【実施例】
【0026】
次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例の内容により、何ら限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
6−ナイロンとポリエチレンとをそれぞれ1軸押出機で溶融させ、島成分が6−ナイロン、海成分が高流動性低密度ポリエチレンで、海成分/島成分比率=50/50である300島の海島型複合繊維を複合紡糸ノズルで溶融紡糸した。そして、得られた糸を延伸、クリンプ、カットして、3.5dtex、カット長51mmのステープルを得た。得られたステープルをカードに通し、クロスラッパー方式によりウェブとし、積層した。次に980パンチ/cm
2の針刺し密度でニードルパンチすることにより、目付530g/m
2の不織布を得た。
【0028】
そして、得られた不織布を加熱した後、プレスすることによりポリエチレン成分を溶融固着させて不織布表面を平滑にした。そして、表面を平滑にされた不織布にポリエステル系ポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分のポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去した後、乾燥することにより繊維基材を得た。
【0029】
次に、得られた繊維基材
にカルナバワックスを含浸付与した。具体的には
、カルナバワックスのエマルジョン(濃度30質量%)を希釈し
てカルナバワックス5質量%を含有す
るカルナバワックス分散液を調製した。そして、繊維基材
をカルナバワックス分散液を貯留する槽に浸漬し、ピックアップ率60%を目標として、ディップ・ニップ処理により繊維基材
にカルナバワックス分散液を含浸させた。そして
、カルナバワックス分散液を含有する繊維基材を120℃,20分間の条件で熱風乾燥機により乾燥することにより
、カルナバワックスを含浸付与された繊維基材を得た。
【0030】
そして
、カルナバワックスを含浸付与された繊維基材の両面を♯600番手のサンドペーパーを用いてバフィングすることにより表面を立毛させて、皮革様シートである、スエード調の人工皮革を得た。得られた人工皮革は、0.01dtexの6−ナイロンの極細繊維の不織布と不織布に含浸付与されたポリウレタン及
びカルナバワックスを含むスエード調の人工皮革であった。また、スエード調の人工皮革である皮革様シート中
のカルナバワックスの含有割合は0.8質量%、ポリウレタンの含有割合は40質量%であった。また、厚さ0.5mm、見掛け密度0.354g/cm
3、目付177g/m
2であった。そして、得られた皮革様シートの耐摩耗性、風合い、表面毛羽感を次のようにして評価した。
【0031】
〈耐摩耗性〉
テーバーアブレージョンテスター(TABER INSTRUMENT Corp製)を用いて、2個の摩耗輪(H−22、荷重500g)を用い、次のようにして耐摩耗性を評価した。はじめに、2個の摩耗輪の表面をディスクペーパー ♯150で50回転分研磨した。そして、テーバーアブレージョンテスターのターンテーブルに得られた皮革様シートをセットし、60rpmの条件で2個の摩耗輪を皮革様シートの表面で転がし続けた。そして、皮革様シートに穴が開いたときの回転数を穴あき回数とした。なお、測定においては、200回転数ごとに摩耗輪の表面をナイロンブラシで掃除した。結果を表1に示す。
【0032】
〈風合い〉
皮革様シートの原反を両手で握り、折れ曲がりを作った際の状態を、以下の基準で級数判定を行った。
3級:ドレープ性が高く非常に柔軟な風合いであった。
2級:ドレープ性が低くやや柔軟な風合いであった。
1級:ドレープ性が悪く硬い風合いであった。
【0033】
〈毛羽感〉
皮革様シートの表面の立毛面を目視で観察し、以下の基準で級数判定を行った。
3級:ライティング効果の高い長毛であった。
2級:ライティング効果の弱い短毛であった。
1級:ライティング効果が殆ど無くヌバック調であった。
【0034】
【表1】
【0035】
[実施例2〜3]
表1に記載のよう
にカルナバワックスの含有割合を変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
カルナバワックスを含浸付与しなかった以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例2〜4]
カルナバワックスのエマルジョンの代わりに、パラフィンワックスのエマルジョンを用い、表1に記載のよう
にカルナバワックスの代わりにパラフィンワックスを含浸付与した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例5〜7]
カルナバワックスのエマルジョンの代わりに、ポリウレタンのエマルジョンを用い、表1に記載のよう
にカルナバワックスの代わりにポリウレタンを含浸付与した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例8〜10]
カルナバワックスのエマルジョンの代わりに、アクリル弾性体のエマルジョンを用い、表1に記載のよう
にカルナバワックスの代わりにアクリル弾性体を含浸付与した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例11]
実施例1と同様にして繊維基材を得た。そして、得られた繊維基材の表層
にカルナバワックスを付与した。具体的には
、カルナバワックスのエマルジョンをグラビアロール(150メッシュ)でライン速度 5m/分の条件で塗布し、表面から120℃の熱風を吹き付けて乾燥することにより
、カルナバワックスを表層に付与した繊維基材を得た。そして
、カルナバワックスを表層に付与した繊維基材の両面を#600番手のサンドペーパーを用いてバフィングすることにより、表面を起毛してスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革である皮革様シート中
のカルナバワックスの含有割合は0.8質量%であった。そして、得られた皮革様シートを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
海成分である水溶性PVAと、島成分である、6モル%のイソフタル酸で変性されたPETとを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃の溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)から吐出した。そして、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力(引き取り風圧)を調整し、平均繊度2.1デシテックスの海島型複合繊維をネット上に堆積したスパンボンドシートを得た。そして、表面温度42℃の金属ロールでネット上のスパンボンドシートを軽く押さえることにより表面の毛羽立ちを抑えた。そしてスパンボンドシートをネットから剥離した。次に、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間で200N/mmの線圧でスパンボンドシートを熱プレスして、目付31g/m
2の長繊維からなる繊維ウェブを得た。
【0042】
次に、得られた繊維ウェブをクロスラッピングにより12枚重ねて総目付が372g/m
2の重ね合わせウェブを作製し、さらに針折れ防止油剤をスプレーした。そして、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、重ね合わせウェブを針深度8.3mmで両面から交互に3300パンチ/cm
2でニードルパンチすることにより繊維絡合体を得た。
【0043】
そして、得られた繊維絡合体に対して、ポリウレタンエマルジョンを含浸し、表面側から120℃の熱風を吹き付けて乾燥させることにより不織布にポリウレタンを含浸付与した。そして、繊維絡合体を70℃の熱水中に28秒間浸漬することによる収縮処理を行った。そして、95℃の熱水中でディップ・ニップ処理を繰り返すことにより海成分ポリマーである変性PVAを溶解除去した。変性PVAを溶解除去することにより、平均繊度0.2デシテックスの25本の極細繊維からなる繊維束が3次元的に交絡した不織布を得た。次に、バフィングにより不織布の厚みを0.5mmに調整した。このようにして繊維基材を製造した。
【0044】
次に、得られた繊維基材
にカルナバワックスを含浸付与した。具体的には
、カルナバワックスのエマルジョン(濃度30質量%)を希釈し
てカルナバワックス5質量%を含有す
るカルナバワックス分散液を調製した。そして、繊維基材
をカルナバワックス分散液を貯留する槽に浸漬し、ピックアップ率60%を目標として、ディップ・ニップ処理により繊維基材
にカルナバワックス分散液を含浸させた。そして
、カルナバワックス分散液を含有する繊維基材を120℃,20分間の条件で熱風乾燥機により乾燥することにより
、カルナバワックスを含浸付与された繊維基材を得た。
【0045】
そして
、カルナバワックスを含浸付与された繊維基材の両面を♯600番手のサンドペーパーを用いてバフィングすることにより表面を立毛させて、皮革様シートである、スエード調の人工皮革を得た。得られた人工皮革は、0.1dtexのPETの極細繊維の不織布と不織布に含浸付与されたポリウレタン及
びカルナバワックスを含むスエード調の人工皮革であった。また、スエード調の人工皮革である皮革様シート中
のカルナバワックスの含有割合は0.8質量%、ポリウレタンの含有割合は12質量%であった。また、厚さ0.5mm、見掛け密度0.513g/cm
3、目付236g/m
2であった。そして、得られた皮革様シートの耐摩耗性、風合い、表面毛羽感を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
[実施例5〜6]
表1に記載のよう
にカルナバワックスの含浸付与の割合を変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0048】
[比較例12]
カルナバワックスを含浸付与しなかった以外は実施例4と同様にして皮革様シートを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0049】
表1の結果から、次のことがわかる。6−ナイロンの極細繊維の不織布を含む皮革様シートについて、実施例1〜3の皮革様シートは
、カルナバワックスを含浸付与しなかった比較例1
、カルナバワックスの代わりにパラフィンワックスを含浸付与した比較例2〜4
、カルナバワックスの代わりにポリウレタンやアクリル弾性体を含浸付与した比較例5〜10の皮革様シートに比べて、著しく穴が空くまでの回転数が同等以上で、耐摩耗性に優れ、また、風合いや毛羽感も優れていることが分かる。ま
た、カルナバワックスを繊維基材に含浸付与する代わりに表層
にカルナバワックスを塗布した比較例11の皮革様シートに比べて、著しく穴が空くまでの回転数が多く、著しく耐摩耗性が向上していることが分かる。
【0050】
また、表2の結果から、PETの極細繊維の不織布を含む皮革様シートについても同様に
、カルナバワックスを含浸付与しなかった比較例12の皮革様シートに比べて、著しく穴が空くまでの回転数が多く、著しく耐摩耗性が向上していることが分かる。