(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3工程において、前記処理室内への前記第2のガスの供給を開始する第1の開始タイミングは、該処理室内への前記プラズマ生成用高周波電力の供給を開始する第2の開始タイミングの以後の期間内にある、
請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高詳細な配線パターンを形成する場合には、例えば、Low−k膜に対するエアギャップ工程においてエッチャントを添加することによって側面への成膜レートを抑制する技術が知られているが、複数のエッチング工程を通してパターン形状が十分に維持されるよう層間には十分なエッチングレートの差が要求される場合がある。しかしながら、エッチングレートの差を生じさせる層を、予め画定された高詳細な配線パターンに沿って形成する場合には、複雑なプロセスが必要となり得る。パターン形状を十分に維持しつつ当該形状に沿った層をパターン上に容易に積層する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、被処理体に対する成膜方法が提供される。被処理体は、主面と溝部とを備え、溝部は主面に設けられる。当該方法は、プラズマ処理装置の処理室内に被処理体を収容する第1工程と、第1工程の後に、処理室内に第1のガスの供給を開始する第2工程と、第2工程の後に、第2のガスとプラズマ生成用高周波電力とを処理室内に供給して第2のガスを含む処理室内のガスによるプラズマを処理室内において生成する処理を開始する第3工程と、を備え、第1のガスは、水素原子を含まない酸化剤を含有するガスであり、第2のガスは、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有するガスであり、ケイ素および酸素を含有する膜が、溝部を除く被処理体の主面上に選択的に形成される。
【0006】
上記方法において、少なくとも以下の効果が一例として奏され得る。まず発明者は、鋭意研究の結果、水素原子を含まない酸化剤を含有する第1のガスと、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有する第2のガスとを用いてプラズマを生成することによって、被処理体の主面6にシリコンおよび酸素を含有する膜が形成され、主面に設けられた溝部の表面には当該膜がほとんど形成されないことを見い出した。このように、上記方法によれば、水素原子を含まない酸化剤を含有する第1のガスと、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有する第2のガスとを用いてプラズマを生成することのみによって、パターン形状を画定する被処理体の溝部を除く主面に対して膜を選択的に形成することができる。従って、パターン形状を十分に維持しつつ当該形状に沿った層をパターン上に容易に積層することが可能となる。
【0007】
一実施形態において、第3工程の実行時における被処理体の温度は、摂氏450度未満であることができる。被処理体の温度が摂氏450度以上の場合、被処理体の主面に対する膜の形成が困難となる。
【0008】
一実施形態において、主面と溝部の側面とは、絶縁性材料を含有することができる。このように、上記方法は、被処理体の主面と溝部の側面とが絶縁性材料の場合に適用され得る。
【0009】
一実施形態において、第2のガスは、Si
xF
y(x,yは1以上の整数)の組成を有する一または複数の種類のガスを含有し、例えばSiF
4を含有するガス、または、SiF
4とSi
2F
6とを共にを含有するガスである場合、第1のガスは、O
2、O
3、N
xO
y(x,yは1以上の整数)の何れかを含有するガスである場合、第2のガスは、希ガスを更に含有する場合の何れの場合も可能である。
【0010】
一実施形態において、第3工程において、処理室内への第2のガスの供給を開始する第1の開始タイミングは、処理室内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を開始する第2の開始タイミングの以後の期間内にある。第2工程の開始から第3工程の開始前までの期間内において処理室内における圧力調整が第1のガスの供給によって行われた後に、第3工程において、プラズマ生成用高周波電力の供給の開始によって処理室内においてプラズマが安定的に生成されつつ処理室内への第2のガスの供給が開始されることによって、成膜が開始される。特に、第1の開始タイミングと第2の開始タイミングとが同時である場合、第1のガスから生成される酸素プラズマによる被処理体の表面への影響が十分に低減され、被処理体の表面において酸化が十分に抑制され得る。
【0011】
一実施形態において、第3工程の後に、プラズマの生成を終了する第4工程をさらに備える。第4工程において、処理室内への第2のガスの供給を終了する第1の終了タイミングは、処理室内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を終了する第2の終了タイミングの以後であって且つ処理室内への第1のガスの供給を終了する第3の終了タイミングよりも前の期間内にある、または、第2の終了タイミングよりも後であって且つ第3の終了タイミングの以前の期間内にある。第2の終了タイミングにおいてプラズマを失火させ成膜を終了させた後に、第2のガスの供給および第1のガスの供給を終了させる。第1のガスの供給を終了する第3の終了タイミングが第2のガスの供給を終了する第2の終了タイミングの以後にあるので、プラズマ失火後の処理室内が第1のガスによって良好にパージされ得る。
【0012】
一実施形態において、第1工程において、処理室の表面は、シリコンとフッ素とを含有するプリコート膜で覆われている部分を有することができる。このように、膜の形成を行う処理室の内側の表面に予めシリコンとフッ素とを含有するプリコート膜が形成されている場合には、シリコンとフッ素とを含有する第2のガスだけではなく、第2のガスと当該プリコート膜から分離したシリコンおよびフッ素の各原子とによって、プラズマの生成がより効果的に行われ得る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、パターン形状を十分に維持しつつ当該形状に沿った層をパターン上に容易に積層する技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一実施形態の方法を示す流れ図である。
図1に示す一実施形態の方法MTは、被処理体(以下、「ウエハ」ということがある)に対する成膜方法である。一実施形態の方法MTにおいて、一連の工程を単一のプラズマ処理装置を用いて実行することが可能である。
【0016】
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。
図2には、被処理体に対する成膜方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。
図2に示すように、プラズマ処理装置10は、誘導結合プラズマエッチング装置である。
【0017】
プラズマ処理装置10は、処理容器1を備える。処理容器1は、気密に設けられている。処理容器1は、導電性材料を含み、例えば、処理容器1の内壁面は、陽極酸化処理されたアルミニウム等の材料を含み得る。処理容器1は、分解可能に組み立てられており、接地線1aによって接地されている。処理容器1は、誘電体壁2によって、上下にアンテナ室3と処理室4とに区画されている。誘電体壁2は、処理室4の天井壁を構成している。誘電体壁2は、例えばAl
2O
3等のセラミックス、石英等で構成されている。
【0018】
誘電体壁2の下側部分には、処理ガス供給用のシャワー筐体11が嵌め込まれている。シャワー筐体11は、十字状に設けられており、誘電体壁2を下から支持する。誘電体壁2を支持するシャワー筐体11は、複数本のサスペンダ(図示せず)によって、処理容器1の天井に吊されている。
【0019】
シャワー筐体11は、金属等の導電性材料を含み得る。シャワー筐体11の内面は、汚染物が発生しないように、例えば陽極酸化処理されたアルミニウム等を含み得る。シャワー筐体11には、誘電体壁2に沿って延びるガス流路12が形成されており、ガス流路12には、サセプタ22に向かって延びる複数のガス供給孔12aが連通している。誘電体壁2の上面中央には、ガス流路12に連通するようにガス供給管20aが設けられている。ガス供給管20aは、誘電体壁2から処理容器1の外側に延びており、処理ガス供給源およびバルブシステム等を含む処理ガス供給系20に接続されている。プラズマ処理においては、処理ガス供給系20から供給される処理ガスは、ガス供給管20aを介してシャワー筐体11内に供給され、シャワー筐体11の下面(処理室4に向いている面)のガス供給孔12aから処理室4内へ吐出される。
【0020】
処理容器1におけるアンテナ室3の側壁3aと処理室4の側壁4aとの間には内側に突出する支持棚5が設けられており、支持棚5の上に誘電体壁2が載置される。
【0021】
アンテナ室3内には誘電体壁2の上に誘電体壁2に面するように高周波アンテナ13が配設されている。高周波アンテナ13は、絶縁部材からなるスペーサ13aによって、誘電体壁2から例えば50[mm]以下の範囲で離間している。アンテナ室3の中央部付近には、誘電体壁2の上面に垂直な方向に(鉛直方向に)延びる4つの給電部材16が設けられており、4つの給電部材16には整合器14を介して高周波電源15が接続されている。給電部材16は、ガス供給管20aの周囲に配置されている。
【0022】
プラズマ処理中において、高周波電源15からは、誘導電界形成用の例えば13.56[MHz]程度の周波数のプラズマ生成用高周波電力が高周波アンテナ13を介して処理室4内に供給される。このように高周波電源15からプラズマ生成用高周波電力が処理室4内に供給されることによって、処理室4内に誘導電界が形成され、この誘導電界によって、シャワー筐体11から処理室4内に供給される処理ガスのプラズマが生成される。なお、シャワー筐体11は、十字状に設けられており、高周波アンテナ13からの高周波の電力の処理室4内への供給は、シャワー筐体11が金属であっても妨げられない。
【0023】
処理室4内の下方(誘電体壁2の反対側)には、サセプタ22(載置台)が設けられている。サセプタ22は、誘電体壁2を挟んで高周波アンテナ13と対向する。サセプタ22には、被処理体であるウエハWが載置される。サセプタ22は、導電性材料を含み得る。サセプタ22の表面は、例えば陽極酸化処理、または、アルミナ溶射されたアルミニウムを含み得る。サセプタ22に載置されたウエハWは、静電チャック(図示せず)によってサセプタ22に吸着保持される。
【0024】
サセプタ22は、絶縁体枠24内に収納され、支柱25に支持される。支柱25は、中空の構造を備える。サセプタ22を収納する絶縁体枠24と処理容器1の底部(処理容器1のうち支柱25が設けられている側)との間には、支柱25を気密に包囲するベローズ26が配設されている。処理室4の側壁4aには、ウエハWを搬入出するための搬入出口27aと、搬入出口27aを開閉するゲートバルブ27とが設けられている。
【0025】
サセプタ22内には、ウエハWの温度を制御することを目的として、セラミックヒータ等の加熱手段および冷媒流路等を備える温度制御機構と、温度センサーとが設けられている(いずれも図示せず)。当該温度制御機構、温度センサ、部材に対する配管および配線は、いずれも支柱25の内部を通して処理容器1外に導出される。
【0026】
処理室4の底部(処理室4のうち支柱25が設けられている側)には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。排気装置30によって、処理室4が排気され、プラズマ処理中において、処理室4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33[Pa]程度の気圧)に設定され、維持される。
【0027】
高周波アンテナ13は、四つの給電部(例えば、給電部41、給電部43等)を有する。四つの給電部は、給電部材16に接続される。四つの給電部は、高周波アンテナ13の中心の周囲において、例えば90度程度ずつ離間している。四つの給電部のそれぞれからは2本のアンテナ線が外側に延びており、それぞれのアンテナ線は、コンデンサ18を介して接地される。
【0028】
プラズマ処理装置10は、制御部Cntを備える。制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。
【0029】
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号によって、処理ガス供給系20から供給されるガスの選択および流量と、排気装置30の排気と、高周波電源15からの電力供給と、サセプタ22の温度と、を制御することが可能である。本明細書において開示される被処理体に対する成膜方法(方法MT)の各工程(
図1に示す工程S1〜S4)は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることによって、実行され得る。
【0030】
再び
図1を参照し、方法MTについて詳細に説明する。以下において、方法MTの実施にプラズマ処理装置10が用いられる例について説明を行う。以下の説明においては、
図3の(a)部、
図3の(b)部、および
図4を参照する。
図3の(a)部は、
図1に示す方法MTの各工程の実行前の被処理体の状態を模式的に示す断面図である。
図3の(b)部は、
図1に示す方法MTの各工程の実行後の被処理体の状態を模式的に示す断面図である。
図4は、
図1に示す方法MTの各工程で実施される種々の処理の実行タイミングを示す図である。
【0031】
図1に示す方法MTは、方法MTの主要な工程として、工程S1〜S4を備える。工程S1(第1工程)は、プラズマ処理装置10の処理容器1の処理室4内にウエハWを収容する。なお、工程S1の実施前において、工程S1の実施に用いる処理室4の内側の表面がシリコンとフッ素とを含有するプリコート膜で覆われている部分を有し得る場合がある。
図5は、処理室4の内側の表面にプリコート膜PCが形成されている状態を模式的に示す。
図5には、処理室4の内側の表面の全体に形成されているプリコート膜PCが示されているが、プリコート膜PCは、処理室4の内側の表面の一部に形成され得る。プリコート膜PCは、シリコンとフッ素とを含有する膜である。プリコート膜PCにおいて、シリコンの占める割合は、フッ素の占める割合の約1倍以下の程度であり得る。プリコート膜PCの厚みは、略均一であるが、平均して50〜100[nm]以上である。
【0032】
図4には、処理室4内への第1のガスの供給を開始する(第1のガスの供給をOFFからONにする)タイミング(時刻T1という)、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を開始する(プラズマ生成用高周波電力の供給をOFFからONにする)タイミング(第2の開始タイミングであり、時刻T2という)、処理室4内への第2のガスの供給を開始する(第2のガスの供給をOFFからONにする)タイミング(第1の開始タイミングであり、時刻T3という)、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を終了する(プラズマ生成用高周波電力の供給をONからOFFにする)タイミング(第2の終了タイミングであり、時刻T4という)、処理室4内への第2のガスの供給を終了する(第2のガスの供給をONからOFFにする)タイミング(第1の終了タイミングであり、時刻T5という)、処理室4内への第1のガスの供給を終了する(第1のガスの供給をONからOFFにする)タイミング(第3の終了タイミングであり、時刻T6という)が示されている。
【0033】
図4において、グラフG1は、方法MTにおいて、処理室4内への第1のガスの供給の開始タイミングおよび終了タイミングを示す。処理室4内への第1のガスの供給(ON状態)は、時刻T1から時刻T6に至るまで継続される。時刻T6は、時刻T1の後の時刻である。
図4において、グラフG2は、方法MTにおいて、処理室4内への第2のガスの供給の開始タイミングおよび終了タイミングを示す。処理室4内への第2のガスの供給(ON状態)は、時刻T3から時刻T5に至るまで継続される。時刻T5は、時刻T3の後の時刻である。
図4において、グラフG3は、方法MTにおいて、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給の開始タイミングおよび終了タイミングを示す。処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給(ON状態)は、時刻T2から時刻T4に至るまで継続される。時刻T4は、時刻T2の後の時刻である。
【0034】
工程S1において処理室4内に収容されるウエハWは、
図3の(a)部に示すように、基体部BAと主面6と表層部SUと溝部TRとを備える。ウエハWは、複数の表層部SUと複数の溝部TRとを備える。主面6において、表層部SUと溝部TRとは交互に設けられている。表層部SUと溝部TRとは、主面6に設けられている。表層部SUの端面SU1は、ウエハWの主面6において、パターン形状を画定している。
【0035】
溝部TRの深さDP(表層部SUの高さ)は、10〜500[nm]程度であり得る。表層部SUの幅WD1は、10〜250[nm]程度であり得る。溝部TRの幅WD2は、10〜250[nm]程度であり得る。
【0036】
主面6(表層部SUの端面SU1)と溝部TRの側面TR1とは、共に、絶縁性材料によって構成される。当該絶縁性材料は、例えば、低誘電率の材料であり得る。当該絶縁性材料は、より具体的には、アモルファスカーボンシリコン、シリコン等であり得る。例えば、表層部SUは、端面SU1(主面6)および表層部SUの側面(溝部TRの側面TR1)を含めて、当該絶縁性材料によって構成されることができ、基体部BAは、Cu等の金属によって構成されることができる。
【0037】
基体部BAと表層部SUとは、
図3の(a)部および
図3の(b)部に示すように、互いに異なる材料によって構成された別体であり得るが、これに限らず、基体部BAと表層部SUとは、同材料から構成された一体であることもできる。基体部BAと表層部SUとが同材料から構成された一体の場合、主面6(端面SU1)と溝部TRの表面(側面TR1および底面TR2)とは、共に、絶縁性材料(例えば低誘電率の材料)によって構成され得る。
【0038】
工程S1に引き続き、工程S2(第2工程)において、処理室4内の圧力をプロセス圧力に調節する。具体的には、処理室4内に第1のガスの供給が開始されることによって、処理室4内の圧力が調節される。
図4のグラフG1に示すように、工程S2において、時刻T1に、処理室4内への第1のガスの供給を開始する(第1のガスの供給をOFFからONにする)。
【0039】
第1のガスは、水素原子を含まない酸化剤を含有するガスであり得る。第1のガスは、特に、水素原子を含まない酸化剤のうちO
2、O
3、N
xO
y(x,yは1以上の整数)の何れかを含有するガスであり得る。より具体的には、第1のガスは、水素原子を含まない酸化剤のうち、O
2ガス、O
3ガス、N
xO
yガス(x,yは1以上の整数)の何れかであるか、または、これらのガスの何れかを含有する混合ガスであり得る。
【0040】
工程S2に引き続き、工程S3(第3工程)において、プラズマCVD(CVD:Chemical Vapor Deposition)を用いて、ウエハWの主面6(端面SU1)に膜部MEを選択的に形成する。工程S3において、第2のガスとプラズマ生成用高周波電力とを処理室4内に供給して第2のガスを含む処理室4内のガスによるプラズマを処理室4内において生成する処理を開始する。工程S3において、溝部TRの表面(側面TR1および底面TR2)には膜は形成されずに、ウエハWの主面6(端面SU1)に膜部MEが形成される。膜部MEの厚みTHは、0〜100[nm]の程度である。
【0041】
工程S3において用いられる第2のガスは、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有するガスであり得る。この場合、工程S3で生成されるプラズマにおいて、デポジション種の元素はケイ素(シリコン)であり、エッチング種の元素はフッ素である。第2のガスは、Si
xF
y(x,yは1以上の整数)の組成を有する一または複数の種類のガスを含有するガスであって、例えばSiF
4を含有するガス、または、SiF
4とSi
2F
6とを共にを含有するガス等であり得る。工程S3における第2のガスの流量は、比較的に少なく、例えば1〜50[sccm]程度の範囲内にある場合が考えられ得る。なお、第2のガスが更に希ガス(例えば、He,Ar、Xe等)を含む場合も一実施形態に係る方法MTに適用され得る。
【0042】
工程S3において、処理室4内への第2のガスの供給を開始する時刻T3は、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を開始する時刻T2の以後の期間内にある。すなわち、時刻T1の値をt1、時刻T2の値をt2、時刻T3の値をt3とすると、t1,t2,t3は、t1<t2≦t3の条件を満たす。
【0043】
工程S3の処理によって、
図3の(b)部に示すように、膜部MEは、ウエハWの主面6(端面SU1)上にのみ形成され、溝部TRの表面(側面TR1および底面TR2)にはほとんど形成されない。このように、工程S3によって、膜部MEは、ウエハWの主面6(端面SU1)上に、換言すれば溝部TRを除くウエハWの主面6上に、選択的に形成される。
【0044】
工程S2において用いられる第1のガスが例えばO
2ガスまたはO
3ガスであって、工程S3において用いられる第2のガスが、SiF
4ガス、または、SiF
4およびSi
2F
6を含有する混合ガスであり、工程S3において生成されるプラズマに含まれるエッチング種の元素がフッ素の場合、膜部MEは、シリコンと酸素とを含み、例えばSiOF膜であり得る。
【0045】
工程S3の実行時において、ウエハWの温度は、摂氏450度未満である。ウエハWの温度が摂氏450度以上の場合、ウエハWの主面6(端面SU1)に対する膜部MEの形成が困難となる。
【0046】
工程S3に引き続き、工程S4(第4工程)において、工程S3で開始した処理室4内におけるプラズマの生成を終了する。工程S4において、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を終了した後に、処理室4内への第1のガスの供給と、処理室4内への第2のガスの供給とを終了する。処理室4内への第2のガスの供給を終了する時刻T5は、処理室4内へのプラズマ生成用高周波電力の供給を終了する時刻T4の以後であって且つ処理室4内への第1のガスの供給を終了する時刻T6よりも前の期間内にある、または、時刻T4よりも後であって且つ時刻T6の以前の期間内にある。すなわち、時刻T4の値をt4、時刻T5の値をt5、時刻T6の値をt6とすると、t4,t5,t6は、t4≦t5<t6の条件、または、t4<t5≦t6の条件を満たす。
【0047】
以上説明した一実施形態に係る方法MTによれば、少なくとも以下の効果が一例として奏され得る。まず発明者は、鋭意研究の結果、水素原子を含まない酸化剤を含有する第1のガスと、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有する第2のガスとを用いてプラズマを生成することによって、ウエハWの主面6(端面SU1)にシリコンおよび酸素を含有する膜部MEが形成され、主面6に設けられた溝部TRの表面(側面TR1および底面TR2)には当該膜がほとんど形成されないことを見い出した。このように、方法MTによれば、水素原子を含まない酸化剤を含有する第1のガスと、ケイ素原子およびフッ素原子を含み水素原子を含まない化合物を含有する第2のガスとを用いてプラズマを生成することのみによって、パターン形状を画定するウエハWの溝部TRを除く主面6(表層部SUの端面SU1)に対して膜部MEを選択的に形成することができる。従って、パターン形状を十分に維持しつつ当該形状に沿った層をパターン上に容易に積層することが可能となる。
【0048】
また、一実施形態に係る方法MTは、主面6(端面SU1)と溝部TRの側面TR1とが絶縁性材料の場合に適用され得る。
【0049】
工程S2の開始から工程S3の開始前までの期間内(時刻T1の以後、且つ、時刻T2より前の期間内)において処理室内における圧力調整が第1のガスの供給によって行われた後に、工程S3においてプラズマ生成用高周波電力の供給の開始(時刻T2)によって処理室4内においてプラズマが安定的に生成されつつ処理室4内への第2のガスの供給が開始(時刻T3)されることによって、成膜が開始される。特に、時刻T3と時刻T2とが同時である場合、第1のガスから生成される酸素プラズマによるウエハWの表面への影響が十分に低減され、ウエハWの表面において酸化が十分に抑制され得る。
【0050】
また、時刻T4においてプラズマを失火させ成膜を終了させた後に、第2のガスの供給および第1のガスの供給を終了させる。第1のガスの供給を終了する時刻T6が第2のガスの供給を終了する時刻T5の以後にあるので、プラズマ失火後(時刻T5以後)の処理室内が第1のガスによって良好にパージされ得る。
【0051】
また、膜部MEの形成が工程S1から開始される前に、膜部MEの形成を行う処理室4の内側の表面に予めシリコンとフッ素とを含有するプリコート膜PCが形成されている場合には、シリコンとフッ素とを含有する第2のガスだけではなく、第2のガスと当該プリコート膜PCから分離したシリコンおよびフッ素の各原子とによって、プラズマの生成がより効果的に行われ得る。
【0052】
(実施例1)
工程S2および工程S3は、例えば以下の条件で実施され得る。なお、以下の条件は、処理室4の内側の表面にプリコート膜PCが形成されていない場合の条件である。
・処理室4内の圧力の値[Pa]:0.67〜13.3[Pa]
・高周波電源15の周波数の値[MHz]および高周波電力の値[ワット]:13.56[MHz]、0〜2000[ワット]
・処理ガス:O
2ガス(第1のガス)、SiF
4ガス(第2のガス)
【0053】
(実施例2)
工程S1で用いられる処理室4の内側の表面には、シリコンとフッ素とを含有するプリコート膜PCが形成されている場合がある。プリコート膜PCの膜厚は約100[nm]以下である。またプリコート膜PCの形成場所は処理室4内のほぼ全面である。
【0054】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。