特許第6963679号(P6963679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963679リチウム金属電池用電解質及びそれを含むリチウム金属電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963679
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】リチウム金属電池用電解質及びそれを含むリチウム金属電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20211028BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M4/58
   H01M4/38 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-512473(P2020-512473)
(86)(22)【出願日】2018年10月8日
(65)【公表番号】特表2020-532081(P2020-532081A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】KR2018011813
(87)【国際公開番号】WO2019078526
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2020年2月28日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0134320
(32)【優先日】2017年10月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0118569
(32)【優先日】2018年10月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】トンソク・シン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】インテ・パク
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1601066(KR,B1)
【文献】 特表2014−531720(JP,A)
【文献】 特表2009−527096(JP,A)
【文献】 特表2013−508927(JP,A)
【文献】 特開2000−156245(JP,A)
【文献】 特開2002−008720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 4/58
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含み、
前記添加剤は、一方の末端にリチウム金属と結合可能な官能基を含み、他方の末端にフッ素化炭化水素基を含み、
前記添加剤は、下記化学式1で表される、リチウム金属電池用電解質:
【化1】
(前記化学式1において、
Aは、フッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基;またはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール基であり、
Bは、単一結合;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルカンジイル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜10のアルケンジイル基;非置換の炭素数2〜10のアルキンジイル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基;またはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン基であり、
前記A及びBのうち少なくとも1つ以上はフッ素で置換され、
Oは、酸素であり、
Xは、チオール基であり、
mは、0又は1であり、
nは、1〜3の整数である。)。
【請求項2】
前記Aと前記Bの炭素数の合計は30以下である、請求項1に記載のリチウム金属電池用電解質。
【請求項3】
前記添加剤は、1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシルチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロノナンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタンチオール、1H,1H−パーフルオロオクチルチオール、1H,1H−パーフルオロプロピルチオール、2,2,2−トリフルオロエタンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサンチオール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロチオフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンチオール、2,4−ジフルオロチオフェノール、3,4−ジフルオロチオフェノール、2−フルオロチオフェノール、3−フルオロチオフェノール、4−フルオロチオフェノール、2−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール、3−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール、2−(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオールなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載のリチウム金属電池用電解質。
【請求項4】
前記添加剤は、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、2,4−ジフルオロチオフェノール、又は4−フルオロチオフェノールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム金属電池用電解質。
【請求項5】
前記添加剤は、リチウム金属電池用電解質全体100重量%を基準として0.01〜5重量%で含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム金属電池用電解質。
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、4−フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム金属電池用電解質。
【請求項7】
正極活物質を含む正極と、
リチウム金属又はリチウム合金を含む負極と、
請求項1乃至6のいずれかに記載の電解質とを含む、リチウム金属電池。
【請求項8】
前記正極活物質は、硫黄元素及び硫黄含有化合物からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項7に記載のリチウム金属電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月17日付け韓国特許出願第10−2017−0134320号及び2018年10月5日付け韓国特許出願第10−2018−0118569号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含む。
本発明は、リチウム金属電池用電解質及びそれを含むリチウム金属電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気、電子、通信及びコンピュータ産業が急速に発展することにより、高性能及び高安定性の二次電池に対する需要が最近急激に増加している。特に、電池、電子製品の軽量化、薄型化、小型化及び携帯化の趨勢に従って核心部品である二次電池も軽量化及び小型化が要求されている。また、環境公害の問題及び石油枯渇による新しい形態のエネルギー需給源の必要性が台頭することにより、これを解決することができる電気自動車の開発必要性が増加してきた。様々な二次電池の中で軽く、高いエネルギー密度と動作電位を示し、サイクル寿命が長いリチウム二次電池が最近脚光を浴びている。
【0003】
リチウム二次電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含む電極組立体が積層又は巻き取られた構造を有し、この電極組立体が電池ケースに内蔵され、その内部に非水電解液が注入されることにより構成される。このとき、リチウム二次電池の容量は電極活物質の種類によって差異があり、実際駆動時、理論容量分の十分な容量が確保されないので、常用化されていない実情である。
【0004】
リチウム二次電池の高容量化のために、リチウムとの合金化反応により、高い貯蔵容量特性を示すケイ素(4,200mAh/g)、錫(990mAh/g)などの金属系物質が負極活物質として利用されている。しかし、ケイ素、錫などの金属を負極活物質として用いる場合、リチウムと合金化する充電過程で体積が4倍程度に大きく膨張し、放電時には収縮する。このような充・放電時に繰り返して発生する電極の大きな体積変化によって活物質が徐々に未分化され、電極から脱落することにより容量が急激に減少し、これにより、安定性、信頼性の確保が難しく常用化には至っていない。
【0005】
前述した負極活物質と比較して、リチウム金属は理論容量が3,860mAh/gで優れており、標準還元電位(Standard Hydrogen Electrode;SHE)も−3.045Vで非常に低く、高容量、高エネルギー密度電池の具現が可能であるため、リチウム二次電池の負極活物質としてリチウム金属を用いるリチウム金属電池(Lithium Metal Battery;LMB)に関する多くの研究が進められている。
【0006】
しかし、リチウム金属電池は、リチウム金属の高い化学的/電気化学的反応性により電解質、不純物、リチウム塩などと容易に反応し、電極の表面に不動態層(Solid Electrolyte Interphase;SEI)を形成し、このような不動態層は、局部上の電流密度の差異をもたらしてリチウム金属表面に樹脂状のデンドライトを形成させる。前記リチウムデンドライトはリチウム二次電池の寿命短縮は勿論のこと、電池の内部短絡と不活性リチウム(dead Lithium)を引き起こし、リチウム二次電池の物理的、化学的不安定性を加重させ、電池の容量を減少させ、サイクル寿命を短縮させ、電池の安定性に悪影響を与える。これに加えて、前記不動態層は、熱的に不安定で電池の充・放電が持続的に進められたり、特に、完全充電状態での高温保存時、増加された電気化学的エネルギーと熱エネルギーにより徐々に崩壊されたりすることがある。このような不動態層の崩壊により、露出したリチウム金属表面が電解質溶媒と直接反応して分解される副反応が持続的に発生することになり、これにより、負極の抵抗が増加し、電池の充放電効率が低下する。また、前記不動態層の形成時、電解質の溶媒が消耗され、不動態層の形成と崩壊、電解質の分解などの各種副反応時に発生する副産物、ガスなどによって電池の寿命が減る問題が発生する。
【0007】
このようなリチウム金属の高い不安定のためにリチウム金属を負極として用いるリチウム金属電池は常用化されていない。
これを解決するために、リチウム金属の表面に保護層を導入するか、又は電解質の組成を変更するなどの様々な方法が研究されている。
【0008】
一例として、大韓民国公開特許第2016−0034183号は、リチウム金属又はリチウム合金を含む負極活性層上に負極を保護すると共に、電解液を蓄積することができる高分子マトリックスで保護層を形成し、電解液の損失とデンドライトの生成を防止することができることを開示している。
【0009】
また、大韓民国公開特許第2016−0052351号は、リチウム金属の表面に形成された高分子保護膜にリチウムデンドライト吸収性物質を含むことにより、リチウムデンドライトの成長を抑制して、リチウム二次電池の安定性及び寿命特性を改善することができることを開示している。
【0010】
これに加えて、Jiangfeng Qian et al.及び大韓民国公開特許第2013−0079126号はそれぞれ、リチウム塩の濃度を高くしたり、1,3,5−トリオキサン、1,3−ジオキソラン及びフッ素系環状カーボネートを有する非水性有機溶媒を含むことにより、リチウム金属電池の特性を改善することができることを開示している。
【0011】
これらの先行文献は、リチウム金属の表面を安定化し、電解液とリチウム金属間の副反応をある程度抑制したが、その効果は十分ではない。また、電池充・放電時に保護層が堅くなったり、電解質と接触時に膨潤などの変性が生じたりして、リチウム二次電池に適用するには限界がある。これに加えて、特定の組成を含む電解質を用いる場合、電池の性能劣化の問題を引き起こすことができる。したがって、リチウム金属電池において負極であるリチウム金属の界面を安定化することができる技術開発がさらに必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2016−0034183号
【特許文献2】大韓民国公開特許第2016−0052351号
【特許文献3】大韓民国公開特許第2013−0079126号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jiangfeng Qian et al.,High rate and stable cycling of lithium metal anode,Nature Communications,2015,6,6362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決するために多角的に研究を行った結果、リチウム金属電池用電解質に特定の官能基を有する添加剤を含む場合、リチウム金属電極の電気化学的特性と安定性が改善され、電池の容量及び寿命が向上することを確認し、本発明を完成した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、容量及び寿命特性に優れたリチウム金属電池用電解質を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記電解質を含むリチウム金属電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含み、前記添加剤は、一方の末端にリチウム金属と結合可能な官能基を含み、他方の末端にフッ素化炭化水素基を含むリチウム金属電池用電解質を提供する。
【0017】
前記リチウム金属と結合可能な官能基は、チオール基、アミン基及びヒドロキシ基からなる群より選ばれる1つ以上を含んでもよい。
前記添加剤は、下記化学式1で表される:
【0018】
【化1】
【0019】
(前記化学式1において、A、B、O、X、m及びnは、明細書内で説明したことに従う。)。
前記添加剤は、1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシルチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロノナンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタンチオール、1H,1H−パーフルオロオクチルチオール、1H,1H−パーフルオロプロピルチオール、2,2,2−トリフルオロエタンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサンチオール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロチオフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンチオール、2,4−ジフルオロチオフェノール、3,4−ジフルオロチオフェノール、2−フルオロチオフェノール、3−フルオロチオフェノール、4−フルオロチオフェノール、2−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール、3−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール、2−(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2,6−ジフルオロベンジルメルカプタン、3,4−ジフルオロベンジルメルカプタン、3,5−ジフルオロベンジルメルカプタン、4−フルオロベンジルメルカプタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4−トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、1H,1H−パーフルオロオクチルアミン、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアミン、1H,1H−パーフルオロノニルアミン、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル)ベンジルアミン、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン、3,3,3−トリフルオロプロピルアミン、4−フルオロ−α−メチルベンジルアルコール、2−フルオロ−3−メチルベンジルアルコール、4−フルオロ−3−メチルベンジルアルコール、5−フルオロ−2−メチルベンジルアルコール、4−フルオロ−3−ニトロベンジルアルコール、2−フルオロ−5−ニトロベンジルアルコール、2−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンジルアルコール、2−フルオロ−3−ニトロベンジルアルコール、2−フルオロ−5−メトキシベンジルアルコール、3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、3−フルオロ−5−メトキシベンジルアルコール、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、4−フルオロ−3−メトキシベンジルアルコール、5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、5−フルオロ−2−ニトロベンジルアルコール、DL−4−フルオロ−α−プロピルベンジルアルコール、3−フルオロベンジルアルコール及び4−フルオロフェネチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0020】
前記添加剤は、リチウム金属電池用電解質全体100重量%を基準として0.01〜5重量%を含んでもよい。
さらに、本発明は、前記電解質を含むリチウム金属電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るリチウム金属電池用電解質は、一方の末端にリチウムと結合可能な官能基を、他方の末端にフッ素化炭化水素基を含む添加剤を含むことにより、リチウム金属の安定性を向上させると共に、リチウム金属表面での副反応を抑制することによりリチウム金属電池の高容量化及び高寿命化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1、実施例2及び比較例1で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
図2】本発明の実施例3、実施例4及び比較例2で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
図3】本発明の実施例5、実施例6及び比較例3で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
図4】本発明の実施例7、実施例8及び比較例4で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
図5】本発明の実施例9、実施例10及び比較例4で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
図6】本発明の実施例11、実施例12及び比較例4で製造された電池の性能評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書及び請求の範囲で使用される用語や単語は通常的であるか、又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されるべきである。
【0024】
本発明において使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定し、一又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0025】
リチウム金属電池は、負極活物質として用いられるリチウム金属が酸化/還元電位(−3.045V vs標準水素電極)と原子量(6.94g/a.u.)が低く、かつエネルギー密度(3.860mAh/g)が高いため、小型化及び軽量化が可能でありながら高容量、高エネルギー密度を確保することができるので、次世代電池として注目を集めている。
【0026】
しかし、前述したように、リチウム金属の場合、反応性が高く、安定性の面で非常に脆弱である。また、正極活物質として硫黄系物質を用いる場合は、電池駆動時、正極で形成されたリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li、x=8,6,4,2)のうち硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li、通常、x>4)は、親水性有機溶媒を含む電解質への溶解度が高いため継続的に溶け、正極反応領域外に溶出して負極へ移動することになる。このとき、正極から溶出したリチウムポリスルフィドは、リチウム金属と副反応を生じてリチウム金属の表面にリチウムスルフィドが固着されることによって反応活性度と電位特性が悪くなり、リチウム金属電極の効率と寿命の低下が加速化する問題が発生する。
【0027】
このため、従来の技術では、リチウム金属の表面にポリマー保護層又は無機固体保護層を導入するか、又は電解質組成の変更などの方法を使用したが、リチウム金属電極の安定性を効果的に改善されていない。
【0028】
そこで、本発明では、リチウム金属電極の安定性を向上させ、これを含むリチウム金属電池の性能及び寿命改善の効果を確保するために、特定の官能基を有する添加剤を含むリチウム金属電池用電解質を提供する。
【0029】
具体的に、本発明に係るリチウム金属電池用電解質は、リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含み、前記添加剤は、一方の末端にリチウム金属と結合可能な官能基を含み、他方の末端にフッ素化炭化水素基を含む。
【0030】
本発明において、前記添加剤は、一方の末端に位置するリチウム金属と結合可能な官能基によりリチウム金属と結合を形成することにより、リチウム金属電極の表面上に前記添加剤の他方の末端であるフッ素化炭化水素基を含む安定した保護膜を形成することができる。このとき、前記添加剤由来のフッ素化炭化水素基は負極としてリチウム金属又はリチウム合金が用いられるリチウム金属電池でリチウム金属とリチウム塩や他の不純物が反応することを遮断してリチウムの反応効率を高めることができ、これにより、放電量が向上し、寿命を増加させることができる。
【0031】
特に、本発明のリチウム金属電池が正極活物質として硫黄を含むリチウム−硫黄電池である場合、前記添加剤から形成された保護膜が正極から生成されたリチウムポリスルフィドがリチウム金属と反応することを防止し、電池の過充電現象を効果的に抑制して電池の安定性を高めることができる。
【0032】
また、本発明の添加剤は電解質に用いられ、電池駆動時、リチウム金属とイン−サイチュ(in−situ)反応でリチウム金属電極上に前述した保護膜を形成することができるので、従来の技術のように、別途の層形成のための工程が不要であるという利点がある。
【0033】
本発明において、前記添加剤は下記化学式1で表される:
【0034】
【化2】
【0035】
(前記化学式1において、
Aは、フッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基;またはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール基であり、
Bは、単一結合;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルカンジイル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜10のアルケンジイル基;非置換の炭素数2〜10のアルキンジイル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基;またはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン基であり、
前記AとBのうち少なくとも1つ以上はフッ素で置換され、
Oは、酸素であり、
Xは、それぞれ独立してチオール基、アミン基又はヒドロキシ基から選ばれ、
mは、0又は1であり、
nは、1〜3の整数である。)。
【0036】
本発明で使用された用語「炭化水素基」とは、炭素と水素とからなる全ての有機基を意味し、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル、ヘテロアリール基などの公知の全ての構造を含んでもよい。前記炭化水素基内の炭素は、酸素(O)、窒素(N)及び硫黄(S)からなる群より選ばれる少なくとも1つに代替することができる。前記炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、単環又は多環を含み、前記炭化水素基に含まれている1つ以上の水素原子は、任意に1つ以上の置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリック、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロなど)で置換されていてもよい。
【0037】
本発明で使用された用語「アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜20、具体的に1〜10であることが好ましい。具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明で使用された用語「アルケニル基」とは、他の説明がない限り、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む炭素数2〜20の炭化水素基を意味し、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明で使用された用語「アルキニル基」とは、他の説明がない限り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む炭素数2〜20の炭化水素基を意味し、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明で使用された用語「シクロアルキル基」とは、少なくとも3つの炭素原子からなる非(non)−芳香族炭素系環を意味する。前記シクロアルキル基はこれに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明で使用された用語「アリール基」とは、炭素数6〜20の炭素数を有し、単一又は多重の芳香族炭素系環を意味する。例えば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレン基などがあるが、これに限定されない。
【0042】
本発明で使用された用語「アルカンジイル(alkanediyl)」は、アルカン(alkane)で水素原子2つを除いた2価の原子団であり、一般式−C2n−で表すことができる。
【0043】
本発明で使用された用語「アルケンジイル(alkenediyl)」は、アルケン(alkene)で水素原子2つを除いた2価の原子団であり、一般式−C−で表すことができる。
【0044】
本発明で使用された用語「アルキンジイル(alkynediyl)」は、アルキン(alkyne)で水素原子2つを除いた2価の原子団である。
【0045】
本発明で使用された用語「アリーレン基」とは、2価の芳香族炭素系環を意味し、炭素数は6〜40、具体的に6〜20であってもよい。前記アリーレン基は、2つ以上の環が縮合又は結合された構造を含んでもよく、他の環は芳香族、非芳香族又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、前記アリーレン基は、フェニレン、非フェニレン、ナフチレン、アントラセニレンなどがあるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明において「単一結合」とは、前記化学式1でBが存在しない場合であって、Bと連結された元素間の結合関係を意味する。
【0047】
前記化学式1におけるAは、フッ素が1以上置換された1価の炭化水素基であり、好ましくは、前記Aは、フッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜10のアルケニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜10のアルキニル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数3〜15のシクロアルキル基;またはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、より好ましくはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0048】
前記化学式1におけるBは、単一結合またはフッ素が1以上置換された2価の炭化水素基で、好ましくはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜5のアルカンジイル基;フッ素で置換もしくは非置換の炭素数2〜5のアルケンジイル基;または非置換の炭素数2〜10のアルキンジイル基であり、より好ましくはフッ素で置換もしくは非置換の炭素数1〜5のアルカンジイル基である。
【0049】
このとき、前記Xは、リチウム金属と結合可能な官能基であって、電解質によく溶解されるようにすると共に、リチウム金属表面と容易に結合を向上させるために極性官能基を含んでもよい。好ましく、前記Xは、チオール基(−SH)、アミン基(−NH)及びヒドロキシ基(−OH)からなる群より選ばれる1以上であり、より好ましくはチオール基であってもよい。
【0050】
また、前記リチウム金属表面に安定的に導入されて安定性を向上させ、副反応を効果的に抑制するための側面で、前記AとBの炭素数の合計は1〜30であってもよい。
【0051】
前記化学式1で表される添加剤は、例えば、1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシルチオール(1H,1H,2H,2H,3H,3H−perfluoroundecylthiol)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール(1H,1H,2H,2H−perfluorodecanethiol)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロノナンチオール(1H,1H,2H,2H−perfluorononanethiol)、1H,1H、2H,2H−パーフルオロ−1−オクタンチオール(1H,1H,2H,2H−perfluoro−1−octanethiol)、1H,1H−パーフルオロオクチルチオール(1H,1H−perfluorooctylthiol)、1H,1H−パーフルオロプロピルチオール(1H,1H−perfluoropropylthiol)、2,2,2−トリフルオロエタンチオール(2,2,2−trifluoroethanethiol)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサンチオール(1H,1H,2H,2H−perfluoro−1−hexanethiol)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロチオフェノール(2,3,4,5,6−pentafluorothiophenol)、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンチオール(2,3,5,6−tetrafluorobenzenethiol)、2,4−ジフルオロチオフェノール(2,4−difluorothiophenol)、3,4−ジフルオロチオフェノール(3,4−difluorothiophenol)、2−フルオロチオフェノール(2−fluorothiophenol)、3−フルオロチオフェノール(3−fluorothiophenol)、4−フルオロチオフェノール(4−fluorothiophenol)、2−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール(2−(trifluoromethoxy)thiophenol)、3−(トリフルオロメトキシ)チオフェノール(3−(trifluoromethoxy)thiophenol)、2−(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール(2−(trifluoromethyl)benzenethiol)、2,6−ジフルオロベンジルメルカプタン(2,6−difluorobenzyl mercaptan)、3,4−ジフルオロベンジルメルカプタン(3,4−difluorobenzyl mercaptan)、3,5−ジフルオロベンジルメルカプタン(3,5−difluorobenzyl mercaptan)、4−フルオロベンジルメルカプタン(4−fluorobenzyl mercaptan)、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール(3,5−Bis(trifluoromethyl)benzenethiol)、4−トリフルオロメチルベンジルメルカプタン(4−trifluoromethylbenzyl mercaptan)、1H,1H−パーフルオロオクチルアミン(1H,1H−perfluorooctylamine)、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアミン(1H,1H−heptafluorobutylamine)、1H,1H−パーフルオロノニルアミン(1H,1H−perfluorononylamine)、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル)ベンジルアミン(4−(1H,1H,2H,2H−perfluorodecyl)benzylamine)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン(2,2,3,3,4,4,4−heptafluorobutylamine)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン(2,2,3,3,3−pentafluoropropylamine)、3,3,3−トリフルオロプロピルアミン(3,3,3−trifluoropropylamine)、4−フルオロ−α−メチルベンジルアルコール(4−fluoro−α−methylbenzyl alcohol)、2−フルオロ−3−メチルベンジルアルコール(2−fluoro−3−methylbenzyl alcohol)、4−フルオロ−3−メチルベンジルアルコール(4−fluoro−3−methylbenzyl alcohol)、5−フルオロ−2−メチルベンジルアルコール(5−fluoro−2−methylbenzyl alcohol)、4−フルオロ−3−ニトロベンジルアルコール(4−fluoro−3−nitrobenzyl alcohol)、2−フルオロ−5−ニトロベンジルアルコール(2−fluoro−5−nitrobenzyl alcohol)、2−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンジルアルコール(2−fluoro−3−(trifluoromethoxy)benzyl alcohol)、2−フルオロ−3−ニトロベンジルアルコール(2−fluoro−3−nitrobenzyl alcohol)、2−フルオロ−5−メトキシベンジルアルコール(2−fluoro−5−methoxybenzyl alcohol)、3−フルオロ−5−(トリプルオロメチル)ベンジルアルコール(3−fluoro−5−(trifluoromethyl)benzyl alcohol)、3−フルオロ−5−メトキシベンジルアルコール(3−fluoro−5−methoxybenzyl alcohol)、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール(4−fluoro−3−(trifluoromethyl)benzyl alcohol)、4−フルオロ−3−メトキシベンジルアルコール(4−fluoro−3−methoxybenzyl alcohol)、5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール(5−fluoro−2−(trifluoromethyl)benzyl alcohol)、5−フルオロ−2−ニトロベンジルアルコール(5−fluoro−2−nitrobenzyl alcohol)、DL−4−フルオロ−α−プロピルベンジルアルコール(DL−4−fluoro−α−propylbenzyl alcohol)、3−フルオロベンジルアルコール(3−fluorobenzyl alcohol)、4−フルオロフェネチルアルコール(4−fluorophenethyl alcohol)からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。好ましくは1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシルチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロノナンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタンチオール、1H,1H−パーフルオロオクチルチオール及び1H,1H−パーフルオロオクチルアミンからなる群より選ばれる1種以上であってもよく、より好ましくは1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロノナンチオール及び1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタンチオールからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【0052】
前記添加剤は、リチウム金属電池用電解質全体100重量%を基準として0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%を含んでもよい。前記添加剤の含有量が前記範囲未満であれば、リチウム金属電極の表面に保護膜が不均一に形成されて目的とする効果を得ることができず、逆に前記範囲を超える場合、電池駆動時に不必要な反応を生じ、電池の性能が低下することがある。
【0053】
本発明のリチウム金属電池用電解質は、電解質塩としてリチウム塩を含む。前記リチウム塩は、本発明において特に限定せず、リチウム二次電池用電解質に通常使用可能なものであれば制限なく用いることができる。
【0054】
例えば、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、4−フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。好ましくは、前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(LiTFSI)、(CFSONLi)であってもよい。
【0055】
前記リチウム塩の濃度は、イオン伝導度、溶解性などを考慮して適切に決定することができ、例えば、0.1〜4.0M、好ましくは0.5〜2.0Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満である場合、電池駆動に適したイオン伝導度の確保が難しく、逆に前記範囲を超える場合、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下し、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下することがあるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0056】
本発明のリチウム金属電池用電解質は有機溶媒を含み、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものを制限なく用いることができる。
【0057】
例えば、前記有機溶媒は、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環状カーボネートなどをそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。その中で代表的には、エーテル系化合物を含んでもよい。
【0058】
一例として、前記エーテル系化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランからなる群より選ばれる1種以上を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記有機溶媒のうちエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、σ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンからなる群より選ばれるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記線形カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選ばれるいずれか1つ、又はこれらのうち2種以上の混合物などを代表的に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選ばれるいずれか1つ、又はこれらのうち2種以上の混合物がある。これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)などがあり、これに限定されるものではない。
【0062】
また、上述した有機溶媒の他に、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどがある。
【0063】
本発明のリチウム金属電池用電解質は、前述した組成の他に、当該技術分野において通常用いられる硝酸系化合物をさらに含んでもよい。一例として、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸マグネシウム(MgNO)、硝酸バリウム(BaNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)などが挙げられる。
【0064】
前述した組成を含む本発明に係るリチウム金属電池用電解質は、前記化学式1で表される添加剤を含むことにより、負極であるリチウム金属の不安定性を改善することができる。また、電解質又は特にリチウム−硫黄電池のリチウムポリスルフィドのような電池駆動時に生成される物質とリチウム金属間の副反応を効果的に抑制して優れた安定性を確保することができ、これにより、電池の充・放電性能及び寿命を向上させることができる。
【0065】
また、本発明は、前記リチウム金属電池用電解質を含むリチウム金属電池を提供する。
前記リチウム金属電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在される電解質を含み、前記電解質として、本発明に係るリチウム金属電池用電解質を含む。
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面又は両面に塗布された正極活物質を含んでもよい。
【0066】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅、ステンレススチル、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチレンの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。
【0067】
前記正極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
前記正極活物質は、正極活物質と選択的に導電材及びバインダーを含んでもよい。
【0068】
前記正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur,S);Li(n≧1)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(2,5−dimercapto−1,3,4−thiadiazole)、1,3,5−トリチオシアヌル酸(1,3,5−trithiocyanuic acid)などのようなジスルフィド化合物、有機硫黄化合物又は炭素−硫黄ポリマー((C:x=2.5〜50、n≧2)などの硫黄含有化合物からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。好ましくは無機硫黄(S)を用いることができる。
【0069】
前記正極は、前記正極活物質の他に、遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金から選ばれる1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0070】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh,Pd、Os、Ir、Pt、Au又はHgなどが含まれ、前記IIIA族元素としては、Al、Ga、In、Tiなどが含まれ、前記IVA族元素としては、Ge、Sn、Pbなどが含まれてもよい。
【0071】
前記導電材は、電気伝導性を向上させるためのものであり、リチウム二次電池において化学変化を生じない電子伝導性材料であれば特に制限はない。
【0072】
一般的に、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電材などを用いることができ、現在導電材として市販されている商品としては、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)又はガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製など)、ケッチェンブラック(ketjen black)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company製)、バルカン(Vulcan)XC−72(キャボット・カンパニー(Cabot Company製)、及びスーパーP(MMM社製)などがある。例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。
【0073】
また、前記正極活物質は正極活物質を正極集電体に保持させ、活物質の間をつなぐ機能を有するバインダーをさらに含んでもよい。前記バインダーとして、例えば、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−co−HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、スチレン−ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber,SBR)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose,CMC)、ポリアクリル酸(poly(acrylic acid),PAA)、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol),PVA)などの様々な種類のバインダーを用いることができる。
【0074】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質を含んでもよい。または前記負極は、リチウム金属板であってもよい。
【0075】
前記負極集電体は、負極活物質の支持のためのものであり、優れた導電性を有し、リチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチル、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチルの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。
【0076】
前記負極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0077】
前記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)又は放出(Deintercalation)することができる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属又はリチウム合金を含んでもよい。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵又は放出することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素又はこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化錫、チタンナイトレート又はシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群より選ばれる金属の合金であってもよい。好ましく、前記負極活物質は、リチウム金属であってもよく、具体的には、リチウム金属薄膜又はリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0078】
前記負極活物質の形成方法は特に制限されず、当業界において通常用いられる層又は膜の形成方法を利用することができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を利用することができる。または、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電によって金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も、本発明の負極に含まれる。
【0079】
前記電解質は、リチウムイオンを含み、これを媒介として正極と負極で電気化学的な酸化又は還元反応を起こすためのものであり、前述したところに従う。
【0080】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性により、電気化学素子の製造工程の中で適切な段階で行うことができる。すなわち、電気化学素子の組立の前又は電気化学素子の組立の最終段階などで適用することができる。
【0081】
前述した正極と負極との間にはさらに分離膜を含むことができる。前記分離膜は、本発明のリチウム二次電池において、両電極を物理的に分離するためのもので、通常リチウム二次電池で分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0082】
前記分離膜は、多孔性基材からなることができるが、前記多孔質基材は、通常、電気化学素子に用いられる多孔質基材であればいずれも使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜又は不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0083】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、又はこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)が挙げられる。
【0084】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)などをそれぞれ単独で、又はこれらを混合した高分子で形成した不織布が挙げられる。前記不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド不織布又はメルトブロー不織布であってもよい。
【0085】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1〜100μm、好ましくは5〜50μmであってもよい。
前記多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001〜50μm及び10〜95%であってもよい。
【0086】
本発明に係るリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取(winding)の他にも、セパレータと電極の積層(lamination,stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0087】
前記リチウム二次電池の形状は特に制限されず、円筒形、積層型、コイン型など様々な形状とすることができる。
【0088】
また、本発明は、前記リチウム金属電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0089】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)、プラグ−インハイブリッド電気自動車(plug−in hybrid electric vehicle,PHEV)などを含む電気自動車;電動自転車(E−bike)、電動スクーター(E−scooter)を含む電気二輪車;電動ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示したに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0091】
実施例及び比較例
[実施例1]
1.0M LiTFSIと1.0重量%の硝酸リチウムを1,3−ジオキソランとジメチルエーテル(DOL:DME=1:1(体積比))からなる有機溶媒に溶解させた溶液を準備し、前記溶液に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール0.1重量%を添加した電解質を製造した。
【0092】
硫黄をアセトニトリルの中で導電材とバインダーとボールミルを用いてミキシングして正極活物質スラリーを製造した。このとき、導電材としてはカーボンブラックを、バインダーとしてはポリエチレンオキシド(分子量5,000,000/mol)をそれぞれ用い、混合比率は重量比で硫黄:導電材:バインダーが60:20:20となるようにした。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体に塗布した後、乾燥して正極を製造した。
【0093】
厚さが40μmであるリチウム金属薄膜を負極として用いた。
前記製造された正極と負極を対面するように位置させ、その間にポリエチレン分離膜を介在した後、前記電解質70μlを注入してコイン型の電池を製造した。
【0094】
[実施例2]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを0.5重量%で用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0095】
[実施例3]
電解質の製造時に硝酸リチウムを用いないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0096】
[実施例4]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを1.0重量%で用い、硝酸リチウムを含まないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0097】
[実施例5]
正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを70:15:15の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0098】
[実施例6]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを0.5重量%で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを70:15:15の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0099】
[実施例7]
正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0100】
[実施例8]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを0.5重量%で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0101】
[実施例9]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールの代わりに、2,4−ジフルオロチオフェノールを同一含量で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0102】
[実施例10]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールの代わりに、2,4−ジフルオロチオフェノールを1.0重量%で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0103】
[実施例11]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールの代わりに、4−フルオロチオフェノールを同一含量で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0104】
[実施例12]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールの代わりに、4−フルオロチオフェノールを1.0重量%で用い、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0105】
[比較例1]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを用いないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0106】
[比較例2]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール及び硝酸リチウムを用いないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0107】
[比較例3]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを用いず、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを70:15:15の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0108】
[比較例4]
電解質の製造時に1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを用いず、正極製造時に硫黄:導電材:バインダーを80:10:10の重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でコイン型の電池を製造した。
【0109】
実験例1.電池の性能評価
前記実施例及び比較例で製造された電池を0.1Cの電流密度で放電と充電を2.5回繰り返した後、0.2Cの電流密度で充電と放電をそれぞれ3回行った後、0.3C(充電)と0.5C(放電)の電流密度でサイクルを進行しながら電池の性能を確認した。このとき、得られた結果を図1図6に示した。
【0110】
図1図6を参照すれば、本発明に係る実施例の電解質を含む電池の容量及び寿命特性が比較例の電解質を含む電池に比べて優れることを確認することができる。
【0111】
具体的に、図1から、添加剤である1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールを用いない電解質を含む比較例1と比較して、実施例1及び2の場合、比容量と寿命特性が向上することが分かる。特に、実施例1の場合、比容量が90サイクルまで安定的に維持されることにより、寿命が比較例1に比べて約50%増加することを確認することができる。
【0112】
図2は、硝酸系化合物を含まない電解質を用いた場合で、実施例3及び4の電解質を含む電池の比容量の数値が電解質に添加剤を用いない比較例2に比べて高いことを確認することができる。また、比較例2の場合、比容量が約40サイクルまで維持されるものと比較して、本発明に係る電解質を含む実施例3及び4の場合、50サイクル以上安定的に維持されることにより、容量維持率及び寿命特性がより向上することが分かる。
【0113】
図3及び図4は、正極活物質の組成が異なる場合で、添加物を含む電解質を用いた実施例5、6、7及び8の電池が比較例3及び4に比べて比容量及び寿命特性が向上することを確認することができる。
【0114】
図5及び図6は、添加剤の種類が異なる場合で、それぞれの添加剤を含む電解質を用いた実施例9、10、11及び12の電池が比較例4に比べて比容量及び寿命特性が向上することを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6