【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0046】
[試験例1](乳化剤の影響 その1)
風味油に使用する乳化剤の影響を調べた。
【0047】
<乳化剤>
表1に示す乳化剤を使用した。
【0048】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0049】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、マルチスライサーにて3mm幅にカットした。玉ねぎは、フードプロセッサーにて3mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0050】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油420gと乳化剤6gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、100℃以上を維持するよう、長ねぎ72g、玉ねぎ108gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃になるまで加熱を行った。150℃に達したらそのまま1時間維持した。その後加熱を止め、油温を室温まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0051】
<評価>
(1)油の風味
【0052】
上記に調製した風味油を専門パネラー(n=3)が口に含み、総合的なねぎの風味、生ねぎの風味、香ばしいねぎの風味について、対照と比較した評価を、下記に示す評価基準にてパネラー間で評価を集約した。
【0053】
(2)スープでの評価
スープの素(商品名「丸鶏がらスープ」、味の素株式会社)10gを水300gに加え、混合し、ガス火で沸騰させて、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.2gを添加し、(1)と同様にして風味評価を行なった。
【0054】
(評価基準)
☆: 対照に比べ猛烈に強く感じる
◎: 対照に比べ非常に強く感じる
○: 対照に比べ強く感じる
△: 対照に比べやや強く感じる
×: 対照と同じ、または、弱く感じる
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
その結果、油の風味及びスープでの評価とも同じ評価結果となった。すなわち、使用した乳化剤のHLB値が5.0以下(例1〜例5)の場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けがそれほど強化されなかったのに対して、HLB値が8.0の乳化剤(例6)やHLB値が15.5の乳化剤(例7)を使用した場合では、ねぎによる風味付けが顕著に強化された。そして、使用した乳化剤のHLB値が8.0(例6)の場合では、香ばしい風味が特に強くなり、HLB値が15.5(例7)の場合では、生ねぎの風味が特に強くなった。なお、HLB値が15.5の乳化剤(例7)は若干油に溶けにくかった。
【0057】
[試験例2](乳化剤の添加量の影響)
風味油に使用する乳化剤の添加量の影響を調べた。
【0058】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0059】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0060】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0061】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤0.5g、1.5g、又は2.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃になるまで加熱を行った。150℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0062】
<スープでの評価>
スープの素(商品名「中華あじ」、味の素株式会社)小さじ3杯を沸騰湯600gに加え、混合し、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.5gを添加し、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0063】
結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
その結果、油脂及び風味付与材100質量部に対し、HLB値が8.0の乳化剤を0.1質量部(例8)、0.3質量部(例9)、又は0.5質量部(例10)の添加量で使用した場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。
【0066】
[試験例3](温度条件の影響)
風味油を調製する際の温度条件の影響を調べた。
【0067】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0068】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0069】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0070】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃又は170℃になるまで加熱を行った。150℃又は170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0071】
<スープでの評価>
スープの素(商品名「丸鶏がらスープ」、味の素株式会社)小さじ3杯を沸騰湯600gに加え、混合し、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.5gを添加し、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0072】
結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
その結果、HLB値が8.0の乳化剤を150℃(例11)又は170℃(例12)の温度条件で使用した場合には、乳化剤を添加しない、それぞれの対照1、2に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。
【0075】
[試験例4](乳化剤の影響 その2)
風味油に使用する乳化剤の影響を調べた。
【0076】
<乳化剤>
表4に示す乳化剤を使用した。
【0077】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0078】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0079】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が170℃になるまで加熱を行った。170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0080】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0081】
結果を表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
その結果、試験例1の結果と同様の傾向がみられた。すなわち、使用した乳化剤のHLB値が5.0より低い(例13、例14)場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けがそれほど強化されなかったのに対して、HLB値が5.5(例15)、HLB値が7.0(例16、例17)、HLB値が7.4(例18)、HLB値が8.0(例19、例20)、HLB値が11.0(例21)、又はHLB値が16.0(例22)の乳化剤を使用した場合では、ねぎによる風味付けが顕著に強化された。そして、HLB値が中程度(例えば、5.5〜8.0)では香ばしい風味が強くなり、HLB値が高度(例えば、11.0以上)では生ねぎの風味が強くなる傾向がみられた。さらに、トリオレイン酸ペンタグリセリン(例16)では、香ばしいねぎの風味、甘味、コク味が最も強く、かつ風味の持続性も良好で、その結果、総合的なねぎの風味が最も強くなった。なお、HLB値が16.0(例22)の乳化剤は油に溶けにくかった。
【0084】
[試験例5](ポリジメチルシロキサンの影響)
風味油に使用するポリジメチルシロキサンの影響を調べた。
【0085】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0086】
<ポリジメチルシロキサン>
ポリジメチルシロキサン(粘度:861mPa・s、信越化学工業株式会社)を使用した。
【0087】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0088】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0089】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、キャノーラ油350gと乳化剤1.5g、又は更にポリジメチルシロキサンを対油3ppmで添加して張り込み、それぞれを加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が170℃になるまで加熱を行った。170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない風味油を同様に調製した。
【0090】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0091】
結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
その結果、乳化剤を添加した例23や、乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例24では、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。特に、乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例24では、乳化剤のみを添加した例23に比べて、甘味やねぎのコク味が更に強くなり、総合的なねぎの風味が大変強くなった。
【0094】
[試験例6](ガーリック風味油 その1)
風味油に使用する風味付与材として、ねぎに代えてガーリックを使用して乳化剤の影響を調べた。
【0095】
<乳化剤>
トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB値7.0)(商品名「A−173E」、太陽化学株式会社)を使用した。
【0096】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0097】
<風味付与材>
生のガーリックを使用した。ガーリックは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0098】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、キャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、ガーリック150gを投入した。原料をすべて投入後、油温が140℃になるまで加熱を行った。140℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0099】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の方法でガーリックの風味評価を行なった。
【0100】
結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
その結果、HLB値が7.0の乳化剤(例25)を使用した場合、乳化剤を添加しない対照に比べ、ガーリックによる風味付けが強化された。そして、生ガーリックの風味と香ばしいガーリックの風味に加え、甘味、コク味も強く、かつ風味の持続感があり、大変優れた品質であった。
【0103】
[試験例7](ガーリック風味油 その2)
風味油に使用する油脂として、キャノーラ油に代えてコーン油を使用して乳化剤の影響を調べた。
【0104】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0105】
<ポリジメチルシロキサン>
ポリジメチルシロキサン(粘度:861mPa・s、信越化学工業株式会社)を使用した。
【0106】
<油脂>
コーン油(商品名「AJINOMOTOコーン油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0107】
<風味付与材>
生のガーリックを使用した。ガーリックは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0108】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、コーン油400gと乳化剤1.5g、ポリジメチルシロキサンを対油3ppmで添加して張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、ガーリック150gを投入した。原料をすべて投入後、油温が140℃になるまで加熱を行った。140℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない風味油を同様に調製した。
【0109】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例6と同様の風味評価を行なった。
【0110】
結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
その結果、HLB値が8.0の乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例26では、乳化剤及びポリジメチルシロキサンのどちらも添加しない対照に比べ、ガーリックによる風味付けが強化された。そして、生ガーリックの風味と香ばしいガーリックの風味に加え、甘味、コク味も強く、かつ風味の持続感があり、極めて優れた品質であった。