(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全モノマーに対する、前記フルオレンモノマー及び前記カルバゾールモノマーの合計の含有量が、30〜80質量%である、請求項1に記載の3次元光造形用光硬化性組成物。
前記希釈モノマーの屈折率が、1.47以上である、請求項1又は2に記載の3次元光造形用光硬化性組成物。前記希釈モノマーの屈折率とは、前記希釈モノマーのみの硬化物の屈折率(波長594nm)であり、屈折率はMetricon社製2010M Prism Couplerを用いて測定したものとする。
前記希釈モノマーの粘度が、500mPa・s以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元光造形用光硬化性組成物。前記粘度は、25℃にて粘度計(VM−10A、セコニック社製)を用いて測定したものとする。
粘度が、900mPa・s以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の3次元光造形用光硬化性組成物。前記粘度は、25℃にて粘度計(VM−10A、セコニック社製)を用いて測定したものとする。
硬化物の透過率が、85%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の3次元光造形用光硬化性組成物。前記透過率は、前記硬化物(厚み:2mm)の透過率(波長420〜800nm)であり、透過率は、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定したものとする。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本実施形態の3次元光造形用光硬化性組成物、及び、3次元造形物について詳述する。
なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、(メタ)アクリルアミド基とは、アクリルアミド基又はメタクリルアミド基を表す。
また、本実施形態の3次元光造形用光硬化性組成物に含有される各成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0007】
光造形法では、例えば、後述する
図1〜4に示されるように、光硬化性組成物からなる液状層の形成と、その硬化が繰り返し行われることで、複数の硬化層が一体的に積層されて立体的な積層物(3次元造形物)が製造される。ここで、光硬化性組成物の粘度が高い場合、速やかに液状層を形成できず、効率的に3次元造形物を製造できない。また、光硬化性組成物の粘度が高いと液状層を薄くできないため、緻密な形状の3次元造形物を製造できなくなる。そのため、光造形法を光硬化性組成物に適用するためには、光硬化性組成物の粘度が低いことが求められる。また、3次元造形物を光学素子等に用いる場合、光硬化性組成物の硬化物は、高い屈折率を有することも求められる。
従来技術では、上記のような、粘度が低く、且つ、硬化物が高い屈折率を有する光硬化性組成物を提供することができなかった。そのため、そのような特性を有する光硬化性組成物が望まれていた。
【0008】
本実施形態の3次元光造形用光硬化性組成物においては、高屈折率材料であるフルオレンモノマーとカルバゾールモノマーとを特定の量比で併用するとともに、粘度の観点から、全固形分中の希釈モノマーの量を特定の量以上にしているため、3次元光造形用光硬化性組成物の低粘度性及び硬化物の高屈折率性が極めて高いレベルで両立されているものと考えられる。
なお、以下、「3次元光造形用光硬化性組成物」を、単に「光硬化性組成物」又は「組成物」とも言う。
【0009】
以下では、まず、本実施形態の組成物について詳述し、その後、本実施形態の組成物を用いて形成された3次元造形物について詳述する。
【0010】
(1)3次元光硬化性組成物
上述のとおり、本実施形態の組成物は、フルオレンモノマーと、カルバゾールモノマーと、希釈モノマーと、光重合開始剤とを含有する。ここで、上記フルオレンモノマー及び上記カルバゾールモノマーの合計の含有量に対する、上記カルバゾールモノマーの含有量は、30質量%未満であり、全固形分に対する、上記希釈モノマーの含有量は、20質量%以上である。
【0011】
以下、上記光硬化性組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
〔フルオレンモノマー〕
本実施形態の組成物に含有されるフルオレンモノマーは、フルオレン構造(下記構造)を有するモノマーであれば特に制限されない。フルオレンモノマーは、主に、硬化物の屈折率の向上に寄与すると考えられる。
【0014】
<重合性基>
フルオレンモノマーは、少なくとも1つの重合性基を有する。フルオレンモノマーが有する重合性基の数は、組成物の粘度がより低くなり、硬化物の屈折率がより高くなり、硬化物のガラス転移点が高くなり、硬化物の硬度が高くなり、また、硬化物の透明性が向上する理由から、1〜5であることが好ましく、2であることがより好ましい。
なお、以下、本実施形態の組成物について、「組成物の粘度がより低くなり、硬化物の屈折率がより高くなり、硬化物のガラス転移点が高くなり、硬化物の硬度が高くなり、また、硬化物の透明性が向上する」ことを、単に「特性がより優れる」とも言う。
重合性基の種類は特に制限されず、その具体例としては、ラジカル重合性基、及び、カチオン重合性基が挙げられる。
ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基、ビニル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、及び、アリル基が挙げられる。カチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、及び、ビニルオキシ基が挙げられる。
重合性基は、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0015】
<好適な態様>
フルオレンモノマーは、特性がより優れる理由から、下記式(F1)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
上記式(F1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。ただし、Ar
1及びAr
2の少なくとも一方は、置換基として、重合性基を含有する基(重合性基含有基)を有する。
【0018】
上記芳香族炭化水素基は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基がより好ましい。芳香族炭化水素基を構成する環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ビフェニル環(2個のフェニル基は任意の連結様式で連結してもよい)、ターフェニル環(3個のフェニル基は任意の連結様式で連結してもよい)などが挙げられる。なかでも、特性がより優れる理由から、ベンゼン環であることが好ましい。
【0019】
上記重合性基含有基に含有される重合性基の具体例及び好適な態様は上述のとおりである。なお、重合性基含有基は、重合性基のみからなる基であってもよい。
上記重合性基含有基は、特性がより優れる理由から、下記式(P)で表される基であることが好ましい。
*−L−P (P)
【0020】
上記式(P)中、Lは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、炭素数1〜20であることが好ましい。具体的には、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。)、2価の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−、−NR
a−、−CO−、−N=N−、−CH=N−、及び、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R
aは、水素原子またはアルキル基を表す。2価の芳香族炭化水素基を構成する環の具体例は上述のとおりである。
【0021】
上記式(P)中、Pは、重合性基を表す。重合性基の具体例は上述のとおりである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0022】
上記式(P)中、*は、結合位置を表す。
【0023】
Ar
1及びAr
2が有していてもよい置換基の重合性基含有基以外の例としては、下記置換基Xが挙げられる。
【0024】
本明細書における置換基Xとしては特に制限されないが、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等の炭素数1〜11のアルキル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等を含む)、アルケニル基、シクロアルケニル基、1−ペンテニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、シクロアルキニル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシ及びアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル又はシクロアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキル又はシクロアルキル及びアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はシクロアルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル又はシクロアルキル及びアリールスルホニル基、アルキル又はシクロアルキル及びアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、その他の公知の置換基が挙げられる。また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
【0025】
上記式(F1)で表される化合物は、Ar
1及びAr
2が有していてもよい置換基とは別に、さらに置換基(例えば、上述した置換基X)を有していてもよい。
【0026】
上記式(F1)で表される化合物は、特性がより優れる理由から、下記式(F2)で表される化合物であることが好ましい。
【0028】
上記式(F2)中、R
1及びR
2は、重合性基含有基を表す。重合性基含有基の具体例及び好適な態様は上述のとおりである。
【0029】
上記式(F2)中、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。ただし、m及びnは、m+n≧1の関係式を満たす。
上記式(F2)中、m及びnは、特性がより優れる理由から、いずれも1であることが好ましい。
【0030】
上記式(F2)で表される化合物は、さらに置換基(例えば、上述した置換基X)を有していてもよい。
【0031】
上記式(F2)で表される化合物は、特性がより優れる理由から、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンであることが好ましい。
【0032】
<含有量>
本実施形態の組成物において、フルオレンモノマーの含有量は、特性がより優れる理由から、全モノマーに対して、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、30〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
また、本実施形態の組成物において、フルオレンモノマーの含有量は、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、30〜40質量%であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において「全固形分」とは、溶剤(黄色化防止剤としてアルコールを含有する場合のアルコールを除く)以外の全ての成分を指す。
【0034】
〔カルバゾールモノマー〕
本実施形態の組成物に含有されるカルバゾールモノマーは、カルバゾール構造(以下構造)を有するモノマーであれば特に制限されない。カルバゾールモノマーは、主に、組成物の粘度を抑えつつ、硬化物の屈折率の向上に寄与するものと考えられる。
【0036】
<重合性基>
カルバゾールモノマーは、少なくとも1つの重合性基を有する。カルバゾールモノマーが有する重合性基の数は、特性がより優れる理由から、1〜5であることが好ましく、1であることがより好ましい。
重合性基の具体例は上述のとおりである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0037】
<好適な態様>
カルバゾールモノマーは、特性がより優れる理由から、下記式(C1)で表される化合物であることが好ましい。
【0039】
上記式(C1)中、R
1は、重合性基を含有する基(重合性基含有基)を表す。なお、重合性基含有基は、重合性基のみからなる基であってもよい。
【0040】
上記重合性基含有基に含有される重合性基の具体例は上述のとおりである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0041】
上記重合性基含有基は、特性がより優れる理由から、上述した式(P)で表される基であることが好ましい。
上記式(P)中のPは、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0042】
上記式(C1)で表される化合物は、さらに置換基(例えば、上述した置換基X)を有していてもよい。
【0043】
上記式(C1)で表される化合物は、特性がより優れる理由から、9−ビニルカルバゾールであることが好ましい。
【0044】
<含有量>
本実施形態の組成物において、カルバゾールモノマーの含有量は、特性がより優れる理由から、全モノマーに対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
また、本実施形態の組成物において、カルバゾールモノマーの含有量は、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
〔C/(F+C)〕
本実施形態の組成物において、上述したフルオレンモノマー及び上述したカルバゾールモノマーの合計の含有量に対する上述したカルバゾールモノマーの含有量(以下、「C/(F+C)」とも言う)は、30質量%未満である。フルオレンモノマー及びカルバゾールモノマーの含有量をこのような特定の関係にすることで、組成物の粘度と硬化物の屈折率のバランスが極めて良好になる。
C/(F+C)は、特性がより優れる理由から、25質量%以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。
【0047】
〔(F+C)/全モノマー〕
本実施形態の組成物において、上述したフルオレンモノマー及び上述したカルバゾールモノマーの合計の含有量は、特性がより優れる理由から、全モノマーに対して、80質量%以下であることが好ましい。
全モノマーに対するフルオレンモノマー及びカルバゾールモノマーの合計の含有量(以下、「(F+C)/全モノマー」とも言う)は、特性がさらに優れる理由から、10〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なかでも、粘度がより低くなる理由から、46質量%以上であることが好ましい。また、より密着性が高く、より強靭な3次元造形物を製造できる理由から、49質量%以下であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態の組成物において、上述したフルオレンモノマー及び上述したカルバゾールモノマーの合計の含有量は、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、10〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
【0049】
〔希釈モノマー〕
本実施形態の組成物に含有される希釈モノマーは、上述したフルオレンモノマー及び上述したカルバゾールモノマー以外のモノマーであって、1つ又は2つの重合性基を有するモノマーである。すなわち、希釈モノマーは上述したフルオレン構造及びカルバゾール構造のいずれも有さないモノマーであって、1つ又は2つの重合性基を有するモノマーである。希釈モノマーは、主に、組成物の粘度を抑える役割を有すると考えられる。
【0050】
<重合性基>
上述のとおり、希釈モノマーは、1つ又は2つの重合性基を有する。
重合性基の具体例は上述のとおりである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0051】
<好適な態様(その1)>
上述のとおり、希釈モノマーは、特性がより優れる理由から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するのが好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する希釈モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ジシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグルコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、トランス−1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
<好適な態様(その2)>
希釈モノマーは、特性がより優れる理由から、下記式(D1)で表される化合物であることが好ましい。
W−L−P 式(D1)
【0053】
上記式(D1)中、Wは、脂環式炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を表す。上記式(D1)で表される化合物は、脂環式炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を有するため、比較的高い屈折率を有する。
上記脂環式炭化水素基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、及び、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基の具体例は上述した式(F1)中のAr
1及びAr
2と同じである。ただし、フルオレニル基を除く。
【0054】
上記式(D1)中、Lは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
2価の連結基の具体例は上述した式(P)中のLと同じである。
【0055】
上記式(D1)中、Pは、重合性基を表す。重合性基の具体例は上述した式(P)中のPと同じである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0056】
上記式(D1)中、W、L及びPは置換基(例えば、上述した置換基X)を有していてもよい。置換基は、特性がより優れる理由から、ヒドロキシ基であることが好ましい。
【0057】
上記式(D1)で表される化合物は、特性がより優れる理由から、ベンジルアクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、2−ヒドロキシ−4−フェノキシプロピルアクリレート、又は、イソボルニルアクリレートであることが好ましく、ベンジルアクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、又は、2−ヒドロキシ−4−フェノキシプロピルアクリレートであることがより好ましい。
【0058】
<屈折率>
希釈モノマーの屈折率は、特性がより優れる理由から、1.40以上であることが好ましく、1.47以上であることがより好ましく、1.50以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、通常、1.58以下である。
また、希釈モノマーが2種以上の希釈モノマーを含有する場合、特性がより優れる理由から、少なくとも1種の希釈モノマーの屈折率が上述した範囲にあることが好ましく、全ての希釈モノマーの屈折率が上述した範囲にあることがより好ましい。
なお、希釈モノマーの屈折率とは、希釈モノマーのみの硬化物の屈折率(波長594nm)であり、屈折率はMetricon社製2010M Prism Couplerを用いて測定したものとする。
【0059】
<粘度>
希釈モノマーの粘度は、特性がより優れる理由から、500mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以下であることがより好ましく、100mPa・s以下であることがさらに好ましく、10mPa・s以下であることが特に好ましい。
希釈モノマーの粘度の下限は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、1mPa・s以上であることが好ましい。
また、希釈モノマーが2種以上の希釈モノマーを含有する場合、特性がより優れる理由から、少なくとも1種の希釈モノマーの粘度が上述した範囲にあることが好ましく、全ての希釈モノマーの粘度が上述した範囲にあることがより好ましい。
なお、本明細書において、粘度は、25℃にて粘度計(VM−10A、セコニック社製)を用いて測定したものとする。
【0060】
<含有量>
本実施形態の組成物において、希釈モノマーの含有量は、全固形分に対して、20質量%以上である。希釈モノマーの含有量をこのような範囲することによって、組成物の粘度を大幅に抑えることができる。なお、上述のとおり、全固形分とは、溶剤(後述する黄色化防止剤としてアルコールを含有する場合のアルコールを除く)以外の全ての成分を指す。
全固形分に対する希釈モノマーの含有量(以下、「D/全固形分」とも言う)は、特性がより優れる理由から、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、44質量%以上であることがさらに好ましい。
D/全固形分の上限は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
なお、全モノマーに対する、上記フルオレンモノマー及び上記カルバゾールモノマーの合計の含有量が、30〜80質量%である場合、D/全固形分は、特性がより優れる理由から、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
また、本実施形態の組成物において、希釈モノマーの含有量は、特性がより優れる理由から、全モノマーに対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、44質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
なお、希釈モノマーは、特性がより優れる理由から、2種以上の希釈モノマーを併用するのが好ましい。
本実施形態の組成物は、特性がより優れる理由から、希釈モノマーとして、下記化合物(1−1)及び化合物(1−2)を併用するのが好ましい。
化合物(1−1):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、式(D1)中のWがフェニル基)
化合物(1−2):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、式(D1)中のWがビフェニル基)
また、本実施形態の組成物は、特性がより優れる理由から、希釈モノマーとして、下記化合物(1)及び化合物(2)を併用するのが好ましい。
化合物(1):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、置換基を有さない)
化合物(2):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、置換基としてヒドロキシ基を有する)(特性がより優れる理由から、2−ヒドロキシ−4−フェノキシプロピルアクリレートであることが好ましい)
【0063】
〔光重合開始剤〕
本実施形態の組成物に含有される光重合開始剤は特に制限されず、公知の光重合開始剤を使用できる。例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤(例えば、BASF社製IRGACURE651)、メトキシケトン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(例えば、BASF社製IRGACURE184;1,2−α−ヒドロキシアルキルフェノン)、アミノケトン系光重合開始剤(例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(BASF社製IRGACURE907)、BASF社製IRGACURE369)、オキシム系光重合開始剤が挙げられる。
【0064】
<好適な態様>
上記光重合開始剤は、特性がより優れる理由から、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(以下、単に「特定開始剤」とも言う)であることが好ましい。
特定開始剤は、光照射により光退色するフォトブリーチングング機能を有する。そのため、後述する工程Bを実施することで、特定開始剤のフォトブリーチングング機能により特定開始剤由来の着色が退色(フォトブリーチング)し、透明性に優れる3次元造形物が得られる。
【0065】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。
モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製IRGACURE TPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルエトキシフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製IRGACURE 819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0066】
また、光重合開始剤は、特性がより優れる理由から、芳香環と硫黄原子とを含有する高屈折率光重合開始剤であることも好ましい。そのような高屈折率光重合開始剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン(DETX)などが挙げられる
【0067】
<含有量>
本実施形態の組成物において、光重合開始剤の含有量は、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0068】
〔その他の成分〕
本実施形態の組成物は上述した成分以外の成分を含有していてもよい。以下に、そのような成分の例を挙げる。
【0069】
<屈折率向上用有機物添加剤>
本実施形態の組成物は、硬化物の屈折率がより高くなる理由から、屈折率向上用有機物添加剤を含有するのが好ましい。
上記屈折率向上用有機物添加剤としては、例えば、フェナントレン、ベンゾキノリンが挙げられる。
本実施形態の組成物において、上記屈折率向上用有機物添加剤の含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、1〜30質量%であることが好ましい。
【0070】
<黄色化防止剤>
本実施形態の組成物は、硬化物の透明性及び耐久性が向上する理由から、黄色化防止剤を含有するのが好ましい。
上記黄色化防止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(特に、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、アルコール(特に、3−メチル−2−ブテン−1−オール)などが挙げられる。
本実施形態の組成物において、上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、0.001〜0.5質量%であることが好ましい。
また、本実施形態の組成物において、上記アルコールの含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0071】
<紫外光又は可視光吸収剤>
本実施形態の組成物は、深さ方向の硬化性が制御し易くなる理由から、紫外光又は可視光吸収剤を含有するのが好ましい。
上記紫外光又は可視光吸収剤としては、例えば、BASF社製Tinuvin477、Tinuvin384−2、Tinuvin928などが挙げられる。
本実施形態の組成物において、上記紫外光又は可視光吸収剤の含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0072】
<架橋剤>
本実施形態の組成物は、特性がより優れる理由から、架橋剤を含有するのが好ましい。
上記架橋剤は、重合性基を3つ以上有する化合物である。重合性基の具体例は上述のとおりである。なかでも、特性がより優れる理由から、ラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
架橋性基が有する重合性基の数の上限は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
架橋剤は、特性がより優れる理由から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ペンタエリスリトールトリアクリレートであることが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
本実施形態の組成物において、上記架橋剤の含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0073】
<無機添加剤>
本実施形態の組成物は、硬化物の屈折率がより高くなる理由から、無機添加剤を含有するのが好ましい。
上記無機添加剤としては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化チタン(TiO
2)などが挙げられる。
上記無機添加剤は通常ナノ粒子(例えば、粒径1〜50nm)である。
本実施形態の組成物において、上記無機添加剤の含有量は特に制限されないが、特性がより優れる理由から、全固形分に対して、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0074】
<溶剤>
本実施形態の組成物は、保管性能並びに安全及び環境の観点から、上述した黄色化防止剤としてのアルコール以外の溶剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、上記溶剤には、重合性基を有する化合物は含まれない。
溶剤を実質的に含まないとは、組成物中における溶剤の含有量が、組成物全質量に対して、10質量%以下であることを意図し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0075】
<ハロゲン>
本実施形態の組成物は、ハロゲンを実質的に含まないことが好ましい。
ハロゲンを実質的に含まないとは、組成物中におけるハロゲンの含有量が、組成物全質量に対して、10質量%以下であることを意図し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0076】
<その他の添加剤>
本実施形態の組成物は、その他の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば、老化防止剤、塗膜調整剤、酸化防止剤、着色防止剤、充填剤、内部離型剤などが挙げられる。
【0077】
〔組成物の調製方法〕
本実施形態の組成物の調製方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、上記各成分を混合した後、公知の手段により撹拌することによって調製することができる。
【0078】
〔特性〕
以下に本実施形態の組成物の好適な特性を示す。
【0079】
<屈折率>
本実施形態の組成物の屈折率は、光学素子等への適用の観点から、1.60以上であることが好ましく、1.62以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、通常、1.65以下である。
なお、組成物の屈折率とは、組成物の硬化物の屈折率(波長594nm)であり、屈折率は、Metricon社製2010M Prism Couplerを用いて測定したものとする。
【0080】
<ガラス転移点>
本実施形態の組成物のガラス転移点(Tg)は、50℃以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常、100℃以下である。
なお、組成物のTgとは、組成物の硬化物のTgである。
また、Tgは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定する。より具体的には、DSC8500(パーキンエルマー社製)を用い、測定試料を降温速度−10℃/分にて−50℃まで降温する。測定試料の温度が−50℃まで達したら10分間温度を維持し、昇温速度10℃/分にて150℃までで昇温する。この操作を2回繰り返し、2回目の昇温時の比熱曲線の変曲点をガラス転移温度とする。
【0081】
<粘度>
本実施形態の組成物の粘度は、液状層を薄くし易くなり(例えば、100μm以下)、その結果、緻密な形状の3次元造形物を製造し易くなる理由から、900mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、10mPa・s以上であることが好ましい。
粘度の測定方法は上述のとおりである。
【0082】
<硬度>
本実施形態の組成物の硬度は、HDD75以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常、HDD100以下である。
なお、組成物の硬度とは、組成物の硬化物のショアD硬度であり、ショアD硬度は、JIS K7215に準じて、硬度計(HH336、ミツトヨ製)を用いて測定したものとする。
【0083】
<透過率>
本実施形態の組成物の透過率は、光学素子等への適用の観点から、85%以上であることが好ましい。
なお、組成物の透過率とは、組成物の硬化物(厚み:2mm)の透過率(波長420〜800nm)であり、透過率は、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定したものとする。
【0084】
〔用途〕
本実施形態の組成物は、光造形による3次元造形物の製造に好適に用いられる。
【0085】
(2)3次元造形物
次に、本実施形態の3次元造形物について説明する。
本実施形態の3次元造形物は、上述した本実施形態の組成物を用いて形成された3次元造形物である。
【0086】
〔3次元造形物の製造方法〕
本実施形態の3次元造形物を製造する方法は特に制限されないが、得られる3次元造形物の形状の精度が高くなる理由から、上記光硬化性組成物の液状層を形成する工程A1、及び、液状層を選択的に光照射して、硬化層を形成する工程A2をこの順で繰り返すことにより、複数の硬化層が積層してなる積層物を製造する方法(以下、「工程A」とも言う)であることが好ましい。
【0087】
<工程A>
工程Aの手順の一例に関して、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1〜
図4は、工程Aの各手順(各工程)を示す模式的側面図である。
【0088】
まず、
図1に示すように、液状の光硬化性組成物10が収容された液槽12を準備する。液槽12の材質は光を透過させる材質であれば特に制限されず、その具体例としては、ガラス及び樹脂が挙げられる。
また、液槽12内には、昇降可能な造形用ステージ14が、液槽12の底面16から所定の高さ(例えば、1〜500μm、好ましくは、5〜100μm)となるような位置に設置されている。これにより造形用ステージ14の下面と液槽12の底面16との間に、光硬化性組成物の液状層Lが形成される(工程A1に該当)。
【0089】
次に、
図2に示すように、製造される3次元造形物の形状に基づきマスク18aを液槽12の下方向に設置する。マスク18aの下方向から光照射すると、マスク18aに遮られなかった光が液槽12内の光硬化性組成物の液状層Lに到達して、液状層Lが硬化し、硬化層20aが造形用ステージ14の下表面に形成される。つまり、液状層Lが選択的に光照射され、硬化層20aが形成される(工程A2に該当)。硬化層20aの厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは、5〜100μmである。
使用される光の種類は特に制限されず、光硬化性組成物が硬化する波長の光であればよく、紫外光、可視光などが挙げられる。装置光学系の作りやすさ、液状層硬化性の観点から、350nm〜400nmの光が好ましい。
また、光を照射する光源も特に制限されず、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプなどが挙げられる。
【0090】
次に、
図3に示すように、造形用ステージ14を、液槽12の底面16に対して上方に1層分移動(例えば、1〜500μm、好ましくは、5〜100μm)させ、硬化層20aの下に光硬化性組成物10を導入し、硬化層20aの下面と液槽12の底面16との間に、新たな光硬化性組成物10の液状層Lを形成する(工程A1に該当)。
【0091】
次に、
図4に示すように、製造される3次元造形物の形状に基づきマスク18bを液槽12の下方向に設置する。マスク18bの下方向から光照射すると、マスク18bに遮られなかった光が液槽12内の光硬化性組成物の液状層Lに到達して、液状層Lが硬化し、硬化層20bが硬化層20aの下側に形成される(工程A2に該当)。硬化層20bの厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0092】
以後、
図3及び
図4の工程を繰り返すことにより、複数の硬化層が一体的に積層され立体的な積層物(3次元造形物)が製造できる。つまり、工程A1及び工程A2を繰り返すことにより、複数の硬化層が積層してなる積層物が製造できる。
なお、積層物の大きさは特に限定されないが、通常、0.5mm以上数m以下、典型的には、数cmから数十cmのスケールである。
【0093】
上記で用いられるマスクの形状は、造形される3次元造形物の3次元CADデータを複数の層にスライスして得られる断面群のデータから設計できる。
また、上記では、液槽の下方向から光照射する形態について述べたが、この形態に限定されず、例えば、液槽の横方向または上方向から光照射を実施してもよい。例えば、液槽の上側から光照射を行う場合、造形用ステージの上方向に硬化層が積層されることになるため、造形用ステージを下方向に沈降させながら積層を繰り返すことになる。
また、上記ではマスクを用いた光照射の方法について述べたが、他の方法でもよく、例えば、レーザー光、レンズ等を用いて得られた収束光等を走査させながら液状層Lを選択的に光照射する方法であってもよいし、デジタルミラーデバイスや液晶デバイスなどを用いてパターニングされた光を照射してもよい。
【0094】
上記工程A2における液状層に対する光照射の露光量は特に制限されないが、隣接する液状層の硬化防止ならびに硬化物の底面への固着防止の観点から、100mJ/cm
2以下が好ましく、50mJ/cm
2以下がより好ましい。光照射の露光量の下限は特に制限されないが、液状層の硬化性の観点から、1mJ/cm
2以上が好ましく、5mJ/cm
2以上がより好ましい。
【0095】
<工程B>
上記光硬化性組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(特定開始剤)を含有する場合、上記工程Aの後、さらに光照射を行う工程Bを実施するのが好ましい。工程Bを実施することで、特定開始剤のフォトブリーチングング機能により特定開始剤由来の着色が退色(フォトブリーチング)し、透明性に優れる3次元造形物が得られる。
本工程の露光量は、得られる3次元造形物の透明性がより優れる理由から、1000mJ/cm
2以上であることが好ましく、3000mJ/cm
2以上であることがより好ましく、5000mJ/cm
2以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、フォトブリーチング機能が飽和すること、また、硬化物の光劣化を抑制する観点から360000mJ/cm
2以下が好ましい。
使用される光の種類は特に制限されず、特定開始剤が感光する光であればよく、紫外光、可視光などが挙げられ、特性がより優れる理由から、紫外光が好ましい。特に、硬化物の光透過性と光重合開始剤の吸収能の観点から350nm〜400nmの光が好ましい。
また、光を照射する光源も特に制限されず、例えば、LED、LD、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプなどが挙げられる。
【0096】
<工程C>
なお、上記工程A又はBの後、必要に応じて、得られた3次元造形物を加熱する工程Cを実施してもよい。工程Cを実施することにより、3次元造形物の透明性がより向上する。
上記加熱の温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、3次元造形物の耐熱性の観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
上記加熱の時間は、1〜24時間が好ましく、3〜10時間がより好ましい。
【0097】
〔特性〕
本実施形態の3次元造形物の屈折率、ガラス転移点、硬度及び透過率の好適な態様は、上述した組成物の硬化物と同じである。
【0098】
〔用途〕
本実施形態の3次元造形物は、種々の用途に用いられるが、特に、光学素子(好ましくは、レンズ(特に、眼鏡レンズ)、プリズム)に好適に用いられる。
特に、眼鏡レンズは、目を守るため、および/または、視野を矯正するために、眼鏡フレームに合うように設計されたレンズであり、無矯正の眼鏡レンズ(別名として、平面レンズ、または、アフォーカルレンズ)、または、矯正眼鏡レンズとなり得る。矯正眼鏡レンズとしては、単焦点レンズ、二焦点レンズ、三焦点レンズ、または、多重焦点レンズが挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、光硬化性組成物及び3次元造形物に関して実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0100】
〔光硬化性組成物の調製〕
表1に示される成分を同表に示される割合(質量%)で混合し、60℃で30分間加熱することで各実施例及び比較例の光硬化性組成物を調製した。
【0101】
〔評価〕
得られた光硬化性組成物について下記の評価を行った。
【0102】
<硬化物の作製>
得られた光硬化性組成物を用いてキャスト膜を作製した。得られたキャスト膜の各面に対して、浜松ホトニクス社製スポット光源LC8を用いて光を1分間照射し、厚さ2mmの硬化物を得た。
【0103】
<屈折率、アッベ数>
得られた硬化物について、Metricon社製2010M Prism Couplerを用いて、波長473nm、594nm及び654nmにおける屈折率及びアッベ数を測定した。
その結果、実施例1〜2の硬化物はいずれも波長594nmにおける屈折率が1.60以上であった。実用上、波長594nmにおける屈折率は1.60以上であることが好ましく、1.62以上であることがより好ましい。屈折率は高い方が好ましい。
なお、表1に、実施例1及び比較例1について具体的な屈折率及びアッベ数の数値を示す。
【0104】
<透過率>
実施例1及び2の硬化物について、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長420〜800nmにおける透過率を測定したところ、測定波長範囲全域において85%以上であった。
【0105】
<粘度>
得られた光硬化性組成物について、粘度計(VM−10A、セコニック社製)を用いて粘度(25℃)を測定した。表1に結果を示す。実用上、900mPa・s以下であることが好ましい。粘度は低い方が好ましい。
【0106】
<硬度>
実施例1の硬化物について、硬度計(HH336、ミツトヨ製)を用いて、ショアD硬度を測定したところ、HDD75であった。
【0107】
〔3次元造形物の製造〕
実施例1〜2の光硬化性組成物を用いて3次元造形物を製造した。
具体的には、まず、紫外光を出射する光源を備える市販の3Dプリンターを用いて、光造形法により積層物を得た。3Dプリンターによる光造形法は、上述した
図1〜
図4で説明した工程Aと同様の手順で実施された。光造形法においては、積層物の厚みが10mmとなるまで、直径20mm、厚み100μmの円形状の硬化層を繰り返し積層した。
次に、得られた積層物を取り出し、積層物に対して光照射を行った(工程B)。光照射の露光量は、3000mJ/cm
2であった。
次に、工程B後の積層物を70℃で6時間加熱して、3次元造形物を製造した(工程C)。
なお、得られた3次元造形物について上述した評価(粘度以外)を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0108】
【表1】
【0109】
上記表1に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・フルオレンモノマー:9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(構造式は以下のとおり)
・カルバゾールモノマー:9−ビニルカルバゾール(構造式は以下のとおり)
・希釈モノマー1:ベンジルアクリレート(構造式は以下のとおり)(屈折率:1.519、粘度:2mPa・s)
・希釈モノマー2:エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(構造式は以下のとおり。ただしn≒1〜2)(屈折率:1.57、粘度:125mPa・s)
・希釈モノマー3:2−ヒドロキシ−4−フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)(構造式は以下のとおり)(屈折率:1.526、粘度:150〜200mPa・s)
・希釈モノマー4:イソボルニルアクリレート(構造式は以下のとおり)(屈折率:1.47、粘度:7mPa・s)
・光重合開始剤1:IRGACURE TPO
・光重合開始剤2:IRGACURE 184
・光重合開始剤3:DETX(2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン)(構造式は以下のとおり)
・架橋剤:トリメチロールプロパントリアクリレート
・添加剤:ベンゾキノリン
【0110】
表1中、「合計」は各成分の合計(質量%)を表す。また、「C/(F+C)」及び「D/全固形分」は、それぞれ上述した「C/(F+C)」を「D/全固形分」を表す。
【0111】
フルオレンモノマーとカルバゾールモノマーと希釈モノマーとを特定の量比で含有する実施例1及び2の光硬化性組成物は、粘度が低く、且つ、硬化物の屈折率が高かった。
一方、カルバゾールモノマーを含有しない比較例1及び2の光硬化性組成物は、粘度が高かった。
また、上述のとおり、実施例1及び2の光硬化性組成物に対して光造形法を適用したところ、屈折率の高い3次元造形物を製造することができた。
また、希釈モノマーとして下記化合物(1)のみを含有する実施例1よりも、希釈モノマーとして下記化合物(1)及び化合物(2)を含有する実施例2は、より密着性が高く、より強靭な3次元造形物を製造することができた。
化合物(1):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、置換基を有さない)
化合物(2):上述した式(D1)で表される化合物(ただし、置換基としてヒドロキシ基を有する)