(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
織物と、前記織物に交絡させた状態の繊維集合体と、を有する吸収性物品用のシート部材の製造方法であって、搬送方向に連続する前記織物の少なくとも一方の面の側に前記繊維集合体を配置する配置ステップと、前記配置ステップの後に、前記織物及び前記繊維集合体に向かって流体を噴射して、前記織物に前記繊維集合体を交絡させる交絡ステップと、前記交絡ステップの後に、前記搬送方向と交差するCD方向における前記繊維集合体の両端部を切断する切断ステップと、を有し、前記繊維集合体の前記CD方向の最大長さが、前記織物の前記CD方向の長さ以上であることを特徴とするシート部材の製造方法である。
【0010】
このようなシート部材の製造方法によれば、切断ステップにおいて、繊維密度が安定しづらい繊維集合体のCD方向の端部を切断した場合に、織物を過度に切り落とす恐れを軽減させることができるため、繊維密度によるムラが発生する恐れを軽減しつつ、より低コストでシート部材を製造することができる。
【0011】
かかるシート部材の製造方法であって、前記交絡ステップにおいて、ある搬送機構を用いて前記繊維集合体をある搬送速度で搬送し、前記ある搬送機構に向けて、他の搬送機構を用いて前記繊維集合体を他の搬送速度で搬送し、前記ある搬送速度が、前記他の搬送速度以上であることが望ましい。
【0012】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維集合体の繊維を搬送方向に移動させやすくして、織物に交絡した繊維集合体の繊維密度のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0013】
かかるシート部材の製造方法であって、前記交絡ステップにおいて、前記織物及び前記繊維集合体に向かって、前記搬送方向の異なる位置で複数回流体を噴射し、前記搬送方向の上流側で噴射する流体の圧力が、前記搬送方向の下流側で噴射する流体の圧力以下であることが望ましい。
【0014】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維集合体の繊維が噴射される流体によって飛ばされてしまう恐れを軽減しつつ、織物により交絡させることができる。
【0015】
かかるシート部材の製造方法であって、前記交絡ステップにおいて、吸引機構を有する回転体の周面に前記織物又は前記繊維集合体の少なくとも一方を接触させた状態で、前記回転体の径方向の外側から内側に向かって流体を噴射することが望ましい。
【0016】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維密度によるムラが発生する恐れを軽減しつつ、織物のより広い範囲に繊維集合体の繊維を交絡させることができるため、より低コストで製造することができる。
【0017】
かかるシート部材の製造方法であって、前記配置ステップは、搬送コンベアを用いて、少なくとも前記繊維集合体を搬送し、前記交絡ステップは、前記回転体を用いて、前記織物及び前記繊維集合体を更に搬送し、前記搬送コンベアの搬送面が、前記回転体の回転中心と同じ高さ、又は前記回転中心より高い位置に設けられ、前記回転体による搬送開始直後において、前記繊維集合体は、前記回転体の回転方向に沿って、上方に向かって搬送されることが望ましい。
【0018】
このようなシート部材の製造方法によれば、搬送によって生じる繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0019】
かかるシート部材の製造方法であって、前記配置ステップは、搬送コンベアを用いて、少なくとも前記繊維集合体を搬送し、前記交絡ステップは、前記回転体を用いて、前記織物及び前記繊維集合体を更に搬送し、前記搬送コンベアの搬送面が、前記回転体の回転中心より下側に設けられ、前記搬送コンベアによる搬送と前記回転体による搬送との間に、前記回転体と前記搬送コンベアとの最接近位置を、前記繊維集合体が通過する通過ステップを、さらに有することが望ましい。
【0020】
このようなシート部材の製造方法によれば、搬送によって生じる繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0021】
かかるシート部材の製造方法であって、前記搬送コンベアによる搬送において、前記搬送コンベアは、前記織物を搬送せず、前記回転体による搬送の前に、前記織物を前記回転体に供給する供給ステップを有することが望ましい。
【0022】
このようなシート部材の製造方法によれば、搬送によって生じる繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0023】
かかるシート部材の製造方法であって、前記供給ステップにおいて、前記織物を供給するための供給回転体は、前記織物の張力を一定にして前記織物を供給することが望ましい。
【0024】
このようなシート部材の製造方法によれば、織物に交絡した繊維集合体の繊維密度のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0025】
かかるシート部材の製造方法であって、前記供給回転体の周速は、前記回転体の周速と等しく、前記回転体の周速が、前記搬送コンベアの移動速度以上の速さであることが望ましい。
【0026】
このようなシート部材の製造方法によれば、搬送によって生じる繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0027】
かかるシート部材の製造方法であって、前記交絡ステップの前に、前記繊維集合体の厚みを薄くするための処理を行うことが望ましい。
【0028】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0029】
かかるシート部材の製造方法であって、前記繊維集合体の厚みを小さくするための処理は、流体の噴射処理であることが望ましい。
【0030】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0031】
かかるシート部材の製造方法であって、前記配置ステップは、搬送コンベアを用いて、少なくとも前記繊維集合体を搬送し、前記交絡ステップは、前記回転体を用いて、前記織物及び前記繊維集合体を更に搬送し、前記繊維集合体の厚みを小さくするための処理は、前記繊維集合体を、対向する前記搬送コンベアと前記回転体との間を通過させることであることが望ましい。
【0032】
このようなシート部材の製造方法によれば、繊維集合体の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。
【0033】
かかるシート部材の製造方法によれば、前記交絡ステップにおいて、1つの前記回転体を用いて前記織物及び前記繊維集合体を搬送し、前記回転体による搬送後、下流側搬送機構を用いて前記織物及び前記繊維集合体を下流側搬送速度で搬送し、前記下流側搬送速度が、前記回転体の周速以上であることが望ましい。
【0034】
このようなシート部材の製造方法によれば、回転体を用いて搬送させながら交絡させている間に、織物及び繊維集合体が弛んでしまう恐れを軽減させることができる。
【0035】
かかるシート部材の製造方法によれば、前記下流側搬送コンベアは吸引機構を備え、前記下流側搬送コンベアを用いて前記織物及び前記繊維集合体を前記下流側搬送速度で搬送しつつ、前記織物及び前記繊維集合体に向かって流体を噴射して前記織物に前記繊維集合体をさらに交絡させることが望ましい。
【0036】
このようなシート部材の製造方法によれば、織物により多くの繊維集合体を交絡させた状態のシート部材を製造することができる。
【0037】
織物と、前記織物に交絡させた状態の繊維集合体と、を有する吸収性物品用のシート部材の製造装置であって、搬送方向に連続する前記織物の少なくとも一方の面の側に前記繊維集合体を配置する配置部と、前記繊維集合体の配置の後に、前記織物及び前記繊維集合体に向かって流体を噴射して、前記織物に前記繊維集合体を交絡させる交絡部と、前記搬送方向と交差するCD方向における前記繊維集合体の両端部を切断する切断部と、を有し、前記繊維集合体の前記CD方向の最大長さが、前記織物の前記CD方向の長さ以上であることを有することを特徴とするシート部材の製造装置である。
【0038】
このようなシート部材の製造装置によれば、切断ステップにおいて、繊維密度が安定しづらい繊維集合体のCD方向の端部を切断した場合に、織物を過度に切り落とす恐れを軽減させることができるため、繊維密度によるムラが発生する恐れを軽減しつつ、より低コストでシート部材を製造することができる。
【0039】
===実施形態===
<生理用ナプキン1の構成>
以下、本発明の吸収性物品として、生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明するが、これに限定されず、例えば、おりものシートや尿取りパッド、使い捨ておむつ等のその他の吸収性物品に対しても適用可能である。
【0040】
図1は、生理用ナプキン1(以下「ナプキン1」ともいう)を肌側から見た平面図である。
図2は、生理用ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3は、
図1中のX−X線に沿う断面図である。ナプキン1は、互いに直交する前後方向と幅方向と厚さ方向とを有する。前後方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側、臀部に当接する側を後側という。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側、その反対側を非肌側という。
【0041】
図1、
図2及び
図3に示すように、ナプキン1は、厚さ方向の肌側から順に、一対のサイドシート5と、表面シート3と、吸収体2と、裏面シート4とが積層されている。表面シート3と吸収体2は、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段で互いに接合されている。表面シート3と裏面シート4は、平面サイズが吸収体2より大きく、吸収体2の平面全体を覆っている。また、互いに積層された表面シート3、裏面シート4及びサイドシート5は、ナプキン1の外周縁に沿った外周シール部8を介して互いに接合されている。一対のサイドシート5は、幅方向の両側に設けられ、表面シート3の肌側に前後方向に沿って配置され、表面シート3に公知の接着手段又は溶着手段で接合されている。
【0042】
ナプキン1は、ナプキン1の前後方向の中央領域から幅方向の両外側に延出する一対のウィング部6を有する。ウィング部6は、表面シート3の幅方向の両側部から外側に延出しているサイドシート5及び裏面シート4によって形成されている。なお、ナプキン1は、ウィング部6を有さない形態であってもよい。
【0043】
ナプキン1の非肌側面(裏面シート4の非肌側面)には、接着剤が塗布される粘着領域11が設けられている。粘着領域11は、ナプキン1の使用時に、下着等の肌側面に貼り付けられて、ナプキン1が下着等に固定される。粘着領域11の形状や数は、任意に変更可能である。
【0044】
同様に、各ウィング部6の非肌側面(裏面シート4の非肌側面)には、ウィング部用粘着領域12が設けられている。ウィング部用粘着領域12は、ナプキン1の使用時に、下着等の非肌側面に貼り付けられて、ナプキン1が下着等に固定される。ウィング部用粘着領域12の形状や数は、任意に変更可能である。
【0045】
表面シート3は透液性であって、織物40と繊維集合体50とによって構成される。裏面シート4は、不透液性及び透湿性のプラスチックフィルム、不透液性の不織布、それらのラミネートシート等から形成することができる。サイドシート5は、公知の不織布を用いることができる。
【0046】
吸収体2は、経血等の排泄物を吸収して内部に保持する部材であり、液体を吸収する吸収性コア10と、吸収性コア10全体を包被する透液性のコアラップシート20を有している。吸収性コア10は、液体吸収性繊維であるパルプ繊維やセルロール系吸収性繊維等に、液体吸収性粒状物である高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が加えられ、所定の形状に成形されている。コアラップシート20は、液透過性のシートであり、ティッシュやエアレイド等を例示できる。
【0047】
<表面シート3の構成>
図4は、表面シート3を肌側から見た場合の一部拡大図であり、
図5は、表面シート3を織物40と繊維集合体50とに分離した状態を示す図である。
図4及び
図5に示すように、表面シート3は、織物40と繊維集合体50の繊維とが、互いに絡み合って(織物40と繊維集合体50が交絡して)一体化されたシート部材である。織物40と繊維集合体50とを交絡させたシート部材70の製造方法は、後述する。
【0048】
図4に示すように、織物40は、格子状に織り込まれた構成糸41から構成される。構成糸41は、複数の経糸42と、経糸42と互いに交差する複数の緯糸43とを有し、厚さ方向において互いに交差することによって形成された、経糸42と緯糸43とで囲まれた貫通領域である織目45が複数形成される。織物40の構成糸41は、綿糸(コットン繊維)からなる原糸を撚って形成された撚糸である。原糸の材料には、コットン繊維のほかに、麻やパルプ繊維等の天然セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロース繊維等のセルロース系繊維が好適に使用される。原糸に使用される綿糸としては、太さ10〜100綿番手のものが好ましい。主に綿素材等からなる織物40を表面シート3に用いることで、着用者は心地よい肌触りを得られ、肌トラブルも起こりにくくなる。なお、織物40の織り方は、格子状に織り込まれた平織りに限定されず、綾織り、朱子織り、絡み織りなどの公知の織り方を適宜採用することができる。
【0049】
繊維集合体50は、長繊維を使用したスパンボンド法や短繊維をカード機で一定方向へカーディングを行い、繊維を整えてウェブを形成する乾式法等の公知の製法によって形成された繊維の集合体であり、フォーミングされて不織布となる前段階の状態である。また、繊維集合体50は、親水性繊維を含む構成繊維51から形成されている。その構成繊維51は柔らかく軽い素材であり、不規則に集められた集合体である。親水性繊維としては、例えば、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース繊維、コットン、粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロースなどが挙げられる。また、カード機を用いたカード法で形成された繊維集合体50に限られず、エアレイド法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法等の方法で形成された繊維集合体50を用いてもよい。繊維集合体50の繊維密度は、例えば、2.8〜3.5×10
-3g/cm
3とし、坪量(単位面積当たりの重さ)は、例えば、20〜70g/m
2とする。繊維集合体50の厚みは、例えば、7〜20mmであり、繊維集合体50の繊維の長さは、例えば、1〜100mmである。また、繊維集合体50の繊度は、例えば、0.1〜6dtexとする。
【0050】
<第1実施形態のシート部材70の製造方法>
連続した状態の織物40と、繊維集合体製造装置(不図示)で製造された繊維集合体50とを交絡させて一体化させて連続した状態のシート部材70を製造し、連続した状態のシート部材70を所定の形状に形成するカット処理を施すことで、表面シート3が形成される。しかし、製造後のシート部材70には、繊維集合体50の繊維密度の差を原因とするムラが生じてしまう恐れがある。この点、以下、ムラを軽減させるシート部材70の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、織物40及びシート部材70は連続した状態として説明する。
【0051】
図6は、第1実施形態のシート部材70の製造方法に使用される製造装置100の一部を模式的に示す図である。製造装置100は、繊維集合体50と織物40とを交絡させて一体化させたシート部材70を製造する装置である。製造装置100は、搬送方向の上流側から上流側搬送装置130、第1回転体150と第1噴射装置300、第2回転体160と第2噴射装置400、下流側搬送装置140、脱水装置250、切断装置500を備える。製造装置100は、織物40及び繊維集合体50を搬送方向に搬送させ、搬送方向と直交する方向を「CD方向」という。
【0052】
<<第1搬送ステップ>>
第1搬送ステップは、上流側搬送装置130を用いて少なくとも繊維集合体50を搬送するステップである。上流側搬送装置130は、上流側搬送ベルト130a(「搬送コンベア」ともいう。)を備える。上流側搬送ベルト130aは、織物40及び繊維集合体50を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送部である。まず、上流側搬送ベルト130aに繊維集合体50を接触させた状態で載置し、さらにその上から織物40を載置した状態で、織物40及び繊維集合体50を搬送する。つまり、上流側搬送ベルト130a上において、繊維集合体50の上面側に織物40を配置して、搬送方向に搬送する。この織物40の少なくとも一方の面の側に繊維集合体50を配置するステップを「配置ステップ」ともいう。
【0053】
このとき、織物40のCD方向の長さが、繊維集合体50のCD方向の長さ以下であり(W40≦W50)、織物40のCD方向の長さが、繊維集合体50のCD方向の長さより短いことがより好ましい(W40<W50)。
図7は、第1ステップにおける織物40と繊維集合体50を模式的に示す図である。
図7においては、便宜上、織物40と繊維集合体50を分離させた状態で示しているが、第1搬送ステップにおいて、織物40が繊維集合体50の上方から重ね合されている。
図7等における織物40及び繊維集合体50は模式図であり、織物40の各構成糸41の太さや織目45の大きさ、繊維集合体50の繊維の数や繊維の長さ等は、必ずしも正確ではない。繊維集合体50は、柔らかく軽い線状の素材で、不規則に集められているため、その外形は、定まっていない。そのため、繊維集合体50のCD方向の長さは、繊維集合体50のCD方向の最大長さとする。なお、以下の説明において、「繊維集合体50のCD方向の長さ」とは、繊維集合体50のCD方向の最大長さをいう。上流側搬送ベルト130aを平面視すると、織物40の略全域が繊維集合体50上に載置された状態で搬送されている。なお、第1搬送ステップから切断ステップにおける切断処理の前まで、織物40のCD方向の長さW40が繊維集合体50のCD方向の長さW50より短いという関係が維持されたまま搬送される。
【0054】
上流側搬送ベルト130aの搬送面は、第1回転体150の中心C150より下側に設けられ、上流側搬送装置130の上方に第1回転体150が配置される。上流側搬送ベルト130aと第1回転体150の外周面150aとが対向する部分を有する。上流側搬送ベルト130aと第1回転体150の外周面150aとが対向する部分は、上流側搬送装置130と第1回転体150との最接近位置である。また、第1回転体150の上方に第2回転体160が配置されている。
【0055】
また、上流側搬送装置130から第1回転体150に織物40及び繊維集合体50を受け渡す際に、対向する上流側搬送ベルト130aと外周面150aとの間の間隙、つまり上流側搬送装置130と第1回転体150との最接近位置を織物40と繊維集合体50を通過させる(通過ステップ)。これにより、上流側搬送ベルト130aと外周面150aとで挟まれる。厚さ方向に潰された織物40と繊維集合体50は、繊維集合体50の厚みが薄くなり、その繊維を落ちつかせることができる。これによって、繊維が動いてしまって、繊維集合体50の繊維密度の偏りが生じる恐れを軽減させることができる。
【0056】
<<第2搬送ステップ>>
第2搬送ステップは、第1搬送ステップで搬送された繊維集合体50と織物40とを第1回転体150の回転によってさらに搬送しつつ、織物40に繊維集合体50の繊維を交絡させるステップである。織物40に繊維集合体50の繊維を絡ませて交絡させるステップを「交絡ステップ」ともいう。交絡させた状態の織物40と繊維集合体50をシート60という。シート60は、織物40に繊維集合体50の少なくとも一部が交絡した状態から、後述の切断ステップで切断処理が行われるまでの状態のことを示す。
図6において、シート60及びシート部材70を右下がりの斜線部で示している。
【0057】
第2搬送ステップにおいて、第1回転体150の外周面150aに織物40を接触させた状態で搬送し、搬送面に対して最も外側で繊維集合体50を搬送することが好ましい。繊維集合体50の繊維は、軽くて自由度が高い性質を有するため、
図6に示すように、第1搬送ステップから第2搬送ステップへの搬送において搬送経路に勾配を有していると、上流側搬送装置130から第1回転体150への織物40及び繊維集合体50の受け渡しにおいて、繊維集合体50の搬送が滞ったり、繊維密度が変化してしまう恐れがある。
【0058】
この点、外周面150aに織物40を接触させた状態で搬送し、搬送面に対して最も外側で繊維集合体50を搬送すると、第1回転体150の円弧に沿って下から上に持ち上げるように繊維集合体50を搬送するため、繊維集合体50は、搬送面に対して最も外側、繊維集合体50の外側の面(織物40に対向する側とは逆側の面)は拘束されておらず自由度が高い状態で搬送される。そして、繊維集合体50の繊維は搬送方向に沿って、広げられながら搬送されやすい。その結果、織物40に対して繊維がより広げられた繊維集合体50に第1噴射装置300を用いて高圧の水fを噴射することで、織物40に対して繊維集合体50の繊維を均一に交絡させやすくなり、製造後のシート部材70に生じる繊維集合体50の繊維のムラを軽減させやすくすることができる。
【0059】
第1搬送ステップから第2搬送ステップへの搬送において、第1回転体150の周速が上流側搬送ベルト130aの移動速度以上であることが好ましく、第1回転体150の周速が上流側搬送ベルト130aの移動速度より速いことがより好ましい。仮に、第1回転体150の周速が上流側搬送ベルト130aの移動速度より遅い場合には、上流側搬送装置130において織物40が弛んでしまったり、織物40の上に載置している繊維集合体50の搬送も滞ってしまい、繊維密度に偏りが生じてしまう恐れがある。これを防ぐために、第1回転体150の周速を上流側搬送ベルト130aの移動速度以上として、織物40を適切なテンションで搬送させ、これに伴って繊維集合体50も搬送方向に搬送しやすい状態とすることができる。また、繊維集合体50を搬送しやすくすることで、繊維密度のムラが生じる恐れを軽減させやすくなる。
【0060】
図8は、第1回転体150の断面を模式的に示す図である。第1回転体150の外周面150aは、水平な軸C150を回転中心として周方向Dc2に(例えば、反時計回りに)連続して駆動回転する。なお、周方向Dc2は搬送方向でもあり、CD方向は、周方向Dc2に直交する。第1回転体150は、略円筒体であり、その周面には、複数の吸気孔151が設けられている。第1回転体150の内周側と外周側は、吸気孔151を介して液体や気体が通過できるように連通している。
【0061】
第1回転体150は吸引機構を備える。第1回転体150の内周側には、第1回転体150と同芯に円筒状隔壁152が設けられている。第1回転体150の内周側は、ドーナツ型の略閉空間SPが、複数の隔壁153、153、153によって周方向Dc1順に領域が第1領域SP1、第2領域SP2、第3領域SP3に区画されている。上流側の第1領域SP1及び第2領域SP2は、外気圧より低い気圧の負圧状態に維持され、第3領域SP3は、外気圧と同圧、若しくは第1領域SP1や第2領域SP2と外気圧との間の気圧値する。第1領域SP1や第2領域SP2を負圧状態とすることで、織物40及び繊維集合体50を吸引保持しつつ、噴射される水fを内周側に吸引する。なお、第1回転体150の回転とは、外周面150aを回転させた状態をいい、円筒状隔壁152及び隔壁153、153、153はそれぞれ固定されている。
【0062】
第1回転体150の径方向の外側に、第1噴射装置300が設けられている。第1噴射装置300は、搬送方向の上流側から順に、噴射ノズル301、302を備える。第1噴射装置300は、第1回転体150の外周面150aに保持された織物40に及び繊維集合体50に対して第1回転体150の径方向の外側から内側に向かって水fを噴射する。
【0063】
噴射ノズル301、302は、搬送方向において異なる位置にそれぞれ配置されている。噴射ノズル301、302は、基本的な構成はほぼ同じであるため、以下、噴射ノズル302について説明する。
図9Aは、噴射ノズル302を模式的に示す図である。
図9Bは、噴射ノズル302ノズル穴の構成例を模式的に示す図である。なお、
図9Aにおいて、第1回転体150、噴射ノズル302、織物40及び繊維集合体50以外の噴射ノズル301等を省略して示している。
【0064】
噴射ノズル302は、第1回転体150の外周面150aに対して垂直に配置され、第1回転体150に向かって水fを高圧で噴射する。
図9A及び
図9Bに示すように、外周面150aに対向する噴射ノズル302の部材301aには、CD方向に平行に直線的且つ一定のピッチで配置された複数のノズル穴301bを備えている。噴射ノズル302の第1回転体側と反対の側から送られてきた水fを複数のノズル穴301bから織物40及び繊維集合体50のCD方向の全体に亘って噴射する。ノズル穴301bの穴径は、例えば、50〜200μmとし、CD方向に隣接するノズル穴301b中心間の距離は、例えば、0.2〜2.0mmとする。
【0065】
第1噴射装置300において、上流側で噴射される水fの圧力(水流の噴射圧)が下流側で噴射される圧力以下であることが好ましく、より好ましくは、上流側の水流の噴射圧が下流側の水流の噴射圧より小さいことがよい。具体的には、噴射ノズル301の水流の噴射圧が噴射ノズル302の水流の噴射圧より小さい。なお、各水流の噴射圧は、1.0〜7.0MPaの範囲内でそれぞれ設定することが好ましい。
【0066】
繊維集合体50の繊維が織物40に絡まっていない状態では、繊維集合体50の外側の面(織物40に対向する側とは逆側の面)は拘束されておらず、自由度が高い。そのため、上流側の水流の噴射圧を高くすると、噴射された水流によって繊維が飛ばされてしまって、繊維集合体50が損傷したり、繊維集合体50の繊維密度が偏ってしまう恐れがある。この点、上流側の水流の噴射圧をより低く設定して繊維を飛ばしてしまう恐れを軽減しつつ、より確実に織物40に繊維を絡ませやすくする。一方、下流側においては、少なくとも一部は、織物40に繊維が絡んだ状態であることから、織物40に繊維集合体50をさらに交絡させる必要がある。そのため、上流側より高い水流の噴射圧を加えることで、より多くの繊維集合体50の繊維を織物40に絡ませやすくなる。
【0067】
続いて、第1回転体150から第2回転体160にシート60を受け渡し、第2回転体160の回転によるシート60の搬送を行う。第2回転体160は、水平な軸C160を回転中心として外周面160aが周方向Dc1(例えば、時計回りに)連続して駆動回転する。周方向Dc1は搬送方向でもあり、CD方向は、周方向Dc1に直交する。第2回転体160は、第1回転体150と同様の構成を有しており、詳細な説明は省略する。
【0068】
なお、第2回転体160の周速が第1回転体150の周速以上であることが好ましく、第2回転体160の周速が第1回転体150の周速より速いことがより好ましい。第1回転体150と上流側搬送ベルト130aの速度の関係と同様に、第2回転体160の周速を第1回転体150の周速以上とすることで、第1回転体150上で織物40が緩んでしまったり、繊維集合体50の搬送が滞ってしまう恐れを軽減させることができる。
【0069】
第2回転体160の径方向の外側には、第2噴射装置400が設けられている。第2噴射装置400は、搬送方向の上流側から順に、噴射ノズル401、402を備え、第2回転体160の外周面160aに保持されたシート60に対して第2回転体160の径方向の外側から内側に向かって水fを噴射する。第2噴射装置400の噴射ノズル401、402の構成は、噴射ノズル302と同様である。第2噴射装置400による水fの噴射によって、シート60を繊維集合体50の繊維がより絡まった状態とすることができる。このとき、第1噴射装置300と同様に、上流側の噴射ノズル401によって噴射される水fの水流の噴射圧が下流側の噴射ノズル402によって噴射される水流の噴射圧より小さいことがより好ましい。なお、第2噴射装置400は必ずしも設ける必要はなく、シート60の交絡状態に応じて適宜設置可能である。また、第2回転体160においてシート60の水分を吸引する脱水及び乾燥処理を施してもよい。
【0070】
<<脱水ステップ>>
第2回転体160の回転による搬送後、シート60は、第2回転体160から下流側搬送装置140へ受け渡されて、その後、脱水装置250に搬送される。下流側搬送装置140は、下流側搬送ベルト140aを備え、第2回転体160の回転によって搬送されたシート60を受け取って、脱水装置250に向けて搬送する。
【0071】
脱水装置250は、搬送ベルト250aと、複数の吸引部250bとを備えており、下流側搬送装置140から搬送されてきたシート60を搬送ベルト250aによって切断装置500へ向けて搬送する。搬送ベルト250aによる搬送中の複数の吸引部250bを通過する際に、搬送ベルト250a上のシート60の水分を下方側から吸引する。
【0072】
<<切断ステップ>>
シート60の脱水処理後に、切断処理を行う。脱水装置250から切断装置500へシート60が受け渡される。切断装置500は、カッターロール501とアンビルロール502を備える。カッターロール501及びアンビルロール502は、それぞれモーター等の駆動源を備え回転軸C501、502を中心にそれぞれ周方向Dc2、周方向Dc1に駆動回転する回転体である。また、カッターロール501の外周面には複数の突部(不図示)を備えている。カッターロール501とアンビルロール502は、それぞれ回転軸C501、回転軸C502の軸方向をCD方向に向け、互いの外周面を対向させて配置している。そして、駆動回転するカッターロール501とアンビルロール502の間のロール間隙にシート60を通す際に、シート60のCD方向の両端部の切断ラインSで切断を行うことで、シート部材70が製造される。
【0073】
図10は、
図6中のAにおけるシート60のCD方向についての断面を模式的に示す図である。切断ステップにおける切断前の状態の、織物40のCD方向の長さは、繊維集合体50のCD方向の長さより短い。そのため、交絡後のシート60は、
図10に示すように、繊維集合体50は、織物40とCD方向において重ならない領域をCD方向の両端部に有する。繊維集合体50は、その外形が定められたものではないため、シート60の状態におけるCD方向の両端部は、それぞれ繊維密度が不揃いとなりやすい。そのため、シート部材70の製造においては、繊維集合体50の両端部を所定領域だけ切り落とす必要がある。一方、織物40は、その外形が定められた形状を有しているため、繊維集合体50のように必ずしも切り落とす必要はない。そのため、織物40を過度に切り落としてしまう恐れを軽減させるために、織物40のCD方向の長さW40を繊維集合体50のCD方向の長さW50以下とし(W40≦W50)、より好ましくは、織物40のCD方向の長さW40を繊維集合体50のCD方向の長さW50より短くすることで(W40<W50)、繊維密度が安定しない繊維集合体50のCD方向の両端部を切り落とす一方で、織物40を過度に切り落としてしまう恐れを軽減させることができる。切り落とされた織物40による廃材を減少させることができるため、織物40についての歩留まりを向上させることができ、シート部材70をより低コストで製造することができる。
【0074】
<第2実施形態のシート部材70の製造方法>
図11は、第3実施形態のシート部材70の製造方法に使用される製造装置101の一部を模式的に示す図である。製造装置101の基本的な構成は、製造装置100と同じである。製造装置101は、上流側搬送装置130において織物40を搬送せず、供給回転体180の回転によって第1回転体150に向かって織物40が搬送される。つまり、第2実施形態において、配置ステップは、第1回転体150の外周面150a上で行われる。以下の説明において、第1実施形態の製造装置100と同じ部材等は同じ符号とし、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0075】
<<第1搬送ステップ>>
第1搬送ステップにおいて、上流側搬送装置130は第1回転体150に向かって繊維集合体50を搬送し、供給回転体180は、その回転によって織物40を第1回転体150に供給する。なお、供給回転体180は、連続した織物40をロール状に巻き取った所謂原反ロールである。供給回転体180を用いて織物40を搬送することで、上流側搬送ベルト130aは繊維集合体50のみを搬送することができ、繊維密度を安定させた搬送状態をより長くすることができる。そのため、繊維密度を均一に保ちやすくなる。この供給回転体180から搬送される織物40のCD方向の長さ(W40)は、上流側搬送装置130によって搬送される繊維集合体50のCD方向の長さ(W50)より短い(W40<W50)。
【0076】
織物40の搬送は、一定の速度で第1回転体150に供給することが望ましいところ、供給回転体180のように、原反ロールを用いた場合には、仮に、供給回転体180の周速を第1回転体150の周速と同じ速度となるように制御したとしても、実際には両者は必ずしも同じとはならない。これら二つの速度が同じとならない場合には、張力のばらつきを生じることがある。そのため、
図11に示すように、供給回転体180と第1回転体150との間に織物40の張力制御装置800を設けることが好ましい。
【0077】
張力制御装置800は、第1回転体150に供給するときの織物40の張力の大きさが所定の値となるように調整する。張力制御装置800は、一対の固定ロール801と、一対の固定ロール801の間に設けられたダンサーロール802を備える。ダンサーロール802が、鉛直方向に往復移動可能に設けられており、ダンサーロール802が自重で鉛直方向に移動することで、織物40を繰り出すテンションを一定に保っている。このダンサーロール802の上下方向への移動によって、供給回転体180の周速と第1回転体150の周速との誤差を吸収して、第1回転体150へ供給する織物40の張力を一定に保ちやすくする。このように、張力制御装置800を備えることで、織物40が垂れてしまうことを防ぎ、張力を一定にした状態の織物40と繊維集合体50とを重ね合せることができるため、繊維集合体50の繊維密度を均一にしやすくし、製造後のシート部材70の繊維集合体50の繊維密度によるムラを軽減させやすくすることができる。
【0078】
なお、供給回転体180の周速が、第1回転体150の周速と等しいことが好ましい。織物40が搬送で緩んでしまう恐れを軽減することができる。また、第1回転体150の周速が、上流側搬送ベルト130aの移動速度以上であることが好ましい。繊維集合体50が、第1回転体150で上流側搬送ベルト130a以上の速度で搬送されることで、第1回転体150の外周面150aで繊維集合体50の繊維が搬送方向に広げられながら搬送されやすくなる。そのため、上流側搬送ベルト130aから第1回転体150への繊維集合体50を受け渡す際に生じる繊維集合体50の繊維密度の偏りを緩和させやすくする。
【0079】
<第3実施形態のシート部材70の製造方法>
図12は、第3実施形態のシート部材70の製造方法に使用される製造装置102の一部を模式的に示す図である。製造装置102は、製造装置100、101と同様に、繊維集合体50と連続した状態の織物40とを交絡させて一体化させたシート部材70を製造する装置である。製造装置102は、搬送方向の上流側から上流側搬送装置130と水供給装置200、第1回転体150と第1噴射装置300、第2回転体160と第2噴射装置、下流側搬送装置140、脱水装置250、切断装置500を備える。以下の説明において、第1実施形態の製造装置100と同じ部材等は同じ符号とし、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0080】
製造装置102において、上流側搬送ベルト130aの搬送面が軸C150より高い位置に設けられていることが好ましい。このようにすることで、上流側搬送ベルト130aから第1回転体150へ織物40と繊維集合体50を受け渡す際の高低差をより小さくし、搬送経路中に生じる勾配をより小さくすることができるため、繊維集合体50の繊維密度の偏りを軽減させやすくなる。
【0081】
<<第1搬送ステップ>>
第1搬送ステップは、上流側搬送装置130を用いて織物40と、織物40の上から繊維集合体50を載置した状態で搬送する。上流側搬送装置130は、上流側搬送ベルト130aとロール130bを備える。このとき、上流側搬送ベルト130aを平面視すると、織物40は、その略全域が繊維集合体50で覆われた状態で搬送されている。
【0082】
水供給装置200は、流体である水fを噴射する装置であり、上流側搬送ベルト130aの上方に設けられている。
図13は、水供給装置200を模式的に示す図である。
図13において、上流側搬送装置130等は省略して示している。水供給装置200が、上流側搬送ベルト130aに向かって水fを供給することで、上流側搬送ベルト130aで搬送されている繊維集合体50を湿らせ、繊維集合体50の厚みを薄くする。繊維集合体50の繊維は、軽く柔らかい素材であり、平たく言うと、フワフワな状態であるため、織物40交絡させるまでの搬送中に動いてしまったり、後のステップでの第1噴射装置300による水fの噴射の圧力で繊維が飛ばされてしまったりしてしまい、繊維が部分的に多くなったり、少なくなってしまったりする恐れがある。そこで、予め第1搬送ステップにおいて繊維集合体50に水fを噴射することで、繊維を湿らせて、繊維集合体50の厚みを薄くすることで、繊維が動きにくい状態とすることが好ましい。つまり、水供給装置200は、あくまでも繊維集合体50に水を含ませることが目的であるため、この時点では織物40に繊維集合体50を交絡させない。これにより、第1搬送ステップ中の搬送において、繊維密度の偏りが原因とする製造後のシート部材70の繊維集合体50の繊維のムラが生じる恐れを軽減させることができる。なお、繊維集合体50を水で湿らせる方法としては、水分を滴下させたり、スプレー状の水を噴射したり、水を張った容器に繊維集合体50を浸水させてもよい。
【0083】
そして、ロール130bの下方を通過させて、第1回転体150に向けて搬送する。上流側搬送装置130から第1回転体150に織物40及び繊維集合体50を受け渡す際に、互いに対向するロール130bと上流側搬送ベルト130aとの間の間隙に繊維集合体50を通過させる。ロール130bと上流側搬送ベルト130aとで繊維集合体50を挟むことで、繊維集合体50を厚さ方向に潰して、繊維集合体50の厚みを薄くして、繊維の動きを落ち着かせてもよい。これによって、第1搬送ステップ中に繊維が動いて、繊維密度の偏りが生じる恐れを軽減させ、製造後のシート部材70の繊維集合体50の繊維のムラが生じてしまう恐れを軽減させることができる。
【0084】
<<第2搬送ステップ>>
第2搬送ステップにおいて、第1回転体150の外周面150aに織物40を接触させた状態で搬送し、搬送面に対して最も外側で繊維集合体50を搬送することが好ましい。繊維集合体50の繊維は、軽くて自由度が高い性質を有するため、
図12に示すように、第1搬送ステップから第2搬送ステップへの搬送において搬送経路に勾配を有する場合、上流側搬送装置130から第1回転体150に織物40及び繊維集合体50を受け渡すロール130b付近で、繊維集合体50の搬送が滞りやすく、繊維密度が変化してしまう恐れがある。外周面150aに織物40を接触させた状態で搬送し、搬送面に対して最も外側で繊維集合体50を搬送すると、繊維集合体50の外側の面(織物40に対向する側とは逆側の面)は拘束されておらず自由度が高い状態で搬送される。そのため、第1回転体150を用いて搬送している間、繊維集合体50の繊維を搬送方向に沿って広げながら搬送しやすくなる。その結果、織物40に対して繊維がより広げられた繊維集合体50に第1噴射装置300を用いて高圧の水fを噴射することで、織物40に対して繊維集合体50の繊維を均一に交絡させやすくなり、製造後のシート部材70に生じる繊維集合体50の繊維のムラを軽減させやすくすることができる。
【0085】
続いて、第1回転体150から第2回転体160にシートを受け渡し、第2回転体160の回転によるシート60の搬送を行う。第2噴射装置400は、シート60に向けて、第2回転体160の径方向の外側から内側に向かって水fを噴射する。第2噴射装置400は、1つの噴射ノズルを備える。第2噴射装置400による水fの噴射によって、シート60を、織物40に繊維集合体50のより多くの繊維が絡まった状態とすることができる。なお、噴射する水流の噴射圧を、噴射ノズル301を最も小さくし、噴射ノズル302、噴射ノズル303の順に大きくすることがより好ましい。上流側において、繊維集合体50の繊維を水流で飛ばしてしまう恐れを軽減しつつ、下流側において、より多くの繊維を織物40に絡ませた状態とすることができるからである。
【0086】
<<脱水ステップ>>
第2回転体160の回転による搬送後、第1実施形態と同様に、シート60は、第2回転体160から下流側搬送装置140へ受け渡されて、その後、脱水装置250に搬送されて、脱水処理を行う。
【0087】
<<切断ステップ>>
シート60の脱水処理後に、切断処理を行う。第1実施形態と同様に、脱水装置250から受け渡されたシート60は、切断装置500において、CD方向の両端部を切断ラインSで切断してシート部材70とされる(
図10参照)。このとき、織物40のCD方向の長さW40を繊維集合体50のCD方向の長さW50より短くすることで(W40<W50)、繊維密度が安定しない繊維集合体50のCD方向の両端部を切り落とす一方で、織物40を過度に切り落としてしまう恐れを軽減させることができる。
【0088】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0089】
上述の実施形態においては、回転体(第1回転体150、第2回転体160)を用いて搬送しつつ、織物40に繊維集合体50を交絡させたが、これに限られない。例えば、水平な搬送ベルトを用いて搬送しつつ、搬送ベルトに向かって流体を噴射して、織物40に繊維集合体50を交絡させてもよい。
【0090】
さらに、上述の実施形態において、第2搬送ステップにおいて、第1回転体150及び第2回転体160を用いて織物40及び繊維集合体50を搬送させたが、これに限られない。例えば、第1回転体150を用いて搬送しつつ交絡処理を行った後に、そのまま下流側搬送装置140に向けて搬送させてもよいし、全ての工程(第1搬送ステップから切断ステップまで)を、搬送ベルトを有する搬送装置上で行ってもよい。なお、第2回転体160を設けない場合において、下流側搬送装置140の搬送速度が第1回転体150の周速以上であることが好ましい。これによって、第1回転体150上で搬送される織物40が緩んでしまったり、繊維集合体50の搬送が滞ってしまう恐れを軽減させることができる。また、第2回転体160を設ける場合、設けない場合に関わらず、下流側搬送装置140が吸引機構を備えて、下流側搬送装置140を用いてシート60(織物40と繊維集合体50)を搬送しつつ、織物40と繊維集合体50とを交絡させてもよい。
【0091】
また、上述の実施形態においては、配置ステップにおいて、繊維集合体50の上に織物40を載置することにしたが、これに限られない。配置ステップにおいて、織物40の上に繊維集合体50を載置して、交絡ステップへと搬送を行ってもよい。
【0092】
上述の実施形態においては、水供給装置200やロール130b等を用いて繊維集合体50の厚みを薄くさせたが、必ずしも水供給装置200を備えない構成であってもよいし、ロール130bと上流側搬送ベルト130aとが繊維集合体50を挟んで対向する構成を有していなくてもよい。また、水供給装置200とロール130bのいずれか一方を備える構成であってもよい。いずれか一方でも備えることで、繊維集合体50の厚みをより薄くすることができる。
【0093】
上述の実施形態においては、第1噴射装置300に複数の噴射ノズルを設けたが、これに限られない。例えば、第1噴射装置300に1つの噴射ノズルを備えるものであってもよいし、第1回転体150に向かって水流を噴射する複数の噴射装置を設けてもよい。また、第1噴射装置300に備える噴射ノズルの数も任意に変更可能である。第2噴射装置400についても同様である。
【0094】
さらに、上述の実施形態においては、第1噴射装置300及び第2噴射装置400から噴射する流体として水fを用いたがこれに限られない。例えば、気体であってもよいし、水に限られず、所定の成分や粘度を有する液体等であってもよい。