(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1袋部と、該第1袋部に取り付けられて連通された少なくとも1つの第2袋部とを備え、前記第1袋部と前記第2袋部とは、両者が連通された部分を構成するフィルム材を貼り合わせたイージーピール部により仕切られると共に、貼り合わされた前記フィルム材が剥離可能に構成された複室容器であって、
前記第1袋部は、正面部と、背面部と、折目で内側に折り込まれるまち構造を有する一対の側面部とを有し、少なくとも前記正面部と前記側面部、及び前記背面部と前記側面部とが、上端縁及び下端縁で接合されたシール部と、前記上端縁及び前記下端縁の少なくとも一方に、前記正面部、前記側面部及び前記背面部とが接合されていない未シール部とを備え、
前記第2袋部は、少なくとも前面部と後面部とを有し、周縁の一部を開くことが可能な開口部を有し、
前記イージーピール部は、前記開口部に設けられ、該開口部を有する部分が前記第1袋部の前記未シール部に挿入される挿入部として構成され、
前記未シール部を備える前記シール部は、幅方向の両側に形成され、前記第1袋部の側端縁と、該側端縁から中心側に所定の距離だけ内側に位置する点との間の領域であって、折り込まれた前記側面部がシールされている部分の最も内側の位置は折り込まれた前記側面部の最も内側に位置する折目の位置よりも外側に位置する範囲でシールされたものであり、
前記未シール部は、幅方向の両側に形成された前記シール部同士の中間部分であって、前記挿入部が挿入される被挿入部として構成されたものであり、
前記第2袋部の前記後面部又は前面部の両側端縁と、前記第1袋部の前記側面部の前記折目との間の範囲で前記後面部又は前記前面部の外面が前記第1袋部の折り込まれた前記側面部の内面にシールされており、
前記第1袋部と前記第2袋部とは、
前記挿入部が前記未シール部に挿入され、
前記前面部が前記正面部にシールされると共に、前記後面部が、前記背面部にシールされ、且つ、少なくとも、前記第2袋部の側端縁と該第2袋部の幅方向における前記側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で前記側面部にシールされるか、
または、
前記後面部が前記背面部にシールされると共に、前記前面部が、前記正面部にシールされ、且つ、少なくとも、前記第2袋部の側端縁と該第2袋部の幅方向における前記側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で前記側面部にシールされて、構成されている、ことを特徴とする複室容器。
前記第2袋体の外表面は、前記第1袋部における前記第2袋部の前記挿入部が挿入される被挿入部の内表面に熱融着可能な材質で構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複室容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された従来の複室容器では、各部屋に液体を収容することや、気体を含んだ状態で内容物を収容することを想定して構成されている。そのため、複室容器を外から押し付け内圧を上昇させることにより、仕切シール部の位置でシールされたフィルム同士を剥離させるというメカニズムが有効に作用する。
【0007】
ところが、各部屋に収容する物質が、粉体や粒体等の固体であり、しかも、各部屋を真空に近い状態に保たなければならないような場合、複室容器を外から押しつけても、内圧を上昇させることは困難である。そのため、従来の複室容器では、粉体や粒体等の固体を各部屋に収容した場合、仕切シール部の位置でフィルム同士が剥離せず、各部屋に収容された物質を混ぜ合わせることが困難である。
【0008】
また、従来の複室容器では、粉体・個体を含む内容物の場合、たとえ、仕切シール部の位置でフィルム同士が剥離したとしても、部屋と部屋とを連絡する部分が小さく、仕切シール部の位置で物質が滞留してしまい,円滑に物質同士を混ぜ合わせることが困難な場合があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、少なくとも1つの部屋に収容された粉体や粒体等の固体を他の部屋に収容された物質と円滑に混ぜ合わせることができる複室容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る複室容器は、第1袋部と、該第1袋部に取り付けられて連通された少なくとも1つの第2袋部とを備え、前記第1袋部と前記第2袋部とは、両者が連通された部分を構成するフィルム材を貼り合わせたイージーピール部により仕切られると共に、貼り合わされた前記フィルム材が剥離可能に構成された複室容器であって、
前記第1袋部は、正面部と、背面部と、折目で内側に折り込まれるまち構造を有する一対の側面部とを有し、少なくとも前記正面部と前記側面部、及び前記背面部と前記側面部とが、上端縁及び下端縁で接合されたシール部と、前記上端縁及び前記下端縁の少なくとも一方に、前記正面部、前記側面部及び前記背面部とが接合されていない未シール部とを備え、前記第2袋部は、少なくとも前面部と後面部とを有し、周縁の一部を開くことが可能な開口部を有し、前記イージーピール部は、前記開口部に設けられ、該開口部を有する部分が前記第1袋部の前記未シール部に挿入される挿入部として構成され、
前記未シール部を備える前記シール部は、幅方向の両側に形成され、前記第1袋部の側端縁と、該側端縁から中心側に所定の距離だけ内側に位置する点との間の領域であって、折り込まれた前記側面部がシールされている部分の最も内側の位置は折り込まれた前記側面部の最も内側に位置する折目の位置よりも外側に位置する範囲でシールされたものであり、前記未シール部は、幅方向の両側に形成された前記シール部同士の中間部分であって、前記挿入部が挿入される被挿入部として構成されたものであり、前記第2袋部の前記後面部又は前面部の両側端縁と、前記第1袋部の前記側面部の前記折目との間の範囲で前記後面部又は前記前面部の外面が前記第1袋部の折り込まれた前記側面部の内面にシールされており、
前記第1袋部と前記第2袋部とは、前記挿入部が前記未シール部に挿入され、前記前面部が前記正面部にシールされると共に、前記後面部が、前記背面部にシールされ、且つ、少なくとも、前記第2袋部の側端縁と該第2袋部の幅方向における前記側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で前記側面部にシールされるか、または、前記後面部が前記背面部にシールされると共に、前記前面部が、前記正面部にシールされ、且つ、少なくとも、前記第2袋部の側端縁と該第2袋部の幅方向における前記側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で前記側面部にシールされて、構成されている
、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、上記のように、第2袋部の後面部が、(i)第2袋部の側端縁と、この第2袋部の幅方向における側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置と、の間の範囲で第1袋部の側面部にシールされるか、または、(ii)第2袋部の前面部が、第2袋部の側端縁と、この第2袋部の幅方向における側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置と、の間の範囲で第1袋部の側面部にシールされている。この構成により、前面部と後面部とがイージーピール部の位置で剥離されたときに、第1袋部の折り込まれた側面部が前後方向に広がる。この広がりに伴って、前面部又は後面部が前後方向に大きく開かれる。そのため、イージーピール部の位置に形成される開口部の開口面積を大きく形成することができる。その結果、第1袋部と第2袋部とに収容されていた粉体や粒体等の固体同士を、開口さされた部分で滞留させることなく円滑に混ぜ合わせることができる。
【0012】
本発明に係る複室容器において、前記前面部が前記正面部にシールされると共に、前記後面部が、前記背面部にシールされ、且つ前記第1袋部の幅方向において前記側面部の全体にシールされるか、または、前記後面部が前記背面部にシールされると共に、
前記前面部が、前記正面部にシールされ、且つ前記第1袋部の幅方向において前記側面部の全体にシールされている。
【0013】
この発明によれば、上記のように、第2袋部の後面部が、第1袋部の幅方向において第1袋部の側面部の全体にシールされるか、または、第2袋部の前面部が、前記第1袋部の幅方向において側面部の全体にシールされている。そのため、第2袋部の前面部又は後面部が部分的に第1袋部の側面部にシールされている場合に比べて、剥離されたイージーピール部の位置でより大きく開口させることができる。
【0014】
本発明に係る複室容器において、前記正面部と前記背面部には、前記イージーピール部で前記前面部と前記後面部とを剥離させる摘まみ部が設けられている。
【0015】
この発明によれば、摘まみ部を手で摘まみ、正面部と背面部とが引き離させる方向に力を加えることにより、正面部にシールされた第2袋部の前面部と背面部にシールされた第2袋部の後面部とを、イージーピール部の位置で剥離させることができる。その結果、第1袋部と第2袋部とに粉体や粒体等の固体を収容し、複室容器を押しつぶしても複室容器の内圧が上昇しない場合でも、イージーピール部の位置で前面部と後面部とを剥離させることができる。
【0016】
本発明に係る複室容器において、前記第2袋体の外表面は、前記第1袋部における前記第2袋部の前記挿入部が挿入される被挿入部の内表面に熱融着可能な材質で構成されている。
【0017】
この発明によれば、前記第2袋体の外表面は、前記第1袋部における前記第2袋部の前記挿入部が挿入される被挿入部の内表面に熱融着可能な材質で構成されているので、第1袋部と第2袋部とをシールするときに、ヒートシールにより両者をシールすることができる。
【0018】
本発明に係る複室容器において、前記第1袋部と前記第2袋部とには、内部に所定の物質を注入するための注入部を有している。
【0019】
この発明によれは、第1袋部と第2袋部とには内部に物質を注入するための注入部がそれぞれ設けられているので、第1袋部と第2袋部とに異なる物質を別々に収容させることができる。そのため、各袋部に異なる物質を収容するときに、各物質が混ざり合うことを防止することができる。また、各物質を混ぜあわせた後に、混合物を双方の注入部を利用して排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも1つの部屋に収容された粉体や粒体等の固体を他の部屋に収容された物質と円滑に混ぜ合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0023】
[基本構成]
本発明に係る複室容器1は、第1袋部10と、第1袋部10に取り付けられて連通された少なくとも1つの第2袋部40とを備えている。第1袋部10と第2袋部40とは、両者が連通された部分を構成するフィルム材を貼り合わせたイージーピール部46により仕切られると共に、貼り合わされたフィルム材が剥離可能に構成されている。第1袋部10と第2袋部40とが「連通(communicate)」とは、第1袋部10と第2袋部40とが「連なって通じる」ことを意味する。
【0024】
第1袋部10は、正面部11と、背面部12と、折目14で内側に折り込まれるまち構造を有する一対の側面部13とを有している。第1袋部10は、少なくとも正面部11と側面部13、及び背面部12と側面部13とが、上端縁及び下端縁で接合されたシール部23,24を備えている。また、第1袋部10は、上端縁及び下端縁の少なくとも一方に、正面部11、側面部13及び背面部12が接合されていない未シール部Rを備えている。第2袋部40は、少なくとも前面部41と後面部42とを有している。また、第2袋部40はその周縁の一部を開くことが可能な開口部45aを有している。開口部45aは、前面部41と後面部42とが剥離可能にシールされたイージーピール部46を有し、開口部45aを有する部分が第1袋部10の未シール部Rに挿入される挿入部45として構成される。
【0025】
第1袋部10と第2袋部40とは、次の2通りの接合タイプにより接合される。(i)第1のタイプは、前面部41が正面部11にシールされると共に、後面部42が、背面部12にシールされ、且つ、少なくとも、第2袋部40の側端縁とこの第2袋部40の幅方向における側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で側面部13にシールされる形態である。(ii)第2のタイプは、後面部42が背面部12にシールされると共に、前面部41が、正面部11にシールされ、且つ、少なくとも、第2袋部40の側端縁とこの第2袋部40の幅方向における側端縁よりも一定の距離だけ中心側の位置との間の範囲で側面部13にシールされる形態である。
【0026】
この複室容器1によれば、少なくとも1つの部屋、すなわち、第1袋部10及び第2袋部40の一方又は両方に収容された粉体や粒体等の固体を、他の部屋、すなわち、第1袋部10及び第2袋部40の他方に収容された物質と円滑に混ぜ合わせることができるという特有の効果を奏することができる。
【0027】
本明細書において、
図1の左右方向を複室容器1の幅方向Xとし、
図1の上下方向を複室容器1の上下方向Yとして説明する。また、
図1の紙面を貫く方向、すなわち、第1袋部10の正面部11と背面部12が対向する方向、及び第2袋部40の前面部41と後面部42とが対向する方向を前後方向Zとして説明する。各図には、X、Y、Zの符号と各符号が表す方向をそれぞれ示している。また、第1袋部10、第2袋部40及び第3袋部60は、それぞれ複室容器1に設けられた部屋を意味する。
【0028】
[第1実施形態]
第1実施形態の複室容器1は、
図1〜
図4に示すように、所望の物質を収容するための第1袋部10と別の物質を収容するための1つの第2袋部40とにより構成されている。
【0029】
〈第1袋部〉
第1タイプの複室容器1の第1袋部10は、
図1、
図2及び
図4に示すように4枚のフィルム材によって構成されている。具体的に、4枚のフィルム材は、第1袋部10の正面部11、背面部12、及び一対の側面部13をそれぞれ構成している。第1袋部10は、これら4枚のフィルム材によりガゼットタイプの袋体として構成されている。ただし、第1袋部10は、各フィルム材を複数枚用いて2重袋、3重袋とすることもできる。
【0030】
正面部11及び背面部12に用いられるフィルム材の形状等は特に限定されないが、例えば四角形の平面状のフィルム材がそれぞれ用いられる。こうした正面部11と背面部12とは、複室容器1の前後方向Zで相互に対向している。側面部13に用いられるフィルム材もその形状等は、特に限定されないが、例えば、四角形のフィルム材が用いられる。側面部13を構成するフィルム材は、第1袋体として構成された際の前後方向Zの中央又は略中央に折目14が上下方向Yに延びるようにして形成されている。側面部13は、第1袋の幅方向Xの左右両側に位置しており、折目14の位置で折り込まれ、折目14が第1袋体の中心側に格納されるように構成されている。
【0031】
(正面部、背面部及び側面部のシール)、
正面部11と側面部13とは、正面部11の側端縁と側面部13の一方の側端縁とが上下方向Yの全体にわたってシールされることにより接合されている。同様に、背面部12と側面部13とについても、背面部12の側端縁と側面部13の他方の側端縁とが上下方向Yの全体にわたってシールされることにより接合されている。このシールされた部分は、図面においてシール部21,22としてそれぞれ示されている。シールする方法は特に限定されないが、例えば、正面部11と側面部13、及び背面部12と側面部13とをそれぞれヒートシールする方法を利用することができる。
【0032】
なお、図示した実施形態の第1袋部10は、4枚のフィルム材を用いて形成しているが、1枚の四角形のフィルム材を折り込んで、正面部11、一対の側面部13を形成し、背面部12の位置でフィルム材の側端縁同士をシールすることにより形成することもできる。すなわち、第1袋部10は、1枚のフィルム材を用いて形成された背面シールタイプの袋体を用いることもできる。また、フィルム材の側端縁同士のシール部をシール部21又はシール部22とすることにより形成することもできる。
【0033】
次に、第1袋部10の上端縁と下端縁のシール部23,24について説明する。第1袋部10の上端縁は、幅方向Xの両側の一定範囲のみがシールされ、幅方向の中間部分の一定範囲の領域はシールされずに開かれた未シール部Rとして構成されている。一方、下端縁は、幅方向Xの全体がシールされ、閉じられている。
【0034】
上端縁では、
図2おいて、符号Qで示した領域で、正面部11と側面部13との対向する面、及び背面部12と側面部13との対向する面がシールされている。符号Qで示した領域は、第1袋部10の側端縁と、この側端縁から中心側に所定の距離だけ内側に位置する点との間の領域である。
図2に示すように、折り込まれた側面部13がシールされている部分の最も内側の位置は、折り込まれた側面部13の最も内側に位置する折目14の位置よりも外側に位置している。こうした符号Qで示した領域が上端縁のシール部23を構成している。
【0035】
幅方向の両側に形成されたシール部23同士の間における、符号Rで示した幅方向の中間部分は、シールされていない未シール部Rとして構成されている。この未シール部Rは、正面部11と側面部13との対向する面、背面部12と側面部13との対向する面、及び正面部11と背面部12との対向する面が、相互にシールされていない領域である。この未シール部Rは、第2袋部40の挿入部45が挿入される被挿入部29として構成されている。
【0036】
一方、下端縁では、第1袋体の幅方向Xの全体にわたってシールされており、下端縁は、閉じられている。具体的に、正面部11と側面部13とが対向する面では、正面部11と側面部13とがシールされて、シール部24が形成されている。シールされる範囲は、第1袋部10の幅方向において、側面部13の全領域である。背面部12と側面部13とについても、両者が対向する面では、背面部12と側面部13とがシールされて、シール部24が形成されている。シールされる範囲は、第1袋部10の幅方向において、側面部13の全領域である。また、下端縁では、一方の側面部13の折目14と他方の側面部13の折目14との間で、正面部11の内面と背面部12の内面とが直接対向している領域で、正面部11の内面と背面部12の内面とがシールされて、シール部24が形成されている。
【0037】
また、第1袋部10には、その下部の強度と剛性を高めるために、補強シール部26が設けられている。ただし、この補強シール部26を設けることは、必須ではなく、必要に応じて設ければよい。補強シール部26は、第1袋部10の下部において側端縁と下端縁とを結んでおり、第1袋部10の下側の隅の部分で斜めに延びている。また、シール部24の、シール部24と補強シール部26との交点よりも第1袋部10の側端縁側に、側面部13の一部を切り欠いて正面部11と背面部12とを直接シールすることで、前記交点部にかかる応力を分散することができる。なお、必要に応じて第1袋部10の上部にも同様に補強シールを設けることもできる。
【0038】
(フィルム材)
正面部11、背面部12、及び側面部13をそれぞれ構成するフィルム材は、特別な積層構造のフィルム材ではなく、従来から一般的に使用されている積層フィルム材であり、基材層にシーラント層を積層してなるフィルム材が用いられている。基材層としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエステル等からなるフィルム材が用いられる。シーラント層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。積層フィルム材を製造する方法としては、例えば、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法などを挙げることができる。また、基材層とシーラント層との間に接着剤やアンカー剤等を設けることによって、基材層とシーラント層との接着強度を向上させることができる。
【0039】
(注入ユニット)
注入ユニット30は、第1袋部10の内部に所望の物質を注入したり、第1袋部10に収容された物質と第2袋部40に収容された物質とが混ぜ合わされた後に、混合物を複室容器1から排出したりするときに用いられる構成要素である。注入ユニット30は、
図1及び
図2に示すように正面部11の任意の位置に設けられている。また、注入ユニット30は、図示しないが第1袋部10の周辺シール部に設けてもよい。本実施形態の複室容器1において、注入ユニット30は、筒状部32が設けられたタイプを一例として図示して説明する。
【0040】
注入ユニット30は、筒状部32と、この筒状部32を開閉するための蓋部33とで構成されている。筒状部32の内部は空洞になっていて、第1袋部10の内部と外部とを連絡できるように構成されている。蓋部33は円筒をなしており、筒状部32の外側にはめ込んだり、取り外したりすることができるように構成されている。筒状部32と蓋部33とは、蓋部33を単純に筒状部32の外周部にはめ込むように構成したり、筒状部32の外周面と蓋部33の内周面とにねじを形成してねじ込むように構成したりすることができる。また、蓋部33はヒンジ等で筒状部32と連結されていてもよい。
【0041】
この注入ユニット30は、例えば、樹脂により構成される。注入ユニット30を構成している筒状部32は第1袋部10に接着可能な材質であれば特に制限はなく、蓋部33については特に制限がなく、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形などにより成形される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを例として挙げることができる。
【0042】
物質を第1袋部10の内部に注入するための構成は、第1袋部10の周縁の一部に図示しない未シール部を形成することにより形成することもできる。例えば、第1袋部10の下端縁に正面部11と背面部12とがシールされない未シール部を幅方向の一部に形成し、所望の物質がこの未シール部から第1袋部10の内部に注入されるように、物質を注入するための構成は形成される。
【0043】
〈第2袋部〉
第2袋部40は、第1袋部10の上端縁に取り付けられた第1袋部10とは異なる袋体である。この第2袋部40の大きさは、特に限定されないが、本実施形態の複室容器1では、
図1及び
図3に示すように、第1袋部10よりも小さい袋体が用いられている。ただし、第2袋体は、第1袋体と同程度の大きさの袋体を用いたり、第1袋体よりも大きい袋体を用いたりしてもよい。また、第2袋体の形態に関しても、特に限定はなく、平袋、ガゼット袋等、必要に応じた形態の袋体を用いることができる。さらに、第2袋体の外形も特に限定されず、四角形の袋体、円形の袋体、楕円形の袋体等、様々な外形の袋体を用いることができる。本実施形態の複室容器1では、外形が四角形で、四角形の1辺に挿入部45が外側に延びる形状の平袋が用いられている。
【0044】
この実施形態の複室容器1に用いられている第2袋部40は、2枚のフィルム材、すなわち、前面部41を構成するフィルム材と後面部42を構成するフィルム材とにより形成されている。各フィルム材は、四角形をなしており、四角形のなかの1辺には、外側に向けて突出する部分が形成されている。この外側に向けて突出する部分は、第1袋体の未シール部R、すなわち、被挿入部29に挿入させるための挿入部45として構成される。また、挿入部45の内側は、開口された開口部45aとして構成される。各フィルム材を複数枚用いて2重袋、3重袋とすることもできる。
【0045】
図3に示すように、第2袋部40は、前面部41を構成するフィルム材と後面部42を構成するフィルム材とが周縁をシールすることにより構成されている。具体的に、四角形をなす部分の対向する辺をなす側端縁と、四角形の1辺をなす下端縁とにおいて、前面部41を構成するフィルム材と後面部42を構成するフィルム材とがシールされている。
図3では、シール部43として示されている。また、挿入部45では、両側端縁がシールされている。このシールされた部分についても、シール部43として図示されている。これに対し、挿入部45の上端縁は、シールされないで開かれている。すなわち、挿入部45は、第2袋部40の内側と外側とを連絡するための開口部45aとして機能している。なお、第2袋部40をチューブ状のフィルムで構成することもできる。
【0046】
そして、挿入部45には、前面部41を構成しているフィルム材の内面と後面部42を構成しているフィルム材の内面とを剥離可能に貼りあわせたイージーピール部46が設けられている。このイージーピール部46のシール強度は、第1袋体の各シール部や、第2袋体の周縁をシールしている各シール部のシール強度よりも低く設定されている。
【0047】
(注入ユニット)
第2袋部40の注入ユニット50は、第2袋部40の内部に所望の物質を注入したり、第1袋部10に収容された物質と第2袋部40に収容された物質とが混ぜ合わされた後に、混合物を排出したりすることに用いられる。注入ユニット50を設ける位置は特に限定されないが、
図1及び
図3には、注入ユニット50が第2袋部40の下端縁の位置に設けられた形態を例示している。この注入ユニット50は、筒状部51と、筒状部51の先端側を開閉するための蓋部52とにより構成されている。なお、注入ユニット50を構成するための材料は、第1袋部10に設けられた注入ユニット50と同様なので、ここではその説明を省略する。
【0048】
また、所望の物質を第2袋部40の内部に注入するための構成は、第2袋部40の周縁の一部に図示しない未シール部を形成することにより形成したり、挿入部45から注入した後にイージーピール部46を形成したりして形成するができる。
【0049】
(第1袋部と第2袋部とのシール)
以上に説明した第2袋部40は、その挿入部45が第1袋部10の被挿入部29に挿入され、挿入部45と被挿入部29とがシールされることにより第1袋部10と一体化される。以下、第1袋部10と第2袋部40とのシールの形態について具体的に説明する。
【0050】
第2袋部40の挿入部45は、第1袋体の被挿入部29の位置において、正面部11と折り込まれた側面部13との間、又は背面部12と折り込まれた側面部13との間に挿入される。以下では、第2袋体の挿入部45が、被挿入部29の正面部11と折り込まれた側面部13との間に挿入された形態を例に説明する。
【0051】
第2袋体の挿入部45は、
図4に示すように、第1袋体の被挿入部29の正面部11と折り込まれた側面部13との間に挿入されている。この状態では、第2袋部40の前面部41の外面は、第1袋部10の正面部11の内面に対向している。一方、第2袋部40の後面部42の外面は、第1袋部10の背面部12の内面及び折り込まれた側面部13の内面に対向している。シールは、第1袋部10と第2袋部40とが各々対向している面同士が第1袋部10の上端縁の位置で、被挿入部29の幅よりも広い範囲に行われる。
【0052】
具体的に、第2袋部40の前面部41の外面は第1袋部10の正面部11の内面にシールされる。第2袋部40の前面部41の外面と第1袋部10の正面部11の内面とがシールされる範囲は、第2袋部40の幅方向Xの全体にわたる領域である。
【0053】
一方、第2袋部40の後面部42の外面は、背面部12の内面にシールされる。第2袋部40の後面部42の外面と第1袋部10の背面部12の内面とがシールされる範囲は、第1袋部10の幅方向Xにおいて、内側に折り込まれた一方の側面部13の折目14と他方の側面部13の折目14との間の領域である。
図4において、符号Hで示した領域が、第2袋部40の後面部42の外側と第1袋部10の背面部12の内面とがシールされた部分である。また、第2袋部40の後面部42両側端縁と、側面部13の折目14との間の範囲では、後面部42の外面が第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面にシールされる。
図4において、符号Jで示した領域が、第2袋部40の後面部42の外側と第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面とがシールされた部分である。この複室容器1は、
図4の符号Jで示したように、第2袋部40の後面部42の外側と第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面とがシールされた部分を設けている点に大きな特徴がある。この部分の作用については、後ほど説明する。
【0054】
第1袋部10と第2袋部40とをシールする方法は、特に限定されない。ただし、第2袋体の前面部41及び後面部42の外表面を、第1袋部10における被挿入部29の内表面に熱融着可能な材質で構成することによって、第1袋部10と第2袋部40とをヒートシールして接合することができる。
【0055】
(摘まみ部)
摘まみ部28は、第1袋部10の正面部11の外面と背面部12の外面とに設けられている。この摘まみ部28は、イージーピール部46の位置で第2袋部40の前面部41と後面部42とを剥離するときに用いられる構成要素である。前面部41と後面部42とを剥離する場合には、正面部11に設けられた摘まみ部28と背面部12に設けられた摘まみ部28とが、人の手で摘ままれ、正面部11と背面部12とが引き離される方向に力が加えられる。その結果、正面部11にシールされた第2袋部40の前面部41と背面部12にシールされた第2袋部40の後面部42とが剥離される。
【0056】
〈複室容器の作用〉
以上に説明した複室容器1は、次のように作用する。第1袋部10と第2袋部40には、それぞれ異なる物質が収容される。収容される物質は、液体又は固体のどちらでもよいが、一方の袋から粉体や粒体等の内圧が伝播しにくい内容物を他方の袋に入れたい場合に、この複室容器1は、利便性を発揮する。例えば、第1袋部10と第2袋部40との両方に粉体や流体等の固体が収容されている場合、本実施形態の複室容器1では、第2袋部40の後面部42の両側端縁と、側面部13の折目14との間の範囲で後面部42の外面が第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面にシールされている。そのため、イージーピール部46の位置で剥離された第2袋部40の前面部41と後面部42とが剥離されたとき、側面部13が前後方向Zに開かれることに伴い、第2袋部40の後面部42は、側面部13と共に前後方向に開かれる。その結果、剥離された位置の開口面積を従来の複室容器1に比べて大きく形成できる。この点もこの複室容器1の特徴点である。
図5を参照して具体的に説明する。なお、
図5は、イージーピール部46の位置で第2袋部40の前面部41と後面部42とが剥離された状態を示している。
【0057】
この複室容器1では、上述したように、第2袋部40の後面部42両側端縁と両側端縁から内側に一定の距離だけ入り込んだ位置との間の領域は、幅方向の両側が第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面にシールされている。このシールの構造では、第2袋部40の前面部41と後面部42とがイージーピール部46の位置で剥離されたとき、第1袋部10の側面部13が深く折り込まれた形態から前後方向に広げられる。第1袋部10の側面部13が前後方向に開かれることに伴い、前面部41及び後面部42は、前後方向Zに大きく引き離される。その結果、イージーピール部46の位置では、大きな開口部45aが形成される。イージーピール部46の位置で大きな開口部45aが形成されことにより、第1袋部10と第2袋部40とに収容されていた粉体や粒体等の固体は、開口部45aの位置で滞留することが抑制され、円滑に混ざり合う。
【0058】
また、各部屋を真空状態としている場合や、収容された液体や気体が少量の場合では、複室容器1を外から押しつけても、第1袋室の内圧及び第2袋部40の内圧は上昇しない。そのため、複室容器1を外から押しつけても、イージーピール部46の位置で前面部41と背面部12とを剥離させることはできない。これに対し、本実施形態の複室容器1では、第1袋部10の正面部11と背面部12とに摘まみ部28が設けられている。第1袋部10の正面部11と背面部12との摘まみ部28を手で摘まみ、正面部11と背面部12とが引き離される方向に力を加えることにより、イージーピール部46の位置で前面部41と背面部12とが剥離される。その結果、第1袋部10と第2袋部40とを容易に連絡させて、第1袋部10に収容された物質と第2袋部40に収容された物質とを混ぜ合わせることができる。
【0059】
第1袋部10と第2袋部40とにそれぞれ収容されていた物質が混ざり合った混合物は、第1袋部10の注入ユニット30又は第2袋部40の注入ユニット50から複室容器1の外部に排出される。混合物を排出するときには、第1袋部10の注入ユニット30又は第2袋部40の注入ユニット50の蓋部33,52が注入部から取り外され、複室容器1の内部と外部とが連絡された状態が形成される。混合物は、こうした注入ユニット30又は50から複室容器1の外部に注出される。また、使用目的によっては、混合物を複室容器1の外部に注出しないで、そのままの状態で使用することも可能である。
【0060】
注入するための構成が、第1袋部10及び第2袋部40の周縁に図示しない未シール部を形成し、この未シール部から所望の物質を第1袋部10と第2袋部40とに注するタイプの複室容器1では、次のようにして混合物が排出される。このタイプの複室容器1では、第1袋部10と第2袋部40との一方又は両方に、切り裂くための手段、例えば、ノッチ等の開封開始部が形成される。混合物は、第1袋部10又は第2袋部40の引き裂かれた位置から複室容器1の外部に排出される。
【0061】
(第1袋部と第2袋部との別形態のシール)
図6は、
図1〜
図5に示した複室容器1とは別の形態で第1袋部10と第2袋部40とをシールしている複室容器1の断面図を示している。
【0062】
図6に示した複室容器1は、
図5に示した複室容器1と比べればわかるように、第2袋部40の背面部12が、第1袋部10の側面部13の折目14と幅方向Xの側端縁との間の全体にシールされている。
【0063】
図6に示した形態の複室容器1の例では、第2袋部40の幅方向Xの寸法が、第1袋部10の幅方向の寸法よりも若干小さく形成されている。第2袋部40袋部の幅方向Xの寸法は、第1袋部10の
側面部13が折目14で完全に折りたたまれた状態で、正面部11と側面部13、又は背面部12と側面部13との間に挿入することができる寸法に形成されている。例えば、第2袋部40袋部の幅方向Xの寸法は、第1袋部10のシール部21,22の寸法だけ小さく形成されている。
【0064】
第2袋部40の前面部41の外面は、複室容器1の上端縁において、第1袋部10の正面部11の内面にシールされている。シールされる幅方向Xの範囲は、第2袋部40の幅方向Xの全体である。これに対し、第2袋部40の後面部42の外面は、第1袋部10の背面部12の内面と側面部13の内面とにシールされている。第2袋部40の後面部42の外面と第1袋部10の背面部12の内面とがシールされる幅方向Xの範囲は、折り込まれた一方の側面部13の折目14と他方の側面部13の折目14との間の領域である。一方、第2袋部40の後面部42の外面と第1袋部10の側面部13とがシールされる幅方向Xの範囲は、第1袋部10の折り込まれた側面部13の折目14と側端縁との間の領域である。
【0065】
上記の形態で第1袋部10と第2袋部40とがシールされた場合、イージーピール部46の位置で第2袋部40の前面部41と後面部42とが剥離されたとき、複室容器1の前後方向Zに大きく開口させることができる。すなわち、この形態の複室容器1では、第2袋部40の後面部42が、第1袋部10の側面部13における折目14と側端縁との間の全体にシールされている。そのため、第1袋部10の折り込まれた側面部13が複室容器1の前後方向Zに広がることに伴い、第2袋の前面部41と後面部42とを側面部13が開かれた状態の寸法と同じか又は略同じ寸法にまで引き離すことができる。その結果、イージーピール部46の位置で前後方向に大きく開いた開口部45aが形成される。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態の複室容器1は、
図7に示すように、1つの第1袋部10と2つの第2袋部40,60を有している。以下では、便宜上、2つの第2袋部40,60について、第1袋部10の上端縁に設けられた袋部を第2袋部40とし、第1袋部10の下端縁に設けられた袋部を第3袋部60として説明する。なお、第1袋部10及び第2袋部40について、第1実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
複室容器1は、3種類の物質を区分けして収容することができるように第1袋部10、第2袋部40及び第3袋部60の3つの袋部を有している。第2袋部40は、第1実施形態の複室容器1と同様に、第1袋部10の上端縁にシールされて第1袋部10と一体化されている。一方、第3袋部60は、第1袋部10の下端縁にシールされて第1袋部10と一体化されている。イージーピール部46は、第1袋部10の上端縁の位置で第1袋部10と第2袋部40とを区分けしている一方で、イージーピール部66は、第1袋部10の下端縁の位置で第1袋部10と第3袋部60とを区分けしている。
【0068】
〈第1袋部〉
第1袋部10は、ガゼットタイプの袋体として構成されている。第1袋部10は、例えば、4枚のフィルム材が正面部11、背面部12、及び一対の側面部13をそれぞれ構成することにより形成されている。各フィルム材を複数枚用いて2重袋、3重袋とすることもできる。正面部11と側面部13とのシールの構成及び背面部12と側面部13とのシールの構成は、第1実施形態の複室容器1のシールの構成と同様である。シールする方法は特に限定されないが、例えば、正面部11と側面部13、及び背面部12と側面部13とをそれぞれヒートシールする方法を利用することができる。なお、この第2実施形態の第1袋部10に関しても、1枚の四角形のフィルム材を折り込んで、正面部11、一対の側面部13を形成し、背面部12の位置でフィルム材の側端縁同士をシールすることにより形成することもできる。すなわち、第1袋部10は、1枚のフィルム材を用いて形成された背面シールタイプの袋体を用いることもできる。また、フィルム材の側端縁同士のシール部をシール部21またはシール部22とすることにより形成することもできる。
【0069】
次に、第1袋部10の上端縁と下端縁のシールについて説明する。上端縁及び下端縁は、幅方向Xの両側の一定範囲のみがシールされ、幅方向の中間部分の一定範囲の領域はシールされずに開かれた未シール部Rとして構成されている。
【0070】
第2実施形態の複室容器1において、第1袋部10の上端縁のシールの構造は、第1実施形態の複室容器1を構成している第1袋部10のシールの構造と同様である。そのため、
図8を参照し、第1袋部10の上端縁のシールの構造を簡単に説明する。なお、
図8(A)は第1袋部10を示し、
図8(B)は第2袋部40を示し、
図8(C)は第3袋部60を示している。
【0071】
第1袋部10の上端縁では、
図8(A)おいて、符号Qで示した領域で、正面部11と側面部13との対向する面、及び背面部12と側面部13との対向する面がシールされている。符号Qで示した領域は、第1袋部10の側端縁と、この側端縁から中心側に所定の距離だけ内側に位置する点との間の領域である。
図8(A)に示すように、折り込まれた側面部13がシールされている部分の最も内側の位置は、折り込まれた側面部13の最も内側に位置する折目14の位置よりも外側に位置している。シール部とシール部との間における、符号Rで示した幅方向の中間部分は、シールされていない未シール部Rとして構成されている。
【0072】
下端縁のシールの構造は、上端縁のシールの構造と同様である。
図8(A)において、符号Tで示した領域で、正面部11と側面部13との対向する面、及び背面部12と側面部13との対向する面がシールされている。符号Tで示した領域は、第1袋部10の側端縁と、この側端縁から中心側に所定の距離だけ内側に位置する点との間の領域である。
図8(A)に示すように、折り込まれた側面部13がシールされている部分Tの最も内側の位置は、折り込まれた側面部13の最も内側に位置する折目14の位置よりも外側に位置している。シール部とシール部との間における、符号Uで示した幅方向の中間部分は、未シール部Uである。
【0073】
正面部11、背面部12、及び側面部13をそれぞれ構成するフィルム材は、第1実施形態の複室容器1の第1袋部10を構成している正面部11、背面部12、及び側面部13をそれぞれ構成するフィルム材と同様である。また、注入ユニット30についても、構造、材料及び用途は、第1実施形態の複室容器1の第1袋部10に設けられている注入ニットと同様である。
【0074】
摘まみ部28a,28bは、第1袋部10の正面部11の外面と背面部12の外面とに設けられている。具体的に、第1袋部10の上端縁と下端縁とにそれぞれ設けられている。上端縁の位置に設けられた摘まみ部28aは、第1袋部10と第2袋部40とを仕切っているイージーピール部46の位置で、第2袋部40の前面部41と後面部42とを剥離するときに用いられる。一方、下端縁の位置に設けられた摘まみ部28bは、第1袋部10と第3袋部60とを仕切っているイージーピール部66の位置で、第3袋部60の前面部41と後面部42とを剥離するときに用いられる。
【0075】
〈第2袋部〉
第2袋部40は、第1袋部10の上端縁に取り付けられた第1袋部10とは異なる袋体である。第2実施形態の複室容器1を構成している第2袋部40の構成、材料及び用途は、第1実施形態の複室容器1を構成している第2袋部40のものと同様である。すなわち、第2袋体は、前面部41を構成するフィルム材と後面部42を構成するフィルム材とにより形成されている。
【0076】
図8(B)に示すように、第2袋部40は、前面部41を構成するフィルム材と後面部42を構成するフィルム材とが周縁でシールされることにより構成されている。また、挿入部45では、両側端縁がシールされている。これに対し、挿入部45の上端縁は、シールされないで開かれている。
【0077】
そして、挿入部45には、前面部41を構成しているフィルム材の内面と後面部42を構成しているフィルム材の内面とを剥離可能に貼りあわせたイージーピール部46が設けられている。このイージーピール部46のシール強度は、第1袋体の各シール部や、第2袋体の周縁をシールしている各シール部のシール強度よりも低く設定されている。
【0078】
第2袋部40の注入ユニット50は、第2袋部40の内部に所望の物質を注入したり、第1袋部10に収容された物質と第2袋部40に収容された物質とが混ぜ合わされた後に、混合物を排出したりすることに用いられる。この注入ユニット50の構成は、
図8(B)に示すように、第1実施形態の第2袋部40に設けられた注入ユニット50の構成と同様である。また、注入ユニット50の材料及び用途に関しても、第1実施形態の第2袋部40に設けられた注入ユニット50の材料及び用途と同様である。第2実施形態の複室容器1の第2袋部40においても、所望の物質を第2袋部40の内部に注入するための構成は、第2袋部40の周縁の一部に図示しない未シール部を形成することや、挿入部45から注入したのちにイージーピール部46を形成することにより形成することもできる。
【0079】
〈第3袋部〉
第3袋部60は、上述したように、2つの第2袋部40,60のうちの一方の第2袋部60を説明の便宜上第3袋部60としたものである。
【0080】
第3袋部60は、第1袋部10の下端縁に取り付けられた第1袋部10とは異なる袋体である。この第3袋部60の大きさは、特に限定されないが、本実施形態の複室容器1では、
図7及び
図8に示すように、第1袋部10よりも小さい形態の袋体が用いられている。ただし、第3袋体は、第1袋体と同程度の大きさの袋体を用いたり、第1袋体よりも大きい袋体を用いたりしてもよい。また、形態に関しても、平袋、ガゼット袋等、必要に応じた形態の袋体を用いることができる。さらに、第2袋体の外形も特に限定されず、四角形の袋体、円形の袋体、楕円形の袋体等、様々な外形の袋体を用いることができる。本実施形態の複室容器1では、外形が四角形で、四角形の1辺に挿入部45が外側に延びる形状の平袋が用いられている。
【0081】
第3袋部60は、前面部61を構成するフィルム材と後面部62を構成するフィルム材とにより形成されている。各フィルム材は、四角形をなしており、四角形のなかの1辺には、外側に向けて突出する部分が形成されている。この外側に向けて突出する部分は、第1袋体の未シール部U、すなわち、被挿入部29aに挿入させるための挿入部65として構成される。第3袋部60は、前面部61を構成するフィルム材と後面部62を構成するフィルム材とが周縁がシールされることにより構成されている。周縁のシールされた部分は、
図8(C)において、シール部63として示されている。ただし、挿入部65の先端部をなす辺の位置では、シールされずに開口部65aとして機能する。
【0082】
挿入部65には、前面部61を構成しているフィルム材の内面と後面部62を構成しているフィルム材の内面とを剥離可能に貼りあわせたイージーピール部66が設けられている。このイージーピール部66のシール強度は、第1袋部10の各シール部21,22,23,24や、第3袋部の周縁をシールしているシール部63のシール強度よりも低く設定されている。
【0083】
第3袋部60の注入ユニット50の構成、材質及び用途は、第2袋部40の注入ユニット50の構成、材質及び用途と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、所望の物質を第3袋部60の内部に注入するための構成は、第3袋部60の周縁の一部に図示しない未シール部を形成することにより形成することもできる。
【0084】
第3袋部60は、その挿入部65が第1袋部10の下端縁の被挿入部29aに挿入され、挿入部65と被挿入部29aとがシールされることにより第1袋部10と一体化される。第1袋部10と第3袋部60とのシールの構成は、第1袋部10と第2袋部40とのシールの構成と同様である。そのため、第1袋部10と第3袋部60とのシールの構成については、簡単に説明する。
【0085】
第3袋体の挿入部65は、第1袋体の被挿入部29aの正面部11と折り込まれた側面部13との間、又は背面部12と折り込まれた側面部13との間に挿入される。以下では、第3袋体の挿入部65が、被挿入部29の正面部11と折り込まれた側面部13との間に挿入された形態を例に説明する。
【0086】
第3袋体の挿入部65は、
図7に示すように、第1袋体の被挿入部29の正面部11と折り込まれた側面部13との間に挿入されている。この状態では、第3袋部60の前面部61の外面は、第1袋部10の正面部11の内面に対向している。一方、第3袋部60の後面部62の外面は、第1袋部10の背面部12の内面及び折り込まれた側面部13の内面に対向している。
【0087】
第3袋部60の前面部61の外面は第1袋部10の正面部11の内面にシールされる。第3袋部60の前面部61の外面と第1袋部10の正面部11の内面とがシールされる範囲は、第3袋部60の幅方向Xの全体にわたる領域である。一方、第3袋部60の後面部62の外面は、背面部12の内面にシールされる。第3袋部60の後面部62の外面と第1袋部10の背面部12の内面とがシールされる範囲は、第1袋部10の幅方向Xにおいて、内側に折り込まれた一方の側面部13の折目14と他方の側面部13の折目14との間の領域である。
図7において、符号Kで示した領域が、第3袋部60の後面部62の外側と第1袋部10の背面部12の内面とがシールされた部分である。また、第3袋部60の後面部62の両側端縁と、両側端縁から内側に一定の距離だけ入り込んだ位置との間の領域は、幅方向の両側が第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面にシールされる。
図7において、符号Lで示した領域が、第3袋部60の後面部62の外側と第1袋部10の折り込まれた側面部13の内面とがシールされた部分である。
【0088】
こうした第3袋部60の内部には、第1袋部10に収容された物質とは異なる物質が収容される。ただし、第3袋部60には、複室容器1の用途に応じ、第3袋部60に収容される物質と同じ物質が収容されたり、異なる物質が収容されたりする。
【0089】
以上に説明した複室容器1によれば、少なくとも1つの部屋に収容された粉体や粒体等の固体を他の部屋に収容された物質と円滑に混ぜ合わせることができる。