(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す切削装置1は、チャックテーブル6に保持された被加工物を、加工室10の内部の切削手段3によって切削する装置である。
【0010】
装置前部には、被加工物を収容するカセット70aが載置されるカセットテーブル70が配設され、カセットテーブル70は、昇降可能となっている。カセット70aに収容される被加工物、例えばウェーハWは、裏面にテープTが貼着され、テープTの外周部にリング状のフレームFが貼着されることにより、テープTを介してフレームFに支持された状態となる。なお、以下では、テープTを介してフレームFに支持された状態のウェーハWを、ウェーハユニットUと称する。
【0011】
加工室10の側部には、カセット70aからウェーハユニットUを搬出するとともに切削後のウェーハユニットUをカセット70aに搬入する搬出入手段72が配設されている。搬出入手段72は、フレームを把持する把持部73と、把持部73を支持するアーム74と、アーム74をY軸方向に移動させる水平移動部75とを備えている。
【0012】
搬出入手段70の上方には、搬出入手段72がカセット70aから搬出したウェーハユニットUを受け取ってチャックテーブル6に搬送するとともに、加工後のウェーハユニットUをチャックテーブル6から搬出入手段72に受け渡す受け渡し手段77が配設されている。受け渡し手段77は、フレームFを吸着保持する吸着部78と、吸着部78を昇降させる昇降駆動部79とを備えている。
【0013】
チャックテーブル6は、ウェーハWを吸引保持する吸引保持部60と、吸引保持部60の外周側に配設されフレームFを固定する固定部61とを備えており、X軸方向に移動可能となっている。チャックテーブル6が位置しうる+X側の位置の上方には、ウェーハユニットUを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段62が配設されている。
【0014】
装置の前面には、加工条件の入力や画像の表示等に用いるタッチパネル80が設けられている。装置の内部には、タッチパネル80への画像の表示処理や、タッチパネル80から入力された情報の処理を行う制御手段81が設けられている。制御手段81には、少なくともCPU及びメモリを備えている。また、制御手段81には、メモリ等からなる記憶手段82が接続されており、制御手段81は、必要に応じて情報を記憶手段82に記憶させることができる。
【0015】
加工室10の内部に配設された切削手段3は、
図2に示すように、第一切削手段3aと第二切削手段3bとから構成されている。これらは同様に構成されているため、共通の符号を付して説明する。
【0016】
第一切削手段3a及び第二切削手段3bは、Y軸方向の軸心を有するスピンドルの先端に装着されたブレード30と、ウェーハWを撮像して切削すべきラインを検出する撮像手段31と、ブレード30に対して切削水を供給するノズル32とを備えている。
【0017】
第一切削手段3a及び第二切削手段3bは、割り出し送り手段4によってY軸方向に送られるとともに、切り込み送り手段5によってZ軸方向に送られる。
【0018】
割り出し送り手段4は、Y軸方向に延在するボールネジ40と、ボールネジ40と平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の一端に連結されボールネジ40を回転させるパルスモータ42と、ボールネジ40に螺合するナットを有するとともに側部がガイドレール41に摺接する移動板43とを備えている。パルスモータ42がボールネジ40を回転させると、移動板43がガイドレール41にガイドされてY軸方向に移動する。
【0019】
切り込み送り手段5は、移動板43に配設されており、Z軸方向に延在するボールネジ50と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の一端に連結されボールネジ50を回転させるパルスモータ52と、ボールネジ50に螺合するナットを有するとともに側部がガイドレール51に摺接する移動板53とを備えている。パルスモータ52がボールネジ50を回転させると、移動板53がガイドレール51にガイドされてY軸方向に移動する。
【0020】
第一切削手段3a及び第二切削手段3bは移動板53に固定されており、移動板53のZ軸方向の昇降にともない第一切削手段3a及び第二切削手段3bもZ軸方向に昇降する。また、移動板43のY軸方向の移動にともない第一切削手段3a及び第二切削手段3bもY軸方向に移動する。
【0021】
チャックテーブル6は、加工送り手段2によってX軸方向に送られる。加工送り手段2は、X軸方向に延在するボールネジ20と、ボールネジ20と平行に配設された一対のガイドレール21と、ボールネジ20の一端に連結されボールネジ20を回転させるモータ22と、ボールネジ20に螺合するナットを有するとともに底部がガイドレール21に摺接する移動板23とを備えている。モータ22がボールネジ20を回転させると、移動板23がガイドレール21にガイドされてX軸方向に移動する。移動板23上にはチャックテーブル6を回転させる回転駆動手段24が配設されており、移動板23がX軸方向に移動すると、回転駆動手段24及びチャックテーブル2もX軸方向に移動する。
【0022】
タッチパネル80には、制御手段81による制御によって、例えば
図3に示す加工条件入力画面90が表示される。加工条件入力画面9には、入力用のセルが複数表示されるが、表示されるセルは、文字入力用の文字セル91と数値入力用の数値セル92とに大別される。オペレータが文字セル91又は数値セル92をタッチすると、
図4に示すように、タッチされたセルが拡大表示される。また、タッチされたセルが数値セルであると、加工条件入力画面90とは別に、又は加工条件入力画面90に重ねて、電卓画面93が表示される。この電卓画面93は、オペレータによる計算式の入力を可能とし、タッチパネル80上において電卓機能を提供する。
【0023】
文字セル91及び数値セル92は、
図5に示す制御手段81を構成するセル表示部810によって表示される。また、電卓画面93の表示処理は、
図5に示す制御手段81を構成する電卓表示部811によって行われる。
【0024】
図4に示すように、電卓画面93には、数値キー931及び演算子キー932等の入力キーと、数値キー931から入力された数値又は計算結果が表示される数値表示欄933と、以前に入力された数値のリストを表示する数値リスト表示欄934とを備えている。数値表示欄933への数値の表示処理は、
図5に示す制御手段81を構成する数値表示部812によって行われる。また、数値リスト表示欄934への数値の表示処理は、
図5に示す制御手段81を構成するリスト表示部813によって行われる。数値リスト表示欄934へ表示する数値は記憶手段82に記憶されており、リスト表示部81は、記憶手段82に記憶された数値を読み出して数値リスト表示欄934に表示する。
【0025】
図5に示すように、制御手段81は、電卓画面から入力された計算式の計算結果を算出する算出部814と、リスト表示部813が数値リスト表示欄934に表示した数値のリストのうち選択された数値を前記数値セルに入力するか、又は、電卓画面の数値表示欄933に入力して表示させる選択数値入力部815と、数値表示部812によって数値表示欄933に表示された数値を数値セル92に複写する数値転送部816とを備えている。
【0026】
以下では、
図3及び
図4に示した加工条件入力画面90において文字又は数値を入力する際の制御手段81によるタッチパネル80の制御について、
図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0027】
まず、オペレータは、入力しようとするセルを指でタッチする。タッチパネル81がこれを感知すると、制御手段81は、タッチパネル81に、図示しないソフトウェアキーボードを表示するとともに、タッチされたセルを拡大表示する(ステップS1)。
【0028】
制御手段81は、タッチされたセルが数値セルであるか文字セルであるかを判断し(ステップS2)、タッチされたセルが数値セルである場合は、電卓表示部811が、例えば加工条件入力画面90の横に、図示しない電卓アイコンを表示する(ステップS3)。そして、制御手段81は、その電卓アイコンにタッチされるか否かを監視し(ステップS4)、オペレータがその電卓アイコンにタッチすると、電卓表示部811は、
図4に示した電卓画面93を表示する(ステップS5)。さらに、リスト表示部813が記憶手段82から数値リストを読み出し、数値リスト表示欄934に表示する(ステップS6)。
【0029】
例えば、
図4に示すように、タッチされたセルが、Z1ブレードの第1インデックスの数値セル92aであり、その後、電卓アイコンがタッチされた場合は、Z1ブレードの第1インデックスの計算に、電卓画面93を使用する。
【0030】
ここで、加工条件入力画面90に表示された「インデックス」は、ウェーハの所望のラインを切削するために
図2に示したブレード30をY軸方向に割り出し送りする際の割り出し送り間隔を意味しており、この値はウェーハの種類によって異なる。例えば、
図6に示すウェーハWでは、切削すべきラインが等間隔ではなく、ラインL1とラインL2との間隔D12と、ラインL2とラインL3との間隔D23とは等しいが、ラインL3とラインL1との間隔D31は、間隔D12及び間隔D23より長い。なお、ラインL1、ラインL2及びラインL3の3本のラインによってラインセットLSが構成されており、ウェーハWには、複数のラインセットLSが形成されている。
【0031】
例えば、間隔D12及び間隔D23が2mm、間隔D31が5mmであり、ラインL2については
図2に示した第一切削手段3aのブレード30を用いて切削し、ラインL1及びラインL3については
図2に示した第二切削手段3bのブレード30を用いて切削することとする。割り出し送りの基準となるラインがラインL1である場合は、
図3に示した加工条件入力画面90において、Z1ブレードの第1インデックスの数値セル92aに、間隔D12の値である2mmを入力する。一方、Z1ブレードの第2インデックスの数値セル92bには、間隔D23+間隔D31の値、すなわち2mm+5mm=7mmを入力する必要がある。また、Z2ブレードの第1インデックスの数値セル92cには、間隔D12+間隔D23の値、すなわち2mm+2mm=4mmを入力する。一方、Z2ブレードの第2インデックスの数値セル92dには、間隔D31の値である5mmを入力する必要がある。このような数値を入力する際には、数値リスト表示欄934に表示された中から数値を選択してタッチすることにより、その数値を計算式の一部として使用することができ、計算式の入力を効率化することができる。
【0032】
上記例においては、Z1ブレードの第2インデックスの数値セル92b及びZ2ブレードの第1インデックスの数値セル92cには計算結果を入力する必要があるため、電卓画面93を表示させて使用する。
【0033】
電卓画面93上において、オペレータが数値キー931及び演算子キー932をタッチして、例えばZ1ブレードの第2インデックスを算出するための計算式を入力すると、その入力を制御手段81が受け付け(ステップS7)、
図5に示した算出部814がその計算を行い、数値表示部812が計算結果を数値表示欄933に表示する(ステップS8)。
【0034】
計算結果が数値表示欄933に表示された後、オペレータが例えば数値表示欄933をタッチすると、数値転送部816が数値表示欄933に表示された数値を数値セル92bに転送して表示させる(ステップS9)。
【0035】
なお、オペレータが文字セルをタッチした場合は、ソフトウェアキーボードから入力される文字を制御手段81が受け付け(ステップS10)、その文字を文字セルに入力して表示させる(ステップS11)。
【0036】
また、オペレータが数値セルをタッチした場合であっても、電卓アイコンをタッチしなかった場合は、ソフトウェアキーボードから入力される数値を制御手段81が受け付け(ステップS12)、その数値を数値セルに入力して表示させる(ステップS13)。
【0037】
このように、オペレータによって数値セルが選択されると、電卓表示部811が電卓画面93をタッチパネル80に表示し、オペレータは、電卓画面93上で計算をして計算結果を算出し、算出された計算結果を数値セル92に転送することができる。したがって、タッチパネル80とは別に電卓をオペレータの手元に用意する必要がないため、数値セルに入力する数値に誤りが生じにくく、加工不良や装置の破損が発生するおそれを低減することができる。
【0038】
以上のようにして加工条件が入力されると、その加工条件に従ってウェーハWの切削加工が行われる。
図1に示したカセット70aには、複数のウェーハユニットUが収容される。カセット70aは、カセットテーブル70に載置される。そして、カセットテーブル70が昇降し、搬出しようとするウェーハユニットUが所定の高さ位置に位置付けられ、把持部73によってフレームFが把持され、アーム74が+Y方向に移動することにより、ウェーハユニットUがカセット70aから搬出される。
【0039】
カセット70aから搬出されたウェーハユニットUは、位置合わせ手段62において一定の位置に位置合わせされた後、受け渡し手段77によってチャックテーブル6に載置され、ウェーハWが吸引保持部60に吸引保持され、フレームFが固定部61によって固定される。
【0040】
次に、
図2に示した加工送り手段2がチャックテーブル6を−Xに移動させ、撮像手段31によってウェーハWの表面が撮像される。そして、例えばラインL1を基準として切削されるラインの位置が特定される場合は、ラインL1を検出する。なお、以下では、最初に、第一切削手段3aのブレード30によってラインセットLS1のラインL2を切削し、第二切削手段3bのブレード30によってラインセットLS6のラインL1を切削することとする。したがって、第一切削手段3aの撮像手段31は、ラインセットLS1のラインL1を検出し、第二切削手段3bの撮像手段31は、ラインセットLS6のラインLS1を検出する。
【0041】
最初に、第一切削手段3aのブレード30がラインセットLS1のラインL1の延長上に位置合わせされ、第二切削手段3bのブレード30がラインセットLS6のラインLS1の延長上に位置合わせされる。次に、第一切削手段3aが−Y方向に割り出し送りされ、ラインセットLS1のラインL2の延長上にブレード30が位置合わせされる。なお、第二切削手段3bのブレード30については、ラインセットLS6のラインLS1の延長上に位置合わせされたままとする。
【0042】
こうして2つのブレードが所定の位置に位置合わせされた状態で、各ブレード30が回転するとともに所定のZ軸方向に位置に位置付けされ、チャックテーブル6がさらに−X方向に移動することにより、2本のラインが2つのブレード30によってそれぞれ切削される。
【0043】
次に、第一切削手段3a及び第二切削手段3bがY軸方向に所定距離だけ割り出し送りされ、次に切削しようとするラインに対して2つのブレード30のY軸方向の位置合わせが行われる。ここで、割り出し送りされる所定距離は、
図4の加工条件入力画面90において入力したZ1ブレードの第2インデックス及びZ2ブレードの第1インデックスであり、この割り出し送りがなされた後、2つのブレード30によって、ラインセットLS2のラインL2及びラインセットLS6のラインL3がそれぞれ切削される。
【0044】
次に、第一切削手段3aがZ1ブレードの第2インデックスだけ割り出し送りされ、第二切削手段3bがZ2ブレードの第2インデックスだけ切削された後に、同様に切削が行われる。
【0045】
このようにして割り出し送りをしつつ切削が行われ、すべてのラインが切削されると、チャックテーブル6が+X方向に移動し、
図1に示した受け渡し手段77の吸着部78によってフレームFが吸着され、位置合わせ手段62に載置される。そして、搬出入手段72の把持部73によってフレームFが把持され、カセット70aを所定の高さ位置に位置付けるとともに、水平移動部75がアーム74を−Y方向に移動させることにより、ウェーハユニットUがカセット70aに収容される。このような動作が、カセット70aに収容されたすべてのウェーハユニットについて行われる。
【0046】
各インデックスの値は、電卓画面93における電卓機能を用いて計算されたもので、計算結果がインデックスのセルに転送されているため、オペレータの手元にある電卓を用いて計算してセルに入力する場合と比較して、計算結果の入力に誤りが生じるおそれが低減され、誤った数値が加工条件となって誤った位置を切削するおそれが低減され、また、装置の破損が発生するおそれを低減することができる。
【0047】
上記実施形態では、記憶手段82に記憶された数値リストを電卓画面93の数値リスト表示欄934に表示させる例について説明したが、記憶手段82に記憶された数値リストは、数値セルが選択されたときにその数値セルの近傍に表示させるようにしてもよい。この場合は、その数値リストから選択された数値が数値セルに入力される。
【0048】
なお、上記実施形態では、加工装置の例として切削装置を挙げたが、本発明は、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の他の加工装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:切削装置 10:加工室
2:加工送り手段
20:ボールネジ 21:ガイドレール 22:モータ 23:移動板
24:回転駆動手段
3:切削手段
3a:第一切削手段 3b:第二切削手段
30:ブレード 31:撮像手段 32:ノズル
4:割り出し送り手段
40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:パルスモータ 43:移動板
5:切り込み送り手段
50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:パルスモータ 53:移動板
6:チャックテーブル
60:吸引保持部 61:固定部 62:位置合わせ手段
70:カセットテーブル 70a:カセット
72:搬出入手段 73:把持部 74:アーム 75:水平移動部
77:受け渡し手段 78:吸着部 79:昇降駆動部
80:タッチパネル
81:制御手段
810:セル表示部 811:電卓表示部 812:数値表示部 813:リスト表示部
814:算出部 815:数値選択入力部 816:数値転送部
82:記憶手段
90:加工条件入力画面
91:文字セル 92:数値セル
93:電卓画面
931:数値キー 932:演算子キー 933:数値表示欄
934:数値リスト表示欄
U:ウェーハユニット W:ウェーハ T:テープ F:フレーム