【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づいて更に詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
[1.シリカ又はシリカ含有物質としてシリカを用いた糖の製造]
(1−1.平均一次粒子径)
シリカの平均一次粒子径は、以下の測定装置を用いて測定した。
窒素吸着法測定装置:Monosorb MS−16(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)
【0088】
(1−2.セルラーゼ水溶液)
以下の手順で、セルラーゼ水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、所定量の混合セルラーゼの粉末を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら溶解してセルラーゼ水溶液を得た。なお、糖化酵素であるセルラーゼとしては、pH3以上、pH6以下の範囲で至適な酵素活性を有するトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei;T. reesei)属由来のセルラーゼ(Sigma Aldrich製)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger;A. niger)属由来のセルラーゼ(MP biomedicals製)を7:3(w/w)の割合で混合した混合セルラーゼを用いた。
【0089】
(1−3.糖化酵素水溶液)
以下の手順で、糖化酵素水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、及び1−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表1に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)の糖化酵素水溶液をそれぞれ得た。これらの糖化酵素水溶液を、比較サンプル1〜比較サンプル3とした。各比較サンプルの糖化酵素濃度は、Bradford法(CBB法)を用い、BSA(商品名:タンパク質標準物質、Sigma Aldrich製)のタンパク質濃度に換算して算出した。糖化酵素濃度算出の具体的な手順は以下の通りである。
【0090】
セル長10mmのディスポーザブルセルに、プロテインアッセイCBB溶液(5倍濃縮)(ナカライテスク株式会社製)を脱イオン交換水で5倍に希釈したものを2.5mL添加し、次いで、各比較サンプル1〜3を0.05mL添加し、密栓して混合溶液とした。この混合溶液を、上下反転を繰り返し均一に混合した。その後、30分間静定し、分光光度計UV−3150(株式会社島津製作所製)を用い、波長595nmの吸光度を測定した。既知のBSAのタンパク質濃度の試料を作製し、同様に吸光度を測定して検量線を作成した。得られた検量線から糖化酵素濃度を算出した。なお、トリコデルマ・リーゼイ属由来のセルラーゼの粉末1g中には0.27gのタンパク質が含有していた。また、アスペルギルス・ニガー属由来のセルラーゼの粉末1g中には0.06gのタンパク質が含有していた。
【0091】
【表1】
【0092】
(1−4.糖化酵素組成物)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカとして水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径:35nm)が水に分散された酸性シリカゾル(pH2.1、シリカ濃度40質量%)、化合物(A)としてトリプロピレングリコール、及び1−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表2に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、シリカ濃度及び化合物(A)濃度の糖化酵素組成物をそれぞれ得た。これらの糖化酵素組成物を、サンプル1〜サンプル8とした。なお、下記表2に示したサンプル1〜サンプル8の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0093】
また、化合物(A)として多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の誘導体又はアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を用いたこと以外は、サンプル1〜サンプル8と同様にして、糖化酵素組成物をそれぞれ作製した。これらの糖化酵素組成物を、下記表2に示したサンプル9〜サンプル20とした。なお、下記表2に示したサンプル9〜サンプル20の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0094】
なお、下記表2における化合物(A)の種類A〜Mは、以下に示した通りである。
A:トリプロピレングリコール
B:エチレングリコール
C:ポリエチレングリコール(平均分子量200)
D:プロピレングリコール
E:ジプロピレングリコール
F:ポリプロピレングリコール(平均分子量250)
G:ポリプロピレングリコール(平均分子量700)
H:ポリプロピレングリコール(平均分子量1000)
I:プロピレングリコールモノメチルエーテル
J:1,3−ブタンジオール
K:グリセリン
L:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加モル数m+n=10)
(日信化学工業株式会社製、サーフィノール465)
M:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加モル数m+n=30)
(日信化学工業株式会社製、サーフィノール485)
【0095】
【表2】
【0096】
(1−5.トリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、化合物(A)としてトリプロピレングリコールを用いたトリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液を作製した。
【0097】
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、トリプロピレングリコール、及び1−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表3に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びトリプロピレングリコール濃度のトリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液をそれぞれ得た。これらのトリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル4〜比較サンプル11とした。なお、下記表3に示した比較サンプル4〜比較サンプル11の各構成成分の濃度は、トリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0098】
【表3】
【0099】
(1−6.シリカ含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、シリカ含有糖化酵素水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカとして水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径粒子径:35nm)が水に分散された酸性シリカゾル(pH2.1、シリカ濃度40質量%)、及び1−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表4に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びシリカ濃度のシリカ含有糖化酵素水溶液をそれぞれ得た。これらのシリカ含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル12〜比較サンプル14とした。なお、下記表4に示した比較サンプル12〜比較サンプル14の各構成成分の濃度は、シリカ含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0100】
【表4】
【0101】
(1−7.糖化反応液)
サンプル1〜サンプル20の糖化酵素組成物に、微結晶セルロース粉末を添加し、分散させて各サンプルを用いた糖化反応液とした。具体的な手順は以下の通りである。
【0102】
まず、13.5mLのガラス瓶に各サンプルを10mL入れ、4mmφ×10mmのスターラーで撹拌した状態で、微結晶セルロース粉末(結晶型:I型、商品名:Avicel PH−101、Sigma Aldrich製)を0.05g(5mg/mL相当)添加した後に密栓した。
【0103】
また、比較サンプル1〜比較サンプル3の糖化酵素水溶液、比較サンプル4〜比較サンプル11のトリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル12〜比較サンプル14のシリカ含有糖化酵素水溶液を用いたこと以外は、サンプル1〜サンプル20の糖化酵素組成物と同様にして、各比較サンプルの糖化反応液を得た。
【0104】
(1−8.糖の製造)
上述の各サンプル及び各比較サンプルを用いた糖化反応液を、25℃の恒温槽中で、撹拌下で2日間酵素反応させた。この酵素反応により、糖(グルコース)を得た。
【0105】
(1−9.グルコース生成量の算出)
(実施例1)
酵素法(GOD法)を用いて、サンプル1の糖化酵素組成物から得られた糖化反応液(以下、実施例1の糖化反応液という)について、1−8.の酵素反応2日後のグルコース生成量を算出した。
【0106】
2mLマイクロチューブに、サンプル1の糖化反応液の試料を0.5mL採取し、105℃、15分で酵素を失活させた。次に、未反応のセルロース、シリカを除去するため、絶対孔径0.1μmのフィルターが付いた2mLのマイクロチューブに試料を移し、高速冷却遠心分離機SRX−201(株式会社トミー精工製)で10,000G、5分の条件で遠心分離し、その後、ろ液を回収した。酵素法には、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を使用した。分光光度計UV−3150(株式会社島津製作所製)を用いて波長505nmの吸光度(セル長10mm)を測定した。具体的な手順は以下の通りである。
【0107】
セル長10mmのディスポーザブルセルに発色試液を3.0mL添加し、次いで、上記のろ液を0.02mL添加し、密栓して混合溶液とした。次に、この混合溶液を、上下反転を繰り返し均一に混合した。その後、24℃で15分間静定し、波長505nmの吸光度を、分光光度計を用いて測定し、Esとした。次に、セル長10mmのディスポーザブルセルに発色試液を3.0mL添加し、次いで、ブドウ糖標準液II(500mg/dL)を0.02mL添加し、上下反転を繰り返し均一に混合した後、24℃で15分間静定し、波長505nmの吸光度を、分光光度計を用いて測定し、Estdとした。ここでは、発色試液3.0mLの吸光度を対照として、実施例1の糖化反応液の吸光度Es、及びブドウ糖標準液IIの吸光度Estdを測定した。
【0108】
次に、実施例1の糖化反応液のグルコース生成量(mg/mL)を、下記式(3)から求めた。その結果を下記表5に示した。
【0109】
【数1】
【0110】
(実施例2〜実施例20)
実施例1と同様にして、サンプル2〜サンプル20の糖化酵素組成物から得られた各糖化反応液(以下、実施例2〜実施例20の糖化反応液という)について、1−8.の酵素反応2日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表5に示した。
【0111】
【表5】
【0112】
(比較例1〜比較例14)
実施例1と同様にして、比較サンプル1〜比較サンプル3の糖化酵素水溶液、比較サンプル4〜比較サンプル11のトリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル12〜比較サンプル14のシリカ含有糖化酵素水溶液から得られた各糖化反応液(以下、比較例1〜比較例14の糖化反応液という)について、1−8.の酵素反応2日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表6に示した。
【0113】
【表6】
【0114】
(1−10.糖化反応効率)
上記表5及び上記表6のグルコース生成量に基づき、各糖化反応液の糖化反応効率について検討した。まず、実施例3、実施例7、実施例8、比較例1〜比較例3、比較例6、及び比較例10〜比較例14におけるグルコース生成量から、トリプロピレングリコールの添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0115】
図1は、実施例3,7,8及び比較例1〜3,6,10〜14のトリプロピレングリコールの添加による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図1に示した通り、比較例1〜比較例3の糖化反応液と、比較例12〜比較例14の糖化反応液を比較すると、セルラーゼ水溶液にシリカを添加した比較例12〜比較例14の方がグルコース生成量が増加しており、糖化反応効率の向上が見られた。また、比較例12〜比較例14の糖化反応液と、実施例3、実施例7、実施例8の糖化反応液を比較すると、セルラーゼ水溶液にシリカ及びトリプロピレングリコールを添加した実施例4、実施例7、実施例8の方がグルコース生成量が増加しており、更なる糖化反応効率の向上が見られた。一方、比較例1〜比較例3の糖化反応液と、比較例6、比較例10、比較例11の糖化反応液を比較すると、セルラーゼ水溶液にトリプロピレングリコールを添加しても糖化反応効率の向上はしなかった。従って、セルロースの糖化反応において、シリカとトリプロピレングリコールを併用することによって、糖化反応効率が向上することが確認できた。
【0116】
また、この結果より、比較例1〜比較例3の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にシリカを添加した比較例12〜比較例14の糖化反応液において、セルラーゼの使用量を比較すると、比較例12〜比較例14では、20%程度の使用量を削減することができる。一方、比較例1〜比較例3の糖化反応液と、シリカ及びトリプロピレングリコールを添加した実施例3、実施例7、実施例8の糖化反応液において、セルラーゼの使用量を比較すると、実施例3、実施例7、実施例8では、30%程度の使用量の削減が期待でき、セルラーゼ水溶液にシリカを添加した場合より、糖化反応におけるセルラーゼの使用量を更に10%程度削減することができると考えられる。
【0117】
次に、実施例1〜実施例6、比較例1、比較例4〜比較例9、比較例12におけるグルコースの生成量から、トリプロピレングリコールの添加量(トリプロピレングリコール濃度)による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0118】
図2は、実施例1〜6及び比較例1,4〜9,12のトリプロピレングリコール濃度による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図2に示した通り、シリカとトリプロピレングリコールの質量比率(トリプロピレングリコール/シリカ)が概ね0.0001〜1の範囲において、糖化反応効率が大幅に向上し、両者の併用効果を確認することができた。従って、この結果より、グルコース生成量は、特にトリプロピレングリコールの添加量に依存することが示唆された。なお、糖化酵素(セルラーゼ)にトリプロピレングリコールだけを組み合わせても、糖化反応効率の向上効果は見られなかった。
【0119】
また、実施例9〜実施例20、比較例1及び比較例12におけるグルコースの生成量から、トリプロピレングリコール以外の化合物(A)である多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の誘導体又はアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物の添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0120】
図3は、実施例9〜20及び比較例1,12の多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の誘導体又はアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物の添加による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図3に示した通り、実施例9〜実施例20の糖化反応液と、比較例1及び比較例12の糖化反応液を比較すると、セルラーゼ水溶液にシリカ及び多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の誘導体又はアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を添加した実施例9〜実施例20に糖化反応効率の向上効果が見られた。従って、セルロースの糖化反応において、シリカと化合物(A)として多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の誘導体又はアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を併用することによって、糖化反応効率が向上することが確認できた。
【0121】
[2.市販のセルラーゼを用いた糖の製造]
(2−1.セルラーゼ水溶液)
T. reesei属由来のセルラーゼ(Sigma Aldrich製)及びA. niger属由来のセルラーゼ(MP biomedicals製)を7:3(w/w)の割合で混合した混合セルラーゼから、市販のセルラーゼ(製品名:Cellic(登録商標) CTec2、Novozymes製)に変更した以外は、1−2.と同様にしてセルラーゼ水溶液を作製した。
【0122】
(2−2.糖化酵素組成物)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカとして水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径:85nm)が水に分散されたアルカリ性シリカゾル(pH9.3、シリカ濃度40質量%)、化合物(A)としてポリプロピレングリコール(平均分子量1000)(以下、PPG1000という)、及び2−1.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表7に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、シリカ濃度及びPPG1000濃度の糖化酵素組成物を得た。この糖化酵素組成物をサンプル21とした。なお、下記表7に示したサンプル21の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0123】
(2−3.糖化酵素水溶液)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、及び上述のセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表7に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)の糖化酵素水溶液を得た。この糖化酵素水溶液を比較サンプル15とした。
【0124】
(2−4.ポリプロピレングリコール含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、化合物(A)として2−2.と同様のPPG1000を用いたPPG1000含有糖化酵素水溶液を作製した。
【0125】
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、PPG1000、及び2−1.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表7に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びPPG1000濃度のPPG1000含有糖化酵素水溶液を得た。このPPG1000含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル16とした。なお、下記表7に示した比較サンプル16の各構成成分の濃度は、PPG1000含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0126】
(2−5.シリカ含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、シリカ含有糖化酵素水溶液を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカとして水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径:85nm)が水に分散されたアルカリ性シリカゾル(pH9.3、シリカ濃度40質量%)、及び2−1.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表7に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びシリカ濃度のシリカ含有糖化酵素水溶液を得た。このシリカ含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル17とした。なお、下記表7に示した比較サンプル17の各構成成分の濃度は、シリカ含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0127】
【表7】
【0128】
(2−6.糖化反応液)
サンプル21の糖化酵素組成物に、微結晶セルロース粉末を添加し、分散させて糖化反応液とした。具体的な手順は以下の通りである。
【0129】
まず、13.5mLのガラス瓶に各サンプルを10mL入れ、4mmφ×10mmのスターラーで撹拌した状態で、微結晶セルロース粉末(結晶型:I型、商品名:Avicel PH−101、Sigma Aldrich製)を1.00g(100mg/mL相当)添加した後に密栓した。
【0130】
また、比較サンプル15の糖化酵素水溶液、比較サンプル16のPPG1000含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル17のシリカ含有糖化酵素水溶液を用いたこと以外は、サンプル21の糖化酵素組成物と同様にして、各比較サンプルの糖化反応液を得た。
【0131】
(2−7.糖の製造)
上述の各サンプル及び各比較サンプルを用いた糖化反応液を、50℃の恒温槽中で、撹拌下で3日間酵素反応させた。この酵素反応により、糖(グルコース)を得た。
【0132】
(2−8.グルコース生成量の算出)
(実施例21)
実施例1と同様にして、サンプル21の糖化酵素組成物から得られた糖化反応液(以下、実施例21の糖化反応液という)について、2−7.の酵素反応3日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表8に示した。
【0133】
(比較例15〜17)
実施例1と同様にして、比較サンプル15の糖化酵素水溶液、比較サンプル16のPPG1000含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル17のシリカ含有糖化酵素水溶液から得られた糖化反応液(以下、比較例15〜17の糖化反応液という)について、2−7.の酵素反応3日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表8に示した。
【0134】
【表8】
【0135】
(2−8.糖化反応効率)
上記表8のグルコース生成量に基づき、各糖化反応液の糖化反応効率について検討した。まず、実施例21、及び比較例15〜比較例17におけるグルコース生成量から、PPG1000の添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0136】
図4は、実施例21及び比較例15〜比較例17のPPG1000の添加による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図4に示した通り、比較例15の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にPPG1000を添加した比較例16の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にシリカを添加した比較例17の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にシリカ及びPPG1000を添加した実施例21の糖化反応液を比較すると、これらの中では、セルラーゼ水溶液にシリカ及びPPG1000を添加した実施例21がグルコース生成量が増加しており、糖化反応効率の向上が見られた。従って、市販のセルラーゼを用いてもシリカとPPG1000を併用することによって、糖化反応効率が向上することが確認できた。
【0137】
[3.シリカ又はシリカ含有物質として珪藻土を用いた糖の製造]
(3−1.平均二次粒子径)
珪藻土の平均二次粒子径は、以下の測定装置を用いて測定した。
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置:LA−300(株式会社堀場製作所製)
【0138】
(3−2.セルラーゼ水溶液)
以下の手順で、セルラーゼ水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、所定量の混合セルラーゼの粉末を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら溶解してセルラーゼ水溶液を得た。なお、糖化酵素であるセルラーゼとしては、pH3以上、pH6以下の範囲で至適な酵素活性を有するトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei;T. reesei)属由来のセルラーゼ(Sigma Aldrich製)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger;A. niger)属由来のセルラーゼ(MP biomedicals製)を7:3(w/w)の割合で混合した混合セルラーゼを用いた。
【0139】
(3−3.糖化酵素組成物)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカ含有物質として珪藻土(オプライトP−1200、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:15μm)、化合物(A)として2−2.と同様のPPG1000、及び3−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表9に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、珪藻土濃度及びPPG1000濃度の糖化酵素組成物を得た。この糖化酵素組成物をサンプル22とした。なお、下記表9に示したサンプル22の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0140】
また、平均二次粒径が異なる珪藻土を用いたこと以外はサンプル22と同様にして、糖化酵素組成物をそれぞれ作製した。これらの糖化酵素組成物を、下記表9に示したサンプル23〜サンプル28とした。なお、下記表9に示したサンプル23〜サンプル28の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0141】
【表9】
【0142】
なお、上記表9における珪藻土の種類N〜Sは、以下に示した通りである。
N:オプライトP−1200、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:15μm
O:シリカ#100F、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:19μm
P:シリカ#300S、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:19μm
Q:シリカ#600S、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:30μm
R:シリカ#600H、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:38μm
S:シリカクイーンL、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:25μm
【0143】
(3−4.糖化酵素水溶液)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、及び3−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表10に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)の糖化酵素水溶液を得た。この糖化酵素水溶液を比較サンプル18とした。
【0144】
(3−5.PPG1000含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、化合物(A)としてPPG1000を用いたPPG1000含有糖化酵素水溶液を作製した。
【0145】
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、PPG1000、及び3−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表10に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びPPG1000濃度のPPG1000含有糖化酵素水溶液を得た。このPPG1000含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル19とした。なお、下記表10に示した比較サンプル19の各構成成分の濃度は、PPG1000含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0146】
(3−6.珪藻土含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、珪藻土含有糖化酵素水溶液を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカ含有物質として珪藻土(オプライトP−1200、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:15μm)、及び3−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表10に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及び珪藻土濃度の珪藻土含有糖化酵素水溶液を得た。この珪藻土含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル20とした。なお、下記表10に示した比較サンプル20の各構成成分の濃度は、珪藻土含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0147】
また、平均二次粒径が異なる珪藻土を用いたこと以外は比較サンプル20と同様にして、珪藻土含有糖化酵素水溶液をそれぞれ作製した。これらの糖化酵素組成物を、下記表10に示した比較サンプル21〜比較サンプル26とした。なお、下記表10に示した比較サンプル21〜比較サンプル26の各構成成分の濃度は、珪藻土含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0148】
【表10】
【0149】
なお、上記表10における珪藻土の種類N〜Sは、以下に示した通りである。
N:オプライトP−1200、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:15μm
O:シリカ#100F、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:19μm
P:シリカ#300S、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:19μm
Q:シリカ#600S、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:30μm
R:シリカ#600H、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:38μm
S:シリカクイーンL、中央シリカ株式会社製、シリカ含有率:90質量%、平均二次粒子径:25μm
【0150】
(3−7.糖化反応液)
サンプル22〜サンプル28の糖化酵素組成物に、微結晶セルロース粉末を添加し、分散させて糖化反応液とした。具体的な手順は以下の通りである。
【0151】
まず、13.5mLのガラス瓶に各サンプルを10mL入れ、4mmφ×10mmのスターラーで撹拌した状態で、微結晶セルロース粉末(結晶型:I型、商品名:Avicel PH−101、Sigma Aldrich製)を0.50g(50mg/mL相当)添加した後に密栓した。
【0152】
また、比較サンプル18の糖化酵素水溶液、比較サンプル19のPPG1000含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル20〜比較サンプル26の珪藻土含有糖化酵素水溶液を用いたこと以外は、サンプル21〜サンプル28の糖化酵素組成物と同様にして、各比較サンプルの糖化反応液を得た。
【0153】
(3−8.糖の製造)
上述の各サンプル及び各比較サンプルを用いた糖化反応液を、40℃の恒温槽中で、撹拌下で3日間酵素反応させた。この酵素反応により、糖(グルコース)を得た。
【0154】
(3−9.グルコース生成量の算出)
(実施例22〜実施例28)
実施例1と同様にして、サンプル22〜サンプル28の糖化酵素組成物から得られた糖化反応液(以下、実施例22〜実施例28の糖化反応液という)について、3−8.の酵素反応3日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表11に示した。
【0155】
【表11】
【0156】
(比較例18〜26)
実施例1と同様にして、比較サンプル18の糖化酵素水溶液、比較サンプル19のPPG1000含有糖化酵素水溶液、及び比較サンプル20〜比較サンプル26の珪藻土含有糖化酵素水溶液から得られた糖化反応液(以下、比較例18〜比較例26の糖化反応液という)について、3−8.の酵素反応3日後のグルコース生成量を算出し、その結果を下記表12に示した。
【0157】
【表12】
【0158】
(3−10.糖化反応効率)
上記表11及び上記表12のグルコース生成量に基づき、各糖化反応液の糖化反応効率について検討した。まず、実施例22〜実施例28、及び比較例18〜比較例26におけるグルコース生成量から、PPG1000の添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0159】
図5は、実施例22〜実施例28、及び比較例18〜比較例26のPPG1000の添加による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図5に示した通り、比較例18の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にPPG1000を添加した比較例19の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液に珪藻土を添加した比較例20〜比較例26の糖化反応液、セルラーゼ水溶液に珪藻土及びPPG1000を添加した実施例22〜実施例28の糖化反応液を比較すると、セルラーゼ水溶液に珪藻土及びPPG1000を添加した実施例22〜実施例28の方がグルコース生成量が増加しており、糖化反応効率の向上が見られた。従って、セルロースの糖化反応において、シリカ含有物質として珪藻土を用い、更にPPG1000を併用することによって、糖化反応効率が向上することが確認できた。
【0160】
[4.シリカ又はシリカ含有物質として珪砂を用いた糖の製造]
(4−1.平均一次粒子径)
珪砂の平均一次粒子径は、以下の測定装置を用いて測定した。測定の際には、観察倍率50倍で粒子を100個観察し、長軸の長さを算術平均した値を用いた。
金属顕微鏡:ECLIPSE ME600D(株式会社ニコンインステック製)
【0161】
(4−2.セルラーゼ水溶液)
以下の手順で、セルラーゼ水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、所定量の混合セルラーゼの粉末を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら溶解してセルラーゼ水溶液を得た。なお、糖化酵素であるセルラーゼとしては、pH3以上、pH6以下の範囲で至適な酵素活性を有するトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei;T. reesei)属由来のセルラーゼ(Sigma Aldrich製)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger;A. niger)属由来のセルラーゼ(MP biomedicals製)を7:3(w/w)の割合で混合した混合セルラーゼを用いた。
【0162】
(4−3.糖化酵素組成物)
以下の手順で、糖化酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカ含有物質として珪砂(5号、株式会社トーヨーマテラン製、シリカ含有率:95質量%、平均一次粒子径:310μm)、化合物(A)として2−2.と同様のPPG1000、及び4−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表13に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、珪砂濃度及びPPG1000濃度の糖化酵素組成物を得た。この糖化酵素組成物をサンプル29とした。なお、下記表13に示したサンプル29の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0163】
また、化合物(A)として2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加モル数m+n=10)を用いたこと以外は、サンプル29と同様にして、糖化酵素組成物を作製した。この糖化酵素組成物を、下記表13に示したサンプル30とした。なお、下記表13に示したサンプル30の各構成成分の濃度は、糖化酵素組成物中の濃度である。
【0164】
(4−4.化合物(A)含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、化合物(A)としてPPG1000を用いたPPG1000含有糖化酵素水溶液を作製した。
【0165】
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、PPG1000、及び4−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表13に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及びPPG1000濃度の化合物(A)含有糖化酵素水溶液を得た。この化合物(A)含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル27とした。なお、下記表13に示した比較サンプル27の各構成成分の濃度は、化合物(A)含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0166】
また、化合物(A)として2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加モル数m+n=10)を用いたこと以外は、比較サンプル27と同様にして、化合物(A)含有糖化酵素水溶液を作製した。この化合物(A)含有糖化酵素水溶液を、下記表13に示した比較サンプル28とした。なお、下記表13に示した比較サンプル28の各構成成分の濃度は、化合物(A)含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0167】
(4−5.珪砂含有糖化酵素水溶液)
以下の手順で、珪砂含有糖化酵素水溶液を作製した。
脱イオン交換水中にpH調整として最終的に0.05Mになるよう1M酢酸緩衝液(pH5.0)、シリカ含有物質として珪砂(5号、トーヨーマテラン株式会社製、シリカ含有率:95質量%、平均一次粒子径:310μm)、及び4−2.で得られたセルラーゼ水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表13に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及び珪砂濃度の珪砂含有糖化酵素水溶液を得た。この珪砂含有糖化酵素水溶液を、比較サンプル29とした。なお、下記表13に示した比較サンプル29の各構成成分の濃度は、珪砂含有糖化酵素水溶液中の濃度である。
【0168】
【表13】
【0169】
なお、上記表13における化合物(A)の種類U及びVは、以下に示した通りである。
U:ポリプロピレングリコール(平均分子量1000)
V:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加モル数m+n=10)
(日信化学工業株式会社製サーフィノール465)
【0170】
(4−6.糖化反応液)
サンプル29,30の糖化酵素組成物、比較サンプル27,28の化合物(A)含有糖化酵素水溶液及び比較サンプル29の珪砂含有糖化酵素水溶液を用いたこと以外は、サンプル1〜サンプル18の糖化酵素組成物と同様にして、サンプル29,サンプル30及び比較サンプル27〜比較サンプル29の糖化反応液を得た。
【0171】
(4−7.糖の製造)
実施例1と同様にして、上述の各サンプル及び各比較サンプルを用いた糖化反応液を、25℃の恒温槽中で、撹拌下で2日間酵素反応させた。この酵素反応により、糖(グルコース)を得た。
【0172】
(4−8.グルコース生成量の算出)
(実施例29,実施例30)
実施例1と同様にして、サンプル29及びサンプル30の糖化酵素組成物から得られた糖化反応液(以下、実施例29,30の糖化反応液という)について、4−7.の酵素反応2日後のグルコース生成量を算出し、これらの結果を下記表14に示した。
【0173】
(比較例27〜29)
実施例1と同様にして、比較サンプル27及び比較サンプル28の化合物(A)含有糖化酵素水溶液及び比較サンプル29の珪砂含有糖化酵素水溶液から得られた糖化反応液(以下、比較例27〜29の糖化反応液という)について、4−7.酵素反応2日後のグルコース生成量を算出し、これらの結果を下記表14に示した。
【0174】
【表14】
【0175】
(4−9.糖化反応効率)
上記表14のグルコース生成量に基づき、各糖化反応液の糖化反応効率について検討した。まず、実施例29、実施例30、及び比較例1、比較例27〜比較例29におけるグルコース生成量から、PPG1000又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物の添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0176】
図6は、実施例29,30及び比較例1,27〜29のPPG1000又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物の添加による糖化反応効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図6に示した通り、比較例1の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液にPPG1000又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物を添加した比較例27、比較例28の糖化反応液と、セルラーゼ水溶液に珪砂を添加した比較例29の糖化反応液、セルラーゼ水溶液に珪砂及びPPG1000、又は珪砂及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物を添加した実施例29、実施例30の糖化反応液を比較すると、これらの中では、セルラーゼ水溶液に珪砂及びPPG1000又は珪砂及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物を添加した実施例29、実施例30がグルコース生成量が増加しており、糖化反応効率の向上が見られた。従って、セルロースの糖化反応において、シリカ含有物質として珪砂を用い、更にPPG1000又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物を併用することによって、糖化反応効率が向上することが確認できた。
【0177】
[5.糖を用いたエタノールの製造]
(5−1.酵母水溶液)
以下の手順で、酵母水溶液を作製した。
予め35℃に調整した脱イオン交換水40g中に酵母の粉末0.2gを添加し、35℃に保持したままマグネティックスターラーを用いて、20分間撹拌させながら溶解して0.5質量%(=酵母粉末0.2g/脱イオン交換水40g)の酵母水溶液を得た。なお、酵母としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)属のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae;S. cerevisiae) YP2(Sigma Aldrich製)を用いた。
【0178】
(5−2.エタノール発酵水溶液)
以下の手順で、エタノール発酵水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的にpH5前後になるよう硫酸、窒素源として最終的に0.21mg/mLとなるよう尿素、1−2.で得られたセルラーゼ水溶液及び5−1.で得られた酵母水溶液を添加し、室温下、マグネティックスターラーで、10分間回転させながら混合して、下記表15に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、及び酵母濃度のエタノール発酵水溶液を得た。このエタノール発酵水溶液を比較サンプル30とした。
【0179】
(5−3.エタノール発酵組成物)
以下の手順で、エタノール酵素組成物を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的にpH5前後になるよう硫酸、窒素源として最終的に0.21mg/mLとなるよう尿素、シリカ含有物質として水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径:85nm)が水に分散されたアルカリ性シリカゾル(pH9.5、シリカ濃度40質量%)、化合物(A)として2−2.と同様のPPG1000、1−2.で得られたセルラーゼ水溶液及び5−1.で得られた酵母水溶液を添加し、室温下、マグネティックスターラーで、10分間回転させながら混合して、下記表15に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、シリカ濃度、PPG1000濃度、及び酵母濃度のエタノール発酵組成物を得た。このエタノール発酵組成物をサンプル31とした。なお、下記表15に示したサンプル31の各構成成分の濃度は、エタノール発酵組成物中の濃度である。
【0180】
(5−4.PPG1000含有エタノール発酵水溶液)
以下の手順で、PPG1000含有エタノール発酵水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的にpH5前後になるよう硫酸、窒素源として最終的に0.21mg/mLとなるよう尿素、化合物(A)としてPPG1000、1−2.で得られたセルラーゼ水溶液及び5−1.で得られた酵母水溶液を添加し、室温下、マグネティックスターラーで、10分間回転させながら混合して、下記表15に示した糖化酵素濃度、PPG1000濃度、及び酵母濃度のPPG1000含有エタノール発酵水溶液を得た。このPPG1000含有エタノール発酵水溶液を比較サンプル31とした。なお、下記表15に示した比較サンプル31の各構成成分の濃度は、PPG1000含有エタノール発酵水溶液中の濃度である。
【0181】
(5−5.シリカ含有エタノール発酵水溶液)
以下の手順で、シリカ含有エタノール発酵水溶液を作製した。
脱イオン交換水中に、pH調整として最終的にpH5前後になるよう硫酸、窒素源として最終的に0.21mg/mLとなるよう尿素、シリカとして水ガラス法で製造された中実で球状のコロイダルシリカ(平均一次粒子径粒子径85nm)が水に分散されたアルカリ性シリカゾル(pH9.5、シリカ濃度40質量%)、1−2.で得られたセルラーゼ水溶液及び5−1.で得られた酵母水溶液を添加し、室温下、ローターで100rpm、30分間回転させながら混合して、下記表15に示した糖化酵素濃度(本実施例ではセルラーゼ濃度)、シリカ濃度、及び酵母濃度のシリカ含有エタノール発酵水溶液を得た。このシリカ含有エタノール発酵水溶液を、比較サンプル32とした。なお、下記表15に示した比較サンプル32の各構成成分の濃度は、シリカ含有エタノール発酵水溶液中の濃度である。
【0182】
【表15】
【0183】
(5−6.糖化反応及びエタノール発酵液)
サンプル31のエタノール発酵組成物に、微結晶セルロース粉末を添加し、分散させてサンプル31を用いた糖化反応及びエタノール発酵液とした。具体的な手順は以下の通りである。
【0184】
まず、13.5mLのガラス瓶にサンプル31を10mL入れ、4mmφで10mmのスターラーで撹拌した状態で、微結晶セルロース粉末(結晶型:I型、商品名:Avicel PH−101、Sigma Aldrich製)を0.20g(20mg/mL相当)添加した後に、絶対孔径0.22μmの疎水性PTEF製メンブレンフィルターを付けたシリコン栓で栓をした。
【0185】
また、比較サンプル30のエタノール発酵水溶液、比較サンプル31のPPG1000含有エタノール発酵水溶液、及び比較サンプル32のシリカ含有物質含有エタノール発酵水溶液を用いたこと以外は、サンプル31のエタノール発酵組成物と同様にして、各比較サンプルの糖化反応及びエタノール発酵液を得た。
【0186】
(5−7.エタノールの製造)
上述の各サンプル及び各比較サンプルを用いた糖化反応及びエタノール発酵液を、31℃の恒温槽中で、撹拌下で2日間それぞれ酵素反応及びエタノール発酵を同時にさせた。この酵素反応により得られた糖(グルコース)を用いてエタノール発酵させ、エタノールを得た。
【0187】
(5−8.エタノール生成量の算出)
(実施例31)
ガスクロマトグラフィ(GC)を用いて、サンプル31のエタノール発酵組成物から得られた糖化反応及びエタノール発酵液(以下、実施例31の糖化反応及びエタノール発酵液という)の酵素反応及びエタノール発酵後のエタノール生成量を算出した。
【0188】
2mLマイクロチューブに、実施例31の糖化反応及びエタノール発酵液の試料を0.5mL採取し、105℃、15分で酵素及び酵母を失活させた。次に、未反応のセルロース、シリカ含有物質及び酵母を除去するため、高速冷却遠心分離機SRX−201(株式会社トミー精工製)で15,000G、30分の条件で遠心分離し、その後、上澄み液を回収した。エタノール生成量の定量には、ガスクロマトグラフGC−2014s(株式会社島津製作所製)を用いて1点検量線法で測定し、エタノール生成量(mg/mL)の測定結果を下記表16に示した。
【0189】
具体的な分析条件は以下の通りである。
<分析条件>
カラム:ポーラパックQ、長さ1m、内径3.2mm(ジーエルサイエンス株式会社製)
検出器:FID
カラム温度:150℃
流量:40mL/min
サンプル量:2μL
検量線用標品:エタノール10mg/mL水溶液
【0190】
(比較例30〜比較例32)
実施例31と同様にして、比較サンプル30のエタノール発酵水溶液、比較サンプル31のPPG1000含有エタノール発酵水溶液、及び比較サンプル32のシリカ含有物質含有エタノール発酵水溶液から得られた各糖化反応及び各エタノール発酵液(以下、比較例30〜比較例32の糖化反応及びエタノール発酵液という)について、5−7.の糖化反応及びエタノール発酵2日後のエタノール生成量を算出し、その結果を下記表16に示した。
【0191】
【表16】
【0192】
(5−9.エタノール発酵効率)
上記表16のエタノール生成量に基づき、各糖化反応及びエタノール発酵液のエタノール発酵効率について検討した。実施例31及び比較例30〜比較例32におけるエタノール生成量から、PPG1000の添加による糖化反応効率の向上効果について検討した。
【0193】
図7は、実施例31及び比較例30〜32のPPG1000の添加によるエタノール発酵効率の向上効果の測定結果を示したグラフである。
図7に示した通り、比較例30、比較例32の糖化反応及びエタノール発酵液を比較すると、セルラーゼ水溶液及び酵母水溶液にシリカを添加した比較例32の方がエタノール生成量は増加しており、エタノール生成効率の向上が見られた。また、実施例31及び比較例32の糖化反応及びエタノール発酵液を比較すると、セルラーゼ水溶液及び酵母水溶液にシリカ及びPPG1000を添加した実施例31の方がエタノール生成量が増加しており、更なるエタノール生成効率の向上が見られた。一方、比較例30、比較例31の糖化反応及びエタノール発酵液を比較すると、セルラーゼ水溶液及び酵母水溶液にPPG1000を添加してもエタノール生成効率の向上はしなかった。従って、セルロースの糖化反応及びエタノール発酵において、シリカ含有物質とPPG1000を併用することによって、エタノール生成効率が向上することが確認できた。