(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のコア部と前記第3のコア部との境界部分の角部、及び、前記第2のコア部と前記第3のコア部との境界部分の角部の少なくともいずれか一方が面取りされている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂光導波路。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0010】
(複合光導波路)
本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路を有する複合光導波路について、
図1から
図5に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合光導波路の概略斜視図である。
図2は、
図1の複合光導波路の概略側面図である。
図3は、
図1の複合光導波路のアディアバティック結合部位における概略横断面図である。
図4は、
図3の部分拡大図である。
図5は、
図1の複合光導波路のアディアバティック結合部位における概略縦断面図である。なお、
図5中の矢印は光が伝搬する方向を表している。また、
図1、
図2、
図3及び
図5においては、後述する接着剤40等、一部の図示を省略している。
【0011】
本発明の一実施形態に係る複合光導波路は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路と、前記樹脂光導波路の光導波部を収容するコネクタとを含む。より具体的な実施形態としては、
図1及び
図2に示されるように、複合光導波路1は、樹脂光導波路10と、シリコン光導波路20と、コネクタ30とを有する。
【0012】
樹脂光導波路10は、一端側がシリコン光導波路20との間でアディアバティック結合される部位(以下「アディアバティック結合部位50」という。)を形成する。また、樹脂光導波路10は、他端側がシングルモード光ファイバ等と接続される部位を形成し、シングルモード光ファイバ等と接続するためのコネクタ30に収容されている。
【0013】
このように、樹脂光導波路10は、シリコン光導波路20と樹脂光導波路10とを低損失、かつ、低コストで接続するシリコンフォトニクスインターフェースに使用される。このため、樹脂光導波路10は、シングルモード光導波路を伝搬する光信号を高密度化できるという観点から、シングルモード光導波路であることが好ましい。この場合、シリコン光導波路やシングルモード光ファイバに対しても低損失で光を伝搬できるという観点から、1310nm及び1550nmの少なくとも一方の波長において、シングルモード光導波路であることが好ましい。
【0014】
図3に示されるように、樹脂光導波路10は、複数のコア11と、クラッド12とを有する。コア11は、光が伝搬する方向に垂直な面の形状が例えば矩形に形成されている。クラッド12は、コア11よりも屈折率が低い材料により形成されている。これにより、樹脂光導波路10では、コア11中を光が伝搬する。
【0015】
図5に示されるようにシリコン光導波路20は、一端側が樹脂光導波路10の一端側との間でアディアバティック結合される部位を形成する。
【0016】
図3から
図5に示されるように、シリコン光導波路20は、コア21と、クラッド22とを有する。コア21は、光が伝搬する方向に垂直な面の形状が例えば矩形に形成されている。クラッド22は、コア21よりも屈折率が低い材料により形成されている。これにより、シリコン光導波路20では、コア21中を光が伝搬する。
【0017】
アディアバティック結合では、光の伝搬方向の所定距離にわたってエバネッセント光を捉えて伝搬させる。このため、
図5に示されるように、アディアバティック結合部位50では、樹脂光導波路10のコア11とシリコン光導波路20のコア21とが対向して配置されると共に、コア11とコア21との間にクラッド12及びクラッド22が設けられていない。即ち、アディアバティック結合部位50では、コア11及びコア21の一部である、コア11におけるコア21と対向する側と、コア21におけるコア11と対向する側が露出している。また、
図4に示されるように、アディアバティック結合部位50では、コア11とコア21とが対向した状態で配置され、エポキシ系樹脂等の接着剤40を用いて接合されている。
【0018】
シリコン光導波路20の接着剤40側の表面には、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属イオンの拡散を抑制するためにバリア層80を形成してもよい。バリア層80の厚さは、例えば0.01μm以上0.5μm以下である。バリア層80を構成する材料としては、例えば窒化珪素(Si
3N
4)を用いることができる。
【0019】
このようなアディアバティック結合された樹脂光導波路10とシリコン光導波路20とを有する複合光導波路1では、アディアバティック結合部位50を介してシリコン光導波路20のコア21から樹脂光導波路10のコア11へ光が伝搬する。又は、樹脂光導波路10のコア11からシリコン光導波路20のコア21へ光が伝搬する。
【0020】
(樹脂光導波路)
本実施形態に係る樹脂光導波路は、先述したようにコアと前記コアよりも屈折率が低いクラッドとを有し、光の伝搬方向に沿って、前記コアの少なくとも一部が露出した結合部と、前記コアの全周囲が前記クラッドで覆われた光導波部とから構成される。結合部のコアにおいて、光導波部の側の端部における幅Wbは、光導波部と反対側の端部における幅Waよりも大きい。
なお本明細書において、コアの「幅」とは、樹脂光導波路におけるコアの光が伝搬する方向に垂直な面(断面)の形状が矩形である場合、該矩形の長径を意味する。
【0021】
結合部のコアの幅のうち、光導波部と反対側の端部における幅Waは伝達損失を低減することができるという観点から4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。また、光導波部の側の端部における幅Wbは、安定したシングルモード伝搬を実現する観点から10μm以下が好ましく、9μm以下がより好ましい。
コアの幅Waとコアの幅Wbとの比(Wb/Wa)は伝達損失を低減する観点から1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.4以上がよりさらに好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路10の詳細について、
図6に基づき説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路の概略斜視図である。なお、説明の便宜上、
図1における樹脂光導波路10の上下を反転し、1つのコア11のみを示している。
【0023】
図6に示されるように、樹脂光導波路10は、コア11と、クラッド12とを有する。クラッド12は、オーバークラッド13と、アンダークラッド14とを有する。
【0024】
コア11は、クラッド12よりも屈折率が高い材料により形成されている。コア11は、その内部に屈折率分布を有していてもよい。この場合、コア11の中心から遠ざかる方向に屈折率が低くなる屈折率分布を有していてもよい。また、コア11のオーバークラッド13側の屈折率が高く、アンダークラッド14側の屈折率が低くなる屈折率分布を有していてもよく、オーバークラッド13側の屈折率が低く、アンダークラッド14側の屈折率が高くなる屈折率分布を有していてもよい。また、アディアバティック結合部位50では、コア11の高さをある程度小さくしないと伝搬モードの広がりが大きくならず、シリコン光導波路20と樹脂光導波路10との間で光を伝搬させることができない。このため、アディアバティック結合部位50でのコア11の高さは、5μm以下であることが好ましく、1μm以上4μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上3μm以下であることが特に好ましい。なお本明細書において、コアの「高さ」とは、樹脂光導波路におけるコアの光が伝搬する方向に垂直な面の形状が矩形である場合、該矩形の短径を意味する。
【0025】
オーバークラッド13は、コア11の上方に形成されている。オーバークラッド13の光の伝搬方向における長さは、コア11の光の伝搬方向における長さよりも短くなるように形成されている。これにより、コア11の光の伝搬方向に沿って、コア11の上方が露出した部分である結合部15と、コア11がオーバークラッド13及びアンダークラッド14に覆われた部分である光導波部16とが形成されている。樹脂光導波路10とシリコン光導波路20とがアディアバティック結合する際には、結合部15がアディアバティック結合部位50となる。結合部15は、例えばコア11の上方に樹脂光導波路10の全長にわたってオーバークラッド13を形成した後、フォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングすることにより形成される。
【0026】
結合部15は、コア11の上方にオーバークラッド13が形成されておらず、コア11の上方が露出した部分である。結合部15は、樹脂光導波路10とシリコン光導波路20との接続部位となるため、シリコン光導波路20との接続部位として使用するのに十分な長さを有していることが求められる。具体的には、樹脂光導波路10の光の伝搬方向における結合部15の長さは、100μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、1000μm以上であることが特に好ましい。但し、樹脂光導波路10の光の伝搬方向における結合部15の長さが長すぎると、接着剤40を用いてシリコン光導波路20と接合すると、接着剤40の光吸収が大きくなり、伝達損失が高くなる場合がある。このため、樹脂光導波路10の光の伝搬方向における結合部15の長さは、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、3000μm以下であることが特に好ましい。
【0027】
オーバークラッド13は、コア11よりも屈折率が低い材料により形成されている。オーバークラッド13は、単一の屈折率を有するものであってもよく、コア11に対し近位側と遠位側とで屈折率が異なる部位を有していてもよい。この場合、コア11に対し遠位側に向けて屈折率が低くなる構成であってもよく、コア11に対し遠位側に向けて屈折率が高くなる構成であってもよい。オーバークラッド13の厚さは特に限定されないが、樹脂光導波路10がシングルモード光導波路の場合、10μm以上であることが好ましい。これにより、コア11の中心から10μm程度の範囲内にあるクラッド12に光が漏れ出し、光の伝達損失が高くなることを抑制できる。
【0028】
アンダークラッド14は、コア11の下方に形成されている。アンダークラッド14の光の伝搬方向における長さは、コア11の光の伝搬方向における長さと略同一となるように形成されている。アンダークラッド14は、コア11よりも屈折率が低い材料により形成されている。アンダークラッド14は、オーバークラッド13と同一の材料により形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。アンダークラッド14は、単一の屈折率を有するものであってもよく、コア11に対し近位側と遠位側とで屈折率が異なる部位を有していてもよい。この場合、コア11に対し遠位側に向けて屈折率が低くなる構成であってもよく、コア11に対し遠位側に向けて屈折率が高くなる構成であってもよい。アンダークラッド14の厚さは特に限定されないが、樹脂光導波路10がシングルモード光導波路の場合、光の伝達損失を低減することができるという観点から、10μm以上であることが好ましい。これにより、コア11の中心から10μm程度の範囲内にあるクラッド12に光が漏れ出し、光の伝達損失が高くなることを抑制できる。
【0029】
コア11及びクラッド12を構成する材料としては、コア11の屈折率よりもクラッド12の屈折率が低くなるような屈折率の差が生じる材料であれば特に限定されない。例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノキシ樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザンのような各種の樹脂材料や、有機無機ハイブリット材料を用いることができる。これらの材料のうち、フッ素系樹脂は、吸水率又は吸湿率が低く、高温高湿に対する耐性に優れ、化学的な安定性が高いため、コア11やクラッド12の材料として好適である。フッ素系樹脂をコア11及び/又はクラッド12に用いた樹脂光導波路10は、外的環境の変化、特に湿度の変化による屈折率の変動が小さくて特性が安定しており、また、光通信波長帯域における透明性が高い。
【0030】
次に、樹脂光導波路10のコア11について、
図7(a)及び(b)に基づき説明する。
図7(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路のコアを説明するための図であり、
図7(a)は、アディアバティック結合部位を含む断面を示し、
図7(b)は、アディアバティック結合部位を含む上面を示している。なお、説明の便宜上、
図7(a)及び(b)では1つのコアのみを示している。
【0031】
図7(a)に示されるように、樹脂光導波路10は、アディアバティック結合部位50において、コア11とコア21とが対向した状態で配置され、接着剤40を用いて接合されている。
【0032】
また、
図7(b)に示されるように、樹脂光導波路10のコア11は、結合部15の光導波部16の側の端部における幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部における幅Waよりも大きくなるように形成されている。これにより、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ伝搬する光の伝達損失を低減することができる。これは、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ光を伝搬させるときの伝達損失が、アディアバティック結合部位50では、コア11の幅が小さい方が低くなるのに対し、シリコン光導波路20のコア21の端部TE及びシリコン光導波路20の基板端CEでは、コア11の幅が大きい方が低くなると考えられるからである。
【0033】
より具体的には、樹脂光導波路10のコア11は、光の伝搬方向に沿って第1のコア部111と、第3のコア部113と、第2のコア部112とをこの順に有することが好ましい。
【0034】
第1のコア部111は、結合部15の光導波部16と反対側の端部を含み第1の長さL1及び第1の幅W1を有する。第2のコア部112は、結合部15の光導波部16の側の端部を含み第2の長さL2及び第1の幅W1よりも広い第2の幅W2を有する。第3のコア部113は、第1のコア部111と第2のコア部112との間に設けられ、第1の幅W1から第2の幅W2に変化する第3の長さL3を有する。
【0035】
また、第1の長さL1と、第2の長さL2と、第3の長さL3とを用いて、L3/(L1+L2+L3)により算出される値は、樹脂光導波路10のコア11が剥がれることを防ぐため、0.01以上であることが好ましい。また、L3/(L1+L2+L3)により算出される値は、0.95以下であることが好ましい。これにより、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ光を伝搬させる際、アディアバティック結合部位50における伝達損失を低減することができ、かつ、シリコン光導波路20のコア21の端部TE及び基板端CEにおける伝達損失を低減することができる。L3/(L1+L2+L3)により算出される値は、より好ましくは0.05以上0.9以下であり、さらに好ましくは0.1以上0.8以下である。
【0036】
次に、樹脂光導波路10のコア11の他の例について、
図8に基づき説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路のコアを説明するための図であり、アディアバティック結合部位を含む上面を示している。なお、説明の便宜上、
図8では1つのコアのみを示している。
【0037】
図8に示されるコア11は、
図7に示されるコア11の第1のコア部111と第3のコア部113との境界部分の角部、及び、第2のコア部112と第3のコア部113との境界部分の角部が面取りされている。これにより、コア11が剥がれることを特に抑制することができる。このように、一実施形態においては、樹脂光導波路の第1のコア部と第3のコア部の境界部分の角部、及び、第2のコア部と第3のコア部との境界部分の少なくともいずれか一方が面取りされている。
【0038】
次に、樹脂光導波路10のコア11の更に他の例について、
図9に基づき説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路のコアを説明するための図であり、アディアバティック結合部位を含む上面を示している。なお、説明の便宜上、
図9では1つのコアのみを示している。
【0039】
図9に示されるように、樹脂光導波路10のコア11は、結合部15の光導波部16の側の端部における幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部における幅Waよりも大きくなるように形成されている。より具体的には、樹脂光導波路10のコア11は、結合部15の光導波部16の側の端部から結合部15の光導波部16と反対側の端部に向かってコア11の幅が狭くなるテーパ状に形成されている。すなわち、結合部におけるコアの幅が、結合部の光導波部側の端部から、結合部の光導波部と反対側の端部に向かって単調に減少している。単調に減少するとは、直線的に減少していてもよいし、曲線的に減少していてもよく、
図9は直線的に減少している例である。これにより、
図7に示される場合と同様に、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ伝搬する光の伝達損失を低減することができる。
【0040】
次に、樹脂光導波路10のコア11の更に他の例について、
図10に基づき説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路のコアを説明するための図であり、アディアバティック結合部位を含む上面を示している。なお、説明の便宜上、
図10では1つのコアのみを示している。
【0041】
図10に示されるように、樹脂光導波路10のコア11は、結合部15の光導波部16の側の端部における幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部における幅Waよりも大きくなるように形成されている。より具体的には、樹脂光導波路10のコア11は、結合部15の光導波部16の側のアディアバティック結合部位50の端部から結合部15の光導波部16と反対側の端部に向かってコア11の幅が狭くなる円弧状に形成されている。すなわち、結合部におけるコアの幅が、結合部の光導波部側の端部から、結合部の光導波部と反対側の端部に向かって曲線的に減少している。
図10では凸円弧状にコアの幅が狭くなっているが、凹円弧状にコアの幅が狭くなってもよい。これにより、
図7に示される場合と同様に、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ伝搬する光の伝達損失を低減することができる。
【0042】
(樹脂光導波路の製造方法)
本発明の一実施形態に係る樹脂光導波路10の製造方法の一例について説明する。
【0043】
まず、スピンコート法により、基板の上に第1の硬化性樹脂組成物を塗布する。続いて、第1の硬化性樹脂組成物を硬化させてアンダークラッド14を形成する。
【0044】
次に、スピンコート法により、アンダークラッド14の上に第2の硬化性樹脂組成物を塗布する。続いて、フォトリソグラフィプロセスにより、第2の硬化性樹脂組成物をパターニングし、アンダークラッド14の上にコア11を形成する。このとき、コア11の幅が光の伝搬方向に沿って異なる形状を形成する場合、コア11の幅が光の伝搬方向に沿って異なる形状のフォトマスクを用いて露光を行った後、現像することによってコア11を形成することができる。また、コア11を形成した後、必要に応じてポストベークを行ってもよい。
【0045】
次に、スピンコート法により、アンダークラッド14及びコア11の上に第3の硬化性樹脂組成物を塗布する。続いて、第3の硬化性樹脂組成物を硬化させてオーバークラッド13を形成する。オーバークラッド13を形成する際、フォトリソグラフィプロセスにより、オーバークラッド13が形成される領域(光導波部16)及びオーバークラッド13が形成されずコア11が露出した領域(結合部15)を形成することができる。
【0046】
以上の方法により、樹脂光導波路10を製造することができる。なお、硬化性樹脂組成物を塗布する際、硬化性樹脂組成物を十分に静置して脱泡した後、塗布することが好ましい。これにより、コア11の内部やコア11とクラッド12との界面近傍に泡欠陥が存在しない樹脂光導波路10を製造することができる。また、硬化性樹脂組成物を十分に静置して脱泡することに加えて又は代えて、脱泡装置を利用して脱泡を行うことが好ましい。また、硬化性樹脂組成物を塗布する前に、硬化性樹脂組成物のろ過を行うことが好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物内の異物を取り除くことができる。また、硬化性樹脂組成物を塗布する前に、基板の洗浄を行うことが好ましい。これにより、基板の表面の異物を取り除くことができる。また、空気中の異物の付着を防ぐため、これらの作業をクリーンルーム内で行うことが好ましく、静電気による異物の付着を防ぐため、静電気除去器(イオナイザー)を使用することが更に好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
以下に示す実施例では、シミュレーション・エンジンである双方向BPM法による光ファイバ・導波路設計・解析ソフトウェアBeamPROP(RSoft Design Group社製)を使用し、
図7に示す構造においてTEモードの光伝搬のシミュレーションを有限差分ビーム伝搬法で行った。
【0049】
シミュレーションにおいては、RSoft CAD(RSoft Design Group社製)により、樹脂光導波路10及びシリコン光導波路20の構造(サイズ及び屈折率)を定義した。シミュレーションにおける樹脂光導波路10及びシリコン光導波路20の構造を以下に示す。
<樹脂光導波路10>
(コア11)
幅Wa 3μm、4μm、5μm、6μm、7μm
幅Wb 4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm
コアの高さ 2.345μm
屈折率 1.53
長さL1 1500μm
長さL2 400μm
長さL3 150μm
(クラッド12)
アンダークラッド14の厚さ 15μm
オーバークラッド13の厚さ 15μm
屈折率 1.516
<シリコン光導波路20>
(コア21)
幅 アディアバティック結合部位50において、結合部15の光導波部16と反対側の端部から光導波部16側の端部に向かって0.4μmから0.12μmまで線形に変化(直線的に減少)
高さ 0.19μm
屈折率 3.45
アディアバティック結合部位50の長さ 1750μm
(クラッド22)
厚さ 15μm
屈折率 1.45
クラッド22のみが存在する領域60の長さ 250μm
<接着剤40>
樹脂厚(樹脂光導波路10のコア11とシリコン光導波路20のコア21のそれぞれが向かい合う側の面の距離) 1.0μm、1.5μm
屈折率 1.508
シリコン光導波路20と樹脂光導波路10の光導波部16との間の領域70の長さ 50μm
<バリア層80>
厚さ 0.03μm
屈折率 1.989
以下、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ光を伝搬させたときのシミュレーション結果について、
図11から
図14に基づき説明する。
【0050】
図11は、樹脂光導波路のコアの幅と伝達損失との関係を説明するための図であり、コアの幅を変化させたときの伝達損失を示している。
図11中、横軸は光の伝搬方向における位置(μm)を示しており、コア11の結合部15の光導波部16と反対側の端部の位置を0μmとしている。
図11中、縦軸は伝達損失(dB)を示している。また、
図11中、(Wa,Wb)=(6μm,9μm)であるときの伝達損失を実線、(Wa,Wb)=(6μm,6μm)であるときの伝達損失を破線、(Wa,Wb)=(9μm,9μm)であるときの伝達損失を一点鎖線で示している。
【0051】
図11に示されるように、(Wa,Wb)=(6μm,9μm)である場合、(Wa,Wb)=(6μm,6μm)である場合、及び、(Wa,Wb)=(9μm,9μm)である場合と比較して、伝達損失が低くなっていることが分かる。即ち、結合部15の光導波部16の側の端部におけるコア11の幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部におけるコア11の幅Waよりも大きくなるように形成することにより、伝達損失を低減することができる。
【0052】
図12は、樹脂光導波路のコアの幅と伝達損失との関係を説明するための図であり、樹脂光導波路のコアの幅Wbが7μmの時のコアの幅Waと伝達損失(dB)との関係を示している。
図12中、樹脂光導波路とシリコン光導波路とを接合する接着剤の厚さが1.0μmである場合の伝達損失を実線、接着剤の厚さが1.5μmである場合の伝達損失を破線で示している。
【0053】
図12に示されるように、コア11の幅Waが3.0μmの場合、接着剤40の厚さによらず伝達損失が高くなっている。これに対し、コア11の幅Waが4.0μm以上の場合、接着剤40の厚さによらず伝達損失が低くなっている。
【0054】
図13は、樹脂光導波路のコアの幅と伝達損失との関係を説明するための図であり、樹脂光導波路とシリコン光導波路とを接合する接着剤の厚さdが1.0μmである場合のWb/Waと伝達損失との関係を示している。
図13中、横軸はWb/Waを示し、縦軸は伝達損失(dB)を示している。また、
図13中、Waが4μmであるときの伝達損失を実線、Waが5μmであるときの伝達損失を破線、Waが6μmであるときの伝達損失を一点鎖線、Waが7μmであるときの伝達損失を二点鎖線で示している。
【0055】
図13に示されるように、Wb/Waにより算出される値が1.0よりも大きい場合、Waの値によらず、Wb/Waが1.0である場合と比較して、伝達損失が低くなっていることが分かる。即ち、結合部15の光導波部16の側の端部におけるコア11の幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部におけるコア11の幅Waよりも大きくなるように形成することにより、伝達損失を低減することができる。特に、Wb/Waにより算出される値は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましく、1.4以上であることが好ましい。これにより、樹脂光導波路10における伝達損失を特に低減することができる。
【0056】
また、
図13に示されるように、Waが4μm、5μm、6μm、7μmと大きくなるに伴って伝達損失が特に低くなっていることが分かる。即ち、伝達損失を低減することができるという観点から、結合部15の光導波部16と反対側の端部における幅Waは、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、6μm以上であることがさらに好ましい。
【0057】
なお、Wbが10μmより大きくなると安定したシングルモード伝搬を実現することが困難になるため、結合部15の光導波部16の側の端部における幅Wbは、10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましい。すなわち、Wb/Waには好ましい上限が存在し、10/Waが好ましい上限であり、より好ましくは9/Waである。
【0058】
図14は、樹脂光導波路のコアの幅と伝達損失との関係を説明するための図であり、樹脂光導波路とシリコン光導波路とを接合する接着剤の厚さdが1.5μmである場合のWb/Waと伝達損失との関係を示している。
図14中、横軸はWb/Waを示し、縦軸は伝達損失(dB)を示している。また、
図14中、Waが4μmであるときの伝達損失を実線、Waが5μmであるときの伝達損失を破線、Waが6μmであるときの伝達損失を一点鎖線で示している。
【0059】
図14に示されるように、接着剤40の厚さdが1.5μmである場合においても、接着剤40の厚さdが1.0μmである場合(
図13)と同様の傾向を示していることが分かる。具体的には、
図14に示されるように、Wb/Waにより算出される値が1.0よりも大きい場合、Waの値によらず、Wb/Waが1.0である場合と比較して、伝達損失が低くなっていることが分かる。即ち、結合部15の光導波部16の側の端部におけるコア11の幅Wbが、結合部15の光導波部16と反対側の端部におけるコア11の幅Waよりも大きくなるように形成することにより、伝達損失を低減することができる。特に、Wb/Waにより算出される値は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましく、1.4以上であることが特に好ましい。これにより、樹脂光導波路10における伝達損失を特に低減することができる。
【0060】
また、
図14に示されるように、Waが4μm、5μm、6μmと大きくなるに伴って伝達損失が特に低くなっていることが分かる。即ち、伝達損失を低減することができるという観点から、結合部15の光導波部16と反対側の端部における幅Waは、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好まく、6μm以上であることがさらに好ましい。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0062】
なお、上記の実施形態では、コア11及びコア21の光が伝搬する方向に垂直な面の形状が矩形である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば台形、円形、楕円形であってもよい。また、コア11及びコア21の光が伝搬する方向に垂直な面の形状が矩形、台形等の多角形である場合、その角部が丸みを帯びていてもよい。コア11及びコア21の光が伝搬する方向に垂直な面の形状が台形、円形、楕円形である場合、コア11及びコア21の幅は、アディアバティック結合部位50でのコア11及びコア21の高さが半分のところで計測する。
【0063】
また、上記の実施形態では、コア11の周囲に形成されているオーバークラッド13及びアンダークラッド14のうち、結合部15に形成されていないクラッド12をオーバークラッド13としたが、これに限定されない。例えば、結合部15に形成されていないクラッド12をアンダークラッド14としてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、シリコン光導波路20から樹脂光導波路10へ光を伝搬させる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、樹脂光導波路10からシリコン光導波路20へ光を伝搬させる場合についても同様の構成により本発明の効果を奏することができる。
【0065】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年9月6日出願の日本特許出願(特願2016−173839)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。