【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する遷移金属化合物、特定の形状を有する脂肪族塩にて変性した有機変性粘土紛体、及び有機アルミニウム化合物から得られる超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒、流動性に優れ、かつ微小及び粗大粒径を有しない超高分子量ポリエチレン粒子を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物(A)、
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、M
1はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、R
1は下記一般式(2)で示されるシクロペンタジエニル基であり、
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R
4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基である。)
R
2は下記一般式(3)で示されるアミノ基を有するフルオレニル基であり、
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R
5およびR
6は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基、炭素数7〜30アリールアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したもの置換基であり、R
5および/またはR
6の少なくとも1つが炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基又は炭素数7〜30のアリールアルキルアミノ基である。)
R
3は、下記一般式(4)または下記一般式(5)で示されるR
1とR
2の架橋単位であり、
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、R
7は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、M
2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
nは1〜5の整数である。]
下記一般式(6)で表される脂肪族塩にて変性した、メジアン径が4μm以上20μm以下かつ粒径の幾何標準偏差が0.15以下である有機変性粘土紛体(B)、
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、R
8〜R
10は各々独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルキルアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30のアルキル基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、上記炭素数1〜30のアルキル基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換した置換基、上記炭素数1〜30のアルキル基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、かつR
8〜R
10のうち少なくとも1つが炭素数10以上のアルキル基であり、M
3は周期表第15族の原子であり、[A
−]はアニオンである。)
及び、有機アルミニウム化合物(C)を含んでなることを特徴とする超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒、超高分子量ポリエチレン粒子に関するものである。
【0026】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒は、上記一般式(1)で示される遷移金属化合物(A)、上記一般式(6)で表される脂肪族塩にて変性した、メジアン径4μm以上20μm以下かつ粒径の幾何標準偏差が0.15以下である有機変性粘土紛体(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含んでなることを特徴とする。
【0028】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒を構成する該遷移金属化合物(A)は、上記一般式(1)で示される遷移金属化合物であり、R
1であるシクロペンタジエニル基とR
2であるアミノ基を有するフルオレニル基でM
1をサンドイッチする構造をとると共に、R
3によりR
1とR
2とを架橋した構造を有するものである。
【0029】
ここで、M
1は、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、これら特定の金属原子であることにより分子量の非常に高い超高分子量ポリエチレン粒子を効率よく製造することが可能となり、特に超高分子量ポリエチレン粒子を生産効率よく製造することが可能な超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒となることからジルコニウム原子またはハフニウム原子であることが好ましい。
【0030】
Xは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、これら特定の置換基であることにより分子量の非常に高い超高分子量ポリエチレン粒子を製造することが可能となる。そして、Xの具体的例示として、例えば水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基などの炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基などの炭素数6〜30のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基などの炭素数7〜30のアリールアルキル基、またはメチルフェニル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などの炭素数7〜30のアルキルアリール基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基などが挙げられる。
【0031】
R
1は、上記一般式(2)で示されるシクロペンタジエニル基であり、R
4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、これら特定の置換基であることにより分子量の非常に高い超高分子量ポリエチレン粒子を製造することが可能となる。そして、R
4の具体的例示としては、上記したXの例示と同様のものを挙げることができ、R
1の具体的例示としては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−ブチル−シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、メトキシシクロペンタジエニル基、ジメチルアミノ−シクロペンタジエニル基、トリメチルシリル−シクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0032】
R
2は、上記一般式(3)で示されるアミノ基を有するフルオレニル基であり、R
5およびR
6は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基、炭素数7〜30のアリールアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、R
5および/またはR
6の少なくとも1つは、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基又は炭素数7〜30のアリールアルキルアミノ基であり、特に炭素数1〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜30のジアリールアミノ基又は炭素数7〜30のジアリールアルキルアミノ基であることが好ましい。これら特定の置換基であることにより分子量の非常に高いエチレン系重合体を製造することが可能となる。そして、R
5およびR
6の具体的例示としては、上記したXの例示と同様のもの、更にはジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基等を挙げることができ、R
2の具体的例示としては、2−ジメチルアミノフルオレニル基、2−ジエチルアミノフルオレニル基、2−ジイソプロピルアミノフルオレニル基、2,7−ビス(ジエチルアミノ)−フルオレニル基、2、7−ビス(ジイソプロピルアミノ)−フルオレニル基などが挙げられる。ここで、R
5およびR
6のいずれもが、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基又は炭素数7〜30のアリールアルキルアミノ基でない場合、得られる触媒をエチレン系重合体の製造に用いても分子量の非常に高いエチレン系重合体を効率的に製造することができない。
【0033】
R
3は、該R
1と該R
2の架橋単位であり、上記一般式(4)又は上記一般式(5)で表される架橋単位であり、R
7は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換した置換基、炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、これら特定の置換基であることにより分子量の高い超高分子量ポリエチレン粒子を製造することが可能となる。そして、R
7の具体的例示として、上記したXの例示と同様のものを挙げることができる。また、M
2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。
【0034】
そして、nは1〜5の整数である。
【0035】
該遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル基(または置換シクロペンタジエニル基)とアミノ基を有するフルオレニル基を組み合わせた構造の配位子を有する遷移金属化合物であり、その具体例として、例えばジフェニルシランテトライル(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランテトライル(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランテトライル(シクロペンタジエニル)(2−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランテトライル(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に変えた化合物や上記遷移金属化合物のジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができ、その中でも、超高分子量ポリエチレン粒子を生産効率よく製造することが可能なポリエチレン製造用触媒系となることからジルコニウム系化合物またはハフニウム系化合物であることが好ましい。
【0036】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒を構成する有機変性粘土紛体(B)は、上記一般式(6)で表される脂肪族塩にて変性された、メジアン径が4μm以上、20μm以下かつ粒径の幾何標準偏差が0.15以下の有機変性粘土紛体である。
【0037】
ここで、R
8〜R
10は、各々独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルキルアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30のアルキル基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基、上記炭素数1〜30のアルキル基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換した置換基、上記炭素数1〜30のアルキル基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基であり、かつ、R
8〜R
10のうち少なくとも1つが炭素数10以上のアルキル基である。R
8〜R
10のいずれもが、炭素数10未満のアルキル基又はアルキル基以外の置換基である場合、得られる触媒は、超高分子量ポリエチレン粒子を効率的に製造することが困難となる。
【0038】
そして、R
8〜R
10の具体的例示としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリール基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ベヘニル基等の炭素数1〜30のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜30のアルキルアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の炭素数1〜30のアルキルアミノ基;トリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等炭素数1〜30のアルキルシリル基;メトキシメチレン基、エトキシメチレン基等の炭素数1〜30のアルキル基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入した置換基;ジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基等の炭素数1〜30のアルキル基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換した置換基;トリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基等の炭素数1〜30のアルキル基の一部の炭素をケイ素に置換した置換基、等を挙げることができる。
【0039】
該R
8〜R
10のうち少なくとも1つの置換基は、炭素数10以上のアルキル基であり、例えばデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ベヘニル基等を例示することができる。
【0040】
該M
3は、周期律表第15族の原子であり、周期律表第15族以外の原子である場合、得られる触媒は、超高分子量ポリエチレン粒子を効率的に製造することが困難となる。そして、該M
3としては、例えば窒素原子、リン原子等を挙げることができる。
【0041】
該[A
−]はアニオンであり、アニオンの範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンまたはヘキサフルオロリン酸イオン等を挙げることがきる。
【0042】
そして、該脂肪族塩の具体例としては、例えばN,N−ジメチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン硫酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミン硫酸塩等の脂肪族アミン塩;P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン硫酸塩等の脂肪族ホスフォニウム塩;等を挙げることができる。
【0043】
また、該有機変性粘土紛体(B)を構成する粘土化合物紛体としては、粘土化合物紛体の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、一般的にシリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1又は2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成され、一部のシリカ四面体のSiがAl、アルミナ八面体のAlがMg、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びており、この負電荷を補償するために層間にはNa
+やCa
2+等の陽イオンが存在しているものとして知られているものである。そして、該粘土化合物としては天然品、または合成品としてのカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在し、これらを用いることが可能であり、その中でも入手のしやすさと有機変性の容易さからスメクタイトが好ましく、特にスメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0044】
該有機変性粘土紛体(B)は、該粘土化合物紛体の層間に該脂肪族塩を導入し、イオン複合体を形成することにより得る事が可能である。該有機変性粘土紛体(B)を調製する際には、粘土化合物の濃度0.1〜30重量%、処理温度0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、該脂肪族塩は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により該脂肪族塩の溶液を調製してそのまま使用しても良い。該粘土化合物紛体と該脂肪族塩の反応量比については、粘土化合物紛体の交換可能なカチオンに対して当量以上の脂肪族塩を用いることが好ましい。処理溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール類;エチルエーテル、n−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン;1,4−ジオキサン;テトラヒドロフラン;水、等を用いることができる。そして、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0045】
また、該有機変性粘土紛体(B)のメジアン径を4μm以上、20μm以下かつ粒径の幾何標準偏差が0.15以下となるように制御するための方法としては、粉砕や造粒で直接制御する方法、粉砕や造粒後に分級する方法、等が挙げられ、スプレードライにより造粒で直接制御することが好ましい。また、粒径制御の後に変性をしても良いし、変性後に粒径制御を実施しても良く、なかでもスプレードライによる粒径制御は変性前に実施することが好ましい。
【0046】
そして、変性前の粘土化合物は水に分散させるとコロイド液となり、そのコロイド液をそのままスプレードライすると球状の粘土化合物紛体を得ることができる。
【0047】
その際に粘土コロイド液は濃度が高くなると粘度が高くなりゲル化が起こる傾向があるため、スプレードライヤーへの送液・供給が困難という課題が発生しやすくなるため、ゲル化防止剤としてピロリン酸ナトリウム及び/又はエチドロン酸ナトリウムを添加することが好ましい。その際、ゲル化防止剤の添加量としてはより効率的なゲル化防止が可能となることから粘土化合物に対して5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。そして、その際の粘土化合物としては、市販品として合成粘土にゲル化防止剤を添加済みのものとして、例えば(商品名)ラポナイトRDS(ビックケミー・ジャパン株式会社製、合成ヘクトライトにピロリン酸ナトリウムを添加)、(商品名)ラポナイトS482(ビックケミー・ジャパン株式会社製、合成ヘクトライトにエチドロン酸ナトリウムを添加)を挙げることができる。なお、ピロリン酸ナトリウムは水中で徐々に加水分解してゲル化防止作用のないリン酸ナトリウムに代わり、特に高温状態でそれが促進されるが、エチドロン酸ナトリウムは安定性が高いため、これを含む粘土コロイド液を加熱することで、粘度を下げることが可能である。
【0048】
一方、変性後の粘土化合物は水に分散させてもコロイド化しないため、有機変性粘土化合物スラリーをボールミル等の湿式粉砕で粉砕し、有機変性粘土化合物を1μm未満の微粒子にさせてからスプレードライを行う。湿式粉砕後の有機変性粘土化合物スラリーは粘度が著しく上昇するため、スラリー濃度は15重量%以下であることが好ましい。
【0049】
スプレードライの方式としては回転ディスク式、加圧ノズル式、二流体ノズル式、四流体ノズル式等が挙げられ、どの方式でも差し支えないが粒度分布を狭くすることが容易な回転ディスク式が好ましい。回転ディスク式ではコロイド液やスラリーを高速回転するディスクに滴下し、ディスクの遠心力で噴霧させるため、ディスクの直径や回転数により、噴霧液滴の大きさが変わり、液滴の乾燥によって得られる紛体の粒径を制御できる。
【0050】
有機変性粘土紛体(B)のメジアン径(d
50)は4μm以上、20μm以下かつ粒径の幾何標準偏差が0.15以下である。ここで幾何標準偏差とはlog(d
84/d
50)によって定義される粒度分布の広がりを示す指標であり、d
84は粒径の積分曲線が84%となる粒径である。紛体のメジアン径と標準偏差がこの範囲であると、本発明の触媒によって得られる超高分子量ポリエチレン粒子は、紛体特性に優れるものとなり、メジアン径100μm以上、200μm以下であり、粒子径の幾何標準偏差が0.15以下の超高分子量ポリエチレン粒子を効率よく得ることが可能となる。
【0051】
有機変性粘土紛体(B)の粒径は、レーザー回折・散乱式の粒径測定装置によって測定することができる。
【0052】
また、該有機変性粘土紛体(B)としては、粒子径分布、紛体特性、流動特性に優れる超高分子量ポリエチレン粒子を効率よく製造することが可能となる超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒となることから、円形度が0.9〜1の有機変性粘土紛体を90%以上含有するものであることが好ましい。ここで、円形度とは(投影面積の等しい円の周長)/(粒子の周長)で定義される指標であり、これが1に近いほど円に近くなる。円形度が1である粒子の比率が100%であった場合、これらの粒子は真球であると見なすことができる。円形度の測定方法は特に限定されないが、例えば粒子や紛体のSEM写真をとり、非常に細かい格子上に投影させ、投影部分の格子面積とその外周を測定することによって求めることが可能である。
【0053】
一般的にスプレードライによって得られる紛体は球状もしくは偏球状であることが多いが、原液の粘度が高く、液滴の乾燥が均一に進まないケースでは得られる紛体にへこみがあったり、中心に穴のある紛体ができたりする場合もあり、その際には円形度が0.9未満の紛体となる。また、ジェットミル等の粉砕法で得られる紛体は不定形状であるため、円形度が0.9未満となりやすい。
【0054】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒を構成する有機アルミニウム化合物(C)は、有機アルミニウム化合物と称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、その中でも、特に超高分子量エチレン系重合体粒子を生産効率よく製造することが可能な触媒系となることから、下記一般式(7)で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。ここで、有機アルミニウム化合物以外の化合物、例えばホウ素系化合物、メチルアルモキサン系化合物を用いた場合、触媒により得られるエチレン系重合体は、分子量が低いものとなったり、成形加工性に劣ったりなどの課題を有するものとなる。
【0055】
【化7】
【0056】
(式中、R
11は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
12及びR
13は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子または塩素原子である。)
該有機アルミニウム化合物としては、特に遷移金属化合物(A)を容易にアルキル化することが可能となることから、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0057】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒には非イオン性界面活性剤(D)を加えても良い。
【0058】
【化8】
【0059】
非イオン性界面活性剤(D)は、上記一般式(8)で表される化合物であることを特徴とする。そして、a、b、cはそれぞれ平均重合度を表す、1〜300の整数であり、好ましくはaとcはそれぞれ1〜60の整数であり、bは2〜100の整数であり、全分子量としては100〜20000であることが好ましい。また、mは1もしくは2であり、nは3〜20の整数であり、好ましくとしてmは2、nは3である。
【0060】
非イオン性界面活性剤(D)としては、具体的にはポリオキシメチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを挙げることができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤(D)を加えると、得られる超高分子量ポリエチレン粒子が帯電しにくくなり、反応器へのファウリング抑制や、静電付着による流動性の低下を防止することが可能となる。
【0062】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒を構成する該遷移金属化合物(A)(以下(A)成分ということもある。)、該有機変性粘土紛体(B)(以下、(B)成分ということもある。)及び該有機アルミニウム化合物(C)(以下、(C)成分ということもある。)の使用割合に関して、(A)成分、(B)成分および(C)成分については、超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特に超高分子量ポリエチレン粒子を生産効率よく製造することが可能な触媒となることから、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は((A)成分):((C)成分)=100:1〜1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。また、(A)成分と(B)成分の重量比が((A)成分):((B)成分)=10:1〜1:10000にあることが好ましく、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0063】
また、非イオン性界面活性剤(D)(以下、(D)成分ということもある)の使用比としては帯電防止作用と重合活性に優れることから(B)成分と(D)成分の重量比が((B)成分):((D)成分)=1:0.0001〜1:100の範囲であることが好ましく、特に((B)成分):((D)成分)=1:0.01〜20の範囲であることが好ましい。
【0064】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒の調製方法に関しては、該(A)成分、該(B)成分及び該(C)成分から調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよい。例えば各(A)、(B)及び(C)成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はないが、特に重合活性に優れることから、(B)成分および(C)成分を接触させたのちに、(A)成分を接触させた超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒とすることが好ましい。この際の処理を行う温度、処理時間に制限はない。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分のそれぞれを2種類以上用いて超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒系を調製することも可能である。
【0065】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子製造用触媒を用い得られる超高分子量ポリエチレン粒子としては、エチレンの単独重合体粒子のみならず他のα−オレフィンとの共重合体粒子であってもよく、これら重合により得られる超高分子量ポリエチレン粒子は、単独重合体粒子のみならず共重合体粒子も含む意味で用いられる。
【0066】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子の製造方法としては、スラリー重合法を挙げるができる。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0067】
また、ポリエチレンを共重合体とする際にエチレンとの共重合に用いるα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンを挙げることができる。
【0068】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子を製造する際の重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件については任意に選択可能であり、その中でも、効率よく超高分子量ポリエチレン粒子を製造することが可能となることから重合温度30〜90℃、重合時間10秒〜20時間、重合圧力常圧〜100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる超高分子量ポリエチレン粒子は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0069】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子は、粒子径分布、紛体特性、流動特性に優れる超高分子ポリエチレン粒子となることから、円形度0.9〜1の粒子が90%以上を占め、メジアン径が100μm以上200μm以下であり、デカリンを溶媒とし、135℃で測定した固有粘度(dL/g)が10以上60未満のものであることが好ましい。
【0070】
また、該超高分子量ポリエチレン粒子としては、特に流動特性、加工性に優れるものとなることから、その粒子径の幾何標準偏差が0.15以下であることが好ましい。
【0071】
なお、円形度、メジアン径、幾何標準偏差は、上記した方法と同様の方法により求めることができる。
【0072】
本発明の超高分子量ポリエチレン粒子は、成形加工性、力学特性に優れるものとなることから重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が2.0を超えて5.0以下、更には2.0を超えて4.0以下であることが好ましく、特に3.0を超えて4.0以下であることが好ましい。
【0073】
また、該超高分子量ポリエチレン粒子は、流動特性、成形加工性に優れるものとなることから、安息角が40°以下のものであることが好ましい。安息角の測定法は、粒子を自然落下させ、水平面に堆積させた時に粒子の作る角度を測定する注入法、容器底部の小さな穴から自然落下させ、容器内に残った粒子が作る角度を測定する排出法、容器内に粒子を入れ、容器を傾けた際に作る粒子の角度を測定する傾斜法等があり、それぞれで安息角が異なる場合もあるが、ここでは、注入法により測定した安息角を指す。