(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の時間区間のフレーム単位の音信号に対応する周波数領域のサンプル列を低域側に優先してビットを割り当てる符号化処理で符号化してスペクトル符号を得る符号化部を含む符号化装置であって、
前記音信号が摩擦音的な音であるか否かを判定する摩擦音判定部と、
前記摩擦音判定部が摩擦音的な音であると判定した場合には、前記音信号の周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、これと同数の、前記周波数スペクトル系列のうちの前記所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、前記音信号に対応する周波数スペクトル系列をそのまま調整済周波数スペクトル系列として得る摩擦音調整部と、を更に含み、
前記符号化部は、前記摩擦音調整部が得た調整済周波数スペクトル系列を前記音信号に対応する前記周波数領域のサンプル列として符号化してスペクトル符号を得る、
符号化装置。
所定の時間区間のフレーム単位のスペクトル符号であって、低域側に優先してビットが割り当てられているスペクトル符号、を復号して、復号音信号に対応する周波数領域のサンプル列を得る復号部を含む復号装置であって、
入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、前記復号部が得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数サンプル列の全部または一部と、これと同数の、前記復号部が得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数サンプル列の全部または一部と、を入れ替えたものを復号音信号の周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、前記復号部が得た周波数領域のサンプル列をそのまま復号音信号の周波数スペクトル系列として得る摩擦音調整解除部を更に含む、
復号装置。
所定の時間区間のフレーム単位の音信号に対応する周波数領域のサンプル列を低域側に優先してビットを割り当てる符号化処理で符号化してスペクトル符号を得る符号化ステップを含む符号化方法であって、
前記音信号が摩擦音的な音であるか否かを判定する摩擦音判定ステップと、
前記摩擦音判定ステップが摩擦音的な音であると判定した場合には、前記音信号の周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、これと同数の、前記周波数スペクトル系列のうちの前記所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、前記音信号に対応する周波数スペクトル系列をそのまま調整済周波数スペクトル系列として得る摩擦音調整ステップと、を更に含み、
前記符号化ステップは、前記摩擦音調整ステップが得た調整済周波数スペクトル系列を前記音信号に対応する前記周波数領域のサンプル列として符号化してスペクトル符号を得る、
符号化方法。
所定の時間区間のフレーム単位のスペクトル符号であって、低域側に優先してビットが割り当てられているスペクトル符号、を復号して、復号音信号に対応する周波数領域のサンプル列を得る復号ステップを含む復号方法であって、
入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、前記復号ステップが得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数サンプル列の全部または一部と、これと同数の、前記復号ステップが得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数サンプル列の全部または一部と、を入れ替えたものを復号音信号の周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、前記復号ステップが得た周波数領域のサンプル列をそのまま復号音信号の周波数スペクトル系列として得る摩擦音調整解除ステップを更に含む、
復号方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
第一実施形態のシステムは、符号化装置および復号装置を含む。符号化装置は、所定の時間長のフレーム単位で入力された時間領域の音信号を符号化して符号を得て出力する。符号化装置が出力する符号は復号装置へ入力される。復号装置は入力された符号を復号してフレーム単位の時間領域の音信号を出力する。符号化装置に入力される音信号は、例えば、音声や音楽などの音をマイクロホンで収音し、AD変換して得られた音声信号又は音響信号である。また、復号装置が出力した音信号は、例えば、DA変換され、スピーカで再生されることで、受聴可能とされる。
【0020】
≪符号化装置≫
図1を参照して、第一実施形態の符号化装置の処理手続きを説明する。
図1に例示するように、第一実施形態の符号化装置は、周波数領域変換部11、摩擦音判定部12、摩擦音調整部13、符号化部14、多重化部15を含む。符号化装置に入力された時間領域の音信号は周波数領域変換部11へ入力される。符号化装置は、各部で所定の時間長のフレーム単位での処理を行う。第一実施形態の符号化方法は、符号化装置の各部が、以下及び
図2に例示するステップS11からステップS15の処理を行うことにより実現される。
【0021】
なお、時間領域の音信号ではなく周波数領域の音信号を符号化装置に入力する構成としてもよい。この構成とする場合には、符号化装置は周波数領域変換部11を含まないでよく、所定の時間長のフレーム単位の周波数領域の音信号を摩擦音判定部12と摩擦音調整部13に入力すればよい。
【0022】
[周波数領域変換部11]
周波数領域変換部11には、符号化装置に入力された時間領域の音信号が入力される。周波数領域変換部11は、所定の時間長のフレーム単位で、入力された時間領域の音信号を例えば修正離散コサイン変換(MDCT)などで周波数領域のN点の周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1に変換して出力する(ステップS11)。Nは正の整数であり、例えばN=32などである。また、Xに下付きで付してある添え字は周波数の低いスペクトルから順に振られている番号である。周波数領域への変換方法として、MDCTではない様々な公知の変換方法等(例えば、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換等)を用いてもよい。
【0023】
周波数領域変換部11は、変換により得た周波数スペクトル系列を、摩擦音判定部12及び摩擦音調整部13に出力する。なお、周波数領域変換部11は、変換により得た周波数スペクトル系列に対して聴覚的な重み付けのためにフィルタ処理や圧伸処理を施し、フィルタ処理後や圧伸処理後の系列を周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1として出力してもよい。
【0024】
[摩擦音判定部12(摩擦音判定装置)]
摩擦音判定部12には、例えば、周波数領域変換部11が出力した周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1が入力される。摩擦音判定部12は、フレーム単位で、入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1を用いて、音信号が摩擦音的な音であるか否かを判定し、その判定結果を摩擦音判定情報として摩擦音調整部13及び多重化部15へ出力する(ステップS12)。摩擦音判定情報としては、例えば、1ビットの情報を用いればよい。すなわち、摩擦音判定部12は、フレーム単位で、音信号が摩擦音的な音である場合には、摩擦音的な音であることを示す情報としてビット"1"を、当該フレームの音信号が摩擦音的な音でない場合には、摩擦音的な音でないことを示す情報としてビット"0"を、摩擦音判定情報として出力すればよい。
【0025】
摩擦音判定部12は、例えば、入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちの低域側にあるサンプルの平均エネルギーに対する入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちの高域側にあるサンプルの平均エネルギーの比が大きいほど大きくなる指標を当該フレームが摩擦音的な音であることの指標として求める。摩擦音判定部12は、求めた指標が予め定めた閾値より大きいか閾値以上である場合に摩擦音的な音であると判定し、そうでない場合すなわち求めた指標が予め定めた閾値以下であるか閾値より小さい場合に摩擦音的な音でないと判定する。
【0026】
1より大きくN-1より小さい整数値をMAとし、MAより大きくNより小さい整数値をMBとすると、摩擦音判定部12は、例えば、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がMA以下のサンプルであるX
0,…,X
MAを低域側にあるサンプルとし、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がMB以上のサンプルであるX
MB,…,X
N-1を高域側にあるサンプルとして、X
0,…,X
MAの全てまたは一部のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を低域側平均エネルギーとし、X
MB,…,X
N-1の全てまたは一部のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を高域側平均エネルギーとし、高域側平均エネルギーを低域側平均エネルギーで除算して得られる値を摩擦音的な音であることの指標として求める。
【0027】
なお、整数値MAは、摩擦音判定部12で低域側平均エネルギーの算出対象となる低域側のサンプルが、後述する摩擦音調整部13での低域側周波数スペクトル系列に含まれるように、設定するのがよい。すなわち、摩擦音判定部12で用いる整数値MAは、後述する摩擦音調整部13の整数値M未満の値とするのがよい。また、整数値MBは、摩擦音判定部12で高域側平均エネルギーの算出対象となる高域側のサンプルが、後述する摩擦音調整部13での高域側周波数スペクトル系列に含まれるように、設定するのがよい。すなわち、摩擦音判定部12で用いる整数値MBは、後述する摩擦音調整部13の整数値M以上の値とするのがよい。
【0028】
低域側にあるサンプルX
0,…,X
MAのうちの一部のサンプルの値を上記の指標の算出に用いる場合には、X
0,…,X
MAのうちの周波数が最も低い側から1個または複数個のサンプルの値を上記の指標の算出に用いるのがよい。すなわち、αをMA未満の正の整数として、X
0,…,X
αのサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を低域側平均エネルギーとするのがよい。このαの値は、X
0,…,X
αが摩擦音的な音以外の音であれば周波数スペクトルが通常存在し得る範囲になるように、事前の実験などに基づいて予め定めればよい。
【0029】
後述する符号化部14での符号化処理においては、符号化処理で得るビット数の最大値の制約から、調整済周波数スペクトル系列のうちの最も高い周波数から何個かのサンプルにはビットが全く割り当てられないことがある。この場合、後述する摩擦音調整部13での周波数スペクトルの調整処理を行ったとしても行わなかったとしても、周波数スペクトル系列のうちの最も高い周波数からβ個(βは正の整数)のサンプルにはビットが全く割り当てられないことがある。このような場合には、X
MB,…,X
N-1のうちの最も高い周波数からβ個のサンプルを除いたX
MB,…,X
N-1-βを上記の指標の算出に用いるとよい。すなわち、X
MB,…,X
N-1-βのサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を高域側平均エネルギーとするのがよい。なお、このβの値は、事前に設計した符号化部14が行う符号化処理と摩擦音調整部13が行う調整処理に対応させて、予め定めればよい。
【0030】
図5と
図6は、N=32、M=20の場合の後述する摩擦音調整部13の例である。これらの例においては、周波数スペクトル系列のうちのX
0,…,X
19が低域側周波数スペクトル系列とされ、周波数スペクトル系列のうちのX
20,…,X
31が高域側周波数スペクトル系列とされる。したがって、摩擦音判定部12は、MAを20未満の値である例えば19とし、MBを20以上の値である例えば20として、X
0,…,X
19の全てまたは一部のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を低域側平均エネルギーとし、X
20,…,X
31の全てまたは一部のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を高域側平均エネルギーとすればよい。ここでα=8とする場合には、摩擦音判定部12はX
0,…,X
8のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を低域側平均エネルギーとすればよい。またここでβ=4とする場合には、摩擦音判定部12はX
20,…,X
27のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を高域側平均エネルギーとすればよい。
【0031】
なお、
図1に破線で示したように、摩擦音判定部12に周波数領域変換部11が出力した周波数スペクトル系列ではなく符号化装置に入力された時間領域の音信号を入力して、フレーム単位で、入力された時間領域の音信号を用いて、当該フレームの音信号が摩擦音的な音であるか否かを判定してもよい。この判定は、例えば、入力された時間領域の音信号の零交差点数を当該フレームが摩擦音的な音であることの指標として求め、求めた指標が予め定めた閾値より大きいか閾値以上である場合に摩擦音的な音であると判定し、そうでない場合すなわち求めた指標が予め定めた閾値以下であるか閾値より小さい場合に摩擦音的な音でないと判定することにより行えばよい。
【0032】
[摩擦音調整部13]
摩擦音調整部13には、周波数領域変換部11が出力した周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1と、摩擦音判定部12が出力した摩擦音判定情報が入力される。摩擦音調整部13は、フレーム単位で、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1に対して以下の周波数スペクトルの調整処理を行って調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を得て、得られた調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を符号化部14へ出力し、摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1をそのまま調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1として符号化部14へ出力する(ステップS13)。
【0033】
1より大きくNより小さい整数値をMとすると、例えば、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がM未満のサンプルであるX
0,…,X
M-1によるサンプル群を低域側周波数スペクトル系列とし、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がM以上のサンプルであるX
M,…,X
N-1によるサンプル群を高域側周波数スペクトル系列とすると、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合に摩擦音調整部13が行う調整処理は、低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
M-1の全部または一部のサンプルと、これと同数の、高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1の全部または一部のサンプルと、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1として得る処理である。以下、摩擦音調整部13が行う調整処理を例示する。摩擦音調整部13が行う調整処理としては、以下に例示するものを含む様々な処理が有り得るが、何れの処理を行うかは予め定めておく。
【0034】
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例1〕
摩擦音調整部13は、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、例えば、下記のStep 1-1からStep 1-6までを行うことにより調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を得る。なお、下記のStep 1-1からStep 1-6までは摩擦音調整部13の動作を分かり易く示すために6個のステップに分けてあるが、下記のStep 1-1からStep 1-6までを分けて行うのはあくまでも一例であり、摩擦音調整部13は、配列の要素の入れ替えやインデックスの付け替えを行う等によりStep 1-1からStep 1-6までと等価な処理を1回のステップで行ってもよい。
【0035】
Step 1-1:周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がM未満のサンプルによるサンプル群を低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
M-1とし、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちのサンプル番号がM以上のサンプルによるサンプル群を高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1とする。
【0036】
Step 1-2:Step 1-1で得た低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
M-1に含まれるC個(Cは正の整数)のサンプルを高域側への調整対象サンプルとして取り出す。
【0037】
Step 1-3:Step 1-1で得た高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1に含まれるC個のサンプルを低域側への調整対象サンプルとして取り出す。
【0038】
Step 1-4:Step 1-2で低域側周波数スペクトル系列中の高域側への調整対象サンプルを取り出したサンプル位置に、Step 1-3で高域側周波数スペクトル系列から取り出した低域側への調整対象サンプルを配置したものを低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
M-1として得る。
【0039】
Step 1-5:Step 1-3で高域側周波数スペクトル系列中の低域側への調整対象サンプルを取り出したサンプル位置に、Step1-2で低域側周波数スペクトル系列から取り出した高域側への調整対象サンプルを配置したものを高域側調整済周波数スペクトル系列Y
M,…,Y
N-1として得る。
【0040】
Step 1-6:Step 1-4で得た低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
M-1と、Step 1-5で得た高域側調整済周波数スペクトル系列Y
M,…,Y
N-1と、を結合して、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を得る。
【0041】
N=32、M=20、C=8の場合のStep 1-1からStep 1-6までの例を
図5に示す。摩擦音調整部13は、まず、周波数スペクトル系列X
0,…,X
31のうちのX
0,…,X
19を低域側周波数スペクトル系列とし、X
20,…,X
31を高域側周波数スペクトル系列とする (Step 1-1)。摩擦音調整部13は、低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
19に含まれる8個のサンプルX
2,…,X
9を高域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 1-2)。摩擦音調整部13は、高域側周波数スペクトル系列X
20,…,X
31に含まれる8個のサンプルX
20,…,X
27を低域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 1-3)。摩擦音調整部13は、低域側周波数スペクトル系列中のX
2,…,X
9があったサンプル位置にX
20,…,X
27を配置したものを低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
19として得る(Step 1-4)。摩擦音調整部13は、高域側周波数スペクトル系列中のX
20,…,X
27があったサンプル位置にX
2,…,X
9を配置したものを高域側調整済周波数スペクトル系列Y
20,…,Y
31として得る(Step 1-5)。摩擦音調整部13は、低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
19と高域側調整済周波数スペクトル系列Y
20,…,Y
31とを結合して調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
31を得る(Step 1-6)。
【0042】
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例2〕
また、摩擦音調整部13は、上記のStep 1-4に代えて下記のStep 1-4'を行ってもよい。
【0043】
Step 1-4’:Step 1-2で低域側周波数スペクトル系列中の高域側への調整対象サンプルを取り出した残りのサンプルを低域側に詰めて、空いた高域側のサンプル位置にStep 1-3で高域側周波数スペクトル系列から取り出した低域側への調整対象サンプルを配置したもの、を低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
M-1として得る。
【0044】
摩擦音調整部13がStep 1-4に代えてStep 1-4'を行うことで、後段の符号化部14では、対応する周波数が低いサンプルほど聴覚的な重要度を高くして符号化することが可能となる。
【0045】
このように、摩擦音調整部13は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、調整済周波数スペクトル系列が低域側調整済周波数スペクトル系列と高域側調整済周波数スペクトル系列により構成されるとして、低域側周波数スペクトル系列中の一部のサンプルを高域側調整済周波数スペクトル系列中に含め、低域側周波数スペクトル系列中の残りのサンプルを低域側調整済周波数スペクトル系列中の低域側に配置し、高域側周波数スペクトル系列中の一部のサンプルを低域側調整済周波数スペクトル系列中の高域側に配置し、高域側周波数スペクトル系列中の残りのサンプルを高域側調整済周波数スペクトル系列中に含めることにより調整済周波数スペクトル系列を得てもよい。
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例3〕
同様に、摩擦音調整部13は、上記のStep 1-5に代えて下記のStep 1-5'を行ってもよい。
【0046】
Step 1-5’:Step 1-3で高域側周波数スペクトル系列中の低域側への調整対象サンプルを取り出した残りのサンプルを低域側に詰めて、空いた高域側のサンプル位置にStep1-2で低域側周波数スペクトル系列から取り出した高域側への調整対象サンプルを配置したもの、を高域側調整済周波数スペクトル系列Y
M,…,Y
N-1を得る。
【0047】
摩擦音調整部13がStep 1-5に代えてStep 1-5'を行うことで、後段の符号化部14では、元は高域側にあったサンプルのほうを元は低域側にあったサンプルよりも聴覚的な重要度を高くして符号化することが可能となる。
【0048】
N=32、M=20、C=8の場合のStep 1-1からStep 1-6までのうちのStep 1-4に代えてStep 1-4'を行い、Step 1-5に代えてStep 1-5'を行う例を
図6に示す。摩擦音調整部13は、まず、周波数スペクトル系列X
0,…,X
31のうちのX
0,…,X
19を低域側周波数スペクトル系列とし、X
20,…,X
31を高域側周波数スペクトル系列とする (Step 1-1)。摩擦音調整部13は、低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
19に含まれる8個のサンプルX
2,…,X
9を高域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 1-2) 。摩擦音調整部13は、高域側周波数スペクトル系列X
20,…,X
31に含まれる8個のサンプルX
20,…,X
27を低域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 1-3)。摩擦音調整部13は、低域側周波数スペクトル系列中のX
10,…,X
19を低域側に詰め、低域側に詰めたX
10,…,X
19の高域側にX
20,…,X
27を配置したものを低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
19として得る(Step 1-4') 。摩擦音調整部13は、高域側周波数スペクトル系列中のX
28,…,X
31を低域側に詰め、低域側に詰めたX
28,…,X
31の高域側にX
2,…,X
9を配置したものを高域側調整済周波数スペクトル系列Y
20,…,Y
31として得る(Step 1-5')。摩擦音調整部13は、低域側調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
19と高域側調整済周波数スペクトル系列Y
20,…,Y
31とを結合して調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
31を得る(Step 1-6)。
【0049】
このようにして、摩擦音調整部13は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、調整済周波数スペクトル系列が低域側調整済周波数スペクトル系列と高域側調整済周波数スペクトル系列により構成されるとして、低域側周波数スペクトル系列中の一部のサンプルを高域側調整済周波数スペクトル系列中の高域側に配置し、低域側周波数スペクトル系列中の残りのサンプルを低域側調整済周波数スペクトル系列中に含め、高域側周波数スペクトル系列中の一部のサンプルを低域側調整済周波数スペクトル系列中に含め、高域側周波数スペクトル系列中の残りのサンプルを高域側調整済周波数スペクトル系列中の低域側に配置することにより調整済周波数スペクトル系列を得てもよい。
【0050】
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例4〕
また、摩擦音調整部13は、上記のStep 1-2における低域側周波数スペクトル系列からの高域側への調整対象サンプルには、周波数が最も低いものから1個または複数個のサンプルを含めないようにするのが望ましい。これは、周波数が低いサンプルはフレーム間の信号波形の連続性に寄与するサンプルであり、符号化部14でより多くのビットを割り当てた符号化をするべきだからである。すなわち、γを正の整数としたとき、低域側周波数スペクトル系列のうちのX
γ,…,X
M-1からC個の調整対象サンプルを選ぶようにするのがよく、例えばX
γ,…,X
γ+C-1を調整対象サンプルとすればよい。なお、γの値を大きくすればフレーム間の信号波形の連続性は高まるが、その他のサンプルに符号化部14で割り当てられるビット数は相対的に少なくなることから、フレーム内の復号音の聴覚品質が低くなる。従って、γの値は、これらのことを考慮して、事前の実験等により定めるとよい。
【0051】
上述した
図5と
図6の例では、γ=2とし、低域側周波数スペクトル系列のうちの周波数が最も低いものから2個のサンプルであるX
0とX
1を、低域側周波数スペクトル系列からの高域側への調整対象サンプルに含めないようにしている。
【0052】
言い換えれば、摩擦音調整部13は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、低域側周波数スペクトル系列中の高域側にある一部と、これと同数の、高域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列として得てもよい。
【0053】
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例5〕
後述する符号化部14での符号化処理においては、符号化処理で得るビット数の最大値の制約から、調整済周波数スペクトル系列のうちの周波数が最も高いものから何個かのサンプルにはビットが全く割り当てられないことがある。この場合は、高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1のうちの周波数が最も高いものから1個または複数個のサンプルについては符号化対象とせずに、高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1のうちの低域側にある残りのサンプルを符号化対象とするのがよい。従って、この場合には、摩擦音調整部13は、上記のStep 1-3における高域側周波数スペクトル系列からの低域側への調整対象サンプルには、高域側周波数スペクトル系列のうちの周波数が最も高いものから1個または複数個のサンプルは含めないようにする。
【0054】
上述した
図5と
図6の例では、高域側周波数スペクトル系列のうちの周波数が最も高いものから4個のサンプルであるX
28,…,X
31を、高域側周波数スペクトル系列からの低域側への調整対象サンプルに含めないようにしている。
【0055】
言い換えれば、摩擦音調整部13は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、低域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、これと同数の、高域側周波数スペクトル系列中の低域側にある一部と、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列として得てもよい。
【0056】
[符号化部14]
符号化部14には、摩擦音調整部13が出力した調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1が入力される。符号化部14は、フレーム単位で、入力された調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を、サンプル番号が小さいサンプルに対して優先してビットを割り当てる方法で、例えば非特許文献1と同じ方法で、符号化してスペクトル符号を得て、得たスペクトル符号を多重化部15へ出力する(ステップS14)。
【0057】
ここで、サンプル番号が小さいサンプルに対して優先してビットを割り当てる方法とは、例えば、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を複数の部分系列に分け、サンプル番号が小さいほうの部分系列ほど小さな値の利得で部分系列に含まれる各サンプルを除算して、除算結果の整数値それぞれを可変長符号や固定長符号を用いて符号化したり、ベクトル量子化をしたりして、調整済周波数スペクトル系列に対応する符号であるスペクトル符号を得る方法などである。その際、サンプル番号が大きいほうの一部の部分系列については、当該部分系列に対応する符号を得ないようにしてもよい。すなわち、サンプル番号が大きいほうの一部の部分系列については、ビットを割り当てないようにしてもよい。
【0058】
調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が小さいほうの部分系列については、部分系列に含まれるサンプルの値それぞれを小さな値の利得で除算して得た大きな値の整数値それぞれを符号化することになるため、各整数値は多くのビットを割り当てて符号化することになる。一方、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が大きいほうの部分系列については、部分系列に含まれるサンプルの値それぞれを大きな値の利得で除算して得た小さな値の整数値それぞれを符号化することになるため、各整数値は少ないビットを割り当てて符号化することになる。部分系列に含まれるサンプルの値それぞれを大きな値の利得で除算して得た整数値は0であることも多い。
【0059】
なお、
図1に一点鎖線で示すように、摩擦音調整部13と符号化部14とを摩擦音対応符号化部17とすると、摩擦音対応符号化部17は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、周波数スペクトル系列を高域側に優先してビットを割り当てる符号化処理で符号化してスペクトル符号を得て、前記以外の場合には、周波数スペクトル系列を低域側に優先してビットを割り当てる符号化処理で符号化してスペクトル符号を得ていると言える。
【0060】
[多重化部15]
多重化部15には、摩擦音判定部12が出力した摩擦音判定情報と符号化部14が出力したスペクトル符号が入力される。多重化部15は、フレーム単位で、入力された摩擦音判定情報に対応する符号とスペクトル符号とを繋ぎ合わせて得た符号を出力する(ステップS15)。摩擦音判定部12が出力した摩擦音判定情報が1ビットの情報である場合には、摩擦音判定部12が出力して多重化部15に入力された摩擦音判定情報そのものを摩擦音判定情報に対応する符号とすればよい。
【0061】
≪復号装置≫
図3を参照して、第一実施形態の復号装置の処理手続きを説明する。
図3に例示するように、第一実施形態の復号装置は、多重分離部21、復号部22、摩擦音調整解除部23、時間領域変換部24を含む。復号装置には符号化装置が出力した符号が入力される。復号装置に入力された符号は多重分離部21へ入力される。復号装置は、各部で所定の時間長のフレーム単位での処理を行う。第一実施形態の復号方法は、復号装置の各部が、以下及び
図4に例示するステップS21からステップS24の処理を行うことにより実現される。
【0062】
[多重分離部21]
多重分離部21には、符号化装置が出力した符号が入力される。多重分離部21は、フレーム単位で、入力された符号を摩擦音判定情報に対応する符号とスペクトル符号に分離して、摩擦音判定情報に対応する符号から得た摩擦音判定情報を摩擦音調整解除部23へ、スペクトル符号を復号部22へそれぞれ出力する(ステップS21)。
【0063】
摩擦音判定情報を1ビットの情報とする場合には、多重分離部21に入力された摩擦音判定情報に対応する符号そのものを摩擦音判定情報とすればよい。
【0064】
[復号部22]
復号部22には、多重分離部21の出力したスペクトル符号が入力される。復号部22は、フレーム単位で、符号化装置の符号化部14が行った符号化方法に対応する復号方法により、入力されたスペクトル符号を復号して復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1を得て、得た復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1を摩擦音調整解除部23へ出力する(ステップS22)。
【0065】
符号化装置の符号化部14の説明箇所に上述した符号化方法に対応する復号方法によりスペクトル符号を復号する場合には、復号部22は、スペクトル符号を復号して整数値列を得て、サンプル番号が小さいほうの部分系列ほど小さな値の利得を整数値に乗算して得たサンプル値の複数の部分系列を結合して復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1を得る。サンプル番号が大きいほうの一部の部分系列について符号化装置でビットの割り当てなかった場合には、例えば、その部分系列に対応する復号調整済周波数スペクトルの値は0とする。また、整数値が0であるサンプルについては利得を乗算して得た値も0であるので、復号調整済周波数スペクトルの値は0となる。すなわち、サンプル番号が大きいほうの一部の部分系列については整数値が0であることが多く、復号調整済周波数スペクトルの値は0であることが多い。
【0066】
このようにして、復号部22は、所定の時間区間のフレーム単位のスペクトル符号であって、低域側に優先してビットが割り当てられているスペクトル符号、を復号して、復号音信号に対応する周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)を得る。
【0067】
[摩擦音調整解除部23]
摩擦音調整解除部23には、多重分離部21が出力した摩擦音判定情報と復号部22が出力した復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1が入力される。摩擦音調整解除部23は、フレーム単位で、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、入力された復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1に対して以下の調整解除処理を行って復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を得て、得られた復号周波数スペクトル系列^X
0,^X
1,…,^X
N-1を時間領域変換部24へ出力し、摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないと示す場合には、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1をそのまま復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1として時間領域変換部24へ出力する(ステップS23)。
【0068】
1より大きくNより小さい整数値をMとすると、例えば、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1のうちのサンプル番号がM未満のサンプルである^Y
0,…,^Y
M-1によるサンプル群を低域側復号調整済周波数スペクトル系列とし、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1のうちのサンプル番号がM以上のサンプルである^Y
M,…,^Y
N-1によるサンプル群を高域側復号調整済周波数スペクトル系列とすると、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合に摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理は、低域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1の全部または一部のサンプルと、これと同数の、高域側復号調整周波数スペクトル系列^Y
M,…,^Y
N-1の全部または一部のサンプルと、を入れ替えたものを復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1として得る処理である。摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理としては、以下に例示するものを含む様々な処理が有り得るが、対応する符号化装置の摩擦音調整部13が行った調整処理の逆処理となるよう調整解除処理を予め定めておく。
【0069】
言い換えれば、摩擦音調整解除部23は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、復号部22が得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数サンプル列(低域側復号調整済周波数スペクトル系列)の全部または一部と、これと同数の、復号部22が得た周波数領域のサンプル列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数サンプル列(高域側復号調整済周波数スペクトル系列)の全部または一部と、を入れ替えたものを復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)として得て、前記以外の場合には、復号部22が得た周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)をそのまま復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)として得る。
【0070】
〔摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理の例1〕
摩擦音調整解除部23は、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、例えば、下記のStep 2-1からStep 2-6までを行うことにより復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を得る。なお、下記のStep 2-1からStep 2-6までは摩擦音調整解除部23の動作を分かり易く示すために6個のステップに分けてあるが、摩擦音調整解除部23は、下記のStep 2-1からStep 2-6までを分けて行うのはあくまでも一例であり、配列の要素の入れ替えやインデックスの付け替えを行う等によりStep 2-1からStep 2-6までと等価な処理を1回のステップで行ってもよい。
【0071】
Step 2-1:復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1のうちのサンプル番号がM未満のサンプルによるサンプル群を低域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
M-1とし、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1のうちのサンプル番号がM以上のサンプルによるサンプル群を高域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
M,…,^Y
N-1とする。
【0072】
Step 2-2:Step 2-1で得た低域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
M-1に含まれるC個(Cは正の整数)のサンプルを高域側への調整対象サンプルとして取り出す。
【0073】
Step 2-3:Step 2-1で得た高域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
M,…,^Y
N-1に含まれるC個のサンプルを低域側への調整対象サンプルとして取り出す。
【0074】
Step 2-4:Step 2-2で低域側復号調整済周波数スペクトル系列中の高域側への調整対象サンプルを取り出したサンプル位置に、Step 2-3で高域側復号調整済周波数スペクトル系列から取り出した低域側への調整対象サンプルを配置したものを低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
M-1として得る。
【0075】
Step 2-5:Step 2-3で高域側復号調整済周波数スペクトル系列中の低域側への調整対象サンプルを取り出したサンプル位置に、Step2-2で低域側復号調整済周波数スペクトル系列から取り出した高域側への調整対象サンプルを配置したものを高域側復号周波数スペクトル系列^X
M,…,^X
N-1として得る。
【0076】
Step 2-6:Step 2-4で得た低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
M-1と、Step
2-5で得た高域側復号周波数スペクトル系列^X
M,…,^X
N-1と、を結合して、復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を得る。
【0077】
N=32、M=20、C=8の場合のStep 2-1からStep 2-6までの例を
図7に示す。摩擦音調整解除部23は、まず、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
31のうちの^Y
0,…,^Y
19を低域側復号調整済周波数スペクトル系列とし、^Y
20,…,^Y
31を高域側復号調整済周波数スペクトル系列とする(Step 2-1)。摩擦音調整解除部23は、低域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
19に含まれる8個のサンプル^Y
2,…,^Y
9を高域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 2-2)。摩擦音調整解除部23は、高域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
20,…,^Y
31に含まれる8個のサンプル^Y
20,…,^Y
27を低域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 2-3)。摩擦音調整解除部23は、低域側復号調整済周波数スペクトル系列中の^Y
2,…,^Y
9があったサンプル位置に^Y
20,…,^Y
27を配置したものを低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
19として得る(Step 2-4)。摩擦音調整解除部23は、高域側復号調整済周波数スペクトル系列中の^Y
20,…,^Y
27があったサンプル位置に^Y
2,…,^Y
9を配置したものを高域側復号周波数スペクトル系列^X
20,…,^X
31として得る(Step 2-5)。摩擦音調整解除部23は、低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
19と高域側復号周波数スペクトル系列^X
20,…,^X
31とを結合して復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
31を得る(Step 2-6)。
【0078】
〔摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理の例2〕
摩擦音調整解除部23は、符号化装置の摩擦音調整部13がStep 1-4に代えてStep 1-4'を行った場合には、上記のStep 2-4に代えて下記のStep 2-4'を行う。
【0079】
Step 2-4’:Step 2-2で低域側復号調整済周波数スペクトル系列中の高域側への調整対象サンプルを取り出した残りのサンプルを低域側と高域側に詰めて、空いた間のサンプル位置にStep 2-3で高域側復号調整済周波数スペクトル系列から取り出した低域側への調整対象サンプルを配置したもの、を低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
M-1として得る。
【0080】
〔摩擦音調整部13が行う調整処理の例3〕
摩擦音調整解除部23は、符号化装置の摩擦音調整部13がStep 1-5に代えてStep 1-5'を行った場合には、上記のStep 2-5に代えて下記のStep 2-5'を行う。
【0081】
Step 2-5’:Step 2-3で高域側復号調整済周波数スペクトル系列中の低域側への調整対象サンプルを取り出した残りのサンプルを高域側に詰めて、空いた低域側のサンプル位置にStep2-2で低域側復号調整済周波数スペクトル系列から取り出した高域側への調整対象サンプルを配置したもの、を高域側復号周波数スペクトル系列^X
M,…,^X
N-1として得る。
【0082】
N=32、M=20、C=8の場合のStep 2-1からStep 2-6までのうちのStep 2-4に代えてStep 2-4'を行い、Step 2-5に代えてStep 2-5'を行う例を
図8に示す。摩擦音調整解除部23は、まず、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
31のうちの^Y
0,…,^Y
19を低域側復号調整済周波数スペクトル系列とし、^Y
20,…,^Y
31を高域側復号調整済周波数スペクトル系列とする(Step 2-1)。摩擦音調整解除部23は、低域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
19に含まれる8個のサンプル^Y
12,…,^Y
19を高域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 2-2) 。摩擦音調整解除部23は、高域側復号調整済周波数スペクトル系列^Y
20,…,^Y
31に含まれる8個のサンプル^Y
24,…,^Y
31を低域側への調整対象サンプルとして取り出す(Step 2-3) 。摩擦音調整解除部23は、低域側復号調整済周波数スペクトル系列中の^Y
0,^Y
1を低域側に詰め、^Y
2,…,^Y
11を高域側に詰め、空いた間に^Y
24,…,^Y
31を配置したものを低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
19として得る(Step 2-4')。摩擦音調整解除部23は、高域側復号調整済周波数スペクトル系列中の^Y
20,…,^Y
23を高域側に詰め、高域側に詰めた^Y
20,…,^Y
23の低域側に^Y
12,…,^Y
19を配置したものを高域側復号周波数スペクトル系列^X
20,…,^X
31として得る(Step 2-5') 。摩擦音調整解除部23は、低域側復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
19と高域側復号周波数スペクトル系列^X
20,…,^X
31とを結合して復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
31を得る(Step
2-6)。
【0083】
〔摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理の例4〕
摩擦音調整解除部23は、符号化装置の摩擦音調整部13がStep 1-2において低域側周波数スペクトル系列からの高域側への調整対象サンプルに周波数が最も低いものから1個または複数個のサンプルを含めないようにした場合には、Step 2-2において、低域側復号調整済周波数スペクトル系列からの高域側への調整対象サンプルに周波数が最も低いものから1個または複数個のサンプルを含めないようにする。
【0084】
〔摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理の例5〕
摩擦音調整解除部23は、符号化装置の摩擦音調整部13がStep 1-3において高域側周波数スペクトル系列からの低域側への調整対象サンプルに周波数が最も高いものから1個または複数個のサンプルを含めないようにした場合には、Step 2-3において、高域側復号調整済周波数スペクトル系列からの低域側への調整対象サンプルに周波数が最も高いものから1個または複数個のサンプルを含めないようにする。
【0085】
なお、
図3に一点鎖線で示すように、復号部22と摩擦音調整解除部23を摩擦音対応復号部26とすると、摩擦音対応復号部26は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、スペクトル符号には高域側に優先してビットが割り当てられているとして、スペクトル符号を復号して周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)を得て、前記以外の場合には、スペクトル符号には低域側に優先してビットが割り当てられているとして、スペクトル符号を復号して周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)を得ていると言える。
【0086】
[時間領域変換部24]
時間領域変換部24には、摩擦音調整解除部23が出力した復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1が入力される。時間領域変換部24は、フレーム毎に、復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を、符号化装置の周波数領域変換部11が行った周波数領域への変換方法に対応する時間領域への変換方法、例えば逆MDCT、を用いて時間領域の信号に変換してフレーム単位の音信号(復号音信号)を得て出力する(ステップS24)。
【0087】
なお、符号化装置の周波数領域変換部11において、変換により得た周波数スペクトル系列に対して聴覚的な重み付けのためのフィルタ処理や圧伸処理を施した場合は、時間領域変換部24は、これらの処理に対応する逆フィルタ処理や逆圧伸処理を復号周波数スペクトル系列に行ったものを時間領域の信号に変換して得た復号音信号を出力する。
【0088】
なお、時間領域の復号音信号ではなく周波数領域の復号音信号を復号装置が出力する構成としてもよい。この構成とする場合には、復号装置には時間領域変換部24を含まないでよく、摩擦音調整解除部23が得たフレーム単位の復号周波数スペクトル系列を時間区間順に連結して周波数領域の復号音信号として出力すればよい。
【0089】
≪作用効果≫
第一実施形態の符号化装置と復号装置によれば、従来のような低周波数のスペクトルに対してよりビット数を割くように設計がされた符号化処理やこれらに対応する復号処理が行われる構成に、摩擦音調整処理やこれに対応する摩擦音調整解除処理を付加した構成とすることで、摩擦音などを含む音信号であっても聴感的な劣化が少なくなるように圧縮符号化することが可能となる。
【0090】
摩擦音などを含む音信号であっても聴感的な劣化が少なくなるように圧縮符号化する従来技術としてはエネルギーが大きいサブバンドに優先的にビットを割り当てる符号化・復号技術も存在する。しかし、この技術では各サブバンドについてのビット割り当ての情報を符号化側から復号側に送る必要がある。これに対し、第一実施形態の符号化装置と復号装置によれば、1ビットの摩擦音判定情報を符号化側から復号側に送るだけで、摩擦音などを含む音信号であっても聴感的な劣化が少なくなるように圧縮符号化することが可能となる。
【0091】
<第一実施形態の変形例>
第一実施形態の変形例は、符号化装置に含まれる摩擦音判定部12のみが第一実施形態と異なる。符号化装置のその他の構成や復号装置の構成は第一実施形態と同じである。以下では、第一実施形態と異なる摩擦音判定部12の動作と、それによる符号化装置と復号装置での作用効果について説明する。
【0092】
[摩擦音判定部12]
第一実施形態の変形例の摩擦音判定部12は、図示しない比較結果記憶部を備える。
【0093】
摩擦音判定部12は、フレーム単位で、当該フレームの入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちの低域側にあるサンプルの平均エネルギーに対する入力された周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちの高域側にあるサンプルの平均エネルギーの比が大きいほど大きくなる指標を当該フレームが摩擦音的な音であることの指標として求め、求めた指標が予め定めた閾値より大きいか閾値以上であるか否かを表す比較結果情報を得る。
【0094】
比較結果記憶部は、この比較結果情報を、予め定めた所定個数の過去のフレームの分だけ記憶しておくものである。すなわち、摩擦音判定部12は、フレーム単位で、当該フレームの周波数スペクトル系列から計算された比較結果情報を比較結果記憶部に新たに記憶するとともに、記憶された一番古い比較結果情報を削除する。
【0095】
摩擦音判定部12は、当該フレームの周波数スペクトル系列から計算された比較結果情報と、比較結果記憶部に記憶された所定個数の過去のフレームの比較結果情報と、を用いて、これらの比較結果情報のうちの半数以上の比較結果情報または半数より多くの比較結果情報が、予め定めた閾値より大きいか閾値以上であることを表す場合には摩擦音的な音であると判定し、そうでない場合には摩擦音的な音でないと判定し、その判定結果を摩擦音判定情報として摩擦音調整部13及び多重化部15へ出力する。
【0096】
このようにして、摩擦音判定部12は、当該フレームを含む複数のフレームにおいて、音信号の周波数スペクトル系列における低域側の周波数スペクトルの平均エネルギーに対する高域側の周波数スペクトルの平均エネルギーの比が大きいほど大きくなる指標が予め定めた閾値より大きいか閾値以上であるフレーム数が、そうでないフレーム数より多いかまたはそうでないフレーム数以上である場合に、当該フレームについて音信号が摩擦音的な音であると判定してもよい。
【0097】
摩擦音判定情報として例えば1ビットの情報を用いればよいこと、平均エネルギーとして全てまたは一部のサンプルの値の絶対値和の平均値または二乗和の平均値を用いればよいこと、などは第一実施形態の摩擦音判定部12と同様である。
【0098】
≪作用効果≫
第一実施形態の符号化装置と復号装置での処理を行うと、調整処理と調整解除処理が行われるフレームについては高域成分の符号化歪が少なく低域成分の符号化歪が多い復号音が得られ、調整処理と調整解除処理が行われないフレームについては高域成分の符号化歪が多く低域成分の符号化歪が少ない復号音が得られることから、調整処理と調整解除処理が行われるフレームと調整処理と調整解除処理が行われないフレームとの境界では復号音の波形の不連続が発生する可能性がある。すなわち、摩擦音判定部12の判定結果が頻繁に切り替わると、復号音の波形の不連続が頻繁に発生することになり、この不連続が知覚されることにより聴覚品質が劣化してしまう可能性がある。第一実施形態の変形例の符号化装置は、第一実施形態の符号化装置よりも、摩擦音判定部12の判定結果が頻繁に切り替わることを抑制することができ、復号音の波形の不連続の発生頻度を抑制することができ、この不連続が知覚されることによる聴覚品質の劣化を抑えることができる。
【0099】
第一実施形態の変形例の摩擦音判定部12では、判定に用いる比較結果情報の個数を増やせば増やすほど、摩擦音判定部12の判定結果が頻繁に切り替わることを抑制することができ、復号音の波形の不連続の発生頻度を抑制することができるが、判定に用いる比較結果情報の個数は、不連続が知覚されることによる聴覚品質の劣化とフレーム毎の復号音の聴覚品質とのトレードオフを考慮して、決める必要がある。例えば、フレーム長が3 msである場合には判定に用いる比較結果情報の個数を16個とするとよい。
【0100】
<第二実施形態>
この発明の第二実施形態のシステムは、第一実施形態のシステムと同様に、符号化装置と復号装置を含む。
【0101】
第二実施形態が第一実施形態と異なるのは、符号化装置でビットが割り当てられなかった周波数スペクトルを復号装置で復元すること、すなわち、復号装置で帯域を拡張することである。第二実施形態の復号装置は、摩擦音判定情報に基づいて入れ替わった後の周波数スペクトルである復号調整済周波数スペクトル系列に対して帯域を拡張する。符号化装置でビットが割り当てられない周波数スペクトルは、摩擦音的な音ではない時間区間については高域に、摩擦音的な音の時間区間については低域に、それぞれ含まれている。そこで、第二実施形態では、摩擦音的な音でない時間区間については、低域の周波数スペクトルの複製により高域の周波数スペクトルを再現することで帯域を拡張し、摩擦音的な音の時間区間については、高域の周波数スペクトルの複製により低域の周波数スペクトルを再現することで帯域を拡張する。
【0102】
第二実施形態における周波数スペクトルの複製は、複製の元となる周波数スペクトルに利得を乗算することにより行う。そこで、第二実施形態の符号化装置は、第一実施形態の符号化装置が行うことに加えて、第二実施形態の復号装置が用いる利得を求めて、求めた利得に対応する符号を出力する。
【0103】
≪符号化装置≫
図9を参照して、第二実施形態の符号化装置の処理手続きを説明する。
図9に例示するように、第二実施形態の符号化装置は、周波数領域変換部11、摩擦音判定部12、摩擦音調整部13、符号化部14、帯域拡張利得符号化部16、多重化部15を含む。
図9の第二実施形態の符号化装置が
図1の符号化装置と異なるのは、帯域拡張利得符号化部16を備え、多重化部15が、帯域拡張利得符号化部16が出力した帯域拡張利得符号も出力する符号に含めることである。第二実施形態の符号化装置のその他の構成、すなわち、周波数領域変換部11、摩擦音判定部12、摩擦音調整部13、符号化部14の動作は第一実施形態の符号化装置のものと同じであるので、以下では動作の要部のみを説明する。
【0104】
符号化装置には、所定の時間長のフレーム単位で時間領域の音信号が入力される。符号化装置に入力された時間領域の音信号は周波数領域変換部11へ入力される。符号化装置は、各部で所定の時間長のフレーム単位での処理を行う。第二実施形態の符号化方法は、符号化装置の各部が、以下及び
図10に例示するステップS11からステップS16の処理を行うことにより実現される。
【0105】
[周波数領域変換部11]
周波数領域変換部11は、フレーム単位で、符号化装置に入力された時間領域の音信号を周波数領域のN点の周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1に変換して出力する(ステップS11)。
【0106】
[摩擦音判定部12]
摩擦音判定部12は、フレーム単位で、周波数領域変換部11が得た周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1または符号化装置に入力された時間領域の音信号を用いて、音信号が摩擦音的な音であるか否かを判定し、その判定結果を摩擦音判定情報として出力する(ステップS12)。第一実施形態の符号化装置の摩擦音判定部12は摩擦音判定情報を摩擦音調整部13と多重化部15に出力したが、第二実施形態の符号化装置の摩擦音判定部12は、摩擦音判定情報を摩擦音調整部13と多重化部15に加えて帯域拡張利得符号化部16へも出力する。なお、第二実施形態の符号化装置の摩擦音判定部12は、第一実施形態の変形例の符号化装置の摩擦音判定部12と同じ動作をしてもよい。
【0107】
言い換えれば、摩擦音判定部12は、あるフレームの周波数スペクトル系列における低域側の周波数スペクトルの平均エネルギーに対する高域側の周波数スペクトルの平均エネルギーの比が大きいほど大きくなる指標が、予め定めた閾値より大きいか閾値以上である場合に、音信号が摩擦音的な音であると判定してもよい。
【0108】
また、摩擦音判定部12は、あるフレームを含む複数のフレームにおいて、周波数スペクトル系列における低域側の周波数スペクトルの平均エネルギーに対する高域側の周波数スペクトルの平均エネルギーの比が大きいほど大きくなる指標が予め定めた閾値より大きいか閾値以上であるフレーム数が、そうでないフレーム数より多いかまたはそうでないフレーム数以上である場合に、音信号が摩擦音的な音であると判定してもよい。
【0109】
[摩擦音調整部13]
摩擦音調整部13は、フレーム単位で、摩擦音判定部12が得た摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、周波数領域変換部11が得た周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1に対して周波数スペクトルの調整処理を行って調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を得て、得られた調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を符号化部14へ出力し、摩擦音判定部12が得た摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には、周波数領域変換部11が得た周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1をそのまま調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1として符号化部14へ出力する(ステップS13)。
【0110】
摩擦音調整部13が行う周波数スペクトルの調整処理は、周波数スペクトル系列X
0,…,X
N-1のうちの低域側周波数スペクトル系列X
0,…,X
M-1の全部または一部のサンプルと、これと同数の、周波数スペクトル系列X
0,X…,X
N-1のうちの高域側周波数スペクトル系列X
M,…,X
N-1の全部または一部のサンプルと、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1として得る処理である。
【0111】
言い換えれば、摩擦音調整部13は、摩擦音判定部12が摩擦音的な音であると判定した場合には、音信号の周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、これと同数の、周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数スペクトル系列の全部または一部と、を入れ替えたものを調整済周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、音信号に対応する周波数スペクトル系列をそのまま調整済周波数スペクトル系列として得る。
【0112】
[符号化部14]
符号化部14は、フレーム単位で、摩擦音調整部13が得た調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を、サンプル番号が小さいサンプルに対して優先してビットを割り当てる方法で、符号化してスペクトル符号を得て、得たスペクトル符号を多重化部15へ出力する(ステップS14)。
【0113】
第一実施形態の符号化装置の符号化部14における、サンプル番号が小さいサンプルに対して優先してビットを割り当てる方法は、調整済周波数スペクトル系列の全てのサンプルにビットを割り当てる方法でも、サンプル番号が大きいほうの一部のサンプルにビットを割り当てない方法でもよかった。これに対し、第二実施形態の符号化装置の符号化部14における、サンプル番号が小さいサンプルに対して優先してビットを割り当てる方法は、調整済周波数スペクトル系列のうち、サンプル番号が大きいほうの一部の調整済周波数スペクトルにビットを割り当てない方法に限定されるものとする。なお、このビットを割り当てる方法は、予め定めて符号化部14に記憶しておくとともに、後述する帯域拡張利得符号化部16にも記憶しておく。
【0114】
符号化部14は、例えば、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のN個の調整済周波数スペクトルのうちのサンプル番号が大きいほうのK個(K≦N/2)の調整済周波数スペクトルY
N-K,…,Y
N-1にはビットを割り当てず、残りのサンプル番号が小さいほうからN-K個の調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1にビットを割り当てて、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1を符号化してスペクトル符号を得て、得たスペクトル符号を多重化部15へ出力する。すなわち、符号化部14は、実質的には調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のN個の調整済周波数スペクトルのうちのサンプル番号が小さいほうからN-K個の調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1のみを符号化してスペクトル符号を得る。
【0115】
[帯域拡張利得符号化部16]
帯域拡張利得符号化部16には、摩擦音調整部13が出力した調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1が少なくとも入力される。帯域拡張利得符号化部16は、フレーム単位で、入力された調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1に少なくとも基づいて下記のように帯域拡張利得符号を得て、得た帯域拡張利得符号を多重化部15へ出力する(ステップS16)。
【0116】
帯域拡張利得符号化部16に調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のみが入力される構成とする場合には、例えば下記の例1のように、帯域拡張利得符号化部16は、フレーム単位で、入力された調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1に基づいて帯域拡張利得符号を得て、得た帯域拡張利得符号を多重化部15へ出力する。
【0117】
また、帯域拡張利得符号化部16には、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1に加えて摩擦音判定部12が出力した摩擦音判定情報も入力される構成としてもよい。この構成とする場合には、例えば下記の例2のように、帯域拡張利得符号化部16は、フレーム単位で、入力された調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1と摩擦音判定情報に基づいて帯域拡張利得符号を得て、得た帯域拡張利得符号を多重化部15へ出力する。
【0118】
帯域拡張利得符号化部16の記憶部161には、利得ベクトルの候補である利得候補ベクトルとその利得候補ベクトルを特定可能な符号とが組にされて複数組予め格納されていて、各利得候補ベクトルは複数サンプル分の利得候補値により構成されている。帯域拡張利得符号化部16は、フレーム単位で、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルの値と利得候補ベクトルを構成する利得候補値とを乗算した値の絶対値と、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルの値の絶対値と、の差の絶対値の総和が最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得て出力する。なお、絶対値に代えて二乗値などを用いてもよい。
【0119】
以下、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルは、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が小さいほうからN-K個の調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1であり、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルは、調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトルY
N-K,…,Y
N-1である場合の例を説明する。
【0120】
〔帯域拡張利得符号化部16の例1〕
この例では、記憶部161には利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されていて、各利得候補ベクトルがKサンプル分の利得候補値により構成されているとする。以下、J個の利得候補ベクトルそれぞれをG
j (j=0,…,J-1)とし、利得候補ベクトルG
j(j=0,…,J-1)のそれぞれに対応する符号をC
Gj(j=0,…,J-1)とし、それぞれの利得候補ベクトルG
jはK個の利得候補値g
j,k (k=0,…,K-1)により構成されているとして説明する。
【0121】
帯域拡張利得符号化部16は、記憶部161に記憶された利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)のうちの下記の式(1)により求まるE
jが最小となる利得候補ベクトルG
jに対応する符号C
Gjを帯域拡張利得符号C
Gとして出力する。
【数1】
【0122】
言い換えると、帯域拡張利得符号化部16は、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトルY
N-2K,…,Y
N-K-1と利得候補ベクトルを構成する利得候補値g
j,0,…,g
j,K-1とをそれぞれ乗算した値の絶対値|Y
N-2K g
j,0|,…,|Y
N-K-1 g
j,K|と、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルY
N-K,…,Y
N-1それぞれの絶対値|Y
N-K|,…,|Y
N-1|と、の差の絶対値||Y
N-2K g
j,0|-|Y
N-K||,…,||Y
N-K-1 g
j,K|-|Y
N-1||の総和E
jが最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得て出力する。
【0123】
〔帯域拡張利得符号化部16の例2〕
この例では、記憶部161には例1と同様に利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されているが、例1とは異なり、利得候補ベクトルとして摩擦音用利得候補ベクトルと非摩擦音用利得候補ベクトルの2種類が格納されているとする。すなわち、記憶部161には摩擦音用利得候補ベクトルと非摩擦音用利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されていて、各摩擦音用利得候補ベクトルと各非摩擦音用利得候補ベクトルがKサンプル分の利得候補値により構成されているとする。以下、J個の摩擦音用利得候補ベクトルそれぞれをG1
j (j=0,…,J-1)とし、J個の非摩擦音用利得候補ベクトルそれぞれをG2
j (j=0,…,J-1)とし、摩擦音用利得候補ベクトルG1
j (j=0,…,J-1)のそれぞれに対応しかつ非摩擦音用利得候補ベクトルG2
j (j=0,…,J-1)のそれぞれに対応する符号をC
Gj (j=0,…,J-1)として説明する。また、それぞれの摩擦音用利得候補ベクトルG1
jはKサンプル分すなわちK個の利得候補値g1
j,k (k=0,…,K-1)により構成されていて、それぞれの非摩擦音用利得候補ベクトルG2
jはKサンプル分すなわちK個の利得候補値g2
j,k(k=0,…,K-1)により構成されているとして説明する。
【0124】
帯域拡張利得符号化部16は、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には記憶部161に記憶された摩擦音用利得候補ベクトルG1
j (j=0,…,J-1)を利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)として、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には記憶部161に記憶された非摩擦音用利得候補ベクトルG2
j (j=0,…,J-1)を利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)として、利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)のうちの上記の式(1)により求まるE
jが最小となる利得候補ベクトルG
jに対応する帯域拡張利得符号C
Gjを帯域拡張利得符号C
Gとして出力する。
【0125】
言い換えると、帯域拡張利得符号化部16は、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には記憶部161に記憶された摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとし、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には記憶部161に記憶された非摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとして、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトルY
N-2K,…,Y
N-K-1と利得候補ベクトルを構成する利得候補値g
j,0,…,g
j,K-1とをそれぞれ乗算した値の絶対値|Y
N-2K g
j,0|,…,|Y
N-K-1 g
j,K-1|と、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルY
N-K,…,Y
N-1それぞれの絶対値|Y
N-K|,…,|Y
N-1|と、の差の絶対値||Y
N-2K g
j,0|-|Y
N-K||,…,||Y
N-K-1 g
j,K-1|-|Y
N-1||の総和E
jが最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得て出力する。
【0126】
このように、帯域拡張利得符号化部16には、複数個の符号と、符号のそれぞれに対応する摩擦音用利得候補ベクトルと、符号のそれぞれに対応する非摩擦音用利得候補ベクトルと、が記憶されており、帯域拡張利得符号化部16は、摩擦音判定部
12が摩擦音的な音であると判定した場合には、摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとして用い、前記以外の場合には、非摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとして用いてもよい。
【0127】
〔帯域拡張利得符号化部16の例1と例2の変形例1〕
上述した例1と例2では、利得候補値の乗算の対象とする調整済周波数スペクトルは、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトルY
N-2K,…,Y
N-K-1とした。しかし、利得候補値の乗算の対象とする調整済周波数スペクトルは、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1のうちの予め定めたK個のサンプル番号に対応するK個の調整済周波数スペクトルであればよい。
【0128】
〔帯域拡張利得符号化部16の例1と例2の変形例2〕
上述した例1と例2では、式(1)ではkの値が小さい順のY
N-2K+k、g
j,k、Y
N-K+kを対応付けているが、予め定めた対応付けであればどのような対応付けでもよい。
【0129】
〔帯域拡張利得符号化部16の具体例〕
N=32, K=12の場合の帯域拡張利得符号化部16の具体例を説明する。この具体例は帯域拡張利得符号化部16の例2の変形例2に対応する。
図13と
図14は、N=32, K=12の場合の後述する復号装置の帯域拡張部25と摩擦音調整解除部23の例である。
【0130】
図13は摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合の例である。復号装置の帯域拡張部25は、後述するように、8番目から19番目の復号調整済周波数スペクトルを複製元とし、これらの複製元の復号調整済周波数スペクトルの値と帯域拡張利得とを乗算した値をサンプル番号順に20番目から31番目の復号拡張周波数スペクトルとして得る処理を行う。そこで、帯域拡張利得符号化部16は、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には、記憶部161に記憶された非摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとして、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
19のうちのサンプル番号が大きいほうから12個の調整済周波数スペクトルY
8,…,Y
19と利得候補ベクトルを構成する利得候補値g
j,0,…,g
j,11とをそれぞれ乗算した値の絶対値|Y
8 g
j,0|,…,|Y
19 g
j,11|と、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルY
20,…,Y
31それぞれの絶対値|Y
20|,…,|Y
31|と、の差の絶対値||Y
8 g
j,0|-|Y
20||,…,||Y
19 g
j,11|-|Y
31||の総和E
jが最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得る。
【0131】
図14は摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合の例である。復号装置の帯域拡張部25は、後述するように、8番目から19番目の復号調整済周波数スペクトルを複製元とし、これらの複製元の復号調整済周波数スペクトルの値と帯域拡張利得とを乗算した値を、16番目から19番目までのサンプル番号順の後が8番目から15番目までのサンプル番号順となる順番としたものを、20番目から31番目の復号拡張周波数スペクトルとして得る処理を行う。そこで、帯域拡張利得符号化部16は、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、記憶部161に記憶された摩擦音用利得候補ベクトルを利得候補ベクトルとして、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
19のうちのサンプル番号が大きいほうから12個の調整済周波数スペクトルY
8,…,Y
19と利得候補ベクトルを構成する利得候補値g
j,0,…,g
j,11とをそれぞれ乗算した値の絶対値|Y
8 g
j,0|,…,|Y
19 g
j,11|と、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルY
24,…,Y
31,Y
20,…,Y
23それぞれの絶対値|Y
24|,…,|Y
31|,|Y
20|,…,|Y
23|と、の差の絶対値||Y
8 g
j,0|-|Y
24||,…,||Y
15 g
j,7|-|Y
31||,||Y
16 g
j,8|-|Y
20||,…,||Y
19 g
j,11|-|Y
23||の総和E
jが最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得る。
【0132】
このようにして、帯域拡張利得符号化部16には、複数個の符号と、符号のそれぞれに対応する利得候補ベクトルと、が記憶されており、利得候補ベクトルのそれぞれはK個(Kは2以上の整数)の利得候補値を含んでいるとして、帯域拡張利得符号化部16は、調整済周波数スペクトル系列のうちの符号化部14がビットを割り当てたK個の調整済周波数スペクトルと、利得候補ベクトルに含まれるK個の利得候補値と、を乗算して得たK個の値の絶対値による系列と、調整済周波数スペクトル系列のうちの符号化部14がビットを割り当てなかったK個の調整済周波数スペクトルの絶対値による系列と、の誤差が最小となる利得候補ベクトルに対応する符号を帯域拡張利得符号として得て出力する。
【0133】
この帯域拡張利得符号化部16の動作は、復号装置の帯域拡張部25と摩擦音調整解除部23の動作に対応させたものである。
図8の例では、復号装置の摩擦音調整解除部23は、20番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトルのうちのサンプル番号が小さい側の20番目から23番目までの復号拡張周波数スペクトルを、サンプル番号が28番目から31番目までの復号周波数スペクトルとし、20番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトルのうちのサンプル番号が大きい側の24番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトルを、サンプル番号が2番目から9番目までの復号周波数スペクトルとする。復号装置の帯域拡張部25は、この摩擦音調整解除部23の動作により得られる復号周波数スペクトルの周波数の高低を考慮して、
図14の動作をする。
【0134】
すなわち、復号装置の帯域拡張部25は、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合でも摩擦音的な音でないことを示す場合でも、復号周波数スペクトルにおける周波数の高低に整合した処理を行うようにされている。従って、帯域拡張利得符号化部16もこの帯域拡張部25に対応した動作をする。
【0135】
[多重化部15]
多重化部15には、摩擦音判定部12が出力した摩擦音判定情報と、符号化部14が出力したスペクトル符号と、帯域拡張利得符号化部16が出力した帯域拡張利得符号が入力される。多重化部15は、入力された摩擦音判定情報に対応する符号とスペクトル符号と帯域
拡張利得符号とを繋ぎ合わせて得た符号を出力する(ステップS15)。
【0136】
≪復号装置≫
図11を参照して、第二実施形態の復号装置の処理手続きを説明する。
図11に例示するように、第二実施形態の復号装置は、多重分離部21、復号部22、帯域拡張部25、摩擦音調整解除部23、時間領域変換部24を含む。
図11の第二実施形態の復号装置が
図3の第一実施形態の復号装置と異なるのは、帯域拡張部25を備え、多重分離部21が、入力された符号から帯域拡張利得符号も得ることである。第二実施形態の復号装置のその他の構成、すなわち、復号部22、摩擦音調整解除部23、時間領域変換部24の動作は第一実施形態の復号装置のものと同じであるので、以下では動作の要部のみを説明する。
【0137】
復号装置には符号化装置が出力した符号が入力される。復号装置に入力された符号は多重分離部21へ入力される。復号装置は、各部で所定の時間長のフレーム単位での処理を行う。第二実施形態の復号方法は、復号装置の各部が、以下及び
図12に例示するステップS21からステップS25の処理を行うことにより実現される。
【0138】
[多重分離部21]
多重分離部21は、入力された符号を摩擦音判定情報に対応する符号と帯域拡張利得符号とスペクトル符号に分離して、摩擦音判定情報に対応する符号から得た摩擦音判定情報を摩擦音調整解除部23と帯域拡張部25へ、帯域拡張利得符号を帯域拡張部25へ、スペクトル符号を復号部22へそれぞれ出力する(ステップS21)。
【0139】
[復号部22]
復号部22は、フレーム単位で、符号化装置の符号化部14が行った符号化処理に対応する復号処理により、入力されたスペクトル符号を復号して復号調整済周波数スペクトル系列を得て出力する(ステップS22)。
【0140】
上述したように、第二実施形態の符号化装置の符号化部14はサンプル番号が大きいほうの一部のサンプルにビットを割り当てない符号化処理を行うことから、これらのサンプル番号の復号調整済周波数スペクトルの値はスペクトル符号を復号しても得られない。復号部22は、上述した符号化部14の例の場合であれば、スペクトル符号を復号して、サンプル番号が小さいほうからN-K個の復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1による復号調整済周波数スペクトル系列を得る。
【0141】
なお、符号化部14でビットを割り当てなかったサンプル番号の復号調整済周波数スペクトルの値を0としてもよい。すなわち、復号部22は、上述した符号化部14の例の場合であれば、スペクトル符号を復号して、サンプル番号が大きいほうからK個の復号調整済周波数スペクトル^Y
N-K,…,^Y
N-1それぞれの値を0として、復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1を得てもよい。
【0142】
このようにして、復号部22は、所定の時間区間のフレーム単位のスペクトル符号であって、高域側の一部にビットが割り当てられていないスペクトル符号、を復号して周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)を得る。
【0143】
ただし、後述する通り摩擦音調整解除部23は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、後述する帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列(復号調整済周波数スペクトル系列に基づくスペクトル系列)のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数サンプル列の全部または一部と、帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数サンプル列の全部または一部と、を入れ替えたものを復号音信号の周波数スペクトル系列として得て、前記以外の場合には、帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列をそのまま復号音信号の周波数スペクトル系列として得る。すなわち、復号部22は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、スペクトル符号には低域側の一部にビットが割り当てられていないとして、スペクトル符号を復号して周波数領域のスペクトル系列(復号調整済周波数スペクトル系列)を得て、前記以外の場合には、スペクトル符号には高域側の一部にビットが割り当てられていないとして、スペクトル符号を復号して周波数領域のスペクトル系列(復号調整済周波数スペクトル系列)を得ている。
【0144】
第一実施形態の復号装置の復号部22は、得た復号調整済周波数スペクトル系列を摩擦音調整解除部23に出力したが、第二実施形態の復号装置の復号部22は、得た復号調整済周波数スペクトル系列を帯域拡張部25へ出力する。
【0145】
[帯域拡張部25]
帯域拡張部25には、多重分離部21が出力した帯域拡張利得符号と復号部22が出力した復号調整済周波数スペクトル系列が少なくとも入力される。帯域拡張部25は、フレーム単位で、入力された帯域拡張利得符号と復号調整済周波数スペクトル系列に少なくとも基づいて下記のように復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を得て、得た復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を摩擦音調整解除部23へ出力する(ステップS25)。
【0146】
帯域拡張部25に帯域拡張利得符号と復号調整済周波数スペクトル系列のみが入力される構成とする場合には、例えば下記の例1のように、帯域拡張部2
5は、フレーム単位で、入力された帯域拡張利得符号と復号調整済周波数スペクトル系列に基づいて復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を得て、得た復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を摩擦音調整解除部23へ出力する。
【0147】
また、帯域拡張部25には、帯域拡張利得符号と復号調整済周波数スペクトル系列に加えて多重分離部21が出力した摩擦音判定情報も入力される構成としてもよい。この構成とする場合には、例えば下記の例2のように、帯域拡張部25は、フレーム単位で、入力された帯域拡張利得符号と復号調整済周波数スペクトル系列と摩擦音判定情報に基づいて復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を得て、得た復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1を摩擦音調整解除部23へ出力する。
【0148】
帯域拡張部25の記憶部251には、符号化装置の帯域拡張利得符号化部16の記憶部161に格納されているのと同じ、利得ベクトルの候補である利得候補ベクトルとその利得候補ベクトルを特定可能な符号とが組にされて複数組予め格納されていて、各利得候補ベクトルは複数サンプル分の利得候補値により構成されている。帯域拡張部25はスペクトル符号を復号して得られた復号調整済周波数スペクトル(符号化装置の符号化部14でビットを割り当てた調整済周波数スペクトルに対応する復号調整済周波数スペクトル)の全部または一部である複製元の各サンプル値と帯域拡張利得符号に対応する符号で特定される利得候補ベクトルに含まれる各帯域拡張利得とをそれぞれ乗算した値を、符号化装置の符号化部14でビットが割り当てなかった調整済周波数スペクトルに対応する復号拡張周波数スペクトルとしたものと、スペクトル符号を復号して得られた復号調整済周波数スペクトルをそのまま復号拡張周波数スペクトルとしたものと、による系列を復号拡張周波数スペクトル系列として得る。
【0149】
以下、符号化部14がビットを割り当てた調整済周波数スペクトルは調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が小さいほうからN-K個の調整済周波数スペクトルY
0,…,Y
N-K-1であり、符号化部14がビットを割り当てなかった調整済周波数スペクトルは調整済周波数スペクトル系列Y
0,…,Y
N-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトルY
N-K,…,Y
N-1である場合の例を説明する。すなわち、スペクトル符号の復号により復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-K-1が得られた場合の例を説明する。
【0150】
〔帯域拡張部25の例1〕
この例では、記憶部251には利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されていて、各利得候補ベクトルがKサンプル分の利得候補値により構成されているとする。以下、J個の利得候補ベクトルそれぞれをG
j (j=0,…,J-1)とし、利得候補ベクトルG
j(j=0,…,J-1)それぞれに対応する符号をC
Gj(j=0,…,J-1)とし、それぞれの利得候補ベクトルG
jはKサンプル分すなわちK個の利得候補値g
j,k(k=0,…,K-1)により構成されているとして説明する。
【0151】
帯域拡張部25は、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1をそのまま復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が小さいほうからN-K個の復号拡張周波数スペクトル~Y
0,…,~Y
N-K-1とする。帯域拡張部25は、また、記憶部251に記憶された利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)のうち、対応する符号C
Gjが入力された帯域拡張利得符号と等しい利得候補ベクトルに含まれるK個の利得候補値を帯域拡張利得g
0,…,g
K-1として得る。帯域拡張部25は、さらに、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の復号調整済周波数スペクトル^Y
N-2K,…,^Y
N-K-1と帯域拡張利得g
0,…,g
K-1とをそれぞれ乗算した値^Y
N-2K g
0,…,^Y
N-K-1 g
K-1を、復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が大きいほうからK個の復号拡張周波数スペクトル~Y
N-K,…,~Y
N-1とする。
【0152】
〔帯域拡張部25の例2〕
この例では、記憶部251には例1と同様に利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されているが、例1とは異なり、利得候補ベクトルとして摩擦音用利得候補ベクトルと非摩擦音用利得候補ベクトルの2種類が格納されているとする。すなわち、記憶部251には摩擦音用利得候補ベクトルと非摩擦音用利得候補ベクトルと符号の組がJ組格納されていて、各摩擦音用利得候補ベクトルと各非摩擦音用利得候補ベクトルがKサンプル分の利得候補値により構成されているとする。以下、J個の摩擦音用利得候補ベクトルそれぞれをG1
j (j=0,…,J-1)とし、J個の非摩擦音用利得候補ベクトルそれぞれをG2
j (j=0,…,J-1)とし、摩擦音用利得候補ベクトルG1
j (j=0,…,J-1)のそれぞれに対応しかつ非摩擦音用利得候補ベクトルG2
j (j=0,…,J-1)のそれぞれに対応する符号をC
Gj (j=0,…,J-1)として説明する。また、それぞれの摩擦音用利得候補ベクトルG1
jはKサンプル分すなわちK個の利得候補値g1
j,k (k=0,…,K-1)により構成されていて、それぞれの非摩擦音用利得候補ベクトルG2
jはKサンプル分すなわちK個の利得候補値g2
j,k(k=0,…,K-1)により構成されているとして説明する。
【0153】
帯域拡張部25は、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1をそのまま復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が小さいほうからN-K個の復号拡張周波数スペクトル~Y
0,…,~Y
N-K-1とする。帯域拡張部25は、また、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には記憶部251に記憶された摩擦音用利得候補ベクトルG1
j (j=0,…,J-1)を利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)として、入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合には記憶部251に記憶された非摩擦音用利得候補ベクトルG2
j (j=0,…,J-1)を利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)として、利得候補ベクトルG
j (j=0,…,J-1)のうち、対応する符号C
Gjが入力された帯域拡張利得符号と等しい利得候補ベクトルに含まれるK個の利得候補値を帯域拡張利得g
0,…,g
K-1として得る。帯域拡張部25は、さらに、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の復号調整済周波数スペクトル^Y
N-2K,…,^Y
N-K-1と帯域拡張利得g
0,…,g
K-1とをそれぞれ乗算した値^Y
N-2K g
0,…,^Y
N-K-1 g
K-1を、復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が大きいほうからK個の復号拡張周波数スペクトル~Y
N-K,…,~Y
N-1とする。
【0154】
〔帯域拡張部25の例1と例2の変形例1〕
上述した例1と例2では、帯域拡張利得の乗算の対象とする復号調整済周波数スペクトルは、スペクトル符号を復号して得られた復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1のうちのサンプル番号が大きいほうからK個の調整済周波数スペクトル^Y
N-2K,…,^Y
N-K-1とした。しかし、帯域拡張利得の乗算の対象とする復号調整済周波数スペクトルは、スペクトル符号を復号して得られた復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
N-K-1のうちの予め定めたK個のサンプル番号に対応するK個の復号調整済周波数スペクトルであればよい。
【0155】
〔帯域拡張部25の例1と例2の変形例2〕
上述した例1と例2では、kの値が小さい順の復号調整済周波数スペクトル^Y
N-2K+kと、kの値が小さい順の帯域拡張利得g
kと、を乗算して、kの値が小さい順の復号拡張周波数スペクトル~Y
N-K+kを得ているが、すなわち、kの値が小さい順での対応付けをしているが、予め定めた対応付けであればどのような対応付けでもよい。
【0156】
〔帯域拡張部25の具体例〕
N=32, K=12の場合の帯域拡張部25の具体例を説明する。この具体例は帯域拡張部25の例2の変形例2に対応する。
図13と
図14は、N=32, K=12の場合の帯域拡張部25と摩擦音調整解除部23の処理の例である。
【0157】
図13は摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないことを示す場合の例である。帯域拡張部25は、スペクトル符号の復号により得られた復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
19をそのまま復号拡張周波数スペクトル~Y
0,…,~Y
19とする。帯域拡張部25は、また、対応する符号C
Gjが入力された帯域拡張利得符号と等しい利得候補ベクトルに含まれる12個の利得候補値を帯域拡張利得g
0,…,g
11として得る。帯域拡張部25は、さらに、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
19のうちのサンプル番号が大きいほうから12個の復号調整済周波数スペクトル^Y
8,…,^Y
19と帯域拡張利得g
0,…,g
11とをそれぞれ乗算した値^Y
8 g
0,…,^Y
19 g
11を、復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が大きいほうからK個の復号拡張周波数スペクトル~Y
20,…,~Y
31とする。
【0158】
図14は摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合の例である。帯域拡張部25は、スペクトル符号の復号により得られた復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
19をそのまま復号拡張周波数スペクトル~Y
0,…,~Y
19とする。帯域拡張部25は、また、対応する符号C
Gjが入力された帯域拡張利得符号と等しい利得候補ベクトルに含まれる12個の利得候補値を帯域拡張利得g
0,…,g
11として得る。帯域拡張部25は、さらに、復号調整済周波数スペクトル^Y
0,…,^Y
19のうちのサンプル番号が大きいほうから12個の復号調整済周波数スペクトル^Y
8,…,^Y
19と帯域拡張利得g
0,…,g
11とをそれぞれ乗算した値^Y
8 g
0,…,^Y
19 g
11を、復号拡張周波数スペクトル系列のサンプル番号が大きいほうからK個の復号拡張周波数スペクトル~Y
24,…,~Y
31,~Y
20,…,~Y
23とする。すなわち、帯域拡張部25は、8番目から19番目の復号調整済周波数スペクトル^Y
8,…,^Y
19を複製元とし、これらの複製元の復号調整済周波数スペクトル^Y
8,…,^Y
19の値と帯域拡張利得g
0,…,g
11とを乗算した値^Y
8 g
0,…,^Y
19 g
11を、復号調整済周波数スペクトルの16番目から19番目までのサンプル番号順に対応する復号拡張周波数スペクトル~Y
20=^Y
16 g
8,…,~Y
23=^Y
19 g
11の後が、復号調整済周波数スペクトルの8番目から15番目までのサンプル番号順に対応する復号拡張周波数スペクトル~Y
24=^Y
8 g
0,…,~Y
31=^Y
15 g
7となる順番で並べたものが、20番目から31番目の復号拡張周波数スペクトル~Y
20,…,~Y
31となるようにする処理を行う。
【0159】
この帯域拡張部25の動作は、摩擦音調整解除部23の動作に対応させたものである。
図8の例では、摩擦音調整解除部23は、20番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトル~Y
20,…,~Y
31のうちのサンプル番号が小さい側の20番目から23番目までの復号拡張周波数スペクトル~Y
20,…,~Y
23を、サンプル番号が28番目から31番目までの復号周波数スペクトル^X
28,…,^X
31とし、20番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトル~Y
20,…,~Y
31のうちのサンプル番号が大きい側の24番目から31番目までの復号拡張周波数スペクトル~Y
24,…,~Y
31を、サンプル番号が2番目から9番目までの復号周波数スペクトル^X
2,…,^X
8とする。帯域拡張部25は、この摩擦音調整解除部23の動作により得られる復号周波数スペクトルの周波数の高低を考慮して、
図14の動作をする。すなわち、復号装置の帯域拡張部25は、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合でも摩擦音的な音でないことを示す場合でも、復号周波数スペクトルにおける周波数の高低に整合した処理を行うようにされている。
【0160】
このようにして、帯域拡張部25は、復号部22がスペクトル符号を復号して得た周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)よりも高域側に、復号部22がスペクトル符号を復号して得た周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)に含まれるK個(Kは2以上の整数)のサンプルに基づくサンプルを配置することにより、復号拡張周波数スペクトル系列を得る。
【0161】
より具体的には、例えば、帯域拡張部25は、帯域拡張利得符号を復号してK個の帯域拡張利得による組を得て、復号部22がスペクトル符号を復号して得た周波数領域のサンプル列(復号調整済周波数スペクトル系列)よりも高域側に、復号部22がスペクトル符号を復号して得た周波数領域のサンプル列に含まれるK個のサンプルとK個の帯域拡張利得とを乗算して得たK個のサンプルを配置することにより、復号拡張周波数スペクトル系列を得る。
【0162】
また、帯域拡張部25には、複数個の符号と、符号のそれぞれに対応する摩擦音用利得候補ベクトルと、符号のそれぞれに対応する非摩擦音用利得候補ベクトルと、が記憶されているとし、摩擦音用利得候補ベクトルと非摩擦音用利得候補ベクトルのそれぞれはK個の利得候補値を含むとして、帯域拡張部25が帯域拡張利得符号を復号してK個の帯域拡張利得による組を得る処理は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、複数個の摩擦音用利得候補ベクトルのうち対応する符号が帯域拡張利得符号と同じである摩擦音用利得候補ベクトルに含まれるK個の利得候補値をK個の帯域拡張利得の組とし、前記以外の場合には、複数個の非摩擦音用利得候補ベクトルのうち対応する符号が帯域拡張利得符号と同じである非摩擦音用利得候補ベクトルに含まれるK個の利得候補値をK個の帯域拡張利得の組とする処理であってもよい。
【0163】
[摩擦音調整解除部23]
摩擦音調整解除部23には、多重分離部21が出力した摩擦音判定情報と帯域拡張部25が出力した復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1が入力される。摩擦音調整解除部23は、フレーム単位で入力された摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、入力された復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1に対して調整解除処理を行って復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を得て、得られた復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を時間領域変換部24へ出力し、摩擦音判定情報が摩擦音的な音でないと示す場合には、復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1をそのまま復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1として時間領域変換部24へ出力する(ステップS23)。
【0164】
摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理は、第一実施形態の復号装置の摩擦音調整解除部23が復号調整済周波数スペクトル系列^Y
0,…,^Y
N-1に対して行う処理と同様の処理を復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1に対して行う処理である。すなわち、1より大きくNより小さい整数値をMとすると、例えば、復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1のうちのサンプル番号がM未満のサンプルである~Y
0,…,~Y
M-1によるサンプル群を低域側復号拡張周波数スペクトル系列とし、復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1のうちのサンプル番号がM以上のサンプルである~Y
M,…,~Y
N-1によるサンプル群を高域側復号拡張周波数スペクトル系列とすると、摩擦音判定情報が摩擦音的な音であることを示す場合に摩擦音調整解除部23が行う調整解除処理は、低域側復号拡張周波数スペクトル系列~Y
0,…,~Y
N-1の全部または一部のサンプルと、これと同数の、高域側復号拡張周波数スペクトル系列~Y
M,…,~Y
N-1の全部または一部のサンプルと、を入れ替えたものを復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1として得る処理である。
【0165】
言い換えれば、摩擦音調整解除部23は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも低域側にある低域側周波数サンプル列の全部または一部と、これと同数の、帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列のうちの所定の周波数よりも高域側にある高域側周波数サンプル列の全部または一部と、を入れ替えたものを復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)として得て、前記以外の場合には、帯域拡張部25が得た復号拡張周波数スペクトル系列をそのまま復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)として得てもよい。
【0166】
なお、
図11に一点鎖線で示すように、帯域拡張部25と摩擦音調整解除部23を摩擦音対応帯域拡張部27とすると、摩擦音対応帯域拡張部27は、入力された摩擦音的な音であるか否かを表す情報が摩擦音的な音であることを示す場合には、復号部22が得た周波数領域のスペクトル系列(復号調整済周波数スペクトル系列)について低域側への帯域拡張を行って復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)を得、前記以外の場合には、復号部22が得た周波数領域のスペクトル系列について高域側への帯域拡張を行って復号音信号の周波数スペクトル系列(復号周波数スペクトル系列)を得ていると言える。
【0167】
[時間領域変換部24]
時間領域変換部24は、フレーム毎に、復号周波数スペクトル系列^X
0,…,^X
N-1を、符号化装置の周波数領域変換部11が行った周波数領域への変換方法に対応する時間領域への変換方法を用いて時間領域の信号に変換してフレーム単位の音信号(復号音信号)を得て出力する(ステップS24)。
【0168】
≪作用効果≫
第二実施形態の符号化装置と復号装置によれば、第一実施形態の符号化装置と復号装置と同様に、摩擦音調整処理と摩擦音調整解除処理を行うことで、摩擦音的な音の時間区間では高域に優先してビットが割り当て、そうでない時間区間では低域に優先してビットを割り当てられるようにすることで、摩擦音などを含む音信号であっても聴感的な劣化を少なくすることができる。
【0169】
第二実施形態の符号化装置と復号装置によれば、更に、帯域拡張利得を用いて、摩擦音的な音の時間区間では高域の周波数スペクトルの複製により低域の周波数スペクトルを再現して帯域を拡張し、そうでない時間区間では低域の周波数スペクトルの複製により高域の周波数スペクトルを再現して帯域を拡張することで、摩擦音などを含む音信号であっても第一実施形態よりも更に聴感的な劣化を少なくすることができる。その際、周波数スペクトルの振幅に基づく帯域拡張利得を用いて周波数順を維持した複製をすることで、元の周波数スペクトルの概形をなるべく再現し、聴感品質を高めている。
【0170】
また、第二実施形態の符号化装置の摩擦音判定部12として第一実施形態の変形例の摩擦音判定部12を用いれば、第二実施形態の符号化装置の摩擦音判定部12として第一実施形態の摩擦音判定部12を用いる構成よりも、摩擦音判定部12の判定結果が頻繁に切り替わることを抑制することができ、復号音の波形の不連続の発生頻度を抑制することができ、この不連続が知覚されることによる聴覚品質の劣化を抑えることができる。
【0171】
[プログラム及び記録媒体]
符号化装置、復号装置及び摩擦音判定装置のそれぞれを、コンピュータによって実現してもよい。この場合、符号化装置、復号装置及び摩擦音判定装置のそれぞれが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、符号化装置、復号装置及び摩擦音判定装置のそれぞれがコンピュータ上で実現される。
【0172】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0173】
また、各部の処理は、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより構成することにしてもよいし、これらの処理の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【0174】
その他、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。