二晩乾燥させ、テフロンシール上から剥がしてキャストフィルムを得た。
【0071】
今回用いた試薬の略号一覧を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
<製造例1:MMADの合成>
付加開裂剤(A2−2)であるメチルメタクリレートダイマー(MMAD)は、文献(J. Polym.Sci.: Part A: Polym.Chem.,31,3417−3424(1993))に記載の方法で合成した。
【0074】
<製造例2:MBMAの合成>
付加開裂剤(A2−1)である2−ブロモメチルアクリル酸メチル(MBMA)は、文献(Synthesis,11,924,(1982))に記載の方法で合成した。
【0075】
<実施例1>
付加開裂剤(A2−1)として製造例2で合成したMBMAを用いて、フマル酸エステルマクロモノマー(A)を合成した。フマル酸ジエステル(A1)はDiPF(和光純薬工業社製)、付加開裂剤(A2)はMBMA、重合開始剤はMAIBを使用した。MBMAが反応溶液中に4.7mmol/L、MAIBが溶液中に3.91mmol/Lとなる仕込比で反応溶液を調製後、パイレックス(登録商標)製のアンプルに仕込み、凍結、脱気、融解を3回繰り返し、溶存酸素を除去した後、溶封して封管した。次いで封管したアンプルを80℃で4時間保持した後、ドライアイス/メタノール寒剤で冷却し、重合を停止させた。封管を開封し、ジクロロメタンで希釈した反応溶液を約20倍量のメタノール/水(容積比 4/1)で再沈殿を行い精製した。結果を表2に示す。
【0076】
<実施例2〜3>
重合開始剤の種類と仕込比、反応温度と重合時間を表2に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
<実施例4〜7>
付加開裂剤(A2−2)として、合成例1で合成したMMADを用いてフマル酸エステルマクロモノマー(A)を合成した。フマル酸ジエステル(A1)はDiPF(和光純薬工業社製)、付加開裂剤(A2)はMMAD、重合開始剤はAMPを使用した。MMADが反応溶液中に94.0mmol/L、AMPが溶液中に4.69mmol/Lとなる仕込比で反応溶液を調製後、パイレックス(登録商標)製のアンプルに仕込み、凍結、脱気、融解を3回繰り返し、溶存酸素を除去した後、溶封して封管した。次いで封管したアンプルを148℃で表3に記載の時間保持した後、ドライアイス/メタノール寒剤で冷却し、重合を停止させた。封管を開封し、ジクロロメタンで希釈した反応溶液を約20倍量のメタノール/水(容積比 4/1)で再沈殿を行い精製した。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
<実施例8>
フマル酸エステルマクロモノマー(A)とコモノマー(B)を使用し、フマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を合成した。用いたフマル酸エステルマクロモノマー(A)は、単量体単位がDiPF、数平均分子量(Mn)5,900、末端二重結合導入率が57%であった。コモノマー(B)はEA、重合開始剤はAIBNを用いた。フマル酸エステルマクロモノマー(A)、コモノマー(B)、重合開始剤のモル比が50:50:1となるように反応溶液を調製し、パイレックス(登録商標)製のアンプルに仕込み、凍結、脱気、融解を3回繰り返し、溶存酸素を除去した後、溶封して封管した。封管したアンプルを65℃のオイルバスに浸漬して48時間保持した後、ドライアイス/メタノール寒剤で冷却し、重合を停止させた。封管を開封し、ジクロロメタンで希釈した反応溶液を約20倍量の溶媒(ヘキサン/アセトン(容積比 9:1))を使用して再沈殿を行い精製した。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
再沈殿にヘキサン/アセトン(容積比 9/1)を使用したことから、精製したフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)から、ポリフマル酸ジイソプロピルが除去されている。精製前後のフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を1H−NMRとGPCによって解析したところ、末端二重結合を有するフマル酸エステルマクロモノマーがほぼ100%共重合体中に取り込まれていることが分かった。この結果から、フマル酸エステルマクロモノマー(A)はコモノマー(B)と優れた共重合性を有し、効率よくグラフト体を含むフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を合成できることが分かった。
【0083】
さらに、実施例8で合成・精製したフマル酸エステルマクロモノマー共重合体(F)を、前述の方法でキャストフィルムを作製して評価を実施した。得られたキャストフィルムは、約110μmであり、可視光領域(波長380nm〜780nm)で95%以上の透過率を有し、波長700nmでの透過率が99%であった。また、キャストフィルムは折り曲げ可能であり、優れた柔軟性を持つことが分かった。
【0084】
<比較例1>
比較例1では付加開裂剤(A2)を使用せず、ポリフマル酸ジエステルを合成した。フマル酸ジエステル(A1)はDiPF、重合開始剤はMAIBを使用した。MAIBが溶液中に3.91mmol/Lとなる仕込比で反応溶液を調製後、パイレックス(登録商標)製のアンプルに仕込み、凍結、脱気、融解を3回繰り返し、溶存酸素を除去した後、溶封して封管した。次いで封管したアンプルを80℃で7時間保持した後、ドライアイス/メタノール寒剤で冷却し、重合を停止させた。封管を開封し、ジクロロメタンで希釈した反応溶液を約20倍量のメタノール/水(容積比 4/1)で再沈殿を行い精製した。結果を表5に示す。反応転化率は47.6%であり、得られたポリフマル酸ジエステルの数平均分子量(Mn)は、55,200であった。また、前述の方法でキャストフィルムを作製したところ、折り曲げようとした時に容易に割れてしまい、柔軟性が無く脆いことが分かった。
【0085】
【表5】