(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バブル信号らしさ算出部は、前記直交検波部により取得された前記IQ信号列から自己相関を求め、求められた前記自己相関に基づいて前記バブル信号らしさを算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
前記バブル信号らしさ算出部は、前記直交検波部により取得された前記IQ信号列から位相差の分散値を算出し、算出された前記位相差の分散値を用いて前記バブル信号らしさを算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
前記バブル信号らしさ算出部は、前記直交検波部により取得された前記IQ信号列から振幅の分散値を算出し、算出された前記振幅の分散値を用いて前記バブル信号らしさを算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
前記パルスインバージョン加算部により取得された前記画像信号から非線形信号のパワーおよび速度の少なくとも一方を算出する非線形信号情報算出部をさらに備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
前記画像生成部は、前記非線形信号情報算出部により算出された前記非線形信号のパワーおよび速度の少なくとも一方に基づいて前記超音波画像を生成する請求項5に記載の超音波診断装置。
前記画像生成部は、前記非線形信号情報算出部により算出された前記非線形信号のパワーおよび速度の少なくとも一方と前記バブル信号らしさ算出部により算出された前記バブル信号らしさとに基づいたカラーマップにより前記超音波画像を生成する請求項6に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。また、以下においては、被検体に造影剤が導入されているものとする。
実施の形態
図1に、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1の構成を示す。
図1に示すように、超音波診断装置1は、振動子アレイ2を備えており、振動子アレイ2に送信部3および受信部4がそれぞれ接続されている。受信部4には、直交検波部5が接続され、直交検波部5に、バブル信号らしさ算出部6およびパルスインバージョン加算部7が接続されている。また、パルスインバージョン加算部7には、非線形信号情報算出部8、画像生成部9、表示制御部10および表示部11が順次接続されている。さらに、バブル信号らしさ算出部6は、画像生成部9に接続されている。
【0015】
さらに、送信部3、受信部4、直交検波部5、バブル信号らしさ算出部6、パルスインバージョン加算部7、非線形信号情報算出部8、画像生成部9および表示制御部10に、装置制御部12が接続されており、装置制御部12に、格納部13および操作部14が接続されている。装置制御部12と格納部13は、互いに双方向の情報の受け渡しが可能に接続されている。
また、送信部3、受信部4、直交検波部5、バブル信号らしさ算出部6、位相補正部7、パルスインバージョン加算部7、非線形信号情報算出部8、画像生成部9、表示制御部10および装置制御部12により、プロセッサ15が構成されている。
【0016】
図1に示す超音波診断装置1の振動子アレイ2は、1次元または2次元に配列された複数の振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送信部3から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN−PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0017】
プロセッサ15の送信部3は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、装置制御部12からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ2の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、それぞれの駆動電圧を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ2の複数の振動子の電極にパルス状の駆動電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、パルス状の超音波ビームすなわち超音波パルスが形成される。送信部3は、このようにして、互いに位相を反転させた第1の超音波パルスおよび第2の超音波パルスを振動子アレイ2から順次発生させ、振動子アレイ2を介して、第1の超音波パルスと第2の超音波パルスの組を同一の走査線に沿って被検体内に複数回送信する。
【0018】
被検体内に送信された第1の超音波パルスおよび第2の超音波パルスは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、いわゆる超音波エコーとして振動子アレイ2に向かって被検体内を伝搬する。このように振動子アレイ2に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子により受信される。この際に、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、これらの電気信号を受信部4に出力する。
【0019】
プロセッサ15の受信部4は、装置制御部12からの制御信号に従って、振動子アレイ2から出力される信号の処理を行う。
図2に示すように、受信部4は、増幅部16、AD(Analog Digital)変換部17およびビームフォーマ18が直列接続された構成を有している。
【0020】
受信部4の増幅部16は、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部17に送信する。AD変換部17は、増幅部16から送信された信号をデジタルデータに変換し、これらのデータをビームフォーマ18に送信する。ビームフォーマ18は、装置制御部12からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、AD変換部17により変換された各データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部17により変換された各データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信信号が取得される。
【0021】
ここで、被検体内を伝搬する超音波エコーには、第1の超音波パルスおよび第2の超音波パルスを形成する基本波の帯域を有する基本波成分と、被検体の組織の動きに起因する2次高調波成分と、被検体に導入された造影剤のバブルの微小な振動に起因する非線形成分が含まれている。そのため、受信部4により取得された受信信号には、例えば
図3および
図4に示すように、超音波エコーの基本波成分に基づく基本波信号E1またはE4、2次高調波成分に基づく2次高調波信号E2および造影剤のバブルによる非線形成分に基づくバブル信号E3を含んでいる。
図3に示す例では、正の位相を有する超音波パルスに基づく受信信号が示されており、基本波信号E1は、正の値を有している。一方、
図4に示す例では、負の位相を有する超音波パルスに基づく受信信号が示されており、基本波信号E4は、負の値を有している。
【0022】
プロセッサ15の直交検波部5は、受信部4により取得された受信信号に参照周波数のキャリア信号を混合することにより、受信信号を直交検波して複素データであるIQ信号に変換し、第1の超音波パルスに対応するIQ信号列と第2の超音波パルスに対応するIQ信号列を取得する。この際に、直交検波部5は、被検体に導入されている造影剤の検出精度を向上させるため、
図3および
図4に示すように、基本波信号E1の信号強度および2次高調波信号E2の信号強度と比較して、造影剤のバブルに起因する非線形な信号からなるバブル信号E3の信号強度が相対的に大きくなる周波数を含むように、直交検波の帯域FBを設定することが望ましい。さらに、基本波信号E1の信号強度と、2次高調波信号E2およびバブル信号E3を含む非線形信号の信号強度とが、互いに比較的近い値を有するように、
図3および
図4に示すように、バブル信号E3が相対的に大きくなる周波数に加えて、基本波信号E1またはE4の周波数帯域の一部を含むように、直交検波の帯域FBを設定することが好ましい。
【0023】
プロセッサ15のバブル信号らしさ算出部6は、直交検波部5により取得されたIQ信号列に基づいて算出された自己相関または分散値を用いた指標を、被検体に導入された造影剤のバブルに基づくバブル信号らしさとして算出する。バブル信号らしさ算出部6によるバブル信号らしさの算出については、後に詳しく説明する。
【0024】
プロセッサ15のパルスインバージョン加算部7は、直交検波部5により取得されたIQ信号列を用いて、第1の超音波パルスに対応するIQ信号と、第2の超音波パルスに対応するIQ信号とを加算することにより、
図3および
図4に示すような基本波信号E1およびE4が除去された加算信号を取得する。
【0025】
プロセッサ15の非線形信号情報算出部8は、パルスインバージョン加算部7により取得された加算信号から、被検体の組織に起因する2次高調波信号E2および被検体に導入された造影剤のバブルに起因するバブル信号E3を含む非線形信号のパワーおよび速度の少なくとも一方を非線形信号情報として算出する。
プロセッサ15の画像生成部9は、非線形信号情報算出部8により算出された非線形信号のパワーおよび速度の少なくとも一方と、バブル信号らしさ算出部6により算出されたバブル信号らしさとに基づいて超音波画像を生成する。
プロセッサ15の表示制御部10は、装置制御部12の制御の下、画像生成部9により生成された超音波画像等に所定の処理を施して、表示部11に超音波画像等を表示させる。
【0026】
超音波診断装置1の表示部11は、表示制御部10の制御の下、画像等を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等のディスプレイ装置を含む。
超音波診断装置1の操作部14は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0027】
格納部13は、超音波診断装置1の動作プログラム等を格納するもので、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0028】
なお、送信部3、受信部4、直交検波部5、バブル信号らしさ算出部6、パルスインバージョン加算部7、非線形信号情報算出部8、画像生成部9、表示制御部10および装置制御部12を有するプロセッサ15は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよい。また、これらの送信部3、受信部4、直交検波部5、バブル信号らしさ算出部6、パルスインバージョン加算部7、非線形信号情報算出部8、画像生成部9、表示制御部10および装置制御部12を部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0029】
次に、
図5に示すフローチャートを用いて、実施の形態における超音波診断装置1の動作を詳細に説明する。実施の形態において、超音波診断装置1は、同一の走査線上に互いに位相を反転させた第1の超音波パルスと第2の超音波パルスを順次送信し、第1の超音波パルスによる受信信号と第2の超音波パルスによる受信信号を加算するパルスインバージョン法を用いて、超音波画像を生成する。
【0030】
まず、ステップS1において、送信部3は、互いに位相を反転させた第1の超音波パルスと第2の超音波パルスを、振動子アレイ2を介して同一の走査線上に複数回送信する。この際に、送信部3は、第1の超音波パルスと第2の超音波パルスの組を同一の走査線上にN回送信した後に、次の走査線上に第1の超音波パルスと第2の超音波パルスの組をN回送信する。ここで、Nは2以上の整数である。例えば、送信部3は、
図6に示すように、各走査線L1、L2、L3、L4、L5上において、第1の超音波パルスFPと第2の超音波パルスSPを、交互に4回ずつ送信している。また、
図6に示す例においては、時系列に隣り合う第1の超音波パルスFP同士の時間間隔PRT1と、時系列に隣り合う第2の超音波パルスSP同士の時間間隔PRT1は、互いに同一である。
【0031】
ステップS2において、受信部4は、ステップS1で被検体内に送信された第1の超音波パルスFPと第2の超音波パルスSPに基づいて被検体内で発生した超音波エコーを受信した振動子アレイ2から出力される信号により、受信信号を取得する。
【0032】
続くステップS3において、直交検波部5は、ステップS2で取得された受信信号に対して定められた帯域FBで直交検波を行うことにより、第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号列と第2の超音波パルスに対応するIQ信号列を取得する。この際に、直交検波部5は、例えば、
図3および
図4に示すように、基本波信号E1の信号強度および2次高調信号E2の信号強度と比較して、造影剤のバブルに起因する非線形な信号からなるバブル信号E3の信号強度が相対的に大きくなるように、且つ、基本波信号E1の信号強度と、2次高調波信号E2およびバブル信号E3を含む非線形信号の信号強度とが互いに近い値を有するように、直交検波の帯域FBを設定し、この帯域FBにおいて直交検波を実行する。
【0033】
また、第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号列と第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号列は、互いに極性の異なる位相を有している。例えば、第1の超音波パルスFPが正の位相を有し、第2の超音波パルスSPが負の位相を有している場合に、
図7に示すように、第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号P1、P3、P5、P7、P9、P11を含むIQ信号列C1は、正の位相を有し、第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号P2、P4、P6、P8、P10、P12を含むIQ信号列C2は、負の位相を有する。
【0034】
続くステップS4において、バブル信号らしさ算出部6は、ステップS3で取得されたIQ信号列C1およびC2を用いて、バブル信号らしさを表す指標を算出する。例えば、バブル信号らしさ算出部6は、ステップS3で得られたIQ信号により下記式(1)に示すように自己相関VTを算出し、下記式(2)に示すようにIQ信号のパワーPTを算出し、さらに、算出された自己相関VTおよびパワーPTを用いて下記式(3)に示すように、バブル信号らしさとして、分散値VSを算出する。
VT=[Σ(P
j+1・P
*j)]/(2n−1) (j=1,2,・・・,2n−1)・・・(1)
PT=(Σ|P
k|
2)/(2n) (k=1,2,・・・,2n)・・・(2)
VS=1−(|VT|/PT) ・・・(3)
【0035】
ここで、数式(1)および(2)におけるnは自然数である。また、IQ信号の自己相関とは、時系列に異なる2つのIQ信号のうち、時系列において後のIQ信号と、時系列において前のIQ信号の複素共役との積により計算されるものである。
また、バブル信号らしさの指標値は、信号の大小によらない規格化された値であることが望ましい。規格化の方法については特に限定しないが、ここでは最も単純な方法として、PTで|VT|を除し、バブル信号らしさの指標値が0から1の範囲に値を有するように、指標値を規格化している。後述する他の指標値の例についても、同様の考えに基づき規格化を行っている。
このようにして算出された分散値VSが、バブル信号らしさを表す指標値として用いられることができる理由について説明する。
【0036】
まず、ステップS3で得られたIQ信号列C1およびC2において、
図3および
図4に示すような2次高調波信号E2と造影剤のバブルに起因するバブル信号E3を含む非線形信号の影響が比較的小さく、基本波信号E1およびE4が支配的である場合には、IQ信号列C1およびC2は、例えば、
図8に示すようなIQ信号により構成される。ここで、
図8には、超音波エコーにおいて造影剤のバブルの影響が無く、被検体の組織に起因する成分が支配的な場合のIQ信号が示されており、IQ信号の例として、3つのIQ信号P1、P2、P3が示されている。また、実際には、IQ信号P1とP3は互いに異なる大きさおよび位相を有する信号であるが、説明のために、IQ信号P1およびP3は互いに等しいとする。
【0037】
図8に示すように、IQ信号P1およびP3は、例えば、基本波信号E1に対応する基本波ベクトルG1と、被検体の組織に起因する2次高調波信号E2等の高次の高調波信号に対応する非線形信号ベクトルH1の和で表され、IQ信号P2は、基本波信号E4に対応する基本波ベクトルG2と高次の高調波信号に対応する非線形信号ベクトルH2との和で表される。ここで、高次の高調波信号の信号強度は、基本波信号E1の信号強度に対して、例えば10分の1以下のオーダーを有する等、非常に小さく、非線形信号ベクトルH1およびH2の大きさは、基本波ベクトルG1およびG2の大きさと比較して非常に小さい。
【0038】
そのため、IQ信号P1およびP3は、概ね基本波ベクトルG1に等しく、IQ信号P2は、概ね基本波ベクトルG2に等しい。このように、ステップS3で取得されたIQ信号列C1およびC2において基本波信号E1およびE4が支配的である場合には、IQ信号列C1およびC2のランダム性が低い。また、この際に、IQ信号P1およびP3は、IQ信号P2の位相からIQ信号P1の位相を減じた位相差DA
1と、IQ信号P3の位相からIQ信号P2の位相を減じた位相差DA
2は、概ね180度近傍の値となる。
【0039】
そのため、例えば、下記式(4)に示すように、数式(1)中に現れる時系列に隣り合うIQ信号同士の自己相関を自己相関ベクトルVT
jとすると、自己相関ベクトルVT
jは、
図9に示すように、概ね1方向に向かって延びるベクトルとなる。ここで、
図9においては、IQ信号P1およびP2に基づいて算出された自己相関ベクトルVT
1と、IQ信号P2およびP3に基づいて算出された自己相関ベクトルVT
2が示されており、自己相関ベクトルVT
1およびVT
2は、それぞれ180度近傍の位相DA
1およびDA
2を有している。
VT
j=P
j+1・P
*j (j=1,2,・・・,2n−1)・・・(4)
【0040】
このような場合には、数式(1)に示される自己相関VTの絶対値と数式(2)に示されるパワーPTの絶対値との比が、概ね1に等しくなるため、数式(3)に示される分散VSは、ゼロの近傍の値となる。
【0041】
次に、ステップS3で得られたIQ信号列C1およびC2において、造影剤のバブルに起因する非線形な信号からなるバブル信号E3の影響が比較的大きい場合には、IQ信号列C1およびC2は、例えば、
図10に示すようなIQ信号により構成される。ここで、造影剤のバブルに起因するバブル信号E3の信号強度は、組織に起因する2次高調波信号E2の信号強度と比べて比較的強いため、
図3および
図4に示すような帯域FBにおいて直交検波がなされることにより、例えば、基本波信号E1および2次高調波信号E2の信号強度に対して同程度もしくはそれ以上の信号強度を有するバブル信号E3を含む、IQ信号が得られる。このようなIQ信号の例として、
図10には、IQ信号P1、P2、P3が示されている。
図8と同様に、実際には、IQ信号P1とP3は互いに異なる大きさおよび位相を有する信号であるが、説明のために、IQ信号P1およびP3は互いに等しいとする。
【0042】
図10に示すように、IQ信号P1およびP3は、例えば、基本波信号E1に対応する基本波ベクトルG1と、2次高調波信号E2およびバブル信号E3を含む非線形信号に対応する非線形信号ベクトルH1の和で表され、IQ信号P2は、基本波信号E4に対応する基本波ベクトルG2と2次高調波信号E2およびバブル信号E3を含む非線形信号に対応する非線形信号ベクトルH2との和で表される。
図10に示す例では、基本波ベクトルG1の大きさと非線形信号ベクトルH1の大きさとの比、および、基本波ベクトルG2の大きさと非線形信号ベクトルH2の大きさとの比は、概ね1に等しい。
【0043】
このような場合には、IQ信号P1およびP3は、基本波ベクトルG1から大きくずれた信号であり、IQ信号P2は、基本波ベクトルG2から大きくずれた信号である。このように、ステップS3で取得されたIQ信号列C1およびC2において基本波信号E1およびE4が支配的ではなく、非線形信号が比較的大きい場合には、IQ信号のランダム性が高い。また、この際に、IQ信号P2の位相からIQ信号P1の位相を減じた位相差DA
1と、IQ信号P3の位相からIQ信号P1の位相を減じた位相差DA
2は、例えば、90度近傍の値または270度近傍の値等の、180度から離れた値となる。
【0044】
そのため、数式(4)に示す自己相関ベクトルVT
jは、例えば
図11に示すように、概ね反対方向に向かって延びるベクトルとなる。ここで、
図11においては、IQ信号P1およびP2に基づいて算出された自己相関ベクトルVT
1と、IQ信号P2およびP3に基づいて算出された自己相関ベクトルVT
2が示されており、自己相関ベクトルVT
1は、90度近傍の位相を有しており、VT
2は、270度近傍の位相を有している。
【0045】
このような場合には、数式(1)に示される自己相関VTの計算において、数式(4)に示される自己相関ベクトルVT
jが概ね相殺されるため、数式(3)に示される分散VSは、1の近傍の値となる。
したがって、分散VSの値が1に近づくほど、ステップS3で取得されたIQ信号列C1およびC2のランダム性が高くなり、すなわち、IQ信号列C1およびC2において造影剤のバブルに起因するバブル信号E3の影響が大きくなるため、IQ信号列C1およびC2が造影剤のバブルに起因する信号らしいことがわかる。また、分散VSの値がゼロに近づくほど、IQ信号列C1およびC2のランダム性が低くなり、すなわち、IQ信号列C1およびC2において造影剤のバブルに起因するバブル信号E3の影響が小さくなり、基本波信号E1およびE4の影響が大きくなるため、IQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいことがわかる。
【0046】
ここで、自己相関VTは、時間的に互いに隣接するIQ信号対の一方と、他方の複素共役との積により求められるが、これらのIQ信号に含まれるバブル信号E3の信号強度が基本波信号E1および2次高調波信号E2の信号に対して同程度もしくはそれ以上である場合には、このような積の計算において、複素共役となる、第1の超音波パルスFPからの超音波エコーに対応する第1のIQ信号と第2の超音波パルスSPからの超音波エコーに対応する第2のIQ信号とが交互に入れ替わることにより、算出される位相差DA
jが180度から交互に離れた値を有するという性質が得られている。このような場合には、つまり、自己相関VTを算出する際に、積が計算される第1のIQ信号と第2のIQ信号の順番が周期的に入れ替われば同様の性質が得られるため、IQ信号P
j+3とP
jおよびP
j+5とP
j等から算出される自己相関でも、同様の結果を得ることができる。
【0047】
このようにして、ステップS4でバブル信号らしさが算出されると、続くステップS5において、パルスインバージョン加算部7は、ステップS3で取得されたIQ信号列C1およびC2を用いて、第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号と第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号を加算することにより基本波信号E1およびE4が除去された加算信号を取得する。
【0048】
例えば、パルスインバージョン加算部7は、
図12に示すように、互いに時系列に隣り合い且つ互いに極性の異なるIQ信号を加算することにより、加算信号a
1,a
2,a
3,a
4,a
5,a
6およびb
1,b
2,b
3,b
4,b
5を算出する。この際に、パルスインバージョン加算部7は、例えば、下記式(5)を用いて加算信号a
1,a
2,a
3,a
4,a
5,a
6を算出し、下記式(6)を用いて加算信号b
1,b
2,b
3,b
4,b
5を算出する。
a
m=P
2m−1+P
2m (m=1,2,・・・,n)・・・(5)
b
q=P
2q+P
2q+1 (q=1,2,・・・,n−1)・・・(6)
【0049】
続くステップS6において、非線形信号情報算出部8は、ステップS5で算出された加算信号a
mおよびb
qを用いて、被検体の組織に起因する2次高調波信号E2および被検体に導入された造影剤のバブルに起因する非線形な信号からなるバブル信号E3を含む非線形信号のパワーおよび速度ベクトルの少なくとも一方を算出する。例えば、非線形信号情報算出部8は、下記式(7)を用いてバブル信号E3のパワーPBを算出し、下記式(8)を用いてバブル信号E3の速度VBを算出することができる。
PB=[Σ|a
m|
2+Σ|b
q|
2]/(2n−1)
(m=1,2,・・・,n、 q=1,2,・・・,n−1)・・・(7)
VB=[Σ(a
r+1・a
*r)+Σ(b
t+1・b
*t)]/(2n−3)
(r=1,2,・・・,n−2、 t=1,2,・・・,n−3)・・・(8)
【0050】
続くステップS7において、画像生成部9は、ステップS6で算出された非線形信号のパワーPBおよび速度VBのうち少なくとも一方と、ステップS4で算出されたバブル信号らしさに基づいて超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部11に表示する。例えば、画像生成部9は、
図13に示すように、ステップS6で算出された非線形信号のパワーPBの値を明度変化により表し、バブル信号らしさの指標値を色Bの彩度変化により表す、いわゆるカラーマップにより超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部11に表示することができる。
図13に示す例では、パワーPBの値が大きくなるほど明度が大きくなり、バブル信号らしさの指標値が大きくなるほど色Bの彩度が高くなっている。
このようにして、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1の動作が終了する。
【0051】
以上から、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1によれば、バブル信号らしさ算出部6が、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2から求めた自己相関VTに基づいてバブル信号らしさを算出するため、被検体の組織に起因する信号と、被検体に導入された造影剤のバブルに起因する信号とを容易に且つ短時間に区別することができる。
さらに、算出されたバブル信号らしさの指標値と、非線形信号のパワーPBおよび速度VBのうち一方とに基づいて超音波画像を生成し、この超音波画像を表示部11に表示するため、ユーザが、被検体に導入された造影剤のバブルに起因する信号を容易に把握することができる。
【0052】
なお、実施の形態において、バブル信号らしさ算出部6は、数式(3)に示す分散VSをバブル信号らしさの指標値として算出しているが、IQ信号列に基づいて算出された自己相関VTを用いた指標値であれば、これに限定されない。例えば、バブル信号らしさ算出部6は、下記式(9)に示すように、数式(3)中に現れる|VT|/PTを用いて分散値VXを計算することにより、分散値VXをバブル信号らしさとして算出することができる。この場合には、分散値VXが1に近づくほど、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいと判断することができ、分散値VXがゼロに近づくほど、IQ信号列C1およびC2が造影剤のバブルに起因する信号らしいと判断することができる。
VX=|VT|/PT ・・・(9)
【0053】
また、例えば、バブル信号らしさ算出部6は、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2において、互いに時系列に隣り合うIQ信号の位相差の分散値を、バブル信号らしさとして算出することもできる。例えば、下記式(10)に示すように、IQ信号P
kの実部をX
k、虚部をY
kとすると、互いに時系列に隣り合うIQ信号の位相差DA
jは、下記式(11)で表される。ここで、下記式(10)におけるiは、虚数単位を表す。
P
k=X
k+iY
k (k=1,2,・・・,2n)・・・(10)
DA
j=tan
−1[(Y
j+1X
j−X
j+1Y
j)/(X
j+1X
j+Y
j+1Y
j)] (j=1,2,・・・,2n−1)・・・(11)
【0054】
さらに、バブル信号らしさ算出部6は、下記式(12)に示すように、数式(11)により算出された位相差DA
jの分散値VS1をバブル信号らしさの指標値として算出することができる。ここで、下記式(12)におけるE(DA
j)は、位相差DA
jの算術平均である。
図9に示すように、非線形な信号からなるバブル信号E3の影響が小さい場合には、それぞれのDA
jは概ね互いに等しくなるため、VS1はゼロに近づく。一方、
図11に示すように、非線形な信号からなるバブル信号E3の影響が大きい場合には、DA
jとDA
j+1は互いに離れた値となるため、VS1はゼロよりも有意に大きな値となる。よって、分散値VS1が1に近づくほど、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2が造影剤のバブルに起因する信号らしいと判断することができ、分散値VS1がゼロに近づくほど、IQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいと判断することができる。また、自己相関VTと同様の考え方により、P
j+3とP
jおよびP
j+5とP
j等から算出される位相差でも同様の結果を得ることができる。
VS1=1−[E(DA
j)
2/{ΣDA
j2/(2n−1)}] (j=1,2,・・・、2n−1)・・・(12)
【0055】
また、例えば、バブル信号らしさ算出部6は、下記式(13)に示すように、数式(12)中に現れる分散値VX1を、バブル信号らしさとして算出することもできる。この場合には、分散値VX1が1に近づくほど、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいと判断することができ、分散値VX1がゼロに近づくほど、造影剤のバブルに起因する信号らしいと判断することができる。
VX1=[E(DA
j)
2/{ΣDA
j2/(2n−1)}] (j=1,2,・・・、2n−1)・・・(13)
【0056】
また、例えば、バブル信号らしさ算出部6は、下記式(14)に示すように、直交検波部5により取得さえたIQ信号列C1およびC2の振幅の分散値VS2を、バブル信号らしさの指標値として算出することができる。ここで、下記式(14)におけるE(|P
k|)は、IQ信号P
kの絶対値すなわち振幅の算術平均である。
図8に示すように、非線形な信号からなるバブル信号E3の影響が小さい場合には、それぞれの|P
k|は概ね互いに等しくなるため、VS2はゼロに近づく。一方、
図10に示すように、非線形な信号からなるバブル信号E3の影響が大きい場合には、|P
k|と|P
k+1|は互いに離れた値となるため、VS2はゼロよりも有意に大きな値となる。よって、分散値VS2が1に近づくほど、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2が造影剤のバブルに起因する信号らしいと判断することができ、分散値VS2がゼロに近づくほど、IQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいと判断することができる。
VS2=1−[E(|P
k|)
2/{Σ|P
k|
2/(2n−1)}] (k=1,2,・・・,2n)・・・(14)
【0057】
また、例えば、バブル信号らしさ算出部6は、下記式(15)に示すように、数式(14)中に現れる分散値VX2を、バブル信号らしさの指標値として算出することもできる。この場合には、分散値VX2が1に近づくほど、直交検波部5により取得されたIQ信号列C1およびC2が被検体の組織に起因する信号らしいと判断することができ、分散値VX2がゼロに近づくほど、造影剤のバブルに起因する信号らしいと判断することができる。
VX2=[E(|P
k|)
2/{Σ|P
k|
2/(2n−1)}] (k=1,2,・・・,2n)・・・(15)
【0058】
また、実施の形態において画像生成部9により生成される超音波画像の表示例として、
図13に示すような、バブル信号E3のパワーPBの値とバブル信号らしさとに基づく超音波画像を示しているが、画像生成部9により生成される超音波画像は、これに限定されない。例えば、画像生成部9は、
図13に示す超音波画像の表示例において、バブル信号らしさの指標値が一定の値よりも大きい箇所のみ色Bを用いて表示し、バブル信号らしさの指標値が一定の値よりも小さい箇所については色Bを用いた表示を行わないで、パワーPBの値をグレースケールにより表示することができる。
【0059】
また、画像生成部9は、例えば、
図14に示すように、被検体の組織に起因する2次高調波信号E2および被検体に導入された造影剤のバブルに起因する非線形な信号からなるバブル信号E3を含む非線形信号の速度VBの位相の極性に応じて色B1および色B2の一方を選択し、パワーPBの値を明度変化により表し、バブル信号らしさの指標値を色B1および色B2の彩度変化により表した超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部11に表示することができる。
図14に示す例では、パワーPBの値が大きくなるほど明度が大きくなり、速度VBの位相が正の領域においては、バブル信号らしさの指標値が大きくなるほど色B1の彩度が高くなり、速度VBの位相が負の領域においては、バブル信号らしさの指標値が大きくなるほど色B2の彩度が高くなっている。
【0060】
また、画像生成部9は、例えば、非線形信号の速度VBの位相の値とバブル信号らしさの指標値とに基づいて超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部11に表示することもできる。例えば、この際に、画像生成部9は、
図14に示す例と同様に、速度VBの位相の極性に応じて色B1および色B2の一方を選択し、速度VBの位相の絶対値を明度変化により表し、バブル信号らしさの指標値を色B1および色B2の彩度変化により表した超音波画像を生成することができる。
【0061】
また、画像生成部9は、非線形信号のパワーPBおよび速度VBのうち少なくとも一方に基づいて超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部11に表示することもできる。例えば、画像生成部9は、図示しないが、パワーPBが大きいほど明度が大きくなるようなグレースケールにより超音波画像を生成することができる。
【0062】
また、画像生成部9は、非線形信号のパワーPBおよび速度VBのうち少なくとも一方に基づいて超音波画像を生成する場合に、バブル信号らしさの指標値を超音波画像に重畳して、または、並べて表示部11に表示することができる。この際に、例えば、画像生成部9は、図示しないが、操作部14を介してユーザにより指定された超音波画像上の位置に対応するバブル信号らしさの指標値を、表示部11に表示することができる。また、この際に、例えば、操作部14を介してユーザが操作することができるカーソルを表示部11に表示させておき、このカーソルにより、操作部14を介してユーザが超音波画像上の位置を指定することができる。
なお、超音波診断装置1に表示部11とは異なるディスプレイを設け、このディスプレイにバブル信号らしさの指標値を表示することもできる。
【0063】
また、図示しないが、超音波画像装置1にBモード画像を生成するためのBモード処理部を設けることにより、被検体の断層画像を表すBモード画像上に、非線形信号のパワーPBおよび速度VB、ならびに、バブル信号らしさを画像化して表示部11に重畳表示させることができる。また、被検体の断層画像を表すBモード画像に並べて、非線形信号のパワーPBおよび速度VB、ならびに、バブル信号らしさを画像化して表示部11に表示させることもできる。
【0064】
また、実施の形態において、パルスインバージョン加算部7は、時系列に隣り合う第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号と、第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号を加算しているが、時系列に隣り合わない任意の組み合わせにより、第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号と、第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号とを加算することもできる。しかしながら、時系列に隣り合う第1の超音波パルスFPに対応するIQ信号と、第2の超音波パルスSPに対応するIQ信号を加算する方が、被検体の組織の動きの影響が少ないため、好ましい。
【0065】
また、パルスインバージョン加算部7は、数式(5)を用いて加算信号a
mを算出し、数式(6)を用いて加算信号b
qを算出しているが、加算信号a
mおよびb
qのうち、一方のみを算出することもできる。