(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品と支持部材とが接続部を介して電気的に接続された電子部品装置の接続部を封止するために用いられ、前記電子部品と前記支持部材との隙間に充填される、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のアンダーフィル材用樹脂組成物。
支持部材と電子部品とが接続部を介して電気的に接続された電子部品装置の製造方法であって、前記接続部の少なくとも一部を、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のアンダーフィル材用樹脂組成物を用いて封止する工程を備える、電子部品装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書において「常温で液体」とは25℃で流動性を示す状態であることを意味する。さらに本明細書において「液体」とは流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が25℃において0.0001〜100Pa・sである物質を意味する。
【0013】
本明細書において粘度とは、EHD型回転粘度計を25℃で1分間、所定の回毎分10rpmで回転させた時の測定値に、所定の換算係数を乗じた値と定義する。上記測定値は、25±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEHD型回転粘度計を用いて得られる。前記回毎分及び換算係数は、測定対象の液体の粘度によって異なる。具体的には、測定対象の液体の粘度を予め大まかに推定し、推定値に応じて回毎分及び換算係数を決定する。
【0014】
本明細書では、測定対象の液体の粘度の推定値が0〜1.25Pa・sの場合は回毎分を1rpm、換算係数を5.0とし、粘度の推定値が1.25〜2.5Pa・sの場合は回毎分を2.5rpm、換算係数を2.0とし、粘度の推定値が2.5〜6.25Pa・sの場合は回毎分を5rpm、換算係数を1.0とし、粘度の推定値が6.25〜12.5Pa・sの場合は回毎分を10rpm、換算係数を0.5とし、粘度の推定値が6.25〜12.5Pa・sの場合は回毎分を20rpm、換算係数を0.25とする。
【0015】
<アンダーフィル材用樹脂組成物>
以下、本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物について説明する。
【0016】
(A)エポキシ樹脂
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。前記エポキシ樹脂(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、アンダーフィル材用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。本発明で用いる(A)成分のエポキシ樹脂としては、常温で液状であることが好ましく、アンダーフィル材用樹脂組成物で一般に使用されている液状エポキシ樹脂を用いることができる。
本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、p―アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、流動性の観点からは液状ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
上記した2種のエポキシ樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するために液状エポキシ樹脂全量に対して合わせて20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上とすることが更に好ましい。
【0018】
また、本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を併用することもできるが、成形時の流動性の観点から併用する固形エポキシ樹脂はエポキシ樹脂全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。さらに、これらのエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、ICなど素子上のアルミ配線腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れたアンダーフィル材用樹脂組成物を得るためには500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N−KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間リフラックス後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0019】
(B)硬化剤
本発明で用いる硬化剤(B)は、1分子中に第1級アミン又は、第2級アミンを2個以上含む化合物であることが好ましい。特には制限されないが常温で液状であることがより好ましい。その中でも、常温で液状の芳香環を有するアミンを含むことがさらに好ましい。これらを例示すればジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3´,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。これらの液状芳香族アミン化合物は、例えば、市販品として、エピキュア−W、エピキュア−Z(三菱化学株式会社製、商品名)、カヤハードA−A、カヤハードA−B、カヤハードA−S(日本化薬株式会社製、商品名)、トートアミンHM−205(新日鐵住金株式会社製、商品名)、アデカハードナーEH−101(株式会社ADEKA製、商品名)、エポミックQ−640、エポミックQ−643(三井化学株式会社製、商品名)、DETDA80(Lonza社製、商品名)等が入手可能で、これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
硬化剤に含まれる液状芳香族アミンとしては、保存安定性の観点からは、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンが好ましく、硬化剤はこれらのいずれか又はこれらの混合物を主成分とすることが好ましい。ジエチルトルエンジアミンとしては、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンが挙げられ、これらを単独で用いても混合物を用いてもよいが、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンを50質量%以上含むものが好ましい。
【0021】
また、本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であれば(B)成分の硬化剤は、液状芳香族アミンを含む硬化剤以外に、フェノール性硬化剤、酸無水物等のアンダーフィル材用樹脂組成物で一般に使用されている硬化剤を併用することができ、固形硬化剤も併用することもできる。
【0022】
他の硬化剤を併用する場合、(B)成分の硬化剤における液状芳香族アミンの配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して50質量%以上とすることが好ましい。(A)成分を含むエポキシ樹脂と(B)成分を含む硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂1当量に対して硬化剤を0.7当量以上、1.6当量以下の範囲に設定することが好ましく、0.8当量以上、1.4当量以下がより好ましく、0.9当量以上、1.2当量以下が更に好ましい。
【0023】
(C)シリコーン化合物
本発明に用いられる(C)成分のシリコーン化合物は、芳香環を有する基を含有していれば特に制限はなく、例えば、フェニル基系、アラルキル基系、ビニル基系、スチリル基系のシリコーン化合物が挙げられ、なかでもフェニル基含有のシリコーン化合物及び、アラルキル基含有のシリコーン化合物は、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動中における流動先端の乱れを低減することができ、耐ボイド性もある。
本発明で用いられる(C)成分のシリコーン化合物は、下記一般式(1)の化合物を含有する。
【0024】
【化2】
(一般式(1)中、R
1〜R
10は少なくとも1つが末端に芳香環を有する基であり、その他は炭化水素基である。m、nは正の整数である。)
一般式(1)として、R
1〜R
10は少なくとも1つが末端に芳香環を有する基であり、その他は炭化水素基である。例えば、R
4とR
8がフェニル基であり、R
1〜R
3、R
5〜R
7、R
9〜R
10がメチル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、R
8が、アラルキル基であり、R
1〜R
7、R
9〜R
10がメチル基である非反応性シリコンオイルが挙げられる。
少なくとも1つが末端に芳香環を有する基は、フェニル基、アラルキル基である。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。m、nは、その値が大きいほど、化合物の粘度が高くなる。
これらの化合物は、例えば、市販品としてKF−50−3000CS、KF−50−100CS、KF−50−300CS、KF−50−1000CS、KF−53、KF−54、X−21−3265、KF−54SS(以上フェニル変性)、KF−410(アラルキル変性)(信越化学工業株式会社製、商品名)、BYK−322、BYK−323(アラルキル変性)(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)、等が入手可能である。
【0025】
(D)無機充填材
本発明で充填材として用いる(D)成分の無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも溶融シリカが好ましく、アンダーフィル材用樹脂組成物の微細間隙への流動性・浸透性の観点からは球形シリカがより好ましい。
【0026】
無機充填材の平均粒径は、特に球形シリカの場合、0.3μm以上、10μm以下の範囲が好ましく、平均粒径0.5μm以上、5μm以下の範囲がより好ましい。平均粒径が0.3μmを超える範囲では液状樹脂への分散性が向上し、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動特性が向上する傾向があり、10μm以下であるるとフィラ沈降を抑制しやすくなる傾向や、アンダーフィル材用樹脂組成物としての微細間隙への浸透性・流動性が向上してボイドや未充填を抑制できる傾向がある。
ここで、平均粒径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
無機充填材の配合量は、アンダーフィル材用樹脂組成物全体の55質量%以上、80質量%以下の範囲に設定され、より好ましくは58質量%以上、75質量%以下、更に好ましくは60質量%以上、65質量%以下である。配合量が55質量%を超える範囲では熱膨張係数の低減が期待でき、80質量%以下であるとアンダーフィル材用樹脂組成物の粘度が低減し、流動性・浸透性およびディスペンス性の向上が可能である。
【0027】
(可撓剤)
本発明では耐熱衝撃性向上、半導体素子への応力低減などの観点から各種可撓剤を配合することができる。可撓剤としては、特に制限は無いがゴム粒子が好ましく、それらを例示すればスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等のゴム粒子が挙げられる。なかでも耐熱性、耐湿性の観点からアクリルゴムからなるゴ粒子が好ましく、コアシェル型アクリル系重合体、すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい。
【0028】
また、上記以外のゴム粒子としてシリコーンゴム粒子も好適に用いることができ、それらを例示すれば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、乳化重合等で得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂などの有機重合体のシェルからなるコア−シェル重合体粒子等が挙げられる。これらのシリコーン重合体粒子の形状は無定形であっても球形であっても使用することができるが、アンダーフィル材用樹脂組成物の成形性に関わる粘度を低く抑えるためには球形のものを用いることが好ましい。これらのシリコーン重合体粒子は東レ・ダウコーニング株式会社、信越化学工業株式会社等から市販品が入手可能である。
【0029】
これらのゴム粒子の一次粒径は組成物を均一に変性するためには細かい方が良好であり、平均1次粒子径が0.05μm以上、10μm以下の範囲であることが好ましく、0.1μm以上、5μm以下の範囲であることがより好ましい。平均粒径が0.05μm以上では液状エポキシ樹脂組成物への分散性が向上する傾向があり、10μm未満であると低応力化改善効果が向上する傾向や、アンダーフィル材用樹脂組成物としての微細間隙への浸透性・流動性が向上しボイドや未充填を抑制可能となる。
【0030】
これらのゴム粒子の配合量は、無機充填材を除くアンダーフィル材用樹脂組成物全体の1質量%以上、30質量%以下の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは2質量%以上、20質量%以下である。ゴム粒子の配合量が1質量%以上では低応力効果が大きくなる傾向があり、30質量%未満であると、アンダーフィル材用樹脂組成物の粘度が低減し成形性(流動特性)が向上する傾向がある。
【0031】
(カップリング剤)
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には必要に応じて、樹脂と無機充填材或いは樹脂と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする目的でカップリング剤を使用することができる。これらのカップリング剤には特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アンダーフィル材用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、その量は特に制限されない。例えば、必要に応じて含まれる無機充填材100質量%に対して0.01〜2.0質量%であることが好ましく、0.1〜1.6質量%であることがより好ましい。カップリング剤の配合量が無機充填材100質量%に対して0.01質量%以上であると発明の効果が十分発現され、2.0質量%以下であると成形性が向上する。
【0033】
(硬化促進剤)
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には、必要に応じて(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の硬化剤との反応を促進する硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤には特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、これらを例示すれば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2´−メチルイミダゾリル−(1´))−エチル−s−トリアジン、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、及びこれらの誘導体などが挙げられ、さらには2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温固体のエポキシ化合物のシェルを被覆してなるコア−シェル粒子が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社製、商品名)や、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたノバキュア(旭化成ケミカルズ製、商品名)などが使用できる。
【0034】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1質量%以上、40質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、20質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上、10質量%以下が更に好ましい。0.1質量%以上では低温での硬化性が良好であり、40質量%未満であると硬化速度の制御が可能になり、ポットライフ、シェルライフ等の保存安定性が向上する。
【0035】
(イオントラップ剤)
また、本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には、必要に応じて下記組成式(I)、(II)で表されるイオントラップ剤をIC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から含有することができる。
【0036】
【化3】
(組成式(I)中、0<X≦0.5、mは正の数)
【0037】
【化4】
(組成式(II)中、0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
【0038】
これらイオントラップ剤の添加量としては0.1質量%以上、3.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以上、1.5質量%以下である。イオントラップ剤の平均粒径は0.1μm以上、3.0μm以下が好ましく、最大粒径は10μm以下が好ましい。なお、上記組成式(I)の化合物は市販品として協和化学工業株式会社製、商品名DHT−4Aとして入手可能である。また、上記組成式(II)の化合物は市販品としてIXE500(東亞合成株式会社製、商品名)として入手可能である。また必要に応じてその他の陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて配合することができる。
【0040】
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0041】
[粘度]
前記アンダーフィル材用樹脂組成物は、EHD型回転粘度計を用いた25℃における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度が1000Pa・sを超えると、近年の電子部品の小型化、半導体素子の接続端子のファインピッチ化、配線基板の微細配線化に対応可能な流動性及び浸透性を確保できない場合がある。前記粘度は1000Pa・s以下であることが好ましく、500Pa・s以下であることがより好ましい。前記粘度の下限に特に制限はないが、実装性の観点から0.1Pa・s以上であることが好ましく、1Pa・s以上であることがより好ましい。
【0042】
前記粘度は封止や接着の対象となる電子部品及び電子部品装置の種類に応じて、上記で例示した各成分の種類や含有量を制御することによって適宜調整が可能である。
【0043】
本発明で得られるアンダーフィル材用樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコーンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの素子を搭載し、必要な部分を本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。特にリジッド及びフレキシブル配線板やガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置が対象となる。具体的な例としてはフリップチップBGA/LGAやCOF(Chip On Film)等の半導体装置が挙げられ、本発明で得られるアンダーフィル材用樹脂組成物は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材用樹脂組成物として好適である。本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物が特に好適なフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプ材質が従来の鉛含有はんだではなく、Sn−Ag−Cu系などの鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品であり、従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだバンプ接続をしたフリップチップに対しても良好な信頼性を維持できる。
【0044】
さらには、半導体素子のサイズが長い方の辺で2mm以上である素子に対して好適であり、電子部品を構成する配線基板と半導体素子のバンプ接続面の距離が200μm以下であるフリップチップ接続に対しても良好な流動性と充填性を示し、耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性にも優れた半導体装置を提供することができる。また、近年半導体素子の高速化に伴い低誘電率の層間絶縁膜が半導体素子に形成されているが、これら低誘電絶縁体は機械強度が弱く、外部からの応力で破壊する故障が発生し易い。この傾向は素子が大きくなる程顕著になり、アンダーフィル材用樹脂組成物からの応力低減が求められており、半導体素子のサイズが長い方の辺で2mm以上であり、誘電率3.0以下の誘電体層を有する半導体素子を搭載するフリップチップ半導体装置に対しても優れた信頼性を提供できる。
【0045】
本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例および比較例において行った特性試験の試験方法を以下にまとめて示す。なお、使用したアンダーフィル材用樹脂組成物の特性及び、ボイドの評価は以下の方法及び条件で行った。
【0048】
評価に用いた半導体装置は、簡易的な冶具を作製して評価を行った。まず、20×30mmのガラス片(下部)と20mm×20mmのガラス片(上部)の間にポリイミドからなるスペーサー(厚み、25μm)を挟み込み、上部と下部のガラスをクリップで両端を挟み簡易冶具を作製した。
【0049】
半導体装置は、本発明のアンダーフィル材用樹脂組成物をディスペンス方式で塗布し、165℃で2時間硬化することで作製した。また、各種試験片の硬化条件も同様な条件で行った。
【0050】
作製した実施例1〜8及び比較例1〜4のアンダーフィル材用樹脂組成物を次の各試験により評価した。評価結果を下記表2に示した。また、流動先端のみだれ及び硬化後のボイドの観察結果を、
図1〜3に示した。
(1)粘度
各実施例、比較例のアンダーフィル材用樹脂組成物について、110℃での粘度をレオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社(TA instruments社)製、商品名「AR2000」)用いて測定した。測定結果を表2に示した。
(2)流動先端のみだれ及び硬化後のボイドの観察
アンダーフィル材用樹脂組成物をアンダーフィルして作製した簡易治具(半導体装置)の表面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製)で観察し、流動先端のみだれと硬化後のボイドの有無を調べた。流動先端にみだれがないものを「○」、流動先端にみだれがあるものを「×」として評価した。硬化後にボイドが観察されないものを「○」、ボイドが観察されたものを「×」として評価し、結果をまとめて表2に示した。
また、流動先端のみだれと硬化後のボイドの写真を
図1〜3に示した。
図1〜3の流動先端の観察結果に示した矢印は、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動方向を示す。また、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動先端を太線で示した。
【0051】
(実施例1〜8、比較例1〜4)
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:液状エポキシ樹脂としてビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160g/eqの液状ジエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「YDF−8170C」)
エポキシ樹脂2:アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95g/eqの3官能液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「JER630」)
【0052】
(B)硬化剤
硬化剤1:活性水素当量45g/eqのジエチルトルエンジアミン(株式会社ADEKA製、商品名「エピキュアW」)
硬化剤2:活性水素当量63g/eqの4,4´−ジアミノ−3,3´−ジエチルジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名「カヤハードA−A」)
【0053】
(C)シリコーン化合物
シリコーン化合物1:信越化学工業株式会社製「KF−50−3000cs」、一般式(1)のメチルフェニルシリコーン化合物
シリコーン化合物2:ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−322」、一般式(1)のアラルキル変性シリコーン化合物
シリコーン化合物3:ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−323」、一般式(1)のアラルキル変性シリコーン化合物
シリコーン化合物4:信越化学工業株式会社製「KF−410」、一般式(1)の側鎖アラルキル変性シリコーン化合物
シリコーン化合物5:ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−307」、ポリエーテル変性シリコーン化合物
シリコーン化合物6:信越化学工業株式会社製「KF−3935」、高級脂肪酸アミド変性化合物
【0054】
(D)無機充填材
無機充填材1:平均粒径0.5μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマッテクス製「SE−2200」)
ゴム成分:末端カルボン酸系変性NBRゴム粒子(JSR株式会社製、JSR−91、平均粒子径約70nm)
硬化促進剤:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2E4MZ」)
イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社製、商品名「IXE−500」)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA−100」)
カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−403」)
上記の成分をそれぞれ表1に示した組成で配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散した後、実施例1〜8及び比較例1〜4のアンダーフィル材用樹脂組成物を作製した。なお、表1中の配合単位は質量部であり、また「−」は配合無しを表す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
本発明におけるシリコーン化合物を含んだアンダーフィル材用樹脂組成物を用いることによって(実施例1及び5)、比較例1と比較して、高充填性を発現した。比較例1は成分(C)を含んでおらず、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動先端が大きく乱れ、ボイドを巻き込みながら進んだため、硬化後にボイドが観察された。比較例2では、粘度が大きく上昇したため、充填自体が困難であり、またシリカ充填量が多いのでシリコーン化合物による界面活性剤の効果が薄くなってしまい、アンダーフィル材用樹脂組成物の流動先端が大きく乱れる。その結果、ボイドを巻き込みながら進み、硬化後にボイドが観察された。また、比較例3、4と比較して、実施例1〜8は、高流動性を発現した。比較例3のポリエーテル変性化合物では、硬化後観察を行うと、巻き込みボイドが多く発現し、流動性を大きく悪化させた。また比較例4の高級脂肪酸アミド変性化合物では、硬化後観察を行うと、巻き込みボイドが多く発現し、流動性を大きく悪化させた。
これは、少なくとも1つが末端に芳香環を有するシリコーン化合物が流動の先端に集まり、アンダーフィル材用樹脂組成物の含浸する基板の濡れ性を改善する事によって、流動先端の乱れを抑制することができるためと考えられる。
実施例1〜8で使用したシリコーン化合物の少なくとも1つが末端に芳香環を有する基であるフェニル基、アラルキル基に比べ、比較例5で使用したシリコーン化合物の末端に芳香環を有しないポリエーテル変性化合物や比較例6の高級脂肪酸アミド変性化合物では、基板―アンダーフィル材用樹脂組成物間の濡れ性を改善することができなかったと考える。
【0058】
本発明におけるシリコーン化合物を含んだアンダーフィル材用樹脂組成物を用いることによって、従来よりも充填材の配合量を多くでき、かつ流動特性を向上することができる。
このことから、本発明によれば電子部品パッケージの薄膜化に対応した封止用液状エポキシ樹脂組成物を作製可能であることが分かる。