【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規なアルキニル基を有するヘテロアセン誘導体が高キャリア移動度を与えると共に高耐熱性及び高溶解性を持つ有機半導体材料となることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体、有機半導体層、及びそれを用いてなる有機薄膜トランジスタに関するものである。
【0012】
【化1】
【0013】
(ここで、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
3〜R
6は同一又は異なって、水素、又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、X
1〜X
4は同一又は異なって、酸素、硫黄、又はセレンを示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いられるヘテロアセン誘導体は上記一般式(1)で示される誘導体であり、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基を示す。
【0015】
R
1及びR
2における炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘプチル基、3−エチルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられ、高移動度であることから炭素数3〜12のアルキル基が好ましく、より高溶解度であることから、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基がさらに好ましく、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が特に好ましい。
【0016】
R
3〜R
6は同一又は異なって、水素、又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、高移動度のため水素が好ましい。
【0017】
R
3〜R
6における炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘプチル基、3−エチルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられ、高溶解性のため炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基がさらに好ましい。
【0018】
X
1〜X
4は酸素、硫黄、又はセレンを示すが、高移動度のため硫黄が好ましい。
【0019】
本発明で用いられるヘテロアセン誘導体の具体的例示としては、以下のものを挙げることができる。
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
本発明で用いられるヘテロアセン誘導体の製造方法としては、該ヘテロアセン誘導体を製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、無置換ジチエノベンゾジチオフェンを原料とし、下記A及びBの工程を経る製造方法により、ヘテロアセン誘導体を製造することができる。無置換ジチエノベンゾジチオフェンは、例えば、特開2012−188400号公報に記載の内容で合成することができる。
【0023】
(A工程);無置換ジチエノベンゾジチオフェンの2,7位ジハロゲン化により、2,7−ジハロジチエノベンゾジチオフェンを合成する工程。
【0024】
(B工程);パラジウム/銅触媒の存在下、A工程により得られた2,7−ジハロジチエノベンゾジチオフェンとアルキニル化合物の薗頭カップリングにより2,7−ジアルキニルジチエノベンゾジチオフェンを製造する工程。
【0025】
各工程の詳細を以下に示す。
【0026】
該A工程は、例えば、無置換ジチエノベンゾジチオフェンをハロゲン化剤と反応させ2位と7位をハロゲン化することで2,7−ジハロジチエノベンゾジチオフェンを製造する工程である。
【0027】
ハロゲン化剤と反応させる条件としては、例えば、2〜4当量のハロゲン化剤を用い、N,N−ジメチルホルムアミンド(以後、DMFと略す。)、テトラヒドロフラン(以後、THFと略す。)、N−メチルピロリドン(以後、NMPと略す。)、ジメチルスルホキサイド等の溶媒中、20℃〜70℃の温度範囲内で実施することが挙げられる。
【0028】
ハロゲン化剤としては、例えば、N−ブロモスクシンイミド(以後、NBSと略す。)、臭素、ヨウ素、N−ヨードスクシンイミド等が挙げられる。
【0029】
該B工程は、パラジウム触媒及び銅触媒の存在下、A工程により得られた2,7−ジハロジチエノベンゾジチオフェンとアルキニル化合物の薗頭カップリングにより2,7−ジアルキニルジチエノベンゾジチオフェンを製造する工程である。
【0030】
その際のパラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等が挙げられ、銅触媒としてはヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)等を挙げることができる。また、薗頭カップリングは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピリジン等の溶媒中、20℃〜80℃の温度範囲で実施することができる。なお、溶媒としてトルエン、THF等を添加しても良い。
【0031】
B工程におけるアルキニル化合物としては、例えば、1−プロピン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン、1−ウンデシン、1−ドデシン等が挙げられる。
【0032】
そして、反応工程数が少ないことから好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキームに示す。
【0033】
【化4】
【0034】
さらに、製造したヘテロアセン誘導体は、カラムクロマトグラフィー等に供することにより精製することができ、その際の分離剤としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられ、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
【0035】
製造したヘテロアセン誘導体は、活性炭、ゼオライト、活性アルミナ等に供することにより溶液中で脱色精製することができ、その際の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
【0036】
また、製造したヘテロアセン誘導体は、さらに再結晶により精製してもよく、再結晶の回数を増やすことで純度を向上させることができる。再結晶の回数としては、高純度、高収率の観点から、好ましくは2〜5回である。再結晶に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができ、これらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0037】
再結晶では、加熱によりヘテロアセン誘導体の溶液を調製し(その際の溶液の濃度は、不純物を効率よく除去するため、0.010〜10.0重量%の範囲が好ましく、0.050〜5.0重量%の範囲がさらに好ましい。)、該溶液を冷却することでヘテロアセン誘導体の結晶を析出させ単離するが、単離する際の最終的な冷却温度は、純度及び回収率向上のため、−20℃から40℃の範囲にあることが好ましい。なお、純度を測定する際には液体クロマトグラフィーにより分析することが可能である。
【0038】
本発明のヘテロアセン誘導体は、適当な溶媒に溶解させることで該ヘテロアセン誘導体を含有する有機半導体層形成用溶液とすることができる。該溶媒としては、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体を溶解することが可能な溶媒であれば如何なる溶媒を使用してもよく、有機半導体層を形成する際、溶媒の乾燥速度を好適なものとすることができることから、常圧での沸点が100℃以上である有機溶媒が好ましい。
【0039】
本発明で用いることが可能な溶媒として、例えば、トルエン、メシチレン、o−キシレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、テトラリン、インダン等の芳香族炭化水素類;アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1,2−エチレンジオキシベンゼン等の芳香族エーテル類;クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン等の芳香族ハロゲン化合物;チオフェン、3−クロロチオフェン、2−クロロチオフェン、3−メチルチオフェン、2−メチルチオフェン、ベンゾチオフェン、2−メチルベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、フラン、3−メチルフラン、2−メチルフラン、ベンゾフラン、2−メチルベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ピリジン等のヘテロ芳香族類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン等の飽和炭化水素類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール類;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、酢酸フェニル、シクロヘキサノールアセテート、3−メトキシブチルアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート等のエステル類などを挙げられることができ、その中でも適度な乾燥速度を持つことから、好ましくはトルエン、o−キシレン、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、テトラリン、インダン、オクタン、ノナン、デカン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1,2−エチレンジオキシベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、3−メチルチオフェン、ベンゾチアゾールであり、さらに好ましくは、トルエン、o−キシレン、メシチレン、テトラリン、インダン、オクタン、ノナン、デカン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソールである。
【0040】
なお、本発明で用いる溶媒は、1種類の溶媒を単独で使用、または沸点、極性、溶解度パラメーターなど性質の異なる溶媒を2種類以上混合して使用することが可能である。
【0041】
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体を溶媒に混合溶解する際の温度としては、溶解を促進させる目的のため、0〜80℃の温度範囲で行うことが好ましく、10〜60℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
【0042】
また、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体を有機溶媒に溶解混合する時間は、均一溶液を得るため、1分〜1時間で溶解することが好ましい。
【0043】
本発明では本発明の有機半導体層形成用溶液における一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の室温での溶解度が0.10〜10.0重量%の範囲であると、取り扱い容易になり、有機半導体層を形成する際の効率により優れるものとなる。また、後述の有機半導体層の膜厚の観点から0.20〜10.0重量%の範囲がさらに好ましい。さらに、有機半導体層形成用溶液の粘度が0.30〜10mPa・sの範囲であると、より好適な塗工性を発現するものとなる。
【0044】
なお該溶液は、該ヘテロアセン誘導体自体が適度の凝集性を有することから比較的に低温で調製することが可能、且つ耐酸化性があることから、塗布法による有機薄膜の製造に好適に適用できる。即ち、雰囲気から空気を除く必要がないことから塗布工程を簡略化することができる。さらに該溶液には、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(1−ビニルナフタレン)、ポリ(2−ビニルナフタレン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−コ−2,4−ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン−コ−α−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−ノルボルネン)、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジメチルトリアリールアミン)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(スチレン−コ−メタクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−プロピル等のポリマーをバインダーとして存在させることができ、これらのうち、好ましくはポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(エチレン−コ−ノルボルネン)、ポリメタクリル酸メチルである。これらのポリマーバインダーの濃度は、適度な溶液の粘度のため、0.0010〜10.0重量%であることが好ましい。
【0045】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて有機半導体層を形成する際の塗布方法としては、有機半導体層を形成可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、キャストコート等の簡易塗工法;ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法を挙げることができ、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、スピンコート、ドロップキャスト、インクジェットであることが好ましい。
【0046】
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、溶媒を乾燥除去することにより、該有機半導体層形成用溶液を用いてなる有機半導体層を形成することが可能である。
【0047】
塗布した有機半導体層から溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に特に制限はなく、例えば、常圧下、又は減圧下で溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
【0048】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に特に制限はないが効率よく塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能であるため、10〜150℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0049】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の気化速度を調節することで、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の結晶成長を制御することが可能である。
【0050】
本発明の有機半導体層形成用溶液により形成される有機半導体層の膜厚に制限はなく、良好なキャリア移動が得られることから、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、10nm〜300nmの範囲であることが更に好ましい。
【0051】
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、該有機半導体層を含んでなる有機半導体デバイス、特に該有機半導体層を含んでなる有機薄膜トランジスタとして使用することが可能である。
【0052】
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極及びドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、優れた半導体・電気特性を発現する有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
【0053】
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート−トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート−トップコンタクト型、(D)は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
【0054】
本発明に係る基板としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
【0055】
本発明に係るゲート電極としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT−PSS)等の有機材料を挙げることができる。
【0056】
また、上記の無機材料は、金属のナノ粒子インクとしても差し支えなく使用することができる。この場合の溶媒は、適度の分散性のため、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等の極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6〜14の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、インダン、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール等の炭素数7〜14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。該ナノ粒子インクを塗布後、導電性向上のため、80℃〜200℃の温度範囲でアニール処理することが好ましい。
【0057】
本発明に係るゲート絶縁層としては特に制限はなく、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリアミド酸ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリけい皮酸エチル、ポリけい皮酸メチル、ポリクロトン酸エチル、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン−コ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン−エチレン共重合体、ポリフッ素化シクロペンタン、ポリフッ素化シクロヘキサン、ポリフッ素化シクロヘキサン−エチレン共重合体、BCB樹脂(商品名:サイクロテン、ダウ・ケミカル社製)、Cytop(登録商標)、Teflon(登録商標)、パリレンC等のパリレン(登録商標)類のポリマー絶縁材料を挙げることができ、製法が簡便であることから、塗布法が適用できるポリマー絶縁材料(ポリマーゲート絶縁層)であることが好ましい。
【0058】
該ポリマー絶縁材料を溶解させる場合、溶解に用いる溶媒としては特に制限がなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6〜14の脂肪族炭化水素溶媒;THF、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノールアセテート、3−メトキシブチルアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート等のエステル系溶媒;DMF、NMP等のアミド系溶媒;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、2−(ペンタフルオロエチル)ヘキサン、3−(ペンタフルオロエチル)ヘプタン等のフッ素化溶媒等が挙げられる。
【0059】
該ポリマー絶縁材料の濃度は、例えば、20〜40℃の温度において0.10〜10.0重量%である。当該濃度において得られる絶縁層の膜厚に特に制限はなく、絶縁性の観点から、好ましくは100nm〜1μm、さらに好ましくは150nm〜900nmである。
【0060】
なお、パリレンC等のパリレン類のポリマー絶縁層は、ジパラキシリレン類をラボコータにて、基板上に真空蒸着することで形成することができる。
【0061】
本発明に係るゲート絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β−フェネチルトリクロロシラン、β−フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン等のシラン類;オクタデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸等のホスホン酸類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。一般的にゲート絶縁層の表面処理を行うことにより、有機半導体材料の結晶粒径の増大及び分子配向の向上のため、キャリア移動度、電流オン・オフ比の向上、及び閾値電圧の低下という好ましい結果が得られる。
【0062】
本発明の有機薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極の材料としては特に制限がなく、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。表面処理に用いる表明処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール、4−フルオロベンゼンチオール、4−メトキシベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0063】
本発明の有機薄膜トランジスタは、速い動作性のため、キャリア移動度が、0.20cm
2/V・sec以上であることが好ましい。また、高いスイッチ特性のため、電流オン・オフ比が、1.0×10
6以上であることが好ましい。
【0064】
本発明の有機薄膜トランジスタは、高耐熱性のため、130℃で15分間アニール処理した後にキャリア移動度及び電流オン・オフ比が低下しないことが好ましい。
【0065】
本発明の有機薄膜トランジスタは、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、圧力センサー、バイオセンサー等のトランジスタの有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができ、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体が結晶性の薄膜となるため、有機薄膜トランジスタの半導体層用途として用いられることが好ましい。