【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングに取り付けられた薬剤リザーバと、駆動機構と、用量選択要素と、トリガと、リミッタとを含む。ハウジングは、遠位端と近位端との間に延びるデバイスの長手方向軸を画成する外側ハウジングとすることができる。ハウジングは、単一の構成要素部材、たとえばデバイスの外側シェルとすることができ、またはいくつかの構成要素部材、たとえば追加の内側ハウジングおよび/もしくはインサートを含むことができる。駆動機構は、薬剤リザーバから薬剤の1つまたはそれ以上の用量を投薬するためにハウジングに対して遠位方向に軸方向に可動であるプランジャまたはピストンロッドを含むことができる。駆動機構は、追加の構成要素部材、たとえば少なくとも用量投薬中にプランジャに係合するドライバを含むことができる。用量選択要素は、駆動機構に解放可能に連結することができ、用量を選択するためにハウジングに対して第1の方向に回転可能とすることができる。用量選択要素は、使用者によって用量選択のために直接操作される構成要素部材、たとえばダイヤルグリップとすることができ、または使用者が少なくとも用量選択中に用量選択要素に連結されたさらなる構成要素部材を操作したことに応答して用量を選択するためにハウジングに対して回転させられる構成要素部材とすることができる。トリガは、用量選択要素によって選択された用量の投薬を開始するためにハウジングに対して軸方向に可動とすることができ、すなわちトリガは、遠位方向に押下されるボタンとすることができる。トリガの作動により、デバイス内のクラッチおよび阻止機構を解放することができ、それによって投薬力またはトルクがばねから駆動機構へ伝達されることを可能にすることができる。追加または代替として、トリガの作動により、たとえば手動式デバイス内で、たとえばトリガによって駆動機構を作動させることによって、用量投薬を引き起こすことができる。好ましくは、リミッタは、選択された用量に応じて、トリガの軸方向運動を選択的に可能にし防止する。言い換えれば、選択された用量が所定の閾値に対応しない場合、リミッタは、トリガの作動を阻止することができ、それによって用量投薬を防止することができる。リミッタは、用量選択要素に対して回転不能に拘束することができ、好ましくは恒久的に回転不能に拘束することができ、トリガに対して軸方向に拘束することができ、好ましくは恒久的に軸方向に拘束することができる。好ましくは、リミッタは、経路またはトラック、たとえば摺動路を含み、この経路またはトラックは、ハウジングに軸方向に連結された阻止機能、たとえば摺動ブロックに係合する。代替として、トラックをハウジングに軸方向に連結して提供することができ、トラックに係合する阻止要素を、トリガに対して軸方向に拘束することができる。トラックまたは阻止機能は、ハウジングに軸方向に連結された構成要素部材上に提供することができる。これは、トラックまたは阻止機能がハウジング上に直接提供されることを含む。トラックは、トラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を制限し、たとえば相対的運動を実質上防止する少なくとも1つの狭幅セクションと、トラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を可能にする少なくとも1つの広幅セクションとを含むことができる。
【0014】
リミッタ機構の摺動路もしくはトラック、および/またはリミッタ機構の摺動ブロックもしくは阻止機能は、たとえば用量選択要素を案内するために提供されるさらなるねじ形状とは別個に提供することができ、たとえば軸方向に隔置することができる。別法として、リミッタ機構の摺動路もしくはトラック、および/またはリミッタ機構の摺動ブロックもしくは阻止機能は、たとえば用量選択要素を案内するために提供されるさらなるねじ形状と少なくとも部分的に同一に提供することができ、すなわちリミッタの摺動路を、さらなるねじ山のメスねじ形状とすること、および/または摺動ブロックを、さらなるねじ山(もしくはさらに別のねじ山)のオスねじ形状とすることができる。さらなる代替として、リミッタ機構の摺動路もしくはトラック、および/またはリミッタ機構の摺動ブロックもしくは阻止機能は、たとえば用量選択要素を案内するために提供されるさらなるねじ形状に隣接して提供することができる。たとえば、リミッタ機構の摺動路もしくはトラック、および/またはリミッタ機構の摺動ブロックもしくは阻止機能は、そのようなさらなるねじ形状に重複して提供することができ、たとえば摺動路は、そのようなさらなるねじ山のメス溝形状のターン間の空間内に位置する溝である。リミッタ機構がデバイスのさらなるねじ山に隣接している後者の場合、このさらなるねじ山のメス溝形状は、トラック(摺動路)と阻止機能(摺動ブロック)との間の相対的な軸方向運動を可能にする少なくとも1つの広幅セクションを形成することができ、またはその一部とすることができる。言い換えれば、阻止機能または摺動ブロックが、摺動路またはトラックによって画成された狭幅セクションに係合する場合、トラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動は制限され、阻止機能または摺動ブロックは、摺動路またはトラックの広幅セクションを通ってさらなるねじ山の隣接するメスねじ形状内へ進むことができ、それによってトラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を可能にすることができる。次いで、阻止機能または摺動ブロックは、用量投薬中、さらなるねじ山のメスねじ形状内に案内することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、リミッタのトラックおよび対応する阻止要素は、阻止要素がトラックの狭幅セクションに係合する限り、リミッタおよびリミッタに連結されたトリガの軸方向運動を制限または防止することによって、トリガの作動、すなわち用量投薬の開始が防止されるように設計および配置される。他方では、リミッタおよびリミッタに連結されたトリガの軸方向運動は、阻止要素がトラックの広幅セクションに係合する限り、トラック内の阻止要素の相対的な軸方向運動を可能にすることによって可能にされる。したがって、トラックの狭幅および広幅セクションの位置は、選択された用量のうち、用量投薬が防止される量(狭幅セクション)または可能にされる量(広幅セクション)を画成する。狭幅および広幅セクションの長さは、所望される場合、選択された用量値のうち、投薬が可能にされる範囲を増大または制限するために変更することができる。
【0016】
たとえば、ゼロからほんの数単位、たとえば2または3単位の範囲に対応する位置にトラックの広幅セクションを提供することによって、各用量が投与される前に、プライミング動作を行うための用量投薬を可能にすることができる。さらに、特定の用量値に対応する位置に広幅セクションを提供することができ、したがってこの値の用量を投薬するがそれより小さいまたは大きい用量の投薬(たとえばプライミング用量を除く)を防止することを可能にすることができる。さらに、広幅セクションは、最大用量閾値に対応する位置まで延びるように提供すること、および/または最小用量閾値に対応する位置から延びるように提供することができる。
【0017】
そのようなリミッタを有する薬物送達デバイスは、それを下回ると使用者が医薬品を投薬することができなくなる最小用量値を有するように構成することができ、たとえばガラスアンプルなどの薬剤リザーバから複数の用量または単一の用量を送達することを可能にすることができる。デバイスは、異なる用量値の個別の範囲が使用者によって選択されることを可能にするように構成することができるが、投薬することができる1つの用量値だけを提供するように構成することもできる。デバイスは、デバイスのプライミングをさらに可能にすることができ、使用者は、流れが正しく針を通っているかどうかを検査するために、医薬品の小さい体積(典型的には、2国際単位)をダイヤル設定して送達することが可能である。デバイスは、送達可能な最大用量値を制限する機能を有するように設計することができ、一実施形態では、この機能は、可能にされる送達可能な用量値も画成する構成要素上に構成することができる。これは、デバイスの単一の構成要素を変化させることによって、送達可能な最小用量値と最大用量値の両方を設定または変更することができることを意味し、それによりこのデバイスは、様々な適用分野にとって非常に柔軟な「プラットホーム」になる。上述したように、この設計は、単一の用量値だけを投薬することができるように、選択可能な最小および最大用量値が配置された状態で構成することができる(すなわち、「固定」用量デバイスである)。別法として、この設計は、特定の連続的または非連続的な用量値だけを投薬することができるように構成することができる(たとえばこれは、10IU、11IU、12IUなどの連続的な用量範囲、または10IU、13IU、23IUなどの非連続的な用量範囲とすることができる)。
【0018】
トラックは、たとえば管状のリミッタの外面の周りに螺旋状に延びることができる。これにより、360°を超える範囲にわたって用量選択要素を回転させることによって、用量を選択することが可能になり、これは典型的には、20IUまたは24IUを超える比較的大きい用量を選択するために行われる。代替として、トラックは、たとえば管状のリミッタの外面の周りに円周方向に延びることができ、すなわちピッチまたはねじリードが存在しない。この後者の実施形態は、用量選択のために用量選択要素を最大360°だけ回転させることを必要とするデバイスに制限された非常に小型のリミッタ設計を提供する。上述したように、さらなる代替として、トラックは、ハウジングまたはハウジングに連結された構成要素部材上に提供することもできる。
【0019】
好ましくは、トラックの狭幅セクションは、少なくとも実質上バックラッシュまたは遊びのない阻止機能のための案内を画成する。トラックの広幅セクションは、トラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を可能にする阻止機能のための案内を画成することができる。
【0020】
トラックは、少なくとも1つの断続リブによって制限または画成された溝とすることができる。トラックの狭幅セクションは、溝のうちリブが存在する部分によって、好ましくは遠位および近位側に画成することができ、トラックの広幅セクションは、溝のうちリブが省略された部分によって、好ましくは溝の近位側のリブ内に隙間を提供することによって画成することができる。トラックが螺旋状の構成を有する場合、阻止機能が、広幅セクション、すなわちリブが省略された部分内で、1つのねじ形状から次のねじ形状へ変位することを可能にすることができる。他方では、阻止機能が、リブが存在する狭幅セクション内にある限り、阻止機能は、そのねじ形状内で案内され、それによって相対的な軸方向運動を防止する。
【0021】
デバイスのいくつかの適用分野は、用量の送達の途中で用量投薬を中断または休止することができることを必要とすることがある。これは、典型的には、トリガをその最初の用量選択位置へ戻すことを必要とする。阻止機能が狭幅セクション内にある場合、トリガの軸方向運動は防止され、したがって用量投薬の中断を防止する。好ましくは、トラックおよび阻止機能は、阻止機能がトラックの狭幅セクションを越えてトリガの軸方向の運動方向、たとえば遠位方向に進み、用量の投薬を開始することは防止されるが、阻止機能がトラックの狭幅セクションを越えて反対の軸方向、たとえば近位方向に非破壊的に進むことは可能にされるように設計される。したがって、阻止機能がトラックの狭幅セクション内にある場合でも、投薬プロセスの中断が可能になる。
【0022】
阻止機能がトラックの広幅セクションと位置合わせされている用量値で使用者がボタンを解放した場合、ボタンは、完全に後退することが可能になり、したがって駆動スリーブとハウジングとの間のスプラインの再係合が可能にされ、これはまた、投薬動作が停止されても、ボタンを再び押すことによって再開することができることを意味する。しかし、上述したように、阻止機能がリミッタのリブを跳び越えた場合、用量の投薬を再開することはできない。さらなる実施形態によれば、リミッタ機構は、ボタンが用量の途中で解放された場合、たとえばクラッチばねによって、阻止機能がリミッタのリブに押し付けられ、したがって一種の摩擦ブレーキとして作用するように設計される。これらの機能は、摩擦が投薬を停止するのに十分に大きくなるように設計される。すなわち、ばね駆動式デバイス内で、ねじりばねは、この摩擦に打ち勝つほど強力ではない。この設計は、用量の送達を継続するために、使用者が(ボタンを再び押すことによって)投薬を再開することができることを意味する。
【0023】
送達を休止するとき、使用者は、事前に選択された値から用量を調整することができない。単にトリガを軸方向に動かすことによって、用量の送達を休止し、次いで送達を継続する可能性を提供するために、別の実施形態では、用量の投薬の開始のためのトリガの軸方向運動とは反対側に向けられたトラックの少なくとも1つの断続リブの面が、軸方向運動の方向を向いているこのリブの面より浅く、軸方向運動の方向を向いている阻止機能の面が、軸方向運動とは反対側に向けられた阻止機能の面より浅い。軸方向運動とは反対側に向けられたトラックの少なくとも1つの断続リブの面、および軸方向運動の方向を向いている阻止機能の面は、好ましくは、同じ構成要素のそれぞれの反対側の面より10°〜60°浅い。たとえば、リミッタが用量投薬中に遠位方向に動いた場合、トラックの少なくとも1つの断続リブの近位面は、その遠位面より浅く、阻止機能の遠位面は、その近位面より浅い。したがって、トラックの少なくとも1つの断続リブおよび阻止機能は、傾斜した鋸歯状の横断面を含み、断続リブおよび阻止機能の2つの浅い面は、互いに当接する。この実施形態では、当接面のフランク角を変更して、送達休止中に接触しているときにこれら2つの表面間の境界面で生じる摩擦力を増大させる。この摩擦力は、投薬を中止するように作用する。
【0024】
別の実施形態では、用量投薬中のトリガの軸方向運動とは反対側に向けられた少なくとも1つの断続リブの面は、少なくとも1つの戻り止めを含み、少なくとも1つの戻り止めは、阻止機能が戻り止めの隙間を通るようにサイズ設定されている。好ましくは、トラックおよび阻止機能の相対的運動を抑制するのを助けるために、断続リブには複数のそのような戻り止めが存在し、より好ましくは規則的な間隔で存在する。たとえば、使用者が投薬中にトリガへの遠位力の印加を止めた場合、リミッタは、近位に押されて阻止機能に入り、戻り止めの1つに接触する。この接触は、投薬を停止させるように作用する。
【0025】
別の実施形態では、トラックの広幅セクションは、コミットランプ(commit ramp)を含み、コミットランプは、トリガが起動されている用量投薬中はトラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を可能にし、用量投薬を停止させるためにトリガが解放されているときは反対の軸方向への相対的運動を阻止する1方向コミット機能を作成する。したがって、コミットランプは、軸方向に作用し、軸方向面に他方の軸方向面より浅い傾斜を含み、この傾斜は、用量の投薬を開始するためのトラックおよび阻止機能の相対的な軸方向運動中に乗り越えられる。他方の反対の軸方向面は、トラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を阻止し、これらの2つの機能が回転不能に位置合わせされた時点でトリガが解放された場合にリミッタが阻止機能を越えて近位方向に戻るのを防止する。
【0026】
用量選択要素は、管状の数字スリーブとすることができ、ハウジングのアパーチャまたは窓を通して少なくとも部分的に見ることができ、たとえばマーキングをその外面に有する。数字スリーブは、ハウジング、たとえばEP1603611B1に開示されているように外側ハウジングに連結された用量ダイヤルスリーブ、もしくはWO2014/033195A1に開示されているように内側ハウジングに連結された用量ダイヤルスリーブにねじ係合することができ、またはハウジングに連結された構成要素部材、たとえばWO2016/001299A1に開示されているゲージ要素にねじ係合することができる。好ましくは、リミッタは、用量選択要素にスプライン係合され、したがってリミッタは、用量選択要素に対して軸方向に可動であるが回転可能でない。
【0027】
薬物送達デバイスは、ハウジングに対して回転不能に拘束されているがハウジングに対して軸方向に可動であるゲージ要素をさらに含むことができる。用量選択要素は、ねじ山によってゲージ要素に連結することができる。ゲージ要素は、阻止機能を含むことができ、または別法としてねじ山がリミッタの阻止機能を案内する。
【0028】
トリガを解放することによって休止し、単にトリガを再び軸方向に動かすことによって送達を継続することを有効にするための上述したものと同じ効果を、用量選択要素およびゲージ要素にも適用することができる。したがって、ゲージ要素のねじ山を形成するリブの近位面は、遠位面より浅く、用量選択要素のねじ山を形成する溝の近位面は、反対の遠位面より浅い。当然ながら、ゲージ要素のねじ山が溝であり、用量選択要素のねじ山がリブである場合も、類似の効果を実現することができる。
【0029】
使用者がダイヤル設定することができる最大用量に対する制限を提供するために、ゲージ要素は、その近位端に軸方向前縁および軸方向後縁を含み、前縁は、ダイヤル設定中に最大用量に到達したとき、リミッタ上の対応する止め具に係合する。用量ダイヤル設定中は前縁がリミッタ上の止め具に係合し、用量投薬中は後縁が止め具機能を外すことを確実にするために、ゲージ要素の前縁は、後縁より軸方向に長くなるように設計することができる。
【0030】
本発明は、手動駆動式デバイスにもばね駆動式デバイスにも適している。好ましくは、用量選択要素は、ハウジングに連結されたばねのようなパワーリザーバに連結され、したがって用量選択中の用量選択要素の回転により、パワーリザーバ内にエネルギーが蓄積される。パワーリザーバ内に蓄積されたエネルギーは、用量投薬中に駆動機構を駆動することができる。
【0031】
薬物送達デバイスは、トリガによって動作可能な、用量選択要素と駆動機構との間に位置するクラッチをさらに含むことができる。好ましくは、クラッチは、たとえばWO2016/001299A1に開示されているように、トリガが作動されたとき用量選択要素および駆動機構を回転不能に連結し、用量選択中は用量選択要素および駆動機構の相対的回転を可能にし、すなわちデカップリングする。代替として、トリガは、たとえばEP1603611B1に開示されているように、用量選択中は用量選択要素および駆動機構を連結し、用量投薬中は用量選択要素および駆動機構をデカップリングするように、クラッチを作動させることができる。
【0032】
薬物送達デバイスは、様々な異なる駆動機構を有することができる。例は、EP1603611B1、WO2014/033195A1、WO2016/001299A1、EP2054112B1、WO2010/149396A1、およびEP2262553B1に開示されている。好ましくは、駆動機構は、駆動スリーブをさらに含み、プランジャまたはピストンロッドは、たとえばスプラインまたはねじ山によってハウジングに連結され、たとえばスプラインまたはねじ山によって駆動スリーブに連結され、したがって駆動スリーブの回転が、薬剤リザーバから薬剤の用量を投薬するためのハウジングに対するプランジャの軸方向運動を引き起こす。一例として、プランジャは、ハウジングにねじ係合することができ、駆動スリーブにスプラインまたはねじ係合することができる。
【0033】
使用者が用量値を選択することを可能にするタイプの薬物送達デバイスは、典型的には、ゼロ用量止め具、すなわち最小用量位置と、最大用量止め具、すなわち用量選択要素を回転させることができる量または程度を制限する位置とを画成するリミッタ機構を含む。そのようなリミッタは、1つもしくはそれ以上の別個の構成要素部材を含むことができ、または用量選択要素、ハウジング、および/もしくは駆動機構内に少なくとも部分的に組み込むことができる。好ましい実施形態によれば、トラックは、リミッタに対する阻止機能の回転を制限する少なくとも1つの回転ハードストップを含む。したがって、回転ハードストップは、リミッタが選択可能な最小または最大用量を画成する位置に配置することができる。この機能は、選択された特定の用量の投薬を防止および/または可能にするための前述のリミッタ機構とは独立している。好ましくは、ねじ山は、ゲージ要素に対する用量選択要素の回転を制限する少なくとも1つの回転ハードストップを含み、この回転ハードストップは、選択可能な最小または最大用量を画成する位置に配置される。
【0034】
本発明によるリミッタ機構は、用量設定中に360°を超える範囲にわたって回転させることができる用量選択要素、たとえば数字スリーブ、または数字スリーブに連結された構成要素部材を有する薬物送達デバイス内での使用に適している。第1の態様によれば、そのようなデバイスにおいて、用量選択要素は、デバイスの内側または外側ハウジングに対して軸方向に拘束することができ、すなわち用量選択要素は、用量設定中に軸方向に可動でなく、用量選択要素は、ゲージ要素のようなプッシャ、たとえばマスキングプッシャにねじ係合し、プッシャは、螺旋状トラックを有するリミッタに係合し、螺旋状トラックは、好ましくはこのねじ係合と同一のピッチを有する。リミッタは、好ましくは、用量選択要素に対して回転不能に拘束されるが、用量選択要素に対して軸方向に可動である。加えて、プッシャは、リミッタの螺旋状トラックに係合することができ、したがって螺旋状トラックによって画成された経路によってリミッタの軸方向運動の範囲が定められ、螺旋状トラックは、リミッタの軸方向運動を可能にするセクション、たとえば経路のうちより広幅のセクションと、リミッタの軸方向運動を防止するセクション、たとえば経路のうちより狭幅のセクションとを含む。リミッタは、ボタンまたはトリガに連結することができ、それによってこのボタンまたはトリガの軸方向運動を制限することができる。
【0035】
第2の代替の態様によれば、用量設定中に360°を超える範囲にわたって回転させることができる用量選択要素を有するデバイスにおいて、用量選択要素は、内側または外側ハウジングにねじ係合することができ、したがって用量選択要素の回転は、ハウジングに対する用量選択要素の軸方向変位を引き起こす。用量選択要素は、螺旋状トラックを含むことができ、螺旋状トラックは、好ましくはこのねじ係合と同一のピッチを有し、すなわち用量選択要素は、リミッタ経路を含む。軸方向に可動のプッシャは、この経路に係合することができ、経路は、プッシャの軸方向運動を可能にするセクション、たとえば経路のうちより広幅のセクションと、プッシャの軸方向運動を防止するセクション、たとえば経路のうちより狭幅のセクションとを含む。プッシャは、ボタンまたはトリガに連結することができ、それによってこのボタンまたはトリガの軸方向運動を制限することができる。
【0036】
上述した2つの態様に対する第3の代替の態様として、本発明によるリミッタ機構は、用量設定中に最大360°だけ回転させることができる用量選択要素、たとえば数字スリーブ、または数字スリーブに連結された構成要素部材を有する薬物送達デバイス内での使用に適している。そのようなデバイスでは、リミッタトラックも螺旋状とすることができるが、円周方向にのみ延びる、すなわちピッチのないリミッタトラックを有することも可能である。プッシャがリミッタトラックに係合し、ボタンまたはトリガに連結されることで、このボタンまたはトリガの軸方向運動を制限することができる。
【0037】
トラックとトラックに係合するプッシャとの相互作用に関して、これら3つの態様の変形例を提供することもできる。たとえば、トラックおよびプッシャは、プッシャがトラックのより広幅のセクションに入り、ボタンまたはトリガの軸方向変位(プッシャによる)によって用量投薬が開始された後は、用量投薬を停止または休止することはできないように設計することができる。なぜなら、用量投薬中、プッシャがトラックのより狭幅のセクション内に案内されたとき、プッシャは、トラックのうちボタンまたはトリガが以前の軸方向位置、すなわち用量設定位置へ戻ることを防止するセクション内を案内されるからである。代替として、トラックおよび/またはプッシャは、プッシャがトラックのより広幅のセクションからトラックのより小さいセクションへ戻ることを可能にするランプのような傾斜面を備えることができ、すなわち用量設定位置へのボタンまたはトリガの軸方向変位が可能にされる。さらなる代替態様では、プッシャとトラックとの間の摩擦は、ボタンまたはトリガが解放されるとすぐに用量投薬が休止されるように選択することができる。プッシャとトラックとの間の摩擦は、たとえば被覆を提供すること、またはより粗いもしくはより滑らかな表面、たとえば歯部を提供することによって、調整することができる。
【0038】
用量ダイヤル設定および投薬中、阻止機能およびトラック、特にトラックと阻止機能との間の相対的な軸方向運動を可能にするその広幅セクションの位置は、各々独自の製造公差を伴う一連の他の構成要素によって決定される。これらの構成要素公差の累積的な影響の結果、デバイスが許容可能な用量にダイヤル設定されているにもかかわらず、リミッタ、他の構成要素、および用量選択要素が(公称位置から)回転不能に位置ずれし、阻止機能がトラックの狭幅セクション内に残りうることは予見可能である。したがって、阻止機能および/またはトラックの少なくとも1つの広幅セクションは、位置合わせ機能を含む。たとえば、トラックの広幅セクションは、確実な戻り止めを含むことができ、阻止機能は、対応する位置合わせリブをその表面に含むことができる。確実な戻り止めおよび位置合わせリブは、軸方向に延びることができる。トラックの広幅セクションおよび阻止機能は、他の適した構造もその表面に同様に含むことができる。回転不能に位置ずれしている場合、リブの対応するランプ(傾斜面)と確実な戻り止めのランプ(傾斜面)との相互作用が、2つの構成要素を再びそれらの公称位置の方へ案内するように作用する。さらに、阻止機能は、阻止機能のうち円周方向に向いている側に形成された引込みランプを含むことができ、引込みランプは、たとえば先細りした縁部を形成する。許容可能な用量がダイヤル設定されたとき、引込みランプは、公差の極端でトラックの狭幅セクションの端部に重複する。用量投薬中、阻止機能の引込みランプは、阻止機能をトラックの広幅セクション内へ引き込む。
【0039】
別の実施形態では、数字スリーブの外側ねじ山を含む部分の近位端は、阻止機能に対する最小用量ダイヤル止め具を形成する軸方向縁部を含み、最小用量ダイヤル止め具は、典型的には、0IUダイヤル位置に対応する。
【0040】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0041】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0042】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0043】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0044】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0045】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0046】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0047】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0048】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0049】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0050】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0051】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0052】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0053】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0054】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0055】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0056】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0057】
本発明の非限定的な例示的実施形態について、添付の概略的な図面を参照して次に説明する。