(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、写像投影方式による電子線検査装置において、特に大電流ビームを利用する場合には、空間電荷効果による分解能の劣化を抑制するために、電子光学系の光路長は短いほうが望ましいものの、光路長を短くするために、ウィーンフィルタと磁界レンズとを近づけて設置すると、磁界レンズからの漏洩磁場がウィーンフィルタの内部に侵入することがある。
【0007】
また、電子線検査装置の周囲に別の装置が設置されている場合には、この装置から発生する外乱磁場がウィーンフィルタの内部に侵入することがある。
【0008】
そして、漏洩磁場や外乱磁場がウィーンフィルタの内部に侵入すると、電子ビームを直進させるための電場と磁場との関係(ウィーン条件)が崩れるため、光軸が曲がったり、分解能が劣化するなど、光学性能に悪影響がある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明は、磁気シールド効果が高められたウィーンフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係るウィーンフィルタは、
磁性材料からなる鏡筒の内側に配置されるウィーンフィルタであって、
前記鏡筒の中心軸線を中心として等角度間隔で配置される複数の電磁極と、
前記複数の電磁極の周囲を覆うように配置される第1磁気シールドと、
前記第1磁気シールドの周囲を覆うように配置される第2磁気シールドと、
を備え、
前記第1磁気シールドは、前記第2磁気シールドの内面に設けられた非磁性材料からなる第1支持材により支持されており、
前記第2磁気シールドは、前記鏡筒の内面に設けられた磁性材料からなる第2支持材により支持されている。
【0011】
このような態様によれば、複数の電磁極の周囲を覆うように第1磁気シールドが配置されるため、複数の電磁極の内側に所望の磁界を安定して形成することができる。また、第1磁気シールドの周囲を覆うように第2磁気シールドが配置され、第2磁気シールドが第2支持材を介して鏡筒に磁気的に接続されているため、ウィーンフィルタに隣接する磁界レンズからの漏洩磁場は、第2磁気シールドから第2支持材を介して鏡筒へと流れるが、第1磁気シールドと第2磁気シールドとは第1支持材により磁気的に絶縁されているため、第1磁気シールドには流れない。また、外部の高圧電源などからパルス状に発生する外乱磁場も、鏡筒から第2支持材を介して第2磁気シールドへと流れるが、第1磁気シールドと第2磁気シールドとは第1支持材により磁気的に絶縁されているため、第1磁気シールドには流れない。これにより、漏洩磁場や外乱磁場が第1磁気シールドの内側に侵入することが防止され、複数の電磁極の内側に形成された所望の磁界が漏洩磁場や外乱磁場により乱されることが防止される。したがって、高い磁気シールド効果を得ることができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係るウィーンフィルタは、第1の態様に係るウィーンフィルタであって、
前記第1磁気シールドおよび前記第2磁気シールドには、それぞれ、前記鏡筒の中心軸線を中心とする電子ビーム通過孔が形成されており、
前記第2磁気シールドの電子ビーム通過孔の径は、前記第1磁気シールドの電子ビーム通過孔の径より小さい。
【0013】
このような態様によれば、第2磁気シールドの電子ビーム通過孔が小さいため、ウィーンフィルタに隣接する磁界レンズからの漏洩磁場が第2磁気シールドの電子ビーム通過孔を通過して内部に侵入することが抑制される。したがって、磁気シールド効果を一層高めることができる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るウィーンフィルタは、第1または2の態様に係るウィーンフィルタであって、
前記第1磁気シールドは、入れ子状に多重に配置された複数のシールド要素部材を有し、
隣り合うシールド要素部材のうち内側のシールド要素部材は、外側のシールド要素部材の内面に設けられた非磁性材料からなる支持材により支持されている。
【0015】
このような態様によれば、第1磁気シールドにおいて、入れ子状に多重に配置された複数のシールド要素部材が、支持材により互いに磁気的に絶縁されているため、たとえ第2磁気シールドに流れた漏洩磁場ないし外乱磁場が、外側のシールド要素部材に流れることがあったとしても、そこから更に内側のシールド要素部材には流れにくい。したがって、磁気シールド効果を一層高めることができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係るウィーンフィルタは、第3の態様に係るウィーンフィルタであって、
各シールド要素部材には、それぞれ、真空引き用の穴が形成されており、
隣り合うシールド要素部材のうち内側のシールド要素部材の真空引き用の穴と、外側のシールド要素部材の真空引き用の穴とは、前記鏡筒の中心軸線を中心として、互いに異なる角度方向に形成されている。
【0017】
このような態様によれば、第1磁気シールドにおいて、複数のシールド要素部材が入れ子状に多重に配置されていても、隣り合うシールド要素部材の真空引き用の穴が互いに異なる角度方向に形成されていることで、シールド要素部材間の狭い空間からも効率的に真空を引くことができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るウィーンフィルタは、第1〜4のいずれかの態様に係るウィーンフィルタであって、
前記第2支持材は、前記鏡筒の内面を周方向に延びるように設けられている。
【0019】
このような態様によれば、第2支持材が大きいため、第1磁気シールド、第1支持材および第2磁気シールドを合わせた重量を安定して支持できるとともに、第2磁気シールドと鏡筒との間の磁気的な接続を強めることができ、磁気シールド効果を一層高めることができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係るウィーンフィルタは、第1〜5のいずれかの態様に係るウィーンフィルタであって、
前記電磁極の数は、8個以上である。
【0021】
このような態様によれば、複数の電磁極の内側に所望の磁界を容易に形成することができる。
【0022】
本発明の第7の態様に係る電子光学装置は、
第1〜6のいずれかの態様に係るウィーンフィルタと、
前記ウィーンフィルタに対して軸線方向に隣接して配置された磁界レンズと、
を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ウィーンフィルタの磁気シールド効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0026】
<電子光学装置>
図1は、一実施の形態に係る電子光学装置70の構成を示す図である。なお、以下の説明では、電子光学装置70の一例として電子線検査装置の構成を説明するが、電子光学装置70は電子線検査装置に限られるものではなく、電子線照射装置または電子顕微鏡であってもよい。
【0027】
図1に示すように、電子光学装置70は、電子ビームを生成する一次光学系72と、試料Wからの二次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる二次光学系74と、それらの電子を検出する検出器761と、を備えている。検出器761には、検出器761からの信号を処理する画像処理部763が接続されている。
【0028】
試料Wは、たとえば、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、または金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子光学装置70は、これらの基板からなる試料Wの表面上の異物の存在を検出する。異物は、絶縁物、導電物、半導体材料、またはこれらの複合体等である。異物の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。
【0029】
電子光学装置70のうち、一次光学系72は、電子ビームを生成し、試料Wに、検出器761の検出サイズをカバーする領域を一括照射する構成である。一次光学系72は、電子銃721と、レンズ722と、アパーチャ723と、ウィーンフィルタ726と、レンズ727を有している。
【0030】
電子銃721は、レーザ光源7211と電光面カソード7212とを有しており、電子銃721により電子ビームが生成される。生成された電子ビームは加速され、レンズ722およびアパーチャ723によって整形される。そして、ウィーンフィルタ726にて、電子ビームは、磁界によるローレンツ力と電界によるクーロン力の影響を受け、斜め上方から入射して、鉛直下方向に偏向され、試料Wに向かう。レンズ727は、ウィーンフィルタ726付近に形成された中間像を試料Wに投影する。一次ビームは、試料W付近で減速され、試料Wに入射する、もしくは試料W近傍で反射される。
【0031】
一次光学系72は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。一次ビームの試料Wへの入射エネルギー(ランディングエネルギー)は、試料電位と電子銃の加速電位との差で定義されるが、実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20eVである。
【0032】
この点に関し、試料Wの表面上の異物と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物の上方の位置(検出器761により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。このLE1とLE2との差異は、望ましくは5〜20eVである。また、LE1の値は、好ましくは0〜40eVであり、更に好ましくは5〜20eVである。
【0033】
ウィーンフィルタ726の電界と磁界の条件を調整することにより、一次電子ビームの試料Wへの入射角を定めることができる。例えば、一次ビームが、試料Wに対して垂直に入射するように、ウィーンフィルタ726の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料Wに対する一次光学系の電子ビームの入射角度をわずかに傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10°であり、好ましくは0.1〜3°程度である。
【0034】
このように、異物に対してわずかな入射角を持って電子ビームを照射させることにより、異物からの信号を強くし、同時に、ミラー電子の軌道が二次光学系光軸中心から外れない条件を形成することができるためにミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
【0035】
試料室30内に配置されたステージ装置50上には試料Wがあり、試料Wの上に異物がある。一次ビームは、ランディングエネルギーLE=5〜10eVで試料Wの表面に照射される。予めチャージアップされた異物によって一次ビームの電子が異物に接触せずに跳ね返される。こうして生成されたミラー電子が二次光学系74により検出器761に導かれる。同時に、チャージアップされていない試料Wの表面21に照射された一次ビームによる二次放出電子も生成される。しかし、ランディングエネルギーLE=5〜10eV程度の電子照射による二次電子放出効率は0に近い上、二次電子は、試料Wの表面21からLambertのコサイン則に近い角度分布で放出されるため、二次電子は二次電子光学系のアパーチャ742によりそのほとんどがカットされ、検出器761に到達する二次電子割合は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。一方、一次電子に対するミラー電子の割合はほぼ1であり、かつ、散乱は二次電子の角度分布よりも少ないので、ミラー電子は、高い透過率で検出器761に到達する。したがって、異物由来の信号が、高いコントラストで検出される。
【0036】
また、異物由来のミラー電子の像は、チャージアップした異物が形成する局所電界の効果によって、実際の大きさよりも大きく検出器761に投影される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。拡大された異物のサイズが、検出器761の画素サイズの3倍以上あれば、異物として検出可能であるから、二次光学系74の投影倍率を小さくして検出器761の画素サイズを大きくして一度に検出できる面積を大きくすることにより、高速・高スループットな検査が実現できる。
【0037】
例えば、異物のサイズが直径20nmである場合に、検出器761の画素サイズが60nm、100nm、500nm等でよい。この例ように、異物の3倍以上の検出器761の画素サイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
【0038】
二次光学系74は、試料Wから反射した電子もしくは試料Wの表面21から放出された二次電子の分布を、検出器761に拡大投影する手段である。二次光学系74は、レンズ727、740、741、と、NAアパーチャ742と、検出器761と、を有している。電子は、試料Wから反射して、対物レンズ727及びウィーンフィルタ726を再度通過する。そして、電子は二次光学系74に導かれる。二次光学系74においては、レンズ740、NAアパーチャ742、レンズ741を通して試料W由来の電子信号を検出器761に結像させる。
【0039】
NAアパーチャ742は、二次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
【0040】
例えば、φ50〜φ3000μmの範囲で、NAアパーチャ742が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。
【0041】
例えば、一次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250μmである。NAアパーチャ(径φ250μm)に制限されるために、二次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250μmにすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
【0042】
異物は、任意の種類の材料で構成されてよく、例えば半導体、絶縁物、金属等でよく、又はそれらが混在してもよい。異物表面には自然酸化膜等が形成されるので、異物は絶縁材料で覆われることになる。よって、異物の材料が金属であっても、酸化膜にてチャージアップが発生する。このチャージアップが本例に好適に利用される。
【0043】
検出器761は、二次光学系74により導かれた電子を検出する手段である。検出器761は、二次元イメージセンサ7611を含んでいる。二次元イメージセンサ7611には、二次元方向に複数の画素が配列されている。
【0044】
二次元イメージセンサ7611には、EB(Electron Bombardment)半導体センサを適用することができる。例えば、二次元イメージセンサ7611には、EB−CMOSセンサが適用されてよい。EB−CMOSセンサは、電子ビーム(二次ビーム)をそれに直接入射させることができる。したがって、光電変換機構や光伝達機構による分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。また、EB−CMOSを用いると、小さい異物の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。なお、二次元イメージセンサとして、EB−CCDセンサが用いられてもよく、EB−TDIセンサが用いられてもよい。
【0045】
また、二次元イメージセンサ7611には、CCD(Charge Coupled Device)またはTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
【0046】
なお、二次元イメージセンサ7611の画素数は、2k×2k〜10k×10kとすることができる。また、二次元イメージセンサ7611のデータレートは、10GPPS以下とすることができる。さらに、二次元イメージセンサ7611の画素サイズは1〜15μmとすることができる。
【0047】
画像処理部763は、検出器761で得られた二次ビーム像に対して、ノイズリダクション処理、積算処理、サブピクセルアライメント等の画像処理を行う。この画像処理部763の処理速度は、10GPPS以下とすることができる。
【0048】
<ウィーンフィルタ>
次に、一実施の形態に係るウィーンフィルタ726の構成について詳しく説明する。
図2は、
図1に示す電子光学装置70においてウィーンフィルタ726の近傍を拡大して示す図である。
図3は、
図2に示すウィーンフィルタ726をA−A線で切断した断面を示す図である。
【0049】
図2および
図3に示すように、ウィーンフィルタ726は、磁性材料からなる鏡筒20の内側に配置されており、鏡筒20の中心軸線を中心として等角度間隔で配置される複数(図示された例では8個)の電磁極10と、複数の電磁極10の周囲を覆うように配置される第1磁気シールド11と、第1磁気シールド11の周囲を覆うように配置される第2磁気シールド12と、を備えている。
【0050】
このうち電磁極10は、磁性材料からなるポールピース10aと、ポールピース10aに巻回されたコイル10bとを有している。鏡筒20の中心軸線を中心として複数の電磁極10の外側には、複数の電磁極10を取り囲むように、磁性材料からなるリング状のリターンヨーク10cが配置されている。なお、電磁極10の数は8個に限定されるものではないが、複数の電磁極10の内側に所望の磁界を容易に形成するためには、8個以上であるのが好ましい。
【0051】
図2および
図3に示すように、第1磁気シールド11および第2磁気シールド12は、入れ子状に重なるように配置されている。
【0052】
第1磁気シールド11は、上底と下底と側壁とを含む円筒形状を有しており、上底および下底にはそれぞれ、鏡筒20の中心軸線を中心とする電子ビーム通過孔11aが形成されている。複数の電磁極10の周囲を覆うように第1磁気シールド11が配置されることで、複数の電磁極10の内側に所望の磁界を安定して形成することが可能である。
【0053】
第2磁気シールド12は、上底と下底と側壁とを含む円筒形状を有しており、上底および下底にはそれぞれ、鏡筒20の中心軸線を中心とする電子ビーム通過孔12aが形成されている。
図2に示すように、第2磁気シールド12の電子ビーム通過孔12aの径は、第1磁気シールド11の電子ビーム通過孔11aの径より小さくなっており、これにより、ウィーンフィルタ726に隣接する磁界レンズ(たとえば対物レンズ727)からの漏洩磁場が、第2磁気シールド12の電子ビーム通過孔12aを通過して内部に侵入することが抑制されている。
【0054】
図2および
図3に示すように、第1磁気シールド11は、第2磁気シールド12の内面(図示された例では、側壁の内面)に設けられた非磁性材料からなる第1支持材13により支持されている。第1支持材13の材質は、非磁性材料であれば特に限定されないが、たとえばチタン、銅、セラミックス、樹脂などである。第1支持材13として樹脂を用いる場合には、真空中に放出されるガスが少ないものが望ましい。
【0055】
第1磁気シールド11と第2磁気シールド12とを接続する第1支持材13が非磁性材料からなることにより、第1磁気シールド11は第2磁気シールド12に対して磁気的に絶縁される。
【0056】
図3に示す例では、第1支持材13の数は4個であるが、これに限定されるものではなく、1〜3個、または5個以上であってもよい。第1支持材13の数が2個以上である場合には、第1支持材13は、鏡筒20の中心軸線を中心として等角度間隔で設けられているのが好ましい。
【0057】
図2および
図3に示すように、第2磁気シールド12は、鏡筒20の内面に設けられた磁性材料からなる第2支持材14により支持されている。第2支持材14の材質は、磁性材料であれば特に限定されないが、たとえば純鉄が用いられる。
【0058】
第2磁気シールド12と鏡筒20とを接続する第2支持材14が磁性材料からなることにより、第2磁気シールド12は鏡筒20に対して磁気的に接続される。
【0059】
図3に示す例では、第2支持材14は、鏡筒20の内面を周方向に延びるように設けられている。これにより、第2支持材14が大きくなるため、第1磁気シールド11、第1支持材13および第2磁気シールド12を合わせた重量を安定して支持できるとともに、第2磁気シールド12と鏡筒20との間の磁気的な接続を強めることができる。
【0060】
ところで、発明が解決しようとする課題の欄で言及したように、従来の電子線検査装置において、特に大電流ビームを利用する場合には、空間電荷効果による分解能の劣化を抑制するために、電子光学系の光路長は短いほうが望ましいものの、光路長を短くするために、ウィーンフィルタと磁界レンズとを近づけて設置すると、磁界レンズからの漏洩磁場がウィーンフィルタの内部に侵入することがあった。
【0061】
また、電子線検査装置の周囲に別の装置が設置されている場合には、この装置から発生する外乱磁場がウィーンフィルタの内部に侵入することがあった。
【0062】
そして、漏洩磁場や外乱磁場がウィーンフィルタの内部に侵入すると、電子ビームを直進させるための電場と磁場との関係(ウィーン条件)が崩れるため、ビームが偏向したり、分解能が劣化するなど、光学性能に悪影響があった。
【0063】
これに対して、本実施の形態によれば、第1磁気シールド11の周囲を覆うように第2磁気シールド12が配置され、第2磁気シールド12が第2支持材14を介して鏡筒20に磁気的に接続されているため、ウィーンフィルタ726に隣接する磁界レンズ(たとえば対物レンズ727)からの漏洩磁場は、第2磁気シールド12から第2支持材14を介して鏡筒20へと流れるが、第1磁気シールド11と第2磁気シールド12とは第1支持材13により磁気的に絶縁されているため、第1磁気シールド11には流れない。また、外部の高圧電源などからパルス状に発生する外乱磁場も、鏡筒20から第2支持材14を介して第2磁気シールド12へと流れるが、第1磁気シールド11と第2磁気シールド12とは第1支持材13により磁気的に絶縁されているため、第1磁気シールド11には流れない。これにより、漏洩磁場や外乱磁場が第1磁気シールド11の内側に侵入することが防止され、複数の電磁極の内側に形成された所望の磁界が漏洩磁場や外乱磁場により乱されることが防止される。したがって、ウィーンフィルタ726において、高い磁気シールド効果を得ることができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0065】
<ウィーンフィルタの変形例>
図4は、一実施の形態の一変形例に係るウィーンフィルタ726の構成を示す図である。
【0066】
図4に示す例では、第1磁気シールド11は、入れ子状に多重に配置された複数のシールド要素部材111、112、113を有している。以下、複数のシールド要素部材111〜113について、内側から順に第1シールド要素部材111、第2シールド要素部材112、第3シールド要素部材113と呼ぶことがある。
【0067】
隣り合う第1シールド要素部材111および第2シールド要素部材112のうち内側の第1シールド要素部材111は、外側の第2シールド要素部材112の内面(図示された例では、側壁の内面)に設けられた非磁性材料からなる支持材151により支持されている。
【0068】
同様に、隣り合う第2シールド要素部材112および第3シールド要素部材113のうち内側の第2シールド要素部材112は、外側の第3シールド要素部材113の内面(図示された例では、側壁の内面)に設けられた非磁性材料からなる支持材152により支持されている。
【0069】
支持材151、152の材質は、非磁性材料であれば特に限定されないが、たとえば第1支持材13と同じ材質を用いることができる。
【0070】
隣り合うシールド要素部材111、112、113を接続する支持材151、152が非磁性材料からなることにより、隣り合うシールド要素部材111、112、113は、互いに磁気的に絶縁される。
【0071】
各シールド要素部材111、112、113には、それぞれ、真空引き用の穴(不図示)が形成されている。
【0072】
隣り合うシールド要素部材111、112、113うち内側のシールド要素部材の真空引き用の穴と、外側のシールド要素部材の真空引き用の穴とは、鏡筒20の中心軸線を中心として、互いに異なる角度方向に形成されていてもよい。たとえば、第1シールド要素部材111の真空引き用の穴は12時方向に形成されており、第2シールド要素部材112の真空引き用の穴は3時方向に形成されており、第3シールド要素部材113の真空引き用の穴は6時方向に形成されていてもよい。
【0073】
以上のような態様によれば、第1磁気シールド11において、入れ子状に多重に配置された複数のシールド要素部材111、112、113が、支持材151、152により互いに磁気的に絶縁されているため、たとえ第2磁気シールド12に流れた漏洩磁場ないし外乱磁場が、外側の第3シールド要素部材113に流れることがあったとしても、そこから内側の第2シールド要素部材112には流れにくく、ましてや更に内側の第1シールド要素部材111には流れにくい。したがって、ウィーンフィルタ726において、磁気シールド効果を一層高めることができる。
【0074】
また、このような態様によれば、第1磁気シールド11において、複数のシールド要素部材111、112、113が入れ子状に多重に配置されていても、隣り合うシールド要素部材111、112、113の真空引き用の穴が互いに異なる角度方向に形成されていることで、シールド要素部材111、112、113間の狭い空間からも効率的に真空を引くことができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。