(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの概要について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同ヘッドの
図3のA−A線に沿うノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、
図2は
図1のB−B線に沿うノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図、
図3は同ヘッドの板状部材2Bを最上面とする平面説明図である。
【0011】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての薄膜部材からなる振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材としてのフレーム部材20とを備えている。
【0012】
流路板2は、液体を吐出する複数のノズル4が通じる個別液室6、流体抵抗部7、液導入部8を形成する。
【0013】
そして、フレーム部材20の共通液室10から振動板部材3に形成した開口部9を通じて液導入部8に液体が導入され、液導入部8から流体抵抗部7を経て個別液室6に液体が供給される。なお、開口部9にはフィルタが設けられても良い。
【0014】
ここで、ノズル板1は、ノズル基材となるSUS基板にプレス加工でノズル4となるノズル孔を形成している。ノズル板1の吐出側面には撥液膜が設けられている。
【0015】
流路板2は、厚み方向に積み重なった複数枚(ここでは、3枚とする)の板状部材2A、2B,2Cで構成している。
【0016】
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成し、第1層3A、第2層3Bの2層構造(1層又は3層以上でもよい。)としている。そして、流路板2側の第1層3Aで個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域(振動板)30を形成している。
【0017】
この振動板部材3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造したものを用いている。これに限らず、その他の金属部材や樹脂と金属の複層部材を用いることができる。
【0018】
そして、この振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0019】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接着剤接合した積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して所要数の柱状の圧電素子(圧電柱)12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0020】
圧電部材12の圧電素子12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電素子12Aと、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電素子12Bとしている。
【0021】
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
【0022】
この圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、圧電素子12Aの外部電極に駆動信号を与えるための可撓性を有するフレキシブル配線部材としてのFPC15が接続されている。
【0023】
フレーム部材20は、例えばエポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成し、ヘッドタンクや液体カートリッジから供給口19を介して液体が供給される共通液室10が形成されている。
【0024】
この液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子12Aに印加する電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が面外に引かれて個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
【0025】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させる。これにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出(噴射)される。
【0026】
そして、圧電素子12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域30が初期位置に復元し、個別液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
【0027】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は同実施形態に係るヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図、
図5は同ヘッドの流体抵抗部を構成する板状部材の異なる例の平面説明図である。
【0029】
本実施形態では、流路板2は2枚の板状部材22A、22Bで構成している。流体抵抗部7は、積み重なった、板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する2枚の板状部材22A、22Bとで構成される。
【0030】
ここで、流体抵抗部7の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Aによって規定されている。
【0031】
すなわち、板状部材22Aには、
図5に示すように、個別液室6を形成する貫通穴部26(26a、26b)、流体抵抗部7を形成する貫通穴部27(27a、27b)、液導入部8を形成する貫通穴部28(28a、28b)が設けられている。
【0032】
ここで、
図5(a)に示す板状部材22A1は、流体抵抗部7の流体抵抗値を規定する流路幅(ノズル配列方向と直交する方向の幅)wが幅W1の貫通穴部27aとしている。一方、
図5(b)に示す板状部材22A2は、流体抵抗部7の流体抵抗値を規定する流路幅wが幅W2(W1<W2)の貫通穴部27bとしている。
【0033】
流体抵抗値は、流路の形状と液体の粘度によって、次の(1)式で求められる。
【0035】
ただし、μ:粘度、l:流路長さ、h:流路高さ、w:流路幅、である。
【0036】
したがって、流体抵抗部7の流路幅wが広くなる板状部材22A2の方が板状部材22A1を使用するときよりも流体抵抗値が小さくなる。
【0037】
そこで、例えば粘度の高い液体を吐出させるヘッドを構成する場合には、板状部材22Aとして板状部材22A2を使用し、粘度の低い液体を吐出させるヘッドを構成する場合には、板状部材22Aとして板状部材22A1を使用する。
【0038】
このように、流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は同実施形態に係るヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図、
図7は同ヘッドの流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図である。
【0040】
本実施形態では、流路板2は3枚の板状部材22A、22B、22Cで構成している。流体抵抗部7は、積み重なった、板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する2枚の板状部材22A、22Bで構成される。
【0041】
そして、流体抵抗部7の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Bによって規定されている。
【0042】
すなわち、
図7(a)に示すように、板状部材22Aには、個別液室6を形成する貫通穴部26a、流体抵抗部7を形成する貫通穴部27a及び液導入部8を形成する貫通穴部28aを含む同じ幅の1つの貫通穴が設けられている。
【0043】
一方、
図7(b)に示すように、板状部材22Bには、個別液室6を形成する貫通穴部26b及び液導入部8を形成する貫通穴部28bがノズル配列方向と直交する方向の間隔L1で設けられている。
【0044】
このとき、板状部材22Bの貫通穴部26bと貫通穴部28bとの間隔L1が流体抵抗部7の流路長さlになるので、流体抵抗部7の流体抵抗値は1枚の板状部材22Bによって規定されることになる。
【0045】
そこで、例えば、貫通穴部28bの長さG1が異なることで間隔L1が異なる板状部材22Bを使用することで、流体抵抗部7の流体抵抗値を変化させることができる。
【0046】
これにより、流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態について
図8ないし
図11を参照して説明する。
図8は同実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図9は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図、
図10は同ヘッドの流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図、
図11は同ヘッドの循環流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図である。なお、前記第1実施形態と対応する部分には同一符号を付して説明を省略ないし簡略化する。
【0048】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域30を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材としてのフレーム部材20と、カバー21とを備えている。
【0049】
そして、
図9に示すように、流路板2には、ノズル板1側に、ノズル4と個別液室6を通じているノズル通路5に、循環流体抵抗部42を介して通じる循環流路43が形成されている。循環流路43は、面直方向に形成された通路44を通じて、フレーム部材20に形成された循環共通液室45に通じている。
【0050】
また、フレーム部材20には、
図8に示すように、共通液室10に通じる供給ポート23と、循環共通液室45に通じる循環ポート(排出ポート)46がそれぞれ設けられている。
【0051】
本実施形態では、流路板2は5枚の板状部材22D、22E,22F,22G,22Hで構成している。流体抵抗部7は、積み重なった、板状部材である流路板2を構成する3枚の板状部材22F、22G、22Hで構成される。循環流体抵抗部42は、積み重なった、板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する2枚の板状部材22D、22Eとで構成される。
【0052】
そして、流体抵抗部7の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Gによって規定されている。
【0053】
すなわち、板状部材22Gには、
図10に示すように、個別液室6を形成する貫通穴部26(26a、26b)、流体抵抗部7を形成する貫通穴部27(27a、27b)、液導入部8を形成する貫通穴部28(28a、28b)、通路44を形成する貫通穴部144(144a、144b)が設けられている。
【0054】
ここで、
図10(a)に示す板状部材22G1は、流体抵抗部7の流体抵抗値を規定する流路幅(ノズル配列方向と直交する方向の幅)wが幅W1の貫通穴部27aとしている。一方、
図10(b)に示す板状部材22G2は、流体抵抗部7の流体抵抗値を規定する流路幅wが幅W2(W1<W2)の貫通穴部27bとしている。
【0055】
したがって、流体抵抗部7の流路幅wが大きくなる板状部材22G2の方が板状部材22G1を使用するときよりも流体抵抗値が小さくなる。
【0056】
したがって、流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0057】
また、循環流体抵抗部42の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Dによって規定されている。
【0058】
すなわち、板状部材22Dには、
図11に示すように、ノズル通路5を形成する貫通穴部25(25a、25b)、循環流体抵抗部42を形成する貫通穴部142(142a、142b)、循環流路43を形成する貫通穴部143(143a、143b)が設けられている。
【0059】
ここで、
図11(a)に示す板状部材22D1は、循環流体抵抗部42の流体抵抗値を規定する流路幅(ノズル配列方向と直交する方向の幅)wが幅W3の貫通穴部142aとしている。一方、
図11(b)に示す板状部材22D2は、循環流体抵抗部42の流体抵抗値を規定する流路幅wが幅W4(W3<W4)の貫通穴部142bとしている。
【0060】
したがって、循環流体抵抗部42の流路幅wが大きくなる板状部材22D2の方が板状部材22D1を使用するときよりも流体抵抗値が小さくなる
【0061】
したがって、循環流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0062】
次に、本発明の第4実施形態について
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図、
図13は同ヘッドの循環流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図である。
【0063】
本実施形態では、個別液室6、流体抵抗部7、循環流路43及び循環流体抵抗部42を構成する積み重なった板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する4枚の板状部材22I、22J、22F、22Kとを有している。
【0064】
流体抵抗部7は、積み重なった、板状部材である流路板2を構成する2枚の板状部材22F、22Kで構成される。循環流体抵抗部42は、積み重なった、板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する2枚の板状部材22I、22Jとで構成される。
【0065】
そして、流体抵抗部7の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Kによって規定されている。
【0066】
したがって、流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0067】
また、循環流体抵抗部42の流体抵抗値は、複数枚の板状部材のうちの1枚の板状部材である板状部材22Jによって規定されている。
【0068】
すなわち、
図13(a)に示すように、板状部材22Iには、ノズル通路5を形成する貫通穴部25a、循環流体抵抗部42を形成する貫通穴部142a、循環流路43を形成する貫通穴部143aを構成する、同じ幅の貫通穴部が設けられている。
【0069】
一方、
図13(b)に示すように、板状部材22Jには、ノズル通路5を形成する貫通穴部25b及び循環流路43を形成する貫通穴部143bがノズル配列方向と直交する方向の間隔L2で設けられている。
【0070】
このとき、板状部材22Jの貫通穴部25bと貫通穴部143bとの間隔L2が循環流体抵抗部42の流路長さlになるので、循環流体抵抗部42の流体抵抗値は1枚の板状部材22Jによって規定されることになる。
【0071】
そこで、例えば、貫通穴部143bの長さG2が異なることで間隔L2が異なる板状部材22Jを使用することで、循環流体抵抗部42の流体抵抗値が変化する。
【0072】
したがって、循環流体抵抗部を構成する複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、例えば液体の粘度に応じた流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0073】
次に、本発明の第5実施形態について
図14ないし
図16を参照して説明する。
図14は同実施形態に係るヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図である。
図15は同じく流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図、
図16は同じく循環流体抵抗部を構成する板状部材の平面説明図である。
【0074】
ここでは、個別液室6、流体抵抗部7、循環流路43及び循環流体抵抗部42を構成する積み重なった板状部材であるノズル板1と、流路板2を構成する3枚の板状部材22I、22L、22Kとを有している。
【0075】
板状部材22Kには、個別液室6を形成する貫通穴部26a、流体抵抗部7を形成する溝部27c、液導入部8を形成する貫通穴部28a、通路44を形成する貫通穴部144aが設けられている。
【0076】
また、板状部材22Iには、ノズル通路5を形成する貫通穴部25a、循環流体抵抗部42を形成する貫通穴部142a、循環流路43を形成する貫通穴部143aを構成する、同じ幅の貫通穴部が設けられている。
【0077】
そして、板状部材22Lには、流体の流れる流路の一部となる、個別液室6の一部を形成する凹部26cと、循環流路43の一部を形成する凹部143cを設けている。この板状部材22Lは、供給側の流路(液導入部8、流体抵抗部7、個別液室6)と循環側の流路(循環流体抵抗部42、循環流路43)とを分けており、流体抵抗部7と循環流路抵抗部42との間に配置される板状部材である。
【0078】
ここで、凹部26cは、板状部材22Lのうちノズル通路5に対向する面Xから、流体抵抗部7へ向けて、板状部材22Lの流体抵抗部7に対向する面に設けられている。また、凹部143cは、板状部材22Lのうち通路44に対向する面Yから、循環流体抵抗部42へ向けて、板状部材22Lの循環流体抵抗部42に対向する面に設けられている。
【0079】
そして、液体の流れの方向において、凹部26cは流体抵抗部7に隣接して設けられ、凹部143cは循環流体抵抗部42に隣接して設けられている。
【0080】
したがって、板状部材22Lの凹部26c、143cのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の長さG3、G4が異なることで、流体抵抗部7の流体抵抗値、及び、循環流体抵抗部42の流体抵抗値が異なることになる。
【0081】
そこで、凹部26c、143cの長さG3、G4が異なる板状部材22Lを使用することで、流体抵抗部7の流体抵抗値、循環流体抵抗部42の流体抵抗値が変化する。
【0082】
すなわち、本実施形態では、板状部材22Lが供給側の流体抵抗部7及び循環側の循環流体抵抗部42の各流体抵抗値を規定する共通の1枚の板状部材となる。
【0083】
したがって、複数枚の板状部材のうち、流体抵抗値を規定する1枚の板状部材を変更するだけで、液体の粘度に応じた流体抵抗部の流体抵抗値及び循環流体抵抗部の流体抵抗値のヘッドを構成することができる。
【0084】
ここで、流体抵抗部7の流体抵抗値及び循環流体抵抗部42の流体抵抗値を凹部26c、143cによって規定できる理由についてより詳細に説明する。
【0085】
図14から分かるように、流体抵抗部7は、もし凹部26cがない場合は、R1からR2間の範囲が流体抵抗として機能する。ここで、板状部材22Lに凹部26cを設け、凹部26cの一部を、流体抵抗部7を形成する溝部27cに対向させると、
図14の例では、流体抵抗部7はR1からR3間の範囲が流体抵抗として機能する。R3からR2にかけては、流路断面積が増加するため流体抵抗として機能しない。
【0086】
すなわち、凹部26cの長さG3によって流体抵抗部7の流体抵抗を規定でき、凹部26cの長さG3を変更することで、流体抵抗部7の流体抵抗を容易に変更することができる。
【0087】
同様に、循環流体抵抗部42は、もし凹部143cがない場合は、R4からR5間の範囲が流体抵抗として機能する。ここで、板状部材22Lに凹部143cを設けると、
図14の例では、循環流体抵抗部42はR4からR6間の範囲が流体抵抗として機能する。R6からR5にかけては、流路断面積が増加するため流体抵抗として機能しない。
【0088】
すなわち、凹部143cの長さG4によって循環流体抵抗部42の流体抵抗を規定でき、凹部143cの長さG4を変更することで、循環流体抵抗部42の流体抵抗を容易に変更することができる。
【0089】
さらに、凹部26cと凹部143cは1つの板状部材22Lに形成されているため、板状部材22Lを取り替えるだけで、流体抵抗部7と循環流体抵抗42の両方の流体抵抗を変更して調節することができる。
【0090】
また、本実施形態では、板状部材22Kの溝部27cの幅Wを狭くしているが、幅Wを狭くしない場合でも、流体抵抗の変更は可能である。また同様に、板状部材22Iの貫通穴部142aの一部を狭くしても良い。
【0091】
また、流体抵抗を規定する手段は、凹部に限定されない。例えば、流体抵抗近傍に管状の別経路を設けることでも流路断面積を大きくできるので、流体抵抗を変更できる。
【0092】
また、板状部材の表面粗さを変えることで、流体抵抗を調節することもできる。たとえば、板状部材22Lのうち流体抵抗7に対向する部分の表面を荒くしたり、板状部材22Lのうち循環流路抵抗42に対向する部分の表面を滑らかにしたりすることで、流体抵抗の変更が可能である。
【0093】
次に、循環流路を有する液体吐出ヘッドを含む液体循環システムの一例について
図17のブロック図を参照して説明する。
【0094】
この液体循環システムは、メインタンク600、液体吐出ヘッド601、供給タンク602、循環タンク603、コンプレッサ604、真空ポンプ605、第1送液ポンプ607及び第2送液ポンプ608、レギュレータ609、610、供給側圧力センサ611、循環側圧力センサ612などで構成されている。
【0095】
供給側圧力センサ611は、供給タンク602と液体吐出ヘッド601との間であって、液体吐出ヘッド601の供給ポート23に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ612は、液体吐出ヘッド601と循環タンク603との間であって、液体吐出ヘッド601の循環ポート46に繋がった循環流路側に接続されている。
【0096】
循環タンク603の一方は、第1送液ポンプ607を介して供給タンク602と接続されており、循環タンク603の他方は、第2送液ポンプ608を介してメインタンク600と接続されている。
【0097】
これにより、供給タンク602から供給ポート23を通って液体吐出ヘッド601内に液体が流入し、循環ポート46から排出されて循環タンク603へ排出され、更に第1送液ポンプ607によって循環タンク603から供給タンク602へ液体が送られることによって液体が循環する。
【0098】
また、供給タンク602にはコンプレッサ604がつなげられていて、供給側圧力センサ611で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンク603には真空ポンプ605がつなげられていて、循環側圧力センサ612で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0099】
これにより、液体吐出ヘッド601内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0100】
また、液体吐出ヘッド601のノズルから液体を吐出すると、供給タンク602及び循環タンク603内の液体量が減少していくため、適宜メインタンク600から第二送液ポンプ608を用いて、メインタンク600から循環タンク603に液体を補充することが好ましい。メインタンク600から循環タンク603への液体補充のタイミングは、循環タンク603内の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、循環タンク603内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0101】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同装置の要部平面説明図、
図19は同装置の要部側面説明図である。
【0102】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0103】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0104】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0105】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0106】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0107】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0108】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0109】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0110】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0111】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0112】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0113】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0114】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0115】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図20を参照して説明する。
図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0116】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0117】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0118】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図21を参照して説明する。
図21は同ユニットの正面説明図である。
【0119】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0120】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0121】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0122】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0123】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0124】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0125】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0126】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0127】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0128】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0129】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0130】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0131】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0132】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0133】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0134】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0135】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0136】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0137】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0138】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0139】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。