特許第6962492号(P6962492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962492繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6962492
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20211025BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08J5/06
   B29B15/08
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-113093(P2021-113093)
(22)【出願日】2021年7月7日
(62)【分割の表示】特願2020-81361(P2020-81361)の分割
【原出願日】2019年3月29日
【審査請求日】2021年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-72556(P2018-72556)
(32)【優先日】2018年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】金羽木 惇二
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 由貴廣
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 禎雄
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/006989(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/221655(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/221656(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/104154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08−15/14、
C08J5/04−5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される繊維束を、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が1つだけ設けられた欠円形状の回転刃に押し付けることによって、長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を前記繊維束に形成する第一ステップと、
前記第一ステップの後に前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する第二ステップと、
を含む、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
搬送される繊維束を、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が設けられた欠円形状の回転刃に押し付けることによって、長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を前記繊維束に形成する第一ステップと、
前記第一ステップの後に前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する第二ステップと、
を含む、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記回転刃における前記切欠き部以外の部分の外周の長さをx(mm)、前記回転刃に前記切欠き部が設けられていないと仮定したときの外周の長さ(mm)から前記xを差し引いた長さをy(mm)としたとき、x>2yを満たす、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記回転刃には円環状のスペーサー部材が隣接しており、前記スペーサー部材の半径は前記回転刃の前記切欠き部以外の部分の半径よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記スペーサー部材の半径をd1(mm)、前記回転刃の前記切欠き部における最短径をd2(mm)としたとき、−0.5≦d1−d2≦3を満たす、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一ステップでは前記繊維束が前記スペーサー部材の部分で曲がるように抱き角が付けられる、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記抱き角が100°以上である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第一ステップ及び前記第二ステップが、下記(1)及び(2)の条件を満たす、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
0<b/L<1 ・・・(1)
1<a/L≦1000 ・・・(2)
(ただし、式中、aは前記分繊部分の長さ(mm)であり、bは前記未分繊部分の長さ(mm)であり、Lは前記第二ステップにおける裁断の間隔(mm)である。)
【請求項9】
前記繊維束が炭素繊維束である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
搬送される繊維束を、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が1つだけ設けられた欠円形状の回転刃に押し付けることによって、長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を前記繊維束に形成することを含む、繊維束の分繊方法。
【請求項11】
搬送される繊維束を、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が設けられた欠円形状の回転刃に押し付けることによって、長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を前記繊維束に形成することを含む、繊維束の分繊方法。
【請求項12】
前記回転刃における前記切欠き部以外の部分の外周の長さをx(mm)、前記回転刃に前記切欠き部が設けられていないと仮定したときの外周の長さ(mm)から前記xを差し引いた長さをy(mm)としたとき、x>2yを満たす、請求項10または11に記載の分繊方法。
【請求項13】
前記回転刃には円環状のスペーサー部材が隣接しており、前記スペーサー部材の半径は前記回転刃の前記切欠き部以外の部分の半径よりも小さい、請求項10〜12のいずれか一項に記載の分繊方法。
【請求項14】
前記スペーサー部材の半径をd1(mm)、前記回転刃の前記切欠き部における最短径をd2(mm)としたとき、−0.5≦d1−d2≦3を満たす、請求項13に記載の分繊方法。
【請求項15】
前記繊維束が前記スペーサー部材の部分で曲がるように抱き角が付けられる、請求項13または14に記載の分繊方法。
【請求項16】
前記抱き角が100°以上である、請求項15に記載の分繊方法。
【請求項17】
前記繊維束が炭素繊維束である、請求項10〜16のいずれか一項に記載の分繊方法。
【請求項18】
長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を繊維束に形成するための、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が1つだけ設けられた欠円形状の回転刃。
【請求項19】
長手方向に交互に並んだ分繊部分および未分繊部分を繊維束に形成するための、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部が設けられた欠円形状の回転刃。
【請求項20】
前記回転刃における前記切欠き部以外の部分の外周の長さをx(mm)、前記回転刃に前記切欠き部が設けられていないと仮定したときの外周の長さ(mm)から前記xを差し引いた長さをy(mm)としたとき、x>2yを満たす、請求項18または19に記載の回転刃。
【請求項21】
円環状のスペーサー部材が隣接しており、前記スペーサー部材の半径は当該回転刃の前記切欠き部以外の部分の半径よりも小さい、請求項18〜20のいずれか一項に記載の回転刃。
【請求項22】
前記スペーサー部材の半径をd1(mm)、当該回転刃の前記切欠き部における最短径をd2(mm)としたとき、−0.5≦d1−d2≦3を満たす、請求項21に記載の回転刃。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれか一項に記載の回転刃を備える分繊機。
【請求項24】
搬送方向に搬送される繊維束を前記回転刃に押し付けるために、前記搬送方向に関して前記回転刃の両側に配置された、一対のガイド部材を有する、請求項23に記載の分繊機。
【請求項25】
請求項23または24に記載の分繊機と、
前記分繊機で処理された繊維束を、前記繊維束の長手方向に間隔を空けて裁断する裁断部と、
を備える繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置に関する。
本願は、2018年4月4日に、日本出願された特願2018−072556号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
成形品の機械特性に優れるとともに、三次元形状等の複雑形状の成形に適した成形材料として、SMC(Sheet Molding Compound)やスタンパブルシートが知られている。SMCは、例えばガラス繊維やカーボン繊維等の強化繊維を裁断した繊維束のフィラメント間に、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料である。スタンパブルシートは、例えば前記の裁断した繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させた、シート状の繊維強化樹脂成形材料である。
【0003】
SMCを用いた成形では、金型によりSMCを加熱しながら圧縮成形する。スタンパブルシートの成形では、赤外線ヒーター等でスタンパブルシートを熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、所定の温度の金型にて冷却加圧する。いずれの成形においても、繊維束が裁断されていることで成形時の流動性が高まり、成形性が向上する。
【0004】
SMC等の繊維強化樹脂成形材料の製造方法としては、連続する繊維束を裁断機で所定の長さに裁断して散布し、形成された繊維束群に樹脂を含浸する方法が知られている。前記製造方法においては、製造コストを下げるため、比較的安価なラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束が用いられる。この場合、繊維束を幅方向に拡幅(「開繊」という。)し、開繊された繊維束を複数の繊維束に分割(「分繊」という。)した後、分繊された繊維束を裁断機で裁断する。
【0005】
繊維束を分繊する方法としては、例えば、繊維束に回転する回転刃を突き刺す方法が開示されている(特許文献1)。しかし、繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行がある場合に、繊維束の一部に切断が生じ、切断された繊維束がロール等に巻き付くおそれがある。
【0006】
回転刃を用いる分繊方法として、繊維束に分繊部分と未分繊部分とが交互に並ぶように繊維束を分繊する方法も開示されている(特許文献2)。しかし、この方法でも、分繊部分を長くするほど、繊維束に撚れや切断が生じやすく、裁断機への繊維束の供給が不安定となりやすい。一方、未分繊部分を長くするほど、裁断後の繊維束が十分に分割されなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−219780号公報
【特許文献2】国際公開第2017/006989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、繊維束の未分繊部分を短くしつつ、分繊部分が長くなるように分繊し、安定して繊維強化樹脂成形材料を製造できる、繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]裁断された繊維束に樹脂が含浸された繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、
繊維束を分繊機で長手方向に間隔を空けて分繊する分繊ステップと、
前記分繊ステップの後に前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップと、
を含み、
前記分繊機が、解放部を有する回転刃と、前記回転刃に隣接するスペーサー部材とを備える、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[2]前記解放部が、前記回転刃に形成された切欠き部によって形成されている、[1]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[3]前記切欠き部の切欠き角度をα(°)としたとき、100≦α≦200を満たす、[2]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[4]前記回転刃における前記切欠き部以外の部分の外周の長さをx(mm)、前記回転刃における前記切欠き部がない状態の全周の長さ(mm)から前記xを差し引いた長さをy(mm)としたとき、x>2yを満たす、[2]又[3]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[5]前記スペーサー部材の一部が側面視で前記回転刃の周縁に達して前記解放部が形成されている、[1]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[6]前記回転刃の径をd5(mm)、前記スペーサー部材の最大の径をd4(mm)としたとき、0≦d4−d5≦1を満たす、[5]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[7]前記スペーサー部材の回転の周速をV(m/min)、前記繊維束の搬送速度をW(m/min)としたとき、0.02≦V/W≦0.5を満たす、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[8]前記分繊ステップ及び前記裁断ステップが、下記(1)及び(2)の条件を満たす、[1]〜[7]のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
0<b/L<1 ・・・(1)
1<a/L≦1000 ・・・(2)
(ただし、式中、aは分繊した前記繊維束の長手方向の分繊部分の長さ(mm)であり、bは分繊した前記繊維束の長手方向の未分繊部分の長さ(mm)であり、Lは前記繊維束の長手方向の裁断の間隔(mm)である。)
[9]回転刃、及び前記回転刃に隣接するスペーサー部材を備え、前記回転刃を繊維束に突き刺して前記繊維束を間隔を空けて分繊する分繊機と、
前記分繊機で処理された前記繊維束を、前記繊維束の長手方向に間隔を空けて裁断する裁断部と、を備え、
前記回転刃には解放部が形成されている、繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[10]前記解放部が、前記回転刃に形成された切欠き部によって形成されている、[9]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[11]前記切欠き部の切欠き角度をα(°)としたとき、100≦α≦200を満たす、[10]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[12]前記回転刃における前記切欠き部以外の部分の外周の長さをx(mm)、前記回転刃における前記切欠き部がない状態の全周の長さ(mm)から前記xを差し引いた長さをy(mm)としたとき、x>2yを満たす、[10]又は[11]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[13]前記スペーサー部材の一部が側面視で前記回転刃の周縁に達して前記解放部が形成されている、[9]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[14]前記回転刃の径をd5(mm)、前記スペーサー部材の最大の径をd4(mm)としたとき、0≦d4−d5≦1を満たす、[13]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[15]前記分繊機及び前記裁断部が、下記(1)及び(2)の条件を満たすように構成されている、[9]〜[14]のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
0<b/L<1 ・・・(1)
1<a/L≦1000 ・・・(2)
(ただし、式中、aは分繊した前記繊維束の長手方向の分繊部分の長さ(mm)であり、bは分繊した前記繊維束の長手方向の未分繊部分の長さ(mm)であり、Lは前記繊維束の長手方向の裁断の間隔(mm)である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維束の未分繊部分を短くしつつ、分繊部分が長くなるように分繊し、安定して繊維強化樹脂成形材料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の繊維強化樹脂成形材料の製造装置の一例を示した側面図である。
図2A図1の製造装置の分繊機を拡大して示した側面図である。
図2B図2Aの分繊機の回転刃を示した側面図である。
図3図1の製造装置の分繊機を繊維束の搬送方向から見た正面図である。
図4】分繊機において繊維束の抱き角をつけない態様を示した側面図である。
図5】分繊後の繊維束を示した模式図である。
図6A】第2実施形態の繊維強化樹脂成形材料の製造装置における分繊機を拡大して示した側面図である。
図6B図6Aの分繊機の回転刃及びスペーサー部材を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の繊維強化樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」とも記す。)の製造方法は、裁断された繊維束に樹脂が含浸された成形材料を製造する方法である。本発明の製造方法によれば、裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の成形材料が得られる。得られた成形材料は、SMCやスタンパブルシート等として好適に使用できる。
【0013】
繊維束とは、複数の強化繊維を束ねたものである。本発明に用いる強化繊維としては、炭素繊維が好ましい。なお、強化繊維としては、ガラス繊維等の炭素繊維以外の強化繊維を用いてもよい。
【0014】
繊維束に含浸する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでもよい。樹脂としては、熱硬化性樹脂のみを用いてもよく、熱可塑性樹脂のみを用いてもよく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方を用いてもよい。
本発明の製造方法で製造される成形材料がSMCとして用いられる場合、熱硬化性樹脂が好ましい。成形材料がスタンパブルシートとして用いられる場合、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0015】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂を例示できる。使用する熱硬化性樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂を例示できる。使用する熱可塑性樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0016】
本発明の製造方法は、繊維束を分繊機で長手方向に間隔を空けて分繊する分繊ステップと、分繊ステップの後に繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップとを含む。本発明の製造方法では、分繊ステップ及び裁断ステップが、下記(1)及び(2)の条件を満たすのが好ましい。
0<b/L<1 ・・・(1)
1<a/L≦1000 ・・・(2)
(ただし、式中、aは分繊した繊維束の長手方向の分繊部分の長さ(mm)であり、bは分繊した繊維束の長手方向の未分繊部分の長さ(mm)であり、Lは繊維束の長手方向の裁断の間隔(mm)である。)
【0017】
b/Lは、0超1未満であるのが好ましく、0.03以上0.8以下がより好ましく、0.1以上0.6以下がさらに好ましい。b/Lが前記範囲の下限値以上であれば、繊維束が切れて回転刃やロール等に巻付く工程トラブルを抑制しやすい。b/Lが前記範囲の上限値以下であれば、裁断後の繊維束に含まれる未分繊部分の割合を小さくできるため、得られた成形材料を成形した成形品の物性が向上する傾向にある。
【0018】
bは、0mm超50mm以下が好ましく、1mm以上35mm以下がより好ましく、5mm以上25mm以下がさらに好ましい。bが前記範囲の下限値以上であれば、繊維束が切れて回転刃やロール等に巻付く工程トラブルを抑制しやすい。bが前記範囲の上限値以下であれば、裁断後の繊維束に含まれる未分繊部分の割合を小さくできるため、得られた成形材料を成形した成形品の物性が向上する傾向にある。
【0019】
a/Lは、1超1000以下であるのが好ましく、1超200以下がより好ましく、3超100以下がさらに好ましく、5以上50以下が特に好ましい。a/Lが前記範囲の下限値以上であれば、裁断後の繊維束に含まれる未分繊部分の割合を小さくできるため、得られた成形材料を成形した成形品の物性が向上する傾向にある。a/Lが前記範囲の上限値以下であれば、繊維束が切れたり、弛むことで回転刃やロール等に巻付く工程トラブルを抑制しやすい。
【0020】
aは、1mm以上5000mm以下が好ましく、10mm以上3000mm以下がより好ましく、100mm以上1000mm以下がさらに好ましい。aが前記範囲の下限値以上であれば、分繊効果が得られやすく、得られた成形材料を成形した成形品の物性が向上する傾向にある。aが前記範囲の上限値以下であれば、繊維束が切れたり、弛むことで回転刃やロール等に巻付く工程トラブルを抑制しやすい。
【0021】
本発明の成形材料の製造方法においては、解放部を有する回転刃と、前記回転刃に隣接するスペーサー部材とを備える分繊機が用いられる。
本発明における解放部とは、回転刃による分繊状態が一時的に解消される当該回転刃の領域のことである。すなわち、解放部とは、回転刃を回転させながら繊維束に突き刺して連続的に分繊する際に、回転刃において繊維束に突き刺さらないようになっている部分的な領域のことである。繊維束がこの解放部を通過することにより、繊維束に上述の未分繊部分を形成させることができる。
本発明の成形材料の製造方法において、この解放部を有する回転刃の構成は特に限定されるものではないが、この回転刃を有する分繊機として、以下の2種類を例示することができる。それぞれの態様について、一例を示して説明する。
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態では、解放部を有する回転刃として、切欠き部が形成された回転刃を含む分繊機を備える製造装置を使用する。第1実施形態で使用する製造装置の一例について、図1〜3に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、各図に示すXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0023】
(製造装置)
本実施形態の繊維強化樹脂成形材料の製造装置100(以下、単に「製造装置100」と記す。)は、複数の炭素繊維が束ねられた繊維束と、不飽和ポリエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂とを含み、裁断した繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状のSMCを製造する装置である。なお、繊維束としては、炭素繊維の他にも、ガラス繊維等の強化繊維を用いてもよい。樹脂としては、熱硬化性樹脂の他にも、熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0024】
製造装置100は、図1に示すように、繊維束供給部10と、第1シート供給部11と、第1塗工部12と、裁断部13と、第2シート供給部14と、第2塗工部15と、含浸部16とを備えている。
【0025】
繊維束供給部10は、連続する繊維束f1を所定の方向(X軸方向。以下、搬送方向という。)に搬送させながら、幅方向(Y軸方向)に開繊する開繊部50と、開繊された繊維束f2を分繊する分繊機52とを備える。
開繊部50は、繊維束f1の幅方向(Y軸方向)に延び、搬送方向(X軸方向)に間隔を空けて配置された複数の開繊バー17を備えている。
【0026】
分繊機52は、図2A図2B及び図3に示すように、複数の回転刃18aと、回転刃18aと回転刃18aの間に配置される円環状の複数のスペーサー部材18bと、複数のゴデットローラ19とをそれぞれ備えている。複数の回転刃18a及び複数のスペーサー部材18bは、回転中心が一致または略一致するように回転軸18cが挿通された状態で、かつ開繊された繊維束f2の幅方向(Y軸方向)に交互に隣接して配置されている。スペーサー部材18bは、回転刃18aとともに回転するようになっている。
【0027】
複数の回転刃18aは、回転軸18cに回転自在に設置されている。
回転刃18aは、円盤の一部を直線的に切り欠く切欠き部18dが形成された欠円形状になっている。このように、回転刃18aには切欠き部18dが形成され、切欠き部18dが解放部になっている。この例では、回転軸18cの軸回りにおいて、各回転刃18aにおける切欠き部18dの位置がずれている。なお、回転軸18cの軸回りにおいて、各回転刃18aにおける切欠き部18dの位置が一致していてもよい。
【0028】
図2Bに示すように、回転刃18aにおける切欠き部18d以外の部分18eの外周の長さをx(mm)、回転刃18aにおける切欠き部18dがない状態の全周の長さ(mm)からxを差し引いた長さをy(mm)とする。このとき、回転刃18aの切欠き部18dは、x>2yを満たすように形成されている。このような回転刃18aの使用により、前記した条件(1)及び(2)を満たすことができる。
【0029】
x/yは、2超であるのが好ましく、2.5以上50以下がより好ましく、3以上25以下がさらに好ましい。x/yが前記範囲内において大きいほど、分繊部分をより長くでき、得られる成形材料を成形した成形品の物性が向上する傾向にある。x/yが前記範囲内において小さいほど、繊維束f2に撚れや切断が生じにくく、成形材料の製造がより安定になる。
【0030】
この例では、円環状のスペーサー部材18の径d1(mm)が、回転刃18aの切欠き部18dにおける最短径d2(mm)と一致している。なお、本発明において、「スペーサー部材の径」とは、スペーサー部材の回転軸から周縁までの長さを意味する。「回転刃の径」とは、回転刃の回転軸から周縁までの長さを意味する。
【0031】
d1−d2は、−0.5mm以上0.3mm以下が好ましく、−0.2mm以上0.2mm以下がより好ましい。d1−d2が前記範囲の下限値以上であれば、回転刃18aの切欠き部18dのタイミングで隣り合うスペーサー部材18bの間に繊維束f2が食い込むことを抑制しやすく、裁断後の繊維束f4の幅がより安定になる傾向にある。d1−d2が前記範囲の上限値以下であれば、繊維束f2の分繊がより安定になる傾向にある。
【0032】
回転刃18aの切欠き部18d以外の部分18eの径d3(mm)は、スペーサー部材18の径d1よりも大きい。
d3−d1は、0.5mm以上40mm以下が好ましく、1mm以上20mm以下がより好ましく、1.5mm以上10mm以下がさらに好ましい。d3−d1が前記範囲内であれば、回転刃18aが繊維束f2に突き刺さりやすく、繊維束f2の分繊がより安定になる傾向にある。
【0033】
回転刃18aの切欠き部18dは、繊維束の幅方向(Y軸方向)から見た側面視において、円盤の一部が直線的に切り欠かれているため、切欠き角度α(図2B)が180°になっている。切欠き角度αは、回転刃の側面視における切欠きの角度である。回転刃に形成される切欠き部の切欠き角度αは、180°には限定されない。
【0034】
本発明では、回転刃に形成される切欠き部の切欠き角度α(°)は、100≦α≦200を満たすのが好ましい。切欠き角度αが180°以外の切欠き部としては、中心角(切欠き角度α)が180°未満又は180°超の扇状の切欠き部が挙げられる。扇状の切欠き部の中心角が丸みを帯びていてもよい。この場合の切欠き角度αは、中心角が丸みを帯びていないときの中心角と同じ角度、すなわち扇の中心部に向かう2つの直線がなす角度とする。
回転刃における切欠き部は、切欠き角度αの値にかかわらず、回転刃に挿通される回転軸まで達しないように形成される。
【0035】
切欠き角度αは、100°以上200°以下であるのが好ましく、120°以上180°以下がより好ましい。切欠き角度αが前記範囲の下限値以上であれば、分繊後の繊維束f3に十分な未分繊部分が形成されやすく、分繊が安定になる傾向にある。切欠き角度αが前記範囲の上限値以下であれば、裁断後の繊維束f4が十分に分割されやすい傾向にある。
【0036】
第1実施形態において使用する回転刃の切欠き部の数は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、1つには限定されず、2つ以上であってもよい。
【0037】
複数の回転刃18aの搬送方向の両側には、一対のガイド部材40が複数の回転刃18a及びスペーサー部材18bを挟むように配置されている。一対のガイド部材40は、搬送されている繊維束f2を上側から複数の回転刃18a及びスペーサー部材18bに向かって押し付けるように配置されている。これにより、分繊機52を繊維束f2の幅方向から見た側面視において、分繊される繊維束f2がスペーサー部材18bの部分で曲がるように抱き角がつけられている。このように、スペーサー部材18bの部分で繊維束f2に抱き角をつけることで、回転刃18aが繊維束f2に突き刺さっている時間が長くなるため、a及びa/Lを大きくし、b及びb/Lを小さくする方向に調節することが容易になる。
【0038】
なお、図4に示すように、スペーサー部材18bの部分で繊維束f2に抱き角をつけずに、回転刃18aにおける切欠き部18dの平面状の外周面が直線的に搬送されている繊維束f2に沿うタイミングが存在するようにしてもよい。これにより、a及びa/Lを小さくし、bを大きくする方向に調節することが容易になる。
【0039】
スペーサー部材18bの部分での繊維束の抱き角βは、100°以上180°以下が好ましく、125°以上180°以下がより好ましく、150°以上180°以下がさらに好ましい。抱き角βが前記範囲の下限値以上であれば、分繊後の繊維束f3に毛羽立ちが発生しにくく、ロール等に巻き付きにくくなる。
なお、抱き角βは、搬送される繊維束の幅方向から見た側面視において、スペーサー部材18bの上流側の繊維束の長手方向と下流側の繊維束の長手方向とがなす角度である。
【0040】
回転刃18aの回転方向は、繊維束f2の搬送方向に対して、順方向であってもよく、逆方向であってもよいが、順方向が好ましい。
回転刃18aを回転させる機構としては、駆動モータを用いる機構等を例示できる。
【0041】
このような繊維束供給部10では、まず、図1におけるX軸正方向(水平方向右側)に向けてボビンB1からラージトウである繊維束f1が引き出され、開繊部50で幅方向に開繊される。具体的には、繊維束f1が開繊部50の複数の開繊バー17を通過する間に、加熱、擦過、揺動等が各開繊バー17を介して繊維束f1に加えられて、繊維束f1が幅方向に拡幅されて開繊される。
【0042】
開繊された繊維束f2は分繊機52へと送られ、複数の回転刃18aにより分繊される。分繊機52では、例えば繊維束f2の搬送方向に対して順方向に回転している各回転刃18aが繊維束f2に突き刺さる。各回転刃18aの切欠き部18dが繊維束f2の位置に回ってきたときには回転刃18aが一時的に突き刺さらず、繊維束f2が解放され、回転刃18aによる繊維束f2の分繊状態が一時的に解消される。すなわち、繊維束f2に回転刃18aが間欠的に突き刺さる。そのため、分繊された繊維束f3には分繊部分と未分繊部分が形成される。分繊された繊維束f3は、複数のゴデットローラ19で案内されながら、裁断部13へと供給される。
【0043】
第1シート供給部11は、第1搬送部20を備えている。第1搬送部20は、第1原反ロールR1から連続する第1シートS1を巻き出して第1塗工部12に向けて供給し、さらに含浸部16に向けて搬送する。
【0044】
第1搬送部20は、一対のプーリ21a、21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を有する。コンベア23は、一対のプーリ21a、21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させながら、この無端ベルト22の面上において、第1シートS1を図1におけるX軸正方向に向けて搬送する。
【0045】
第1塗工部12は、図1におけるX軸正方向に向けて搬送される第1シートS1の上方に配置され、樹脂を含むペーストPを供給するコータ24を有する。第1塗工部12では、第1シートS1がコータ24を通過することで、第1シートS1の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
【0046】
ペーストPには、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の他に、炭酸カルシウム等の充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤等を適宜混合したものを配合できる。
【0047】
裁断部13は、分繊機52で処理された繊維束f3を、繊維束f3の長手方向に間隔を空けて裁断する。
裁断部13は、第1塗工部12よりも搬送方向の下流側に設けられており、繊維束供給部10から供給される繊維束f3を裁断機13Aで裁断してペーストP上に散布する。裁断機13Aは、コンベア23により搬送される第1シートS1の上方に配置されており、ガイドローラ25と、ピンチローラ26と、カッターローラ27とを有する。
【0048】
ガイドローラ25は、回転しながら繊維束供給部10から供給された繊維束f3を下方に向けて案内する。ピンチローラ26は、ガイドローラ25との間で繊維束f3を挟み込みながら、ガイドローラ25とは逆向きに回転することによって、ガイドローラ25と協働しながら、分繊された繊維束f3を引き込む。カッターローラ27は、回転しながら繊維束f3を所定の長さとなるように裁断する。裁断された繊維束f4は、ガイドローラ25とカッターローラ27との間から落下し、ペーストPが塗工された第1シートS1上に散布される。裁断された繊維束f4が散布された第1シートS1は、第1搬送部20により含浸部16に搬送される。
【0049】
製造装置100では、分繊機52及び裁断部13が、前記した条件(1)及び(2)を満たすように構成されることが好ましい。すなわち、分繊機52における回転刃18aのx/yの値、切欠き角度α、切欠き部18dの数、繊維束の抱き角β、回転刃18aの回転速度、裁断部13における繊維束f3の裁断の長手方向の間隔等が、条件(1)及び(2)を満たすように調節されることが好ましい。
【0050】
第2シート供給部14は、第2搬送部28を備えている。第2搬送部28は、第2原反ロールR2から連続する第2シートS2を巻き出して第2塗工部15に向けて供給し、さらに含浸部16に向けて搬送する。
【0051】
第2搬送部28は、コンベア23により搬送される第1シートS1の上方に配置されており、複数のガイドローラ29を有する。第2搬送部28は、第2シート供給部14から供給された第2シートS2を図1におけるX軸負方向(水平方向左側)に向けて搬送した後、回転する複数のガイドローラ29によって第2のシートS2が搬送される方向を図1におけるZ軸負方向(垂直方向下側)、さらにX軸正方向に変更する。
【0052】
第2塗工部15は、X軸負方向に向けて搬送される第2シートS2の上方に配置されている、ペーストPを供給するコータ30を有する。第2塗工部15では、第2のシートS2がコータ30を通過することで、第2シートS2の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
第2塗工部15によりペーストPが塗工された第2シートS2は、第2搬送部28により含浸部16に搬送される。
【0053】
含浸部16は、裁断部13よりも搬送方向の下流側に位置しており、貼合機構31と、加圧機構32とを有する。貼合機構31は、コンベア23における下流側のプーリ21bの上方に位置し、複数の貼合ローラ33を有する。
【0054】
各貼合ローラ33は、ペーストPが塗工された第2シートS2の背面(ペーストPの無い面)に接触した状態で配置されている。また、各貼合ローラ33は、第1シートS1に対して第2シートS2が徐々に接近するように配置されている。
これにより、第1シートS1の上に第2シートS2が重ね合わされる。第1シートS1と第2シートS2とは、その間に繊維束f4及びペーストPを挟み込みながら、互いに貼合された状態で加圧機構32側へと搬送される。以下、互いに貼合された第1シートS1及び第2シートS2を貼合シートS3と総称する。
【0055】
加圧機構32は、第1搬送部20(コンベア23)の下流側に設けられている。加圧機構32は、一対のプーリ34a、34bの間に無端ベルト35aを掛け合わせた下側コンベア36Aと、一対のプーリ34c、34dの間に無端ベルト35bを掛け合わせた上側コンベア36Bとを有する。
【0056】
下側コンベア36Aと上側コンベア36Bとは、互いの無端ベルト35a、35bを突き合わせた状態で、互いに対向して配置されている。加圧機構32は、下側コンベア36Aの一対のプーリ34a、34bを同一方向に回転させることによって無端ベルト35aを周回させる。その結果、上側コンベア36Bの一対のプーリ34c、34dが同一方向かつ一対のプーリ34a、34bと逆方向に回転し、無端ベルト35bが無端ベルト35aと同じ速さで逆回りに周回される。これにより、無端ベルト35a、35bの間に挟み込まれた貼合シートS3が、図1におけるX軸正方向に向けて搬送される。
【0057】
加圧機構32は、複数の下側ローラ37aと、複数の上側ローラ37bとを有する。各下側ローラ37aは、無端ベルト35aのうち突合せ部分(無端ベルト35bとの間に貼合シートS3を挟む領域)の背面に接触した状態で配置されている。同様に、複数の上側ローラ37bは、無端ベルト35bのうち突合せ部分(無端ベルト35aとの間に貼合シートS3を挟む領域)の背面に接触した状態で配置されている。複数の下側ローラ37aと複数の上側ローラ37bとは、貼合シートS3の搬送方向において交互に並ぶように配置されている。
【0058】
加圧機構32は、無端ベルト35a、35bの間を貼合シートS3が通過する間に、第1シートS1と第2シートS2との間に挟み込まれたペーストP及び繊維束f4を複数の下側ローラ37a及び複数の上側ローラ37bにより加圧する。このとき、ペーストPは、繊維束f4を挟んだ両側から繊維束f4のフィラメント内に含浸される。これにより、繊維束f4のフィラメント内に熱硬化性樹脂が含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0059】
(製造方法)
第1実施形態の製造装置100を用いる成形材料の製造方法は、以下のステップを有する。
塗工ステップ:所定の方向に搬送される第1シートS1の上にペーストPを塗工する。
開繊ステップ:開繊部50により繊維束f1を幅方向に開繊する。
分繊ステップ:開繊された繊維束f2を分繊機52の回転刃18aにより長手方向に間隔を空けて分繊する。
裁断ステップ:分繊された繊維束f3を裁断部13で長手方向に間隔を空けて裁断する。
散布ステップ:裁断された繊維束f4を、塗工ステップで塗工されたペーストPの上に散布する。
含浸ステップ:繊維束f4が散布された第1シートS1の上に、ペーストPが塗工された第2シートS2を重ね合わせ、第1シートS1と第2シートS2との間に挟み込まれたペーストP及び繊維束f4を加圧して、繊維束f4のフィラメント間に樹脂を含浸させる。
【0060】
塗工ステップでは、第1原反ロールR1から長尺の第1シートS1を巻き出し、第1搬送部20により搬送しつつ、第1塗工部12により、第1シートS1上に所望の樹脂を含んだペーストPを所定の厚みで塗工する。
【0061】
開繊ステップでは、ボビンB1から繊維束f1を引き出し、開繊部50において複数の開繊バー17の間を通過させ、繊維束f1を幅方向に開繊して拡幅する。分繊ステップでは、開繊された繊維束f2を搬送しつつ、複数の回転刃18aを回転させながら間欠的に突き刺し、長手方向に間隔を空けて分繊する。裁断ステップでは、裁断部13において、分繊された繊維束f3を裁断機13Aにより裁断する。次いで、散布ステップにおいて、裁断された繊維束f4を第1シートS1に塗工されたペーストPの上に散布する。
【0062】
分繊された繊維束f3における分繊位置について、図5を参照して説明する。図5では、開繊された繊維束f3のトウtを細線で示し、開繊された繊維束f3の分繊処理列dを太線で示し、裁断機13Aで切断される切断線を破線で示す。
分繊後の繊維束f3では、回転刃18aにより分割された分繊部分Aと、回転刃18aの切欠き部18dのタイミングとなって分割されなかった未分繊部分Bとが搬送方向において交互に並んでいる。これにより、ミシン目状の分繊処理列dが形成される。
【0063】
繊維束f3内のフィラメントに斜行、蛇行や交絡が発生していても、分繊された複数の繊維束f3の間で一部が繋がっているため、幅方向に開繊した状態のまま、分繊された複数の繊維束f3を安定した状態で裁断機13A側へと搬送できる。また、繊維束f3内のフィラメントに斜行や蛇行等が生じていても、繊維束f3を損傷させない。したがって、分繊した繊維束f3の一部が切断され、切断された繊維束f3が裁断部13のローラ等に巻き付くことが抑制される。そのため、比較的安価なラージトウを用いて低コストで成形材料を製造できる。
【0064】
分繊ステップでは、スペーサー部材18bの回転の周速をV(m/min)、繊維束f2の搬送速度をW(m/min)としたとき、0.02≦V/W≦0.5を満たすのが好ましい。
V/Wは、0.02以上0.5以下であるのが好ましく、0.03以上0.4以下がより好ましく、0.04以上0.3以下がさらに好ましい。V/Wが前記範囲の下限値以上であれば、繊維束が切れたり、弛んだりすることで回転刃やロール等に巻付く工程トラブルを抑制しやすい。V/Wが前記範囲の上限値以下であれば、裁断後の繊維束に含まれる未分繊部分の割合を小さくできるため、得られた成形材料を成形した成形品の物性が向上する。
【0065】
本実施形態の分繊ステップ及び裁断ステップは、さらに前記した条件(1)及び(2)を満たすように行うことが好ましい。具体的には、分繊機52における回転刃18aのx/yの値、切欠き角度α、繊維束の抱き角β、回転刃18aの回転速度、裁断部13における繊維束f3の裁断の長手方向の間隔等を条件(1)及び(2)を満たすように調節して、分繊ステップ及び裁断ステップを行うことが好ましい。
【0066】
これにより、繊維束に撚りや切断が生じることを抑制しつつ、分繊後の繊維束の未分繊部分を短くし、分繊部分を長くできる。そのため、繊維束が十分に分割されて、物性に優れたSMCを安定して製造できる。
【0067】
含浸ステップでは、第2シート供給部14により、第2原反ロールR2から長尺の第2シートS2を巻き出し、第2塗工部15により第2シートS2の上にペーストPを所定の厚みで塗工する。次いで、含浸部16において、貼合機構31により第1シートS1に第2シートS2を重ね合わせる。次いで、加圧機構32により、第1シートS1と第2シートS2とで挟み込まれたペーストPと繊維束を加圧し、繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させる。これにより、繊維束f4のフィラメント内に樹脂が好適に含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0068】
SMCの原反Rは、ロール状に巻き取った後、次工程へと送る。そして、原反Rは、所定の長さで切断して出荷する。なお、第1シートS1及び第2シートS2は、SMCに対して成形加工を行う前に剥離される。
【0069】
以上説明したように、第1実施形態では、解放部として切欠き部が形成された特定の回転刃を用いて、分繊ステップ及び裁断ステップを行う。これにより、繊維束に撚りや切断が生じることを抑制しつつ、分繊後の繊維束の未分繊部分を短くし、分繊部分を長くできるため、物性に優れたSMCを安定して製造できる。
【0070】
[第2実施形態]
第2実施形態では、複数の回転刃と、隣り合う回転刃の間に設けられたスペーサー部材とを備え、スペーサー部材の一部の径が回転刃の径と同等以上である分繊機を備える製造装置を使用する。この回転刃の径と同等以上であるスペーサー部材の一部と隣接する回転刃の領域が、本発明における解放部に相当する。第2実施形態で使用する製造装置の一例について、図6A及び図6Bに基づいて説明する。
【0071】
(製造装置)
本実施形態の繊維強化樹脂成形材料の製造装置は、分繊機52の代わりに分繊機52Aを備える以外は、第1実施形態の製造装置100と同じである。
【0072】
分繊機52Aは、図6A及び図6Bに示すように、複数の回転刃18fと、回転刃18fと回転刃18fの間に配置される円環状の複数のスペーサー部材18gと、複数のゴデットローラ19とをそれぞれ備えている。複数の回転刃18f及び複数のスペーサー部材18gは、回転中心が一致または略一致するように回転軸18cが挿通された状態で、かつ開繊された繊維束f2の幅方向(Y軸方向)に交互に隣接して配置されている。スペーサー部材18gは、回転刃18fとともに回転するようになっている。
【0073】
複数の回転刃18fは、円盤状で、中心部分に回転軸18cを挿通できるようになっている。各回転刃18fは、回転軸18cに回転自在に設置されている。
【0074】
スペーサー部材18gは、図6Bに示すように、円盤の一部が円盤状部分の径d6(mm)に対して径方向の外側に突出し、スペーサー部材18gの一部が側面視で回転刃18fの周縁に達する形状になっている。これにより、スペーサー部材18gの一部である突出部分18hの最大の径d4(mm)が回転刃18fの径d5(mm)と同等以上になっている。各スペーサー部材18gは、回転刃18fとともに、回転軸18cに回転自在に設置されている。
回転軸18cの軸回りにおいて、各スペーサー部材18gにおける突出部分18hの位置がずれても、位置が一致していてもよい。
【0075】
分繊機52Aでは、スペーサー部材18gにおける突出部分18hが繊維束f2に接していないときは、回転刃18fが繊維束f2に突き刺さる。一方、スペーサー部材18gにおけるd4がd5と同等になる突出部分18hが繊維束f2に接しているときは、繊維束f2がスペーサー部材18gによって持ち上がり、繊維束f2が回転刃18fの解放部を通過し、回転刃18fが繊維束f2から引き抜かれる。これにより、分繊後の繊維束f3には未分繊部分と分繊部分が形成される。
【0076】
第2実施形態の分繊機においては、0≦d4−d5≦1を満たすのが好ましい。
d4−d5は、0mm以上1mm以下であるのが好ましく、0mm以上0.5mm以下がより好ましい。d4−d5が前記範囲の下限値以上であれば、分繊後の繊維束f3に十分な分繊部分を形成できる傾向にある。d4−d5が前記範囲の上限値以下であれば、分繊後の繊維束の未分繊部分を短くしつつ、分繊部分を長くすることが容易になる。
【0077】
スペーサー部材18gの突出部分18hは、角がある形状であってもよく、丸みを帯びた形状であってもよい。スペーサー部材18gの突出部分18hが丸みを帯びた形状の場合、突出部分18hの縁形状の曲率半径は、0.1mm以上で、回転刃18fの半径未満であることが好ましい。
【0078】
スペーサー部材における径が回転刃の径と同等以上の突出部分の数は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、1つには限定されず、2つ以上であってもよい。
【0079】
分繊機52Aにおいても、分繊機52と同様に、繊維束に抱き角をつけてもよく、つけなくてもよい。繊維束の抱き角の好ましい範囲は、第1実施形態における繊維束の抱き角βの好ましい範囲と同様である。
【0080】
回転刃18f及びスペーサー部材18gの回転方向は、繊維束f2の搬送方向に対して、順方向であってもよく、逆方向であってもよいが、順方向が好ましい。
回転刃18f及びスペーサー部材18gを回転させる機構としては、駆動モータを用いる機構等を例示できる。
【0081】
分繊機52の代わりに分繊機52Aを備える繊維束供給部10では、第1実施形態と同様に開繊された繊維束f2が、分繊機52Aにおいて回転刃18fが突き刺されて分繊される。このとき、スペーサー部材18gの突出部分18hが繊維束f2に接したタイミングで、繊維束f2が持ち上げられ、繊維束f2が回転刃18fの解放部を通過し、回転刃18fが一時的に引き抜かれる。すなわち、繊維束f2に回転刃18fが間欠的に突き刺さる。そのため、分繊された繊維束f3には分繊部分と未分繊部分が形成される。分繊された繊維束f3は、第1実施形態と同様に、複数のゴデットローラ19で案内されながら、裁断部13へと供給される。
【0082】
第2実施形態の製造装置では、分繊機52A及び裁断部13が、前記した条件(1)及び(2)を満たすように構成されることが好ましい。すなわち、分繊機52Aにおけるスペーサー部材18gの最大の径d4、突出部分18hの数、繊維束の抱き角、スペーサー部材18gの回転速度、裁断部13における繊維束f3の裁断の長手方向の間隔等が、条件(1)及び(2)を満たすように調節されることが好ましい。
【0083】
(製造方法)
第2実施形態の製造装置を用いる成形材料の製造方法は、以下のステップを有する。
塗工ステップ:所定の方向に搬送される第1シートS1の上にペーストPを塗工する。
開繊ステップ:開繊部50により繊維束f1を幅方向に開繊する。
分繊ステップ:開繊された繊維束f2を分繊機52Aの回転刃18fにより長手方向に間隔を空けて分繊する。
裁断ステップ:分繊された繊維束f3を裁断部13で長手方向に間隔を空けて裁断する。
散布ステップ:裁断された繊維束f4を、塗工ステップで塗工されたペーストPの上に散布する。
含浸ステップ:繊維束f4が散布された第1シートS1の上に、ペーストPが塗工された第2シートS2を重ね合わせ、第1シートS1と第2シートS2との間に挟み込まれたペーストP及び繊維束f4を加圧して、繊維束f4のフィラメント間に樹脂を含浸させる。
【0084】
分繊ステップ以外のステップは、第1実施形態と同様に行える。
開繊ステップにおいてボビンB1から繊維束f1を引き出して開繊部50で開繊し、開繊された繊維束f2を分繊ステップにおいて長手方向に間隔を空けて分繊する。そして、裁断部13において、分繊された繊維束f3を裁断機13Aにより裁断し、裁断された繊維束f4を第1シートS1に塗工されたペーストPの上に散布する。
【0085】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、分繊ステップ及び裁断ステップは、0.02≦V/W≦0.5を満たすのが好ましく、かつ前記した条件(1)及び(2)を満たすように行うのが好ましい。具体的には、分繊機52Aにおけるスペーサー部材18gの最大の径d4、突出部分18hの数、繊維束の抱き角、スペーサー部材18gの回転速度、裁断部13における繊維束f3の裁断の長手方向の間隔等を条件(1)及び(2)を満たすように調節して、分繊ステップ及び裁断ステップを行うことが好ましい。これにより、繊維束に撚りや切断が生じることを抑制しつつ、分繊後の繊維束の未分繊部分を短くし、分繊部分を長くできる。そのため、繊維束が十分に分割されて、物性に優れたSMCを安定して製造できる。
【0086】
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、繊維束に撚りや切断が生じることを抑制しつつ、分繊後の繊維束の未分繊部分を短くし、分繊部分を長くできるため、物性に優れたSMCを安定して製造できる。
【0087】
本発明においては、分繊において刃を繊維束に突き刺しやすい点では、第2実施形態よりも第1実施形態が好ましい。また、分繊機の刃の寿命を長くしやすい点では、第1実施形態よりも第2実施形態が好ましい。
【0088】
なお、本発明は、第1実施形態及び第2実施形態の説明で例示した態様には限定されない。例えば、本発明で用いる製造装置は、開繊部を備えないものであってもよい。すなわち、別の装置で開繊が行われた繊維束を本発明に適用してもよい。
本発明に使用する回転刃の形状は、円盤状には限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更できる。
【0089】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(実施例1)
上記図1図2A及び図2Bに例示した製造装置100を用いてSMCを製造した。
分繊機52には、4枚の回転刃18aを備えるものを用いた。それぞれの回転刃18aには解放部を形成する切欠き部18dを1つ設けたものを用い、それぞれの切欠き部18dの高さが全て一致するように取り付けた。スペーサー部材18bの径d1を14mm、回転刃18aの切欠き部18dにおける最短径d2を14mm、回転刃18aの切欠き部18d以外の部分18eの径d3を17mmとした。回転刃18aに形成される切欠き部18dの切欠き角度αは、180°とした。x/yは4であった。回転刃18aは繊維束に接触する部分の幅を0.3mm、スペーサー部材18bは繊維束に接触する部分の幅を2.5mmとした。スペーサー部材18bの部分での繊維束の抱き角βを155°とした。
繊維束としては、炭素繊維束(三菱ケミカル社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。ペーストPに用いる樹脂として、ビニルエステル樹脂を用いた。
【0090】
開繊バー17では繊維束f1を幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとし、スペーサー部材の回転の周速Vを3m/minとした。V/Wは0.08であった。4枚の回転刃18aによる分繊により、開繊後の繊維束f2に、長さ700mmの分繊部分aと長さ5mmの未分繊部分bとなるように、繊維束f2の幅方向において3mm間隔で4列の分繊処理列dを形成した。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは28、b/Lは0.2であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。SMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0091】
(実施例2)
回転刃18aのx/yを5.1とした以外は、実施例1と同様の製造装置を用いてSMCを製造した。
開繊バー17では繊維束f1を幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとし、スペーサー部材の回転の周速Vを4m/minとした。V/Wは0.1であった。4枚の回転刃18aによる分繊により、分繊部分aの長さを、実施例1の3倍の2100mmとし、未分繊部分bの長さを2mmとした。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは83、b/Lは0.08であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。製造されたSMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0092】
(実施例3)
開繊バー17を使用せず、回転刃18aの切欠き部の切欠き角度αを150°とし、x/yを6.7とした以外は、実施例1と同様の製造装置を用いてSMCを製造した。
分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとし、スペーサー部材の回転の周速Vを1m/minとした。V/Wは0.03であった。4枚の回転刃18aによる分繊により、分繊部分aの長さを、実施例1の3倍の2100mmとし、未分繊部分bの長さを5mmとした。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは83、b/Lは0.2であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。製造されたSMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0093】
(実施例4)
開繊バー17を使用せず、回転刃18aの切欠き部の切欠き角度αを180°とし、x/yを7.6とした以外は、実施例1と同様の製造装置を用いてSMCを製造した。
分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとし、スペーサー部材の回転の周速Vを1m/minとした。V/Wは0.03であった。4枚の回転刃18aによる分繊により、分繊部分aの長さを700mmとし、未分繊部分bの長さを5mmとした。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは28、b/Lは0.2であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。製造されたSMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0094】
(実施例5)
分繊部として、4枚の回転刃18fと5枚のスペーサー部材18gを備える以外は、実施例1と同様の製造装置を用いてSMCを製造した。回転刃18fの径d5を17mm、スペーサー部材18gの一部(突出部分18h)の最大の径d4を17mmとし、d4−d5を0mmとした。スペーサー部材18gの一部(突出部分18h)の高さが全て一致するように取り付けた。
回転刃18fは繊維束に接触する部分の幅を0.3mm、スペーサー部材18gは繊維束に接触する部分の幅を2.5mmとした。スペーサー部材18gの部分での繊維束の抱き角βを155°とした。
繊維束としては、炭素繊維束(三菱ケミカル社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。ペーストPに用いる樹脂として、ビニルエステル樹脂を用いた。
【0095】
開繊バー17では繊維束f1を幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとした。スペーサー部材18gの回転の周速Vを3m/minとした。V/Wは0.08であった。4枚の回転刃18fによる分繊により、分繊部分aの長さを700mmとし、未分繊部分bの長さを2mmとした。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは28、b/Lは0.08であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。製造されたSMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0096】
(実施例6)
開繊バー17を使用せず、分繊部として、実施例5と同様の製造装置を用いてSMCを製造した。
分繊時の繊維束f2の搬送速度Wは40m/minとした。スペーサー部材18gの回転の周速Vを1m/minとした。V/Wは0.03であった。4枚の回転刃18fによる分繊により、分繊部分aの長さを、実施例5の3倍の2100mmとし、未分繊部分bの長さを1mmとした。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束f3の長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。a/Lは83、b/Lは0.2であった。裁断した繊維束f4は、ロール等に巻付くことなく第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。製造されたSMCの品質は、繊維束の少ない炭素繊維束(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0097】
(比較例1)
分繊機における回転刃を回転させずに固定刃とし、分繊機を回転させずに常に繊維束に突き刺した状態になるように保持した以外は、実施例1と同様にしてSMCを製造しようとした。その結果、分繊後の繊維束に一部切断が生じ、ロール等に巻付いてしまいSMCを製造することができなかった。
【0098】
(比較例2)
回転刃18aの切欠き部18dの切欠き角度αを90°とすることで回転刃の解放部がない状態とし、x/yを3とし、スペーサー部材18bの回転の周速Vを1m/minとし、V/Wを0.03とした以外は、実施例1と同様にしてSMCを製造しようとした。その結果、分繊後の繊維束に一部切断が生じ、ロール等に巻付いてしまいSMCを製造することができなかった。
【0099】
(比較例3)
分繊機における回転刃を回転させずに固定刃とし、分繊機を回転させずに常に繊維束に突き刺した状態になるように保持した以外は、実施例5と同様にしてSMCを製造しようとした。その結果、分繊後の繊維束に一部切断が生じ、ロール等に巻付いてしまいSMCを製造することができなかった。
【0100】
(比較例4)
回転刃の径d5を17mm、スペーサー部材の一部の最大の径d4を16mmとし、d4−d5を−1mmとすることで回転刃の解放部がない状態とした以外は、実施例5と同様にしてSMCを製造しようとした。その結果、分繊後の繊維束に一部切断が生じ、ロール等に巻付いてしまいSMCを製造することができなかった。
【符号の説明】
【0101】
10…繊維束供給部、13…裁断部、13A…裁断機、18a,18f…回転刃、18b,18g…スペーサー部材、18c…回転軸、18d…切欠き部、18e…切欠き部以外の部分、18h…突出部分、100…繊維強化樹脂成形材料の製造装置、f1〜f4…繊維束、P…ペースト、S1…第1シート、S2…第2シート、S3…貼合シート、R…原反。
【要約】
【課題】繊維束の未分繊部分を短くしつつ、分繊部分が長くなるように分繊し、安定して繊維強化樹脂成形材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】裁断された繊維束に樹脂が含浸された繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、繊維束を分繊機で長手方向に間隔を空けて分繊する分繊ステップと、前記分繊ステップの後に前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップと、を含み、前記分繊機が、解放部を有する回転刃と、前記回転刃に隣接するスペーサー部材とを備える、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B