特許第6963726号(P6963726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963726
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】多層配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   H05K3/46 J
   H05K3/46 N
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-215525(P2017-215525)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-87661(P2019-87661A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋志
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−180096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0027157(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0198563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ワイヤを布線して回路を形成した多層配線板であって、
前記同軸ワイヤの外周導体に当接して形成した非貫通孔が前記同軸ワイヤに向かってテーパ形状を有し、前記多層配線板を断面でみたとき、前記テーパ形状の最先端部が前記同軸ワイヤの中心位置を通る垂直線から前記同軸ワイヤの断面円周方向のどちらかにずれた位置にあり、かつ、前記非貫通孔の表層に形成された導体がテーパ形状の側面部で前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合を形成する部分を有することを特徴とする多層配線板。
【請求項2】
前記同軸ワイヤの断面円周方向において、前記垂直線の両側に前記非貫通孔が形成されており、前記非貫通孔のそれぞれの表層に形成された導体が前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合を形成する部分を有することを特徴とする請求項1に記載の多層配線板。
【請求項3】
前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合する前記非貫通孔の表層導体が、前記多層基板を貫通して形成される貫通孔の表層導体と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層配線板。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の多層配線板は、1本の前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合する表層導体を有する前記非貫通孔が、少なくとも1種類以上の径又は形状を有することを特徴とする多層配線板。
【請求項5】
前記多層配線板の断面において、予め前記同軸ワイヤの中心位置を通る垂直線から断面円周方向のどちらからにずらした位置で前記非貫通孔を孔加工できるように設計された加工データを用いて加工することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項6】
前記多層配線板に予め埋設した前記同軸ワイヤの位置を読み取り、前記同軸ワイヤと前記非貫通孔とを位置合わせして孔あけすることを特徴とする請求項5に記載の多層配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板及びその製造方法に関するものであり、特に、同軸ワイヤを用いた配線を有する多層配線板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化に伴い、配線板の配線密度もより高いものが要求されている。このような配線密度の高い配線板として、絶縁被覆されたワイヤ(以下、「絶縁被覆ワイヤ」ということがある。「ワイヤ」とは、信号線となる芯線のことをいい、「信号線」ということがある。)を布線して形成した回路を有する多層配線板(以下、「マルチワイヤ配線板」ということがある。)と、絶縁被覆ワイヤによる回路を有さず、銅箔又はめっき層により形成された金属膜を回路加工して回路を形成した多層配線板(以下、「一般多層配線板」ということがある。)とがある。以下、マルチワイヤ配線板又は一般多層配線板を、単に「多層配線板」ということがある。
【0003】
マルチワイヤ配線板の一例としては、特公昭45−02434号公報(特許文献1)に開示されているように、電源、グランド等の回路を形成した内層回路上に、布線用接着シート(絶縁ワイヤとの接着性を有する絶縁層)を形成した後、数値制御の布線機により、ポリイミド樹脂等で絶縁被覆されたワイヤを布線し、加熱加圧による積層等により、その貫通孔の内部にめっきを施して、形成しためっき層とワイヤを接続したスルーホールを形成することにより製造されるものがある。ここで、布線とは、絶縁被覆ワイヤを布線用接着シート上に這わせていくと同時に、超音波で接着する操作をいう。
【0004】
一般多層配線板の一例としては、内層回路を有する複数の内層回路を積層し、内層回路を貫通するように貫通孔を明け、貫通孔を含む全体にめっきを施して、形成しためっき層と内層回路を接続したスルーホールを形成し、最外層の銅箔とめっき層に対して回路加工することにより製造されるものがある。回路加工の方法として、一般的には、銅箔又はめっき層の不要部分をエッチング除去して形成する方法(サブトラクト法)、必要な部分にめっきして形成する方法(アディティブ法)、銅箔又はめっき層の必要な部分にめっきした後、銅箔又はめっき層の不要部分をエッチング除去して形成する方法(セミアディティブ法)等がある。以下、銅箔(金属箔)又はめっき層の不要部分をエッチング除去して形成した回路を、「エッチング回路」ということがある。また、上述した、サブトラクト法、アディティブ法、セミアディティブ法のようにして、銅箔(金属箔)又はめっき層により形成された金属膜を回路加工して形成した回路を「金属膜回路」ということがある。
【0005】
また、複数の内層回路板を積層する方法としては、内層回路を有する複数の内層回路板と絶縁層となる絶縁材とを、位置合わせピンを基準として用いて交互に重ね、加熱加圧して一括積層するピンラミネーション法と、内層回路を有する内層回路板の上に、絶縁層となる絶縁材と銅箔とを1層ずつ重ねて積層し、貫通孔又は非貫通孔を形成し、めっきを施した後、銅箔とめっき層の不要部分をエッチング除去して回路を形成する、という工程を、必要な回数繰り返して、所望の複数の配線層を形成するビルドアップ法とがある。
【0006】
一方で、高周波に対応する多層配線板が求められており、このような多層配線板としては、同軸ワイヤを有するマルチワイヤ配線板が知られている。同軸ワイヤとは、信号線となるワイヤの外周に絶縁層を介してシールド用の外周導体(以下、「シールド層」ということがある。)を形成したワイヤである。また、この同軸ワイヤを用いたマルチワイヤ配線板を製造する方法として、回路と同軸ワイヤのワイヤ(信号線)とを接続する貫通孔が形成される箇所と、回路と同軸ワイヤの外周導体(シールド層)とを接続する非貫通孔が形成される箇所にマルチワイヤ配線板の表層側から、プラズマを照射して絶縁層を除去する製造方法が知られている(特許文献2)。
【0007】
また、表面層と外周導体とを非貫通孔で接続するために、レーザを使用する方法がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭45−021434号公報
【特許文献2】特開平5−152760号公報
【特許文献3】特開2014−168050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子機器の高速化が進み、配線板内を流れる電気信号は、短時間により多くの情報を伝達するため、周波数が益々高くなっている。このため、高密度化した一般多層配線板においては、隣接した導体間の影響として、クロストークノイズといわれる電磁障害が無視できなくなってきた。
【0010】
マルチワイヤ配線板においても同様で、高密度化の要求に対応するため、ワイヤピッチはより微細(0.3mm以下)となったことにより、電磁障害による隣接するワイヤ間でのクロストークが問題となる。
【0011】
同軸ワイヤを用いた多層配線板の製造方法として、同軸ワイヤを内層に配置して絶縁層となる絶縁材で積層させた後に、多層配線板の表層側から、レーザ加工により、表層側の絶縁層を除去して、非貫通孔を形成するとともに、ワイヤの外周導体とを金属めっきで接続する方法が考えられる、しかし、内層に配置した同軸ワイヤと非貫通孔とを精度よく位置合わせするのは、ワイヤ位置精度と基板の寸法収縮を制御する必要があり、特に、同軸ワイヤと非貫通孔が大きくずれた場合は、金属めっきした際の接触面積不足による接続信頼性の低下と、十分なシールド効果が得られない可能性がある。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ビアの信頼性を高め、電気特性を安定させることができるだけでなく、優れた同軸ワイヤのシールド効果を有することにより、クロストークが抑制され、かつ伝送特性に優れた多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、信号線とその周りの絶縁被覆とこの絶縁被覆を介して配置された外周導体とを有する同軸ワイヤが内層に配置され、その同軸ワイヤよりも内層側又は外層側に絶縁層が配置され、その絶縁層を介して、金属箔又は金属めっき層を回路加工して形成した金属膜回路が配置され、その金属膜回路と前記同軸ワイヤの外周導体又は信号線とが接続される多層配線板において、前記同軸ワイヤの外周導体に当接して非貫通孔が形成されており、該非貫通孔が同軸ワイヤに向かってテーパ形状を有し、前記多層配線板を断面でみたとき、前記テーパ形状の最先端部が前記同軸ワイヤの中心位置を通る垂直線から前記同軸ワイヤの断面円周方向のどちらかにずれた位置にあり、かつ、前記非貫通孔の表層に形成された導体がテーパ形状の側面部で前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合を形成する部分を有することを特徴とする多層配線板。
【0014】
また、本発明は、前記同軸ワイヤの断面円周方向において、前記垂直線の両側に前記非貫通孔が形成されており、前記非貫通孔のそれぞれの表層に形成された導体が前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合を形成する部分を有する多層配線板を提供する。
【0015】
本発明は、これらの構造に採用することにより、金属接合面積を大きく形成できることからビアの信頼性を高めることができ、さらに、電気特性を安定させることができる。
【0016】
また、本発明は、前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合する前記非貫通孔の表層導体が、前記多層基板を貫通して形成される貫通孔の表層導体と電気的に接続されている。それにより、多層配線板で一般的に用いられる層間接続を利用して、前記同軸ワイヤより外層側又は内層側に配置される金属膜回路やグランドとの接続ができるため、確実な接続を行うことができる。
【0017】
また、本発明の多層配線板は、1本の前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合する表層導体を有する前記非貫通孔が、少なくとも1種類以上の径又は形状を有するものである。それにより、多層配線板の電気特性と同軸ワイヤのシールド効果、及び多層配線板のパターン形状に応じて、前記非貫通孔の径又は形状を自由に選択することができるだけでなく、前記非貫通孔を形成するときの設計が容易になる。
【0018】
本発明は、前記多層配線板の断面に予め前記同軸ワイヤの中心位置を通る垂直線から断面円周方向のどちらからにずらした位置で前記非貫通孔を孔加工できるように設計された加工データを用いて加工することを特徴とする多層配線板の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明の多層配線板の製造方法は、前記多層配線板に予め埋設した前記同軸ワイヤの位置を読み取り、前記同軸ワイヤと前記非貫通孔とを位置合わせして孔あけすることが好ましい。
それにより、非貫通孔を所望の位置に高精度で、かつ簡便に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、同軸ワイヤのシールド層と非貫通孔とが、非貫通孔のテーパ形状の側面部で金属接合することができ、それによって金属接合をより大きな面積で形成できるため、ビアの信頼性を高めることができる。また、本発明は、多層配線板の電気特性及び同軸ワイヤのシールド効果に応じて、高い形状自由度を有する非貫通孔を高精度で、かつ簡便に形成できるため、生産性に優れる多層配線板の製造方法を提供することができる。
【0021】
さらに、本発明の多層配線板は同軸ワイヤを使用しているため、シールド効果に優れ、信号線の高速信号による不要幅射電波の発生がないため、隣接信号線間にクロストークがなく、かつ伝送特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の同軸ワイヤを使った多層配線板の全体を説明する断面の概略図である。
図2】従来の同軸ワイヤを使った多層配線板の全体を説明する断面の概略図である。
図3】本発明の同軸ワイヤを使った多層配線板の変形例を説明する断面の概略図である。
図4】同軸ワイヤの外周導体と金属接合する非貫通孔の表層導体が、貫通孔の表層導体を介して内層回路及びグランドと電気的に接続される本発明の多層配線板の例を示す断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の多層配線板の実施の形態について説明する。図1は、本発明の同軸ワイヤを使った多層配線板の全体を説明する断面の概略図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の多層配線板1は、信号線に相当する芯線6とその周りの絶縁被覆層7と、この絶縁被覆層7を介して配置される外周導体(シールド層)8とを有する同軸ワイヤ5が内層に配置され、同軸ワイヤ5の外周導体8に当接した状態で非貫通孔11が形成される。この非貫通孔11は、同軸ワイヤ5に向かってテーパ形状を有し、多層配線板を断面でみたとき、前記テーパ形状の最先端部15が前記同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aから前記同軸ワイヤの断面円周方向の片側(図1において右側)にずれた位置にあり、非貫通孔11のテーパ形状の側面部で、金属めっき層(金属銅箔層)12を有する表層回路14を介して同軸ワイヤ5の外周導体8と金属結合部分13が形成される。ここで、非貫通孔11は、テーパ形状の最先端部15の位置を同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aから断面円周左側方向、すなわち図1に示す方法とは前記垂直線Aに対して線対象となる反対側(図1において左側)にずらして設けてもよい。
【0025】
さらに、多層配線板1は、同軸ワイヤ5よりも内層側又は外層側に、接着剤4によって接着された絶縁層3、9が配置されており、絶縁層3よりも内層側に金属箔又は金属めっき層を回路加工して形成される内層回路(内層銅箔)2を有する銅張積層板16又はグランド等の金属膜回路(不図示)が配置される。同軸ワイヤ5の外周導体8又は信号線に相当する芯線6は、表面層銅箔10の上に形成される表層回路14を介して銅張積層板16又はグランド等の金属膜回路と電気的に接続される。
【0026】
次に、本発明の多層配線板と従来の多層配線板との違いを説明する。図2に、従来の同軸ワイヤを使った多層配線板の全体断面の概略図を示す。図2に示す従来の多層配線板17は、非貫通孔18を設ける位置が異なるだけで、それ以外の構成及び構造は図1に示すものと同じである。
【0027】
図2に示すように、従来の同軸ワイヤを使った多層配線板17は、テーパ形状を有する非貫通孔18の最先端部19の位置が同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線A上に配置されて形成されるのが一般的であった。その場合、非貫通孔18は、同軸ワイヤ5の外周導体8と接触する部分が非貫通孔18の最先端部19及びその近傍部分に限定されるため、同軸ワイヤ5の外周導体8との接触面積が本発明に比べて非常に小さい。また、内層に配置した同軸ワイヤ5と非貫通孔18との位置合わせにおいては、同軸ワイヤ5の位置精度及び多層配線板を作製するときの寸法精度の両者を高精度に制御する必要があるが、仮に、非貫通孔18の形成位置が同軸ワイヤ5から大きくずれた場合、同軸ワイヤ5の外周導体8との接続が得られなくなる。したがって、同軸ワイヤを使った従来の多層配線板は、表層導体14を形成する際に、同軸ワイヤ5の外周導体8との接触面積不足による接続信頼性の低下と、十分なシールド効果が得られなくなるという問題が発生しやすかった。
【0028】
それに対して、本発明の多層配線板は、図1に示すように、同軸ワイヤ5の外周導体(シールド層)8と非貫通孔11とが、非貫通孔11のテーパ形状の側面部で金属接合部分13を形成するため、より大きな面積にわたって金属接合が形成されるようになり、多層配線板の接続信頼性を高め、十分なシールド効果及びクロストーク抑制効果を得ることができる。
【0029】
本発明において形成される非貫通孔は、テーパ形状の先端部が同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aから前記同軸ワイヤの断面円周方向の片側だけにずれた構造だけに限定されない。図3に示す多層配線板20のように、同軸ワイヤ5の断面円周方向において、前記同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aを境にして、その両側にテーパ形状の最先端部15a及び15bがそれぞれずれた状態で形成された非貫通孔11a、11bを有してもよい。多層配線板20は、非貫通孔11a及び11bの表面に形成された表層回路14と同軸ワイヤ5の外周導体8の両側との間でそれぞれ金属接合を行い、金属接合部分13a及び13bを形成することにより、同軸ワイヤ5の外周導体8又は芯線6の信号線と、銅張積層板16又はグランド等の金属膜回路とが、表層回路14を介して電気的に接続される。
【0030】
図3に示す多層配線板20は、テーパ形状の側面部両側の2か所で金属接合が行うことにより、図1に示す多層配線板1に比べて、より広い面積にわたって金属接合を形成することができる。それにより、多層配線板の接続信頼性及び同軸ワイヤに対するシールド効果の一層の向上を図ることができる。
【0031】
本発明の多層配線板は、同軸ワイヤの外周導体と金属接合する非貫通孔の表層導体が、前記多層基板を貫通して形成される貫通孔の表層導体と電気的に接続されていることが好ましい。それにより、多層配線板で一般的に用いられる層間接続を利用して、前記同軸ワイヤより外側の層又は内側の層に配置される金属膜回路やグランドと、同軸ワイヤの外周導体又は信号ワイヤ線との接続を行うことができる。
【0032】
図4に、同軸ワイヤの外周導体と金属接合する非貫通孔の表層導体が、貫通孔を介して内層回路及びグランドと電気的に接続される多層配線板の例を概略断面図で示す。図4は、多層配線板の長手方向の断面図であり、図1に示す断面図に対して直角方向に位置する。
【0033】
図4に示す多層配線板21の製造方法としては、例えば、同軸ワイヤを内層に配置して絶縁層となる絶縁材で積層した後、同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aから同軸ワイヤの断面円周方向の片側にずれた位置に非貫通孔11のテーパ形状先端部が配置されるように、同軸ワイヤ5に当接させた形で非貫通孔11を形成する。次に、非貫通孔11のテーパ形状の側面部で、同軸ワイヤ5の外周導体8と金属結合した表層回路14を形成する。次いで、多層配線板内において同軸ワイヤが存在しない箇所を選んで、多層配線板の表層側からドリル等を用いて貫通孔22を形成し、その後、マスクパターンを用いて無電解銅メッキ及び電解銅メッキによって貫通孔の壁面に表層導体23を形成する。このとき、貫通孔内の導体23は、必要に応じて、同軸ワイヤ5の外周導体8と金属結合を形成した表層回路14に電気的な接続が実現できる回路パターンを多層配線板の最表層回路で形成することにより、同軸ワイヤ5の外周導体8と金属接合する非貫通孔11の金属接合部分13が、最表層回路14から貫通孔を介して内層回路及びグランドと電気的に接続される。
【0034】
多層配線板21の別の製造方法として、同軸ワイヤ5の外周導体8と金属結合した表層回路14の形成を行う前にあらかじめ多層配線板に貫通孔22を形成し、その後に表層回路14と貫通孔22の壁面の表層導体23との形成を同時に行う方法を採用してもよい。
【0035】
このようにして製造される多層配線板は、一般的に用いられる層間接続を利用して、同軸ワイヤより外層又は内層に配置される金属膜回路やグランドと、同軸ワイヤの外周導体又は信号ワイヤ線との接続を行うことにより、確実な接続を確保できるため信頼性の向上とともに、同軸ワイヤのシールド効果に優れ、かつ、クロストークが抑制された、伝送特性に優れる多層配線板を提供することができる。
【0036】
本発明の多層配線板は、1本の前記同軸ワイヤの外周導体と金属接合する表層導体を有する前記非貫通孔が、図1に示すように1種類には限定されず、2種類以上の径又は形を有する非貫通孔を形成してもよい。多層配線板内部に設ける同軸ワイヤの形状が設置場所によって異なる場合は、前記同軸ワイヤの形状に合わせて、非貫通孔の径又は形状を変える必要がある。また、図2に示すように、同軸ワイヤ5の断面円周方向において、前記同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aの両側に、2つの非貫通孔11a及び11bを設ける場合にも、それらの径又は形状は同じにする必要はなく、非貫通孔を形成できるスペースに応じて径や形状を変えることができる。これは、同軸ワイヤ5の中心位置を通る垂直線Aの周りに3つ以上の非貫通孔を設ける場合でも同じことがいえる。このように、複数の非貫通孔の径又は形状はそれぞれが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
また、同じ多層配線板の複数の箇所にそれぞれ貫通孔を設ける場合、非貫通孔を形成するときに使用するドリルの径又は形状は同じである必要はまったくなく、加工スペースや多層配線板の製造工程によって異なる径又は形状を有するドリルを使用してもよい。その場合、複数の非貫通孔は、結果的にそれぞれ2種類以上の径又は形状を有することになる。このようにして、多層配線板に非貫通孔を形成するとき、柔軟で、かつ、より簡便な製造方法を採用することができる。
【0038】
本発明の多層配線板の製造においては、予め同軸ワイヤの中心位置を通る垂直線から断面円周方向のどちらからにずらした位置で非貫通孔を孔加工できるように設計された加工データを用いて加工することが好ましい。さらに、多層配線板に予め埋設した前記同軸ワイヤの位置を読み取り、前記同軸ワイヤと前記非貫通孔とを位置合わせして孔あけすることがより好ましい。
【0039】
これらの方法を採用することにより、多層配線板の所望の位置に、非貫通孔を高精度で、かつ簡便に形成することができるため、同軸ワイヤを布線して回路を形成した多層配線板において高信頼性の配線板を製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、本実施例に限定されない。
【0041】
<実施例1>
内層回路を形成した銅張積層板(日立化成株式会社製:I−671、t0.2、35μm銅箔)上の両面に、プリプレグ(日立化成株式会社製:GIA−I−671N、t0.03)を加熱,加圧して一体化した後、布線用接着材(日立化成株式会社製:AS−U01、0.1μm)を基板両面にラミネートして同軸ワイヤ(外周導体までの径が0.24mm、内部導体径0.065mm)をNC制御布線機にて布線し固定した。その後、プリプレグ(日立化成株式会社製:GIA−I−671N、t0.03)と銅箔(三井金属鉱業株式会社製MW−G)とを基板両面に配置して加熱・加圧プレスして多層化積層した。
【0042】
多層化積層後は同軸ワイヤの外周導体と表層導体とを金属接合するために、表面層銅箔からドリル加工を行った。この時、ドリル径は0.5mm(ユニオンツール株式会社製:UC30、先端角度130度、ドリル先端から外周部までの高さが0.058mm、刃の片方の長さ0.27mm)であり、同軸ワイヤとドリル孔との位置ずれ量を予め基板の外側部に埋設した同軸ワイヤパターンとドリル孔とを使って補正した後に、製品内の同軸ワイヤの円周方向の中心から円周方向外側に0.25mmずらして基板表面層銅箔から同軸ワイヤに向かって加工し、同軸ワイヤの外周導体が露出したところでドリル孔を寸止めして、図1に示すようなテーパ形状を有する非貫通孔を形成した。
【0043】
その後、過マンガン酸処理によるデスミア処理を行い、金属めっきして同軸ワイヤの外周導体と非貫通孔とを接続しビアを形成した。この時、予めワイヤの高さ方向の位置を設計値などで確認した後、非貫通孔となるドリル深さ量を設定するとよい。
【0044】
従来は、同軸ワイヤの外周導体と非貫通孔との接触がドリルの刃先部分のみであったため深さ方向精度の制御が難しかったが、本実施例によればドリルのテーパ形状の側面部が同軸ワイヤの外周部分と接触するため従来よりも加工が容易である。
【0045】
また、本実施例においては、必要に応じて、多層配線板の表層側からドリル等を用いて貫通孔を形成し、その後、マスクパターンを利用して無電解銅メッキ及び電解銅メッキによって貫通孔の壁面に導体を形成する。このようにして、同軸ワイヤの外周導体と金属接合する非貫通孔の表層導体が貫通孔を介して内層回路及びグランドと電気的に接続されるような回路パターンを、多層配線板の最外層に形成することができる。それにより、非貫通孔の表層導体を、多層配線板に形成した最外層から貫通孔を介して内層回路及びグランドと電気的に接続することが可能になる。
【0046】
以上のようにして製造した多層配線板は、信頼性、同軸ワイヤのシールド性及びクロストーク性の評価を行った結果、ビアの信頼性が高く、かつ、電気特性の安定性を向上できるだけでなく、同軸ワイヤのシールド効果が優れ、クロストークが抑制され、かつ伝送特性に優れることが確認できた。これら特性の向上は、同軸ワイヤのシールド層と非貫通孔との金属接合を非貫通孔のテーパ形状の側面部で容易に行うことができたため、金属接合面積を従来の多層配線板より大きく形成できたことに起因する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の多層配線板は、同軸ワイヤのシールド効果が優れることにより、クロストークが抑制されかつ伝送特性に優れた多層配線板を提供することができるため、産業上有効である。
【符号の説明】
【0048】
1、17、20、21…多層配線板
2…内層回路又は内層銅箔
3…絶縁材又はプリプレグ
4…接着材
5…同軸ワイヤ
6…芯線又は信号線
7…絶縁被覆層
8…外周導体又はシールド線
9…絶縁材又はプリプレグ
10…表面層銅箔
11、11a、11b、18…非貫通孔
12…金属めっき層又は金属銅箔層
13、13a、13b…同軸ワイヤの外周導体と金属めっき層との金属接合部分
14…表層回路
15、15a、15b、19…テーパ形状の最先端部
16…銅張積層板
22…貫通孔
23…貫通孔の表層導体
図1
図2
図3
図4