(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
(従来の貫通電極付き基板の製造方法)
まず、本発明の特徴をより良く理解するため、
図1〜
図7を参照して、従来の貫通電極付き基板の製造方法について、簡単に説明する。
【0014】
図1には、従来の貫通電極付き基板の製造方法(以下、単に「従来の製造方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0015】
図1に示すように、従来の製造方法は、
(1)基板に非貫通孔を形成する工程(非貫通孔形成工程:工程S10)、
(2)スパッタ法により、非貫通孔に金属層を設置する工程(スパッタ工程:工程S20)、
(3)電気めっき法により、非貫通孔に導電性材料を充填する工程(電気めっき工程:工程S30)、および
(4)基板の非貫通孔が形成された表面の導電性材料をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)法で除去し、その後反対側の表面を研磨して、貫通孔を形成する工程(貫通孔形成工程:工程S40)、
を有する。
【0016】
以下、
図2〜
図7を参照して、各工程について、より詳しく説明する。
【0017】
(工程S10)
まず、被加工用の基板が準備される。基板は、相互に対向する第1の表面および第2の表面を有する。基板は、例えば、ガラス基板または半導体基板である。
【0018】
次に、この基板の第1の表面に、1以上の非貫通孔が形成される。非貫通孔は、例えば、レーザ加工法により形成される。
【0019】
図2には、第1の表面12および第2の表面14を有し、第1の表面12に非貫通孔20が形成された基板10の断面を模式的に示す。
図2に示すように、通常の場合、非貫通孔20は、高いアスペクト比を有する。ここで、「アスペクト比」とは、非貫通孔20の
最大幅(通常は直径)wに対する深さdの比、すなわちd/wを意味する。
【0020】
(工程S20)
次に、工程S10で形成された非貫通孔20内に、金属層がスパッタ成膜される。
【0021】
この工程は、非貫通孔20内にシード層を形成するために実施される。金属層はシード層として機能する。このシード層により、以降の電気めっき工程(工程S30)において、非貫通孔20内に導電性材料を電析させ、非貫通孔20を導電性材料で充填することができる。
【0022】
図3には、基板10の第1の表面12および各非貫通孔20内に金属層40が形成された状態を示す。
【0023】
(工程S30)
次に、電気めっき法により、非貫通孔20内に導電性材料が充填される。前述のように、非貫通孔20内には、予め金属層40が設置されている。このため、例えば基板10がガラスのような非導電性材料で構成されている場合であっても、電気めっき法により、非貫通孔20内に導電性材料を電析させ、これを非貫通孔20内に充填することができる。
【0024】
図4には、各非貫通孔20内に導電性材料60が充填された状態を示す。通常の場合、導電性材料60は、基板10の第1の表面12にも形成される。なお、この
図4では、明確化のため、金属層40は省略されている。
【0025】
(工程S40)
次に、基板10の第1の表面12の導電性材料をCMPにて除去し、第2の表面14が非貫通孔20の先端に到達するまで、基板10が第2の表面14の側から研磨される。
【0026】
図5には、工程S40後に得られる基板10の断面を模式的に示す。
図5に示すように、この工程により、非貫通孔20が第1の表面12から第2の表面14までつながり、内部に導電性材料60が充填された貫通孔70が形成される。
【0027】
以上の工程により、貫通電極付き基板80を製造することができる。
【0028】
ここで、従来の製造方法では、製造される貫通電極付き基板80において、しばしば、貫通孔70に導電性材料60が十分に充填されていないという問題が生じる場合がある。
【0029】
これは、従来の製造方法では、工程S10の非貫通孔形成工程で形成される非貫通孔20のアスペクト比が比較的大きく、工程S20のスパッタ工程において、非貫通孔20の表面(正確には非貫通孔20を形成する壁面)全体にわたって、金属層40を設置することが難しいためである。
【0030】
この問題を、
図6および
図7を参照してさらに説明する。
【0031】
図6には、スパッタ工程(工程S20)前の非貫通孔20の拡大断面を模式的に示す。また、
図7には、スパッタ工程(工程S20)後の非貫通孔20の拡大断面を模式的に示す。
【0032】
図6に示すように、非貫通孔20は、基板10の第1の表面12における開口22、側壁24、および底部壁26により区画される。
【0033】
スパッタ工程後には、
図7に示すように、非貫通孔20の側壁24および底部壁26に、金属層40が設置される。
【0034】
ここで、非貫通孔20のアスペクト比が高い場合、側壁24における金属層40は、非貫通孔20の深さ方向に沿って、厚さが徐々に減少する傾向を示す。その結果、特に、非貫通孔20の側壁24と底部壁26の境界領域27、およびその近傍の領域(「近傍領域」という)28では、金属層40が全く設置されない箇所が生じてしまう。
【0035】
金属層40がこのように分布する状態で、次の工程
S30の電気めっき工程を実施した場合、非貫通孔20の金属層40が存在しない領域では、導電性材料60を電析させることが難しくなる。その結果、工程S30後には、非貫通孔20内に、導電性材料60が充填されていないボイドが生じてしまう。
【0036】
このようなボイドは、その後の工程S40を実施した後も残存することになり、貫通孔70内に、導電性材料60が十分に充填されていない部分が生じることになる。
【0037】
このように、従来の製造方法では、しばしば、製造される貫通電極付き基板において、貫通孔70内に導電性材料60が十分に充填されていないという問題が生じてしまう。
【0038】
本発明の一実施形態は、以降に詳しく説明するように、このような問題に対処することができる。
【0039】
(本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板)
次に、
図8〜
図10を参照して、本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板について説明する。
【0040】
図8には、本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板(以下、「第1の部材」と称する)の断面を模式的に示す。
【0041】
図8に示すように、第1の部材100は、相互に対向する第1の表面112および第2の表面114を有する基板110を有する。基板110の材質は、特に限られない。基板110は、例えば、ガラス基板のような無機材料で構成される無機基板、またはシリコンのような半導体などで構成される半導体基板でも良い。
【0042】
基板110の第1の表面112の側には、複数の非貫通孔120が形成されている。また、その結果、基板110の第1の表面112には、各非貫通孔120の開口部122が生じている。開口部122は、直径φ
1の略円形である。
【0043】
なお、開口部122の直径φ
1は、下記のように求めることができる:
まず、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により、ガラス基板の非貫通孔が形成された表面の二次元画像を撮影する。
【0044】
次に、撮影した二次元画像から任意の3個を選択し、これらの3個の開口部について最大径を測定する。
【0045】
測定された3個の最大径の算術平均値を、直径φ
1とする。
【0046】
ここで、
図8に示した例では、合計5つの非貫通孔120が示されているが、非貫通孔120の数は、特に限られない。例えば、非貫通孔120は、一つであっても良い。また、複数の非貫通孔120が存在する場合、各非貫通孔120の形状は、相互に異なっていても良い。
【0047】
図9には、
図8に示した基板110における一つの非貫通孔120の断面を拡大して示す。ここで、
図9に示した断面は、対象となる非貫通孔120の延伸軸Pに沿った、開口部122の直径を通る一つの断面(以下、「第1の断面」ともいう)に対応する。延伸軸Pは、非貫通孔120の開口部122の中心からの垂線である。この垂線は、開口部122の中心から先端部129に向かって延伸する。
【0048】
なお、本願において、「第1の断面」は、以下の手順で観察することができる:
カッターなどの切断器具を用いて、非貫通孔120を傷つけないようにして、非貫通孔120の10〜100μm手前で基板110を分断する。基板110の分断面を透過型光学顕微鏡で観察することにより、「第1の断面」を観察することができる。なお、この方法では、基板110は、第1の表面112に対して垂直な方向に分断することが好ましい。
【0049】
別の方法として、基板110の断面を徐々に研磨して、非貫通孔120の「第1の断面」を発現させ、これを観察することも可能である。
【0050】
図9に示すように、この第1の断面において、非貫通孔120は、側部123および先端部129を有する。換言すれば、非貫通孔120は、基板110の開口部122、側壁(非貫通孔120の側部123に対応する)、および底部壁(非貫通孔120の先端部129に対応する)によって区画される。
【0051】
非貫通孔120の先端部129は、「丸い形状」となっている。従って、
図9に示すように、第1の断面において、先端部129の形状は、直径φ
2の円(「近似円」ともいう)131で近似することができる。
【0052】
ここで、「丸い形状」とは、曲線を有する形状全般を意味し、連続的な曲線を有する形状には限定されないことに留意する必要がある。
【0053】
また、近似円の直径は、孔先端部129を最小二乗近似することにより得られた円の直径から、得ることができる。近似円の例として、側部123から連続する孔先端部129において、側部123の直線(後述の直線L)から外れる点の内接円として近似することができる。
【0054】
第1の部材100において、各非貫通孔120の深さdは、例えば、30μm以上である。
【0055】
本明細書において、深さdとは、ガラス基板の非貫通孔の開口部側の表面から非貫通孔の最も深い箇所(先端部)までの距離(深さ)を表す。この深さdは、透過型光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により、断面の2次元画像を撮影し、撮影された2次元画像を解析(測長)して、非貫通孔の最大深さを求めることにより、得ることができる。
【0056】
深さdは、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。深さdは、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下が特に好ましい。また、深さdは、30μm〜400μmの範囲であることが好ましく、40〜300μmの範囲であることがより好ましく、50μm〜250μmの範囲であることが特に好ましい。
【0057】
また、非貫通孔120の開口部122の直径φ
1は、例えば、5μm〜200μmの範囲である。直径φ
1は、例えば5μm以上であり、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。直径φ
1は、例えば200μm以下であり、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また、直径φ1は、10μm〜150μmの範囲であることが好ましく、15μm〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0058】
さらに、開口部122の直径φ
1に対する先端部129の近似円131の直径φ
2の比、すなわち比φ
2/φ
1は、0.03〜0.9の範囲である。比φ
2/φ
1は、0.03以上、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。比φ
2/φ
1は、0.9以下であり、0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.45以下が特に好ましい。また、比φ
2/φ
1は、0.05〜0.8の範囲であることが好ましく、0.05〜0.6の範囲であることがより好ましい。
【0059】
さらに、第1の部材100において、各非貫通孔120の「テーパ角(α)」は、2゜〜80゜の範囲にあるという特徴を有する。
【0060】
以下、
図10を参照して、非貫通孔120の「テーパ角」について説明する。
【0061】
図10には、第1の部材100に含まれる非貫通孔120の断面形態の一例を示す。前述の
図9と同様、この断面は、非貫通孔120の延伸軸Pに沿った、開口部122の直径を通る一つの断面に対応しており、従って、第1の断面である。
【0062】
図10に示すように、非貫通孔120は、側部123および先端部129を有する。なお、
図10では、非貫通孔120の開口部122は、第1の表面112となだらかな曲線で接続された形態となっている。しかしながら、これは単なる一例であることに留意する必要がある。例えば、非貫通孔120の開口部122は、前述の
図9に示したように、第1の表面112と非曲線的に接続されても良い。
【0063】
ここで、第1の断面において視認される、非貫通孔120の側部123を区画する基板110の部分を、それぞれ、第1の側壁135(図の左側部分)および第2の側壁137(図の右側部分)と称する。第1の側壁135および第2の側壁137は、延伸軸Pに対して略対称に配置される。
【0064】
「テーパ角」は、以下の方法により定めることができる。
【0065】
まず、第1の断面において、延伸軸Pに沿って、開口部122から非貫通孔120の深さ方向に第1の距離d
1(d
1=0.1×d)にある、第1の側壁135上の点をAとする。また、延伸軸Pに沿って、開口部122から非貫通孔120の深さ方向に第2の距離d
2(d
2=0.5×d)にある、第1の側壁135上の点をBとする。ここでdは、非貫通孔120の深さである。
【0066】
次に、点Aと点Bを結ぶ直線Lを描くと、直線Lと延伸軸Pは、ある角度で交差する。この直線Lと延伸軸Pのなす角がテーパ角α(0゜<α<90゜)である。
【0067】
なお、第1の側壁135の代わりに、第2の側壁137上の同様に規定される2点を結ぶ直線を利用して、テーパ角αを定めることも可能である。第1の側壁135上で規定される2点を結ぶ直線を利用して定められるテーパ角(α1とする)と第2の側壁137上で規定される2点を結ぶ直線を利用して定められるテーパ角(α2とする)は同じことが好ましいが、異なっていてもよい。テーパ角α1、α2が異なっている場合は、両者が2°〜80°の範囲にあるものとする。
【0068】
ただし、直線Lと延伸軸Pは、開口部122よりも下側(
図10において、Z座標が正となる位置)で交わる必要があり、開口部122よりも上側(
図10において、Z座標が負となる位置)で交わることはないことに留意する必要がある。後者の場合、非貫通孔は、「逆テーパ形状」、すなわち深さ方向に向かって径が徐々に大きくなる形状を有することになり、前述の問題に対処することは難しくなる。
【0069】
テーパ角αは、2°以上であり、4°以上が好ましく、5°以上がより好ましい。テーパ角αは、80°以下であり、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、15°以下が特に好ましい。また、テーパ角αは、4°〜45゜の範囲であることが好ましく、5°〜15゜の範囲であることがより好ましい。
【0070】
以上のような構成の非貫通孔120を有する第1の部材100は、前述のような金属層のスパッタ工程において、非貫通孔120内に金属層が付着されない、いわゆるデッドスペースが生じ難い。このため、第1の部材100を使用した場合、スパッタ工程において、比較的容易に、非貫通孔120の側部123および先端部129の全体にわたって、金属層を設置することができる。
【0071】
従って、第1の部材100では、前述の電気めっき工程において、非貫通孔120の側部123および先端部129の全体にわたって、導電性材料を電析させることができる。また、その結果、非貫通孔120の全体に導電性材料を充填することが可能となり、従来のような非貫通孔さらには貫通孔にボイドが生じるという問題を、有意に軽減または解消することができる。
【0072】
(本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板の製造方法)
次に、本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板の製造方法について、簡単に説明する。
【0073】
本発明の一実施形態による非貫通孔を有する基板の製造方法(以下、「第1の製造方法」という)は、
(i)基板にレーザ光を照射し、非貫通孔を形成する工程(工程S110)、および
(ii)非貫通孔が形成された前記基板をエッチングする工程(工程S120)
を有する。
【0074】
以下、各工程について説明する。なお、ここでは、前述の第1の部材100を製造する場合を例に、第1の製造方法の各工程について説明する。従って、各部材を表す際には、
図8〜
図10に使用した参照符号を使用する。
【0075】
(工程S110)
まず、被加工用の基板110が準備される。前述のように、基板110は、ガラス基板または半導体基板(例えばシリコン基板)であっても良い。
【0076】
基板110の厚さは、特に限られない。基板110の厚さは、例えば、0.04mm〜2.0mmの範囲であっても良い。
【0077】
次に、基板110の一方の表面(第1の表面112)に、1以上の非貫通孔120が加工、形成される。
【0078】
非貫通孔120は、レーザ光の照射により形成されても良い。レーザ光源としては、例えば、CO
2レーザ、YAGレーザ等が用いられる。
【0079】
(工程S120)
次に、非貫通孔120を有する基板110がエッチング処理される。基板110をエッチングすることにより、工程S110において形成された非貫通孔120を、所望の形状に整えることができる。すなわち、前述のような丸い先端部129を有し、所定の範囲の開口部122の直径φ
1、比φ
2/φ
1、およびテーパ角αを有する非貫通孔120を形成することができる。
【0080】
エッチングの条件は、特に限られない。例えば、基板110がガラス基板の場合、湿式エッチングが実施される。エッチング液には、例えば、フッ酸(HF)と塩酸(HCl)の混合酸溶液が使用されても良い。
【0081】
あるいは、基板110がシリコン基板の場合、ドライエッチングが実施されても良い。この場合、例えば、SF
6のようなガスが使用されても良い。
【0082】
このように、レーザ光の照射とエッチングを組み合わせることにより、所望の形状の非貫通孔120を有する第1の部材100を製造することができる。
なお、製造された第1の部材100に対して、さらに、
(iii)スパッタ法により、非貫通孔に金属層を設置する工程、
(iv)電気めっき法により、非貫通孔に導電性材料を充填する工程、および
(v)基板の非貫通孔が形成された表面の導電性材料をCMP法等の研磨により除去し、その後反対側の表面を研磨して、貫通孔を形成する工程
を実施しても良い。
【0083】
例えば、(iii)の工程を実施した場合、シード層が設置された非貫通孔を有する基板を製造することができる。また、(iii)〜(iv)の工程を実施した場合、非貫通孔に導電性材料が充填された基板を製造することができる。さらに、(iii)〜(v)の工程を実施した場合、導電性材料が充填された貫通孔を有する基板、すなわち貫通電極付き基板を製造することができる。特に、最後の態様では、基板がガラス基板の場合、貫通電極付きガラスコア基板を製造することができる。
【0084】
なお、(iii)〜(v)の各工程は、当業者には明らかであるため、ここではその詳細な説明は省略する。(例えば、前述の工程S20〜工程S40に関する記載も参照され得る。)
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の記載において、例1〜例4は、実施例であり、例5〜例6は、比較例である。
【0086】
(例1)
以下の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。
【0087】
まず、厚さ500μmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。また、このガラス基板の一方の表面(第1の表面)から、レーザ光を照射し、ガラス基板に非貫通孔を形成した。
【0088】
レーザ光には、パルスエネルギーが20μJのUVナノ秒パルスレーザを使用した。レーザ光のショット数は、100回とした。
【0089】
次に、このガラス基板をエッチャント中に浸漬し、湿式エッチングを行った。
【0090】
エッチャントには、フッ酸と塩酸の混合酸溶液(HF:HCl=1:5)を使用した。エッチングレートは、1.5μm/分とし、エッチング量は、ガラス基板の厚さ換算で20μmとした。
【0091】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル1」と称する)を製造した。
【0092】
図11には、サンプル1の非貫通孔部分の断面の一例(透過型光学顕微鏡写真)を示す。
【0093】
図11に示すように、サンプル1では、延伸軸に沿った断面の先端部が丸い形状の非貫通孔が形成された。また、非貫通孔は、深さ方向に沿って、径が徐々に減少する、いわゆるテーパ形状を有することがわかった。
【0094】
(例2)
例1と同様の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。ただし、この例2では、レーザ光のショット数を200回に変更した。
【0095】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル2」と称する)が製造された。
【0096】
図12には、サンプル2の非貫通孔部分の断面の一例を示す。
【0097】
図12に示すように、サンプル2では、延伸軸に沿った断面の先端部が丸い形状の非貫通孔が形成された。また、非貫通孔は、深さ方向に沿って、径が徐々に減少する、いわゆるテーパ形状を有することがわかった。
【0098】
(例3)
例1と同様の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。ただし、この例3では、レーザ光のショット数を400回に変更した。
【0099】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル3」と称する)が製造された。
【0100】
サンプル3では、延伸軸に沿った断面の先端部が丸い形状の非貫通孔が形成された。また、非貫通孔は、深さ方向に沿って、径が徐々に減少する、いわゆるテーパ形状を有することがわかった。
【0101】
(例4)
以下の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。
【0102】
まず、厚さ420μmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。また、このガラス基板の一方の表面(第1の表面)から、レーザ光を照射し、ガラス基板に非貫通孔を形成した。
【0103】
レーザ光には、出力が50WのCO
2レーザを使用した。レーザ光の照射時間は、45μ秒とした。
【0104】
次に、このガラス基板をエッチャント中に浸漬し、湿式エッチングを行った。
【0105】
エッチャントには、フッ酸と塩酸の混合酸溶液(HF:HCl=1:5)を使用した。エッチングレートは、1.5μm/分とし、エッチング量は、ガラス基板の厚さ換算で40μmとした。
【0106】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル4」と称する)を製造した。
【0107】
図13には、サンプル4の非貫通孔部分の断面の一例を示す。
【0108】
図13に示すように、サンプル4では、延伸軸に沿った断面の先端部が丸い形状の非貫通孔が形成された。また、非貫通孔は、深さ方向に沿って、径が徐々に減少する、いわゆるテーパ形状を有することがわかった。
【0109】
(例5)
以下の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。
【0110】
まず、厚さ530μmのガラス基板(石英ガラス)を準備した。また、このガラス基板の一方の表面(第1の表面)から、レーザ光を照射し、ガラス基板に非貫通孔を形成した。
【0111】
レーザ光には、パルスエネルギーが40μJのUVナノ秒パルスレーザを使用した。レーザ光のショット数は、180回とした。
【0112】
次に、このガラス基板をエッチャント中に浸漬し、湿式エッチングを行った。
【0113】
エッチャントには、フッ酸を使用した。エッチングレートは、0.3μm/分とし、エッチング量は、ガラス基板の厚さ換算で20μmとした。
【0114】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル5」と称する)を製造した。
【0115】
図14には、サンプル5の非貫通孔部分の断面の一例を示した。
【0116】
(例6)
以下の方法により、非貫通孔を有する基板を製造した。
【0117】
まず、厚さ200μmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。また、このガラス基板の一方の表面(第1の表面)から、レーザ光を照射し、ガラス基板に非貫通孔を形成した。
【0118】
レーザ光には、パルスエネルギー100μJのピコ秒パルスレーザを使用した。レーザ光の波長は、532nmとし、レーザ光のショット数は、1回とした。
【0119】
次に、このガラス基板をエッチャント中に浸漬し、湿式エッチングを行った。
【0120】
エッチャントには、フッ酸と塩酸の混合酸溶液(HF:HCl=1:5)を使用した。エッチングレートは、0.2μm/分とし、エッチング量は、ガラス基板の厚さ換算で30μmとした。
【0121】
これにより、非貫通孔を有する基板(以下、「サンプル6」と称する)を製造した。
【0122】
図15には、サンプル6の非貫通孔部分の断面の一例を示した。
【0123】
以下の表1には、各サンプルにおいて得られた非貫通孔の形状パラメータをまとめて示す。
【0124】
【表1】
表1から、サンプル1〜サンプル4では、開口部の直径φ
1が5μm〜200μmの範囲にあり、深さdが30μm以上であることがわかった。また、サンプル1〜サンプル4では、非貫通孔の先端部の形状は円で近似でき、開口部の直径φ
1に対する先端部の近似円の直径φ
2の比、すなわち比φ
2/φ
1は、0.03〜0.9の範囲であることがわかった。さらに、テーパ角αが2゜〜15゜の範囲にあることがわかった。
【0125】
これに対して、サンプル5では、テーパ角αが2゜を下回り、サンプル6では、非貫通孔の先端部は、尖っていることがわかった。
【0126】
以上の結果から、サンプル1〜サンプル4では、サンプル5およびサンプル6に比べて、スパッタ工程を実施した際に、比較的容易に、非貫通孔の側部および先端部に、金属層を設置することができるものと予想される。
【0127】
本願は、2016年11月14日に出願した日本国特許出願2016−221890号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願に参照により援用する。