特許第6963681号(P6963681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963681リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム−二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963681
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム−二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20211028BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/58
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-513275(P2020-513275)
(86)(22)【出願日】2018年9月21日
(65)【公表番号】特表2020-532837(P2020-532837A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】KR2018011205
(87)【国際公開番号】WO2019059698
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0121599
(32)【優先日】2017年9月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112635
(32)【優先日】2018年9月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ユン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドンウク・コ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
【審査官】 川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0103630(KR,A)
【文献】 特開2011−049111(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103682437(CN,A)
【文献】 米国特許第09257719(US,B1)
【文献】 特開2005−251556(JP,A)
【文献】 特開2011−049109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00−4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒、リチウム塩及び添加剤を含む電解液であって、
前記添加剤はキシリレンジアミン(XDA:Xylylene diamine)であり、
前記電解液は、分子内にN−O結合を有する化合物を含まない、リチウム−二次電池用電解液。
【請求項2】
前記溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系及び非プロトン性溶媒からなる群から選択される1種以上の非水系溶媒である、請求項に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項3】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi 、リチウムビス(オキサレート)ボラート、リチウム−オキサリルジフルオロボラート、リチウム4,5−ジシアノ−2−(トリフルオロメチル)イミダゾール、リチウムジシアノトリアゾラート、チオシアン酸リチウム、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1または2に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項4】
前記リチウム塩は、0.1ないし4Mの濃度で含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項5】
前記添加剤は、0.01ないし1.0重量%で含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項6】
前記添加剤は、0.05ないし0.5重量%で含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項7】
前記添加剤は、0.1ないし0.3重量%で含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム−二次電池用電解液。
【請求項8】
正極;
負極;及び
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電解液;を含むリチウム−二次電池。
【請求項9】
前記正極は硫黄化合物を含み、前記負極はリチウム金属またはリチウム合金を含む、請求項に記載のリチウム−二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月21日付韓国特許出願第10−2017−0121599号及び2018年9月20日付韓国特許出願第10−2018−0112635号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
本発明は、リチウム−二次電池用電解液及びこれを含むリチウム−二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用電子機器、電気自動車及び大容量電力貯蔵システムなどが発展することにつれ、大容量電池の必要性が台頭されている。リチウム−硫黄電池は、S−S結合(Sulfur−sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質として使用する二次電池であって、正極活物質の主材料である硫黄は資源がとても豊かで、毒性がなく、原子当たり低い重さを有する長所がある。
【0003】
また、リチウム−硫黄電池の理論放電容量は1672mAh/g−sulfurで、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni−MH電池:450Wh/kg、Li−FeS電池:480Wh/kg、Li−MnO電池:1,000Wh/kg、Na−S電池:800Wh/kg)に比べてとても高いので、高エネルギー密度特性を有する電池として注目を浴びている。
【0004】
リチウム−硫黄電池の商用化のために一番優先的に解決しなければならない問題点は、リチウムポリスルフィドによる電池の低い寿命特性である。リチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li、x=8、6、4、2)は、リチウム−硫黄電池の電気化学反応中に生成される中間生成物であって、有機電解液に対する溶解度が高い。電解液に溶解されたリチウムポリスルフィドは徐々に負極の方へ拡散し、正極の電気化学反応領域を脱するので、正極の電気化学反応に参加することができず、結局容量減少(capacity loss)をもたらすようになる。
【0005】
また、リチウムポリスルフィドの溶出は電解液の粘度を増加させてイオン伝導性を低下し、持続的な充放電反応によってリチウムポリスルフィドがリチウム金属の負極と反応してリチウム金属の表面にリチウムスルフィド(LiS)が固着されることによって反応活性度が低くなり、電位特性が悪くなる問題点がある。
【0006】
このような問題点を解決するために、LiNOのような電解液添加剤を使用してLi金属の負極を保護することができる層を形成するために努力中であるが、LiNOを使用する場合、LiNO−3が消耗されてLi保護層を形成するので、繰り返される充放電過程中に限界を超える場合、これ以上Li負極を保護することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2012−0122674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前記問題を解決するためにリチウム−二次電池、その中でもリチウム−硫黄電池の電解液に添加する添加剤に関して研究し、その結果、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、LiNOを使わなくても、シャトル(shuttle)現象が減少し、よく充電されるリチウム−二次電池用電解液を提供することである。
また、本発明の別の目的は、前記電解液を含むリチウム−二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、溶媒、リチウム塩及び添加剤を含む電解液として、前記添加剤はジアミン系化合物である、リチウム−二次電池用電解液を提供する。
また、本発明は、正極;リチウム金属の負極;及び前記電解液;を含むリチウム−二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電解液は、リチウム−二次電池に適用されるものであって、LiNOを使わなくても、シャトル(shuttle)現象が減少し、よく充電される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1による電池特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施例2による電池特性を示すグラフである。
図3】本発明の比較例1による電池特性を示すグラフである。
図4】本発明の比較例2による電池特性を示すグラフである。
図5】本発明の実施例3による電池特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0014】
リチウム−二次電池用電解液
本発明は、LiNOを使わなくても、シャトル(shuttle)現象が減少し、よく充電されるようにするため、添加剤としてジアミン系化合物を使用するリチウム−二次電池用電解液に関する。
【0015】
本発明者らは、LiNOを使わなくても、シャトル(shuttle)現象が減少し、よく充電される電解液組成に関して研究している途中、ジアミン系化合物添加剤が少量含まれた電解液をリチウム−二次電池に適用した時、LiNOを代替することができる優れた電池特性を表すことを確認した。
【0016】
このようなジアミン系化合物の効果は、電解液内に含まれるジアミン系化合物の含量によってさらに効果を奏するものと表れた。具体的に、後述する実験例1から分かるように、XDA(キシリレンジアミン:Xylylene diamine)添加剤が少量含まれた電解液を使用する場合、LiNOを代替することができる優れた電池特性を示すことを確認した。
【0017】
上述した本発明のジアミン系化合物では、芳香族ジアミン系化合物を使用することができ、より好ましくはXDA(キシリレンジアミン:Xylylene diamine)を使用することができる。
【0018】
上述した本発明のジアミン系化合物の含量は、一例として電解液100重量%に対して0.01ないし1.0重量%で含まれてもよく、好ましくは0.05重量%ないし0.5重量%、より好ましくは0.1ないし0.3重量%で含まれてもよい。もし、ジアミン系化合物の含量が0.01重量%未満であれば上述した本発明の効果、すなわちLiNOを代替することができる優れた電池特性を得られないし、1.0重量%を超えれば既存のLiNOを使用した場合のようにLiを消耗させ、厚い保護層が生じて電池駆動時に抵抗層で作用して放電容量が減少し、寿命特性によくない影響を及ぼす問題があるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0019】
本発明のリチウム−二次電池用電解液は溶媒を含み、この時の溶媒はリチウム−二次電池、その中でもリチウム−硫黄電池に使用される電解液の溶媒として使用されるものであれば特に制限されない。具体的に、前記溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系及び非プロトン性溶媒からなる群から選択される1種以上の非水系溶媒を使用することができる。
【0020】
前記カーボネート系溶媒では、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)などが使用されてもよいが、これに制限されない。
【0021】
前記エステル系溶媒では、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、1,1−ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用されてもよいが、これに制限されない。
【0022】
前記エーテル系溶媒では、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、トリメトキシメタン(TMM)、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが使用されてもよいが、これに制限されない。
【0023】
前記ケトン系溶媒では、例えばシクロヘキサノンなどが使用されてもよい。また、前記アルコール系溶媒では、エタノール、イソプロピルアルコールなどが使用されてもよく、前記非プロトン性溶媒では、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などが使用されてもよい。
【0024】
また、前記アルコール系溶媒では、エタノール、イソプロピルアルコールなどが使用されてもよいが、前記非プロトン性溶媒では、R−CN(RはC2ないしC20の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)などが使用されてもよい。
【0025】
前記非水系溶媒は単独または一つ以上混合して使用されてもよく、一つ以上混合して使用される場合の混合の割合は目的とする電池の性能によって適切に調節することができる。
【0026】
好ましくは、前記非水系溶媒はエーテル系溶媒を使用する。エーテル系溶媒は、リチウム−二次電池、その中でもリチウム−硫黄電池の負極になるリチウム金属との相溶性に優れ、電池の効率、サイクル寿命及び安全性を高めることができて好ましい。また、エーテル系溶媒は、高いドナー数(Donor number)を有するので、リチウム陽イオンをキレーション(Chelation)してリチウム塩の解離度を高めることができ、リチウムポリスルフィドに対する溶解度を増加させることができて硫黄の反応性を確保し易いし、粘度が低くてイオンの移動が自由なので、電解液のイオン伝導度を大きく向上させることができる。
【0027】
前記エーテル系溶媒は、線形エーテル(Linear ether)、環状エーテル(Cyclic ether)、またはこれらの混合溶媒であってもよい。
【0028】
前記線形エーテルの非限定的な例では、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル‐tert−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール‐tert−ブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択される1種以上を挙げることができる。
【0029】
前記環状エーテルの非限定的な例では、ジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及びメチルフランからなる群から選択される1種以上を挙げることができる。
【0030】
好ましくは、前記エーテル系溶媒は、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2,5−ジメチルフラン、フラン、2−メチルフラン、1,4−オキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルまたはこれらの混合溶媒であってもよい。
【0031】
より具体的に、前記エーテル系溶媒は、線形エーテルと環状エーテルからそれぞれ1種ずつ選択して混合した混合溶媒であってもよく、この時混合比は体積比で5:95〜95:5であってもよい。
【0032】
本発明の一実施例によれば、前記混合溶媒は、1,3−ジオキソラン(1,3−Dioxolane:DOL)と1,2−ジメトキシエタン(1,2−Dimethoxyethane:DME)の混合溶媒であってもよい。この時、前記DOL及びDMEは5:95ないし95:5の体積比で混合された溶媒であってもよく、好ましくは30:70ないし70:30、より好ましくは40:60ないし60:40の体積比で混合された溶媒であってもよい。
【0033】
一方、本発明のリチウム−二次電池用電解液は、イオン伝導性を増加させるためにリチウム塩を含む。前記リチウム塩は本発明で特に限定せずに、リチウム−二次電池、その中でもリチウム−硫黄電池で通常使用可能なものであれば制限せずに使用されてもよい。
【0034】
具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、リチウムビス(オキサレート)ボラート(Lithium bis(oxalato)borate)、リチウム−オキサリルジフルオロボラート(Lithium−Oxalyldifluoroborate)、リチウム4,5−ジシアノ−2−(トリフルオロメチル)イミダゾール(Lithium4,5−dicyano−2−(trifluoromethyl)imidazole)、リチウムジシアノトリアゾラート(Lithium Dicyanotriazolate)、チオシアン酸リチウム(Lithium thiocyanate)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム(この時、低級脂肪族は、例えば炭素数1ないし5の脂肪族を意味するものであってもよい。)、テトラフェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLiなどが使用されてもよい。
【0035】
前記リチウム塩の濃度はイオン伝導度などを考慮して決定されてもよく、一例として0.1ないし4M(mol/L)、好ましくは0.5ないし2.0M、より好ましくは0.5ないし1.5Mであってもよい。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば、電池の駆動に適するイオン伝導度を確保することが難しく、前記範囲を超えれば電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が落ちることがあるし、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下することがあるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0036】
また、本発明のリチウム−二次電池用電解液は、分子内にN−O結合を有する化合物、具体的にLiNOを含まない。
前記LiNOのような分子内にN−O結合を有する化合物を電解質に含む場合、Li金属の負極を保護することができる層を形成することができる長所があるが、LiNO−3が消耗されLi保護層を形成するので、繰り返される充放電過程中に限界を超える場合、これ以上Li負極を保護することができないという問題点があるので、本発明の発明者は前記LiNOのような分子内にN−O結合を有する化合物を代替することができる添加剤としてジアミン系化合物を添加し、それによって前記LiNOのような分子内にN−O結合を有する化合物を含まないようにした。
【0037】
前記分子内にN−O結合を有する化合物では、具体的に硝酸または亜硝酸系化合物、ニトロ化合物などであってもよい。一例として、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸アンモニウム、メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトライト、プロピルニトライト、ブチルニトライト、ペンチルニトライト、オクチルニトライト、ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ピリジンN−オキシド、アルキルピリジンN−オキシド、及びテトラメチルピペリジニルオキシルからなる群から選択されるものであってもよい。
【0038】
前記電解質の製造方法は、本発明で特に限定せずに、当業界で公知された通常の方法によって製造されることができる。
【0039】
リチウム−二次電池
本発明によるリチウム−二次電池は電解液として本発明によるリチウム−二次電池用電解液を使用し、LiNOを使わなくてもシャトル(shuttle)現象が減少し、よく充電される電池特性を表す。前記リチウム−二次電池、その中でもリチウム−硫黄電池は、硫黄化合物を含む正極及びリチウム金属またはリチウム合金を含む負極を含み、さらに前記正極及び負極の間に介在される分離膜を含むことができる。
【0040】
前記リチウム−二次電池の正極、負極及び分離膜の構成は本発明で特に限定せずに、この分野で公知されたところに従う。
【0041】
正極
本発明による正極は正極集電体上に形成された正極活物質を含む。
前記正極集電体では、技術分野において集電体で使用されるものであれば、いずれも可能であり、具体的に優れた導電性を有する発泡アルミニウム、発泡ニッケルなどを使用することが好ましい。
【0042】
前記正極活物質は硫黄化合物を含み、前記硫黄化合物は硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含むことができる。前記硫黄系化合物は具体的に、Li(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素−硫黄ポリマー((C:x=2.5〜50、n≧2)などであってもよい。これらは硫黄物質単独では電気伝導性がないため、導電材と複合して適用されることがある。
【0043】
前記導電材は多孔性であってもよい。よって、前記導電材では多孔性及び導電性を有するものであれば制限せずに使用することができ、例えば多孔性を有する炭素系物質を使用することができる。このような炭素系物質では、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、活性炭、炭素繊維などを使用することができる。また、金属メッシュなどの金属性繊維;銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属性粉末;またはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料も使用することができる。前記導電性材料は単独または混合して使用されてもよい。
【0044】
前記正極は、正極活物質と導電材の組み合わせと集電体に対する組み合わせのためにバインダーをさらに含むことができる。前記バインダーは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含むことができる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などを単独または混合して使用することができるが、必ずこれらに限定されないし、当該技術分野でバインダーとして使用されるものであれば、いずれも可能である。
【0045】
前記のような正極は通常の方法によって製造されることができ、具体的には正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒上で混合して製造した正極活物質層形成用組成物を集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度を向上するために集電体に圧縮成形して製造することができる。この時、前記有機溶媒では、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散することができ、容易に蒸発されるものを使用することが好ましい。具体的に、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを挙げることができる。
【0046】
負極
本発明による負極は、負極集電体上に形成された負極活物質を含む。
前記負極集電体は、具体的に銅、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金ではアルミニウム−カドミウム合金が使用されてもよい。その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などが使用されてもよい。
【0047】
前記負極活物質では、リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンニトラートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0048】
前記負極は、負極活物質と導電材の組み合わせと集電体に対する組み合わせのためにバインダーをさらに含むことができ、具体的に前記バインダーは、前記正極のバインダーで説明したものと同様である。
また、好ましくは、本発明による負極で、リチウム金属負極を使用することができる。
【0049】
分離膜
正極と負極の間には通常の分離膜が介在されることができる。前記分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的分離膜であって、通常の分離膜で使用されるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0050】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させて、正極と負極の間にリチウムイオンの輸送ができるようにする。このような分離膜は多孔性で、非伝導性または絶縁性の物質からなってもよい。前記分離膜は、フィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0051】
具体的に、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使用してもよく、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、これに限定されない。
【0052】
前記リチウム−二次電池に含まれる前記正極、負極及び分離膜は、それぞれ通常の成分と製造方法によって用意することができ、またリチウム−二次電池の外形は特に制限されないが、カンを使用した円筒状、角形、ポーチ(Pouch)型またはコイン(Coin)型などになってもよい。
【0053】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明の範疇及び技術思想範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0054】
実施例:電解液の製造
[実施例1]
DOL(Dioxolane)とDME(Dimethoxyethane)を1:1(v/v)で混合した溶媒に、1M濃度で(SONLiを添加し、電解液の総重量を基準にして、0.1重量%のXDA(キシリレンジアミン:Xylylene diamine)を添加して電解液を製造した。
【0055】
[実施例2]
0.2重量%のXDA(キシリレンジアミン:Xylylene diamine)を添加したことを除いて、実施例1と同様の方法で電解液を製造した。
【0056】
[実施例3]
0.1重量%のXDA(キシリレンジアミン:Xylylene diamine)と一緒に0.1重量%のLiNOを添加することを除いて、実施例1と同様の方法で電解液を製造した。
【0057】
[比較例1]
XDAを添加しないことを除いて、実施例1と同様の方法で電解液を製造した。
【0058】
[比較例2]
XDAの代わりに2,4,6−トリメチルアニリン(2,4,6−trimethyl aniline)を添加することを除いて、実施例1と同様の方法で電解液を製造した。
【0059】
実験例1:電池性能評価
(リチウム硫黄電極の製造)
硫黄90重量%、カーボンブラック5重量%、及びポリエチレンオキシド5重量%をアセトニトリルと混合して正極活物質スラリーを準備した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体上にコーティングし、これを乾燥して30×50mmの大きさを有する、ローディング量5mAh/cmの正極を製造した。
【0060】
また、厚さ50μmのリチウム金属を負極にした。前記リチウム金属に形成されているnative layerを取り除くために、ブラシを使ってグローブボックス内で研磨を進めた。
【0061】
前記製造した正極と負極を対面するように位置させ、その間に厚さ20μmのポリエチレン分離膜を介在した後、前記製造した実施例1ないし3及び比較例1ないし2の電解液で充電してコインセルを製造した。
【0062】
(電池性能評価)
電解液に含まれるXDAの含量及び硝酸リチウムの含有可否が電池性能に与える影響を評価するために、前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2の各リチウム−硫黄電池に対して下記条件で3サイクルを行い、比容量(Specific Capacity)とセル電位(Cell Potential)を測定して比較し、実施例1の結果を図1に、実施例2の結果を図2に、比較例1の結果を図3に、比較例2の結果を図4に、実施例3の結果を図5にそれぞれ示す。
【0063】
充放電条件:0.1Cの電流密度で放電と充電を2.5回繰り返し、放電は下限電圧1.8V(vs.Li/Li)まで行い、充電は上限電圧2.5V(vs.Li/Li)で行った。
【0064】
前記図1ないし図5の結果を見ると、比較例1の場合、充電時に2.5Vに到逹して充電が完了されず、充電容量が増加するような形の充電遅延現象が発生し、これはリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide)のシャトル(shuttle)現象によるものと知られている。
【0065】
これに比べてXDAを含む実施例1及び実施例2の電解液を使用した電池は、比較例1で発生する充電遅延現象が減少したことが分かり、特にXDAの含量が高い実施例2の場合、その効果が顕著に増加したことが分かった。
【0066】
また、一般的なアミン化合物を含む比較例2の電解液を使用した電池は、比較例1と同様、充電遅延現象が発生して正常的な充電が行われないことが分かった。
【0067】
また、LiNOを一緒に含む実施例3の電解液を使用した電池は、LiNOとXDAの作用が一気に起きて少量の添加剤を使用したにもかかわらず、XDAのみを使用した場合に比べて安定的な駆動ができることが分かった。
【0068】
前記結果を通じて、LiNOの代わりにジアミン化合物であるXDAを添加剤で使用した電解液の効果を確認し、添加剤の含量が増加した場合、リチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide)のシャトル(shuttle)現象が減少し、充電が正常に行われることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5