特許第6965018号(P6965018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965018
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20211028BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20211028BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20211028BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01L21/304 622Z
   B24B37/24 E
   B24B37/00 H
   B24B37/12 D
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-91044(P2017-91044)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-190812(P2018-190812A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
(72)【発明者】
【氏名】占部 裕之
【審査官】 湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−244537(JP,A)
【文献】 特開2013−247132(JP,A)
【文献】 特開2015−046550(JP,A)
【文献】 特開2016−012594(JP,A)
【文献】 特開平07−321119(JP,A)
【文献】 特開2009−123724(JP,A)
【文献】 特開2017−034129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/322
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着し、チャックテーブルの保持面に該保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
研磨パッドにpH10以上12以下のアルカリ溶液を供給しつつ、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することによりウエーハの裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、
該歪層除去工程を実施した後に、該アルカリ溶液の供給を停止して該研磨パッドに純水及びシリコンよりモース硬度が高く研磨面にゲッタリング層を形成するゲッタリング用微粒子を供給しつつ、該研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程と、を含み、
該ゲッタリング層形成工程の実施前に、各ウエーハの結晶欠陥を含むウエーハ種類及び/又はウエーハ厚み情報に基づくゲッタリング用微粒子の粒径及び供給量をウエーハID毎に制御部で記憶しておき、
該ゲッタリング層形成工程においては、該制御部によって該ウエーハIDに応じてゲッタリング用微粒子の粒径及び供給量を制御して供給すること、を特徴とするウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハにゲッタリング層を形成するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、複数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って分割することにより、半導体デバイスを形成する。半導体デバイスの小型化及び軽量化を図るために、半導体ウエーハを分割する前に、半導体ウエーハの裏面を研削している。このように半導体ウエーハを研削すると、半導体ウエーハの裏面にマイクロクラックからなる1μm程度の研削歪層が生成される。半導体ウエーハの厚みが100μm以下に薄くなると、この研削歪層により半導体デバイスの抗折強度が低下するという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するために、半導体ウエーハを所定の厚みに研削した後、半導体ウエーハの裏面にポリッシング加工、ウエットエッチング加工、ドライエッチング加工等を施し、半導体ウエーハの裏面に生成された研削歪層を除去し、半導体デバイスの抗折強度の低下を防いでいる。
【0004】
一方で、DRAMやフラッシュメモリ等のようにメモリ機能を有する半導体デバイスが複数形成された半導体ウエーハにおいては、研削歪層を除去すると、メモリ機能が低下するという問題がある。これは、半導体ウエーハ裏面の研削歪層が除去されるとゲッタリング効果が消失して、半導体ウエーハの内部に含有した銅等の金属イオンがデバイスの形成された表面側に浮遊することで電流リークが発生するためと考えられる。
【0005】
このような問題を解消するために、半導体ウエーハの裏面に0.2μm以下の厚さのマイクロクラックからなるゲッタリング層を形成するための研磨パッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の研磨パッドは、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子(研磨用砥粒)と、シリコンよりモース硬度が高いゲッタリング用微粒子(ゲッタリング用砥粒)とを混入した液状結合剤を不織布に含浸させて構成されている。この研磨パッドにより、半導体ウエーハの裏面に残存した研削砥石による研削歪層を除去できるとともに、抗折強度を低下させない僅かな傷を半導体ウエーハの裏面に形成してゲッタリング層を形成することができる。これにより、ゲッタリング効果を有する半導体ウエーハの製造が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−46550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウエーハを構成するシリコン基板における結晶欠陥は、ゲッタリング効果と同様の効果を奏する。このため、シリコン基板の結晶欠陥が多い場合には、シリコン基板はある程度ゲッタリング効果を有しているため、結晶欠陥が少ない場合と比べて形成されるゲッタリング層は薄くてよい。これに対して、シリコン基板の結晶欠陥が少ない純度の高いウエーハの場合には、結晶欠陥が多い場合と比べてゲッタリング層を厚く形成する必要がある。このため、特許文献1記載の所定量のゲッタリング用砥粒が含まれる研磨パッドを使用する場合、結晶欠陥の少ない純度の高いウエーハは、ゲッタリング層を厚く形成するために、結晶欠陥が多いウエーハと比べて加工時間が長くなり、ゲッタリング層の形成に長時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ウエーハの種類や厚みに応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できるウエーハの加工方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のウエーハの加工方法は、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を貼着し、チャックテーブルの保持面に保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、研磨パッドにpH10以上12以下のアルカリ溶液を供給しつつ、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドを回転するとともにチャックテーブルを回転させながら研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することによりウエーハの裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、歪層除去工程を実施した後に、アルカリ溶液の供給を停止して研磨パッドに純水及びシリコンよりモース硬度が高く研磨面にゲッタリング層を形成するゲッタリング用微粒子を供給しつつ、研磨パッドを回転するとともにチャックテーブルを回転させながら研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程と、を含み、ゲッタリング層形成工程の実施前に、各ウエーハの結晶欠陥を含むウエーハ種類及び/又はウエーハ厚み情報に基づくゲッタリング用微粒子の粒径及び供給量をウエーハID毎に制御部で記憶しておき、ゲッタリング層形成工程においては、制御部によってウエーハIDに応じてゲッタリング用微粒子の粒径及び供給量を制御して供給する。
【0010】
これらの構成によれば、ウエーハの結晶欠陥の状態や厚みに応じて、ゲッタリング用微粒子の粒径及び/又は供給量を制御できる。これにより、ウエーハの種類に応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できる。このため、ウエーハに適切な厚みのゲッタリング層を形成でき、ウエーハの加工時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウエーハの種類や厚みに応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る研磨装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る研磨用アルカリ溶液及びゲッタリング用微粒子の供給系統を示す図である。
図3】本実施の形態に係るウエーハ保持工程を示す図である。
図4】本実施の形態に係る歪層除去工程及びゲッタリング層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、研磨装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る研磨装置の斜視図である。なお、本実施の形態に係る研磨装置は、図1に示すような研磨専用の装置に限定されず、例えば、研削、研磨、洗浄等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
【0014】
図1に示すように、研磨装置1は、後述する研磨パッド47を用いて、化学機械研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)によってウエーハWを研磨するように構成されている。ウエーハWはシリコンウエーハからなり、表面W1に複数のストリートが格子状に形成され、ストリートによって区画された領域にIC、LSI等のデバイス(不図示)が形成されている。ウエーハWの裏面W2を研削して所定の厚み(例えば100μm)にする際し、ウエーハWの表面W1に形成されるデバイスを保護するために、ウエーハWの表面W1には保護部材としての保護テープTが貼着されている。ウエーハWは、被加工面である裏面W2を上側にして後述するチャックテーブル21に保持される。
【0015】
研磨装置1の基台11の上面には、Y軸方向に延在する矩形状の開口が形成され、この開口はチャックテーブル21とともに移動可能なテーブルカバー12及び蛇腹状の防水カバー13に覆われている。防水カバー13の下方には、チャックテーブル21をY軸方向に移動させる移動手段24と、チャックテーブル21を連続回転させる回転手段22とが設けられている。チャックテーブル21の表面には、多孔質のポーラス材によって保護テープTを介してウエーハWを保持する保持面23が形成されている。保持面23は、チャックテーブル21内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されている。
【0016】
移動手段24は、基台11上に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール51と、一対のガイドレール51にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸テーブル52とを有している。Y軸テーブル52の背面側には、ナット部(不図示)が形成され、このナット部にボールネジ53が螺合されている。そして、ボールネジ53の一端部に連結された駆動モータ54が回転駆動されることで、チャックテーブル21が一対のガイドレール51に沿ってY軸方向に動かされる。回転手段22は、Y軸テーブル52上に設けられており、チャックテーブル21をZ軸回りに回転可能に支持している。
【0017】
基台11にはコラム14が設置されており、コラム14には、研磨手段41をZ軸方向に加工送りする加工送り手段31が設けられている。加工送り手段31は、コラム14に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール32と、一対のガイドレール32にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル33とを有している。Z軸テーブル33の背面側にはナット部(不図示)が形成され、このナット部にボールネジ34が螺合されている。ボールネジ34の一端部に連結された駆動モータ35によりボールネジ34が回転駆動されることで、研磨手段41がガイドレール32に沿って加工送りされる。
【0018】
研磨手段41は、ハウジング42を介してZ軸テーブル33の前面に取り付けられており、スピンドルユニット43の下部に研磨パッド47を設けて構成されている。スピンドルユニット43にはフランジ45が設けられ、フランジ45を介してハウジング42に研磨手段41が支持される。スピンドルユニット43の下部にはマウント44が取り付けられ、マウント44には支持基台46と研磨パッド47から構成される研磨工具48が装着される。研磨手段41には、研磨用アルカリ溶液の配管、及びゲッタリング用微粒子の配管が接続されている。バルブ65が開かれると、研磨手段41にアルカリ溶液が研磨液として供給され、バルブ66が開かれると、研磨手段41にゲッタリング用微粒子が研磨液として供給される。
【0019】
研磨装置1には、装置各部を統括制御する制御部70が設けられている。制御部70は、バルブ65、66、後述するバルブ67、68を制御する。制御部は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。このように構成された研磨装置1では、研磨パッド47がZ軸回りに回転されながらチャックテーブル21に保持されるウエーハWに接近される。そして、研磨パッド47がウエーハWの裏面W2に回転接触することでウエーハWが研磨される。
【0020】
ここで、ウエーハを研削することによって生じる切削歪層は研磨加工により除去されて抗折強度の低下が防止されるが、切削歪層を除去するとゲッタリング効果が消失する問題があった。このため、固相反応微粒子とゲッタリング用微粒子とが含まれる研磨パッドを用いて、ウエーハの研削歪層を除去するとともに、ウエーハの裏面にゲッタリング層を形成していた。
【0021】
しかしながら、固相反応微粒子とゲッタリング用微粒子とが含まれる研磨パッドにおいては、ウエーハの研削歪層を除去する加工時間を短縮するためには、研磨パッドに固定される固相反応微粒子の割合を多くする必要がある。これに対し、ウエーハにゲッタリング層を形成する加工時間を短縮するためには、研磨パッドに固定されるゲッタリング用微粒子の割合を多くする必要がある。このため、研削歪層の除去とゲッタリング層の形成の両方の加工時間を、ともに短縮することはできない場合があった。
【0022】
また、ウエーハの結晶欠陥や厚みごとに、必要なゲッタリング層の厚みは異なる。研磨パッドにおいて固定されるゲッタリング用微粒子の割合が少ない場合、厚いゲッタリング層を形成する必要があるウエーハは、加工に時間が掛かる問題があった。そこで、本実施の形態においては、遊離のゲッタリング用微粒子を用いて、その平均粒径及び/又は供給量を制御することにより、適切な加工条件でウエーハにゲッタリング層を形成するとともに、ウエーハの加工時間を短縮する。
【0023】
まず、図2を参照して、研磨用アルカリ溶液及びゲッタリング用微粒子の供給系統について詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係る研磨用アルカリ溶液及びゲッタリング用微粒子の供給系統を示す図である。円環状の支持基台46に研磨パッド47が貼着され、研磨工具48が構成される。支持基台46はアルミ合金等によって形成されており、中央部分には研磨液が通る穴46aが開口されている。研磨パッド47は円環状に形成されており、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子が含まれている。また、研磨パッド47の中央部分には、支持基台46に形成される穴46aに連通する穴47cが開口されている。
【0024】
研磨パッド47は、シリコンウエーハと固相反応を誘発する固相反応微粒子が液状結合材に投入され、この液状結合材を含浸させた不織布が乾燥されて形成される。固相反応微粒子としては、SiO、CeO、ZrO等が用いられ、固相反応微粒子の粒径は、例えば2μmであることが好ましい。また、研磨パッド47に含まれる固相反応微粒子として、2種類以上の固相反応微粒子を用いることができる。また、液状結合剤としては、例えばウレタンを溶媒で溶解した液体が用いられ、溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル等が用いられる。
【0025】
このように構成される研磨工具48は、スピンドルユニット43の下端に取り付けられているマウント44の下面に装着される。この際、スピンドルユニット43の中心に形成される流路43aが、支持基台46及び研磨パッド47に形成される穴46a、47cに連通する。
【0026】
スピンドルユニット43の流路43aには、バルブ65、66を介してそれぞれ研磨用アルカリ溶液供給源61、純水供給源62が接続されている。バルブ66と純水供給源62とをつなぐ配管の途中には、バルブ67、68を介してそれぞれゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64が接続されている。後述する研磨用アルカリ溶液供給源61のアルカリ溶液又はゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64のゲッタリング用微粒子A、Bは、流路43a及び穴46a、47cを通って研磨パッド47に供給される。
【0027】
研磨用アルカリ溶液供給源61には、アルカリ溶液が収容されている。研磨用アルカリ溶液供給源61におけるアルカリ溶液は、pH10以上pH12以下であることが好ましい。pH10以上pH12以下のアルカリ溶液としては、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、ピペラジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が用いられる。
【0028】
ゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64には、それぞれ平均粒径の異なるゲッタリング用微粒子A、Bが純水に分散された状態で収容されている。ゲッタリング用微粒子供給源A63には、例えば0.1μmの平均粒径のゲッタリング用微粒子Aが収容され、ゲッタリング用微粒子供給源B64には、例えば1μmの平均粒径のゲッタリング用微粒子Bが収容される。ここで、ゲッタリング用微粒子A、Bの大きさは平均粒径であるため、各微粒子の粒径にはバラツキがある。
【0029】
ゲッタリング用微粒子A、Bは、シリコンよりモース硬度が高い微粒子であり、モース硬度が9以上であることが好ましい。ゲッタリング用微粒子としては、ダイヤモンド、SiC、Al、WC、TiN、TaC、ZrC、AlB、BC等が用いられる。
【0030】
制御部70は、上記のようにバルブ65、66、67、68の開閉及び開き具合を制御する。制御部70では、各ウエーハWの結晶欠陥及び厚みの情報等に基づき、ウエーハID毎の各ウエーハWのゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64としての使用タンク、ゲッタリング用微粒子A、Bの供給量の情報等が予め記憶されている。制御部70は、この情報に基づいてバルブ67、68を制御することにより、研磨パッド47に供給されるゲッタリング用微粒子A、Bの平均粒径を切り替えるとともに、供給量を調整する。
【0031】
ウエーハから切削歪層を除去する際は、制御部70によりバルブ65が開かれて、アルカリ溶液が研磨用アルカリ溶液供給源61から流路43aに供給される。
【0032】
ウエーハWにゲッタリング層を形成する際には、制御部70によりバルブ66が開かれる。このとき、バルブ67又はバルブ68が開かれて、ゲッタリング用微粒子供給源A63からゲッタリング用微粒子A又はゲッタリング用微粒子供給源B64からゲッタリング用微粒子Bが供給される。ゲッタリング用微粒子A、Bはそれぞれ、純水供給源62から供給される純水と配管内で混合され、流路43aに供給される。なお、各ゲッタリング用微粒子A、Bは、配管内で純水と混合される構成としたが、配管に混合室を設け、混合室内で純水と混合される構成としてもよい。これにより、各ゲッタリング用微粒子A、Bが純水により均一に混合される。ゲッタリング用微粒子供給源A63からのゲッタリング用微粒子A、ゲッタリング用微粒子供給源B64からのゲッタリング用微粒子Bの供給量は、制御部70によりバルブ67、68の開き具合を調整することで、制御することができる。
【0033】
このように、制御部70でバルブ67、68を制御することにより、ゲッタリング層の形成に用いられるゲッタリング用微粒子A、Bの平均粒径を切り替えるとともに、供給量を調整できる。このため、ウエーハWの結晶欠陥及び厚みに応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できる。
【0034】
以下、図3及び図4を参照して、本実施の形態に係るウエーハWの加工方法について説明する。ウエーハWの加工方法は、チャックテーブル21にウエーハWを保持するウエーハ保持工程と、アルカリ溶液を供給しながら研磨パッド47でウエーハWの裏面W2を研磨して切削歪層を除去する歪層除去工程と、純水及び遊離のゲッタリング用微粒子を供給しながら研磨パッド47でウエーハWの裏面W2に傷を形成するゲッタリング層形成工程とを含んでいる。図3は本実施の形態に係るウエーハ保持工程、図4は本実施の形態に係る歪層除去工程及びゲッタリング層形成工程を示す図である。図4Aは歪層除去工程、図4B及び図4Cはゲッタリング層形成工程を示す図である。
【0035】
図3に示すように、まずウエーハ保持工程が実施される。所定の厚みに研削加工されたウエーハWは、保護テープTが貼着される表面W1を下側に、裏面W2を上側にしてチャックテーブル21に搬入され、ウエーハWは保護テープTを介してチャックテーブル21の保持面23に保持される。
【0036】
図4Aに示すように、ウエーハ保持工程の後には、歪層除去工程が実施される。移動手段24(図1参照)によりチャックテーブル21が研磨手段41の下方に移動され、チャックテーブル21の回転軸と研磨パッド47の回転軸とがずれるように位置付けられる。
【0037】
チャックテーブル21がZ軸回りに回転されるとともに、研磨パッド47もZ軸回りにチャックテーブル21と同一方向に回転される。そして、加工送り手段31(図1参照)により例えば300g/cmの研磨圧力で研磨パッド47がウエーハWの裏面W2に向けて加工送りされ、研磨パッド47の研磨面がウエーハWの裏面W2全体に回転接触されウエーハWが研磨される。
【0038】
このとき、バルブ66が閉じられ、バルブ65が開かれて研磨用アルカリ溶液供給源61からスピンドルユニット43内の流路43aにアルカリ溶液が供給される。これにより、支持基台46に形成される穴46aを介して研磨パッド47に形成される穴47cに、例えば1分間に0.5リットルの割合でアルカリ溶液が供給される。アルカリ溶液は研磨パッド47の穴47cから研磨面に広がり、研磨パッド47にアルカリ溶液が供給されながらウエーハWが研磨される。なお、研磨レートは例えば0.72μm/分に設定され、研磨時間は例えば2分間に設定される。
【0039】
このようにして歪層除去工程を実施することにより、研磨パッド47に含まれる固相反応微粒子を用いて、ウエーハWの裏面W2が所定量研磨されるとともにアルカリ溶液によりエッチングされるため、研削加工でウエーハWの裏面W2に生成された研削歪層が除去される。
【0040】
図4Bに示すように、歪層除去工程の後には、ゲッタリング層形成工程が実施される。チャックテーブル21がZ軸回りに回転されるとともに、研磨パッド47もZ軸回りにチャックテーブル21と同一方向に回転される。そして、加工送り手段31(図1参照)により例えば50g/cmの研磨圧力で研磨パッド47がウエーハWの裏面W2に向けて加工送りされ、研磨パッド47の研磨面がウエーハWに回転接触されてウエーハWが研磨される。
【0041】
このとき、バルブ65が閉じられて流路43aへのアルカリ溶液の供給が停止され、バルブ66が開かれて、純水供給源62からの純水及びゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64からのゲッタリング用微粒子A、Bの供給に切り替えられる。バルブ67又はバルブ68が開かれて、ゲッタリング用微粒子供給源A63からゲッタリング用微粒子A又はゲッタリング用微粒子供給源B64からゲッタリング用微粒子Bが供給される。ゲッタリング用微粒子A、Bはそれぞれ、純水供給源62から供給される純水と混合され、流路43aに供給される。これにより、支持基台46に形成される穴46aを介して研磨パッド47に形成される穴47cに、純水及びゲッタリング用微粒子A又はゲッタリング用微粒子Bが供給され、純水及びゲッタリング用微粒子A又はゲッタリング用微粒子Bは穴47cから研磨面に広がる。
【0042】
図4Cに示すように、研磨パッド47に純水及び各ゲッタリング用微粒子A、Bが供給されながら研磨パッド47がウエーハWに回転接触されている状態で、移動手段24(図1参照)により矢印Nの方向にチャックテーブル21が移動される。すなわち、ウエーハWの裏面W2が摺動されながら、チャックテーブル21の回転軸と研磨パッド47の回転軸とがY軸方向に離れるように移動される。チャックテーブル21の矢印Nで示す方向への移動は、例えば移動速度0.67mm/秒で1分間実施され、チャックテーブル21は約40mm移動される。これにより、ウエーハWの裏面W2には僅かな傷が付けられる。このようにしてゲッタリング層形成工程を実施することにより、遊離のゲッタリング用微粒子が強く働いて、ウエーハWの裏面W2にゲッタリング層を形成することができる。
【0043】
ここで、例えば表1に示すように、制御部70(図2参照)では、各ウエーハWの結晶欠陥の情報に基づき、ウエーハID毎に例えばゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64としての使用タンク、ゲッタリング用微粒子A、Bの供給量の情報が記憶されている。表1において、例えば、ウエーハID「A」は結晶欠陥が多いウエーハW、ウエーハID「B」はウエーハID「A」よりも結晶欠陥が少ないウエーハW、ウエーハID「C」は結晶欠陥が最も少ないウエーハWを示している。また、a<bである。
【0044】
【表1】
【0045】
ゲッタリング層形成工程において、制御部70はこの情報に基づき、バルブ67、68の開閉及び開き具合を制御する。例えばID「A」のウエーハWの場合、タンク1としてゲッタリング用微粒子供給源A63が選択され、バルブ67が開かれ、ゲッタリング用微粒子Aが研磨パッド47にa[g/l]供給される。これにより、ゲッタリング用微粒子Bより平均粒径が小さいゲッタリング用微粒子Aを用いて、ID「C」のウエーハWより薄いゲッタリング層が形成される。
【0046】
また、例えばID「B」のウエーハWの場合、タンク1としてゲッタリング用微粒子供給源A63が選択され、ID「A」のウエーハWの場合よりもバルブ67が大きく開かれ、ゲッタリング用微粒子Aが研磨パッド47にb[g/l]供給される。これにより、ID「A」のウエーハWの場合よりゲッタリング用微粒子Aの供給量が多い状態で、ID「B」のウエーハWが研磨されるため、ID「A」のウエーハWよりゲッタリング層が厚く形成される。ゲッタリング用微粒子Aの供給量を多くすることで、平均粒径0.1μmのゲッタリング用微粒子Aに含まれる粒径の大きい微粒子の供給量を多くできるため、0.1μmよりも粒径の大きいゲッタリング用微粒子を用いた場合と同様の効果を得ることができる。これにより、ウエーハWの加工速度が上がり、ウエーハWに所定の厚みのゲッタリング層を形成する時間を短縮できる。
【0047】
また、例えばID「C」のウエーハWの場合、タンク2としてゲッタリング用微粒子供給源B64が選択され、バルブ68が開かれ、ゲッタリング用微粒子Bが研磨パッド47にc[g/l]供給される。これにより、ゲッタリング用微粒子Aより平均粒径が大きいゲッタリング用微粒子Bを用いて、ID「B」のウエーハWより厚いゲッタリング層が形成される。なお、ウエーハWにおける結晶欠陥の量に応じて、ゲッタリング用微粒子A、Bの粒径及び/又は供給量を制御する構成について説明したが、ウエーハWの厚みに応じてゲッタリング用微粒子A、Bの粒径及び/又は供給量を制御する構成としてもよい。
【0048】
このように、研磨装置1では、例えば、複数の種類の平均粒径のゲッタリング用微粒子A、Bがそれぞれ収容されたタンク1、2としてのゲッタリング用微粒子供給源A63、ゲッタリング用微粒子供給源B64が備えられており、バルブ67、68を介して流路43aに接続されている。ゲッタリング層形成工程において、例えばウエーハID毎に、制御部70で使用タンク1、2が選択され、バルブ67、68が制御されることにより、ゲッタリング用微粒子A、Bの平均粒径が切り替えられるとともに、バルブ67、68の開き具合が調整される。これにより、ウエーハWの結晶欠陥の状態や厚さに応じて、ゲッタリング用微粒子A、Bの平均粒径及び/又は使用タンク1、2から供給されるゲッタリング用微粒子A、Bの供給量を制御できる。このため、ウエーハWの種類や厚みに応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成でき、ウエーハWに適切な厚みのゲッタリング層を形成できる。ゲッタリング用微粒子A、Bの平均粒径及び/又は供給量の制御により、ゲッタリング層の形成を適切な加工条件で行うことができるため、ウエーハの加工時間を短縮できる。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係るウエーハWの加工方法は、ウエーハWの結晶欠陥の状態や厚みに応じて、ゲッタリング用微粒子A、Bの粒径及び/又は供給量を制御できる。これにより、ウエーハWの種類に応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できる。このため、ウエーハWに適切な厚みのゲッタリング層を形成でき、ウエーハWの加工時間を短縮できる。
【0050】
上記実施の形態においては、平均粒径の異なる2種類のゲッタリング用微粒子A、Bを用いる構成とし、研磨装置1に2つのゲッタリング用微粒子供給源A63、及びゲッタリング用微粒子供給源B64並びにバルブ67、68が備えられる構成としたが、これに限定されない。ウエーハWの結晶欠陥及び厚さに応じて、平均粒径の異なる複数の種類のゲッタリング用微粒子を使用することができ、研磨装置1に複数のゲッタリング用微粒子供給源及びバルブを備えることができる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、ゲッタリング層形成工程において、移動手段24によりチャックテーブル21がY軸方向に移動されることで(図1及び図4C参照)、ウエーハWの裏面W2にゲッタリング層が形成される構成としたが、これに限定されない。ウエーハWの裏面W2が摺動されながらチャックテーブル21の回転軸と研磨パッド47の回転軸とが離れるように移動されれば、研磨パッド47がチャックテーブル21に対して移動される構成としてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、加工装置としてウエーハを研磨する研磨装置を例示して説明したが、この構成に限定されない。本発明は、粒子を供給しながらウエーハWを研磨する他の加工装置に適用可能である。例えば、切削装置、研磨装置、洗浄装置及びこれらを組み合わせたクラスター装置等に適用されてもよい。
【0053】
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0054】
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0055】
本実施の形態では、本発明をウエーハを研磨加工する研磨装置に適用した構成について説明したが、複数の種類の粒子を用いてウエーハWを加工する加工装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、ウエーハの種類や厚みに応じて、適切な加工条件でゲッタリング層を形成できるという効果を有し、特にウエーハを研磨加工する研磨装置に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 研磨装置
21 チャックテーブル
23 保持面
46 支持基台
47 研磨パッド
48 研磨工具
61 研磨用アルカリ溶液供給源
62 純水供給源
63 ゲッタリング用微粒子供給源A
64 ゲッタリング用微粒子供給源B
65、66、67、68 バルブ
70 制御部
T 保護テープ(保護部材)
W ウエーハ
W1 (ウエーハの)表面
W2 (ウエーハの)裏面
図1
図2
図3
図4