(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば10,000倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、フィルムの面内リターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のリターデーションRthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。但し複数の位相差板を組み合わせたものを1枚の位相差板であるとみなした場合においては、nxは遅相軸方向として設定した面内方向における屈折率であり、nyはそれに直交する面内方向の屈折率である。面内リターデーションReは、必要に応じてコーシーフィッティング等の処理を行い測定誤差の影響を減らした値を採用しうる。
【0013】
以下の説明において、構成要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0014】
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光学軸(偏光子の透過軸、位相差板の遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
【0016】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa〜500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0017】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0018】
〔1.位相差板〕
本発明の位相差板は、面内方向に配向させた液晶材料の層を含む。
【0019】
本願において、「液晶材料」とは、液晶化合物(即ち、それ自体又は他の物質との混合物が液晶相を呈しうる化合物)を含む液晶組成物を硬化させてなる材料である。液晶材料は、通常は、重合性の液晶化合物の重合体を含みうる。
【0020】
本願において、「面内方向に配向させた」液晶材料の層とは、当該層において、液晶化合物の分子の全体又は一部分が、当該層の面内のある方向に配向した構造を有する液晶材料である。面内方向に配向させた液晶材料は、通常は、液晶組成物の層を形成し、当該液晶組成物中の液晶化合物を配向させ、当該配向を維持した状態で液晶組成物を硬化させることにより得うる。液晶材料の配向は、1の方向としうるがこれには限られない。例えば、液晶材料を形成するための液晶化合物が一分子中に複数のメソゲンを有し、それらが別々の方向に配向しうる場合、面内の2以上の方向に配向した液晶材料を得うる。液晶材料の層は、通常、液晶材料からなる層としうる。
【0021】
本発明の位相差板は、液晶材料の層のみからなってもよく、液晶材料の層に加えて他の層を含んでもよい。
【0022】
液晶材料の層の厚みは、特に限定されず、所望の光学的特性が発現する任意の厚みとしうる。液晶材料の層の厚みは、通常0.3〜8μmとしうる。
【0023】
本発明の位相差板は、その波長λnmにおける面内リターデーションRe(λ)が、下記式(e1)及び(e2)を満たす。
{Re(400)−Re(550)}/{(Re(550)−Re(700)}<2.90 (e1)
Re(400)/Re(700)>1.13 (e2)
【0024】
本発明者の見出したところでは、位相差板の面内リターデーションRe(λ)が式(e1)を満たすことにより、他の位相差板と組み合わせて複層位相差板とすることにより、広い波長範囲において、均等な光学的効果を得ることができる。具体的には、位相差板と他の位相差板を組み合わせて1/4波長板等の複層波長板として用いる場合において、可視光領域の広い範囲又は全ての範囲にわたり、理想的な波長板に近い効果を得ることができる。より具体的には、1/4波長板は、可視光領域の全ての波長において、Re(λ)=λ/4の関係を満たすことが理想である。上記式(e1)を満たす位相差板は、他の位相差板と組み合わせて複層位相差板とすることにより、そのようなリニアな相関を容易に得ることができる。加えて、上記式(e2)を満たすことにより、広い波長範囲における均等な光学的効果を、薄い厚みの位相差板において実現することができる。
【0025】
以下の説明においては、ある位相差板についての式(e1)の左辺即ち{Re(400)−Re(550)}/{(Re(550)−Re(700)}の値を、当該位相差板のリニア性指標という場合がある。本発明の位相差板のリニア性指標は、2.90以下であり、好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。リニア性指標が正確に1である場合、理想的な複層位相差板を構成しうる。そのため、リニア性指標の下限は、例えば1以上としうる。
【0026】
本発明の位相差板は、下記式(e3)を満たすことが好ましい。
Re(400)/Re(700)≧1.50 (e3)
【0027】
式(e3)を満たすことにより、広い波長範囲における均等な光学的効果を、薄い厚みの複層位相差板において実現することができる。そのため、本発明の位相差板を含む偏光板及び表示装置の厚みを薄くすることができ、且つ重量を軽くすることができる。Re(400)/Re(700)の値は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.70以上、さらに好ましくは1.90以上である。一方Re(400)/Re(700)の値の上限は、特に限定されないが、例えば3.5以下としうる。
【0028】
〔2.位相差板の製造方法〕
本発明の位相差板は、液晶化合物を含む液晶組成物を硬化させることにより製造しうる。位相差板の製造は、より具体的には、液晶組成物の層を形成し、当該液晶組成物中の液晶化合物を配向させ、当該配向を維持した状態で液晶組成物を硬化させ、液晶材料を形成することにより行いうる。
【0029】
好ましい例として、液晶材料は、下記一般式(I)で表される液晶化合物の重合物を含みうる。即ち、本発明の位相差板を製造するための液晶化合物の好ましい例として、下記一般式(I)で表される重合性の液晶化合物が挙げられる。
【0031】
ここで、式(I)中、Arは、Dを置換基として有する2価の芳香族炭化水素環基、または、Dを置換基として有する2価の芳香族複素環基である。1個のArにおけるDの数は通常1個である。Arを構成する芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、Dの他に、それ以外の置換基を有していてもよい。
ここで、Dは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素数1〜67、好ましくは炭素数2〜67の有機基である。すなわち、Dは、芳香環のみからなる基であってもよいし、芳香環及び芳香環以外の構造の両方を有する有機基であってもよい。
Dは、芳香族炭化水素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよく、それら以外の有機基であってもよい。
ここで、「芳香族炭化水素環基」の文言は、分子のある部分であって、芳香族炭化水素環を含み、結合を介して分子の残余の部分と連結するものであり、且つかかる結合が、当該ある部分の芳香族炭化水素環から直接残余の部分へ延長する結合であるものである。例えば、アルキルフェニル基は、芳香族炭化水素環基である。一方、フェニルアルキル基は、芳香族炭化水素環を有する有機基であるものの、芳香族炭化水素環基以外の有機基である。
同様に、「芳香族複素環基」の文言は、分子のある部分であって、芳香族複素環を含み、結合を介して分子の残余の部分と連結するものであり、且つかかる結合が、当該ある部分の芳香族複素環から直接残余の部分へ延長する結合であるものである。
【0032】
そして、Arを構成する2価の芳香族炭化水素環基の例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、アントラセニル−9,10−ジイル基、アントラセニル−1,4−ジイル基、およびアントラセニル−2,6−ジイル基等が挙げられる。
これらの中でも、2価の芳香族炭化水素環基としては、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基および2,6−ナフチレン基が好ましく、1,4−フェニレン基が特に好ましい。
【0033】
また、Arを構成する2価の芳香族複素環基の例としては、ベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、1,2−ベンゾイソチアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾオキサゾール−4,7−ジイル基、インドール−4,7−ジイル基、ベンゾイミダゾール−4,7−ジイル基、ベンゾピラゾール−4,7−ジイル基、1−ベンゾフラン−4,7−ジイル基、2−ベンゾフラン−4,7−ジイル基、ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ジチアゾリル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ジチアゾリル−4,8−ジイル基、ベンゾチオフェニル−4,7−ジイル基、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジフラニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[2,1−b:4,5−b’]ジピロール−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジピロール−4,8−ジイル基、およびベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ジイミダゾール−4,8−ジイル基等が挙げられる。
これらの中でも、2価の芳香族複素環基の例としては、ベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾオキサゾール−4,7−ジイル基、1−ベンゾフラン−4,7−ジイル基、2−ベンゾフラン−4,7−ジイル基、ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ジチアゾリル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ジチアゾリル−4,8−ジイル基、ベンゾチオフェニル−4,7−ジイル基、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェニル−4,8−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジフラニル−4,8−ジイル基およびベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラニル−4,8−ジイル基が好ましい。
【0034】
Arを構成する芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、Dの他に、後述する置換基R
0を有していてもよい。
【0035】
また、本明細書において、「芳香環」とは、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造を意味する。すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、および、チオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。
【0036】
また、前記Arの中に含まれるπ電子の数は、通常20以下であり、好ましくは8以上12以下である。
【0037】
また、前記Arを構成する芳香環に含まれるπ電子の数は、芳香環あたり、通常20以下であり、好ましくは8以上18以下であり、8以上12以下が特に好ましい。当該芳香環が置換基を有し当該置換基がさらに芳香環を含む場合、Arを構成する芳香環に含まれる「π電子の数」とは、当該置換基の芳香環に含まれるπ電子の数をも合算した合計のπ電子の数を意味する。また、Ar中に芳香環以外の環構造にπ電子が存在する場合、環構造に直接組み込まれているものは算用するが、環構造中に直接組み込まれていないπ電子(例えば、結合手中に存在するπ電子など)は算用しない。
【0038】
Dを構成する芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、およびフルオレン環等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、およびアントラセン環が好ましい。
【0039】
また、Dを構成する芳香族複素環の具体例としては、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環、1−ベンゾフラン環、2−ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジン環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、およびベンゾピラゾール環、等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族複素環としては、フラン環、ピラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、およびチアジアゾール環等の単環の芳香族複素環、ならびにベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、1−ベンゾフラン環、2−ベンゾフラン環、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、およびベンゾチアジアゾール環等の縮合環の芳香族複素環が好ましい。
【0040】
Dの具体例としては、特に限定されることなく、
(D−1)置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、
(D−2)置換基を有していてもよい芳香族複素環基、
(D−3)式−C(R
f)=N−N(R
g)R
hで表される基、
(D−4)式−C(R
f)=N−N=C(R
g1)R
hで表される基、及び、
(D−5)式−C(R
f)=N−N=R
h1で表される基
が挙げられる。
上記式中、R
fは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
また、上記式中、R
gおよびR
g1は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。ここで、炭素数1〜30の有機基およびその置換基の例としては、後述するAyの炭素数1〜30の有機基およびその置換基の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
更に、上記式中、R
hは、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基を表す。R
hの具体例としては、後述するAxの炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
上記式中、R
h1は、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基を表す。R
h1の具体例としては、後述するAzの炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
【0041】
Dが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基(D−1)である場合の芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0042】
Dが置換基を有していてもよい芳香族複素環基(D−2)である場合の芳香族複素環基の例としては、フタルイミド基、1−ベンゾフラニル基、2−ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基、等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、およびチアジアゾリル基等の単環の芳香族複素環基、ならびにベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1−ベンゾフラニル基、2−ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、およびベンゾチアジアゾリル基等の縮合環の芳香族複素環基が好ましい。
【0043】
(D−3)〜(D−5)の構成要素としての、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基の例としては、インダニル基、インデニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、並びに、1,4−ジヒドロナフチル基、1,2−ジヒドロナフチル基、1,3−ベンゾジオキソニル基、1,4−ベンゾジオキサニル基、2,3−ジヒドロベンゾフラニル基、1,3−ジヒドロイソベンゾフラニル基、3,4−ジヒドロ−1H−2−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラニル基、4H−1−ベンゾピラニル基、2H−1−ベンゾピラニル基、1H−2−ベンゾピラニル基、4−オキソ−4H−1−ベンゾピラニル基、4−クロマノン基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロフラニル基、およびテトラヒドロフラニル基、1(3H)−イソベンゾフラノン基等が挙げられる。
これらの中でも、インダニル基、インデニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、1,4−ジヒドロナフチル基、1,2−ジヒドロナフチル基、1,3−ベンゾジオキソニル基、1,4−ベンゾジオキサニル基、3,4−ジヒドロ−1H−2−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラニル基、4H−1−ベンゾピラニル基、2H−1−ベンゾピラニル基、1H−2−ベンゾピラニル基、4−オキソ−4H−1−ベンゾピラニル基、4−クロマノン基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロフラニル基、およびテトラヒドロフラニル基が好ましい。
【0044】
Dを構成する芳香族炭化水素環および芳香族複素環(例えば、(D−1)を構成する芳香族炭化水素環、(D−2)を構成する芳香族複素環、並びに(D−3)〜(D−5)を構成する芳香族炭化水素環および芳香族複素環)、並びにDである芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基、及び、Dである、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は、一つの環あたり一つでもよく複数でもよい。一つの環が複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。
かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数1〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF
3;−C(=O)−R
b1;−O−C(=O)−R
b1;−C(=O)−O−R
b1;−SO
2R
a;等が挙げられる。
ここで、R
b1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。
また、R
aは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜12のアルキル基;又は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の、炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基を表す。
これらの中でも、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、および炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0045】
R
b1が置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合における、炭素数1〜20のアルキル基およびその置換基の具体例、R
b1が置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合における、炭素数2〜20のアルケニル基およびその置換基の具体例、R
b1が置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における、炭素数3〜12のシクロアルキル基およびその置換基の具体例、ならびにR
b1が置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基である場合における、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基およびその置換基の具体例としては、それぞれ後述する、R
bが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合における、炭素数1〜20のアルキル基およびその置換基の具体例、R
bが置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合における、炭素数2〜20のアルケニル基およびその置換基の具体例、R
bが置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における、炭素数3〜12のシクロアルキル基およびその置換基の具体例、ならびにR
bが置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基である場合における、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基およびその置換基の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
【0046】
そして、上述したArの例としては、式−C(R
f)=N−N(R
g)R
hで表される基で置換されたフェニレン基、式−C(R
f)=N−N=C(R
g1)R
hで表される基で置換されたフェニレン基、式−C(R
f)=N−N=R
h1で表される基で置換されたフェニレン基、式−C(R
f)=N−N(R
g)R
hで表される基で置換されたナフチレン基、式−C(R
f)=N−N=C(R
g1)R
hで表される基で置換されたナフチレン基、式−C(R
f)=N−N=R
h1で表される基で置換されたナフチレン基、1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−(2−ブチル)−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4,6−ジメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、6−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4,6,7−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4,5,6−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、7−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−フルオロ−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、フェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−フルオロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−ニトロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−トリフルオロメチルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−シアノフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−メタンスルホニルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、チオフェン−3−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−メチルチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−クロロチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、2−ベンゾチアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−ビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−プロピルビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−チアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、1−フェニルエチレン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、4−ピリジル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、2−フリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、ナフト[1,2−b]フラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基、5−メトキシ−2−ベンゾチアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基、フェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基、4−ニトロフェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基、および、2−チアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基等が挙げられる。ここで、R
f、R
g、R
g1、R
h及びR
h1は前記と同じ意味を表す。
【0047】
ここで、Arとしては、下記式(IIa−1)〜(IIa−7)、式(IIb−1)〜(IIb−7)、および式(IIc−1)〜(IIc−7)の何れかで示される基が好ましい。
【0049】
上記式(IIa−1)〜(IIa−7)、式(IIb−1)〜(IIb−7)、および式(IIc−1)〜(IIc−7)中、
Axは、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基を表し、
Ayは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表し、
Azは、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する有機基を表し、
AxおよびAxが有する芳香環は置換基を有していてもよく、
Qは、水素原子または、炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、Qの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0050】
また、R
0は、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ターシャリーブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;炭素数2〜6のアルケニル基;炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;炭素数2〜12のN,N-ジアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;−C(=O)−R
a1;−C(=O)−O−R
a1;または−SO
2R
a1を表し、R
a1は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を表す。R
0が複数の場合は、複数のR
0は互いに同一でも異なっていてもよい。R
0としては、溶解性向上の観点から、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基が好ましい。
さらに、n1は0〜3であり、n2は0〜4であり、n3は0または1であり、n4は0〜2である。そして、n1=0、n2=0、n3=0、n4=0であることが好ましい。
R
a1の例としての、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜12のアルケニル基、および、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等の炭素数1〜12のアルキニル基等が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。
【0051】
Arとしては、下記式(iia−1)〜(iia−21)、式(iib−1)〜(iib−21)、および式(iic−1)〜(iic−21)で表される構造がさらに好ましい。下記式においては、結合状態をより明確にすべく、Z
1とZ
2を便宜上記載している。式中、Z
1、Z
2、Ax、Ay、Az、Q、R
0、n1、n2、n3、n4は前記と同じ意味を表す。なかでも、式(iia−1)、(iia−2),(iia−10)、(iia−12)、式(iib−1)、(iib−2),(iib−10)、(iib−12)、式(iic−1)、(iic−2),(iic−10)、(iic−12)が特に好ましい。
【0061】
Axは、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環および芳香族複素環を有するものであってもよい。また、芳香族炭化水素環および芳香族複素環を複数有する場合は、それぞれが同じであっても異なっていてもよい。
【0062】
Axが有する芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましい。
【0063】
また、Axが有する芳香族複素環の例としては、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環、1−ベンゾフラン環、2−ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、およびベンゾピラゾール環、等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族複素環としては、フラン環、ピラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、およびチアジアゾール環等の単環の芳香族複素環;ならびにベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、1−ベンゾフラン環、2−ベンゾフラン環、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、およびベンゾチアジアゾール環等の縮合環の芳香族複素環が好ましい。
【0064】
Axが有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF
3;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;および−SO
2R
a;等が挙げられる。ここで、R
bは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。また、R
aは、上記と同じ意味を表す。これらの中でも、Axが有する芳香環の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
Axは、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。Axが複数の置換基を有する場合、置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0065】
R
bが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合における、炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、およびn−イコシル基等が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
【0066】
R
bが置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合における、炭素数2〜20のアルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
【0067】
R
bが置換基を有する炭素数1〜20のアルキル基である場合および置換基を有する炭素数2〜20のアルケニル基である場合における置換基の数は、一つでもよく複数でもよい。複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。当該置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチアゾール−2−イルチオ基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;およびベンゾジオキサニル基等が挙げられる。これらの中でも、R
bにおける当該置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルキル基が好ましい。
【0068】
R
bが置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における炭素数3〜12のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
R
bが置換基を有する炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における置換基の数は、一つでもよく複数でもよい。複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。当該置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基等が挙げられる。中でも、R
bの炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基が好ましい。
【0069】
R
bが置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基である場合における炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
R
bが置換基を有する炭素数5〜12である場合における置換基の数は、一つでもよく複数でもよい。複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。当該置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルキル基;−OCF
3;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。中でも、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルキル基;−OCF
3から選ばれる1以上の置換基が好ましい。
【0070】
ここで、Axが有する芳香環は、同一の、または、相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよく、不飽和環であっても、飽和環であってもよい。
Axに含まれる炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環の「炭素数」は、環に結合した置換基の炭素原子を含まない、環自体の炭素数を意味する。
【0071】
Axの具体例としては、以下の(Ax−1)〜(Ax−5)が挙げられる。
(Ax−1)1以上の炭素数6〜30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6〜40の炭化水素環基、
(Ax−2)炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素数2〜40の複素環基、
(Ax−3)炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の1以上で置換された、炭素数1〜12のアルキル基、
(Ax−4)炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の1以上で置換された、炭素数2〜12のアルケニル基、および
(Ax−5)炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の1以上で置換された、炭素数2〜12のアルキニル基。
【0072】
(Ax−1)における芳香族炭化水素環の具体例としては、Axが有する芳香族炭化水素環の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。(Ax−1)における炭化水素環基の具体例としては、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基(フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等)、インダニル基、インデニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、並びに、1,4−ジヒドロナフチル基、1,2−ジヒドロナフチル基等が挙げられる。
【0073】
(Ax−2)における芳香族炭化水素環および芳香族複素環の具体例としては、Axが有する芳香族炭化水素環および芳香族複素環の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。(Ax−2)における複素環基の具体例としては、炭素数2〜30の芳香族複素環基(フタルイミド基、1−ベンゾフラニル基、2−ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロフラニル基、およびテトラヒドロフラニル基等)、2,3−ジヒドロインドリル基、9,10−ジヒドロアクリジニル基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル基、1,4−ベンゾジオキサニル基、2,3−ジヒドロベンゾフラニル基、1,3−ジヒドロイソベンゾフラニル基、3,4−ジヒドロ−1H−2−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラニル基、4H−1−ベンゾピラニル基、2H−1−ベンゾピラニル基、1H−2−ベンゾピラニル基等が挙げられる。
【0074】
(Ax−3)における炭素数1〜12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。(Ax−3)における炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の具体例としては、(Ax−1)及び(Ax−2)におけるそれらの具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
【0075】
(Ax−4)における炭素数2〜12のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。(Ax−4)における炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の具体例としては、(Ax−1)及び(Ax−2)におけるそれらの具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
【0076】
(Ax−5)における炭素数2〜12のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。(Ax−5)における炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基および炭素数2〜30の芳香族複素環基の具体例としては、(Ax−1)及び(Ax−2)におけるそれらの具体例として列記したものと同じものが挙げられる。
【0077】
上において列挙した有機基が、さらに1または複数の置換基を伴うものも、(Ax−1)〜(Ax−5)の例に含まれうる。複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
【0078】
かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF
3;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;等が挙げられる。ここでR
b及びR
aは、前記と同じ意味を表す。
これらの中でも、(Ax−1)〜(Ax−5)が有する置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる1以上の置換基が好ましい。
【0079】
Axの好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明は以下に示すものに限定されるものではない。下記式中、「−」は環の任意の位置からのびるN原子(即ち、式(IIa−1)〜(IIa−7)および式(IIb−1)〜(IIb−7)においてAxと結合するN原子)との結合手を表す。
【0080】
(Ax−1)における炭化水素環基の具体例としては、下記式(1−1)〜(1−20)で表される基が挙げられ、式(1−9)〜(1−20)等で表される炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基が好ましい。
【0083】
(Ax−2)における複素環基の具体例としては、下記式(2−1)〜(2−51)で表される基が挙げられ、式(2−12)〜(2−51)等で表される炭素数2〜30の芳香族複素環基が好ましい。
【0087】
〔各式中、Xは、−CH
2−、−NR
c−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO
2−を表し、
YおよびZは、それぞれ独立して、−NR
c−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO
2−を表し、
Eは、−NR
c−、酸素原子または硫黄原子を表す。
ここで、R
cは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−は、それぞれ隣接しないものとする。)〕
【0088】
(Ax−3)におけるアルキル基の具体例としては、下記式(3−1)〜(3−8)で表される基が挙げられる。
【0090】
(Ax−4)におけるアルケニル基の具体例としては、下記式(4−1)〜(4−5)で表される基が挙げられる。
【0092】
(Ax−5)のにおけるアルキニル基の具体例としては、下記式(5−1)〜(5−2)で表される基が挙げられる。
【0094】
上述したAxの好ましい具体例が、さらにその環において1または複数の置換基を伴なうものも、Axの例に含まれうる。そして、複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF
3;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;等が挙げられる。
ここで、R
bおよびR
aは前記と同じ意味を表す。これらの中でも、Axが有する置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0095】
上述した中でも、Axは、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、又は炭素数2〜30の芳香族複素環基であることが好ましい。
そして、Axは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基、又は、炭素数4〜20の芳香族複素環基であることがより好ましく、上記式(2−3)及び式(2−13)、式(2−15)、式(2−30)で示される基のいずれかであることが一層好ましい。
【0096】
前述した通り、上記の環は1または複数の置換基を有していてもよい。複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数1〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;等が挙げられる。
ここで、R
bおよびR
aは前記と同じ意味を表す。
これらの中でも、上記環が有する置換基としてはハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0097】
そして、Axとしては、下記式(III−1)〜(III−7)で表される基が更に好ましい。
【0099】
ここで、式(III−1)〜(III−7)中、R
2〜R
12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、−OCF
3、または、−C(=O)−O−R
bを表し、R
bは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。なかでも、R
2〜R
12が全て水素原子であるか、R
2〜R
12のうちの1以上が置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基であり、且つ残りが水素原子であることが好ましい。
【0100】
そして、C−R
2〜C−R
5同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する1以上のC−R
2〜C−R
5は、窒素原子に置き換えられていてもよい。
【0101】
ここで、上記式(III)で表される基のC−R
2〜C−R
5のうちの1以上が窒素原子に置き換えられた基の具体例としては、下記式(III−1−1)〜(III−1−8)で表される構造が挙げられる。但し、C−R
2〜C−R
5のうちの1以上が窒素原子に置き換えられた基はこれらに限定されるものではない。
【0103】
〔各式中、R
2〜R
5は、前記と同じ意味を表す。〕
【0104】
Ayが置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基である場合における、かかる有機基の例としては、特に制限されることなく、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、−SO
2R
a、−C(=O)−R
b、−CS−NH−R
b、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2〜30の芳香族複素環基が挙げられる。
ここで、R
aおよびR
bは、前記と同じ意味を表す。
【0105】
Ayが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合における炭素数1〜20のアルキル基の具体例、Ayが置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合における炭素数2〜20のアルケニル基の具体例、およびAyが置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における炭素数3〜12のシクロアルキル基の具体例としては、上述した、R
bが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合における炭素数1〜20のアルキル基の具体例、R
bが置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合における炭素数2〜20のアルケニル基の具体例、およびR
bが置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合における炭素数3〜12のシクロアルキル基の具体例として列記したものと同じものが挙げられる。さらに、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基における、炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基における、炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基における、炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数は、3〜10であることが好ましい。
【0106】
Ayが置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基である場合における炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基等が挙げられる。
【0107】
Ayが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である場合、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基である場合、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基である場合、及び炭素数2〜20のアルキニル基である場合における置換基の数は、一つでもよく複数でもよい。複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。当該置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−O−C(=O)−R
b;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;−SR
b;−SR
bで置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。ここで、R
aおよびR
bは、前記と同じ意味を表す。
【0108】
Ayが置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基である場合および置換基を有していてもよい炭素数2〜30の芳香族複素環基である場合における、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基及び置換基の例としては、Axが有するそれらの具体例として列記したものと同じものが挙げられる。これらの例のうちAyが置換基を有する場合における置換基の数は、一つでもよく複数でもよい。複数の置換基を有する場合、これらは同一であってもよく異なってもよい。これらの例における芳香族炭化水素環基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。これらの例における芳香族複素環基の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましい。
【0109】
上述した中でも、Ayとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2〜18の芳香族複素環基が好ましい。さらに、Ayとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2〜18の芳香族複素環基がより好ましい。なかでも、Ayとしては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基が特に好ましく、中でも、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルキル基がさらに特に好ましい。
【0110】
Azの例としては、以下の(Az−6)〜(Az−7)が挙げられる。
(Az−6)1以上の炭素数6〜30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6〜40の炭化水素環基、及び
(Az−7)炭素数6〜30の芳香族炭化水素環および炭素数2〜30の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素数2〜40の複素環基。
Azの好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明は以下に示すものに限定されるものではない。下記式中、「=」は環の任意の位置からのびるN原子(即ち、式(IIc−1)〜(IIc−7)においてAzと結合するN原子)との結合手を表す。
【0111】
(Az−6)における炭化水素環基の具体例としては、下記式(6−1)〜(6−12)で表される構造が挙げられ、式(6−1)、(6−3)〜(6−4)、(6−7)〜(6−12)等で表される炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基が好ましい。
【0114】
(Az−7)における複素環基の具体例としては、下記式(7−1)〜(7−30)で表される構造が挙げられ、式(7−1)〜(7−11)等で表される炭素数2〜30の芳香族複素環基が好ましい。
【0116】
〔各式中、Xは、−CH
2−、−NR
c−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO
2−を表し、
YおよびZは、それぞれ独立して、−NR
c−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO
2−を表し、
Eは、−NR
c−、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、R
cは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−は、それぞれ隣接しないものとする。)〕
【0117】
上述したAzの好ましい具体例が、さらにその環において1または複数の置換基を伴うものも、Azの例に含まれうる。そして、複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数1〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF
3;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;等が挙げられる。ここで、R
bおよびR
aは前記と同じ意味を表す。これらの中でも、Azが有する上記環が有する置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0118】
上述した中でも、Azは、1以上の炭素数6〜30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6〜40の炭化水素環基、又は1以上の炭素数2〜30の芳香族複素環を有する炭素数2〜40の炭化水素環基複素環基であることが好ましい。
そして、Azは、1以上の炭素数6〜30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6〜40の炭化水素環基であることがより好ましく、上記式(6−1)、式(6−3)、式(6−4)、式(6−10)、式(7−1)〜式(7−9)で示される基のいずれかであることが一層好ましい。
【0119】
前述した通り、上記の環は1または複数の置換基を有していてもよい。複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。かかる置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数1〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−C(=O)−R
b;−C(=O)−O−R
b;−SO
2R
a;等が挙げられる。
ここで、R
bおよびR
aは前記と同じ意味を表す。
これらの中でも、上記環が有する置換基としてはハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0120】
そして、Azとしては、下記式(V−1)〜(V−4)で表される基が更に好ましい。
【0122】
ここで、式(V−1)〜(V−4)中、R
2〜R
5並びにR
20、R
30、R
40、R
50、R
60及びR
70はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、−OCF
3、または、−C(=O)−O−R
bを表し、R
bは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。なかでも、R
2〜R
11が全て水素原子であるか、R
2〜R
11のうちの1以上が置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基であり、且つ残りが水素原子であることが好ましい。
【0123】
また、前述した式(I)中、Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−O−CH
2−CH
2、−CH
2−CH
2−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−NR
21−C(=O)−、−C(=O)−NR
21−、−CF
2−O−、−O−CF
2−、−CH
2−CH
2−、−CF
2−CF
2−、−O−CH
2−CH
2−O−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、−CH
2−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−、−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−、−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=C(CH
3)−、−C(CH
3)=N−、−N=N−、または−C≡C−であり、R
21は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
中でも、Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、−C(=O)−O−、又は−O−C(=O)−であることが好ましい。
【0124】
また、前述した式(I)中、G
1およびG
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、および、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(−CH
2−)の1以上が−O−または−C(=O)−に置換された基の何れかの有機基であり、G
1およびG
2の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。メチレン基の、−O−または−C(=O)−による置換は、好ましくはP1、P2、Y3、及びY4のいずれかと直接に接続するメチレン基以外のメチレン基の置換である。例えば、炭素数3の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(−CH
2−)の1つが−O−に置換された基は、好ましくは−CH
2−O−CH
2−である。「炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(−CH
2−)の1以上が−O−または−C(=O)−に置換された基」において、−O−は、脂肪族炭化水素基中の連続したメチレン基を置換しない(すなわち、−O−O−の構造を形成しない)ことが好ましく、−C(=O)−は、脂肪族炭化水素基中の連続したメチレン基を置換しない(すなわち、−C(=O)−C(=O)−の構造を形成しない)ことが好ましい。
ここで、G
1およびG
2が炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基である場合におけるその具体例としては、特に限定されることなく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルケニレン基、および、炭素数1〜20のアルキニレン基などの鎖状脂肪族炭化水素基が挙げられる。上述した脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜12であることが好ましく、4〜10であることがより好ましい。
【0125】
ここで、G
1およびG
2の例である有機基としては、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、または、フッ素原子で置換されていてもよい−(CH
2)
j−C(=O)−O−(CH
2)
k−で表される基(式中、j、kはそれぞれ2〜12の整数を表し、好ましくは2〜8の整数を表す。)が好ましく、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基がより好ましく、無置換の炭素数2〜12のアルキレン基が更に好ましく、−(CH
2)
l−で表される基(式中、lは2〜12の整数を表し、好ましくは2〜8の整数を表す。)が特に好ましい。
【0126】
また、前述した式(I)中、A
1、A
2、B
1およびB
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素数2〜20の芳香族基が好ましい。
【0127】
環状脂肪族基の具体例としては、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等の炭素数5〜20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン−1,5−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基等の炭素数5〜20のビシクロアルカンジイル基等が挙げられる。中でも、環状脂肪族基としては、置換されていてもよい炭素数5〜20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、特に、下記式(a)で表されるシクロヘキサン−1,4−ジイル基が好ましい。環状脂肪族基としては、式(a1)で表されるトランス体であっても、式(a2)で表されるシス体であっても、或いは、シス体とトランス体の混合物であってもよいが、式(a1)で表されるトランス体がより好ましい。
【0129】
(式中、R
0およびn2は前記と同じ意味を表す。)
【0130】
芳香族基の具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基等の、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;フラン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基等の、炭素数2〜20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、特に、下記式(b)で表される1,4−フェニレン基が好ましい。
【0132】
(式中、R
0およびn2は前記と同じ意味を表す。)
【0133】
環状脂肪族基、および芳香族基の置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。前記環状脂肪族基、炭素数5〜20の環状脂肪族基、芳香族基、炭素数2〜20の芳香族基は、上述した置換基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。置換基を複数有する場合は、各置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0134】
また、前述した式(I)中、Y
1〜Y
4は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR
22−C(=O)−、−C(=O)−NR
22−、−O−C(=O)−O−、−NR
22−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NR
22−、または、−NR
22−C(=O)−NR
23−を表す。ここで、R
22およびR
23は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
中でも、Y
1〜Y
4は、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であることが好ましい。
Y
1およびY
2が複数存在する場合、それぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
【0135】
また、前述した式(I)中、P
1およびP
2の一方は、水素原子または重合性基を表し、P
1およびP
2の他方は、重合性基を表す。ここで、P
1およびP
2は、それぞれ独立して、重合性基を表すことが好ましい。
ここで、P
1およびP
2が重合性基である場合における当該重合性基の例としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のCH
2=CR
1−C(=O)−O−で表される基(R
1は、水素原子、メチル基、または塩素原子を表す。)、ビニル基、ビニルエーテル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基などが例示される。中でも、下式(IV)のような、CH
2=CR
1−C(=O)−O−で表される基が好ましく、CH
2=CH−C(=O)−O−(アクリロイルオキシ基)、CH
2=C(CH
3)−C(=O)−O−(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基がさらに好ましい。重合性化合物(I)中に2つのR
1が存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。さらに、P
1およびP
2は、相異なっていてもよいが、同じ重合性基であることが好ましい。
【0137】
〔式(IV)中、R
1は、水素原子、メチル基または塩素原子を表す〕
【0138】
ここで、式(I)中、pおよびqは、それぞれ独立して、0〜2であり、それぞれ独立して、0または1が好ましい。
【0139】
式(I)で表される液晶化合物の好ましい例としては、下記の式LC1〜LC3で表される化合物が挙げられる。
【0141】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/141245号、国際公開第2012/147904号、国際公開第2014/010325号、国際公開第2014/126113号などの文献に記載された合成の手法と、その他の既知の合成の手法とを組み合わせて調製しうる。
【0142】
本発明の位相差板の製造に用いる液晶組成物は、上に述べたもの等の液晶化合物、光重合開始剤、界面活性剤、有機溶媒、及びその他の任意成分を混合することにより製造しうる。
【0143】
光重合開始剤は、液晶組成物中の重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用しうる。
【0144】
ラジカル重合開始剤の例としては、光照射により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤が挙げられる。
【0145】
光ラジカル発生剤の例としては、国際公開第2012/147904号に記載される、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
【0146】
前記アニオン重合開始剤の例としては、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0147】
また、前記カチオン重合開始剤の例としては、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0148】
市販の光重合開始剤の具体的な例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、商品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure379、商品名:Irgacure379EG、及び商品名:Irgacure OXE02;ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919;等が挙げられる。
【0149】
これらの光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0150】
光重合開始剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜10重量部、より好ましくは1.0重量部〜7.0重量部である。光重合開始剤を2種類以上用いる場合は、その全重量が前記範囲内になるように用いればよい。
【0151】
界面活性剤としては、特に限定はないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いうる。例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤を用いうる。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社PolyFoxの「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−3320」、「PF−651」、「PF−652」;ネオス社フタージェントの「FTX−209F」、「FTX−208G」、「FTX−204D」、「601AD」;セイミケミカル社サーフロンの「KH−40」、「S−420」;DIC社の「メガファックF−562」等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは0.001重量部〜10重量部、より好ましくは0.001重量部〜0.1重量部である。
【0152】
有機溶媒の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜150℃であることがより好ましい。溶媒の使用量は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは100重量部〜1000重量部である。
【0153】
液晶組成物は、さらに、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意成分を含みうる。かかる任意の添加剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは、各々0.1重量部〜20重量部である。
【0154】
液晶組成物の層の形成は、液晶組成物を、支持体の表面に塗布することにより行いうる。支持体としては、液晶化合物に対して配向規制力を発現しうる表面を有する支持体を適宜選択しうる。例えば、樹脂フィルム、ガラス板等の基材であって、その表面にラビング処理により配向規制力を付与したもの、延伸処理により配向規制力を付与したもの、配向規制力を有する層を設けたもの等の各種の支持体を用いうる。支持体として、位相差板P1(後述)であって、配向規制力を有する表面を有するものを用いてもよい。塗布の操作は、例えば、ワイヤーバーを用いたバー塗装、グラビアロールを用いたグラビア塗装、塗工ダイを用いたダイ塗装、その他、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法等により行いうる。液晶組成物の層の厚みは、所望の厚み及び光学特性を有する位相差板が得られる厚みに適宜調整しうる。
【0155】
液晶組成物中の液晶化合物の配向は、適当な温度に調節された環境下において液晶組成物の層を静置することにより行いうる。例えば、液晶組成物の層を、65〜110℃の環境下に5秒〜2分間置き、その後さらに室温〜45℃で5秒〜2時間静置することにより、配向処理を達成しうる。
【0156】
液晶組成物の硬化の方法は特に限定されず、処理対処の液晶組成物に適合した方法を適宜選択しうる。例えば、液晶化合物及び/又は重合開始剤として、紫外線の照射により重合を開始しうるものを含む場合、紫外線の照射により液晶化合物を重合させ、硬化を達成しうる。
【0157】
〔3.複層位相差板〕
本発明の複層位相差板は、位相差板P1及び位相差板P2を備える複層位相差板であって、これらのうち位相差板P2が、前記本発明の位相差板である。
【0158】
本発明の複層位相差板においては、位相差板P1の面内遅相軸と位相差板P2の面内遅相軸が直交する。これにより、複層位相差板の面内リターデーションは、位相差板P1の位相差と位相差板P2の位相差の差として合成される。即ち、複層位相差板Psの遅相軸方向が位相差板P1と同じ方向であると設定した場合、波長λにおける複層位相差板Psの面内リターデーションRePs(λ)と、位相差板P2の面内リターデーションReP2(λ)と、位相差板P1の面内リターデーションReP1(λ)とは、RePs(λ)=ReP1(λ)−ReP2(λ)の関係を有する。
【0159】
本発明の複層位相差板は、ReP1(λ)及びReP2(λ)が、下記式(e4)及び(e5)を満たす。
ReP1(550)>ReP2(550) (e4)
ReP1(400)/ReP1(700)<ReP2(400)/ReP2(700) (e5)
【0160】
位相差板P1の面内遅相軸と位相差板P2の面内遅相軸が直交し、かつReP1(λ)及びReP2(λ)が式(e4)及び(e5)を満たすことにより、複層位相差板は、位相差板P1の面内遅相軸と同じ方向に遅相軸を有する1/4波長板等の波長板として機能しうる。さらに、位相差板P2として、上に述べた本発明の位相差板を採用することにより、理想分散とのズレの少ない波長分散を有する波長板を、容易に構成しうる。
【0161】
本発明の複層位相差板は、ReP1(λ)が、下記式(e6)を満たすことが好ましい。
ReP1(400)/ReP1(700)<1.10 (e6)
即ち、ReP1(400)/ReP1(700)の値は、1.10未満である。ReP1(400)/ReP1(700)の値は、好ましくは1.08以下、より好ましくは1.06以下であり、一方好ましくは0.95以上、より好ましくは1.00以上である。
ReP1(λ)が、式(e6)を満たすことにより、理想分散とのズレの少ない波長分散を有する波長板を、容易に構成しうる。特に、位相差板P2として、前記式(e2)を満たすものを採用し、これと、式(e6)を満たす位相差板P1とを組み合わせることにより、理想分散とのズレの少ない波長分散を有する波長板を、容易に構成しうる。さらに、式(e6)を満たす位相差板P1は、脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムの延伸物等の、既知の材料を用いることにより容易に構成しうる。
【0162】
本発明の複層位相差板は、ReP1(λ)及びReP2(λ)が、下記式(e7)を満たすことが好ましい。
90nm<ReP1(550)−ReP2(550)<160nm (e7)
【0163】
式(e7)を満たすことにより、本発明の複層位相差板を、1/4波長板として好ましく構成しうる。より具体的には、位相差板P1の遅相軸方向と同じ方向を遅相軸とし、且つ理想分散とのズレの少ない波長分散を有する1/4波長板としうる。ReP1(550)−ReP2(550)の値は、好ましくは90nm超、より好ましくは120nm以上であり、好ましくは160nm未満、より好ましくは150nm以下である。
【0164】
式(e7)を満たす複層位相差板において、ReP1(λ)及びReP2(λ)のそれぞれは、位相差板P1及び位相差板P2の材料、厚み、延伸倍率等の成膜方法を調整することにより、所望の位相差に調整しうる。さらに、複層位相差板のReP1(λ)及びReP2(λ)は、下記式(e8)及び(e9)を満たすことが好ましい。
180nm≦ReP1(550)≦350nm (e8)
90nm≦ReP2(550)≦160nm (e9)
【0165】
ReP1(550)及びReP2(550)が式(e8)及び(e9)を満たす場合、位相差板P1は1/2波長板、位相差板P2は1/4波長板として機能しうる。そして、これらを組み合わせた複層位相差板は、理想分散とのズレの少ない波長分散を有する1/4波長板とて機能しうる。ReP1(550)の値は、好ましくは180nm以上、より好ましくは220nm以上であり、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。ReP2(550)の値は、好ましくは90nm以上、より好ましくは120nm以上であり、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0166】
〔4.位相差板P1の材料〕
位相差板P1を構成する材料は、特に限定されず、光学的な用途に利用可能であり且つ上に述べた要件を満たす任意の材料を用いうる。好ましい例において、位相差板P1は脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムの延伸物である。脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムを延伸することにより、上に述べた位相差板P1を容易に得ることができ、その結果、本発明の複層位相差板を容易に製造することができる。脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムは、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムとしうる。
【0167】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いうる。
脂環式構造の例としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
【0168】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されうるが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位を前記のように多くすることにより、フィルムの耐熱性を高くできる。
【0169】
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体がより好ましい。
【0170】
ノルボルネン重合体の例としては、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
【0171】
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0172】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは25,000〜80,000、さらにより好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の値で測定しうる。
【0173】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0174】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。任意の成分の例としては、紫外線吸収剤;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料、顔料等の着色剤;老化防止剤;などの配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げうる。
【0175】
基材フィルムは、1層のみを備える単層フィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層フィルムであってもよい。中でも、基材フィルムは、第一表面層、紫外線吸収剤を含む中間層、及び、第二表面層を厚み方向においてこの順に備える複層フィルムであることが好ましい。すなわち、基材フィルムは、脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第一表面層と、脂環式構造を有する重合体及び紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂からなる中間層と、脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第二表面層とを、厚み方向においてこの順に備えることが好ましい。このような複層フィルムにおいては、第一表面層及び第二表面層によって中間層に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができる。また、このような複層フィルムを用いた場合、本発明の複層位相差板を偏光板や画像表示装置に組み入れた際に、位相差板P2や画像表示装置が紫外線により劣化するのを抑制することができる。
【0176】
ブリードアウトの効果的な抑制のためには、第一表面層及び第二表面層は、紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。また、第一表面層に含まれる重合体、中間層に含まれる重合体及び第二表面層に含まれる重合体は、同じでもよく、異なっていてもよい。したがって、第一表面層に含まれる熱可塑性樹脂と、第二表面層に含まれる熱可塑性樹脂とは、異なっていてもよいが、層の形成が容易であることから、同じであることが好ましい。通常、第一表面層及び第二表面層は、紫外線吸収剤を含まないこと以外は中間層に含まれる熱可塑性樹脂と同じの熱可塑性樹脂によって、形成される。
【0177】
紫外線吸収剤の例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、波長380nm付近における紫外線吸収性能が優れているという点で、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、分子量は400以上であるものが好ましい。
【0178】
トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いうる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0179】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。トリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等を挙げることができる。
【0180】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0181】
中間層に含まれる熱可塑性樹脂において、紫外線吸収剤の量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。ここで、紫外線吸収剤の量とは、2種類以上の紫外線吸収剤を用いる場合には、それらの紫外線吸収剤の全体量のことを示す。紫外線吸収剤の量を前記範囲の下限以上にすることにより、波長200nm〜370nmの紫外線の透過を効果的に抑制でき、また、上限以下にすることにより、フィルムの黄色味を抑えることができるので、色味の劣化を抑制できる。さらに、紫外線吸収剤の量を前記範囲とすることにより、多量の紫外線吸収剤を含有しないことから、熱可塑性樹脂の耐熱性の低下を抑制できる。
【0182】
脂環式構造を有する重合体及び紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂の製造方法としては、溶融押出法による基材フィルムの製造時より前に紫外線吸収剤を脂環式構造を有する重合体に配合する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含むマスターバッチを用いる方法;溶融押出法による基材フィルムの製造時に紫外線吸収剤を脂環式構造を有する重合体に配合する方法、などが挙げられる。これらの方法では、紫外線吸収剤の量を前記範囲とすることにより、紫外線吸収剤の分散性を十分に高めることができる。
【0183】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂をフィルムの形状に成形する方法は、特に限定されず、押出成形等の既知の方法を採用しうる。押出成形を行った場合、長尺のフィルムを連続的に成形することができ、製造効率の点から好ましい。また、フィルムを延伸して延伸物とする方法も、特に限定されず、延伸の操作の例としては、長尺のフィルム長手方向への延伸、幅方向への延伸、斜め方向への延伸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。フィルムの厚み、延伸の倍率、及び延伸後の延伸物の厚みは、所望の位相差板P1が得られる範囲に適宜調整しうる。
【0184】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは180℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、高温環境下における基材フィルムの耐久性を高めることができ、また、上限値以下にすることにより、延伸処理を容易に行える。
【0185】
さらに、基材フィルムが第一表面層、中間層及び第二表面層を備える場合には、中間層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgAと第一表面層及び第二表面層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとは、TgB−TgA<15℃の関係を満たすことが好ましい。
【0186】
基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。また、基材フィルムの波長280nm〜370nmにおける光線透過率は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。
ここで光線透過率は、JISK0115に準拠して、分光光度計を用いて測定しうる。
【0187】
〔5.偏光板及び画像表示装置〕
本発明の偏光板は、前記本発明の複層位相差板及び直線偏光子を含む。また、本発明の画像表示装置は、前記本発明の偏光板を備える。本発明の偏光板は、任意の構成要素として、偏光子を保護する保護フィルム、及びこれらを接着する接着層を含みうる。保護フィルムは、通常直接又は接着層を介して偏光子の両面に設けられる。但し、保護フィルムを省略し、保護フィルムに代えて、複層位相差板が直線偏光子を保護する構成を採用してもよい。本発明の偏光板は、直線偏光子に加えて複層位相差板を含むことにより、広い波長範囲において、均等な光学的効果を得ることができる光学部材の構成要素として用いうる。
【0188】
〔5.1.反射防止フィルム〕
好ましい例において、本発明の偏光板は、画像表示装置における反射防止フィルムとして用いうる。反射防止フィルムとして好適に用いうる偏光板の例としては、(位相差板P2)/(位相差板P1)/(直線偏光子)の層構成を有し、直線偏光子の透過軸と位相差板P1の遅相軸とが40°〜50°、好ましくは44°〜46°、典型的には45°の関係を有し、複層位相差板が1/4波長板として機能するものが挙げられる。このような偏光板を、画像表示装置の、画素を構成する素子よりも視認側の位置に、直線偏光子側の面を視認側として設けることにより、装置外部から入射した光が、装置内部において反射し、装置外部に出射し、観察者に視認されることを抑制することができる。そして、位相差板として本発明の複層位相差板を備えることにより、そのような反射防止の効果を、広い波長範囲において均等に得ることができる。
【0189】
このような構成において、位相差板P1及びP2の光学的な特性は、可視領域における反射光の反射Y値が最小となるよう適宜調整しうる。例えば可視領域をλ=380nm〜780nmとすると、反射Y値は、下記式(e10)により求めうる。
【0191】
式(e10)においてS(λ)は、入射光の分光分布であり、R(λ)は反射率の分光分布であり、y(λ)は等色関数のy値である。本発明の偏光板を利用した反射防止フィルムでは、かかる反射Y値を最小とするよう位相差板P1及びP2を設計した場合において、複層位相差板の面内レターデーションRePs(λ)と、理想分散との差を、非常に小さいものとすることができる。
【実施例】
【0192】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0193】
(合成例1)LC1の合成
【0194】
【化32】
【0195】
ステップ1:中間体Aの合成
【0196】
【化33】
【0197】
温度計を備えた4つ口反応器に窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド20g(144.8mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製)105.8g(362.0mmol)、及びN,N−ジメチルアミノピリジン5.3g(43.4mmol)をN−メチルピロリドン200mlに溶解させた。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)83.3g(434.4mmol)を加え、室温下にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を水1.5リットルに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、白色固体として、上記式(A)で表される中間体Aを75g得た(収率:75.4%)。構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):10.20(s、1H)、8.18−8.12(m、4H)、7.78(d、1H、J=2.8Hz)、7.52(dd、1H、J=2.8Hz、8.7Hz)、7.38(d、1H、J=8.7Hz)、7.00−6.96(m、4H)、6.40(dd、2H、J=1.4Hz、17.4Hz)、6.12(dd、2H、J=10.6Hz、17.4Hz)、5.82(dd、2H、J=1.4Hz、10.6Hz)、4.18(t、4H、J=6.4Hz)、4.08−4.04(m、4H)、1.88−1.81(m、4H)、1.76−1.69(m、4H)、1.58−1.42(m、8H)。
【0198】
ステップ2:中間体Bの合成
【0199】
【化34】
【0200】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン1水和物:11.16g(222.9mmol)、及びエタノール30mlを加えた。この溶液に室温下にて3−チオフェンカルボキシアルデヒド:5.0g(44.58mmol)、及びエタノール10mlの混合溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温下にて3時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300ml、及びクロロホルム800mlを加えて洗浄した。更に有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mlで2回洗浄した。その後、有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解させた。この溶液にヘキサン300mlを加えて、固体を析出させて、析出した固体をろ別した。得られた固体を真空乾燥させて、淡黄色固体として、上記式(B)で表される中間体Bを4.1g得た(収率:73%)。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):7.82(s、1H)、7.39(dd、1H、J=1.0Hz、5.0Hz)、7.29−7.31(m、2H)、5.41(br、2H)。
【0201】
ステップ3:LC1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体A:10.2g(14.86mmol)、及びTHF80mlを加えた。この溶液に前記ステップ2で合成した中間体Bを3.75g(29.72mmol)を加えた。その後、室温下にて20時間反応を行った。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水1リットル、及び酢酸エチル500mlを加えて抽出した。更に有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水300mlで洗浄した後、有機層を更に飽和食塩水100mlで洗浄した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去して、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=95:5)により精製し、淡黄色オイルとして、上記式LC1で表される化合物LC1を5.8g得た(収率:49.1%)。目的物の構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δppm):8.75(s、1H)、8.56(s、1H)、8.15−8.20(m、4H)、8.04(d、1H、J=3.0Hz)、7.70(dd、1H、J=1.0Hz、3.0Hz)、7.55(dd、1H、J=1.0Hz、5.0Hz)、7.30−7.39(m、3H)、6.98−7.01(m、4H)、6.41(dd、2H、J=1.5Hz、17.5Hz)、6.13(dd、2H、J=10.5Hz、17.5Hz)、5.83(dd、2H、J=1.5Hz、10.5Hz)、4.192(t、2H、J=6.5Hz)、4.191(t、2H、J=6.5Hz)、4.08(t、2H、J=6.0Hz)、4.07(t、2H、J=6.5Hz)、1.83-1.89(m、4H)、1.71−1.77(m、4H)、1.45-1.57(m、8H)。
【0202】
(合成例2)LC2の合成
【0203】
【化35】
【0204】
ステップ1:中間体Cの合成
【0205】
【化36】
【0206】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン1水和物5.68g(113.5mmol)、及びエタノール30mlを加えた。この溶液に1−インダノン:3.0g(22.7mmol)を加えて、60℃にて6時間加熱した。反応終了後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300ml、及びクロロホルム600mlを加えて抽出した。更に有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mlで2回洗浄した。その後、有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解させた。この溶液にヘキサン300mlを加えて、固体を析出させて、析出した固体をろ別した。得られた固体を真空乾燥させて、淡黄色固体として、上記式(C)で表される中間体Cを2.46g得た(収率:74%)。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):7.64(d、1H、J=7.5Hz)、7.23−7.31(m、3H)、5.15(br、2H)、3.11−3.13(m、2H)、2.67-2.70(m、2H)。
【0207】
ステップ2:LC2の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記合成例1のステップ1で合成した中間体A:5.2g(7.57mmol)、THF50ml、及びエタノール10mlを加えた。この溶液に前記ステップ1で合成した中間体Cを2.43g(16.65mmol)加えた。その後、60℃にて3時間反応を行った。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水1リットル、及び酢酸エチル300mlを加えて抽出した。更に有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水300mlで洗浄した後、有機層を更に飽和食塩水100mlで洗浄した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去して、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=90:10)により精製し、淡黄色固体として、上記式LC2で表される化合物LC2を2.8g得た(収率:45.4%)。目的物の構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δppm):8.65(s、1H)、8.17−8.19(m、4H)、8.04(d、1H、J=3.0Hz)、7.84(d、1H、J=8.0Hz)、7.41(td、1H、J=1.0Hz、7.5Hz)、7.34−7.36(m、2H)、7.25−7.31(m、2H)、6.99(dd、4H、J=1.0Hz、8.5Hz)、6.41(dd、2H、J=1.0Hz、17.5Hz)、6.13(dd、2H、J=10.5Hz、17.5Hz)、5.832(dd、1H、J=1.0Hz、10.5Hz)、5.831(dd、1H、J=1.0Hz、10.5Hz)、4.19(t、4H、J=6.5Hz)、4.069(t、2H、J=6.5Hz)、4.067(t、2H、J=6.5Hz)、3.06(br、4H)、1.86(tt、4H、J=6.5Hz、6.5Hz)、1.74(tt、4H、J=7.0Hz、7.0Hz)、1.45−1.60(m、8H)。
【0208】
(合成例3)LC3の合成
【0209】
【化37】
【0210】
ステップ1:中間体Dの合成
【0211】
【化38】
【0212】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド10g(72.4mmol)、及びエタノール150mlを加えた。そこに、6−アミノ−1,4−ベンゾジオキサン10.94g(72.4mmol)を加えて、室温下にて2時間撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過して、冷エタノールで洗浄した。得られた固体を真空乾燥させて、淡黄色固体として、上記式(D)で表される中間体Dを13.5g得た(収率:68.7%)。目的物の構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(400MHz、DMSO-d6、TMS、δppm):12.28(s、1H)、9.02(s、1H)、8.76(s、1H)、6.96−6.98(1H、m)、6.95(d、1H、J=2.8Hz)、6.86−6.90(2H、m)、6.80(dd、1H、J=2.8Hz、8.8Hz)、6.73(d、1H、J=8.8Hz)、4.23(s、4H)。
【0213】
ステップ2:LC3の合成
温度計を備えた4つ口反応器に窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体D5.0g(18.4mmol)、及び4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製)13.47g(46.1mmol)をN−メチルピロリドン100mlに溶解させた。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)10.58g(55.2mmol)、及びN,N−ジメチルアミノピリジン1.12g(9.2mmol)を加えて、室温下にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を水1リットルに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水200mlで洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をアルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、淡黄色固体として、上記式LC3で表される化合物LC3を3.8得た(収率:25.2%)。構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.56(s、1H)、8.17(d、2H、J=9.0Hz)、8.15(d、2H、J=9.0Hz)、8.07(d、1H、J=3.0Hz)、7.37(dd、1H、J=3.0Hz、8.5Hz)、7.30(d、1H、J=8.5Hz)、6.99(d、2H、J=7.5Hz)、6.97(d、2H、J=7.5Hz)、6.81(d、1H、J=8.5Hz)、6.72(d、1H、J=2.5Hz)、6.69(dd、1H、J=2.5Hz、8.5Hz)、6.40(dd、2H、J=1.5Hz、17.5Hz)、6.13(2H、dd、J=10.5Hz、17.5Hz)、5.82(dd、2H、J=1.5Hz、10.5Hz)、4.22(s、4H)、4.18(t、4H、J=6.5Hz)、4.05(t、4H、J=6.5Hz)、1.80−1.87(m、4H)、1.69−1.76(m、4H)、1.44−1.57(m、8H)。
【0214】
〈相転移温度の測定〉
化合物LC1〜3をそれぞれ少量、固体状態のまま、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板(E.H.C.Co.,Ltd.製、商品名:配向処理ガラス基板)2枚に挟んだ。この基板をホットプレート上に載せ、40℃から100℃まで昇温した後、再び40℃まで降温した。昇温、降温する際の組織構造の変化を偏向光学顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE LV100POL型)で観察した。
測定した相転移温度を下記表1に示す。
表1中、「C」はCrystal、「N」はNematic、「I」はIsotropicをそれぞれ表す。ここで、Crystalとは、試験化合物が固相にあることを、Nematicとは、試験化合物がネマチック液晶相にあることを、Isotropicとは、試験化合物が等方性液体相にあることを、それぞれ示す。
【0215】
【表1】
【0216】
〔実施例1〕
(1−1.液晶組成物の調製)
下記に示す材料(1a)〜(1e)を秤量し、遮光瓶に入れて混合物とした。
(1a)液晶化合物:合成例1で合成した化合物LC1(π電子数10) 21.0重量部
(1b)界面活性剤:商品名「メガファックF−562」(DIC社製)の1重量%シクロペンタノン溶液 6.3重量部
(1c)重合開始剤:商品名「N1919」(ADEKA社製) 0.9重量部
(1d)溶媒:1,3−ジオキソラン 46.8重量部
(1e)溶媒:シクロペンタノン 25.0重量部
【0217】
【化39】
【0218】
混合物を、遮光瓶中で60℃にて1.0時間撹拌した。撹拌終了後、混合物を室温にて静置し、それにより混合物を冷却した。室温まで冷却された混合物を、0.45μmのメンブレンフィルターに通した。これにより、液晶組成物を調製した。
【0219】
(1−2.支持体の準備)
支持体として、日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」を準備した。この支持体は、厚み47μmの長尺のフィルムであった。フィルムを構成する樹脂のガラス転位温度(Tg)は126℃であった。この支持体は、位相差を有し、波長550nmにおける面内リターデーションReは141nmであり、面内の遅相軸方向は支持体の幅方向に対して45°であった。
【0220】
(1−3.位相差板P2)
(1−2)で得た支持体の一方の面に、(1−1)で得た液晶組成物を塗布した。塗布は、番手No.03のワイヤーバーを用いたバー塗布にて行った。塗布後、支持体を、65℃のオーブンに投入し、2分間加熱処理を行った。乾燥後、支持体を、室温にて1時間放置し、液晶組成物の層中の液晶化合物を配向させた。
【0221】
続いて、液晶組成物の層に紫外線を照射した。紫外線照射は、H−バルブ(ヘレウス社製)を用い、露光量150mJ/cm
2以上の照射とした。これにより、液晶組成物の層を硬化させ位相差板P2とし、(支持体)/(位相差板P2)の層構成を有する複層物(i)を得た。得られた位相差板P2の膜厚は1.67μmであった。
【0222】
得られた複層物の位相差板P2側の面を、接着剤を介しガラス基板に貼合し、支持体を剥離した。これにより、(ガラス基板)/(接着剤層)/(位相差板P2)の複層物(ii)を得た。
【0223】
(1−4.位相差板P2の波長分散測定)
(1−3)で得られた複層物(ii)上の位相差板P2の面内リターデーションReを測定した。測定は、波長λ=380nm〜780nmの範囲において5nm間隔で行った。測定には位相差計(Axometrics社製)を用いた。得られた測定結果は、フィルムの干渉によると思われる測定値のばらつきを有するものの、概ねコーシーの分散式に従った波長分散を示すものであった。
【0224】
(1−5.コーシーフィッティング、リニア性指標、及びRe(400)/Re(700)の計算)
(1−4)の測定結果から、Re(450)/Re(550)、Re(550)/Re(550)、及びRe(650)/Re(550)の値を求め、これらの値からコーシーフィッティングを行った。即ち、下記式により計算されるXを最小とする定数A、B及びCの値を求めた。
X={Re(450)/Re(550)−Re(450)c/Re(550)c}
2
+{Re(550)/Re(550)−Re(550)c/Re(550)c}
2
+{Re(650)/Re(550)−Re(650)c/Re(550)c}
2【0225】
上記式において、Re(450)/Re(550)、Re(550)/Re(550)、及びRe(650)/Re(550)は、上記実測値であり、Re(450)c/Re(550)c、Re(550)c/Re(550)c、及びRe(650)/Re(550)cは、Re(λ)c/Re(550)c=A+(B/λ
2)+(C/λ
4)の計算値から得られる値である。
【0226】
コーシーフィッティングの結果得られた定数A、B及びCの値に基づいて、波長λとRe(λ)/Re(550)との関係を10nm間隔で380nm〜780nmの範囲において計算した。結果を表2に示す。本実施例における以下の計算では、このコーシーフィッティングにより補正された値を、位相差板P2の各波長λにおける面内リターデーションReP2(λ)とした。
【0227】
さらに、コーシーフィッティングの結果得られたReP2(400)/ReP2(550)、ReP2(550)/ReP2(550)、及びReP2(700)/ReP2(550)の値から、位相差板P2のリニア性指標、及びRe(400)/Re(700)の値を計算した。結果を表3に示す。
【0228】
(1−6.位相差板P1)
乾燥させた脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂(COP1)(日本ゼオン社製、ガラス転移温度123℃)100部、及び、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)5.5部を、二軸押出機により混合した。次いで、その混合物を、押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給し溶融押出して、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)を得た。この熱可塑性樹脂(J1)における紫外線吸収剤の量は、5.2重量%であった。
【0229】
目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備えた、ダブルフライト型のスクリュー径50mm単軸押出機(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比L/D=32)を用意した。この単軸押出機に装填されたホッパーへ、前記の熱可塑性樹脂(J1)を投入した。そして、この熱可塑性樹脂(J1)を溶融させ、押出機の出口温度280℃、押出機のギヤポンプの回転数10rpmで、溶融した熱可塑性樹脂(J1)をマルチマニホールドダイに供給した。このマルチマニホールドダイのダイスリップの算術表面粗さRaは、0.1μmであった。
【0230】
他方、熱可塑性樹脂(J1)を投入された単軸押出機とは別に、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備えた、スクリュー径50mmの単軸押出機(L/D=32)を用意した。この単軸押出機に装填されたホッパーへ、熱可塑性樹脂(J1)の製造に用いたのと同じ脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂(COP1)を投入した。そして、この熱可塑性樹脂(COP1)を溶融させ、押出機の出口温度285℃、押出機のギヤポンプの回転数4rpmで、溶融した熱可塑性樹脂(COP1)を前記のマルチマニホールドダイに供給した。
【0231】
溶融状態の熱可塑性樹脂(COP1)、紫外線吸収剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂(J1)、及び、溶融状態の熱可塑性樹脂(COP1)を、それぞれマルチマニホールドダイから280℃で吐出させ、150℃に温度調整された冷却ロールにキャストして、延伸前フィルムを得た。樹脂の吐出の際、エアギャップ量は50mmに設定した。また、吐出された樹脂を冷却ロールにキャストする方法として、エッジピニングを採用した。
【0232】
得られた延伸前フィルムは、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み15μmの樹脂層、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)からなる厚み40μmの樹脂層、及び、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み15μmの樹脂層をこの順に備える、3層構造の複層フィルムであった。また、延伸前フィルムの幅は1400mm、総厚みは70μmであった。こうして得た延伸前フィルムに、当該延伸前フィルムの幅方向の両端部50mmずつを切り除くトリミング処理を施して、幅を1300mmにした。
【0233】
前記の延伸前フィルムに、延伸温度140℃、延伸速度20m/minの条件で、延伸前フィルムの長手方向に対して平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸して、基材フィルムとして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み8μmの第一表面層、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)からなる厚み31μmの中間層、及び、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み8μmの第二表面層をこの順に備える、3層構造の複層フィルムであった。また、この延伸フィルムの幅は1330mm、厚みは47μmであり、遅相軸は延伸フィルムの長手方向に対して45°の角度をなしていた。
この延伸フィルムの測定波長550nmでの面内レターデーションは100nm、測定波長380nmにおける光線透過率は0.02%、屈折率は1.53であった。
【0234】
上記延伸フィルムを、位相差板P1として用いた場合を想定し、このフィルムについて、各波長λにおける面内リターデーションReP1(λ)を測定し、コーシーフィッティングを行い、波長λとReP1(λ)/ReP1(550)との関係を計算した。その具体的な方法は、位相差板P2について(1−4)において行ったものと同じ方法とした。結果を表2に示す。以下の計算では、この値を、位相差板P1の各波長λにおける面内リターデーションReP1(λ)とした。
【0235】
(1−7.シミュレーション)
(1−6)の位相差板P1と、(1−4)の位相差板P2とを用いて複層位相差板を構成し、それを直線偏光子と組み合わせて反射防止フィルムを構成した場合を想定し、当該反射防止フィルムの性能をシミュレーションした。シミュレーションの詳細は下記の通りである。
【0236】
理想鏡面反射する反射板上に、反射防止フィルムを設け、反射防止フィルムに入射した光が、反射防止フィルムから出射する際の反射Y値を計算した。反射防止フィルムの層構成は、反射板に近い側から順に、(位相差板P2)/(位相差板P1)/(直線偏光子)とした。位相差板P2の遅相軸と位相差板P1の遅相軸とは直交する方向とした。さらに、位相差板P1の遅相軸と直線偏光子の吸収軸とがなす角は45°とした。
【0237】
上記構成において、位相差板P2と位相差板P1との組み合わせは、一枚の位相差板Psと同等とみなしうる。位相差板Psの遅相軸方向が位相差板P1と同じ方向であると設定した場合、波長λにおける位相差板Psの面内リターデーションRePs(λ)と、位相差板P2の面内リターデーションReP2(λ)と、位相差板P1の面内リターデーションReP1(λ)とは、RePs(λ)=ReP1(λ)−ReP2(λ)の関係を有する。
【0238】
上記構成において、波長λにおける、入射光に対する反射光の割合R(λ)は、偏光板が理想的な偏光作用を有すると仮定すると下記式(e11)の通りとなる。
【0239】
【数2】
【0240】
式(e11)において、S(λ)は入射光の分光分布であり、本シミュレーションにおいては全波長において1とした。
【0241】
可視光中心波長550nmにおいて位相差板Psが理想的な1/4波長板として機能するよう、位相差板P1及びP2の厚みを設定することを前提とした。即ち、RePs(550)=137.5nmであることを前提とした。この前提において、位相差板P1及び位相差板P2が様々な厚みとなる場合について検討した。即ち、ReP1(550)−ReP2(550)=137.5nmの関係を満たす、様々なReP1(λ)及びReP2(λ)の組み合わせを設定し、それらのうち、反射光の反射Y値が最小となるものを求めた。
【0242】
反射Y値は、下記式(e12)により近似的に計算した。
【0243】
【数3】
【0244】
式(e12)において、10nは、λの10nm間隔の値である(即ちn=λ/10)。各波長におけるRePs(λ)の値は、表2に示すReP1(λ)/ReP1(550)及びReP2(λ)/ReP2(550)の値、並びに設定した組み合わせにおけるReP1(550)及びReP2(550)の値から求めた。関数y(λ)は波長λと等色関数のy値との関数であり、表2に示す値を採用した。上記計算の結果得られた、反射Y値の最小値、並びに当該最小値を与えたReP1(550)及びReP2(550)の値(ReP1(550)min及びReP2(550)min)を表3に示す。
【0245】
さらに、上に述べた、反射Y値が最小値を示す場合において、位相差板Psの波長分散と、理想分散を示す仮想的な位相差板Piとの、波長分散のズレの指標として、ズレ指標を下記式(e13)に基づいて計算した。結果を表3に示す。
【0246】
【数4】
【0247】
式(e13)において、RePi(λ)は、理想分散を示す関数であり、(RePi(λ)/RePi(550))=λ/550である。
【0248】
〔実施例2〕
(2−1.位相差板P2の波長分散測定)
(1a)の液晶化合物として、合成例1で合成した化合物LC1に代えて、合成例2で合成した化合物LC2(π電子数12)を用いた他は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同じ操作により、位相差板P2を得て、面内リターデーションReを測定した。
【0249】
【化40】
【0250】
(2−2.評価)
(1−4)の測定結果に代えて(2−1)の測定結果を用いた他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。
結果を表2及び表3に示す。
【0251】
〔実施例3〕
(3−1.位相差板P2の波長分散測定)
(1a)の液晶化合物として、合成例1で合成した化合物LC1に代えて、合成例3で合成した化合物LC3(π電子数12)を用いた他は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同じ操作により、位相差板P2を得て、面内リターデーションReを測定した。
【0252】
【化41】
【0253】
(3−2.評価)
(1−4)の測定結果に代えて(3−1)の測定結果を用いた他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。
結果を表2及び表3に示す。
【0254】
〔比較例1〕
特開2014−206684号公報の実施例4及び6によれば、1/4波長板として、Re(450)/Re(550)=1.18、Re(650)/Re(550)=0.93であるものが得られている。位相差板P2としてこの1/4波長板を採用した場合におけるコーシーフィッティング及びシミュレーションを行った。即ち、Re(450)/Re(550)、Re(550)/Re(550)、及びRe(650)/Re(550)の値として、1.18、1.00、及び0.93の値を採用した他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0255】
〔比較例2〕
特開2014−206684号公報の実施例1によれば、1/4波長板として、Re(450)/Re(550)=1.10、Re(650)/Re(550)=0.95であるものが得られている。位相差板P2としてこの1/4波長板を採用した場合におけるコーシーフィッティング及びシミュレーションを行った。即ち、Re(450)/Re(550)、Re(550)/Re(550)、及びRe(650)/Re(550)の値として、1.10、1.00、及び0.95の値を採用した他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0256】
〔比較例3〕
(C3−1.位相差板P2の波長分散測定)
(1a)の液晶化合物として、合成例1で合成した化合物LC1に代えて、下記式LC4で示される液晶化合物を用いた他は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同じ操作により、位相差板P2を得て、面内リターデーションReを測定した。
【0257】
【化42】
【0258】
(C3−2.評価)
(1−4)の測定結果に代えて(C3−1)の測定結果を用いた他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0259】
〔比較例4〕
(C4−1.位相差板P2の波長分散測定)
(1a)の液晶化合物として、合成例1で合成した化合物LC1に代えて、下記式LC5で示される液晶化合物を用いたこと、オーブンの温度を100℃にしたことの他は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同じ操作により、位相差板P2を得て、面内リターデーションReを測定した。
【0260】
【化43】
【0261】
(C4−2.評価)
(1−4)の測定結果に代えて(C4−1)の測定結果を用いた他は、実施例1の(1−5)〜(1−7)と同じ手順により、シミュレーション等を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0262】
【表2】
【0263】
【表3】
【0264】
表3の結果から明らかな通り、位相差板P2のリニア性指標が2.90を下回る実施例1〜実施例3では、理想分散からのズレが著しく小さく、その結果として最小反射Y値も著しく小さかった。さらに、ReP2(400)/ReP2(700)が1.50以上となる実施例1及び実施例2では、最適となるReP2(550)がλ/4板程度の小さい値となった。この程度の位相差値の位相差板は、厚みを薄くすることができ、製造が容易で有用に用いることができる。
【0265】
〔実施例4〕
実施例1で得られた位相差板を、液晶表示装置において、サングラスリーダビリティを向上させるフィルムとして使用した場合の性能を、シミュレーションにより評価した。
【0266】
液晶表示装置を、偏光サングラスをかけた使用者が観察した場合に、液晶表示装置とサングラスとがなす角度により表示画面の視認性が変化することがある。サングラスリーダビリティとは、かかる変化が少なく、様々な角度において使用者が均質な画像を認識できる、表示装置の性能をいう。
【0267】
シミュレーションは、シンテック社製シミュレーションソフトLCD−Masterを用い、
図1に示すモデルを設定して行った。
図1に示す通り、シミュレーションモデル10は、液晶表示装置110、及びサングラス120を含み、液晶表示装置110は、視認側から順に、位相差板110P1、位相差板110P2、及びパネル111を備える。モデル10において、サングラス120、位相差板110P1、位相差板110P2、及びパネル111は平行に配置される。
【0268】
モデル10において、サングラス120は、矢印A120方向に吸収軸を有する理想偏光フィルムである。
【0269】
モデル10において、パネル111は、市販の液晶表示装置(商品名「iPad Air」、Apple社製)とし、その表示面に、白色を表示した際のスペクトルをシミュレーションに供した。パネル111は、その視認側に、矢印A111方向に吸収軸を有する直線偏光子を含んでおり、従ってパネル111からの出射光は直線偏光である。破線B110P1及びB110P2は、それぞれ、矢印A111方向を位相差板110P1及び110P2に投影した方向である。θP1は、破線B110P1と、位相差板P1の遅相軸方向A110P1とがなす角であり、θP2は、破線B110P2と、位相差板P2の遅相軸方向A110P2とがなす角である。θP1は45°に設定し、θP2は135°に設定した。
【0270】
シミュレーションにおいては、使用者が、サングラス120を介して液晶表示装置110を観察することを想定した。観察方向は、液晶表示装置110の表示面に対し極角0°方向(破線B120で示す方向)とした。サングラス120を固定し、液晶表示装置110を、破線B120を軸に回転させ、方位角(パネル111の吸収軸A111とサングラス120の吸収軸A120とがなす角度)を0°〜360の範囲で5°刻みで変化させた場合における、液晶表示装置110から出射し、サングラス120を透過する光のL*、a*、及びb*をそれぞれ計算した。次に、サングラス120が存在しない場合における、液晶表示装置110から出射する光のL0*、a0*、及びb0*を計算した。各方位におけるΔE*(=√((L*‐L0*)
2+(a*‐a0*)
2+(b*‐b0*)
2))を計算し、得られた値の最大値と最小値の差分をΔE*(Max−Min)として算出した。
【0271】
RePs(550)=137.5nmであることを前提とし、位相差板P1及び位相差板P2が様々な厚みとなる場合について検討した。それらのうち、ΔE*(Max−Min)が最小になる場合におけるReP1(550)及びReP2(550)、並びに、その場合におけるΔE*(Max−Min)を求めた。結果を表5に示す。ΔE*(Max−Min)の値が小さいほど、輝度変化および色味変化が小さく、サングラスの方位角依存特性が少なく、したがってサングラスリーダビリティが高いことを示す。
【0272】
〔実施例5〕
(5−1.位相差板P2)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)〜(1−5)と同じ操作により、位相差板P2を得て、そのリニア性指標、ReP2(400)/ReP2(700)及び各波長におけるRe(λ)/Re(550)の値を得た。結果を表4及び表5に示す。
・(1−1)の液晶組成物の調整において、(1a)の液晶化合物として、化合物LC1に代えて、化合物LC1と化合物LC4と混合物を用いた。化合物LC1と化合物LC4との重量比は、80:20とした。
【0273】
(5−2.シミュレーションによるサングラスリーダビリティの評価)
位相差板P2として、実施例1の(1−4)で得たものに代えて(5−1)で得たものを用いた場合について、実施例4と同じ方法でシミュレーションを行い、ΔE*(Max−Min)を算出した。結果を表5に示す。
【0274】
〔実施例6〕
(6−1.位相差板P2)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)〜(1−5)と同じ操作により、位相差板P2を得て、そのリニア性指標、ReP2(400)/ReP2(700)及び各波長におけるRe(λ)/Re(550)の値を得た。結果を表4及び表5に示す。
・(1−1)の液晶組成物の調整において、(1a)の液晶化合物として、化合物LC1に代えて、化合物LC1と化合物LC4と混合物を用いた。化合物LC1と化合物LC4との重量比は、60:40とした。
【0275】
(6−2.シミュレーションによるサングラスリーダビリティの評価)
位相差板P2として、実施例1の(1−4)で得たものに代えて(6−1)で得たものを用いた場合について、実施例4と同じ方法でシミュレーションを行い、ΔE*(Max−Min)を算出した。結果を表5に示す。
【0276】
〔比較例5〕
比較例3で得られた結果を元にして、位相差板P2として、実施例1の(1−4)で得たものに代えて比較例(C3−1)で得たものを用いた場合について、実施例4と同じ方法でシミュレーションを行い、ΔE*(Max−Min)を算出した。結果を表5に示す。
【0277】
【表4】
【0278】
【表5】
【0279】
表5の結果から明らかな通り、Re(400)/Re(700)の値が1.13を上回り且つ位相差板P2のリニア性指標が2.90を下回る実施例4〜実施例6では、サングラスリーダビリティの高い液晶表示装置を構成しうる位相差板を構成できる。