特許第6965144号(P6965144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965144
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】洗浄液及びこれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/32 20060101AFI20211028BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C11D7/32
   H01L21/304 647A
   C11D17/08
   C11D7/26
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-239823(P2017-239823)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-109154(P2018-109154A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2020年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-257442(P2016-257442)
(32)【優先日】2016年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】並木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】原口 高之
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 宇耕
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/027772(WO,A1)
【文献】 特開2003−238509(JP,A)
【文献】 特開2001−288496(JP,A)
【文献】 特開2016−090753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、
前記アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する洗浄液であって、
前記アルカノールヒドロキシアミンの含有量が、前記洗浄液全量に対して0.001〜10質量%であり、
前記塩基性化合物の含有量が、前記洗浄液全量に対して0.5〜30質量%である、洗浄液
【化1】
(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Ra1及びRa2が同時に水素原子となることはない。)
【請求項2】
前記塩基性化合物は、第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、前記アルカノールヒドロキシアミン以外のヒドロキシアミン化合物、アルキルアミン、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の洗浄液。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるRa1とRa2とが同じ基である、請求項1又は2記載の洗浄液。
【請求項4】
前記アルカノールヒドロキシアミンの含有量は、前記洗浄液の0.001〜1質量%である、請求項1〜3の何れか1項記載の洗浄液。
【請求項5】
前記塩基性化合物の含有量は、前記洗浄液の1〜20質量%である請求項1〜4の何れか1項記載の洗浄液。
【請求項6】
pHが8以上である、請求項1〜5の何れか1項記載の洗浄液。
【請求項7】
リソグラフィー用洗浄液である、請求項1〜6の何れか1項記載の洗浄液。
【請求項8】
下記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、
前記アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する洗浄液であり、
前記洗浄液全量に対する前記アルカノールヒドロキシアミンの含有量が0.001〜10質量%であり、前記塩基性化合物の含有量が0.5〜30質量%である、洗浄液を製造する方法であって、
前記方法は、下記一般式(2)で表されるアルカノールアミンを酸化することにより前記アルカノールヒドロキシアミンを合成する工程、及び、
前記工程による反応生成物と、前記塩基性化合物とを配合する工程
を含む、方法。
【化2】
(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Ra1及びRa2が同時に水素原子となることはない。)
【化3】
(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。)
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項記載の洗浄液、又は請求項8記載の方法により製造される洗浄液を用いて基板を洗浄する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法を用いて基板を洗浄することを含む、前記基板を含む半導体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液及びこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、基板上に金属配線層、低誘電体層、絶縁層等を積層して形成されるものであり、このような半導体デバイスは、レジストパターンをマスクとしてエッチング処理を施すリソグラフィー法により、上記各層を加工して製造されている。
【0003】
上記リソグラフィー法において用いられるレジスト膜、一時的積層膜(犠牲膜ともいう)、さらにはエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物は、次工程の妨げとならないよう、また、半導体デバイスの支障とならないよう、洗浄液を用いて除去される。
【0004】
従来、このような半導体デバイス製造工程において使用される洗浄液として、ヒドロキシルアミン誘導体を含む洗浄液が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなヒドロキシルアミン誘導体を含む洗浄液は、それ以前の洗浄液に比べて、各種残渣物に対して除去性能が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/027772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、半導体デバイスの高密度化、高集積化に伴い、例えば、ダマシン法を用いた配線形成方法が採用されている。このような配線形成方法においては、半導体デバイスの金属配線層を構成する金属配線材料として、易腐食性金属、例えば、コバルト、銅、タングステンがそれぞれ単体又は合金の形態で又はSiGe等のシリサイドで、半導体デバイスにおける金属配線材料として採用されている。金属配線材料として用いられるコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属は、洗浄液により腐食しやすいという問題がある。そのため、基板洗浄時に、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対しても腐食を発生させにくい洗浄液が求められている。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、少なくともコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対して腐食抑制機能に優れた洗浄液、及びこれを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、洗浄液に特定のアルカノールヒドロキシアミンと塩基性化合物とを用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する洗浄液である。
【0010】
【化1】
(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Ra1及びRa2が同時に水素原子となることはない。)
【0011】
本発明の第2の態様は、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する洗浄液を製造する方法であって、該方法は、下記一般式(2)で表されるアルカノールアミンを酸化することにより該アルカノールヒドロキシアミンを合成する工程、及び、該工程による反応生成物と、該塩基性化合物とを配合する工程を含む、方法である。
【0012】
【化2】
(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくともコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対して腐食抑制機能に優れた洗浄液、及びこれを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<洗浄液>>
本発明の洗浄液は、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミン(本明細書において、単に「アルカノールヒドロキシアミン」と略称することがある。)と、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物(本明細書において、単に「塩基性化合物」と略称することがある。)とを含有する組成物であり、該組成物(典型的には液状組成物)は洗浄液、防食剤として好適である。
【0015】
また、本実施態様の洗浄液は、上記一般式(1)におけるRa1とRa2とが同じ基であることが好ましい。
【0016】
また、本実施態様の洗浄液において、塩基性化合物は、第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミン以外のヒドロキシアミン化合物、アルキルアミン、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0017】
さらに、本実施態様の洗浄液は、pHが8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。このようなpHの範囲では、一般に、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属、特にコバルトの酸化還元電位が低下する傾向にあり、従来はコバルトが腐食しやすかったが、本実施態様の洗浄液は、そのようなコバルトの腐食域に相当するpHであっても、コバルトの腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。
【0018】
かかる洗浄液は、半導体デバイス、液晶ディスプレイ(LCD)等の電子部品の洗浄液として好適である。例えば、半導体の製造工程における、リソグラフィー工程、エッチング工程、化学機械的研磨(CMP)等のFEOL(Front End of Line)工程や、配線形成工程等のBEOL(Back End of Line)工程や、シリコン貫通電極(TSV)や、C4工法(Controlled Collapse Chip Connection)等の後工程で使用される洗浄液として好適であり、金属を表面に有する基板の洗浄に好適に用いられる。金属を表面に有する基板とは、基板表面の少なくとも一部に金属が露出している基板のことをいう。金属は、例えば、半導体デバイスが形成された基板における金属配線層、プラグ、その他の金属構造物として形成される金属である。基板としては、シリコンウェーハ等の基板上に金属配線層、低誘電体層、絶縁層等を積層して半導体デバイスが形成された基板等が挙げられる。また、基板としては、ゲルマニウム等を含むシリサイド層を備えた基板であってもよい。本実施態様の洗浄液は、リソグラフィーにおける洗浄ないしリソグラフィー用洗浄に好適であり、リソグラフィー用洗浄液として用いることができる。
【0019】
上記金属としては、易腐食性金属である、コバルト、又はその合金等が挙げられる。コバルトの合金としては、他の遷移元素及び典型元素(例えば、リン、ホウ素、ケイ素等)の少なくとも1種との合金が挙げられ、具体的には、CoWPB等のリン及び/又はホウ素含有合金や、CoSi等のシリサイドが例示される。また、上記金属としては、他の易腐食性金属である銅、タングステン、ゲルマニウム又はこれらのいずれかの合金であってもよく、該合金としては、銅、及びタングステンの少なくとも1種と、他の遷移元素及び典型元素(例えば、リン、ホウ素、ケイ素等)の少なくとも1種との合金が挙げられ、具体的には、CuPB等のリン及び/又はホウ素含有合金や、WSi、SiGe等のシリサイドが例示される。後述するジアルカノールヒドロキシアミン及びジアルカノールアミンを用いる場合、コバルトのみならず、銅、ダングステン、SiGeに対しても腐食抑制効果が得られやすい。以下、本明細書において、「コバルト又はその合金」、「銅又はその合金」及び「タングステン又はその合金」を、それぞれ単に「コバルト」、「銅」及び「タングステン」と略称することがある。
【0020】
本実施態様の洗浄液は、アルカノールヒドロキシアミンと、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有することにより、少なくともコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対して優れた腐食抑制機能を有する。そのため、基板の洗浄時に、かかる洗浄液が基板表面のコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に接触しても、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食は良好に抑制される。その作用機構については明らかではないが、アルカノールヒドロキシアミンがもつ還元作用により、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食が抑制されると推察される。
【0021】
また、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンは、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミンに比べ、蒸気圧が低いことから、洗浄液を所定の温度まで昇温させて洗浄する場合であっても、組成変化が抑制され、洗浄液として有用である。例えば、蒸気圧が好ましくは0.3mmHg以下、より好ましくは0.1mmHg、さらに好ましくは0.05mmHg以下であるアルカノールヒドロキシアミンを用いることが好適である。
【0022】
さらに、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンは、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミンに比べ、水溶性が高いことから、溶媒ないし溶剤に原価の安い水を用いることができ、また、かかる水溶液による洗浄において残渣を抑制することができ、洗浄液として有用である。例えば、LogPが好ましくは0.5以下であるアルカノールヒドロキシアミンを用いることが好適である。
【0023】
LogP値は、オクタノール/水分配係数を意味し、Ghose,Pritchett,Crippenらのパラメータを用い、計算によって算出することができる(J.Comp.Chem.,9,80(1998)参照)。この計算は、CAChe 6.1(富士通株式会社製)のようなソフトウェアを用いて行うことができる。
【0024】
以下、各成分について説明する。
【0025】
<アルカノールヒドロキシアミン>
アルカノールヒドロキシアミンとしては、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンを用いる。式中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子を示す。但し、Ra1及びRa2が同時に水素原子となることはない。
【0026】
アルカノールヒドロキシアミンとしては、Ra1及びRa2がヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基であるジアルカノールヒドロキシアミンが好ましい。このようなアルカノールヒドロキシアミンを用いることは、コバルトのみならず、銅やタングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対する腐食抑制効果を得られる点で好ましい。
【0027】
a1及びRa2におけるヒドロキシ基は、それぞれ1個又は2個であってもよく、1個であっても本発明の効果を十分に発揮することができる。Ra1及びRa2におけるヒドロキシ基は、Ra1及びRa2における各アルキル基の炭素原子数が3である場合、第一級アルコール、又は第二級アルコールの何れを構成してもよく、また、Ra1及びRa2における各アルキル基の炭素原子数が4〜10である場合、第一級アルコール、第二級アルコール、又は第三級アルコールの何れを構成してもよいが、第二級アルコールを構成することが好ましい。
【0028】
a1及びRa2における炭素原子数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状の何れのアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、2−メチルペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、等が挙げられ、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基が好ましく、特に、エチル基、n―プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0029】
a1及びRa2における、1〜3個のヒドロキシル基を有する炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基の具体例としては、例えば1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、2,2−ジヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、2,2−ジヒドロキシ−n−プロピル基、2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、3,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,2,3−トリヒドロキシ−n−プロピル基、2,2,3−トリヒドロキシ−n−プロピル基、2,3,3−トリヒドロキシ−n−プロピル基、1−ヒドロキシイソプロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基、1,1−ジヒドロキシイソプロピル基、1,2−ジヒドロキシイソプロピル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、1,2,3−トリヒドロキシイソプロピル基、1−ヒドロキシ−n−ブチル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、3−ヒドロキシ−n−ブチル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、1,2−ジヒドロキシ−n−ブチル基、1,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基、1,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、2,2−ジヒドロキシ−n−ブチル基、2,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基、2,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、3,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基、3,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、4,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシ−n−ブチル基、1,2,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、1,3,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、2,2,3−トリヒドロキシ−n−ブチル基、2,2,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、2,3,3−トリヒドロキシ−n−ブチル基、3,3,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、2,4,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、3,4,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、2,3,4−トリヒドロキシ−n−ブチル基、1−ヒドロキシ−sec−ブチル基、2−ヒドロキシ−sec−ブチル基、3−ヒドロキシ−sec−ブチル基、4−ヒドロキシ−sec−ブチル基、1,1−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、1,2−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、1,3−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、1,4−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、2,3−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、2,4−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、3,3−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、3,4−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、4,4−ジヒドロキシ−sec−ブチル基、1−ヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、1,2−ジヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、1,3−ジヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、2,3−ジヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、3,3−ジヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−n−プロピル基、1,2,3−トリヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、1,3,3−トリヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、2,3,3−トリヒドロキシ−2−メチル−n−プロピル基、1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−n−プロピル基、2,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−n−プロピル基、1−ヒドロキシ−2−メチルイソプロピル基、1,3−ジヒドロキシ−2−メチルイソプロピル基、1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルイソプロピル基等が挙げられ、特に2−ジヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基が好ましい。
【0030】
アルカノールヒドロキシアミンの含有量は、洗浄液全量に対し、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.01〜0.5質量%であることがさらに好ましい。このような含有量とすることにより、易腐食性金属、特に、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドの腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。
【0031】
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミン以外のヒドロキシアミン化合物、アルキルアミン、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0032】
[第4級アンモニウム水酸化物]
第4級アンモニウム水酸化物としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化3】
【0034】
上記一般式(3)中、Rc1〜Rc4は、それぞれ独立に炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数6〜16のアリール基、炭素原子数7〜16のアラルキル基、又は炭素原子数1〜16のヒドロキシアルキル基を示す。
【0035】
上記一般式(3)で表される化合物の中でも、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、メチルトリプロピルアンモニウム水酸化物、メチルトリブチルアンモニウム水酸化物、エチルトリメチルアンモニウム水酸化物、ジメチルジエチルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水酸化物、及び(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、入手しやすさの点から特に好ましい。さらに、テトラメチルアンモニウム水酸化物及びテトラエチルアンモニウム水酸化物が、被洗浄物に対する溶解性が高く洗浄性能が高い点から好ましい。
【0036】
[無機塩基]
また、塩基性化合物としては、例えば、無機塩基を第4級アンモニウム水酸化物と併用してもよい。無機塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。
【0037】
[アルカノールアミン]
アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を挙げることができる。アルカノールアミンとしては、また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の一般式(2)で表されるアルカノールアミンを用いてもよい。
【0038】
なお、塩基性化合物としてアルカノールアミンを用い、アルカノールアミンを酸化することによりアルカノールヒドロキシアミンを合成する工程を含む方法により、洗浄液を製造する場合には、合成後に残るアルカノールアミンでは量的に不足するため、別途アルカノールアミン以外の塩基性化合物を添加することが好ましい。
【0039】
[ヒドロキシアミン化合物]
一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミン以外のヒドロキシアミン化合物としては、例えば、ヒドロキシアミン(HO−NH)のほか、N−メチルヒドロキシアミン、N−エチルヒドロキシアミン、N−(tert−ブチル)ヒドロキシアミン、N−プロピルヒドロキシアミン等のモノアルキルヒドロキシアミン;N,N−ジエチルヒドロキシアミン、N,N−ジメチルヒドロキシアミン等のジアルキルヒドロキシアミン;等のアルキルヒドロキシアミンを挙げることができる。
【0040】
[アルキルアミン]
アルキルアミンとしては、N−メチルアミン、N−エチルアミン、N−(tert−ブチル)アミン、N−プロピルアミン等のモノアルキルアミン;N,N−ジエチルアミン、N,N−ジメチルアミン等のジアルキルアミン;等を挙げることができる。
【0041】
[その他の塩基性化合物]
また、塩基性化合物としては、アンモニアを用いることもできる。
【0042】
上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物の含有量は、化合物の塩基性の強さによっても異なるが、洗浄液全量に対し、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、易腐食性金属、特に、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドの腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。なお、無機塩基を第4級アンモニウム水酸化物と併用する場合、無機塩基の含有量は、洗浄液全量に対し、0.1質量ppm〜1質量%であることが好ましく、1質量ppm〜1000質量ppmであることがより好ましい。このような含有量とすることにより、易腐食性金属、特にコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドの腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。また、上述したように、塩基性化合物としてアルカノールアミンを用いる場合には、アルカノールアミン以外に、別途他の塩基性化合物を用いて、2種以上の塩基性化合物を用いることが好ましい。
【0043】
<溶剤>
また、本発明の洗浄液は、一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、塩基性化合物とを溶解させる溶剤を含んでもよい。溶剤は、洗浄液に含まれる成分を均一に溶解させることができるものであれば特に限定されず、水、有機溶剤、及び有機溶剤の水溶液の何れも用いることができ、水を含有することが好ましい。水としては、純水、脱イオン水、イオン交換水等を用いることができる。有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
有機溶剤は、水溶性有機溶剤であっても、疎水性有機溶剤であってもよいが、水溶性有機溶剤が好ましい。溶剤に含まれる有機溶剤が水溶性である場合、一般にアルカノールヒドロキシアミンの溶解性が高く、被洗浄物の表面に残留しにくい点で好ましい。溶剤としては、水と有機溶剤とを併用することが好ましく、水と水溶性有機溶剤とを併用することがより好ましい。溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用する場合、水と水溶性有機溶剤との合計に対する水の含有量は、1〜99質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。
【0045】
水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類等のグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート等のグリコールエステル系溶剤を挙げることができる。
【0046】
中でも好ましい水溶性有機溶剤として選択されるのは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、プロピレングリコール(PG)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルジグリコール)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0047】
水溶性有機溶剤を含有する場合、その含有量は、洗浄液全量に対し、1〜99質量%であることが好ましく、10〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。このような含有量とすることにより、易腐食性金属、特にコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドの腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。
【0048】
<その他の成分>
本実施態様の洗浄液には、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤等の、その他の成分が添加されてもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
また、本実施態様の洗浄液は、上述の一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと塩基性化合物を含有するものであれば、他の防食剤を含有する必要はないが、他の防食剤をも含有するものであってもよい。かかる他の防食剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール、アミノテトラゾール、5−アミノ−1−フェニルテトラゾール、5−アミノ−1−(1−ナフチル)テトラゾール、1−メチル−5−アミノテトラゾール、1,5−ジアミノテトラゾール、イミダゾール、インドール、プリン、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン等の含窒素複素環化合物のほか、2級アミン系化合物、アミノ酸系化合物等が挙げられる。
【0050】
<<防食剤>>
上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する防食剤もまた、本発明の一つである。
本発明の防食剤は、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有する組成物であり、該組成物(典型的には液状組成物)は防食剤として好適である。
【0051】
また、本実施態様の防食剤は、該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物が、第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、前記アルカノールヒドロキシアミン以外のヒドロキシアミン化合物、アルキルアミン、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。また、本実施態様の防食剤は、上記一般式(1)におけるRa1とRa2とが同じ基であることが好ましい。
【0052】
本実施態様の防食剤は、上述したように、アルカノールヒドロキシアミンと該アルカノールヒドロキシアミン以外の塩基性化合物とを含有することにより、金属、特にコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食を効果的に抑制することができる。
【0053】
<<洗浄液を製造する方法>>
本発明の洗浄液を製造する方法は、上記一般式(1)で表されるアルカノールヒドロキシアミンと塩基性化合物とを含有する洗浄液を製造する方法であって、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミンを酸化することにより該アルカノールヒドロキシアミンを合成する工程、及び該工程による反応生成物と塩基性化合物とを配合する工程とを含む、方法である。本発明の洗浄液を製造する方法は、本発明の第1の態様の洗浄液又は上述の本発明の防食剤を製造する方法として好適である。
【0054】
出発物質であるアルカノールアミンを表す一般式(2)中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子である。但し、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。
【0055】
アルカノールアミンとしては、上述したように、Rb1及びRb2がヒドロキシ基を1〜3個有する炭素原子数1〜10のアルキル基であるジアルカノールアミンが好ましい。このようなアルカノールアミンを用いることは、コバルトのみならず、銅やタングステンに対する腐食抑制効果を得られる点で好ましい。
【0056】
アルカノールアミンを酸化する上記反応において、通常、酸化を受けないことから、一般式(2)におけるRb1は一般式(1)におけるRa1と同じ基であり、一般式(2)におけるRb2は一般式(1)におけるRa2と同じ基であり、具体的には下記のようである。
【0057】
b1及びRb2におけるヒドロキシ基としては、一般式(1)のRa1及びRa2におけるヒドロキシ基について説明したものと同様であり、Rb1及びRb2における各アルキル基の炭素原子数が3である場合、また、Rb1及びRb2における各アルキル基の炭素原子数が4〜10である場合、第二級アルコールを構成することが好ましい。
【0058】
b1及びRb2における炭素原子数1〜10のアルキル基としては、一般式(1)で説明したものと同様のものが挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基が好ましく、特に、エチル基、n―プロピル基が好ましい。
【0059】
b1及びRb2における、1〜3個のヒドロキシル基を有する炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基の具体例としては、一般式(1)で説明したものと同様のものが挙げられ、特に2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基が好ましい。
【0060】
一般式(1)におけるRa1及びRa2と同様に、一般式(2)におけるRb1とRb2とは同じ基であることが好ましい。また、Ra1、Ra2、Rb1、及びRb2が同じ基であることが好ましい。
【0061】
アルカノールアミンを酸化する酸化剤としては、過酸化水素等が挙げられる。
【0062】
アルカノールアミンに対する酸化剤の添加量は、アルカノールアミンのモル量に対して、30〜100モル%であることが好ましく、60〜80モル%であることがより好ましい。このような添加量とすることにより、アルカノールアミンからアルカノールヒドロキシアミンを生成して、高い防食効果を有する混合液を得ることができる。
【0063】
アルカノールアミンを酸化する反応温度は、例えば、40〜80℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。また、反応時間は、20〜120分間であることが好ましく、30〜90分間であることがより好ましい。このような条件下で酸化反応を行うことにより、アルカノールアミンからアルカノールヒドロキシアミンを生成して、高い防食効果を有する混合液を得ることができる。
【0064】
例えば、下記の反応式で示すように、アルカノールアミンであるジエタノールアミンに過酸化水素水(H)を添加して酸化することにより、反応生成物として、アルカノールヒドロキシアミンである2,2’−(ヒドロキシイミノ)ビスエタノールを得ることができる。
【0065】
【化4】
【0066】
しかし、上記反応において、ジエタノールアミンの全量が酸化することは難しく、得られた反応液は、ジエタノールアミンと2,2’−(ヒドロキシイミノ)ビスエタノールとの混合物となりやすい。アルカノールヒドロキシアミンである2,2’−(ヒドロキシイミノ)ビスエタノールの収率は、反応条件にもよるが、25%〜70%程度である。
【0067】
本発明の洗浄液の製造方法においては、出発物質であるアルカノールアミンと、反応生成物であるアルカノールヒドロキシアミンとの混合物を得やすく、酸化反応後得られる該混合物をそのまま、即ちアルカノールアミン又はアルカノールヒドロキシアミンを単離精製することなく、本実施態様の洗浄液に用いることができ、製造効率がよい。また、アルカノールアミン又はアルカノールヒドロキシアミンを単独で洗浄液又は防食剤に用いる場合に比べ、高い防食効果を有する洗浄液又は防食剤を得ることができる。なお、この方法によれば、アルカノールアミンが塩基性化合物となって、高い防食効果を発揮することができる。
【0068】
<<洗浄方法>>
本発明の洗浄液を用いる洗浄方法もまた、本発明の一つである。
本発明の洗浄方法は、上述した洗浄液、又は上記方法により製造される洗浄液を用いて基板を洗浄する方法である。
【0069】
該基板の洗浄は、リソグラフィーにおける基板の洗浄として好適である。
例えば、本実施形態の洗浄方法は、基板の表面に、所定のパターンのエッチングマスク層を形成するエッチングマスク層形成工程、上記エッチングマスク層より露出する上記基板をエッチングするエッチング工程の後工程で行われ、エッチングされた上記基板を洗浄する方法である。本実施形態の洗浄方法は、基板の表面の少なくとも一部がコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属からなる場合に好適である。この際、上記基板の表面にはコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の少なくとも一部が露出しており、洗浄液と接触するが、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食は良好に抑制される。よって、上述した洗浄液を用いて洗浄することにより、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食を抑えながら、被洗浄物を効果的に除去することができる。
【0070】
後述するように、本実施形態の洗浄方法は、エッチング速度の評価によれば、コバルトに対しては0.2nm/min以下、好ましくは0.1nm/min以下、より好ましくは0.09nm/min以下と小さく、腐食抑制効果が大きい。また、同様に、エッチング速度の評価によれば、銅に対しては0.4nm/min以下、好ましくは0.2nm/min以下、より好ましくは0.04nm/min以下と小さくすることが可能であり、腐食抑制効果を期待できる。また、同様に、エッチング速度の評価によれば、タングステンに対しては0.2nm/min以下、好ましくは0.1nm/min以下、より好ましくは0.01nm/min以下と小さくすることが可能であり、腐食抑制効果を期待できる。また、同様に、エッチング速度の評価によれば、SiGeに対しては0.05nm/min以下、好ましくは0.01nm/min以下と小さくすることが可能であり、腐食抑制効果を期待できる。上述のジアルカノールヒドロキシアミン及びジアルカノールアミンを用いる場合、コバルトのみならず、銅、ダングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属に対しても腐食抑制効果が得られやすい。
【0071】
具体的な洗浄方法は、通常行われる方法であれば特に限定されない。例えば、浸漬法、パドル法、シャワー法等を用いて、上述した洗浄液に基板を1〜40分間接触させることにより処理される。洗浄は、通常は室温で行われるが、洗浄効果を高めるため洗浄液を85℃程度まで昇温させて行ってもよい。
【0072】
<<防食方法>>
このように、上述した洗浄液、防食剤、又は上記方法により製造される洗浄液若しくは防食剤を用いて易腐食性金属を防食する方法もまた、本発明の一つである。該防食方法は、例えば、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属(例えば、表面に該易腐食性金属が露出した基板)を該洗浄液若しくは防食剤と接触させることを含み、具体的には上述の洗浄方法と同様に行うことができる。
【0073】
また、上述した防食剤、又は上記方法により製造される防食剤を用いて易腐食性金属を防食する方法は、該防食剤を洗浄液、現像液、リンス液、剥離液等のリソグラフィー用薬液に添加すること等によりリソグラフィー用薬液に含ませて、例えば、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属(例えば、表面に該易腐食性金属が露出した基板)を該リソグラフィー用薬液と接触させることを含む。かかる防食方法は、例えば、該防食剤を含ませる洗浄液、現像液、リンス液、剥離液等のリソグラフィー用薬液の種類ないし用途に応じて、リソグラフィー法に通常用いられる洗浄方法(例えば上述の洗浄方法)、現像方法、リンス方法、剥離方法を用いることができる。本実施態様の防食剤を含ませるリソグラフィー用薬液としては、洗浄液、現像液が好ましい。該現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)2.38%水溶液等のアルカリ現像液を用いることができる。
【0074】
本発明の防食剤を含むリソグラフィー用薬液もまた、本発明の一つである。該リソグラフィー用薬液としては、例えば、洗浄液、現像液、リンス液、剥離液等が挙げられ、洗浄液が好ましい。
【0075】
<<半導体を製造する方法>>
本発明の洗浄方法を用いることを含む半導体を製造方法もまた、本発明の一つである。
本発明の半導体を製造する方法は、上述した洗浄方法を用いて基板を洗浄することを含む、基板を含む半導体を製造する方法である。
【0076】
本実施態様の方法によれば、上述したように、基板の表面の少なくとも一部がコバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属からなる場合であっても、コバルト、銅、タングステン、SiGe等のシリサイドその他の易腐食性金属の腐食を抑制して、半導体を製造することができる。
【0077】
<<リソグラフィー方法>>
本発明の洗浄方法又は本発明の防食方法を用いることを含むリソグラフィー方法もまた、本発明の一つである。本発明の防食方法としては、上述した洗浄液、防食剤、又は上記方法により製造される洗浄液若しくは防食剤を用いて易腐食性金属を防食する方法であってもよいし、該防食剤を洗浄液、現像液、リンス液、剥離液等のリソグラフィー用薬液に含ませて、易腐食性金属(例えば、表面に該易腐食性金属が露出した基板)を該リソグラフィー用薬液と接触させることを含む上述の防食方法であってもよい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
[対照例]
対照例として、エチルジグリコール75.0質量%、テトラメチルアンモニウム水酸化物TMAH)2.0質量%、水(残部)23.0質量%からなる溶液を用意した。
【0080】
[実施例1〜4]
実施例では、表1に示す量で、それぞれ水に溶解したアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン)に過酸化水素水(H)を60℃で撹拌下60分かけて滴下した。そして60℃でさらに1時間反応後、得られた反応液を、対照例となる溶液99.5質量部に対して、それぞれ0.5質量部となるように添加し、洗浄液を調製した。
【0081】
例えば、実施例1の洗浄液の組成は、エチルジグリコール75.0質量部、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)2.0質量部、上述した反応液0.5質量部、及び、水(残部)22.5質量部である。
【0082】
実施例1〜4における、アルカノールアミンに過酸化水素水を添加して得られた反応液は、表3に示すように、出発物質であるアルカノールアミンと、酸化反応の生成物であるアルカノールヒドロキシアミンとの混合物であることが、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)によりいずれも確認された。
【0083】
分析結果の一例を示す。実施例4で得られた反応液では、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)により評価した結果、m/z値が134.1172、150.1122となる位置にピークが観察された。この結果から、実施例4で得られた反応液は、出発物質であるジイソプロパノールアミンと、酸化反応の生成物として窒素原子にヒドロキシ基が1つ結合してなるジイソプロパノールヒドロキシアミンとの混合物であることがわかる。また、この実施例4の反応液を核磁気共鳴装置(NMR)により評価した結果、出発物質:反応生成物=59:41のモル比であることが確認され、ジイソプロパノールヒドロキシアミンの収率は、32.2%となった。
【0084】
[実施例5]
洗浄液として、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)2.38%の水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業社製)100質量%に対して、実施例4で得られた反応液を1.0質量%添加し、洗浄液を調製した。
【0085】
[実施例6]
洗浄液として、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)2.38%と活性剤を含む水溶液(商品名:NMD−W、東京応化工業社製)100質量%に対して、実施例4で得られた反応液1.0質量%を添加し、洗浄液を調製した。
【0086】
[実施例7]
洗浄液として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)65質量%、プロピレングリコール(PG)5質量%、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)2.0質量%、及び水(残部)28質量%からなる混合溶液に、実施例4で得られた反応液1.0質量%を添加し、洗浄液を調製した。
【0087】
[比較例1〜6]
比較例1〜6では、表2に示すように、防食剤の比較対照化合物としてモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジプロピルアミンと水とを混合して得られた混合物各0.5質量部を、対照例となる溶液99.5質量部に対して添加し、洗浄液を調製した。
【0088】
[比較例7]
比較例7では、表1に示す量で防食剤の比較対照化合物として、水に溶解したジプロピルアミンに対して過酸化水素水(H)を60℃で撹拌下60分かけて滴下した。そして60℃でさらに1時間反応後、得られた反応液を、対照例となる溶液99.5質量部に対して、0.5質量部となるように添加し、洗浄液を調製した。比較例7で得られた反応液は、表4に示すように、ジプロピルアミンとジプロピルヒドロキシアミンとの混合物であった。
【0089】
[比較例8]
実施例4で得られた反応液を添加しない以外は、実施例5と同様に洗浄液を調製した。
【0090】
[比較例9]
実施例4で得られた反応液を添加しない以外は、実施例6と同様に洗浄液を調製した。
【0091】
[比較例10]
実施例4で得られた反応液を添加しない以外は、実施例7と同様に洗浄液を調製した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
[銅層、タングステン層、又はコバルト層に対するエッチング速度の評価]
銅、タングステン、又はコバルトをシリコン基板上に成膜し、厚さ100nmの銅層、タングステン層、又はコバルト層を備えたシリコン基板を得た。このシリコン基板を、60℃に加温した洗浄液に60分浸漬した。浸漬終了後、シリコン基板を純水でリンスし、銅層、タングステン層、又はコバルト層の膜厚を測定して、浸漬前後の膜厚の差から銅層、タングステン層、又はコバルト層のエッチング速度を求めた。その結果を表3、4に示す。
【0095】
表3、4中のエッチング速度の評価は、下記の基準に基づく。なお、対照例の溶液によるエッチング速度は、銅層が2.21、タングステン層が0.14、コバルト層が0.35であった。エッチング速度の評価の単位は[nm/min]である。
・銅(Cu)
◎:0.2以下、〇:0.2超0.4以下、×:0.4超
・タングステン(W)
◎:0.1以下、〇:0.1超0.2以下、×:0.2超
・コバルト(Co)
◎:0.1以下、〇:0.1超0.2以下、×:0.2超
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
表3、4の結果から、アルカノールヒドロキシアミンとアルカノールアミンとの混合液を含む実施例1〜4の洗浄液では、いずれも、アルカノールヒドロキシアミンを含まない比較例1〜7の洗浄液に比べ、コバルトのエッチング速度が小さく腐食抑制機能に優れていた。このうち、ジアルカノールヒドロキシアミンとジアルカノールアミンとの混合液を含む実施例2、4の洗浄液では、比較例1〜7の洗浄液に比べ、銅やタングステンのエッチング速度も小さく腐食抑制機能にも優れていた。なお、実施例で得られたアルカノールヒドロキシアミンは、いずれも比較例で用いられるアミンよりも、LogP値が大きく水溶性に優れ、かつ蒸気圧が低く組成安定性に優れていることが確認された。
【0099】
[SiGe層に対するエッチング速度の評価]
厚さ100nmのSiGe層を備えたシリコン基板を、実施例5〜7、及び比較例8〜10の洗浄液(25℃)に10分浸漬した。浸漬終了後、シリコン基板を純水でリンスし、SiGe層の膜厚を測定して、浸漬前後の膜厚の差からSiGe層のエッチング速度を求めた。その結果を表5に示す。
【0100】
表5中のエッチング速度の評価は、下記の基準に基づく。エッチング速度の評価の単位は[nm/min]である。
・SiGe
◎:0.01以下、〇:0.01超0.05以下、×:0.05超
【0101】
【表5】
【0102】
表5の結果から、アルカノールヒドロキシアミンとアルカノールアミンとの混合液を含む実施例4で得られた反応液を用いた実施例5〜7の洗浄液では、いずれも、アルカノールヒドロキシアミン(1,1’(ヒドロキシイミノ)ビス(2−プロパノール))を含まない比較例8〜10の洗浄液に比べ、SiGe層に対してもエッチング速度が小さく腐食抑制機能に優れていることが確認された。