(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【符号の説明】
【0008】
10 基材フィルム
10a 主面
20 硬化膜
30 積層体
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。まず、一側面に係る反応性ポリマーについて説明する。
【0010】
[反応性ポリマー]
反応性ポリマーは、アルコキシシラン基および(メタ)アクリレート基を側鎖に有する。反応性ポリマーがアルコキシシラン基を側鎖に有することにより、優れた密着性が得られることとなる。また、反応性ポリマーが(メタ)アクリレート基を側鎖に有することにより、紫外線での硬化が可能となる。本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する。
【0011】
アルコキシシラン基としては、メトキシシラン基、エトキシシラン基、プロポキシシラン基、ブトキシシラン基等が挙げられる。
【0012】
(メタ)アクリレート基は、アクリレート基であってもよいし、メタクリレート基であってもよい。
【0013】
反応性ポリマーとしては、(メタ)アクリレートポリマーからなる主鎖を有し、および側鎖としての(メタ)アクリレート基は、主鎖に結合したウレタンオリゴマーおよび/またはウレタンポリマーの末端に結合した反応性ポリマーが好ましい。
(メタ)アクリレートポリマーは、分子中に水酸基を2個以上含有する(メタ)アクリルポリマー〔以下、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAともいう〕である。
ウレタンオリゴマーは、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリレート基を持ったアクリルウレタンオリゴマー〔以下、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBともいう〕である。また、ウレタンポリマーは、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリレート基を持ったアクリルウレタンポリマー〔以下、(メタ)アクリルウレタンポリマーCともいう〕である。
反応性ポリマーは、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAと、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの単独または(メタ)アクリルウレタンポリマーCの単独もしくは(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBと(メタ)アクリルウレタンポリマーCの両方との付加反応物と、イソシアネート基含有アルコキシシランDとの付加反応物である反応性ポリマー(以下、反応性ポリマーEともいう)である。
【0014】
[水酸基含有(メタ)アクリルポリマーA]
水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAは分子中に水酸基を2個以上含有する(メタ)アクリルポリマーである。重量平均分子量Mwについては特に限定されないが、3,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜160,000であることがより好ましく、30,000〜120,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量Mwが3,000以下の場合、反応性ポリマーEの硬度が高くなり柔軟性が十分発現できないおそれがある。また重量平均分子量Mwが200,000以上の場合、反応性ポリマーEの紫外線硬化時の反応性が著しく低下するため、結果的に耐光性が低下するおそれがある。本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する。
【0015】
水酸基含有(メタ)アクリル系ポリマーAはガラス転移点(Tg)が好ましくは0〜70℃、より好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは20〜50℃である。水酸基含有(メタ)アクリル系ポリマーAのガラス転移点(Tg)が上記範囲内である場合には、十分な硬度と屈曲性が得られるが、ガラス転移点(Tg)が0℃以下の場合は、著しい硬度の低下を生じるおそれがある。またガラス転移点(Tg)が70℃以上の場合は逆に硬度が高くなり屈曲性が低下するおそれがある。本発明では、ガラス転移点(Tg)は示差走査熱量計を用いて測定した値である。
【0016】
[(メタ)アクリルウレタンオリゴマーB]
(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBは、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリレート基を持ったアクリルウレタンオリゴマーであり、ジイソシアネートと1つの水酸基を持った単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートもしくはこれらを反応させることにより得られるアクリルウレタンオリゴマーである。組成上、特に制限はない。分子量は3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。分子量が3,000以上の場合、反応性ポリマーEの紫外線硬化性が低下する傾向がある。
【0017】
[(メタ)アクリルウレタンポリマーC]
(メタ)アクリルウレタンポリマーCは、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリレート基を持ったアクリルウレタンポリマーであり、過剰のジイソシアネートとジオールを反応させた両末端イソシアネートのプレポリマーの片末端に1つの水酸基を持った単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートもしくはこれらを併用し反応させたアクリルウレタンポリマーである。組成上、特に制限はない。重量平均分子量Mwは1,000〜50,000が好ましく、3,000〜20,000がより好ましく、5,000〜10,000がさらに好ましい。重量平均分子量Mwが1,000以下の場合、反応性ポリマーEの柔軟性がまったく得られないか、もしくは十分でないことがある。重量平均分子量Mwが50,000以上の場合、反応性ポリマーEを得るために水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAへの付加反応時の反応率が著しく低下し、ワニスの分離や白濁が生じ、貯蔵安定性が著しく低下する場合がある。
【0018】
[反応性ポリマーE]
反応性ポリマーEは、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAに、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの単独または(メタ)アクリルウレタンポリマーCの単独、もしくは(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBと(メタ)アクリルウレタンポリマーCの両方を付加反応させた後、イソシアネート基含有アルコキシシランDを付加反応させて得られる。
【0019】
反応性ポリマーEは、アルコキシシラン基および(メタ)アクリレート基を側鎖に有する。反応性ポリマーEがアルコキシシラン基を側鎖に有することにより、優れた密着性が得られることとなる。また、反応性ポリマーEが(メタ)アクリレート基を側鎖に有することにより、紫外線での硬化が可能となる。
【0020】
反応性ポリマーは、式(1):
【化1】
〔式中、n1及びn2はそれぞれ1〜10の整数を表す。R
1、R
2、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素原子数2〜6のアルキレン基を表す。R
3はポリウレタン鎖を表す。R
4、R
5及びR
11はそれぞれ独立にメチル基または水素原子を表す。R
8及びR
9はそれぞれ独立にメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基を表す。R
10はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基を表す。
R
1、R
2、R
6及びR
7としての炭素原子数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基が挙げられる。〕
で示される構造単位を持つ。
【0021】
R
3としてのポリウレタン鎖は、ウレタンポリマーおよび/またはウレタンオリゴマーに由来する二価の基であってよい。ウレタンポリマーおよび/またはウレタンオリゴマーに由来する二価の基とは、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBおよび/または(メタ)アクリルウレタンポリマーCから水素原子を2個除いた基である。ウレタンポリマーは、重量平均分子量Mwが1,000〜50,000であるものが好ましい。ウレタンオリゴマーは、重量平均分子量Mwが3,000以下であるものが好ましい。
【0022】
反応性ポリマーEは、従来公知の方法により製造することができる。反応性ポリマーEは、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの水酸基に、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの単独、または(メタ)アクリルウレタンポリマーCの単独、もしくは(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBと(メタ)アクリルウレタンポリマーCの両方を付加させた後、イソシアネート基含有アルコキシシランDを付加させて得ることができる。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAは、従来公知の溶液重合、塊状重合、懸濁重合等の方法で得ることができる。例えば、溶液重合の場合、窒素気流下、反応温度80〜150℃において有機溶剤中に(メタ)アクリレートモノマーと重合開始剤を滴下し重合反応させることにより得られる。(メタ)アクリレートの種類に特に制約はないが、次工程での(メタ)アクリルウレタンオリゴマーB、(メタ)アクリルウレタンポリマーC及びイソシアネート含有アルコキシシランDとの付加反応のため、少なくとも1種類以上の水酸基含有(メタ)アクリレート類を含む必要がある。
【0024】
水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類と、(メタ)アクリル酸アルキル若しくはシクロアルキルのエステル及び/又はその他のビニル系モノマーとを重合することにより得ることができる。
【0025】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは単独もしくは2種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキル若しくはシクロアルキルのエステル及び/又はその他のビニル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらは単独もしくは併用して使用してもよい。本明細書では、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の双方を含む総称を意味する。
【0027】
重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられ、これらを単独もしくは併用して使用してもよい。
【0028】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸nブチル、酢酸プロピル等のエステル類等があり、これらは単独もしくは併用して使用してもよい。水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの溶解性が良好な点からケトン類が好ましい。
【0029】
(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBは、窒素と酸素の混合気体の気流下、反応温度40℃〜120℃の範囲でジイソシアネートの片末端に水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの水酸基を反応させることにより得られる。これらは有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、上述の水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの製造に関する説明において記載した有機溶剤を用いることができ、これらは単独もしくは併用して使用してもよい。また、例えばジオクチルスズといった有機錫化合物等の重合触媒やメトキノンのような付加反応時の二重結合反応禁止剤を用いてもよい。
【0030】
(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの製造に用いるジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられ、これらは単独もしくは併用して使用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBとしては、例えばイソホロンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物、トルエンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物、メチレンビスフェニルジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物、キシレンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物等が挙げられ、これらは単独もしくは併用して使用してもよい。アクリルウレタンオリゴマーの重量平均分子量Mwは、3,000以下が好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。
【0031】
(メタ)アクリルウレタンポリマーCは、窒素と酸素の混合気体の気流下、反応温度は40℃〜120℃の範囲で過剰のジイソシアネートとジオールとを反応させることで両末端イソシアネート基のウレタンポリマーを得た後、ウレタンポリマーの片末端のイソシアネートに水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの水酸基を反応させることにより得られる。またこれらは有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、上述の水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの製造に関する説明において記載した有機溶剤を用いることができる。また、例えばジオクチルスズといった有機錫化合物等の重合触媒やメトキノンのような付加反応時の二重結合反応禁止剤を用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリルウレタンポリマーCのジイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。これらは単独もしくは併用して使用してもよい。
【0033】
(メタ)アクリルウレタンポリマーCのジオールとしては、例えばポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。これらは単独もしくは併用して使用してもよい。
【0034】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBと同様のもの、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用できる。
【0035】
(メタ)アクリルウレタンポリマーCの重量平均分子量Mwは、1,000〜50,000が好ましく、3,000〜20,000がより好ましく、5,000〜10,000がさらに好ましい。
【0036】
反応性ポリマーEは、窒素と酸素の混合気体の気流下、50℃〜120℃の範囲の反応温度にて、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの水酸基に、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの単独または(メタ)アクリルウレタンポリマーCの単独、もしくは(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBと(メタ)アクリルウレタンオリゴマーポリマーの両方の片末端イソシアネート基を反応させた後、イソシアネート含有アルコキシシランDのイソシアネート基を水酸基含有(メタ)アクリルポリマーA中に残存する水酸基と反応させることにより得ることができる。上記反応においてメトキノンのような付加反応時の二重結合反応禁止剤を用いてもよい
【0037】
イソシアネート基含有アルコキシシランDのアルコキシシラン基としては、メトキシシラン基、エトキシシラン基、プロポキシシラン基、ブトキシシラン基等が挙げられる。これらの中でも、光硬化性樹脂組成物が密着性及び貯蔵安定性に優れることとなり、及び適度な反応性が得られることから、エトキシシラン基が好ましい。イソシアネート基含有アルコキシシランDとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの化合物は単独又は組合せて使用することができる。
【0038】
反応性ポリマーE中のアルコキシシラン基の含有量は、反応性ポリマーを基準に好ましくは0質量%を超え40質量%未満、より好ましくは1質量%〜35質量%、さらに好ましくは5質量%〜30質量%含有する。反応性ポリマー中のアルコキシシラン基の含有量が上記範囲内であると、反応性ポリマーを含む光硬化性組成物が十分な密着性を有することとなる。
【0039】
反応性ポリマーEの二重結合当量は、特に限定されないが、好ましくは800〜125,000、より好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは1,500〜70,000である。反応性ポリマーの二重結合当量が上記範囲内である場合には、柔軟性と耐光性が十分なものとなる。二重結合当量が800以下の場合、硬化塗膜の硬度が高くなりすぎ、十分な柔軟性が得られず、二重結合当量が125,000以上では紫外線硬化性が低下し、結果として耐光性が低下する懸念が生じることとなる。
【0040】
反応性ポリマーEの重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、10,000〜250,000であることが好ましく、15,000〜200,000であることがより好ましく、20,000〜150,000であることがさらに好ましい。反応性ポリマーの重量平均分子量が上記範囲内である場合には、十分な紫外線硬化性、柔軟性、密着性が得られる。重量平均分子量が10,000以下の場合、柔軟性が低下し250,000以上の場合は紫外線硬化性や貯蔵安定性が低下することとなる。
【0041】
一実施形態に係る反応性ポリマーは、アルコキシシラン基と紫外線硬化性の(メタ)アクリレート基を側鎖に有することから、光硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる。
【0042】
[光硬化性樹脂組成物]
光硬化性樹脂組成物は、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーと、反応性ポリマーと、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する。
【0043】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、2以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2つの(メタ)アクリレート基を有する二官能(メタ)アクリレート、3つの(メタ)アクリレート基を有する三官能(メタ)アクリレート、4つの(メタ)アクリレート基を有する四官能(メタ)アクリレートおよびこれらの2種以上の混合物、例えば三官能(メタ)アクリレートと四官能(メタ)アクリレートの混合物等であってよい。例えば光硬化性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはその混合物の含有量は、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び反応性ポリマーの合計100質量部に対して、40〜95質量部、および50〜90質量部等であってよい。
【0044】
二官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、及びエポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
反応性ポリマーとしては、上述の本発明の反応性ポリマーを用いる。例えば光硬化性樹脂組成物中の反応性ポリマーの含有量は、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び反応性ポリマーの合計100質量部に対して、5〜60質量部、または10〜50質量部であってもよい。反応性ポリマーの含有量が上記範囲内である場合には、積層体の表面の硬度と密着性が十分なものとなる傾向がある。反応性ポリマー中のアルコキシシラン基の含有量は、上述の本発明の反応性ポリマー中のアルコキシシラン基の含有量と同様であってよい。
【0046】
多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび反応性ポリマーの合計の含有量は、光硬化性樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは4.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上、特に好ましくは36質量%以上であり、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0047】
光重合開始剤としては、紫外線吸収剤の存在下において光照射により光重合開始能を発現できる光重合開始剤であってよい。そのような光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−tert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(モルフォリニル)フェニル]−2−(フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、およびベンジル等が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤は、1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば10μm以上のように厚い硬化膜を形成する場合、光重合開始剤を2種以上用いると硬化性が向上する傾向にある。硬化性が向上すると、光硬化性樹脂組成物をより容易にかつ十分に硬化することができる。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、例えば多官能(メタ)アクリレートモノマー及び反応性ポリマーの合計100質量部に対して1〜15質量部、または3〜10質量部であってよい。光重合開始剤の含有量が多いと、光重合開始に使用されなかった光重合開始剤が残存し、硬化膜の可視光線透過率が低下するなどの弊害が生ずるおそれがある。一方、光重合開始剤の含有量が少ないと、光重合開始能が十分に発現されず、紫外線硬化型樹脂の十分な硬化が得られ難くなる傾向がある。
【0050】
紫外線吸収剤としては、公知のものを用いてよく、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るために、ベンゾトリアゾール系またはヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を用いてもよい。紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用してもよい。
【0051】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、および2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、および2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5,5’−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0053】
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率および紫外線吸収剤の吸光度に応じて適宜調節することができるが、例えば多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび反応性ポリマーの合計100質量部に対して1〜10質量部、または3〜8質量部であってよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、光硬化性樹脂組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、得られる硬化膜の可視光線透過率が低下するおそれがある。一方、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、硬化膜が十分な紫外線吸収性を発揮することができないおそれがある。
【0054】
光硬化性樹脂組成物は、無機化合物を更に含有することができる。無機化合物としては、無機粒子、および柱状、板状および層状無機化合物として公知のものが使用できるが、溶媒に分散できるように有機化処理が施してあるものが好ましい。
【0055】
無機化合物としては、ガラスフリット、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化スズ粒子および粘土鉱物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
粘土鉱物は、極薄の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物であってよい。特に水への膨潤性を有する粘土化合物を好ましく用いることができる。より具体的には、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収・膨潤する性質を有する粘土化合物であり、一般には、Si
4+がO
2−に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al
3+、Mg
2+、Fe
2+、およびFe
3+などが、O
2−およびOH
−に対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよい。
【0057】
粘土鉱物の代表的な化合物としては、フィロケイ酸塩鉱物などの含水ケイ酸塩、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、およびナクライトなどのカオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライトおよびクリソタイルなどのアンチゴライト族粘土鉱物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、およびスチブンサイトなどのスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライトなどのバーミキュライト族粘土鉱物、白雲母および金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、およびテニオライトなど雲母またはマイカ族粘土鉱物などが挙げられ、これらの粘土鉱物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粘土鉱物の中でも、モンモリロナイトなどのスメクタイト族粘土鉱物が特に好ましい。
【0058】
アルミナ粒子としては、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、ダイアスポア、無定形などの水酸化アルミニウム(アルミナ水和物)、およびγ、η、δ、ρ、κ、θ、χ、α形のアルミナ結晶等が挙げられる。有機溶媒中で、金属アルミニウムまたは加水分解性アルミニウム化合物を、特定量の水により加水分解してアルミナスラリーとし、続いて特定量の有機スルホン酸の存在下に解膠し、所定のアルミナ濃度になるまで濃縮したものであってもよい。これらのアルミナ粒子は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
無機化合物は、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび反応性ポリマーの合計100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部の量で用いることができる。無機化合物の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物の紫外線硬化性が良好であり、得られる硬化膜の可視光線透過率の低下が起こり難くなる傾向がある。
【0060】
無機化合物の粒子径は、0.001〜0.1μmであるのが好ましく、0.005〜0.05μmであるのがより好ましい。粒子径が上記範囲内である場合には、工業的な生産が容易であり、得られる硬化膜の透明性の低下が起こり難くなる傾向がある。無機化合物の粒子径は、JIS 8828に従って動的光散乱法により測定した。
【0061】
光硬化性樹脂組成物は、帯電防止剤を更に含有してもよい。かかる帯電防止剤は、金属酸化物および/または金属塩であってもよい。金属酸化物としては、例えばITO(インジウム−錫複合酸化物)、ATO(アンチモン−錫複合酸化物)、酸化錫、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。金属塩としては、アンチモン酸亜鉛等が挙げられる。
【0062】
帯電防止剤の含有量は、求める帯電防止性能に応じて適宜調節することができるが、例えば多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび反応性ポリマーの合計100質量部に対して1〜100質量部である。帯電防止剤の含有量が上記範囲内であると、光硬化性樹脂組成物の紫外線硬化性が十分に得られ、得られる硬化膜の可視光線透過率の低下が起こり難くなる傾向がある。また、帯電防止剤の含有量が多いと、得られる硬化膜の耐擦傷性が低下したり、成膜性が低下したりする傾向がある。帯電防止剤の含有量が少ないと、十分な帯電防止効果が得られ難い傾向がある。
【0063】
帯電防止剤の粒子径は0.001〜0.1μmであってよい。粒子径が極めて小さい帯電防止剤は、工業的な生産が難しい。粒子径が過度に大きい帯電防止剤は、得られる硬化膜の透明性を低下させる傾向がある。帯電防止剤の粒子径は、JIS 8828に従って動的光散乱法により測定した。
【0064】
光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、レベリング剤等の添加剤を含んでよい。レベリング剤を含む場合には、硬化膜の平滑性および耐擦傷性を高めることができる。
【0065】
光硬化性樹脂組成物は、後述するように基材フィルムに塗布するために、さらに溶剤を含有していてもよい。かかる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)等のアルコール溶剤;2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコキシアルコール溶剤;ジアセトンアルコール等のケトール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤等が挙げられる。
【0066】
溶剤の含有量は、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび反応性ポリマーの合計100質量部に対して、例えば20〜10000質量部である。
【0067】
光硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートモノマーと、反応性ポリマーと、光重合開始剤と、紫外線吸収剤と、必要に応じて溶剤、無機化合物、帯電防止剤、およびその他の添加剤とを混合して得られる。これらの混合順等は特に限定されない。
【0068】
[積層体]
図1は、積層体の一実施形態を示す模式的断面図である。
図1に示す積層体30は、基材フィルム10と、基材フィルム10の一方の主面10a上に積層された硬化膜20とを有する。硬化膜20は、上述の実施形態に係る光硬化性樹脂組成物から形成される。すなわち、硬化膜は、光硬化性樹脂組成物の硬化物である。一実施形態に係る積層体は、密着性に優れる。
【0069】
一実施形態に係る積層体は、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも片面に、上述の本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化物である硬化膜とを有するものであってよい。
【0070】
基材フィルムは、透明性を有していてもよい。基材フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、またはポリイミド(PI)でできたフィルムであってもよい。硬化膜に関する効果が特に顕著に発揮できる点において、基材フィルムはポリイミド(PI)でできたフィルムであってもよい。また、基材フィルムは、無機材料を含んでもよい。基材フィルムが無機材料を含む場合、その含有量は、基材フィルムの質量を基準に、0質量%を超え60重量%以下の範囲、例えば5〜55重量%の範囲、10〜50重量%の範囲であってよい。
無機材料としては、上述の光硬化性組成物に含まれ得る無機化合物について例示したものを用いることができる。
【0071】
積層体の密着性は、JIS K 5600−5−6に準拠して測定することができる。例えば積層体のハードコートの表面に、2mm間隔で10マス×10マスの碁盤目状に傷を入れ、粘着テープ(ニチバン製)を貼り付け、面に対し約60°の方向に引き剥がした後に残っている碁盤目の数をカウントする。
【0072】
また、積層体の耐光性は、QUV試験後に上述の密着性試験を行うことにより評価することができる。QUV試験は、Atlas製UVCON(ランプ:UVB313nm)を使用し、コーティング面に光が照射されるようにセッティングし、24hr照射試験を行う。その後、上述の通り、密着性の評価を行う。
【0073】
一実施形態に係る積層体は、上記密着性評価試験において、引き剥がした後に残っている碁盤目の数が好ましくは90以上、より好ましくは95以上、さらに好ましくは100である。
【0074】
一実施形態に係る積層体は、上記QUV試験後の密着性評価試験において、引き剥がした後に残っている碁盤目の数が好ましくは90以上、より好ましくは95以上、さらに好ましくは100である。
【0075】
積層体の屈曲性は、JIS K 5600−5−1:1999に準拠した屈曲試験において、積層体の断片に生じるヒビ割れの量に基づいて判断することができる。例えば、次の屈曲試験を行えばよい。まず積層体を、縦1cm×幅8cmのサイズに切断して、積層体の短冊状の断片(以下、測定サンプルという)を用意する。次にこの測定サンプルの中央に所望の直径を有するロールを置き、測定サンプルをロールに沿って折り曲げる操作を10回程度行う。その後、測定サンプルの硬化膜に生じたヒビ割れの有無を確認する。
【0076】
上記の屈曲試験において、測定サンプルの硬化膜を内側にして測定サンプルをロールに巻き付ける場合は、積層体を構成する硬化膜には圧縮応力が作用し、基材フィルムには引張応力が作用する。一方、硬化膜を外側にして測定サンプルをロールに巻き付ける場合は、積層体を構成する基材フィルムには圧縮応力が作用し、硬化膜には引張応力が作用する。この2通りの方法でそれぞれ屈曲試験を行い、硬化膜に生じるヒビ割れを確認することで、積層体の屈曲性を評価することができる。
【0077】
測定に使用するロールの直径が小さくなる、すなわち、巻き付け径が小さくなると、試験において測定サンプルにはより大きい応力が作用する。したがって、ロールの直径が小さい場合に、測定サンプルに生じるヒビ割れの発生が抑制されれば、その測定サンプルは屈曲性に優れるといえる。
【0078】
一実施形態に係る積層体は、JIS K 5600−5−1:1999に準拠する屈曲試験において、直径6mmのロール(巻き付け径:3mm)に硬化膜を内側にして巻き付けた場合であっても、外側にして巻き付けた場合であっても、ヒビ割れが生じにくい傾向にある。このようにヒビ割れの発生が抑制された積層体は、硬化膜が応力を吸収することができるため、屈曲性に優れる。
【0079】
一実施形態に係る積層体は、JIS K 5600−5−1:1999に準拠する屈曲試験において、直径2mmのロール(巻き付け径:1mm)に硬化膜を内側にして巻き付けた場合であっても、外側にして巻き付けた場合であっても、ヒビ割れが生じにくい傾向にある。一実施形態に係る積層体は、巻き付け径がより小さく、測定サンプルにより大きい応力が作用する場合であっても、硬化膜が応力を吸収することができるため、優れた屈曲性を発揮することができる。
【0080】
一実施形態に係る積層体は、JIS K 5600−5−4:1999に準拠し、荷重を1kgとして測定される、一実施形態に係る積層体の鉛筆硬度が、2H以上、または3H以上であってよい。鉛筆硬度が2H以上であると、積層体は、ハードコートフィルムとして十分な硬度を示す傾向にある。上記方法により測定される鉛筆硬度は積層体の鉛筆硬度である。硬化膜上に更に別の層が設けられている場合は、その別の層を含む積層体の鉛筆硬度となる。
【0081】
一実施形態に係る積層体は、上述の直径6mmのロールを使用する積層体の屈曲試験において、硬化膜にヒビ割れが生じず、かつ上述の硬化膜の鉛筆硬度が2H以上であってよい。別の実施形態に係る積層体は、上述の直径6mmのロールを使用する積層体の屈曲試験において、硬化膜にヒビ割れが生じず、かつ上述の硬化膜の鉛筆硬度が3H以上であってよい。
【0082】
一実施形態に係る光硬化性樹脂組成物から形成された硬化膜を有する積層体は、光による基材フィルムの変色(黄変)が抑制されるため、耐光性を示す。耐光性は、光を照射する前後における積層体のYI値の変化量(ΔYI)で判断することができる。積層体は、ΔYIの数値が小さいほど、耐光性に優れる。ここで、YI値は、JIS Z 8701:1982に規定されている計算方法により算出される三刺激値X,YおよびZと以下の式とにより算出される。
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
【0083】
YI値は、市販の分光光度計を使用して測定することができ、例えば日立製作所製の製品「U−4100」などで測定することができる。
【0084】
例えば基材フィルムが、紫外線吸収剤を含まない樹脂フィルムまたは感光性を有する樹脂フィルムであると、積層体の耐光性が顕著に向上され得る。
【0085】
積層体を構成する硬化膜は、基材フィルムの少なくとも片面側に形成される。硬化膜の厚みは、例えば3μm以上、20μm以下であってもよい。硬化膜の厚みは、5μm以上、10μm以下であってもよい。硬化膜の厚みが上記範囲内であると、基材フィルムと硬化膜を含む積層体が、屈曲性、硬度、および耐光性に特に優れる傾向にある。硬化膜が厚すぎると、鉛筆硬度は向上するものの、屈曲試験において、硬化膜を外側にして巻き付けた場合にヒビ割れが生じ易くなる傾向にある。
【0086】
一実施形態に係る積層体は、屈曲性及び硬度に優れるため、例えば、ハードコートフィルムとして、偏光板などとともに表示装置を構成することができる。積層体は、基材フィルムおよび硬化膜の他に他の層を有していてもよい。例えば、積層体の硬化膜上に、別の機能層を設けてもよい。機能層としては、ハードコート層、および反射防止層または防眩層等の表面処理層が挙げられる。機能層は、接着剤または粘着剤を介して積層体に積層してもよい。接着剤および粘着剤としては、公知のものを適宜選択すればよい。
【0087】
一実施形態に係る積層体は、屈曲性および硬度に優れるため、機能層を更に設けても、十分な屈曲性を示すとともに、高い硬度を有することができる。
【0088】
積層体を構成する硬化膜は、基材フィルムの少なくとも片面側に形成される。硬化膜の厚みは、例えば3μm以上、20μm以下であってもよい。硬化膜の厚みは、5μm以上、10μm以下であってもよい。硬化膜の厚みが上記範囲内であると、基材フィルムと硬化膜を含む積層体が、密着性、屈曲性、硬度、および耐光性に特に優れる傾向にある。硬化膜が厚すぎると、鉛筆硬度は向上するものの、屈曲試験において、硬化膜を外側にして巻き付けた場合にヒビ割れが生じ易くなる傾向にある。
【0089】
一実施形態に係る積層体は、密着性に優れるため、例えばハードコートフィルムとして、偏光板などとともに表示装置を構成することができる。積層体は、基材フィルムおよび硬化膜の他に他の層を有していてもよい。例えば、積層体の硬化膜上に、別の機能層を設けてもよい。機能層としては、トップハードコート層、および反射防止層又は防眩層等の表面処理層が挙げられる。機能層は、接着剤または粘着剤を介して積層体に積層してもよい。接着剤及び粘着剤としては、公知のものを適宜選択すればよい。
【0090】
一実施形態に係る積層体は、更なる機能層について十分な密着性を有することができる。
【0091】
[積層体の製造方法]
次に、一実施形態の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化膜を有する積層体を製造する方法について説明する。
【0092】
硬化膜を有する積層体の製造方法は、例えば次の工程(1)及び(2)を含む。
(1)上述の本発明の光硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布することにより組成物層を得る工程(光硬化性樹脂組成物を含む組成物層を基材フィルムの片面側に形成させる工程)、および
(2)組成物層を露光することにより該組成物層を硬化させる工程(組成物層に露光して該組成物層を硬化させることで、硬化膜を形成させる工程)。
【0093】
工程(1)
基材フィルムは、透明性を有していてもよい。基材フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、またはポリイミド(PI)のフィルムであってもよい。硬化膜に関する効果が特に顕著に発揮できる点において、基材フィルムはポリイミド(PI)フィルムであってもよい。また、基材フィルムは、材料を含んでもよい。基材フィルムが無機材料を含む場合、その含有量は、基材フィルムを基準に0重量%を超え60重量%以下の範囲、例えば5〜55重量%の範囲、10〜50重量%の範囲であってよい。
無機材料としては、上述の積層体の説明における基材フィルムに含まれ得る無機化合物について例示したものを用いることができる。
【0094】
基材フィルムの厚さは、30〜300μm、または50〜200μmであってもよい。基材フィルムが薄いと、硬化膜と基材フィルムとの積層体の強度が低下する傾向がある。基材フィルムが厚いと、基材フィルムの透明性が低下したり、屈曲性が低下したりすることがある。基材フィルムは、各種の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤として、例えば安定剤、可塑剤、滑剤、および難燃剤が挙げられる。
【0095】
基材フィルムは、その表面に設けられた接着層を有していてもよい。接着層は、硬化膜を基材フィルムに密着させるためのもので、常法に従って形成される。接着層を形成する接着剤としては、基材フィルム及び硬化膜の材質に応じて適宜選択されるが、例えばアクリル系接着剤(粘着剤)、シリコーン系接着剤(粘着剤)、ポリエステル系接着剤等が用いることができる。接着層が薄いと十分な接着力が得られ難く、接着層が厚くなり過ぎると硬化膜と基材フィルムとの積層体が硬くなりすぎてしまいフィルムとしての柔軟性が低下する傾向がある。そのため、接着剤の厚さは0.1〜1μmの範囲であってもよい。
【0096】
光硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、およびダイコート法等が挙げられる。ロールコート法等、連続的に塗布することができる方法は、生産性および生産コストの点で特に有利である。
【0097】
組成物層(塗付された光硬化性樹脂組成物)が溶剤を含む場合、組成物層から溶剤を除去する工程(1’)が設けられてもよい。溶剤の除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段、減圧装置を用いた減圧手段、またはこれらの組み合わせにより、該組成物層から溶剤を蒸発させることにより行われる。加熱手段及び減圧手段の条件は、組成物層に含まれる溶剤の種類等に応じて選択できる。例えばホットプレートの場合、ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲に設定することができる。減圧手段は、適当な減圧機であってもよく、減圧機の中に、組成物層を有する基材フィルムを封入することができる。減圧手段による形成される雰囲気の圧力(減圧機の内部圧力)は、例えば1〜1.0×10
5Pa程度であってもよい。組成物層から溶剤を除去することにより、溶媒を実質的に含まない組成物層を該基材フィルム上に形成することができる。
【0098】
工程(2)
露光は、通常、紫外線の照射によって行われる。この際、紫外線は可視光線領域の光線を含む。光重合開始剤が、光照射によって光重合開始能を発現し、工程(1)で得られた組成物層を硬化させる。紫外線は200〜450nmの波長を有していてもよい。光重合開始剤は光の波長220〜450nmに吸収域を有していてもよい。一般に紫外線の波長は380nmよりも短く、可視光線の波長は380〜780nmである。
【0099】
紫外線の波長が200nm未満の場合、紫外線が紫外線吸収剤に吸収されやすくなり、光重合開始剤の光重合開始能が十分に発現されないために組成物層の硬化性が低下する傾向がある。紫外線の波長が450nmを超える場合、紫外線としての機能が低下する傾向がある。光重合開始剤の吸収域の光の波長が220nm未満の場合、紫外線吸収剤に紫外線が吸収されやすくなってその光重合開始能が低下する傾向がある。吸収域の光の波長が450nmを超える光重合開始剤はその種類が少なく、またそのような光重合開始剤は紫外線による光重合開始能の発現を不足させるおそれがある。
【0100】
その他の工程
硬化膜を有する積層体の製造方法は、上記工程(1)および(2)の他に、任意の工程、例えば熱硬化やアニール工程等を更に含むことができる。
【0101】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0102】
以下の各実施例および比較例において、各物性は次のように測定した。
【0103】
[密着性]
JIS K 5600−5−6に準拠して測定した。
2mm間隔で10マス×10マスの碁盤目状に傷を入れ、粘着テープ(ニチバン製)を貼り付け、面に対し約60°の方向に引き剥がした後の残っている碁盤目の数をカウントした。
【0104】
[耐光性]
上記の密着性試験をQUV試験後に行った。QUV試験は、Atlas製UVCON(ランプ:UVB313nm)を使用し、コーティング面に光が照射されるようにセッティングし、24hr照射試験を行った。
【0105】
[鉛筆硬度]
JIS K 5600−5−4:1999に準拠して硬化膜の表面の鉛筆硬度を測定した。荷重は1kgとした。
【0106】
[屈曲性]
JIS K 5600−5−1:1999に準拠して屈曲試験をした。硬化膜と基材フィルムとの積層体を1cm×8cmに切断して、測定サンプルを得た。測定サンプルを、硬化膜が内側または外側になる向きで、直径6mmまたは2mmのロールそれぞれに巻き付けた。
硬化膜におけるヒビ割れの発生の有無に基づいて、屈曲性を次のように判定した。
(屈曲性の判定)
◎ :ヒビ割れが生じなかった
○ :ヒビ割れが1〜4本生じた
△ :ヒビ割れが5本以上生じた
× :測定サンプルが材料破壊した
【0107】
[重量平均分子量]
「重量平均分子量」は、gel permeation chromatography(GPC)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。測定条件は、SHODEX GPC−104、カラム KF−602、移動相 THF、流速0.5ml/min、温度40℃で行った。値は、ポリスチレン標準物質からの換算値を用いた。
【0108】
[ガラス転移点]
合成したポリ(メタ)アクリレート溶液を乾燥した試料、約10mgをアルミニウムパンに量り採り、DSC装置(MACサイエンス社製 DSC3100)にセットして液体窒素で−100℃まで冷却した後、10℃/minで昇温して得られたDSCチャートからガラス転移温度を求めた。
【0109】
[二重結合当量]
二重結合当量は以下の式に従って求めた。
二重結合当量(g/mol)=全モノマーの仕込み量(g)/二重結合に用いられたモノマーの単体量(mol)
【0110】
実施例1
「水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAの合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン300gを仕込み、窒素気流下で110℃まで昇温し、メチルメタクリレート245g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート55g、ポリプロピレングリコールモノアクリレート100g、メチルイソブチルケトン50g、アゾビスイソブチロニトリル3gの混合溶液を滴下ロートに仕込み、2時間かけて等速に滴下し、さらに同温度で1時間エージングした。次いでアゾビスイソブチロニトリル2gとメチルイソブチルケトン100gを滴下ロートに仕込み2時間かけて等速に滴下した。その後、3時間エージングしメチルイソブチルケトン150gで希釈し水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAを合成した。得られたポリマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で71000であり、加熱残分は39.9%であった。示差走査熱量計を用いて測定したガラス転移点(Tg)は約30℃であった。
【0111】
「(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBの合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン500g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)318g、メトキノン0.5g、ジオクチルスズ0.05gを仕込み窒素と酸素の混合気流下で80℃まで昇温した。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート182gを滴下ロートに仕込み3時間かけて等速に滴下した。その後80℃で5時間エージングしNCO%が6〜8%の時点で反応終了。片末端がイソシアネート基、もう一方の片末端がアクリレート基の(メタ)アクリルウレタンオリゴマーBを合成した。得られたオリゴマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で約400であり、加熱残分は50.1%であった。
【0112】
「(メタ)アクリルウレタンポリマーCの合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン300g三菱化学株式会社製PTMG650を265gとヘキサメチレンジイソアネート190g、ジオクチルスズ0.05gを仕込み窒素と酸素の混合気流下で80℃まで昇温しそのまま5時間反応させ、両末端イソシアネート基含有ウレタンオリゴマーを得た。次いでメトキノン0.5gを投入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート45gを滴下ロートに仕込み1時間かけて等速に滴下した。滴下後さらに3時間反応させた後、メチルイソブチルケトン200gにて希釈し片末端がイソシアネート基、もう一方の片末端がアクリル基の(メタ)アクリルウレタンポリマーCを合成した。得られたポリマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で約7300であり加熱残分は50.2%であった。
【0113】
「反応性ポリマーEの合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーA700g、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーB140g、(メタ)アクリルウレタンポリマーC100g、メトキノン0.5g、ジオクチルスズ0.05gを仕込み窒素と酸素の混合気流下で90℃まで昇温し8時間反応させた後、イソシアネート基含有アルコキシシランD(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を50g加えさらに3時間反応させた。FT−IRにてイソシアネート基のピークが消失したことを確認しメチルイソブチルケトン135gで希釈し反応を終了した。反応性ポリマーEを合成した。得られたポリマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で86000であり、加熱残分が40.2%であった。二重結合当量は1812であった。
【0114】
[光硬化性樹脂組成物の製造]
4官能アクリレート(新中村化学(株)製、A−TMMT)30質量部、3官能アクリレート(新中村化学(株)製、A−TMPT)30質量部、反応性ポリマーE40質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、TINUVIN(登録商標)479)3質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、IRGACURE(登録商標)184)5質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、IRGACURE(登録商標)819)3質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン(株)製、BYK−350)0.6質量部、メチルエチルケトン30質量部を撹拌混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0115】
[積層体の製造]
透明基材フィルムとしては、公知文献(例えば米国特許第8,207,256号)に準拠して、厚さ80μmのポリイミドとシリカ粒子とを含有する樹脂基材(シリカ粒子含有量60質量%)を作製した。その透明ポリイミドフィルムを用い、前記の光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターで塗工した。その後、60℃のオーブンで5分間乾燥を行い、500mj/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させることで、硬化膜と基材との積層体を得た。得られた積層体のQUV試験前後の密着性を上記のとおり測定した。
結果を表1に示す。また、得られた積層体は、鉛筆硬度が2Hであり、直径6mm及び2mmについての屈曲性がそれぞれ硬化膜の内側及び外側において◎であった。
【0116】
実施例2〜14および比較例1
実施例1において、イソシアネート基含有アルコキシシランDを表1〜3に記載のエトキシシラン基含有量となるように配合したこと、および水酸化アルミニウムやスメクタイトを表3に記載の含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化膜と基材との積層体を得た。得られた光硬化性膜と基材との密着性を測定した結果を表1〜3に示す。また、実施例2〜8及び比較例1において得られた積層体は、鉛筆硬度が2Hであり、直径6mm及び2mmについての屈曲性がそれぞれ硬化膜の内側及び外側において◎であった。実施例9〜14において得られた積層体は、鉛筆硬度が3Hであり、直径6mm及び2mmについての屈曲性がそれぞれ硬化膜の内側及び外側において◎であった。
【0117】
比較例2
「水酸基含有(メタ)アクリルポリマーA2の合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン300gを仕込み、窒素気流下で110℃まで昇温し、メチルメタクリレート260g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート140g、メチルイソブチルケトン50g、アゾビスイソブチロニトリル3gの混合溶液を滴下ロートに仕込み、2時間かけて等速に滴下し、さらに同温度で1時間エージングした。次いでアゾビスイソブチロニトリル2gとメチルイソブチルケトン100gを滴下ロートに仕込み2時間かけて等速に滴下した。その後、3時間エージングしメチルイソブチルケトン150gで希釈し水酸基含有(メタ)アクリルポリマーAを合成した。得られたポリマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で86,000であり、加熱残分は40.1%であった。示差走査熱量計を用いて測定したガラス転移点(Tg)は約70℃であった。
【0118】
「反応性ポリマーE2の合成」
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーA2を700g、(メタ)アクリルウレタンオリゴマーB140g、(メタ)アクリルウレタンポリマーC100g、メトキノン0.5g、ジオクチルスズ0.05gを仕込み窒素と酸素の混合気流下で90℃まで昇温し8時間反応させた後、イソシアネート基含有アルコキシシランDを100g加えさらに3時間反応させた。FT−IRにてイソシアネート基のピークが消失したことを確認しメチルイソブチルケトン210gで希釈し反応を終了した。比較例2の反応性ポリマーE2を合成した。得られたポリマーの分子量を測定した結果、重量平均分子量で195,000であり、加熱残分が40.6%であった。二重結合当量は1933であった。
【0119】
[光硬化性樹脂組成物及び積層体の製造]
実施例1の光硬化性樹脂組成物の調製に関し、反応性ポリマーEを用いたことに代えて反応性ポリマーE2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物及び積層体を製造した。密着性を測定した結果を表1に示す。また、得られた積層体は、鉛筆硬度が2Hであり、直径6mm及び2mmについての屈曲性がそれぞれ硬化膜の内側及び外側において◎であった。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】