(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、下記一般式(1)で表されるインダン骨格を有することを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【0023】
(上記式(1)中、Xは(メタ)アクリロイル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、jは1〜3の整数を示し、k、lはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。nは平均繰り返し単位数であり、0.5〜20の数値を示す、mは0〜2の整数を示す。なお、Ra、X及び炭素原子から芳香環への直線は、当該芳香環上のいずれの箇所に結合していてもよいことを示す。)
【0024】
前記インダン骨格を有する硬化性樹脂が、低極性であるインダン骨格を有することにより、前記硬化性樹脂の構造中に極性官能基の割合が少なくなり、前記硬化性樹脂を使用して製造される硬化物は、誘電特性に優れるため、好ましい。また、前記硬化性樹脂はインダン骨格を有することで、可撓性、及び、柔軟性に優れ、耐脆性の改善も見込まれ、好ましい。
【0025】
上記式(1)中、Xは、架橋基となる(メタ)アクリロイル基であり、つまり、アクリロイル基、又は、メタクリロイル基であり、特に、メタクリロイル基が好ましい。前記硬化性樹脂中に、(メタ)アクリロイル基を有することで、その他の架橋基(例えば、ビニルベンジルエーテル基(スチリル基)やジヒドロキシベンゼン基など)と比べて、低い誘電正接を有する硬化物が得られ、好ましい態様となる。
【0026】
なお、前記(メタ)アクリロイル基を有することで、低誘電特性を発現する硬化物が得られる詳細な理由は明らかではないが、従来用いられている硬化性樹脂に含まれるビニルベンジルエーテル基(スチリル基)などの場合、極性基であるエーテル基を有し、また、ジヒドロキシベンゼン基を有する場合、極性基である複数のヒドロキシル基を有することになり、本発明の硬化性樹脂のように、(メタ)アクリロイル基に基づくエステル基の方が、分子運動性が低いことが寄与していることが推測される(エーテル基やヒドロキシル基などの極性の高い極性基を有すると、誘電率や誘電正接が高くなる傾向にある)。
【0027】
また、架橋基がメタクリロイル基の場合、構造中にメチル基を含むため、立体障害が大きくなり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、好ましい。また、架橋基が複数の場合、架橋密度が上がり、耐熱性が向上する。
【0028】
上記式(1)中、Raは、それぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記炭素原子数1〜12のアルキル基等であることで、後述する、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、アントラセン環のいずれかの近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記Raを有することで、立体障害となり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、好ましい。
【0029】
上記式(1)中、Rbは、それぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記炭素原子数1〜12のアルキル基等であることで、後述する、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、アントラセン環のいずれかの近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。
【0030】
上記式(1)中、jは1〜3の整数を示し、好ましくは、1〜2の整数である。前記範囲内にあることにより、可撓性が確保され、好ましい態様となる。なお、架橋基となる上記Xが同一のベンゼン環等に複数導入されることで、複数の架橋基同士が、分子運動性を阻害し(抑制し合い)、置換基である上記Raが存在しない場合であっても、低い誘電正接を示す硬化物が得られ、好ましい。
【0031】
上記式(1)中、k及びlは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは、0〜2の整数である。前記範囲内にあることにより、反応性が優れ、好ましい態様となる。
【0032】
上記式(1)中、mは0〜2の整数を示し、つまり、mが0の場合はベンゼン環であり、mが1の場合はナフタレン環であり、mが2の場合はアントラセン環であり、好ましくは、mが0のベンゼン環である。前記範囲内にあることにより、溶剤溶解性が優れ、好ましい態様となる。
【0033】
上記式(1)中、nは平均繰り返し単位数であり、0.5〜20の数値を示し、好ましくは、0.5〜5であり、より好ましくは、0.95〜2.5である。前記範囲内でインダン骨格を有することで、溶剤溶解性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが0.5未満であると、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の構造中の高融点物質の含有割合が高くなり、溶剤溶解性に劣り、更に、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が低くなるため、得られる硬化物の耐脆性が低下し、更に、可撓性や柔軟性も低下する恐れがあり好ましくない。また、前記nが20を越えると、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、更に得られる硬化物の耐熱性が劣ることが懸念され、更に、高分子量成分が多くなりすぎ、硬化物を成形する際に、流動性が低下し、ハンドリング性に劣ることが懸念され、好ましくない。また、前記nの値としては、硬化物の高熱変形温度、高ガラス転移温度等の観点から、0.95〜2.5が特に好ましい。
【0034】
前記硬化性樹脂がインダン骨格を有することにより、前記硬化性樹脂の構造中に耐熱性と誘電特性のバランスに優れる脂環式構造が導入され、前記硬化性樹脂を使用して製造される硬化物は、耐熱性と誘電特性(特に低誘電正接)とのバランスに優れ、また、分子構造中に、架橋基となる(メタ)アクリロイル基を有することで、更なる低誘電特性を発現でき、好ましい。
【0035】
また、本発明の硬化性樹脂は、下記一般式(2)で表されるインダン骨格を有することが好ましい。
【0037】
(上記式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、かつ、R
1及びR
2の両方が同時に水素原子であることはなく、nは平均繰り返し単位数であり、0.5〜20の数値を示す。)
【0038】
上記式(2)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、かつ両方が同時に水素原子であることはなく、好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記炭素原子数1〜12のアルキル基等であることで、ベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記R
1及びR
2を有することで、立体障害が大きくなり(但し、水素原子ではない場合)、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、好ましい。
【0039】
上記式(2)中、nは平均繰り返し単位数であり、0.5〜20の数値を示し、好ましくは、0.5〜5であり、より好ましくは、0.95〜2.5である。前記範囲内でインダン骨格を有することで、溶剤溶解性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが0.5未満であれば、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の構造中の高融点物質の含有割合が高くなり、溶剤溶解性に劣り、更に、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が低くなるため、得られる硬化物の耐脆性が低下し、更に、可撓性や柔軟性も低下する恐れがあり好ましくない。また、前記nが20を越えると、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、更に得られる硬化物の耐熱性が劣ることが懸念され、更に、高分子量成分が多くなりすぎ、硬化物を成形する際に、流動性が低下し、ハンドリング性に劣ることが懸念され、好ましくない。また、前記nの値としては、硬化物の高熱変形温度、高ガラス転移温度等の観点から、0.95〜2.5が特に好ましい。
【0040】
前記硬化性樹脂がインダン骨格を有することにより、前記硬化性樹脂の構造中に耐熱性と誘電特性のバランスに優れる脂環式構造が導入され、前記硬化性樹脂を使用して製造される硬化物は、耐熱性と誘電特性(特に低誘電正接)とのバランスに優れ、また、分子構造の末端に、メタクリロイル基を有することで、アクリロイル基の場合に比べて、立体障害が大きくなり、更なる低誘電特性を発現でき、好ましい。
【0041】
<中間体フェノール化合物の製造方法>
前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の製造方法として、まずは、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の原料(前駆体)である中間体フェノール化合物の製造方法を以下に説明する。
【0042】
下記一般式(3)は、Rcはそれぞれ独立に下記一般式(4)及び(5)よりなる群から選択される一価の官能基を示しており、2つのRcの少なくとも一方のRcのオルト位が水素原子で、Rb及びlは、上記と同様のものを示す化合物である。
【0046】
下記一般式(6−1)は、上記一般式(1)中のmが0の場合、つまり、インダン骨格を有する硬化性樹脂が、ベンゼン環の場合であり、iは1又は2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。また、下記一般式(6−2)は、上記一般式(1)中のmが1の場合、つまり、ナフタレン環の場合であり、iは1又は2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。また、下記一般式(6−3)は、上記一般式(1)中のmが2の場合、つまり、アントラセン環の場合であり、iは1又は2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。インダン骨格を有する硬化性樹脂が、水酸基(フェノール性水酸基)を有することで、構造中の末端にフェノール性水酸基を導入することが可能となり、好ましい態様となる。なお、Ra及びkは、それぞれ上記と同様のものを示すフェノールまたはその誘導体であり、上記一般式(3)の化合物と、下記一般式(6−1)〜(6−3)のいずれかの化合物を、酸触媒存在下に反応させることにより、下記一般式(7)で示される中間体フェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(7)中のRa、Rb、k、l、i及びnは上記と同様のものを示す。また、下記一般式(7)は上記一般式(1)中のmが0の場合、つまり、ベンゼン環の場合を例示している。
【0052】
前記中間体フェノール化合物の特徴であるインダン骨格(上記一般式(8)参照)において、平均繰り返し単位数nは、低い融点(低軟化点)で、かつ溶融粘度が低く、ハンドリング性に優れたものとするため、平均繰り返し単位数nは、0.5〜20の数値を示し、好ましくは、0.5〜5であり、より好ましくは、0.95〜2.5である。前記中間体フェノール化合物の構造中に、インダン骨格を有することで、溶剤溶解性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが0.5未満であれば、前記中間体フェノール化合物の構造中の高融点物質の含有割合が高くなり、溶剤溶解性に劣り、更に、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が低くなるため、前記中間体フェノール化合物を原料(前駆体)とするインダン骨格を有する硬化性樹脂を用いて得られる硬化物の耐脆性が低下し、更に、可撓性や柔軟性も低下する恐れがあり好ましくない。また、前記nが20を越えると、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、得られる硬化物の耐熱性が劣ることが懸念され、更に、高分子量成分が多くなりすぎ、硬化物を成形する際に、流動性が低下し、ハンドリング性に劣ることが懸念され、好ましくない。
【0053】
本発明において用いる上記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(a)」)は、特に限定されないが、典型的には、p−及びm−ジイソプロペニルベンゼン、p−及びm−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン(α,α’−ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン)、p−及びm−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、1−(α−ヒドロキシイソプロピル)−3−イソプロペニルベンゼン、1−(α−ヒドロキシイソプロピル)−4−イソプロペニルベンゼンあるいはこれらの混合物を用いる。またこれらの化合物の核アルキル基置換体、例えば、ジイソプロペニルトルエン及びビス(α−ヒドロキシイソプロピル)トルエン等も用いることができ、さらに核ハロゲン置換体、例えば、クロロジイソプロペニルベンゼン及びクロロビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等も用いることができる。
【0054】
その他、前記化合物(a)として、例えば、2−クロロ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−クロロ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−ブロモ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−ブロモ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−ブロモ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、2−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、4−ブロモ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−メトキシ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メトキシ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−エトキシ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−エトキシ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェノキシ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェノキシ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2,4−ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2,5−ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,5−ビス(αヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2−メチルチオ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メチルチオ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェニルチオ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェニルチオ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェニル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェニル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−シクロペンチル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−シクロペンチル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ナフチル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ナフチル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−メチル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メチル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ブチル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ブチル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−シクロヘキシル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−シクロヘキシル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンなどを例示することができる。
【0055】
なお、前記化合物(a)中に含まれる置換基としては、特に限定はされず、上記例示の化合物を使用できるが、立体障害の大きな置換基の場合、立体障害の小さな置換基に比べて、得られる中間体フェノール化合物同士のスタッキングが生じにくく、中間体フェノール化合物同士の結晶化が起こりにくく、つまり、中間体フェノール化合物の溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。
【0056】
また、上記一般式(6−1)〜(6−3)のいずれかで表される化合物(以下、「化合物(b)」)としては、フェノール又はその誘導体であり、特に限定されないが、典型的には、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール;フェノール;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール(2,6−ジメチルフェノール)、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のブチルフェノール;p−ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール;o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−ベンジルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1置換フェノール;1−ナフトール、2−ナフトール、1−アントラセンノール、2−アントラセンノール等の縮合多環式フェノール;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン等の多価フェノール等が挙げられる。これらフェノール又はその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6−キシレノールや2,4−キシレノールといったフェノール性水酸基に対してオルト位、パラ位のうち2つがアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、中間体フェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、炭素原子数1〜4のアルキル基を有する化合物(b)を使用することが好ましい。
【0057】
本発明に用いる上記一般式(7)で表される中間体フェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(a)と前記化合物(b)を、前記化合物(a)に対する前記化合物(b)のモル比(化合物(b)/化合物(a))を、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.2〜8で仕込み酸触媒存在下に反応させることにより、インダン骨格を有する中間体フェノール化合物を得ることができる。
【0058】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0059】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、及び、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001〜40質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、0.001〜25質量部が好ましい。
【0060】
前記反応温度は、通常50〜300℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、80〜200℃が好ましい。
【0061】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5〜24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5〜12時間の範囲である。
【0062】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、フェノール又はその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、脱水反応を兼ねた反応系の場合、具体的には、α−ヒドロキシプロピル基を有する化合物を原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、脱水反応を完結させた後、溶剤を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0063】
前記中間体フェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0064】
前記中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)としては、耐熱性の観点から、好ましくは、200〜2000g/eqであり、より好ましくは、220〜500g/eqである。なお、中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、滴定法により算出したものであり、JIS K0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0065】
<インダン骨格を有する硬化性樹脂の製造方法>
前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の製造方法((メタ)アクリロイル基の導入)について、以下に説明する。
【0066】
前記インダン骨格を有する硬化性樹脂は、塩基性、又は、酸性触媒存在下で、前記中間体フェノール化合物に、無水(メタ)アクリル酸、又は、(メタ)アクリル酸クロリドとの反応といった公知の方法によって得ることができる。
【0067】
前記無水(メタ)アクリル酸としては、例えば、無水アクリル酸と無水メタクリル酸が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸クロリドとしては、例えば、メタクリル酸クロリドとアクリル酸クロリドが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても混合して用いてもよい。中でも、より低誘電正接の硬化物が得られる無水メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0068】
前記塩基性触媒としては、具体的には、ジメチルアミノピリジン、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記酸性触媒としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。特にジメチルアミノピリジンが触媒活性の点から優れている。
【0069】
前記中間体フェノール化合物と前記無水(メタ)アクリル酸、又は、前記(メタ)アクリル酸クロリド(以下、「無水(メタ)アクリル酸等」という場合がある。)との反応としては、前記中間体フェノール化合物に含まれる水酸基1モルに対し、前記無水(メタ)アクリル酸等を1〜5モルを添加し、0.03〜1の塩基性触媒を一括添加、又は、徐々に添加しながら、30〜150℃の温度で、1〜40時間反応させる方法が挙げられる。
【0070】
また、前記無水(メタ)アクリル酸等との反応((メタ)アクリロイル基の導入)時に、有機溶媒を併用することにより、インダン骨格を有する硬化性樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために、適宜2種以上を併用してもよい。
【0071】
上述の無水(メタ)アクリル酸等との反応((メタ)アクリロイル基の導入)の終了後は、反応生成物を水洗した後、加熱減圧条件下で未反応の無水(メタ)アクリル酸等や併用した有機溶媒を留去する。更に、得られるインダン骨格を有する硬化性樹脂中の加水分解性ハロゲンを一層低減するために、インダン骨格を有する硬化性樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるインダン骨格を有する硬化性樹脂に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。反応終了後は生成した塩を濾過又は水洗などにより除去し、加熱減圧条件下で有機溶媒を留去することにより、加水分解性塩素の含有率が低い目的のインダン骨格を有する硬化性樹脂を得ることができる。
【0072】
前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の軟化点としては、150℃以下であることが好ましく、30〜100℃であることがより好ましい。前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の軟化点が前記範囲内であると、加工性に優れるため好ましい。
【0073】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂を含有することが好ましい。前記インダン骨格を有する硬化性樹脂がインダン骨格を有することにより、溶剤溶解性に優れ、硬化性樹脂組成物の調製が容易で、ハンドリング性に優れ、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂の構造中に極性官能基の割合が少ないため、誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。
【0074】
〔その他樹脂等〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で特に限定なく使用でき、アルケニル基含有化合物、例えば、ビスマレイミド類、アリルエーテル系化合物、アリルアミン系化合物、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等を添加することもできる。また、その他の熱硬化性樹脂、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等も目的に応じて適宜配合することも可能である。
【0075】
〔硬化剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化剤を含有することができる。前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0076】
〔硬化促進剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルフォスフィン等のリン系化合物、又は、イミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0077】
〔難燃剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することができる。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0078】
〔充填剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填剤を配合することができる。前記無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。また、前記硬化性樹脂組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0079】
〔その他配合剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0080】
<硬化物>
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることが好ましい。前記硬化性樹脂組成物は、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂単独、もしくは、前記インダン骨格を有する硬化性樹脂に加えて、上述した硬化剤などの各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0081】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、第3級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等が挙げられる。
【0082】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が、耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記インダン骨格を有する硬化性樹脂は、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【実施例】
【0083】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において、「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、以下に示す条件に硬化性樹脂、及び、前記硬化性樹脂を用いて得られる硬化物を合成し、更に得られた硬化物について、以下の条件にて測定又は計算し、評価を行った。
【0084】
<GPC測定(数平均分子量、及び、平均繰り返し単位数の評価)>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成方法で得られたインダン骨格を有する硬化性樹脂のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、インダン骨格を有する硬化性樹脂の数平均分子量(Mn)に基づき、インダン骨格を有する硬化性樹脂中のインダン骨格に寄与する平均繰り返し単位数nを算出した。具体的にはnが0〜4の化合物について、理論分子量とGPCにおけるそれぞれの実測値分子量とで散布図上にプロット、近似直線を引き、直線上の実測値Mn(1)が示す点より数平均分子量(Mn)を求め、平均繰り返し単位数nを算出した。
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料:合成例で得られたインダン骨格を有する硬化性樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0085】
(実施例1)
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6−ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’−ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6−ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤、及び、未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は299であった。
【0086】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3gとトルエン700gを仕込み約85℃で攪拌した。次にジメチルアミノピリジン29.9g(0.24mol)を仕込み。固体がすべて溶解したと思われる時点で無水メタクリル酸277.5g(1.8mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃でさらに3時間反応させた。反応液を、5Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール4000g中に1時間かけて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過後乾燥し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。なお、平均繰り返し単位数nは、GPC測定を行い、そのGPCチャートが
図1であり、数平均分子量(Mn)により、算出した。以下、その他実施例、及び、比較例についても、同様に平均繰り返し単位数nを算出した。
【0087】
【化13】
【0088】
(実施例2)
上記実施例1における無水メタクリル酸を、無水アクリル酸227.0g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0089】
【化14】
【0090】
(実施例3)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、o−フェニルフェノール306.3g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0091】
【化15】
【0092】
(実施例4)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、2−シクロヘキシルフェノール317.3g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0093】
【化16】
【0094】
(実施例5)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、2−ベンジルフェノール331.6g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0095】
【化17】
【0096】
(実施例6)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、フェノール169.4g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0097】
【化18】
【0098】
(実施例7)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、カテコール198.2g(1.8mol)に変更し、無水メタクリル酸の添加量を555.0g(1.8×2mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0099】
【化19】
【0100】
(実施例8)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、ピロガロール227.0g(1.8mol)に変更し、無水メタクリル酸の添加量を832.5g(1.8×3mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0101】
【化20】
【0102】
(実施例9)
上記実施例1における2,6−ジメチルフェノールを、2−ナフトール259.5g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0103】
【化21】
【0104】
(比較例1)
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6−ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’−ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6−ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤、及び、未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は299であった。
【0105】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3g、2,4−ジニトロフェノール(2,4−DNP)0.184g(0.001mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)23.5g(0.073mol)、クロロメチルスチレン209g(1.37mol)、及び、メチルエチルケトン400gを加え攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%−NaOHaqを20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに75℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mで3回分液洗浄した。得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、下記構造式のインダン骨格を有する硬化性樹脂(平均繰り返し単位数n=1.6)を得た。
【0106】
【化22】
【0107】
<樹脂フィルム(硬化物)の作成>
実施例、及び、比較例で得られた硬化性樹脂(固体粉末)を5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧常温下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、熱硬化温度より50℃高い温度まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温まで徐冷した。その結果、平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
【0108】
<耐熱性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上である。
【0109】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、誘電正接としては、10×10
−3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、7.5×10
−3以下であり、誘電率としては、3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0110】
【表1】
【0111】
上記表1の評価結果より、実施例1〜9においては、硬化性樹脂を使用することで得られる硬化物は、耐熱性、及び、誘電特性(特に低誘電正接)に優れることが確認された。中でも、硬化性樹脂の構造中の各末端にメタクリロイル基を1つ有する硬化性樹脂を用いた実施例1、及び、3〜6においては、誘電率の低下が認められ、低誘電特性の向上が認められた。また、硬化性樹脂の構造中の各末端にメタクリロイル基を複数有する実施例7及び8においては、耐熱性の向上が認められた。一方、比較例1においては、インダン骨格を有する硬化性樹脂中に(メタ)アクリロイル基を有さないため、実施例と比較して、誘電正接が高く、耐熱性と誘電特性の両立が図れていないことが確認された。
インダン骨格を有する硬化性樹脂を使用することで、耐熱性、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物を提供する。具体的には、下記式で表されるインダン骨格を有することを特徴とする硬化性樹脂、これを含む樹脂組成物、その硬化物を提供する。
Xは(メタ)アクリロイル基、Ra及びRbは、炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基、jは1〜3の整数、k、lは0〜4の整数。nは平均繰り返し単位数であり、0.5〜20、mは0〜2の整数。