【実施例】
【0055】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0056】
[1]化合物の略語
p−PDA:p−フェニレンジアミン
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
FDA:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
TAHQ:p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
BPTME:p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
CHMI:シクロヘキシルマレイミド
エポリード GT−401:エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾 ε−カプロラクトン、(株)ダイセル製
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
BCS:ブチルセロソルブ
【0057】
[2]重量平均分子量及び分子量分布の測定方法
ポリマーの重量平均分子量(以下Mwと略す)及び分子量分布の測定は、日本分光(株)製GPC装置(カラム:Shodex製 KD801及びKD805;溶離液:ジメチルホルムアミド/LiBr・H
2O(29.6mM)/H
3PO
4(29.6mM)/THF(0.1質量%);流量:1.0mL/分;カラム温度:40℃;Mw:標準ポリスチレン換算値)を用いて行った。
【0058】
[3]ポリマーの合成
以下の方法によって、実施例及び比較例で使用する各種ポリマーを合成した。
なお、得られたポリマー含有反応液からポリマーを単離せず、後述の通りに、反応液を希釈することで、樹脂基板形成用組成物又は剥離層形成用組成物を調製した。
【0059】
<合成例S1 ポリアミック酸(S1)の合成>
p−PDA3.22g(29.8mmol)をNMP88.2gに溶解させた。得られた溶液にBPDA8.58g(29.2mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは107,300、分子量分布は4.6であった。
【0060】
<合成例S2 アクリルポリマー(S2)の合成>
MMA7.20g(7.19mmol)、HEMA7.20g(5.53mmol)、CHMI10.8g(6.03mmol)、MAA4.32g(5.02mmol)、AIBN2.46g(1.50mmol)をPGMEA46.9gに溶解し、60〜100℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度40質量%)を得た。得られたアクリル重合体のMwは7,300、分子量分布1.9であった。
【0061】
<合成例L1 ポリアミック酸(L1)の合成>
TFMB1.99g(6.20mmol)をNMP35.4gに溶解させた。得られた溶液に、TAHQ2.06g(9.47mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは41,000、分子量分布1.9であった。
【0062】
<合成例L2 ポリアミック酸(L2)の合成>
TFMB1.83g(5.70mmol)をNMP35.7gに溶解させた。得られた溶液に、BPTME3.05g(5.70mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは40,600、分子量分布2.0であった。
【0063】
<比較合成例HL1 ポリアミック酸(HL1)の合成>
FDA1.56g(4.47mmol)をNMP7.0gに溶解させた。得られた溶液に、BTDA1.44g(4.47mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは67,300、分子量分布2.0であった。
【0064】
<比較合成例HL2 ポリアミック酸(HL2)の合成>
p−PDA0.98g(9.02mmol)をNMP36.0gに溶解させた。得られた溶液に、BTDA3.03g(9.39mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは67,600、分子量分布1.8であった。
【0065】
[4]樹脂基板形成用組成物の調製
以下の方法によって、樹脂基板形成用組成物を調製した。
【0066】
<調製例1 樹脂基板形成用組成物F1>
合成例S1で得られた反応液をそのまま樹脂基板形成用組成物F1として用いた。
【0067】
<調製例2 樹脂基板形成用組成物F2>
合成例S2で得られた反応液10gにGT−401 0.61gとPGMEA5.06gを添加し、23℃で24時間撹拌して、樹脂基板形成用組成物F2を調製した。
【0068】
<調製例3 樹脂基板形成用組成物F3>
四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1020R(日本ゼオン(株)製、シクロオレフィンポリマー樹脂)10g及びGT−401 3gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間攪拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F3を調製した。
【0069】
<調製例4 樹脂基板形成用組成物F4>
四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1060R(日本ゼオン(株)製、シクロオレフィンポリマー樹脂)10gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間攪拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F4を調製した。
【0070】
[5]剥離層形成用組成物の調製
[実施例1−1]
合成例L1で得られた反応液に、BCSとNMPを加え、ポリマー濃度が5質量%、BCSが20質量%となるように希釈し、剥離層形成用組成物L1を得た。
【0071】
[実施例1−2]
合成例L1で得られた反応液の代わりに、合成例L2で得られた反応液を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で、剥離層形成用組成物L2を得た。
【0072】
[比較例1−1]
比較合成例HL1で得られた反応液に、BCSとNMPを加え、ポリマー濃度が5質量%、BCSが20質量%となるように希釈し、剥離層形成用組成物HL1を得た。
【0073】
[比較例1−2]
比較合成例HL2で得られた反応液に、BCSとNMPを加え、ポリマー濃度が5質量%、BCSが20質量%となるように希釈し、剥離層形成用組成物HL2を得た。
【0074】
[6]剥離層及び樹脂基板の作製
[実施例2−1]
スピンコータ(条件:回転数3,000rpmで約30秒)を用いて、実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1を、ガラス基体としての100mm×100mmガラス基板(以下同様)の上に塗布した。
そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱し、その後、オーブンを用いて、300℃で30分間加熱し、加熱温度を400℃まで昇温(10℃/分)し、更に400℃で30分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。なお、昇温の間、ガラス基板をオーブンから取り出すことはせず、オーブン内で加熱した。
【0075】
次に、バーコーター(ギャップ:250μm)を用いて、上記で得られたガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で30分間加熱し、その後、オーブンを用いて、140℃で30分間加熱し、加熱温度を210℃まで昇温(2℃/分、以下同様)し、210℃で30分間、加熱温度を300℃まで昇温し、300℃で30分間、加熱温度を400℃まで昇温し、400℃で60分間加熱し、剥離層上に厚さ約20μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。なお、昇温の間、ガラス基板をオーブンから取り出すことはせず、オーブン内で加熱した。
【0076】
[実施例2−2]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1を用いて、実施例2−1と同様の方法で剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
【0077】
スピンコータ(条件:回転数500rpmで約10秒)を用いて、上記で得られたガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F2を塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約5μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで80%以上の透過率を示した。
【0078】
[実施例2−3]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、実施例1−2で得られた剥離層形成用組成物L2を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0079】
[実施例2−4]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、実施例1−2で得られた剥離層形成用組成物L2を用いた以外は、実施例2−2と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0080】
[実施例2−5]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1を用いて、実施例2−1と同様の方法で剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、すぐにスピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、上記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F3を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで80%以上の透過率を示した。
【0081】
[実施例2−6]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、実施例1−2で得られた剥離層形成用組成物L2を用いた以外は、実施例2−5と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0082】
[実施例2−7]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1を用いて、実施例2−1と同様の方法で剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、すぐにスピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、上記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F4を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで80%以上の透過率を示した。
【0083】
[実施例2−8]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、実施例1−2で得られた剥離層形成用組成物L2を用いた以外は、実施例2−7と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0084】
[比較例2−1]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、比較例1−1で得られた剥離層形成用組成物HL1を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で剥離層及び樹脂基板を形成し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付ガラス基板を得た。
【0085】
[比較例2−2]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、比較例1−1で得られた剥離層形成用組成物HL1を用いた以外は、実施例2−2と同様の方法で剥離層及び樹脂基板を形成し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付ガラス基板を得た。
【0086】
[比較例2−3]
実施例1−1で得られた剥離層形成用組成物L1の代わりに、比較例1−2で得られた剥離層形成用組成物HL2を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で剥離層及び樹脂基板を形成し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付ガラス基板を得た。
【0087】
[7]剥離性の評価
上記実施例2−1〜2−8及び比較例2−1〜2−3で得られた剥離層付きガラス基板について、剥離層とガラス基板との剥離性を、樹脂基板・剥離層付きガラス基板について、剥離層と樹脂基板との剥離性を、下記手法にて確認した。
【0088】
<剥離層とガラス基板との剥離性評価>
実施例2−1〜2−8及び比較例2−1〜2−3で得られた剥離層付きガラス基板上の剥離層、並びに、樹脂基板・剥離層付きガラス基板上の剥離層及び樹脂基板をクロスカット(縦横2mm間隔、以下同様)し、25マスカットを行った。すなわち、このクロスカットにより、2mm四方のマス目を25個形成した。
そして、この25マスカット部分に粘着テープを張り付けて、そのテープを剥がし、以下の基準(5B〜0B,B,A,AA)に基づき、剥離の程度を評価した。
更に、全て剥離した基板のうち、実施例2−5〜2−8で作成した樹脂基板・剥離層付きガラス基板を用いて、剥離力評価試験を実施した。試験方法は、樹脂基板・剥離層付きガラス基板の樹脂基板を25mm×50mm幅の長方形に、カッターナイフにて樹脂基板の背面まで貫通するように切り込みを入れ、短冊を作製した。更に、作成した短冊上に、セロハンテープ(登録商標、ニチバンCT−24)をはった後、オートグラフAG−500N((株)島津製作所製)を用いて、基板の面に対して90度で、すなわち、垂直方向に剥離し、剥離力を測定し、100%剥離(すべて剥離)で、なおかつ剥離力が0.1N/25mm未満のものをAAAとした。
以上の結果を表1に示す。
<判定基準>
5B:0%剥離(剥離なし)
4B:5%未満の剥離
3B:5〜15%未満の剥離
2B:15〜35%未満の剥離
1B:35〜65%未満の剥離
0B:65%〜80%未満の剥離
B:80%〜95%未満の剥離
A:95%〜100%未満の剥離
AA:100%剥離(すべて剥離)
AAA:100%剥離で剥離力が0.1N/25mm未満
【0089】
<剥離層と樹脂基板との剥離性評価>
実施例2−1〜2−8及び比較例2−1〜2−3で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板について、上記の剥離性評価と同様の手順でその剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示される通り、実施例2−1〜2−8の剥離層は、ガラス基板との密着性に優れており、樹脂膜とは容易にはがれることが確認された。一方、比較例2−1〜2−3の剥離層は、ガラス基板との密着性に優れるが、樹脂基板との剥離性に劣っていることが確認された。