(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物(A)、請求項1に記載のヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、
フォトクロミック化合物(C)
を含むフォトクロミック硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、新規なヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物((A)成分)に関する。また、及び該(A)成分を含むラジカル重合性組成物(I)、及びフォトクロミック化合物(II)を含むフォトクロミック硬化性組成物等に関する。以下、順を追って説明する。
【0036】
<(A)成分>
本発明は、分子中に2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基等のヒンダードアミン部位と(メタ)アクリル基とが、アルキレングリコール鎖とアミド結合を有する結合部により結合された(メタ)アクリレート化合物である。
【0039】
[式中、
R
1は、水素原子、又はメチル基であり、
R
2は、水素原子、又はメチル基であり、
R
3は、炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、
aは、平均値で1〜20の数であり、
Xは、下記式(2)
【0040】
【化6】
(式中、
R
4は、炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、
bは、平均値で0〜20の数である。)で示される基であり、
ただし、a+bは、平均値で1〜20の数である。]
で示されるヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物である。
【0041】
前記(A)成分は、アルキレングリコール鎖及びアミド結合を有することにより、優れた効果を発揮するものと考えられる。
【0042】
前記式(1)において、R
1は水素原子、又はメチル基であり、後述の(B)成分に対する相溶性に優れ、さらに高い耐久性が得られるという点から、メチル基が特に好ましい。
【0043】
前記式(1)において、R
2は水素原子、又はメチル基であり、フォトクロミック硬化体の硬度という点からメチル基が好ましい。
【0044】
前記式(1)において、R
3は、炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基等が挙げられる。その中でも、好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、が特に優れた耐久性を得られるという点で好ましい。
【0045】
bは、(−OR
3−)の繰り返し単位を示すものであり、平均値で1〜20である。つまり、前記(A)成分は、(−OR
3−)の繰り返し単位が異なるものの混合物である場合があり、aは平均値としている。aの数が大きくなると、(メタ)アクリレート化合物の単位質量に含まれる2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン骨格のモル数の減少を招く。従って、十分な耐久性効果を得るという点を考慮すると、aは平均値で1〜15であることが好ましく、さらに平均値で1〜10であることがより好ましく、最も好ましくはaが1〜5である場合である。
【0046】
前記(A)成分は、aの数が異なる複数の混合物を使用する場合には、その混合物におけるaの平均値が1〜20の正の数となればよい。そのため、混合物を使用する場合には、aの平均値が1〜10の正の数となることが好ましく、さらに1〜5の正の数となることが好ましい。ただし、混合物を使用する場合、各々の該(メタ)アクリレート化合物におけるaが1〜20の範囲を満足することが好ましい。
【0047】
また、本発明においては、a+bの平均値は1〜20である。該平均値が1〜20を満足することにより、耐久性を維持しつつ、レンズ・コーティング層の特性(例えば、高硬度の硬化体)、およびフォトクロミック性を有し、かつ後述の(B)成分との相溶性に優れるため、優れた効果を発揮する。中でも、a+bに平均値は、1〜18となることが好ましく、1〜15となることがより好ましく、1〜10となることがさらに好ましい。特に、b=0であり、aの平均値が1〜5となることが、十分な耐久性効果が得られるという理由から好ましい。
【0048】
<好適な基の組み合わせ、および好適な(A)成分>
本発明において、前記(A)成分は、
R
1はメチル基、R
2は水素原子、又はメチル基、R
3はメチレン基、エチレン基、n‐プロピレン基、又はi‐プロピレン基、Xは酸素原子、又はR
4がメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、或いはi−プロピレン基となる前記式(2)になることが好ましい。
【0049】
好適な前記(A)成分を具体的に例示すれば、以下の化合物が挙げられる。
【0050】
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンジエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンジエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンエトキシ(aの平均値4)アクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ウレタンエトキシ(aの平均値4)メタクリレート
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ジエトキシウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ジエトキシウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ジi-プロポキシウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ジi-プロポキシウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシ(bの平均値4)ウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシ(bの平均値4)ウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシ(bの平均値4)ウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシ(bの平均値4)ウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシ(bの平均値8)ウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−エトキシ(bの平均値8)ウレタンエトキシメタクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシ(bの平均値88)ウレタンエトキシアクリレート、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−i-プロポキシ(bの平均値8)ウレタンエトキシメタクリレート。
【0051】
<(A)成分の製造方法>
前記(A)成分の製造方法としては、特に制限はないが、例えば以下の方法が挙げられる。
【0054】
(式中、
R
2、R
3、aは前記式(1)で説明した基と同義である。)
で示されるイソシアネート化合物と、下記式(6)で示されるヒンダードアミン化合物とをウレタン化反応させることにより、前記式(1)で示されるヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物((A)成分)を得ることができる。
【0056】
(式中、R
1、およびXは、前記式(1)で説明した基と同義である。)。
【0057】
前記式(5)で示されるイソシアネート化合物は、特に制限なく使用でき、市販の化合物を使用することもできる。具体的には、
2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名 カレンズMOI;昭和電工(株)製)、
2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート(商品名 カレンズMOI-EG;昭和電工(株)製)
2−イソシアナトエチルアクリラート(商品名 カレンズAOI;昭和電工(株)製)が挙げられる。
【0058】
また、前記式(6)で示されるヒンダードアミン化合物も、特に制限なく使用でき、市販の化合物や公知の化合物を使用できる。
【0059】
ウレタン化反応としては、例えば、ジブチルすずジラウレート等のすず触媒の存在下、無溶媒、又は不活性溶媒中、23〜150℃程度の温度範囲で。前記式(6)で示されるヒンダードアミン化合物に対して、前記式(5)で示されるイソシアネート化合物を滴下して反応させればよい。通常であれば、1〜48時間撹拌させて反応させることが好ましい。
【0060】
不活性溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。なお、反応促進及び副反応抑制を目的として、ジブチルヒドロキシトルエン等の添加剤を用いることもできる。
【0061】
<フォトクロミック硬化性組成物>
本発明の前記(A)成分は、それ単独で使用することもできる。中でも、前記(A)成分は、前記ヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物(A)((A)成分)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)((B)成分)、及び、フォトクロミック化合物(C)((C)成分)と組み合わせたフォトクロミック硬化性組成物とした場合に優れた効果を発揮する。
【0062】
本発明において、フォトクロミック硬化性組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、及び(C)成分を含むものである。前記(B)成分について説明する。
【0063】
<(B)成分;((A)成分)以外の(メタ)アクリレート化合物(B))>
本発明にはおいては、前記成分(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B))を使用することもできる。なお、(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物(B)((B)成分)とは、(A)成分以外の化合物であって、分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物を指す。本発明のフォトクロミック硬化性組成物において使用される(B)成分としては、(A)成分以外の化合物であって、(メタ)アクリル基を有する化合物であれば、特に制限されるものではない。中でも、フォトクロミック硬化性組成物から得られる硬化体がより優れた効果を発揮するためには、前記(B)成分が、以下の(B1)成分、(B2)成分、及び(B3)成分を含むことが好ましい。
【0064】
<(B1)成分; 3官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、下記式(3)
【0066】
(式中、
R
5、及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基であり、
R
7は、炭素数1〜10である3〜6価の有機基であり、
cは、平均値で0〜10の数であり、
dは、3〜6の整数である。)
で示される3官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)((B1)成分)を含むことが好ましい。
【0067】
前記式(3)において、 R
5、及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基であり、他の(B)成分に対する相溶性に優れるという点で、R
5はメチルが好ましく、R
6はメチル基が好ましい。
【0068】
R
7は、炭素数1〜10である3〜6価の有機基であり、具体的には、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基(例えば、3〜6価のエステル結合を含む有機基)、3〜6価のウレタン結合を含む有機基が挙げられる。
【0069】
cは、平均値で0〜10の数であり、組成物の硬度及び他の(B)成分に対する相溶性という点では平均値で0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。(B1)成分は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、cは平均値で示した。
【0070】
dは、3〜6の整数であり、組成物の硬度、及び他の成分に対する相溶性という点で3〜4が好ましい。
【0071】
好適に使用できる(B1)成分としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0072】
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(メタ)アクリル基を4個有するポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリル基を6個有するポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリル基を4個有するポリウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル基を6個有するポリウレタンオリゴマー。
【0073】
<(B2)成分; 3官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B2)>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、下記式(4)
【0075】
(式中、
R
8、及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基であり、
e及びfはそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつ、e+fは平均値で2以上の整数である。)で示されるグリコール系(メタ)アクリレート化合物(B2)((B2)成分)を含むことが好ましい。
【0076】
前記式(4)において、R
8、及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基であり、他の(B)成分に対する相溶性及び硬化体の硬度という点で、R
8はメチル基が好ましく、R
9はメチル基が好ましい。
【0077】
また、 e及びfは、それぞれ独立に0以上の整数であり、かつ、e+fは、平均値で2以上の整数である。e+fの平均値の上限は、特に制限されるものではないが、2〜25の整数であることが好ましい。(B2)成分は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、eおよびfは平均値で示した。
【0078】
好適に使用できる(B2)成分としては、以下の化合物を挙げることができる。
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長14、平均分子量736)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長23、平均分子量1136)、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(プロピレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量662)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長14、平均分子量708)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール鎖の平均鎖長7、平均分子量536)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール鎖の平均鎖長12、平均分子量808)。
【0079】
<(B3)成分;(B)成分であって、(B1)成分、及び(B2)成分以外の(メタ)アクリレート化合物>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物(B)((B)成分)に該当し、かつ、前記(B1)成分、及び前記(B2)成分以外の、分子内に(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B3)((B3)成分)を含むことが好ましい。当然のことながら、(B3)成分は、(A)成分は含まない。
【0080】
この(B3)成分は、特に制限されるものではないが、以下の成分であることが好ましい。(B3)成分の具体例を示す。
【0081】
<(B3−a)下記式(7)で示される化合物>
【0083】
式中、
R
10及びR
11は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
gは平均値で1〜20の数であり、
A及びA’は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜15の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、Aが複数存在する場合には、複数のAは同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0084】
上記式(7)で示される化合物は、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造することができる。
【0085】
好適に使用できる上記式(7)で示される化合物としては、以下のポリカーボネートジオールを挙げることができる。
【0086】
トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(500〜2,000の数平均分子量を有するもの)、
2種以上のポリアルキレングリコールの混合物、例えば、トリメチレングリコールとテトラメチレングリコールの混合物、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジグリコールの混合物、ペンタメチレングリコールとヘキサメチレングリコールの混合物、テトラメチレングリコールとオクタメチレングリコールの混合物、
ヘキサメチレングリコールとオクタメチレングリコールの混合物等)のホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量500〜2,000)、
1−メチルトリメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量500〜2,000)。
【0087】
<(B3-b)成分;下記式(8)で示される化合物>
【0089】
式中、
R
12及びR
13は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
R
14及びR
15は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
R
16は、水素原子またはハロゲン原子であり、
Bは、−O−,−S−,−(SO
2)−,−CO−,−CH
2−,−CH=CH−,−C(CH
3)2−,−C(CH
3)(C
6H
5)−
の何れかであり、
h、及びiは、それぞれ1以上の整数であり、h+iは平均値で2以上30以下である。
【0090】
なお、上記式(8)で示される重合性モノマーは、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、h及びiは平均値で示した。
【0091】
好適に使用できる上記式(8)で示される化合物としては、以下のビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0092】
2,2−ビス[4−メタクリロイルオキシ・エトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=2)、
2,2−ビス[4−メタクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=4)、
2,2−ビス[4−メタクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=7)、
2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン(h+i=2)、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン
(h+i=4)、
2,2−ビス[4−アクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=4)、
2,2−ビス[4−アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=3)、
2,2−ビス[4−アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=7)、
2,2−ビス[4−メタクリロイルキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=10)、
2,2−ビス[4−メタクリロイルキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=17)、
2,2−ビス[4−メタクリロイルキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=30)、
2,2−ビス[4−アクリロイルキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=10)、
2,2−ビス[4−アクリロイルキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(h+i=20)。
【0093】
<(B3−c)ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリレート>
また、2官能(メタ)アクリレート化合物としては、分子中にウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリレート化合物も好適に使用することができる。例えば、公知のウレタン(メタ)アクリレートを使用することができる。該ウレタン(メタ)アクリレートは、その分子構造中にベンゼン環等の芳香環を有するものと、芳香環を有しないものに大別できる。本発明においては、そのいずれをも使用できるが、硬化体の耐光性の観点から、芳香環を有しない無黄変タイプのものが好ましい。
【0094】
該ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ジイソシアネートとポリオールとを反応させ、ウレタンプレポリマーとしたものを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等で更に反応させた反応混合物、又は該ジイソシアネートを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと直接反応させた反応混合物であって、その分子量が400以上20,000未満であるウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0095】
ウレタンプレポリマーの製造に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート又はメチルシクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0096】
また、ジイソシアネートに反応させるポリオールは、高分子量のものと低分子量のものに大別される。
【0097】
このうち、高分子量のポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシド等、炭素数2〜4の繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、等を挙げることができる。
【0098】
低分子量のポリオール類としては、公知のもの、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0099】
<(B3−d)ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー>
(B3−d)成分は、(B3−c)成分で説明したポリイソシアネート化合物とポリオール化合物を反応させて得られるものであり、分子中に3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。市販品として、新中村化学工業(株)製のU−4HA(分子量596、官能基数4)、U−6HA(分子量1,019、官能基数6)、U−6LPA(分子量818、官能基数6)、U−15HA(分子量2,300、官能基数15)
を挙げることができる。
【0100】
<(B3−e)エステル結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー>
(B3−e)成分としては、ポリエステル化合物の末端を(メタ)アクリレート基で修飾した化合物である。原料となるポリエステル化合物の分子量や(メタ)アクリレート基の修飾量により種々のポリエステル(メタ)アクリレート化合物が市販されているものを使用することができる。具体的には、
4官能ポリエステルオリゴマー(分子量2,500〜3,500、ダイセルユーシービー社、EB80等)、
6官能ポリエステルオリゴマー(分子量6,000〜8,000、ダイセルユーシービー社、EB450等)、
6官能ポリエステルオリゴマー(分子量45,000〜55,000、ダイセルユーシービー社、EB1830等)、
4官能ポリエステルオリゴマー(特に分子量10,000の第一工業製薬社、GX8488B等)
等を挙げることができる。
【0101】
<(B3−f)ポリロタキサン多官能(メタ)アクリレートモノマー>
軸分子と、該軸分子を包接する複数の環状分子と、からなる複合分子構造を有しており、該環状分子にOH基を有する側鎖が導入されたポリロタキサン化合物において、該側鎖のOH基を、(メタ)アクリル基を有するモノマーで1モル%以上100モル%未満変性され、該側鎖のOH基の0モル%を超え99モル%以下が重合性基を有さない化合物で変性され、かつ、該側鎖のOH基の残存割合が0モル%以上60モル%以下であるポリロタキサンモノマーを使用することができる。
【0102】
<(B3−g)単官能(メタ)アクリレートモノマー>
(B3−g)成分としては、下記式(9)で示される化合物が挙げられる。
【0104】
式中、
R
17は、水素原子またはメチル基であり、
R
18は、水素原子、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、また はグリシジル基であり、
jは、0〜10の整数であり、
kは、0〜20の整数である。
【0105】
上記式(9)で示される化合物を具体的に示すと以下の通りである。
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量293)、
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量468)、
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(特に平均分子量218)、
メトキシポリエチレングリコールアクリレート、(特に平均分子量454)、
ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0106】
以上の(B3)成分は、各成分における単独成分を使用することもできるし、前記で説明した複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、(B3)成分の基準となる質量は、複数種類のものの合計量である
<(C)成分;フォトクロミック化合物>
次に、本発明において好適に用いられるフォトクロミック化合物(C)((C)成分)について説明する。
【0107】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物においては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0108】
上記のクロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物及びスピロピラン化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物が挙げられる。
【0109】
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られており、このようなクロメン化合物を好適に使用できる。このようなクロメン化合物は、例えば、以下の文献に開示されている。特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO2000/071544号、WO2005/028465号パンフレット、WO2011/16582号パンフレット、WO2011/034202号パンフレット。
【0110】
これらのフォトクロミック化合物(C)の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノナフト[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適である。また、インデノナフト[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン骨格を有するクロメン化合物を使用する場合に、前記成分(A)を使用することの効果が顕著に発揮される。インデノナフト[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン骨格を有するクロメン化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。
【0112】
<フォトクロミック硬化性組成物の配合割合>
本発明において、各成分の配合量は、得られる硬化体の用途に応じて適宜決定すればよいが、得られる硬化体が優れたフォトクロミック特性及び耐久性を示すには、以下の配合量を満足することが好ましい。
【0113】
前記ヒンダードアミン(メタ)アクリレート化合物(A)((A)成分)を0.01〜20質量部、前記(メタ)アクリレート化合物(B)((B)成分)を100質量部、及び、前記フォトクロミック化合物(C)((C)成分)を0.01〜20質量部含むことが好ましい。なお、前記(B)成分の配合量は、前記(B1)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分の合計量である。
【0114】
(A)成分が前記範囲(0.01〜20質量部)を満足することにより、得られる硬化体は、耐久性が向上し、適度な硬度を有し、十分な強度を有するものとなる。また、(C)成分が前記範囲(0.01〜20質量部)を満足することにより、得られる硬化体が優れたフォトクロミック特性を有する。
【0115】
また、前記(B)成分は、
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)100質量部に対して、
前記グリコール系(メタ)アクリレート化合物(B2)を100〜10000質量部、及び
前記その他の(メタ)アクリレート化合物(B3)を30〜300質量部含むことが好ましい。
【0116】
なお、本発明のフォトクロミック硬化性組成物をフォトクロミック眼鏡レンズ用途に使用する場合には、前記した練り込み法とコーティング法でそれぞれ以下の配合量とすることが特に好ましい。
【0117】
<練り込み法;好適なフォトクロミック硬化性組成物の配合割合>
即ち、練り込み法においては、前記(B)成分を100質量部としたとき、前記(A)成分を0.01〜5質量部とすることが好ましく、更に0.02〜3質量部とすることが好ましく、特に0.05〜1質量部とすることが好ましい。
【0118】
また、練り込み法においては、前記(B)成分を100質量部としたとき、前記(C)成分を0.01〜5質量部とすることが好ましく、更に0.02〜3質量部とすることが好ましく、特に0.05〜1質量部とすることが好ましい。
【0119】
<コーティング法;好適なフォトクロミック硬化性組成物の配合割合>
コーティング法においては、前記(B)成分を100質量部としたとき、前記(A)成分を0.05〜10質量部とすることが好ましく、さらに0.1〜10質量部とすることが好ましく、特に1〜5質量部とすることが好ましい。
【0120】
また、コーティング法においては、前記(B)成分を100質量部としたとき、前記(C)成分を0.05〜10質量部とすることが好ましく、さらに0.1〜10質量部とすることが好ましく、特に1〜5質量部とすることが好ましい。
【0121】
さらに、コーティング法においては、得られる硬化体が優れた特性を発揮するためには、前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)100質量部に対して、前記グリコール系(メタ)アクリレート化合物(B2)を100〜2000質量部、及び 前記その他の(メタ)アクリレート化合物(B3)を25〜250質量部含むことが好ましい。より優れた効果を発揮するためには、前記(B1)成分100質量部に対して、前記(B2)を100〜1000質量部、及び前記(B3)成分を25〜200質量部含むことが好ましく、前記(B2)を100〜750質量部、及び前記(B3)成分を25〜150質量部含むことがより好ましい。
【0122】
また、コーティング法においては、前記(B3)成分は、得られるフォトクロミック硬化性組成物が優れた効果を発揮するためには、(B3−a)、(B3−b)、(B3−f)、(B3−g)との組み合わせからなることが好ましい。中でも、特に優れた効果を発揮するためには、配合される(B3)成分の合計を100質量%としたとき、前記(B3−a)を0〜95質量%、前記(B3−b)を0〜50質量%、(B3−f)を0〜70質量%、(B3−g)を0〜30質量%とすることが好ましく、
前記(B3−a)を30〜95質量%、前記(B3−b)を0〜45質量%、(B3−f)を0〜60質量%、(B3−g)を1〜25質量%とすることがより好ましく、
前記(B3−a)を49〜95質量%、前記(B3−b)を0〜40質量%、(B3−f)を0〜50質量%、(B3−g)を1〜10質量%とすることがさらに好ましい。
【0123】
<その他の成分>
次に、本発明のフォトクロミック硬化性組成物に配合できるその他の成分について説明する。
【0124】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物には、フォトクロミック化合物(C)の繰り返し耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を配合することもできる。また、硬化性組成物を硬化させるために後述する重合開始剤を配合することもできる。重合開始剤については、硬化体を製造する方法の説明において詳細に記す。配合するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
【0125】
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、重合性単量体への溶解性の観点から、ノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の配合量は、前記(B)成分100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
【0126】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤及び/又は紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、これらは、界面活性剤と併用して使用してもよい。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤及び/又は紫外線吸収剤の配合量は、前記(B)成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。
【0127】
なお、前記のヒンダードアミン光安定剤は、本発明の効果を損なわない程度に補助的に配合することができる。
【0128】
また、本発明の硬化性組成物をコーティング剤として使用する場合、特に有用な他の安定剤として、硬化体の繰り返し耐久性向上の観点より、ヒンダードフェノール酸化防止剤を配合することができる。ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、公知の化合物を何ら制限なく用いることができるが、特にフォトクロミック化合物の劣化防止効果を発現するという観点から、以下のものが好ましい。
【0129】
チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トルイル]プロピオネート]、
チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
ヒンダードフェノール酸化防止剤の配合量は、前記(B)成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲であればよいが、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、より好適には、0.5〜5質量部の範囲で用いればよい。
【0130】
さらに、その他のラジカル重合性単量体としては、
スチレン、αメチルスチレン、αメチルスチレンダイマー、ジビニルベンゼン、アリルジグリコールカーボネート等のビニル又はアリル化合物も使用することができる。
【0131】
<フォトクロミック硬化性組成物の調製方法、硬化体の形成方法及びその用途>
次に、本発明のフォトクロミック硬化性組成物の調製方法、硬化体の形成方法及び用途について説明する。
【0132】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物の調製は、特に限定されず、所定量の各成分を秤取り混合すればよい。なお、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、重合性単量体成分((メタ)アクリレート化合物成分)のみを予め混合し、後で、例えば、後述の如く重合させる直前にフォトクロミック化合物や他の添加剤を添加混合してもよい。なお、後述するように、重合に際しては必要に応じて重合開始剤をさらに添加することもできる。
【0133】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、25℃での粘度を5〜2000cPsとすることが好ましい。コーティング剤として使用する場合には、粘度は20〜500cPsが好ましく、50〜400cPsが特に好適である。この粘度範囲とすることにより、後述するコーティング層の厚さを10〜100μmと厚めに調整することが容易となり、十分にフォトクロミック特性を発揮させることが可能となる。一方、練り込み型として使用する場合には、25℃での粘度は5〜300cPsが好ましく、10〜100cPsがより好適である。この粘度範囲とすることにより、レンズ型に注入する作業を容易に行うことができる。
【0134】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物を硬化させてフォトクロミック硬化体を得る方法は、特に限定されず、用いる重合性単量体の種類に応じた公知の重合方法を採用することができる。重合開始手段は、種々の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の使用、若しくは紫外線、α線、β線、γ線等の照射、又は両者の併用によって行うことができる。
【0135】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、熱重合開始剤として、以下のものが挙げられる。
【0136】
ジアシルパーオキサイド、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等;
パーオキシエステル、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート;
パーカーボネート類、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート;
アゾ化合物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、前記成分(A)以外の全ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で用いるのが好適である。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0137】
また、紫外線等の光照射により重合させる場合には、光重合開始剤として、例えば以下のものを使用することが好ましい。ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アエトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1。
【0138】
これら光重合開始剤は、前記(B)成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲で用いるのが一般的である。上記光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また上記熱重合開始剤を光重合開始剤と併用してもよい。
【0139】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物から硬化体を得る特に好ましい方法は、上記光重合開始剤を配合した本発明のフォトクロミック硬化性組成物に、紫外線等を照射し硬化させ、さらに必要に応じて加熱して重合を完結させる方法である。
【0140】
紫外線の照射により重合させる場合には、公知の光源を何ら制限なく用いることが出来る。該光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、メタルハライドランプ、無電極ランプ等を挙げることが出来る。該光源を用いた光照射の時間は、上記光重合開始剤の種類、吸収波長及び感度、さらにはフォトクロミック層の膜厚等により適宜決定すれば良い。また、光源に電子線を用いる場合には、光重合開始剤を添加せずに、フォトクロミック層を硬化させることもできる。
【0141】
このようにして得られた硬化体は、そのままフォトクロミック光学材料として使用することが可能であるが、通常は、さらに着用時の傷の発生を防止することを目的として、ハードコート層で被覆して使用される。これにより、耐擦傷性を向上させることができる。
【0142】
ハードコート層を形成するためのコーティング剤(ハードコート剤)としては、公知のものがなんら制限なく使用できる。具体的には、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤が使用できる。
【0143】
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物単独の硬化体、光学基材表面に該硬化性組成物(コーティング剤)よりなるコート層を有する光学材料、あるいは該コート層上に、さらにハードコート層を形成した光学物品の表面には、SiO
2、TiO
2、ZrO
2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
【実施例】
【0144】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
<成分(A)の合成>
(合成例1)
「A−1」の合成;
200mL四つ口フラスコに、撹拌羽根、温度計、滴下漏斗を設置し、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン;17.0g(0.1mol)、
ジブチルすずジラウレート;7.4mg
ジブチルヒドロキシトルエン;6.1g(0.05mol)、
脱水トルエン;60mL
を仕込んだ。該混合物を60℃に加熱し、2−イソシアナトエチルメタクリラート17.1g(0.1mol)を少しずつ加えた。60〜65℃で1時間撹拌した。その後、水50mLで3回洗浄し、トルエンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた白色固体を、中性アルミナカラム{展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル=3/1(v/v)}で精製して、白色固体35.5gを得た。
【0146】
この生成物の元素分析値は、C62.45%、H9.16%、N8.28%、O19.81%。この値は、C
17H
30N2О
4の計算値であるC62.55%、H9.26%、N8.58%、O19.61%に極めてよく一致した。
【0147】
また、プロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに26プロトン分のピークが、5〜7ppmにアクリル基に基づく3プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。
【0148】
以上のことから、該白色固体は、下記式(A−1);
【0149】
【化15】
【0150】
で表わされる化合物であることが確認された。収率は94%であった。以下、この化合物を単に「A−1」とする場合もある(aは1、bは0である。)。
【0151】
(合成例2)
「A−2」の合成;
200mL四つ口フラスコに、撹拌羽根、温度計、滴下漏斗を設置し、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン;17.0g(0.1mol)、
ジブチルすずジラウレート;7.4mg、
ジブチルヒドロキシトルエン;6.1g(0.05mol)、
脱水トルエン;60mL
を仕込んだ。該混合物を60℃に加熱し、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート19.9g(0.1mol)を少しずつ加えた。60〜65℃で1時間撹拌した。その後、水50mLで3回洗浄し、トルエンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた白色固体を、中性アルミナカラム{展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル=3/1(v/v)}で精製して、白色固体36.3gを得た。
【0152】
この生成物の元素分析値は、C65.09%、H9.75%、N7.70%、O17.47%。この値は、C
20H
35N2О
4の計算値であるC65.19%、H9.85%、N7.60%、O17.37%に極めてよく一致した。
【0153】
また、プロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに32プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。
【0154】
以上のことから、該白色固体は、下記式(A−2);
【0155】
【化16】
【0156】
で表わされる化合物(A−2)であることが確認された。収率は92%であった。以下、この化合物を単に「A−2」とする場合もある(aは2、bの平均値は0である。)。
【0157】
(合成例3)
「A−3」の合成;
特開2001−71640号公報の記載に従い、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ポリエトキシ(b≒4(bの平均値が4である)、aは1である)アルコールを得た。その後、合成例1の合成方法に従って、下記式(A−3)で示される目的物(A−3)を得た。
【0158】
【化17】
【0159】
この化合物(A−3)のプロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに43プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。以下、この化合物を単に「A−3」とする場合もある。(aは1、bの平均値は4である。)
(合成例4)
「A−4」の合成;
特開2001−71640号公報の記載に従い、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ポリプロポキシ(b≒8(bの平均値が8である)、aは1である)アルコールを得た。その後、合成例1の合成方法に従って、下記式で示される目的物(A−4)を得た。化合物の構造式は、以下のとおりである。
【0160】
【化18】
【0161】
この化合物(A−4)のプロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに57プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。以下、この化合物を単に「A−4」とする場合もある。(aは1、bの平均値は8である。)
(合成例5)
「A−5」の合成;
特開2001−71640号公報の記載に従い、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ポリエトキシ(b≒8(bの平均値が8である)、aは1である)アルコールを得た。その後、合成例1の合成方法に従って、下記式(A−5)で示される目的物(A−5)を得た。化合物の構造式は、以下のとおりである。
【0162】
【化19】
【0163】
この化合物(A−5)のプロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに59プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。以下、この化合物を単に「A−5」とする場合もある。(aは1、bの平均値は8である。)
(合成例6)
「A−6」の合成
特開2001−71640号公報の記載に従い、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ポリエトキシ(bは2であり、aは2である)アルコールを得た。その後、合成例2の合成方法に従って、下記式(A−6)で示される目的物(A−6)を得た。化合物の構造式は、以下のとおりである
【0164】
【化20】
【0165】
この化合物(A−6)のプロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに35プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。以下、この化合物を単に「A−6」とする場合もある。(aは2であり、bは2である。)。
【0166】
(合成例7)
「A−7」合成;
合成例1において2−イソシアナトエチルメタクリラートの代わりに2−(2−メタクリロイル(ポリエトキシ)a=4)エチルイソシアナートを用いる以外は合成例1の方法に従って目的物(A−7)を得た。化合物の構造式は、以下のとおりである
【0167】
【化21】
【0168】
この化合物(A−7)のプロトンの核磁気共鳴スペクトラムを測定したところ、1〜5ppmに39プロトン分のピークが、5〜7ppmにメタクリル基に基づく2プロトン分のピークとピペリジル基の4位の水素原子に基づく1プロトン分のピークが観測された。以下、この化合物を単に「A−7」とする場合もある(aは4であり、bは0である。)。
【0169】
<各成分の名称及び略称>
以下に(A)成分、(B1)成分、(B2)成分、(B3)成分、(C)成分及びその他の成分として使用した化合物の略号と名称を示す。
【0170】
(A)成分;
前記合成例1〜7で合成した各成分。A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7。
【0171】
(B)成分
(B1)成分;
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート。
D−TMP;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(B2)成分;
9G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量536)。
14G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長14、平均分子量736)。
【0172】
(B3)成分;
A−400;ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量508)
BPE500:2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長10)。
GMA:グリシジルメタクリレート。
ポリロタキサンモノマー;以下にポリロタキサンモノマーの詳細を示す。国際公開WO2015/068798パンフレット記載の方法を参考に、ポリロタキサンにアクリル基を導入したポリロタキサンモノマーを製造した。
軸の分子量;分子量35,000のポリエチレングリコール。
軸分子の末端;アダマンタン。
環状分子;α−シクロデキストリン。
環状分子の包接数;0.25。
環状分子の修飾度;50%(α−シクロデキストリンの50%の水酸基に下記ポリカプロラクトンの開環体が修飾した状態)。
側鎖の分子量;分子量500のポリカプロラクトン。
重合性基;アクリレート。
変性率;85%(該ポリカプロラクトンの開環体の85モル%の末端OHにアクリレート基が導入された状態)。
【0173】
成分(C);フォトクロミック化合物
下記に示す化合物である。
PC1:
【0174】
【化22】
【0175】
その他の成分;
光重合開始剤;
CGI1800:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(質量比:3対1)。
【0176】
ヒンダードアミン光安定剤;
LS765:セバシン酸(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジエステル。
LA−87:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート 。
HM−19:以下に構造式を示す。−(OCH
2CH
2)−の繰り返し単位は平均値で6となる。
【0177】
【化23】
【0178】
ヒンダードフェノール酸化防止剤;
IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トルイル]プロピオネート]。
【0179】
湿気硬化型プライマー;
TR−SC−P (株)トクヤマ製。
【0180】
<フォトクロミック硬化性組成物の調製、および硬化体の製造・評価>
下記の成分を混合して、フォトクロミック硬化性組成物を調整した。
【0181】
(実施例1)
(A)成分として、合成例1で製造したA−1;5質量部、
(B)成分として、
TMPT;20質量部、
9G;50質量部、
A−400;15質量部、
BPE500;24質量部、
GMA;1質量部、 以上の合計量100質量部((B)成分の合計量100質量部)
に対して、フォトクロミック化合物としてPC1((C)成分)を2質量部添加し十分に混合した。この混合物に、
酸化防止剤(IRGANOX245);3質量部、
重合開始剤(CGI1800) 0.5質量部、
を添加し十分に混合してフォトクロミック硬化性組成物(コーティング剤)を得た。コーティング剤の配合割合を表1に示した。
【0182】
スピンコーター(MIKASA製、1H−DX2)を用いて、厚さ2mmのプラスチックレンズ(MR:チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60 光学基材)の表面に、湿気硬化型プライマーTR−SC−Pを回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒コートした。その後、上記方法で得られたコーティング剤 約2gを回転数60rpmで40秒、続いて600rpmで10〜20秒かけて、フォトクロコート層の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。この表面がコートされたレンズを窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cm
2のメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに110℃で1時間加熱して、フォトクロミックコート層を有する光学材料を製造した。
【0183】
得られたフォトクロミックコート層を有する光学材料を用い、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0184】
(1)発色濃度
得られたフォトクロミック硬化体に、キセノンランプ{浜松ホトニクス製、L−2480(300W)SHL−100}をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、フォトクロミックコート層表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2,245nm=24μW/cm
2で300秒間照射して発色させ、このときの最大吸収波長を分光光度計{(株)大塚電子工業製、瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000}により求めた。
【0185】
測定結果から、下記式により発色濃度を算出した。
【0186】
発色濃度=ε(300)−ε(0)
式中、
ε(300)は、300秒間光照射した後の、最大吸収波長における吸光度であり、 ε(0)は、光照射していない状態の硬化体の該波長における吸光度である。
この値が高いほどフォトクロミック特性が優れている。
【0187】
(2)退色半減期
フォトクロミック硬化体に、300秒間光を照射した後、光の照射を止め、該硬化体の最大波長における吸光度が前記{ε(300)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間{t1/2(min)}を測定した。この時間が短いほど退色速度が速くフォトクロミック特性が優れている。
【0188】
(3)繰り返し耐久性
光照射による発色の繰り返し耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。試験方法は、以下の通りである。
【0189】
即ち、得られたフォトクロミック硬化体をキセノンウェザーメーター{スガ試験機(株)製、X25}により200時間促進劣化させた。この劣化前後について、前記した発色濃度の評価を行い、試験前の発色濃度(A
0)及び試験後の発色濃度(A
200)を測定した。
【0190】
この測定結果から、繰り返し耐久性の目安となる残存率を算出した。
【0191】
残存率(%)={(A
200/A
0)×100}
式中、
A
0は、試験前の発色濃度であり、
A
200は、試験後の発色濃度である。
【0192】
また、色差計{スガ試験機(株)製、SM−4}を用いて黄変度(ΔYI)の値を求めた。
【0193】
ΔYI=YI
200−YI
0
式中、
YI
200は、200時間促進劣化させた後のYIであり、
YI
0は、促進劣化前のYIである。
【0194】
残存率が高いほど、また黄変度が小さいほど繰り返し耐久性が高く、フォトクロミック特性が優れている。得られた評価結果を表2にまとめた。
【0195】
(4)濁り
長期間保存したときの表面の濁りを評価するために次の保存加速試験を行った。即ち、得られたフォトクロミック硬化体を60℃、98%RHの恒温恒湿槽内に72時間置いた。ヘイズメーターを用いて、試験前後のHAZEの値の差(ΔHAZE)を求めた。
【0196】
ΔHAZE=HAZE
72−HAZE
0
式中、
HAZE
72は、72時間後のHAZEを表し、
HAZE
0は、恒温恒湿槽内に置く前のHAZEを表す。
【0197】
(5 ) ビッカース硬度
ビッカース硬度は、マイクロビッカース硬度計P M T − X 7 A ( 株式会社マツザワ製)を用いて測定した。圧子には、四角錐型ダイヤモンド圧子を用い、荷重1 0 g f 、圧子の保持時間3 0 秒の条件にて評価を行った。測定結果は、計4 回の測定を実施した後、測定誤差の大きい1 回目の値を除いた計3 回の平均値で示した。
【0198】
(実施例2〜7)
表1に記載したフォトクロミック硬化性組成物の配合割合とした以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調整し、また、実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0199】
(比較例1)
A−1 5質量部の代わりに、LS765 5質量部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表3に、得られた評価結果を表2に示した。
【0200】
(比較例2)
A−1 5質量部の代わりに、LA−87 5質量部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表1に、得られた評価結果を表2に示した。
【0201】
(比較例3)
A−1 5質量部の代わりに、HM−19 5質量部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表1に、得られた評価結果を表2に示した。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
(実施例8〜11)
成分(A)に(A−1)を用い、表3の配合割合としてフォトクロミック硬化性組成物を実施例1と同様の操作を行い調整した後、実施例1と同様の方法によりフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表3に、得られた評価結果を表4に示した。
【0205】
【表3】
【0206】
【表4】
【0207】
(実施例12〜15)
成分(A)の配合量を2質量部とし、表5の配合割合としてフォトクロミック硬化性組成物を実施例1と同様の操作を行い調整した後、実施例1と同様の方法によりフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表5に、得られた評価結果を表6に示した。
【0208】
(比較例4)
A−1 2質量部の代わりに、LS765 2質量部を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表5に、得られた評価結果を表6に示した。
【0209】
(比較例5)
A−1 2質量部の代わりに、LA−87 2質量部を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表5に、得られた評価結果を表6に示した。
【0210】
(比較例6)
A−1 2質量部の代わりに、HM−19 2質量部を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。フォトクロミック硬化性組成物の配合割合を表5に、得られた評価結果を表6に示した。
【0211】
【表5】
【0212】
【表6】