(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非磁性体の円筒状のスリーブと、該スリーブの内部に設けられ、周方向に配列された複数の磁極を有するマグネットと、前記スリーブの両端部が固着されているフランジとを有するマグネットロールを製造する方法において、
前記スリーブの両端部を前記フランジに固着させる際に、前記スリーブの両端部それぞれに、マグネットロールの中心軸に対して外周面を傾斜させて3個一組のローラを接触させ、前記スリーブの一方の端部に接触する前記3個一組のローラの回転方向と、前記スリーブの他方の端部に接触する前記3個一組のローラの回転方向とを逆とし、前記ローラの回転と同時に前記ローラをマグネットロールの軸方向に移動させて、前記スリーブをかしめることを特徴とするマグネットロールの製造方法。
前記ローラの外周面は、先端面から後端面に向かって広がる傾斜面と、該傾斜面の後端面側に配された内円弧面とを有することを特徴とする請求項1記載のマグネットロールの製造方法。
前記ローラの外周面は、先端面から後端面に向かって広がる水平面と、該水平面の後端面側に配された内円弧面とを有しており、前記ローラの中心軸を前記マグネットロールの中心軸に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1記載のマグネットロールの製造方法。
非磁性体の円筒状のスリーブと、該スリーブの内部に設けられ、周方向に配列された複数の磁極を有するマグネットと、前記スリーブの両端部が固着されているフランジとを有するマグネットロールを製造する装置において、
前記スリーブの両端部それぞれに接触する3個一組のローラを有する一対のかしめ機と、該かしめ機を回転させる回転部と、前記かしめ機をマグネットロールの軸方向に移動させる移動部とを備えており、
前記ローラは、その外周面をマグネットロールの中心軸に対して傾斜させて配置してあり、
前記スリーブの一方の端部に接触する前記3個一組のローラの回転方向と、前記スリーブの他方の端部に接触する前記3個一組のローラの回転方向とを逆とし、前記ローラの回転と同時に該ローラをマグネットロールの軸方向に移動させて、前記スリーブをかしめて前記スリーブ及びフランジを固着させるように構成してあることを特徴とするマグネットロールの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されたように接着剤を用いて固着させる場合には、機械的な力が及ぼされないために寸法精度は良いが、接着が完了するまでに長時間を要するために生産効率を高くすることができない。
【0009】
特許文献3に開示された固着手法では、接着法に比べて工程を短縮できる。しかしながら、フランジの軸方向に向かって短い時間に圧力をかける方法でスリーブをかしめるので、スリーブの変形に伴う振れ精度の低下、及び、スリーブ自体の膨らみによる寸法精度の低下が避けられない。また、かしめる強度を高めるためには軸方向に強い圧力をかける必要があり、また、金型全体の軸がスリーブの軸から傾いた場合には、かしめ強度の高い部分とかしめ強度が低い部分とが混在するため、マグネットロール自体の寸法精度が低下する虞がある。以上のことから、特許文献3での固着手法は、高い寸法精度を要求されるマグネットロールには適用できないという問題がある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、スリーブの変形を抑えながら、スリーブ及びフランジの強固な固着を実現できるマグネットロールの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、非磁性体の円筒状のスリーブと、該スリーブの内部に設けられ、周方向に配列された複数の磁極を有するマグネットと、前記スリーブの両端部が固着されているフランジとを有するマグネットロールを製造する方法において、前記スリーブの両端部を前記フランジに固着させる際に、前記スリーブの両端部それぞれに、マグネットロールの中心軸に対して外周面を傾斜させて3個一組のローラを接触させ、該ローラの回転と同時に該ローラをマグネットロールの軸方向に移動させて、前記スリーブをかしめることを特徴とする。ここでいう「同時に」とは、ローラをマグネットロールの軸方向に移動させてスリーブの両端部それぞれに接触した時点でローラが回転していれば良いことを意味している。
【0012】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、スリーブの両端部それぞれに3個一組のローラ面を傾斜接触させ、ローラの回転と同時にローラをマグネットロールの軸方向に移動して、スリーブをかしめることにより、スリーブの両端部をフランジに固着させる。よって、かしめ処理にてスリーブ及びフランジの固着を行うため、接着剤は不要で低コストであり、固着処理に要する時間も短い。また、振れ精度が悪い、スリーブに変形(膨れ)が生じ易いというかしめ処理の課題を解消する。即ち、かしめ時のスリーブへの負荷は小さく、スリーブの振れ及びスリーブの変形(膨れ)も少ない。さらに、ローラの回転と同時にローラをマグネットロールの軸方向に移動させるという動作で、スリーブへの負荷を少なくして、マグネットロールを製造することができる。
【0013】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、前記スリーブの一方の端部に接触する3個一組のローラの回転方向と、前記スリーブの他方の端部に接触する3個一組のローラの回転方向とが逆であることを特徴とする。
【0014】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、スリーブの一方の端部に接触する3個一組のローラと、スリーブの他方の端部に接触する3個一組のローラとで、回転方向を逆にする。よって、スリーブの中央部での変形(膨れ)を抑制できる。
【0015】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、前記ローラの外周面は、先端面から後端面に向かって広がる傾斜面と、該傾斜面の後端面側に配された内円弧面とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、先端面から後端面に向かって広がる傾斜面と、傾斜面の後端面側に配された内円弧面とを含む外周面(加工面)を有するローラを使用する。よって、スリーブの端部が効率良くかしめられ、スリーブの端部が多くフランジに食い込むため、強固な固着が得られる。
【0017】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、前記ローラをマグネットロールの軸方向に移動させる最後に、前記ローラの前記内円弧面を前記スリーブの端部に接触させることを特徴とする。
【0018】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、ローラをマグネットロールの軸方向に移動させる最後の過程で、ローラの内円弧面をスリーブの端部に接触させる。よって、スリーブの端部を更に強固にフランジに食い込ませることができる。
【0019】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、前記ローラの中心軸を前記マグネットロールの中心軸に対して傾斜させたことを特徴とする。
【0020】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、ローラの中心軸をマグネットロールの中心軸に対して傾斜させており、3個一組のローラの中央の空間へのノックアウト用の筒体(頂套)の配置が容易である。
【0021】
本発明に係るマグネットロールの製造方法は、前記ローラの外周面は、先端面から後端面に向かって広がる水平面と、該水平面の後端面側に配された内円弧面とを有しており、前記ローラの中心軸を前記マグネットロールの中心軸に対して傾斜させたことを特徴とする。
【0022】
本発明のマグネットロールの製造方法にあっては、傾斜面を持たない外周面を有するローラを使用する場合でも、ローラの中心軸をマグネットロールの中心軸に対して傾斜させることにより、ローラの外周面をマグネットロールの中心軸に対して傾斜させることができる。
【0023】
本発明に係るマグネットロールの製造装置は、非磁性体の円筒状のスリーブと、該スリーブの内部に設けられ、周方向に配列された複数の磁極を有するマグネットと、前記スリーブの両端部が固着されているフランジとを有するマグネットロールを製造する装置において、前記スリーブの端部に接触する3個のローラを有するかしめ機と、該かしめ機を回転させる回転部と、前記かしめ機をマグネットロールの軸方向に移動させる移動部とを備えており、前記ローラは、その外周面をマグネットロールの中心軸に対して傾斜させて配置してあり、前記ローラの回転と同時に該ローラをマグネットロールの軸方向に移動させて、前記スリーブをかしめて前記スリーブ及びフランジを固着させるように構成してあることを特徴とする。ここでいう「同時に」とは、ローラをマグネットロールの軸方向に移動させてスリーブの両端部それぞれに接触した時点でローラが回転していれば良いことを意味している。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、かしめ処理にてスリーブ及びフランジの固着を行っているので、接着処理に比べて、接着剤が不要でコストを低減できる、接着剤の硬化管理が不要であるため作業スペース及び処理時間を低減できるなどの効果を奏する。また、かしめ時のスリーブへの負荷が小さいため、スリーブの変形量が少なくなって、スリーブの振れ精度を高くでき、スリーブの変形(膨れ)も抑えながら、強度な固着を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、マグネットロールの構成を示しており、
図1Aはその縦断面図、
図1Bは
図1AのA−A線における横断面図である。マグネットロール1は、非磁性体からなる円筒状のスリーブ2と、スリーブ2の内部に配置されたマグネット部材3と、スリーブ2の長手方向の両端部の内側に固着されたフランジ4,4とを有する。
【0027】
スリーブ2は、例えばアルミニウム合金、非磁性ステンレス鋼などの非磁性金属材料で作製されている。マグネット部材3は、その周方向に配列された複数の磁極を備えた円筒状のマグネット5の中心孔に丸棒状のシャフト6が挿入固定された構成をなしている。シャフト6は金属などの高強度材料により構成され、マグネット5と一体化されている。
【0028】
フランジ4,4は、例えばアルミニウム合金、非磁性ステンレス鋼などの非磁性金属材料で作製されている。各フランジ4の外周面にはローレット40(外周面に等間隔で形成した溝、平目ローレット)が形成されており、各フランジ4の外縁部は面取りがなされていない。フランジ4,4の内部には、軸受7,7が嵌装されている。これらの軸受7,7により、シャフト6が支持されている。このような構成により、スリーブ2とマグネット部材3とが相対的に回転できるようになっている。なお、ローレット40についてはアヤ目ローレットも適用可能である。また、スリーブ2とフランジ4に用いる材料(非磁性金属材料)については、本発明の効果を奏するように、夫々に使用する金属の硬度等を考慮し適宜設定すれば良い。
【0029】
図2は、スリーブ2の形状を示しており、
図2Aはその平面図、
図2Bは
図2AのB−B線における横断面図である。スリーブ2の外周面には、所定間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝20が形成されている。スリーブ2は感光ドラム(図示せず)と平行に設けられ、スリーブ2の外周に保持されたトナーが感光ドラムの現像部分の静電潜像上に搬送されて、静電潜像に付着される。このときの磁性現像剤の搬送性を向上させるために、前記複数の溝20が設けられている。なお、溝20に変えて、スリーブ2表面に凹凸を設けても良く、ブラスト処理によりスリーブ2表面を荒らしても良い。あるいは、搬送性を向上させるための表面処理等を施しても良い。
【0030】
このような構成をなすマグネットロール1の製造工程について簡単に説明する。
まず、マグネット部材3を作製する。例えば、周方向に配列された複数の磁極を備えた円筒状のマグネット5の中心孔に、接着剤を用いてシャフト6を一体化させて、マグネット部材3を作製しても良い。また、シャフト6となる丸棒を圧縮成形装置の金型内に配設し、丸棒の周囲に磁性粉末及び樹脂を混合させた磁性組成物を供給し、加圧成形して、一体化させた後、マグネット5の周方向に複数の磁極を着磁させて、マグネット部材3を作製しても良い。
【0031】
次いで、作製したマグネット部材3のシャフト6の両端部に、軸受7,7を介して、フランジ4,4を嵌合させる。最後に、スリーブ2の内部にフランジ付きのマグネット部材3を挿通させ、後述するかしめ処理によって、スリーブ2の両端部をフランジ4,4に固着させる。
【0032】
以下、本発明の特徴である、スリーブ2とフランジ4,4とを固着させるためのかしめ処理について、第1実施の形態(ローラ16の中心軸とマグネットロール1の中心軸とが平行である形態)と、第2実施の形態(ローラ16の中心軸がマグネットロール1の中心軸に対して傾斜している形態)とに分けて詳述する。
【0033】
(第1実施の形態)
図3は、第1実施の形態に係るかしめ処理を行う装置の構成を示す模式図である。
図3において、10はベースであり、11はかしめ対象である、スリーブ2の内部にフランジ付きのマグネット部材3を挿通させてなる上述したような被かしめ材である。
【0034】
ベース10上には、被かしめ材11を支持する支持台12が設けられており、支持台12の上方には、支持台12との間で被かしめ材11の中央部を挟めるように、固定具13が設けられている。支持台12は、被かしめ材11のベース10上での位置を調整するための調整機構(図示せず)を備えている。固定具13は上下動が可能であり、かしめ処理時に被かしめ材11に当接して被かしめ材11を固定する。
【0035】
また、ベース10上には、適長離れて2台のかしめ機取付け台18,18が載置されている。かしめ機取付け台18,18の内側面には、かしめ機14,14が取り付けられている。各かしめ機14は同じ構成であり、ローラ台座15に3個のかしめ用のローラ16,16,16が取り付けられた構成を有する。
図4は、3個のローラ16,16,16の配置状態を示す図であり、
図4に示すように120°の位相角をもって周方向に配列された3個のローラ16,16,16がローラ台座15に設置されている。各ローラ16の中心軸は、被かしめ材11の中心軸と平行である。ローラ台座15内での3個のローラ16,16,16で囲まれた位置に、ノックアウト用の筒体17が設けられている。
【0036】
各ローラ台座15には、かしめ機取付け台18を介して、回転機19が接続されており、回転機19の駆動により、かしめ機14が回転するようになっている。また、各かしめ機取付け台18には水平移動機21が接続されており、水平移動機21の駆動により、かしめ機取付け台18(及びかしめ機14)が被かしめ材11の軸方向に水平移動するようになっている。
【0037】
図5は、第1実施の形態に係るかしめ処理を行っている状態を示す模式図である。
図5において、
図3と同一部分には同一番号を付している。ローラ16は、上述したような駆動機構(回転機19及び水平移動機21)により、被かしめ材11の軸芯を中心とした回転移動と、被かしめ材11の軸方向(
図5の左右方向)の水平移動とが可能である。かしめ処理時には、両かしめ機14,14は、被かしめ材11の中央側に向かう方向に直線移動し(
図5の矢印a参照)、反対方向(逆方向)に回転移動する(
図5の矢印b参照)。なお、反対方向(逆方向)に回転移動するとは、
図5において被かしめ材11を絞る(ねじる)ように両かしめ機14,14が回転することであって、例えば
図5において、左側側面から見た場合、左側のかしめ機14は時計回りに回転しており、右側側面から見た場合、右側のかしめ機14も時計回りに回転していることをさす。このような両かしめ機14,14の移動により、かしめ処理時に、一方の3個一組のローラ16,16,16と他方の3個一組のローラ16,16,16とは、互いに逆方向に回転すると同時に、被かしめ材11の中央側に向かう方向に移動する。また、かしめ処理時には、支持台12と固定具13との挟持により、被かしめ材11の中央部が支持固定される。ここでいう「同時に」とは、ローラ16,16,16が水平方向に移動して被かしめ材11に接触した時点で回転していれば良いことを意味している。言い換えるとローラ16,16,16を回転させつつ、被かしめ材11の中央側に向かう方向に移動させれば良い。つまりローラ16,16,16が被かしめ材11に接触する前であれば回転開始と中央側への移動開始との先後はどちらでも良い。
【0038】
各ローラ16は同一の形状をなしており、その断面形状を
図6に示す。スリーブ2に接触するローラ16の外周面(加工面)16aは、先端面から後端面に向かって広がる傾斜面16bと、傾斜面16bの後端面側に配された内円弧面16cとを有する。傾斜面16bを有することにより、外周面(加工面)16aを被かしめ材11(マグネットロール1)の中心軸に対して傾斜させて、ローラ16がスリーブ2に接触する。回転する各ローラ16の外周面(加工面)16aがスリーブ2の端部に接触し、スリーブ2の端部を押圧してかしめることにより、スリーブ2とフランジ4との固着がなされる。
【0039】
図7は、かしめ処理におけるスリーブ2の変形の遷移を示す図である。
図7Aは、かしめ処理を行う前の状態を示しており、フランジ4に変形していないスリーブ2が接触している。なお、
図7においてはローレット40は図示していない。
【0040】
図7Bは、かしめ処理の前半の状態を示しており、ローラ16の外周面16aの傾斜面16bがスリーブ2に当接している。
図7Bにおいて、矢印の長さはスリーブ2の端部に加えられる力の大きさを表している。スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印d)は、スリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印e)より大きく、スリーブ2の端部が少し曲げられる。傾斜面16bの形状(傾斜角度)を調整することにより、このような加えられる力の大小関係を実現できる。
【0041】
図7Cは、かしめ処理の後半(最後の過程)の状態を示しており、ローラ16の外周面16aの内円弧面16cがスリーブ2に当接している。
図7Cにおいて、矢印の長さはスリーブ2の端部に加えられる力の大きさを表しており、スリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印f)は、スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印g)より大きく、スリーブ2の端部が更に曲げられてフランジ4に食い込む。
【0042】
(第2実施の形態)
次に、マグネットロール1の中心軸に対してローラ16の中心軸を傾斜させている第2実施の形態について説明する。
図8は、第2実施の形態に係るかしめ処理を行う装置の構成を示す模式図であり、
図9は、第2実施の形態に係るかしめ処理を行っている状態を示す模式図である。
図8及び
図9において、
図3及び
図5と同一部分には同一番号を付している。
【0043】
第2実施の形態では、第1実施の形態と同様に、3個のローラ16,16,16が
図4に示すように周方向に120°の位相角をもってローラ台座15に設置されているが、各ローラ16は、第1実施の形態と異なり、被かしめ材11の中心軸に対してθだけ外側に(中心軸から離れる方向に)傾斜して設けられている。θの大きさは、例えば10°である。他の構成は、前述した第1実施の形態と同じであるので、その説明は省略する。
【0044】
被かしめ材11(マグネットロール1)の中心軸から外側に中心軸を傾斜させてローラ16を設けているので、第1実施の形態と比べて、3個一組のローラ16,16,16の中央の空間にノックアウト用の筒体17(頂套)を容易に配置することが可能である。
【0045】
第2実施の形態でも、第1実施の形態と同様に、かしめ処理時には、両かしめ機14,14が、被かしめ材11の中央側に向かう方向に直線移動し(
図9の矢印a参照)、反対方向に回転移動する(
図9の矢印b参照)ことにより、一方の3個一組のローラ16,16,16と他方の3個一組のローラ16,16,16とが、互いに逆方向に回転すると同時に、被かしめ材11の中央側に向かう方向に移動する。そして、回転する各ローラ16の外周面(加工面)16aがスリーブ2の端部に接触し、スリーブ2の端部を押圧してかしめることにより、スリーブ2とフランジ4との固着がなされる。
【0046】
図10は、第2実施の形態の第1例に係るローラ16の断面形状を示す図である。このローラ16の外周面(加工面)16aは、第1実施の形態と同様に、先端面から後端面に向かって広がる傾斜面16bと、傾斜面16bの後端面側に配された内円弧面16cとを有する。
【0047】
この第1例では、かしめ処理の前半にあって、ローラ16の外周面16aの傾斜面16bがスリーブ2に当接する(
図7B参照)。スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印d)がスリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印e)より大きくなって、スリーブ2の端部が少し曲げられる。被かしめ材11の中心軸に対するローラ16の傾斜角度θ及び/または傾斜面16bの形状(傾斜角度)を調整することにより、このような加えられる力の大小関係を実現できる。かしめ処理の後半にあって、ローラ16の外周面16aの内円弧面16cがスリーブ2に当接する(
図7C参照)。スリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印f)が、スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印g)より大きくなって、スリーブ2の端部が更に曲げられてフランジ4に食い込む。
【0048】
図11は、第2実施の形態の第2例に係るローラ16の断面形状を示す図である。このローラ16の外周面(加工面)16aは、第1実施の形態及び上記第1例とは異なり、傾斜面を有しておらず、先端面から後端面に向かって広がる水平面16dと、水平面16dの後端面側に配された内円弧面16cとを有している。第2例では、ローラ16は傾斜面を持たないが、ローラ16の中心軸を被かしめ材11(マグネットロール1)の中心軸に対して傾斜させているので、第1実施の形態及び第1例と同様に、外周面(加工面)16aを被かしめ材11(マグネットロール1)に対して傾斜させて、ローラ16がスリーブ2に接触する。
【0049】
この第2例では、かしめ処理の前半にあって、ローラ16の外周面16aの水平面16dがスリーブ2に当接する(
図7B参照)。スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印d)がスリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印e)より大きくなって、スリーブ2の端部が少し曲げられる。被かしめ材11の中心軸に対するローラ16の傾斜角度θを調整することにより、このような加えられる力の大小関係を実現できる。かしめ処理の後半にあって、ローラ16の外周面16aの内円弧面16cがスリーブ2に当接する(
図7C参照)。スリーブ2の軸方向に加えられる力(矢印f)が、スリーブ2の径方向に加えられる力(矢印g)より大きくなって、スリーブ2の端部が更に曲げられてフランジ4に食い込む。
【0050】
ここで、上述したような本発明(第1実施の形態及び第2実施の形態)のかしめ手法と従前から行われているかしめ手法との対比について説明する。
【0051】
図12は、従前のかしめ手法によるスリーブ2へのかしめ力の印加を示す模式図である。従前のかしめ手法では、スリーブ2の全周面を一括で曲げるようにかしめ力(
図12中の白抜き矢印)をスリーブ2に印加する。一括で曲げるためには大きなかしめ力を印加する必要がある。スリーブ2に形成されている溝20の数を50個とし、スリーブ2に印加される一括かしめ力を750kgfとした場合、一つの山を15kgf(=750kgf÷50)でかしめていることになる。
【0052】
図13は、本発明のかしめ手法によるスリーブ2へのかしめ力の印加を示す模式図である。1個のローラ16にてスリーブ2の1つの山をかしめるとした場合、スリーブ2に対する負荷は、15kgf×3=45kgfにしかならない。本発明では、スリーブ2に対する負荷が750kgfである従前のかしめ手法に比べて、スリーブ2への負荷を6%までに低減できており、かしめ処理による振れ悪化を防止できる。実際、本発明では、15kgfのかしめ力にてスリーブ2及びフランジ4の十分な固着を実現できていることを、シミュレーション検証にて確認している。
【0053】
以上のように、本発明では、かしめ処理にてスリーブ2及びフランジ4の固着を行っている。よって、接着処理にて固着する場合に比べて、接着剤が不要であるのでコストを低減できる。また、接着剤の硬化管理が不要であるため作業スペース及び処理時間を低減できる。一方で、振れ精度が悪い、スリーブ2に変形(膨れ)が生じ易いというようなかしめ処理の課題を解消できる。かしめ時のスリーブ2への負荷が小さいため、スリーブ2の変形量が少なくなって、スリーブ2の振れ精度を高くでき、スリーブ2の変形(膨れ)も抑えながら、強固な固着を達成することができる。
【0054】
3個一組のローラ16,16,16を二組設けているため、スリーブ2の両端部に対して同時にかしめ処理を施せるため、固着に要する時間を短縮できる。
【0055】
ローラ16の外周面(加工面)16aを被かしめ材11の軸方向に対して傾斜させて、しかも、ローラ16の回転と同時に被かしめ材11の軸方向にローラ16を移動させるので、スリーブ2の端部は効率良く曲面状にかしめられる。よって、スリーブ2がフランジ4に多く食い込むことで、スリーブ2とフランジ4との強固な固着が得られることになる。また、スリーブ2の端部にローラ16が点で接触するので、スリーブ2の端部に圧力を効率良くかけることができる。
【0056】
一方の3個一組のローラ16,16,16と他方の3個一組のローラ16,16,16とを、互いに逆方向に回転させながら、軸方向に移動させるので、スリーブ2の端部以外における変形を抑制することができる。
【0057】
かしめ処理の最終的な過程で、ローラ16の外周面(加工面)16aの内円弧面16cがスリーブ2の端部に接触するので、スリーブ2の端部をさらに強固にフランジ4に組み込ませることができる。この際、スリーブ2を軸方向に押す力が少なからず発生するが、すでに食い込まれた部分が存在するため、スリーブ2を軽く曲げる程度の力では、スリーブ2の変形にはつながらず、寸法精度の低下は起こらない。
【0058】
フランジ4の端部にローレット40が形成されており、そのフランジ4の端部には面取りが施されていないので、このローレット40に対してスリーブ2が曲面でかしめられるため、スリーブ2の食い込みが良好である。また、スリーブ2の外周面に溝20が設けられているため、この溝20以外の出っ張り部分にローラ16が点で接触するため、スリーブ2の端部が曲がり易くなる。
【0059】
以下、本発明のマグネットロールの製造方法にて製造したマグネットロール(以下、単に本発明例という)の測定した特性について説明する。また、本発明と比較するために、前述したようにスリーブの全周を一括して曲げる従前の方法にて製造したマグネットロール(以下、単に比較例という)の測定した特性についても説明する。本発明例及び比較例におけるスリーブの寸法は何れも、長さ:234mm、外径:20mm、肉厚:0.3mmとした。
【0060】
図14は、本発明例及び比較例におけるスリーブの振れの測定結果を示すグラフである。振れは、マグネットロールを軸中心で回転させながら公知の方法にて測定した。本発明例(ハッチングを付した棒グラフ)及び比較例(ハッチングを付していない棒グラフ)共に50個ずつの測定結果を示しており、
図14Aは一方の端部における振れ、
図14Bは中央部における振れ、
図14Cは他方の端部における振れの測定結果をそれぞれ示している。
図14A−Cにあって、横軸は振れ量(mm)を表し、縦軸は個数を表している。
【0061】
図14に示すように、比較例では、振れ量が0.03mmを超えるものが数個見られ、特に中央部において振れ量が大きくなっている。これに対して本発明例では、全ての例においてスリーブの全域にわたって振れ量が0.03mm以内に抑えられている。よって、高い振れ精度が要求されるマグネットロールの製造が可能であることが分かる。
【0062】
図15は、本発明例及び比較例におけるスリーブの外径寸法の測定結果を示す図表である。両方の端部それぞれにおけるかしめ前とかしめ後とのスリーブの外径を測定し、その変化量を算出した。
図15には、本発明例及び比較例共に10個ずつの測定した平均値を示している。
【0063】
図15に示すように、比較例では、かしめ処理前後でスリーブの外径が30μm程度も変化している。これに対して本発明例では、かしめ処理前後でスリーブの外径が1μm程度しか変化しておらず、かしめ処理を施しても、スリーブの変形(膨れ)はほとんど生じていないことが分かる。
【0064】
図16は、本発明例及び比較例におけるフランジの回転方向の固定強度の測定結果を示すグラフである。測定はダイヤル型トルクレンチで行った。本発明例(ハッチングを付した棒グラフ)及び比較例(ハッチングを付していない棒グラフ)共に10個ずつの測定結果を示している。
図16にあって、横軸はフランジ固定トルク(Nm)を表し、縦軸は個数を表している。
【0065】
10個のマグネットロールのフランジ固定トルクの平均値は、比較例が5.43Nmであるのに対し、本発明例では6.20Nmとなり、約14%高くなっている。外部トルクに対する耐トルク性能が向上していることが分かる。
【0066】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。