(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るブレード部材を電子写真方式の画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の複写機の内部構成を示す構成図である。
本複写機には、その略中央に画像形成部200が配置され、この画像形成部200の下方に給紙部400が配置されている。なお、必要に応じて別の給紙装置を下部に増設することができる。また、画像形成部200の上方には、排紙収納部9を隔てて、原稿を読み取る画像読取部300が配設されている。排紙収納部9には、画像が形成された記録材としての記録紙Pが排紙、収納される。なお、
図1中矢印Aで示すものは、記録紙Pの通紙経路である。
【0009】
画像形成部200には、複数の作像部としての画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kが中間転写ベルト41に対向するように並設されている。また、画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kの下側には、潜像形成手段としての露光装置10が設置されている。これらの画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kの符号に付された添え字Y、M、C、Kはその符号が示す部材などが扱うトナーの色と対応している。以下、特にトナーの色を区別しないときには添え字を省略する場合がある。
【0010】
画像形成ユニット12には、ドラム状の像担持体である感光体1が設けられている。感光体1の周囲には、感光体1の表面を一様に帯電する帯電手段としての帯電装置2、露光装置10により感光体1の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト41へ転写した後の感光体表面に残留する転写残トナー等を除去回収するクリーニング手段としての感光体クリーニング装置6、感光体表面に潤滑材を供給する潤滑剤供給手段としての潤滑剤塗布装置7などが設けられている。また、感光体1の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト41に転写する一次転写ローラ13が中間転写ベルト41を挟んで感光体1に対向して配置されている。
【0011】
中間転写ユニット4の図中右側には、複数の感光体1上の各トナー像を重ね合わせて転写された中間転写ベルト41上のトナー像を記録紙Pに二次転写するための二次転写ローラ51を備えた二次転写装置5が配置されている。二次転写ローラ51にトナーが付着すると記録紙Pの裏汚れの原因となるので、二次転写装置5には、二次転写ローラ51の表面に付着したトナーを除去回収する二次転写部材クリーニング装置56が配置されている。さらに、二次転写装置5には、二次転写ローラ51に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段としての二次転写部材潤滑剤塗布装置57が設けられている。
【0012】
また、中間転写ユニット4には、二次転写後の中間転写ベルト41の表面に残留したトナーを除去回収する中間転写体クリーニング装置46が設けられている。また、二次転写装置5によりトナー像が転写された記録紙Pのトナーを定着処理する定着手段としての定着装置8が配置されている。定着装置8を通紙した記録紙Pは、排紙ローラを経て排紙収納部9に排紙、収納される。
【0013】
メンテナンスを容易にするため、画像形成ユニット12は、感光体1、帯電装置2、現像装置3、感光体クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置7等をプロセスカートリッジとして1つのユニットに組み込み、複写機100本体に対して着脱可能としている。
【0014】
給紙部400には、未使用の記録紙Pが収納されており、給紙ローラの回転により一番上の記録紙Pが給紙カセット40から送り出され、レジストローラ11へと搬送される。レジストローラ11は、記録紙Pの搬送と一時的に止めて、中間転写ベルト41の表面のトナー像と記録紙Pの先端との位置関係が所定の位置関係となるタイミングを取って、回転が開始されるように制御される。
【0015】
画像情報を読み込む画像読取部300では、コンタクトガラス302上に載置される原稿の画像読み取りを行うために、原稿照明用光源とミラーとを搭載した読取走行体301がコンタクトガラス302に沿って往復移動する。原稿からの反射光は、レンズ303の後段に設置されているCCD304により受光される。CCD304は、受光した光を画像信号に変換し、これを制御部に出力する。制御部は、入力された画像信号に基づく画像情報に対して各種画像処理を施した上で、その画像情報に基づいて露光装置10の光源(レーザダイオード等)の駆動などを制御する。レーザーダイオードからの書込光は、ポリゴンミラーやレンズ等を介して感光体1の表面に至り、これにより感光体1の表面には当該画像情報に対応する静電潜像が形成される。
【0016】
図2は、本実施形態の複写機における作像部の概略構成を示す拡大図である。なお、現像装置3の図示は省略してある。また、
図2中の矢印Bは、感光体1の回転方向を示している。
【0017】
帯電装置2は、主に、帯電部材である帯電ローラ21と、それを感光体1に所定の圧力で加圧する帯電付勢手段としての加圧バネ22とから構成されている。帯電ローラ21は、導電性のシャフトの周りに導電性弾性層を有するものである。帯電ローラ21は、電圧印加装置により導電性シャフトを介して電圧が供給され、その導電性弾性層と感光体1との空隙に生じる所定の電圧によって感光体1の表面に所定極性の電荷を付与する。また、帯電装置2には、帯電ローラ21に付着した付着物を除去するための帯電クリーナローラ23も備わっている。
【0018】
本実施形態の現像装置3は、本実施形態では二成分現像方式のものであるが、一成分現像方式のものであってもよい。現像装置3では、攪拌スクリューにより攪拌された現像剤を現像剤担持体としての現像ローラ上に担持させ、現像剤規制部材としての現像ドクタによって薄層化する。そして、薄層化された現像剤を、現像ローラの回転により感光体1との対向領域である現像領域へと搬送し、その現像領域で感光体1上の静電潜像をトナー像化する。
【0019】
感光体クリーニング装置6は、ブレード部材であるクリーニングブレード61を備えている。このクリーニングブレード61を支持するブレードホルダ62は、クリーニングブレード61の稜線部が当接する感光体表面箇所よりも感光体表面移動方向下流側でクリーニングブレード61を支持している。また、感光体クリーニング装置6は、クリーニングブレード61により掻き取って回収した転写残トナー等のクリーニング対象物を、廃トナーボトルまで搬送するための回収コイル63も備えている。
【0020】
次に、潤滑剤塗布装置7の構成について説明する。
本実施形態においては、感光体クリーニング装置6の感光体表面移動方向下流側であって、帯電装置2の感光体表面移動方向上流側に、潤滑剤塗布装置7が配置されている。潤滑剤塗布装置7は、潤滑剤供給部材としての発泡ウレタンローラ71と、発泡ウレタンローラ71に当接して設けられたステアリン酸亜鉛からなる固形潤滑剤72と、固形潤滑剤72を発泡ウレタンローラ71に圧接させるための加圧バネ73とを備えている。発泡ウレタンローラ71は、感光体1の表面にも当接しており、図中の矢印で示すように感光体表面に対してカウンター方向に回転駆動する。発泡ウレタンローラ71は、金属シャフトに発泡ウレタンを巻きつけてローラ状にしたものであり、固形潤滑剤72を削り取り、削り取った粉末状の固形潤滑剤を感光体表面に塗布する。
【0021】
固形潤滑剤72は、脂肪酸金属亜鉛に無機潤滑剤と無機微粒子を含有させて形成したものである。また、脂肪酸金属亜鉛としては、少なくともステアリン酸亜鉛を含んだものが好ましい。また、無機潤滑剤としては、タルク、マイカ、窒化ホウ素のうち少なくとも1つを用いることができ、特に、窒化ホウ素が好ましい。
【0022】
窒化ホウ素は、放電による特性変化がほとんどないため、窒化ホウ素を配合した固形潤滑剤72を用いることで、感光体1上で帯電工程や転写工程が行われた後にも、放電による劣化が生じにくくなる。また、窒化ホウ素を配合した固形潤滑剤72を用いることで、感光体1が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。
【0023】
また、窒化ホウ素だけからなる潤滑剤を用いてしまうと、感光体1の表面に供給された潤滑剤が表面全体に行き渡らずに、表面全体に均一な潤滑剤の薄膜が形成されなくなるおそれがある。そのため、固形潤滑剤72に窒化ホウ素の他に脂肪酸金属塩を配合している。これにより、感光体1の表面全体にわたって潤滑剤の薄膜を効率よく形成することができて、長期にわたって高い潤滑性を維持することができる。
【0024】
脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等のラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩や、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウム等の物質を使用することができる。特に、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体1上での伸展性が向上して、吸湿性が低くて湿度が変化しても潤滑性が損なわれにくくなる。
【0025】
無機微粒子に関しては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられるが、これに限ったものではない。無機微粒子は、感光体1上で研磨力を発揮し、感光体1上に窒化ホウ素などが固着することを抑制する。
【0026】
また、固形潤滑剤72に配合する材料としては、脂肪酸金属塩や窒化ホウ素の他に、シリコーンオイル、フッ素系オイル、天然ワックス等の液状材料やガス状材料を外添剤として用いることもできる。
【0027】
このように構成される固形潤滑剤72は、粉体状の潤滑剤を型に入れて型内で圧力をかけて固形のブロックに形成することもできるし、粉体状の潤滑剤を加熱溶融したものを型の中に流し込んだ後に冷却して固形のブロックを形成することもできる。また、潤滑剤の構成材料をブロック状に固める際には、必要に応じて、その構成材料中にバインダーを添加して成形することもできる。
【0028】
図3は、潤滑剤塗布装置7に設けられるブレード部材としての均しブレード74が感光体1の表面に当接した状態を示す説明図である。
図4は、均しブレード74と感光体表面との当接箇所の拡大図である。
潤滑剤塗布装置7の均しブレード74は、ブレードホルダ75に支持され、発泡ウレタンローラ71の当接部分よりも感光体表面移動方向下流側で感光体1の表面に当接している。この均しブレード74は、弾性材料、具体的にはポリウレタンゴムから形成されているが、必ずしも弾性材料に限るものではない。また、均しブレード74の支持方式は、カウンター方式である。すなわち、均しブレード74が当接する感光体1の表面箇所よりも感光体表面移動方向下流側で均しブレード74を支持している。このようにすれば、トレーリング方式に比べて高い当接圧で、均しブレード74を感光体1の表面に当接させることが可能となる。よって、粒状となって均しブレード74の当接箇所に進入してきた潤滑剤をしっかり堰き止め、狙いの量以上の潤滑剤がすり抜けるのを抑制できる。
【0029】
また、本実施形態の均しブレード74は、
図4に示すように、感光体1の表面に当接する稜線部74aを形成する角度が鈍角となる構成である。すなわち、その稜線部74aをはさんで感光体表面移動方向Bの上流側と下流側で感光体表面とそれぞれ対向する面(以下、「感光体移動方向上流面74b」、「感光体移動方向下流面74c」という。)の裏面間のなす角度(以下「稜線部角度θ」という。)が鈍角である。この稜線部角度θは、95°以上140°以下であるのが好ましい。稜線部角度が95°未満であると、鈍角にしたことによるスティックスリップ運動の抑制効果が不十分となる。逆に、稜線部角度θが140°よりも大きいと、必要な当接圧を得ることが難しくなる。
【0030】
発泡ウレタンローラ71の当接部分(潤滑剤供給箇所)よりも感光体表面移動方向下流側に均しブレード74を設けることにより、発泡ウレタンローラ71から感光体1の表面に供給された潤滑剤を均しブレード74によって均すことができ、脂肪酸金属塩や無機潤滑剤による保護層を感光体表面上に形成することができる。この保護層のおかげで、帯電のハザードやクリーニングブレード61等との摩擦による感光体表面層の磨耗や微粒子による傷から、感光体1を保護することができ、感光体の長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、このような潤滑剤の保護層によって感光体表面の潤滑性が増すことで、感光体1の表面とこれに接触するブレード部材(クリーニングブレード61や均しブレード74等)との間の摩擦係数が低下し、ブレード部材の磨耗低減や挙動の安定化を図ることもできる。なお、均しブレード74は、潤滑剤の均し機能だけではなく、トナーなどの他の付着物を感光体1の表面からクリーニングする機能を兼ね備えてもよい。
【0032】
図5(a)及び(b)は、従来の均しブレード74’の感光体表面との当接部分に生じるスジ状傷の様子を示す説明図である。
なお、
図5(a)は、感光体表面に当接する均しブレード74’の当接部分をその当接部分の面の法線方向から見たときの説明図であり、
図5(b)は、感光体表面に当接する均しブレード74’の当接部分に生じたスジ状傷を通るように感光体移動方向に沿って切断したときの断面を示す説明図である。
【0033】
一般に、ブレード部材を感光体表面に当接させる構成においては、感光体表面に付着する微粒子、例えば、トナーから離脱したトナー外添剤や固形潤滑剤に含まれる無機微粒子などを完全に堰き止めることは困難である。そのため、ブレード部材と感光体表面と当接箇所を微粒子がすり抜ける事態が起こる。従来の均しブレード74’は、感光体移動方向下流面74c’における稜線部74aから所定長さLまでの範囲が感光体1の表面と当接する。従来の均しブレード74’における感光体表面との当接部分(感光体移動方向下流面74c’の稜線部74aから所定長さLまでの範囲)は平坦な面であり、その当接部分の面全体が感光体1の表面に密着する。そのため、微粒子がすり抜ける際に均しブレード74’の当接部分が微粒子によって摺擦される結果、経時においては、均しブレード74’の当接部分に
図5(a)、(b)に示すような感光体表面移動方向に延びるスジ状傷(図中黒塗り部分)77が生じる。
【0034】
このようなスジ状傷77は、均しブレード74’の当接部分の感光体表面移動方向全域にわたって延びるように生じ、均しブレード74’の使用開始初期の時期から発生し始める。スジ状傷77は、感光体表面移動方向に対して直交する方向すなわち感光体軸方向(以下「幅方向」という。)にわたって多数分布して発生する。隣り合うスジ状傷77間に存在する非傷部分の幅(幅方向長さ)は最大2μm程度であり、非傷部分の幅がほとんどゼロである箇所も存在する。
【0035】
スジ状傷77の幅(幅方向長さ)は、均しブレード74’の当接部分における感光体表面移動方向上流端(稜線部74a)から下流端近傍までの間では、約1μm程度でほぼ一定である。ただし、均しブレード74’の当接部分における感光体表面移動方向下流端近傍から下流端にかけては、
図5(a)に示すように、徐々に狭くなっている。また、スジ状傷77の深さは、均しブレード74’の当接部分における感光体表面移動方向上流端(稜線部74a)から下流端近傍までの間では、約0.5μm程度でほぼ一定である。ただし、均しブレード74’の当接部分における感光体表面移動方向下流端近傍から下流端にかけては、
図5(a)に示すように、徐々に浅くなっている。均しブレード74’の当接部分における感光体表面移動方向下流端近傍から下流端にかけてスジ状傷77の幅が狭く深さが浅くなっているのは、この範囲では均しブレード74の感光体表面への当接圧が弱くなっているため、すり抜ける微粒子による摺擦が弱いためだと考えられる。
【0036】
図6は、感光体1の表面に当接する従来の均しブレード74’の当接部分に生じたスジ状傷を通るように感光体移動方向に沿って切断して、スジ状傷77の内部に微粒子が蓄積する様子を示した説明図である。
なお、
図6中に点線は、スジ状傷77が生じていない状態を示すものである。
【0037】
従来の均しブレード74’の当接部分に生じたスジ状傷77には、感光体1に塗布された潤滑剤に含まれる脂肪酸金属塩90、帯電工程において劣化した脂肪酸金属塩91、同じく潤滑剤に含まれる無機微粒子92が、感光体の表面移動に伴って進入してくる。また、トナーやトナーに含まれる外添剤、無機微粒子、その他不純物なども進入してくる。上述したように、従来の均しブレード74’では、スジ状傷77の感光体表面移動方向下流端付近で幅が狭く深さが浅くなるので、そのスジ状傷77の下流端付近には、スジ状傷77を通ってすり抜けようとする微粒子90,91,92が蓄積し得る。
【0038】
特に、帯電工程で劣化して潤滑性を失った潤滑剤の脂肪酸金属塩のような、ブレード部材や像担持体表面との間の摩擦係数が高い微粒子は、スジ状傷77を通ってすり抜けようとする際にスジ状傷77の下流端付近で引っ掛かって蓄積しやすい。このような摩擦係数の高い微粒子がスジ状傷77の下流端付近に蓄積していくと、均しブレード74と感光体1の表面との間の摩擦係数が増大していき、均しブレード74のスティックスリップ運動を誘発し、ブレード鳴き等の不具合が引き起こされる。
【0039】
なお、従来の均しブレード74’に生じるスジ状傷77の幅、深さ、長さ(感光体表面移動方向長さ)、形状などの特徴は、観察場所、ブレード材質、潤滑剤やトナーに含まれる無機微粒子等の微粒子の種類、均しブレード74’の劣化具合などによって様々であり、
図5(a)及び(b)に示したスジ状傷77の特徴は一例に過ぎない。
【0040】
図7(a)及び(b)は、本実施形態における均しブレード74の感光体表面との当接部分に設けられた微細溝80を示す説明図である。
なお、
図7(a)は、感光体表面に当接する均しブレード74の当接部分をその当接部分の面の法線方向から見たときの説明図であり、
図7(b)は、感光体表面に当接する均しブレード74の当接部分に設けられた微細溝80を通るように感光体移動方向に沿って切断したときの断面を示す説明図である。
【0041】
本実施形態の均しブレード74には、感光体表面との当接部分に、上述した微粒子が通過可能な微細溝80が設けられている。この微細溝80は、感光体表面移動方向に沿って延びており、少なくとも当該当接部分の感光体表面移動方向全域にわたる長さを有している。すなわち、従来の均しブレード74’に生じていたスジ状傷77と同様、感光体移動方向下流面74cにおける稜線部74aから所定長さLまでの範囲に微細溝80が設けられている。したがって、微細溝80は、当該当接部分の感光体表面移動方向上流端に上述した微粒子を受け入れる入口をもち、当該当接部分の感光体表面移動方向下流端に当該微細溝80の内部を通った微粒子を通過させる出口をもつ。
【0042】
図8は、感光体1の表面に当接する本実施形態の均しブレード74の当接部分に設けた微細溝80を通るように感光体移動方向に沿って切断して、微細溝80の内部を微粒子が通過する様子を示した説明図である。
本実施形態のように微細溝80を均しブレード74の当接部分に設けておくことで、従来の均しブレード74’の当接部分をすり抜ける際に摺擦して傷つけていた微粒子90,91,92の少なくとも一部は、微細溝80を通ってすり抜けることができる。よって、均しブレード74の当接部分に微粒子のすり抜けによるスジ状傷77が付きにくくなり、スジ状傷77に微粒子90,91,92が蓄積することに起因したスティックスリップ運動の誘発を抑制でき、ブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0043】
しかも、本実施形態における微細溝80の幅は、その上流端80aの幅Waと、その下流端80bの幅Wbと、当該上流端80aと当該下流端80bとの間の任意の箇所の幅Wmとの関係が、Wa≦Wm≦Wbとなるように、設けられている。特に、本実施形態では、均しブレード74の当接部分における微細溝80の上流端80aから下流端80bに向けて、微細溝80の幅が拡がるように設けられている。これにより、微細溝80を通過しようとする微粒子が微細溝80の内部で引っ掛かって微細溝内に蓄積されることが抑制され、更にスティックスリップ運動の誘発を抑制でき、ブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0044】
このとき、本実施形態の微細溝80における下流端80bの幅Wbは、0.5μm以上であるのが好ましい。この幅Wbが0.5μm未満であると、微細溝80の内部を通過してすり抜けることのできる微粒子サイズが小さく過ぎて、本来は通過させたい微粒子の多くが微細溝80を通過できなくなる。
【0045】
なお、
図9(a)に示す微細溝80のように、Wa=Wm=Wbとなるようにして、微細溝80の幅が一定となるように構成してもよい。
また、本実施形態は、Wa≦Wm≦Wbとする微細溝80の構成は、製造誤差等により微細溝80の淵が波打つなどによって、Wa>WmやWm>Wbとなる箇所が局所的に生じたものを排除するものではない。
【0046】
また、微細溝80は、
図7(a)に示すように、感光体表面移動方向に対して直交する方向(幅方向)に、所定間隔をあけて複数設けられている。特に、本実施形態では、均しブレード74の感光体表面との当接部分の幅方向全域にわたって、所定間隔をあけて微細溝80が分布するように設けられている。隣り合う微細溝80間における上流端80aの間隔W’、すなわち、隣り合う微細溝80の上流端80a間に存在する非溝部分の幅W’は、50μm以下であるのが好ましい。この間隔W’が50μmを超えると、隣り合う微細溝80の上流端80a間に存在する非溝部分に、微粒子によるスジ状傷77が生じやすくなり、そのスジ状傷77に微粒子が蓄積してスティックスリップ運動の発生を抑制する効果が低くなる。
【0047】
また、本実施形態における微細溝80の深さは、その上流端80aの深さDaと、その下流端80bの深さDbと、当該上流端80aと当該下流端80bとの間の任意の箇所の深さDmとの関係が、Da≦Dm≦Dbとなるように、設けられている。特に、本実施形態では、均しブレード74の当接部分における微細溝80の上流端80aから下流端80bに向けて、微細溝80の深さが拡がるように設けられている。これにより、微細溝80を通過しようとする微粒子が微細溝80の内部で引っ掛かって微細溝内に蓄積されることが抑制され、更にスティックスリップ運動の誘発を抑制でき、ブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0048】
このとき、本実施形態の微細溝80における下流端80bの深さDbは、0.5μm以上であるのが好ましい。この深さDbが0.5μm未満であると、微細溝80の内部を通過してすり抜けることのできる微粒子サイズが小さく過ぎて、本来は通過させたい微粒子の多くが微細溝80を通過できなくなる。
【0049】
なお、
図9(b)に示す微細溝80のように、Da=Dm=Dbとなるようにして、微細溝80の深さが一定となるように構成してもよい。この場合でも、
図10に示すように、微粒子90,91,92が微細溝80を通ってすり抜けることができ、均しブレード74の当接部分に微粒子のすり抜けによるスジ状傷77が付きにくく、スジ状傷77に微粒子90,91,92が蓄積することに起因したスティックスリップ運動の誘発を抑制でき、ブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
本実施形態は、Da≦Dm≦Dbとする微細溝80の構成は、製造誤差等により微細溝80の淵が波打つなどによって、Da>DmやDm>Dbとなる箇所が局所的に生じたものを排除するものではない。
【0050】
上述した微細溝80に関する幅Wa,Wm,Wbや深さDa,Dm,Dbの数値は、均しブレード74を感光体表面に当接させていない状態で測定される数値である。この測定には、形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X150)により形状測定した結果から求められる。
【0051】
均しブレード74の当接部分に微細溝80を設ける方法としては、例えば、均しブレード74を金型で成形する場合には、その金型内に微細溝80に対応する微細な突起を形成するようにしてもよい。具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを調整し、これに硬化剤を加えて
図11に示すような金型500内に注入し、架橋硬化させた後、常温で熟成することで均しブレード74を形成する場合、その金型内における微細溝80に対応する箇所に、微細な突起501を設ける。
【0052】
そのほか、均しブレード74の当接部分に微細溝80を設ける方法としては、レーザーによる微細溝加工、サンドブラスト加工などの方法を採用することもできる。
【0053】
微細溝80の断面形状(感光体表面移動方向に対して直交する断面の形状)は、特に制限はなく、例えば、
図12に示すような矩形状であってもよいし、
図13に示すような三角形状であってもよいし、
図14に示すような丸みを帯びた形状であってもよいし、
図15に示すような不規則な形状であってもよい。なお、微細溝80が
図13〜
図15に例示するような断面形状であるときの微細溝80の幅Wa,Wm,Wbは、その微細溝80の上端部(開口部)の幅を指す。また、微細溝80が
図13〜
図15に例示するような断面形状であるときの微細溝80の深さDa,Dm,Dbは、その微細溝80の最も深い箇所の深さを指す。
【0054】
次に、本実施形態における効果確認試験について説明する。
図16は、本効果確認試験における条件と評価結果をまとめた表である。
図16に記載のNo.1〜No.16までの均しブレードを用い、均しブレードを感光体1に当接させた状態で感光体1の表面移動距離が75kmに達するまで画像形成を行いながら、ブレード鳴きについて評価を行った。
【0055】
No.1〜No.16の均しブレードにおける微細溝80の断面形状は、いずれも、
図13に示した三角形状のものである。また、No.1〜No.16の均しブレードは、ポリオールとポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを調整し、これに硬化剤を加えて金型内に注入し、架橋硬化させた後、常温で熟成することによって製造した。このときに使用した金型は、
図11に示すような成型用金型500であり、均しブレードの感光体との当接部分に対応した箇所に、それぞれのブレードの微細溝80の条件に応じた突起501を形成したものを使用した。
【0056】
No.1〜No.16の均しブレードにおける微細溝80の深さ方向の形状(a)〜(d)は、
図17(a)〜(d)にそれぞれ対応したものである。具体的には、
図17(a)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bに至るまで、微細溝80の深さが一定であり、Da=Dm=Dbの関係を満たすものである。
図17(b)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bにかけて、微細溝80の深さが連続的に浅くなっており、Da>Dm>Dbの関係を満たすものである。
図17(c)は、微細溝80の上流端80aから微細溝80の感光体表面移動方向中央付近80cにかけて微細溝80の深さが連続的に浅くなっており、そこから微細溝80の下流端80bにかけて微細溝80の深さが連続的に深くなっており、Da>Dm、Dm<Dbの関係を満たすものである。
図17(d)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bにかけて、微細溝80の深さが連続的に深くなっており、Da<Dm<Dbの関係を満たすものである。
【0057】
また、No.1〜No.16の均しブレードにおける微細溝80の幅方向の形状(a)〜(d)は、
図18(a)〜(d)にそれぞれ対応したものである。具体的には、
図18(a)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bに至るまで、微細溝80の幅が一定であり、Wa=Wm=Wbの関係を満たすものである。
図18(b)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bにかけて、微細溝80の幅が連続的に狭くなっており、Wa>Wm>Wbの関係を満たすものである。
図18(c)は、微細溝80の上流端80aから微細溝80の感光体表面移動方向中央付近80cにかけて微細溝80の幅が連続的に狭くなっており、そこから微細溝80の下流端80bにかけて微細溝80の幅が連続的に広くなっており、Wa>Wm、Wm<Wbの関係を満たすものである。
図18(d)は、微細溝80の上流端80aから下流端80bにかけて、微細溝80の幅が連続的に広くなっており、Wa<Wm<Wbの関係を満たすものである。
【0058】
微細溝80の幅Wa,Wm,Wbや深さDa,Dm,Dbは、均しブレード74を感光体表面に当接させていない状態で、形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X150)により形状測定した結果から求めたものである。なお、
図16に示す表において、微細溝80の深さ方向形状が
図17(c)に示す形状である均しブレードにおけるDmの値は、微細溝80の深さが最も浅い箇所80cにおける深さDm’を示す。また、微細溝80の幅方向形状が
図18(c)に示す形状である均しブレードにおけるWmの値は、微細溝80の幅が最も狭い箇所80cにおける幅Wm’を示す。
【0059】
本効果確認試験におけるブレード鳴きの評価は、以下の手順で行った。本効果確認試験に用いる画像形成装置には、
図1に示した複写機100を用い、その感光体周りの構成は、
図2に示したものと同様である。そして、潤滑剤塗布装置7の均しブレード74として、No.1〜No.16の均しブレードを用いた。固形潤滑剤72には、主成分をステアリン酸亜鉛とし、そのほかに窒化ホウ素、アルミナ微粒子を含んだ固形潤滑剤を用いた。固形潤滑剤に含有される、アルミナ微粒子の平均粒径は3μm以下である。
【0060】
トナーには、少なくとも窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水溶液中で架橋及び/または伸張反応させて得られるトナーを用いた。このトナーの平均円形度a(=Lo/L)は0.93〜1.00である。なお、Loはトナーの粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lはトナー粒子の周長を示す。
【0061】
均しブレードのブレードホルダ75の中央に小野測器社製の加速度ピックアップ(型名:NP−3211)を貼り付け、この加速度ピックアップを小野測器社製FFTアナライザ(型名:CF−7200A)でフーリエ変換解析にかけることにより、ブレードホルダ75(均しブレード)の振動を検出した。このとき、電圧レンジを10Vrms、縦軸を加速度m/s
2に設定した。さらに、同じく、均しブレードのブレードホルダ75の中央にJ型熱電対を貼り付け、このJ型熱電対の電圧をキーエンス社製データロガー(型名:GR−3500)で読み取ることにより、ブレードホルダ75の温度を検出した。
【0062】
本効果確認試験では、画像面積率5%のチャートを両面連続通紙することにより、複写機内の温度を43度まで上げていきながら、そのときのブレードホルダ75(均しブレード)の振動を検出した。本効果確認試験は、固形潤滑剤72の消費率(感光体表面移動距離の単位距離当たりに消費される固形潤滑剤の量(重さ))が150mg/km±10mg/kmの範囲で行われた。
【0063】
本効果確認試験におけるブレード鳴きの判断基準は、以下のとおりである。
◎:連続通紙中に振動が2m/s
2に達することがなかった。
○:連続通紙中に2m/s
2〜3m/s
2の範囲の振動が生じた。
△:連続通紙中に3m/s
2を超える振動が生じたが、振動による音は人間が聞き取れない程度であった。
×:連続通紙中に3m/s
2を超える振動が生じ、振動によって人間が聞き取れる程度の音が発生した。
【0064】
図16の表に示すように、微細溝80の幅形状が
図18(a)に示すように一定幅であるNo.1〜No.5を見たとき、微細溝80の深さ形状が
図17(a)であるNo.1と、
図17(d)であるNo.5の均しブレードについては、ブレード鳴き評価が「◎」であった。これにより、微細溝80の深さ形状がDa≦Dm≦Dbの関係を満たすことで、ブレード鳴きが抑制されることが確認された。
【0065】
また、No.2の均しブレード及びNo.3の均しブレードは、いずれも、微細溝80の深さ形状が
図17(b)であるが、No.2の均しブレードについてのブレード鳴き評価は「◎」である一方、No.3の均しブレードについてのブレード鳴き評価は「△」である。これらの均しブレードのような深さ形状の微細溝80であっても、微粒子は微細溝80を通過して抜ける。ただし、微細溝80の下流端付近の深さが浅いため、その深さが浅すぎると、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に多少は蓄積し、均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数がやや高まる。
【0066】
No.2の均しブレードは、微細溝80の下流端の深さDbが0.5μmであるため、その深さが十分に深く、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に蓄積せず、ブレード鳴き評価が「◎」であったものと考えられる。一方、No.3の均しブレードは、微細溝80の下流端の深さDbが0.2μmであるため、その深さが浅すぎて、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に多少蓄積し、ブレード鳴き評価が「△」になったものと考えられる。
【0067】
したがって、微細溝80の深さ形状が
図17(b)に示すようにDa>Dbのような関係であっても、Db≧0.5μmであれば、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に蓄積せず、ブレード鳴きを抑制できることが確認される。
【0068】
No.4の均しブレードは、微細溝80の深さ形状が
図17(c)であり、ブレード鳴き評価が「○」である。No.4の均しブレードも、微粒子は微細溝80を通過して抜けるものの、微細溝80の中央付近の深さが浅いため、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の中央付近に僅かに蓄積し、均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数が僅かに高まったものと考えられる。
【0069】
次に、微細溝80の深さ形状が
図17(a)に示すように一定深さであるNo.1及びNo.6〜No.9を見たとき、微細溝80の幅形状が
図18(a)であるNo.1と、
図18(d)であるNo.9の均しブレードについては、ブレード鳴き評価が「◎」であった。これにより、微細溝80の深さ形状がWa≦Wm≦Wbの関係を満たすことで、ブレード鳴きが抑制されることが確認された。
【0070】
また、No.6の均しブレード及びNo.7の均しブレードは、いずれも、微細溝80の幅形状が
図18(b)であるが、No.6の均しブレードについてのブレード鳴き評価は「◎」である一方、No.7の均しブレードについてのブレード鳴き評価は「△」である。これらの均しブレードのような幅形状の微細溝80であっても、微粒子は微細溝80を通過して抜ける。ただし、微細溝80の下流端付近の幅が浅いため、その幅が狭すぎると、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に多少は蓄積し、均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数がやや高まる。
【0071】
No.6の均しブレードは、微細溝80の下流端の幅Wbが0.5μmであるため、その幅が十分に広く、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に蓄積せず、ブレード鳴き評価が「◎」であったものと考えられる。一方、No.6の均しブレードは、微細溝80の下流端の幅Wbが0.2μmであるため、その幅が狭すぎて、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に多少蓄積し、ブレード鳴き評価が「△」になったものと考えられる。
【0072】
したがって、微細溝80の幅形状が
図18(b)に示すようにWa>Wbのような関係であっても、Wb≧0.5μmであれば、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の下流端付近に蓄積せず、ブレード鳴きを抑制できることが確認される。
【0073】
No.8の均しブレードは、微細溝80の幅形状が
図18(c)であり、ブレード鳴き評価が「○」である。No.8の均しブレードも、微粒子は微細溝80を通過して抜けるものの、微細溝80の中央付近の深さが浅いため、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が微細溝80の中央付近に僅かに蓄積し、均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数が僅かに高まったものと考えられる。
【0074】
次に、微細溝80の深さ形状が
図17(a)に示すように一定深さであり、かつ、微細溝80の幅形状が
図18(a)に示すように一定幅であるNo.1及びNo.10〜No.12を見たとき、隣り合う微細溝80の間隔W’が100μm以下であれば、ブレード鳴きを抑制できることが確認される。W’≧200μmであるNo.12の均しブレードについては、ブレード鳴き評価が「△」であったが、その均しブレードの感光体表面との当接部分を確認したところ、隣り合う微細溝80間の非溝部分にスジ状傷77が発生していた。そのため、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子がスジ状傷77に蓄積して、均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数が高まり、ブレード鳴き評価が「△」になったものと考えられる。
【0075】
次に、微細溝80の深さ形状が
図17(a)に示すように一定深さであり、かつ、微細溝80の幅形状が
図18(a)に示すように一定幅であるNo.1及びNo.13〜No.16を見たとき、微細溝80の長さが、均しブレードの感光体表面との当接部分の長さLよりも長ければ、ブレード鳴きを抑制できることが確認される。
【0076】
No.14〜No.16の均しブレードは、微細溝80の長さが均しブレードの感光体表面との当接部分の長さLよりも短いため、微細溝80内に進入した微粒子が微細溝80を通過することができない。そのため、微細溝80の下流端から感光体表面移動方向下流側には、微細溝80内に進入した微粒子のすり抜けによって傷が生じる。この傷は、従来のスジ状傷77と同様、感光体表面移動方向下流端付近で幅が狭く深さが浅いものなので、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛等の微粒子が、微細溝80の下流端から延びた傷の下流端付近に蓄積し、従来と同様に均しブレードと感光体表面との間の摩擦係数を高め、ブレード鳴きが発生したものと考えられる。
【0077】
なお、本実施形態では、像担持体に表面に当接されるブレード部材として、潤滑剤塗布装置7の均しブレード74を例に挙げて説明したが、これに限らず、感光体1の表面に当接してトナー等の付着物を堰き止めて除去回収するクリーニングブレード61であっても同様である。また、像担持体である中間転写ベルト41に当接されるブレード部材についても同様である。更に、二次転写ローラ51のようにトナー(像)が付着し得るもの(像担持体)に当接されるブレード部材(二次転写部材クリーニング装置56のクリーニングブレード等)についても同様である。
【0078】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体1等の像担持体の表面に当接される均しブレード74等のブレード部材において、前記像担持体の表面との当接部分に、該像担持体の表面に付着する微粒子90,91,92が通過可能な微細溝80が設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、微粒子がブレード部材における像担持体表面との当接部分に設けた微細溝を通過することができる。これにより、当該微粒子がブレード部材を傷つけながらすり抜ける事態が軽減され、従来生じていたスジ状傷の発生が抑制される結果、ブレード部材と像担持体表面の間の摩擦力を増加させる微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合が抑制される。
【0079】
(態様B)
前記態様Aにおいて、前記微細溝は、前記当接部分の像担持体表面移動方向上流端に前記像担持体の表面に付着する微粒子を受け入れる入口をもち、前記当接部分の像担持体表面移動方向下流端に該微細溝の内部を通った微粒子を通過させる出口をもつことを特徴とする。
これによれば、微粒子がブレード部材を傷つけることなく微細溝の内部に入り込むことができ、また、微粒子がブレード部材を傷つけることなく微細溝の内部から出ることができるので、微粒子がブレード部材を傷つけながらすり抜ける事態が更に軽減される。
【0080】
(態様C)
前記態様A又はBにおいて、少なくとも前記当接部分は弾性材料で形成されていることを特徴とする。
当接部分が弾性材料で形成されたブレード部材は、微粒子のすり抜けによりスジ状傷が生じやすいが、本態様によれば、そのスジ状傷の発生が抑制でき、ブレード部材と像担持体表面の間の摩擦力を増加させる微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合が抑制される。
【0081】
(態様D)
前記態様A〜Cのいずれかの態様において、前記微細溝は、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する方向に、複数設けられていることを特徴とする。
これによれば、より多くの微粒子を微細溝により通過させることができ、従来生じていたスジ状傷の発生をより効果的に抑制できる。
【0082】
(態様E)
前記態様Dにおいて、前記当接部分における前記微細溝間に存在する非溝部分の表面移動方向に対して直交する幅方向の長さW’が100μm以下であることを特徴とする。
これによれば、上述した効果確認試験で確認されたように、微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0083】
(態様F)
前記態様A〜Eのいずれかの態様において、前記微細溝は、像担持体表面移動方向に沿って延びており、前記当接部分における像担持体表面移動方向上流端の深さDaと、該当接部分における像担持体表面移動方向下流端の深さDbと、該上流端と該下流端との間の任意の箇所の深さDmとの関係が、Da≦Dm≦Dbであることを特徴とする。
これによれば、上述した効果確認試験で確認されたように、微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0084】
(態様G)
前記態様A〜Fのいずれかの態様において、前記微細溝は、像担持体表面移動方向に沿って延びており、前記当接部分における像担持体表面移動方向下流端の深さDbと、該当接部分における像担持体表面移動方向上流端と該下流端との間の任意の箇所の深さDmとが、0.5μm以上であることを特徴とする。
これによれば、上述した効果確認試験で確認されたように、微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0085】
(態様H)
前記態様A〜Gのいずれかの態様において、前記微細溝は、像担持体表面移動方向に沿って延びており、前記当接部分における像担持体表面移動方向上流端の幅Waと、該当接部分における像担持体表面移動方向下流端の幅Wbと、該上流端と該下流端との間の任意の箇所の幅Wmとの関係が、Wa≦Wm≦Wbであることを特徴とする。
これによれば、上述した効果確認試験で確認されたように、微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0086】
(態様I)
前記態様A〜Hのいずれかの態様において、前記微細溝は、像担持体表面移動方向に沿って延びており、前記当接部分における像担持体表面移動方向下流端の幅Wbと、該当接部分における像担持体表面移動方向上流端と該下流端との間の任意の箇所の幅Wmとが、0.5μm以上であることを特徴とする。
これによれば、上述した効果確認試験で確認されたように、微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合を抑制できる。
【0087】
(態様J)
前記態様A〜Iのいずれかの態様において、前記微細溝は、像担持体表面移動方向に沿って延びており、像担持体表面移動方向の長さが100μm以上であることを特徴とする。
ブレード部材の像担持体表面との当接部分における像担持体表面移動方向長さは、通常、100μm未満であるので、本態様によれば、微細溝の像担持体表面移動方向長さを、ブレード部材の像担持体表面との当接部分における像担持体表面移動方向長さよりも長くできる。これにより、微細溝内に進入した微粒子が微細溝を安定して通過することができ、従来生じていたスジ状傷の発生が抑制される。
【0088】
(態様K)
感光体1等の像担持体の表面に均しブレード74等のブレード部材が当接した複写機100等の画像形成装置において、前記ブレード部材として、前記態様A〜Jのいずれかの態様に係るブレード部材を用いたことを特徴とする。
これによれば、ブレード部材と像担持体表面の間の摩擦力を増加させる微粒子がスジ状傷内に蓄積することに起因したブレード鳴き等の不具合が抑制された画像形成装置を提供できる。
【0089】
(態様L)
前記態様Kにおいて、前記ブレード部材は、前記像担持体の表面に当接する該ブレード部材の稜線部74aを挟んだ2つの面74b,74cのうち像担持体表面移動方向下流側の面74cを前記像担持体の表面に当接させるように配置されていることを特徴とする。
これによれば、像担持体の表面に当接するブレード部材の稜線部74aを形成する角度が鈍角となり、ブレード部材のスティックスリップ運動を抑制できる。
【0090】
(態様M)
前記態様K又はLにおいて、前記ブレード部材よりも像担持体表面移動方向上流側で、前記像担持体の表面に潤滑剤を供給する発泡ウレタンローラ71、固形潤滑剤72及び加圧バネ73等の潤滑剤供給手段を有することを特徴とする。
本態様によれば、潤滑剤に含まれる微粒子が劣化により潤滑性を失っても、その微粒子がスジ状傷内に蓄積してブレード鳴き等の不具合を引き起こすことが抑制される。
【0091】
(態様N)
前記態様Mにおいて、前記潤滑剤は、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤と無機微粒子とを含み、該無機微粒子の平均粒径が3μm以下であることを特徴とする。
ラメラ結晶をもつ物質は、両親媒性分子が自己組織化した層構造を有しており、せん断力が加わると層間に沿って結晶が割れて滑りやすい。そのため、潤滑性が優れており、その中でもステアリン酸亜鉛は保護性が優れている。しかし、ステアリン酸亜鉛などは帯電などによるハザードで劣化してしまうと、潤滑性が著しく減少してしまうが、帯電の影響を受けにくいBNなどの無機潤滑剤を合わせて入れることで、帯電に対する潤滑性の低下を防ぐことができる。また、無機潤滑剤は感光体などの像担持体の表面に固着してしまうフィルミングが発生してしまい、そのことによりスジ状の異常画像が出てしまうことがあるため、無機潤滑剤を研磨するために無機微粒子を含有する。また、無機微粒子の平均粒径が3μmを超えると、ブレード部材の像担持体との当接部分に無機微粒子による傷が付きやすいうえ、像担持体の表面を傷つけてしまい、その傷に無機潤滑剤やトナーの外添剤が詰まってしまってフィルミングを誘発する。
【0092】
(態様O)
前記態様K〜Nのいずれかの態様において、前記ブレード部材よりも像担持体表面移動方向上流側で、前記像担持体の表面に当接するクリーニングブレード61等の別のブレード部材を有することを特徴とする。
像担持体の表面に当接するブレード部材が1つだけであると、1つのブレード部材で、像担持体表面に付着する付着物のクリーニング機能、潤滑剤の均し機能など、複数の機能を果たす必要が出てくる。特に、当該ブレード部材が潤滑剤の均し機能を果たす場合、当該ブレード部材にトナーが進入すると、当該ブレード部材に磨耗や傷が生じやすくなり、潤滑剤の均し機能が阻害されるおそれがある。本態様によれば、当該ブレード部材と前記別のブレード部材とで機能を分担でき、1つのブレード部材で複数の機能を果たす場合よりも、それぞれの機能を適切に果たすことができる。