特許第6962910号(P6962910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962910風味油の製造方法、風味油混合油の製造方法、風味が高められた食品の製造方法、及び油脂の風味付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962910
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】風味油の製造方法、風味油混合油の製造方法、風味が高められた食品の製造方法、及び油脂の風味付け方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20211025BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20211025BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20211025BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20211025BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20211025BHJP
【FI】
   A23D9/00 504
   A23L27/00 C
   A23L27/10 C
   A23L23/00
   A23L35/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-518239(P2018-518239)
(86)(22)【出願日】2017年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2017017669
(87)【国際公開番号】WO2017199810
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-100752(P2016-100752)
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】木村 功
(72)【発明者】
【氏名】葉桐 宏厚
(72)【発明者】
【氏名】野上 竜一郎
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5779289(JP,B2)
【文献】 特開2000−228947(JP,A)
【文献】 米国特許第04169901(US,A)
【文献】 特開2014−113116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱することを特徴とする風味油の製造方法であって、前記風味付与材の混合は、前記油脂と前記乳化剤とを混合した混合物の油温が100℃以上に達したら、その油温が100℃を下回らない条件下で該混合物に添加することにより行う、風味油の製造方法
【請求項2】
前記乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1記載の風味油の製造方法。
【請求項3】
前記乳化剤は、前記油脂及び前記風味付与材の合計量100質量部に対して0.03質量部以上2質量部以下の量となるように添加する、請求項1又は2記載の風味油の製造方法。
【請求項4】
前記加熱は、油温の最高温度が120℃以上180℃以下である条件下に行う、請求項1〜3のいずれか1つに記載の風味油の製造方法。
【請求項5】
前記風味付与材は、前記油脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の量となるように添加する、請求項1〜のいずれか1つに記載の風味油の製造方法。
【請求項6】
前記油脂と、前記風味付与材と、前記乳化剤とに、更にポリジメチルシロキサンを混合し、これを加熱する、請求項1〜のいずれか1つに記載の風味油の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1つに記載の風味油の製造方法で得られた該風味油(A)と、他の油脂(B)とを、そのA:Bの質量比が95:5〜5:95となるように混合する、風味油混合油の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1つに記載の風味油の製造方法で得られた該風味油と、他の食品材料とを組み合わせる、風味が高められた食品の製造方法。
【請求項9】
請求項記載の風味油混合油の製造方法で得られた該風味油混合油と、他の食品材料とを組み合わせる、風味が高められた食品の製造方法。
【請求項10】
油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱することを特徴とする油脂の風味付け方法であって、前記風味付与材の混合は、前記油脂と前記乳化剤とを混合した混合物の油温が100℃以上に達したら、その油温が100℃を下回らない条件下で該混合物に添加することにより行う、油脂の風味付け方法
【請求項11】
前記油脂と、前記風味付与材と、前記乳化剤と更にポリジメチルシロキサンを混合し、これを加熱する、請求項10記載の油脂の風味付け方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な風味を感じられるようにした風味油の製造方法、該風味油を利用した風味油混合油の製造方法、該風味油を利用した食品の製造方法、及び、油脂に良好な風味を付与することができる油脂の風味付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油脂を食材で処理することで、その食材に由来する風味を付与した風味油が知られている。ねぎ、ガーリック、唐辛子、バジル等の野菜類や、エビ、煮干し、鰹節等の魚介類、醤油等の調味料など、様々な食材について、その食材に由来する特有の風味が高められた食品を簡単に調理、加工等することができるので、レストランの調理や冷凍食品加工などの業務用では勿論のこと、一般家庭の消費者にも好評である。
【0003】
一般に風味油の製造においては、食材から風味を油脂に移行させるための加熱や加圧等の処理の際、風味の抽出が不十分であったり、風味成分が揮発してしまったり、不快なコゲ臭が生じてしまったりして、食材や油脂の種類に応じた所望の品質の風味油を得るための条件付けが困難であるという問題があった。
【0004】
そのような課題に関連して、例えば、特許文献1には、油脂と香味野菜を混合した後、加圧下、連続的に加熱処理を行ない香味野菜からエキス成分及び香り成分等を油脂中に移行させることを特徴とする調味油の製造法が記載されている。そして、香味野菜から浸出する水及び水溶性成分を安定に油脂中に乳化分散させるために乳化剤を用いてもよいことが記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、食用油脂100重量部と香味賦与物10−100重量部の混合物又は該混合物の常圧下加熱処理物を、上記食用油脂に対して約2−約30重量%の水分の存在下に且つ2−7kg/cm2の加圧下に温度約60−180℃で約5−120分間加熱処理することを特徴とする香味油の製造方法が記載されている。そして、香味賦与物から抽出した香味を食用油脂に一層なじませ且つその排出を抑制し、更には残存水分を均斉分散させるために、香味油の製造に際して食用乳化剤を添加してもよいことが記載されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、風味油にHLB1〜15である乳化剤を0.01〜7重量%添加することを特徴とする加熱時の風味を維持する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−239859号公報
【特許文献2】特開昭62−6651号公報
【特許文献3】特開2014−113116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2では、乳化剤は、香味野菜等から浸出する水及び水溶性成分を安定に油脂中に乳化分散させるために用いられており、そのためには、油脂によく混ざる比較的親油性の高い乳化剤が用いられ、本発明者らの研究によれば、そのように親油性の高い乳化剤による風味向上の効果は限定的であった。よって、いずれも加圧下に調製されていた。また、上記特許文献3では、乳化剤は、調製済みの風味油に添加されており、風味の維持に一定の効果があるものの、風味向上の効果は得られなかった。
【0009】
よって、本発明の目的は、簡便に風味向上の効果が得られるようにした風味油の製造方法、該風味油を利用した風味油混合油の製造方法、該風味油を利用した食品の製造方法を提供することにある。また、簡便に風味向上の効果が得られるようにした油脂の風味付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、一般に親油性の低い乳化剤は油脂に混ざりにくいと言えるが、風味油の調製に用いることで、意外にも風味向上の効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の形態は、油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱することを特徴とする風味油の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明の風味油の製造方法においては、前記乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0013】
また、前記乳化剤は、前記油脂及び前記風味付与材の合計量100質量部に対して0.03質量部以上2質量部以下の量となるように添加することが好ましい。
【0014】
また、前記加熱は、油温の最高温度が120℃以上180℃以下である条件下に行うことが好ましい。
【0015】
また、前記風味付与材の混合は、前記油脂と前記乳化剤とを混合した混合物の油温が100℃以上に達したら、その油温が100℃を下回らない条件下で該混合物に添加することにより行うことが好ましい。
【0016】
また、前記風味付与材は、前記油脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の量となるように添加することが好ましい。
【0017】
また、前記油脂と、前記風味付与材と、前記乳化剤とに、更にポリジメチルシロキサンを混合し、これを加熱することが好ましい。
【0018】
本発明の第2の形態は、上記の風味油の製造方法で得られた該風味油(A)と、他の油脂(B)とを、そのA:Bの質量比が95:5〜5:95となるように混合する、風味油混合油の製造方法を提供するものである。
【0019】
本発明の第3の形態は、上記の風味油の製造方法で得られた該風味油と、他の食品材料とを組み合わせる、風味が高められた食品の製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明の第4の形態は、上記の風味油混合油の製造方法で得られた該風味油混合油と、他の食品材料とを組み合わせる、風味が高められた食品の製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明の第5の形態は、油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱することを特徴とする油脂の風味付け方法を提供するものである。
【0022】
本発明の第6の形態は、油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤と、ポリジメチルシロキサンとを混合し、これを加熱することを特徴とする油脂の風味付け方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の風味油の製造方法によれば、油脂と、風味付与材と、HLB値が特定の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱することにより、風味が強化された風味油を得ることができる。
【0024】
また、本発明の風味油の製造方法により得られる風味油と、他の油脂とを混合することにより、風味が強化された風味油混合油を得ることができる。
【0025】
また、本発明の風味油の製造方法により得られる風味油を利用して食品を製造することで、各種食品に良好な風味を付与できる。
【0026】
また、本発明の風味油混合油の製造方法により得られる風味油混合油を利用して食品を製造することで、各種食品に良好な風味を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の風味油の製造方法は、油脂と、風味付与材と、HLB値が5.3〜17の範囲に属する乳化剤とを混合し、これを加熱する。
【0028】
油脂としては特に制限はなく、食用のものを適宜採用し得る。例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂等の動物脂、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。なかでも、製造時の作業性等の点で、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、パームオレイン等のヨウ素価が50以上の油脂から選ばれる1種又は2種以上を60質量%以上配合した油脂が好ましく、80質量%以上配合した油脂がより好ましい。
【0029】
風味付与材としては、例えば、長ねぎ、玉ねぎ、キャベツ、もやし、にら、ごぼう、にんじん、セロリ、じゃがいも、トマト等の野菜類、パセリ、ガーリック、生姜、唐辛子、ナツメッグ、クミン、ローズマリー、こしょう、山椒、わさび、バジル等の香辛料類、椎茸、しめじ、マツタケ、マイタケ等の茸類、エビ、カニ、イカ、カツオ、サバ、イワシ、アジ、サケ等の魚介類、ホタテ、アサリ、シジミ等の貝類、昆布、ワカメ、ヒジキ等の海藻類、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉等の肉類、味噌、醤油、酢、みりん、マヨネーズ、ケチャップ、酒かす等の調味料類などが挙げられる。風味付与材は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。また、これに加工等を施さずに、いわゆる生鮮な状態、あるいはそれに近い状態のものをそのまま用いてもよく、これに乾燥、冷凍等の加工が施されたものでもよい。さらにこれらのエキスを用いてもよい。また、味噌、醤油、マヨネーズ、ケチャップ等の調味料に代表されるような通常液体、湿潤状、乳化物状等の素材の場合においても、それをそのまま用いてもよく、これに水分調整や粉末化等の処理が施されたものを用いてもよい。風味付与材は、所望する風味に応じて、適宜選択すればよいが、なかでも、野菜類または香辛料類を好ましく例示することができ、長ねぎ、玉ねぎ、ガーリックをより好ましく例示することができる。
【0030】
風味付与材は、液状、ペースト状、粉末状、ないしは固形状など、その状態に制限なく用いることができるが、固形状で用いる場合には、1mm3以上8000mm3以下程度の大きさのものを用いることが好ましく、1mm3以上5000mm3以下程度の大きさのものを用いることがより好ましい。例えば、マルチスライサーやフードプロセッサー等の適当な細断手段によって、適宜そのような大きさに細断されたものを用いてもよい。上記範囲とすることで、風味付与の効率が良くなり、風味付与後の油から固液分離が容易になる。
【0031】
風味付与材は、上記油脂の100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の量となるように添加することが好ましく、5質量部以上55質量部以下の量となるように添加することがより好ましく、10質量部以上55質量部以下の量となるように添加することが更により好ましい。上記範囲とすることで、風味付与の効率が良くなり、風味付与後の油から固液分離が容易になる。
【0032】
風味付与材に由来する水分は、油脂100質量部に対して0質量部以上60質量部以下となるように調整されることが好ましく、0質量部以上55質量部以下となるように調整されることがより好ましい。上記範囲にすると、適切な加熱時間で風味を付与することができる。
【0033】
乳化剤としては、食用のものを適宜採用し得るが、本発明においては、そのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が5.3〜17の範囲に属する必要がある。後述する実施例の結果にみられるように、HLB値がこの範囲を外れると、風味向上の効果が乏しくなる。乳化剤のHLB値は、5.3〜16の範囲に属することが好ましく、5.4〜12の範囲に属することがより好ましく、6.0〜9.0の範囲に属することが更により好ましい。なお、HLB値は、乳化剤を構成する分子の親水性領域と親油性領域での親水/親油度のバランスによって算出される数値であり、親水性領域において親水基がない場合をHLB値0とし、逆に親油性領域において親油基がない場合をHLB値20として、そのHLB値0〜20の範囲で按分された乳化剤に固有の数値である。HLB値は、乳化剤の性質を示す指標として当業者に周知の指標である(例えば、グリフィン法、Griffin WC「Classification of Surface-Active Agents by HLB」Journal of the Society of Cosmetic Chemists1(1949):311、Griffin WC「Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants」Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5(1954):259参照)。あるいは、多くの乳化剤は、そのHLB値とともに流通しているので、本発明に用いられる乳化剤のHLB値は、そのような流通過程の表示により決定されてもよい。また、複数成分の混合の場合には、乳化剤全体のHLB値が各成分のHLB値の加重平均で定まるので、本発明に用いられる乳化剤のHLB値は、そのように各成分のHLB値を加重平均して算出された値であってもよい。
【0034】
乳化剤としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリン脂肪酸エステルを含み、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは除かれる)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。乳化剤は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれた乳化剤の1種又は2種以上であり、より好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0035】
乳化剤は、油脂及び風味付与材の合計量100質量部に対して0.03質量部以上2質量部以下の量となるように添加することが好ましく、0.08質量部以上1.5質量部以下の量となるように添加することがより好ましく、0.2質量部以上1.2質量部以下の量となるように添加することが更に好ましく、0.2質量部以上0.8質量部以下の量となるように添加することが最も好ましい。上記範囲とすることで、風味向上の効果が得やすくなる。
【0036】
加熱は、油脂と風味付与材と乳化剤とを混合し、例えば、タンク等の容器に入れて適当な撹拌手段により撹拌しつつ、行うことができる。ここで、「混合」とは、油脂と風味付与材と乳化剤とが互いによく接触するようにすればよく、それらの添加順や加熱のタイミングなどは問われない。好ましくは、油脂と乳化剤とを先に混合した後に風味付与材を添加する。風味付与材を添加しないで油脂と乳化剤とを先に混合したほうが、より短時間のうちに、油脂と乳化剤とが混ざり合った状態が達成できて、作業効率がよい。より好ましくは、油脂と乳化剤とが混合された状態で加熱した後に風味付与材を添加する。風味付与材を添加しないで油脂と乳化剤とを先に加熱したほうが、より短時間のうちに、油脂と乳化剤とが混ざり合った状態で且つ所定の温度状態が達成されて、作業効率がよい。加熱手段に特に制限はなく、常法により、例えばタンク等の容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式の加熱手段などで加熱すればよい。
【0037】
加熱の際の温度条件としては、油脂や風味付与材の種類によっても至適な条件が異なり一概には言えないが、典型的には、加熱は、油温の最高温度が120℃以上180℃以下である条件下に行うことが好ましく、125℃以上175℃以下である条件下に行うことがより好ましい。上記範囲とすることで、不快なコゲ臭が生じにくく、良好な風味を得ることができる。なお、加熱は加圧下に行ってもよいが、常圧で行うほうが装置構成を簡略化できるので、好ましい。
【0038】
油脂と風味付与材と乳化剤との混合と、加熱のタイミングについては、上述のとおり、特に制限されるものではないが、油脂と乳化剤とを混合した混合物の油温を所定温度以上、例えば100℃以上に達温させた後に、風味付与材の全量を小分けして徐々に添加するなどして、油温がその達温させた温度、例えば100℃を下回らないようにすることが好ましい。このようにすることで、加熱時間を短縮することができ、風味成分の飛散消失を防ぐことができる。
【0039】
加熱時間は、油脂や風味付与材の種類によっても至適な条件が異なり一概には言えないが、典型的には、油温が設定温度に達した状態、例えば100℃以上に達温させた状態として10時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましく、7時間以下であることが更により好ましい。加熱時間を抑えることにより、生産性が高められるとともに、焦げの発生や風味の成分の飛散消失が防がれる。
【0040】
本発明の好ましい態様においては、上記の油脂と風味付与材と乳化剤との混合に加えて、更にポリジメチルシロキサンを混合することができる。その添加順序や加熱のタイミングなどは、上記の乳化剤同様に特に問われないが、乳化剤と同じタイミングもしくは乳化剤より先に油脂と混合することがより好ましい。添加量としては、油脂100質量部に対し0.0001質量部以上0.005質量部以下であることが好ましく、0.0001質量部以上0.001質量部以下であることがより好ましい。上記範囲とすることで、風味向上の効果が更に高まる。
【0041】
加熱終了後には、静置分離、遠心分離、ろ別などの適当な固液分離手段で、油の液部を回収する。
【0042】
上記のようにして得られた風味油は、風味が良好で、更には、焦げ臭などの不快な臭いも殆どない。このため、この風味油を、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂等の動物脂、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂等の他の油脂と混合することで、高品質の風味油混合油が得られる。他の油脂との配合比に特に制限はないが、質量比で、風味油:他の油脂の質量比が95:5〜5:95であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。
【0043】
上記のようにして得られた風味油や、それを配合した風味油混合油には、その風味を損なわれない範囲で、適宜適当な添加素材を配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ−オリザノール、トコフェロールなどが挙げられる。
【0044】
上記のようにして得られた風味油や、それを配合した風味油混合油は、炒飯、野菜炒め等の炒め物類、お好み焼き、焼そば、焼肉等の焼き物類、麻婆豆腐のソース、パスタソース、味付け肉のたれ等のソース類、ラーメンスープ、コンソメスープ、カレー、シチュー等のスープ類、餃子、肉まんの具、ハンバーグ、ソーセージ等の食肉加工品類、炊き込みご飯、ピラフ等の米飯類、ロールパン、クッキー等の製菓製パン類、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の水産加工品類、唐揚げ粉、チヂミ粉、粉末スープ等の調整粉類、シーズニングソース、ドレッシング、マヨネーズ、ポン酢、中華料理の素、鍋つゆ等の調味料類、マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、フレンチフライ、唐揚げ、イカリング、コロッケ等の油ちょう食品等の各種食品に使用でき、それらに良好な風味を付与することができる。すなわち、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油、炒め油、フライ油等の調理用油、ボックスオイル、天板油等の離型油、練りこみ油、インジェクション用油、仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して当該食品に組み込ませることで、風味油に由来する風味をその食品に付与して、その食品の風味を高めることができる。よって、流通や電子レンジ加熱などにおける風味の劣化、消失等が問題となる、冷凍加工食品、冷蔵加工食品、レトルト食品、瓶詰食品、缶詰食品、乾燥食品、弁当等の流通加工食品製品などに特に好適に使用され得る。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0046】
[試験例1](乳化剤の影響 その1)
風味油に使用する乳化剤の影響を調べた。
【0047】
<乳化剤>
表1に示す乳化剤を使用した。
【0048】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0049】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、マルチスライサーにて3mm幅にカットした。玉ねぎは、フードプロセッサーにて3mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0050】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油420gと乳化剤6gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、100℃以上を維持するよう、長ねぎ72g、玉ねぎ108gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃になるまで加熱を行った。150℃に達したらそのまま1時間維持した。その後加熱を止め、油温を室温まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0051】
<評価>
(1)油の風味
【0052】
上記に調製した風味油を専門パネラー(n=3)が口に含み、総合的なねぎの風味、生ねぎの風味、香ばしいねぎの風味について、対照と比較した評価を、下記に示す評価基準にてパネラー間で評価を集約した。
【0053】
(2)スープでの評価
スープの素(商品名「丸鶏がらスープ」、味の素株式会社)10gを水300gに加え、混合し、ガス火で沸騰させて、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.2gを添加し、(1)と同様にして風味評価を行なった。
【0054】
(評価基準)
☆: 対照に比べ猛烈に強く感じる
◎: 対照に比べ非常に強く感じる
○: 対照に比べ強く感じる
△: 対照に比べやや強く感じる
×: 対照と同じ、または、弱く感じる
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
その結果、油の風味及びスープでの評価とも同じ評価結果となった。すなわち、使用した乳化剤のHLB値が5.0以下(例1〜例5)の場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けがそれほど強化されなかったのに対して、HLB値が8.0の乳化剤(例6)やHLB値が15.5の乳化剤(例7)を使用した場合では、ねぎによる風味付けが顕著に強化された。そして、使用した乳化剤のHLB値が8.0(例6)の場合では、香ばしい風味が特に強くなり、HLB値が15.5(例7)の場合では、生ねぎの風味が特に強くなった。なお、HLB値が15.5の乳化剤(例7)は若干油に溶けにくかった。
【0057】
[試験例2](乳化剤の添加量の影響)
風味油に使用する乳化剤の添加量の影響を調べた。
【0058】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0059】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0060】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0061】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤0.5g、1.5g、又は2.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃になるまで加熱を行った。150℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0062】
<スープでの評価>
スープの素(商品名「中華あじ」、味の素株式会社)小さじ3杯を沸騰湯600gに加え、混合し、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.5gを添加し、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0063】
結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
その結果、油脂及び風味付与材100質量部に対し、HLB値が8.0の乳化剤を0.1質量部(例8)、0.3質量部(例9)、又は0.5質量部(例10)の添加量で使用した場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。
【0066】
[試験例3](温度条件の影響)
風味油を調製する際の温度条件の影響を調べた。
【0067】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0068】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0069】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0070】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が150℃又は170℃になるまで加熱を行った。150℃又は170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0071】
<スープでの評価>
スープの素(商品名「丸鶏がらスープ」、味の素株式会社)小さじ3杯を沸騰湯600gに加え、混合し、スープを得た。このスープをプラスチック容器に20mL分注し、上記に調製した風味油0.5gを添加し、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0072】
結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
その結果、HLB値が8.0の乳化剤を150℃(例11)又は170℃(例12)の温度条件で使用した場合には、乳化剤を添加しない、それぞれの対照1、2に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。
【0075】
[試験例4](乳化剤の影響 その2)
風味油に使用する乳化剤の影響を調べた。
【0076】
<乳化剤>
表4に示す乳化剤を使用した。
【0077】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0078】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0079】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋にキャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が170℃になるまで加熱を行った。170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0080】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0081】
結果を表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
その結果、試験例1の結果と同様の傾向がみられた。すなわち、使用した乳化剤のHLB値が5.0より低い(例13、例14)場合には、乳化剤を添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けがそれほど強化されなかったのに対して、HLB値が5.5(例15)、HLB値が7.0(例16、例17)、HLB値が7.4(例18)、HLB値が8.0(例19、例20)、HLB値が11.0(例21)、又はHLB値が16.0(例22)の乳化剤を使用した場合では、ねぎによる風味付けが顕著に強化された。そして、HLB値が中程度(例えば、5.5〜8.0)では香ばしい風味が強くなり、HLB値が高度(例えば、11.0以上)では生ねぎの風味が強くなる傾向がみられた。さらに、トリオレイン酸ペンタグリセリン(例16)では、香ばしいねぎの風味、甘味、コク味が最も強く、かつ風味の持続性も良好で、その結果、総合的なねぎの風味が最も強くなった。なお、HLB値が16.0(例22)の乳化剤は油に溶けにくかった。
【0084】
[試験例5](ポリジメチルシロキサンの影響)
風味油に使用するポリジメチルシロキサンの影響を調べた。
【0085】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0086】
<ポリジメチルシロキサン>
ポリジメチルシロキサン(粘度:861mPa・s、信越化学工業株式会社)を使用した。
【0087】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0088】
<風味付与材>
長ねぎ及び玉ねぎを使用した。長ねぎは、包丁を使用して5mm幅にカットした。玉ねぎは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0089】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、キャノーラ油350gと乳化剤1.5g、又は更にポリジメチルシロキサンを対油3ppmで添加して張り込み、それぞれを加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、長ねぎ60g、玉ねぎ90gの順で投入した。原料をすべて投入後、油温が170℃になるまで加熱を行った。170℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない風味油を同様に調製した。
【0090】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の風味評価を行なった。
【0091】
結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
その結果、乳化剤を添加した例23や、乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例24では、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない対照に比べ、ねぎによる風味付けが強化された。特に、乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例24では、乳化剤のみを添加した例23に比べて、甘味やねぎのコク味が更に強くなり、総合的なねぎの風味が大変強くなった。
【0094】
[試験例6](ガーリック風味油 その1)
風味油に使用する風味付与材として、ねぎに代えてガーリックを使用して乳化剤の影響を調べた。
【0095】
<乳化剤>
トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB値7.0)(商品名「A−173E」、太陽化学株式会社)を使用した。
【0096】
<油脂>
キャノーラ油(商品名「さらさらキャノーラ油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0097】
<風味付与材>
生のガーリックを使用した。ガーリックは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0098】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、キャノーラ油350gと乳化剤1.5gを張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、ガーリック150gを投入した。原料をすべて投入後、油温が140℃になるまで加熱を行った。140℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤を添加しない風味油を同様に調製した。
【0099】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例1と同様の方法でガーリックの風味評価を行なった。
【0100】
結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
その結果、HLB値が7.0の乳化剤(例25)を使用した場合、乳化剤を添加しない対照に比べ、ガーリックによる風味付けが強化された。そして、生ガーリックの風味と香ばしいガーリックの風味に加え、甘味、コク味も強く、かつ風味の持続感があり、大変優れた品質であった。
【0103】
[試験例7](ガーリック風味油 その2)
風味油に使用する油脂として、キャノーラ油に代えてコーン油を使用して乳化剤の影響を調べた。
【0104】
<乳化剤>
ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB値8.0)(商品名「O−50D」、三菱化学フーズ株式会社)を使用した。
【0105】
<ポリジメチルシロキサン>
ポリジメチルシロキサン(粘度:861mPa・s、信越化学工業株式会社)を使用した。
【0106】
<油脂>
コーン油(商品名「AJINOMOTOコーン油」、株式会社J−オイルミルズ)を使用した。
【0107】
<風味付与材>
生のガーリックを使用した。ガーリックは、包丁を使用して5mm角程度の大きさになるようにカットした。
【0108】
<風味油の調製>
15cm径片手鍋に、コーン油400gと乳化剤1.5g、ポリジメチルシロキサンを対油3ppmで添加して張り込み、加熱器にセットして200rpmで攪拌しつつ加熱した。油温が120℃に達したら、102℃以上を維持するよう、ガーリック150gを投入した。原料をすべて投入後、油温が140℃になるまで加熱を行った。140℃に達温後、加熱を止め、油温を60℃まで低下させ、ろ紙でろ別して風味油を得た。なお、対照として、乳化剤もポリジメチルシロキサンもどちらも添加しない風味油を同様に調製した。
【0109】
<炒飯での評価>
炒飯(商品名「焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯」、株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を電子レンジにて1000Wで45秒間温め、得られた炒飯のうち30gに上記に調製した風味油0.3gを混ぜて、試験例6と同様の風味評価を行なった。
【0110】
結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
その結果、HLB値が8.0の乳化剤に加えて更にポリジメチルシロキサンを添加した例26では、乳化剤及びポリジメチルシロキサンのどちらも添加しない対照に比べ、ガーリックによる風味付けが強化された。そして、生ガーリックの風味と香ばしいガーリックの風味に加え、甘味、コク味も強く、かつ風味の持続感があり、極めて優れた品質であった。